このページは、本学の数学大典の記事と演習を、どのような考え方で書き、どのような状態で公開しているかを説明します。記事がなぜこのように書かれているのかを読者が知りたいときに参照するための案内であり、本学が自らに課している約束と目標を示すものでもあります。
品質目標
数学大典では、公開している内容の正確さ・明晰さ・検証可能性によって読者の信頼を得ることを目指し、編集上のあらゆる判断で、この目標を他の考慮より優先します。内容の正確さについての本学の責任は、定義・定理・証明だけでなく、例、解答、図、歴史の紹介、応用の話題、コラムを含め、画面に出るすべての主張に及びます。印象の強い言い方が、検証することのできる範囲を超える主張になる場合は、表現を弱めるか根拠を補うかして、印象の強さより正確さを優先します。
本学は、内容の正確さと読みやすさがトレードオフの関係にあるとは考えていません。そのため、結論が正しいこと、必要な仮定と適用範囲が示されていること、証明や外部の結果に委ねた部分を読者が追跡することができること、例や演習が主張に対応していること、誤りが見つかったときに本学が訂正することができることは、すべての記事が満たすべき最低限の条件と位置づけています。そのうえで数学大典が品質目標として目指すのは、文章としての読みやすさ、扱う内容の幅と深さ、そしてそれらを一つの体系として容易に見通すことのできる論理構成です。そのような論理構成の中に置く証明は、突飛な発想を何段も積み重ねたものであってはなりません。長い証明は適切に分割し、分割したそれぞれの部分が、自然な動機から生じる問いへの自然な答えとして現れる補題から、容易に導かれる形で書くことを目指しています。
AI 執筆の利用について
本学では、記事の執筆に AI を積極的に利用しています。 AI の進化によって、数学を理解することも研究することも、多くの人に開かれたものになりつつあり、本学が公開している記事がその一助となることを願ってやみません。
推敲段階について
数学大典では、推敲の進み具合にかかわらず、すべての記事に数学的な正しさを求めています。一方で、説明の順序、例の選び方、文章の読みやすさには単元によって差があり、現時点では、読者が読み通すのに苦労する記事も少なくありません。そこで、推敲の進み具合を、単元ごとに 0 から 5 までの段階で表しています。数学大典の単元の一覧では、各単元のカードを左端から塗り、塗った幅の割合で段階を示しています。段階 0 のカードは塗らず、段階が 1 上がるごとに塗る幅がカードの 5 分の 1 ずつ広がり、段階 5 でカード全体が塗られます。各単元の目次のページにも、表題の下に同じ割合で塗った小さな帯を置いて、段階を示しています。
推敲を終えていない単元も公開している理由を説明します。本学は、上記の品質目標をすべての記事で達成することを理想としていますが、公開の時点から達成することは困難です。しかし、定義と定理が依存関係に沿って体系的に並び、主張に証明が備わっている記事には、読みづらくても、その点だけで一定の価値があると考えています。証明を一行ずつ確かめたい読者や、ある結果が何に依存するかをたどりたい読者には、推敲の前の記事でも役に立つことがあるかもしれません。そのため、推敲を終えていない単元も公開したうえで推敲を続け、品質目標の達成に努めます。
各段階の意味は次のとおりです。推敲を終えたかどうかは、本学が判断しています。
- 段階 0:AI が執筆した記事のままで、推敲をまだ始めていない状態です。
- 段階 1:推敲を始めたばかりの状態です。記事の配置や命題の順序の組み替えを検討し始めています。
- 段階 2:単元内の記事の推敲を進めていますが、推敲を終えたと判断した記事はまだありません。
- 段階 3:単元内に、推敲を終えたと判断した記事が出始めている状態です。
- 段階 4:単元内の多くの記事について、推敲を終えたと判断している状態です。
- 段階 5:単元内のすべての記事について、推敲を終えたと判断した状態です。この段階に至った後も、記事を追加したり、加筆・訂正したりすることがあります。
証明の扱い
数学大典の記事は、高校の範囲も含めて、述べた主張を原則として記事の中で証明します。証明を書かない場合は、証明を書かないこと、その理由、どこで証明されるかを明示します。「認めて用いる」とだけ書いて、読者が証明の所在を知ることのできないままにすることはしません。証明を与える後続の単元をまだ公開していない場合も、その単元で証明することを書きます。
高校数学から大学初年度の入口までの記事では、計算の途中と、定義を展開する過程を省かずに書くことを優先します。大学数学の標準的な中核(おおむね大学2年相当以降)の記事では、証明を読んだあとに自分の手で再現することができるだけの細かさで証明を書きます。長く難しい証明は、方針を説明する段落を置く代わりに、個別に参照することのできる補題に分け、補題を並べる順序によって全体の見通しを示します。証明は、「まず○○を示す」のような予告から始めず、対象を取る、定義を展開する、既出の結果を適用するといった数学的な操作から書き始めます。
数学大典では、証明を折りたたみません。証明を折りたたまないのは、定理を一覧にしただけでは数学にならず、定理をどう証明するかが究極的には数学のすべてであると考えているからです。
演習の置き方
演習には、本文の内容を確かめる問題と、本文の例より進んだ問題とを置いています。本文の主張のうち、短く証明することのできるものや、本題から外れた補助的な事実については、本文に「演習とする。」と書いて、その証明を演習へ移すことがあります。その場合も演習の解答で完全な証明を与えるので、証明を演習へ移した主張が、証明のないまま残ることはありません。
参考文献
大学の範囲の記事では、参考にした文献を記事の末尾に挙げます。単元のページには、その単元の各記事で参考にした文献をまとめて挙げます。文献は、版・出版社・刊行年を確かめたうえで載せます。