この段は、Part A で整えた計算と論証を土台に、関数・数列・確率という「対象」そのものを扱う段である。個々の値を計算するのではなく、対応の規則(関数)、無限に続く列とその行き先(数列と極限)、起こりやすさの構造(確率・統計)を、まとまりとして眺める。Part A が手を動かして土台を作る段だったのに対し、Part B は大学以降の定義駆動の数学へ架橋する段である。

段は学年の帯ではなく、扱う対象の層である。この段の単元も高校1年から3年の内容にまたがる。

この段に置く単元

単元 扱うこと
数列と極限 等差・等比、Σ、漸化式、数学的帰納法の運用から、数列の極限・無限級数・はさみうちまで
関数の性質 関数概念とグラフ、三角関数のグラフ、合成関数、全単射と逆関数、分数関数と無理関数、そして微分(積・商・合成、三角関数)
指数関数と対数関数 有理数乗の定義と指数法則、指数関数と対数関数、常用対数。発展では実数乗を構成し、指数関数の微分からeeを定める
場合の数と確率統計 場合の数、確率、条件付き確率と期待値、分布と統計的推測、データの分析。展望は包除・母関数・競技組合せ

この並びにした理由

4単元に共通するのは、個別の値ではなく対応や分布そのものを見るという視点の切り替えである。関数の性質はその中心にあり、グラフ変換・合成・逆関数を通じて「関数を対象として扱う」感覚をつくる。微分をこの単元に含めているのは、微分が関数の変化を読み取る道具であり、積分と切り離して関数の性質の一部として学ぶほうが自然だからである。

数列と極限を最初に置くのは、極限が後の3単元すべてで道具になるからである。漸化式と数学的帰納法は Part A の論理と直結し、極限は次の段の微積分(およびその先の ε-論法)への入口になる。極限はここでは直感的な「近づく先」として扱い、精密な定義は大学に預ける。

指数関数と対数関数を、関数の性質より後ろに置いている。対数を指数関数の逆関数として定義するために逆関数が要り、eeを導入するために微分が要るからである。どちらも関数の性質が扱う。この順序にすると、eeを極限で天下り的に与えずに済む。指数関数を微分したときに現れる極限が11になる底としてeeを定めることができ、exe^xが満たす微分方程式にも手が届く。有理数乗までを基礎、実数乗の構成から先を発展として分けているのも、有理数乗は素朴に定義することができるのに対し、実数乗には極限による構成が要るという段差をそのまま区分にしたものである。

場合の数と確率統計を最後に置くのは、正規分布が指数関数を必要とするからである。後の測度論的な確率へ向かう入口を、まずは具体的な計算とデータの読み方として用意する。数え上げは Part A の計算の応用であると同時に、確率・統計という別種の構造を扱う準備でもある。

参考にした基準

この段は、日本の学習指導要領の数学Ⅱ・数学Ⅲ・数学B(数列・統計的な推測)・数学Ⅰ(データの分析)・数学A(場合の数と確率)にまたがる。

数学Ⅰは必履修であり、数学Ⅱ・数学Ⅲは、履修する場合には内容全体を学ぶ科目である。数学A・数学B・数学Cは、学校・生徒の実態や単位数に応じて内容を選択して履修する。したがってこの段は、理系進学向けに数学Ⅲまで学ぶ読者のための推奨経路であり、すべての高校生に同じ履修を求める表示ではない。

範囲と段階の付け方は、韓国・中国・ドイツ・フランスの中等教育課程とも突き合わせている。数列、微分の初歩、確率・統計を中等教育後半または大学進学向けの経路に置く点は共通する一方、必修性と学年配当は一致しない。中国は必修・選択性必修・選修、韓国は共通・選択、フランスは進路別、ドイツは州が実装する修了基準である。このため、この段は国際的な学年・必修の対応表ではなく、内容間の前提関係を示す。

前の段・次の段へ

Part A(高校数学の土台)の計算と論証を終えていれば、この段に進める。関数・数列・確率を対象として扱えるようになると、Part C(高校数学の総合と展望)で、微分と積分を基本定理で結び、高校数学を総合する段階に入る。