概要
本単元は、起こりうる場合が何通りあるかを数え、その起こりやすさを確率として測り、観測されたデータからどこまでを述べることができるのかを判断する方法を扱います。和の法則と積の法則による数え上げから始めて、順列と組合せ、確率の定義、余事象と独立試行へ進みます。続いて、データの代表値と散らばり、条件を課したときの確率、確率変数の期待値と分散、二項分布、状態の遷移を追う漸化式、任意個の集合に対する包除原理を扱い、正規分布と標準化を経て、標本から母集団を推測する統計的推測に至ります。
本単元は、どの記事でも、何を一つと数えるのか、確率を求めるときに何を仮定したのか、データがどのように集められたのかを、計算に入る前に確かめながら進めます。同じ問題であっても、置いた仮定が変われば答えも変わるため、仮定の置き方が計算そのものと同じ重さをもちます。
この単元のねらい
本単元は、読者が次に掲げる能力を習得することを目標とします。
- 和の法則と積の法則を用い、重複と数え落ちが生じない数え方を選ぶことができます。
- 順列と組合せを区別し、順序を区別するかどうかによって数え方が変わることを説明することができます。
- 鳩の巣原理を、有限集合の間の写像が単射になり得ないこととして述べることができます。
- 標本空間を定め、何を「同様に確からしい」と仮定したかを明示して確率を求めることができます。
- 余事象、独立な試行、反復試行を用いて、直接には数えにくい確率を求めることができます。
- 条件付き確率とベイズの定理を用い、条件を課す前の標本空間と課した後の範囲を区別することができます。
- 確率変数の期待値と分散を計算し、期待値の線形性と分散の加法性のそれぞれが成り立つ条件を区別することができます。
- 二項分布の確率、期待値、分散を求め、任意個の有限集合について包除原理を適用することができます。
- 状態の分け方と遷移の確率を定めて漸化式を立て、回後の確率を求めることができます。
- 代表値と散らばりを計算し、箱ひげ図やヒストグラムから分布の形を読み取ることができます。
- 母集団と標本を区別し、無作為に選んでも標本誤差が残ることと、抽出の段階で生じる偏りが標本を大きくしても解消しないこととを説明することができます。
- 正規分布を標準化して確率を求め、条件が整う場合に二項分布を正規分布で近似することができます。
- 母平均と母比率の信頼区間を求め、仮説検定の結論を、用いた仮定とともに述べることができます。
- 社会における問いについて、変数、無視する要因、関係式、評価の基準を定め、得られた結果を現実の量へ戻して妥当性を確かめることができます。
前提知識
本単元の基礎は、「数と式の計算」で扱う式の展開と根号の計算を前提とします。二項係数の性質を確かめる場面と、分散から標準偏差を求める場面で必要になります。
集合の記法と演算は「集合と論理」で扱います。本単元は、要素の個数を数える場面と、条件を課して考える範囲を絞る場面で、その記法を用います。
発展では、連続的な値をとる確率変数の確率をグラフの下の面積として表します。面積の厳密な定義は、「測度と積分」が扱います。確率漸化式、母関数、ランダムウォークでは、「数列と極限」で扱う漸化式の解法を用います。
この単元を貫く4つの方針
本単元の各記事は、次の4点を共通の方針とします。
- 数える対象を先に定めます。 何を一つと数えるか、順序を区別するか、同じものを含むかを、計算に入る前に定めて示します。数え方が変われば答えも変わるため、どの数え方を選んだのかを明示します。
- 確率は、置いた仮定とともに述べます。 起こりうる結果すべてを集めた標本空間をどう取るかによって、場合の数の比が確率を与えるかどうかが変わります。何を「同様に確からしい」と仮定したのか、どの試行や確率変数を独立と仮定したのかを、そのつど書きます。
- 条件を課したときに何が変わるのかを追います。 条件付き確率では、考える範囲が絞られ、確率を測る分母が変わります。条件を課す前の標本空間と課した後の範囲を対比して示し、原因の側の確率と結果の側の確率を取り違えないことを確かめます。
- データから述べることができる範囲を区切ります。 標本から母集団について述べる結論には、不確かさが伴います。用いた仮定、標本の選ばれ方、結論の及ぶ範囲を明示し、相関があっても因果を結論することはできないことを確かめます。
難易度区分
本単元は、22記事を「基礎」13記事、「発展」3記事、「応用」6記事に分けます。
基礎は、有限個の場合を直接数える方法を確立するところから始めます。和の法則と積の法則、鳩の巣原理、順列と組合せを扱ったうえで確率を定義し、余事象と独立試行へ進みます。続いてデータの扱いを置き、代表値と散らばり、分布の形、標本の選ばれ方を確かめます。そのうえで、条件を課したときの確率、確率変数の期待値と分散、二項分布、状態の遷移を追う漸化式、任意個の集合に対する包除原理へ進みます。一つ一つの結果を数える段階を先に置くのは、確率と分布を、数え方が定まって初めて意味をもつ量として扱うためです。
発展は、連続的な値をとる確率変数を対象とし、確率をグラフの下の面積として表します。正規分布と標準化から、標本平均の分布による推定と仮説検定へ進みます。あわせて、数列をべき級数の係数として並べる母関数を扱います。
応用は、基礎で確立した数え方と確率の定義を用いて、より複雑な設定を扱います。社会における問いを変数と関係式で表す手順、ランダムウォーク、期待値の線形性による計算、同じ集合を二通りに数えて等式を導く方法、競技数学で用いる技法を取り上げます。
基礎の13記事は、本単元で必ず読む内容であり、順に読むことを想定しています。発展の3記事と応用の 6記事は必修ではなく、読者は関心に応じて選んで読むことができます。
基礎
有限個の場合を過不足なく数え、何を「同様に確からしい」と仮定したかを明示して確率を求める段階です。データについても、代表値を計算するだけでなく、分布の形と集め方に注意を向けます。各記事が扱う内容は、次のとおりです。
- 有限集合の要素の個数 — 和の法則と積の法則によって場合の数を数え、二つの集合の和集合では、共通部分を二度数えた分を一度引きます。全体から条件を満たさないものを引く数え方も練習し、三つの集合では引きすぎた分を足し戻すことに触れます。
- 鳩の巣原理 — 異なる個以上の対象を個の箱へ入れれば、少なくとも一つの箱に二個以上が入ることを、有限集合の間の写像が単射になり得ないこととして述べます。要素数が等しい有限集合の間では単射と全射が同値であることも示し、同じ箱に入る対象が存在することと、どの対象が同じ箱に入るのかを求めることとを区別します。
- 順列・組合せ — 順序を区別して並べる場合の数と、区別せずに選ぶ場合の数を分け、積の法則からとを導きます。順列を並べ替えの個数で割ると組合せになるという関係から、同じものを含む順列、円順列、重複を許す組合せへ広げ、二項係数の対称性を確かめます。
- 確率の定義と「同様に確からしい」 — 起こりうる結果すべてを集めた標本空間を定め、根元事象が同様に確からしい場合の確率を、場合の数の比として定義します。同様に確からしいとは言えない標本空間を取ると場合の数の比が確率を与えないことを例で確かめ、何を仮定したかを明示する必要があることを示します。
- 余事象・独立試行・反復試行 — 余事象の確率がもとの確率をから引いた値であることを示し、「少なくとも一つ」という形の事象の確率を余事象から求めます。独立な試行と反復試行の確率を計算し、確率を掛け合わせる計算が試行の独立性のもとで成り立つことを明示します。独立性を確率の積の等式で定義し、排反とは異なる条件であることも区別します。
- データの分析 — 平均値、中央値、最頻値が分布の中心を、分散と標準偏差が散らばりの大きさをどのように要約しているのかを示します。相関係数を二つの量の直線的な関係の強さを測る指標として定義し、相関があっても因果を結論することはできないことを確かめます。外れ値の有無による代表値の変化、仮説のもとでのデータの起こりにくさ、集団を分ける前後で割合の大小が反転する例も扱います。
- データの可視化と外れ値 — 四分位数と四分位範囲を定義し、箱ひげ図、ヒストグラム、散布図から分布の形を読み取ります。縦軸の切り取りや階級幅によって見た目の印象が変わることを示し、外れ値については、入力の誤り、測定条件の違い、別の母集団の混入、まれではあるが重要な観測値の可能性を区別します。
- 標本調査とデータの偏り — 母集団と標本を区別し、無作為抽出が標本の偏りを抑える方法であることと、無作為に選んでも標本誤差が残ることを示します。回答しない人による偏りや、特定の場所や時間にいる人だけを選ぶ偏りが、標本を大きくしても解消しないことを確かめ、数値を計算する前にデータの集め方を確認します。
- 条件付き確率とベイズの定理 — 条件を課したときの確率を、絞られた範囲の確率を分母として定義します。条件となる事象の確率がでない場合に限って定まることを明示したうえで、乗法定理とベイズの定理を導き、検査の陽性反応のように直感と計算が食い違う例で、原因の側の確率と結果の側の確率を区別します。
- 確率変数の期待値・分散 — 試行の結果に数を対応させたものとして確率変数を定め、確率分布、期待値、分散、標準偏差を定義します。期待値の線形性が独立性を仮定せずに成り立つことと、分散の加法性がとの独立性を仮定したときに成り立つこととを区別します。
- 二項分布 — 成功確率の試行を独立に回繰り返したときの成功回数が従う分布として、二項分布を導きます。各回の成否をとの値をとる確率変数へ分解し、期待値の線形性から期待値を、各回が独立であることによる分散の加法性から分散を求めます。
- 確率漸化式 — 着目する状態に回目にある確率をと置き、一歩先の遷移で場合分けして漸化式を立てます。状態の分け方、遷移の確率、初期条件を明示して一般項を求め、その値が以上以下に収まることと、を大きくしたときの極限を確かめます。
- 包除原理の一般形 — 任意個の有限集合の和集合の要素の個数を、符号が交互に変わる和として表します。和集合に属するどの要素もちょうど一度だけ数えられることを示し、直接には数えにくい対象への適用として、全員が自分宛て以外を受け取る配り方の個数を求めます。
発展
連続的な値をとる確率変数を対象とし、確率をグラフの下の面積として表す段階です。平均と標準偏差だけで形が定まる正規分布を用いると、標本平均の分布から母集団について述べることができます。あわせて、数列を一つの級数へまとめて扱う方法を置きます。各記事が扱う内容は、次のとおりです。
- 正規分布と標準化 — 連続的な値をとる確率変数では確率がグラフの下の面積として表されることを扱い、平均と標準偏差だけで形が定まる分布として正規分布を導入します。標準化によって、どの正規分布の確率計算も一つの表へ帰着させ、とがともに大きい場合に二項分布を正規分布で近似する方法も示します。
- 統計的推測 — 無作為抽出と、標本が大きいときに標本平均の分布を正規分布で近似することという二つの仮定を明示して、母平均と母比率の信頼区間を求めます。95 パーセントという数値が、同じ手順を繰り返して作った区間のうち母数を含むものの割合であり、得られた一本の区間に母数が入る確率ではないことを示します。仮説検定では、有意水準の意味と、帰無仮説を棄却しなかったことが帰無仮説の成立を示さないことを明示します。
- 母関数入門 — 数列をのべき級数の係数として並べたものを母関数と呼び、を、値を代入する変数としてではなく、係数の並びを表すための不定元として扱います。各要素の選び方を因子として掛け合わせ、係数を読むことで場合の数を求めます。漸化式を母関数についての方程式へ書き換えて解く手順も練習します。
応用
基礎で確立した数え方と確率の定義を用いて、より複雑な設定を扱う段階です。手順を覚えることではなく、問題の構造に応じて数え方と見方を選ぶことが課題になります。各記事が扱う内容は、次のとおりです。
- 数学と社会生活 — 社会における問いについて、何を変数とし、どの要因を無視すると仮定し、どのような関係式で結び、何を評価の基準とするのかを定めて、計算によって予測を求めます。得られた結果を現実の量へ戻し、条件を変えたときに結論がどれだけ動くかを確かめます。料金、人口、待ち時間、ネットワーク、調査に基づく意思決定を題材にします。
- ランダムウォークと漸化式の応用 — 各段階で確率的に位置が変わる過程を扱い、対称な場合に歩後の位置の標準偏差がの平方根になることを、各歩が独立であることによる分散の加法性から求めます。位置を状態、一歩の動きを遷移として漸化式を立て、吸収される点での値を境界条件として、到達確率と吸収されるまでの歩数の期待値を求めます。
- 期待値の線形性を使う技法 — 求めたい個数や回数を、事象が起こったときに、起こらないときにをとる確率変数の和として表し、各事象の確率を足すだけで期待値が求まることを示します。線形性が独立性を仮定せずに成り立つことを、分散の加法性が独立性の仮定のもとで成り立つことと対比し、分布を求めずに期待値だけを求めることができる場面を扱います。
- 二通りに数える — 同じ集合の要素の個数を異なる二つの方法で数え、両者が一致することから等式を導きます。等式を変形によって示すのではなく、両辺が同じものを数えていると述べる形の証明であることを、組合せに関する恒等式、格子経路、グラフの次数の総和を例に確かめます。どちらの数え方にも重複と数え落ちがないことを確かめる手順も含みます。
- 競技数学:組合せ・複雑な場合の数 — 数学オリンピック型の組合せの問題群を解きます。鳩の巣原理、包除原理、同じ対象を二通りに数える方法、不変量、極端原理、グラフとしての見方を用い、複数の技法を組み合わせる問題を扱います。鳩の巣原理について、何を対象とし何を箱とみなすかを決める段階は「雑多な話題」が扱います。
- 組合せの技法 — 最適値を問う問題が、構成によって下から評価することと、不可能性を証明して上から評価することの二つからなり、両者が一致したときにだけ最適値が定まることを示します。三角形を含まないグラフの辺数の上界のように、局所的な条件から全体の個数を評価する例を扱います。本記事は技法を整理し、問題そのものは「競技数学:組合せ・複雑な場合の数」で扱います。
学習到達点の確認方法
同じ題材であっても、本単元が確かめる内容は区分によって異なります。
- 基礎では、読者が数える対象と数え方を明示し、重複と数え落ちが生じない数え方を選ぶことができるかを確かめます。確率については、読者が標本空間の取り方と「同様に確からしい」という仮定を述べることができるか、条件を課したときに確率を測る分母が何であるかを示すことができるか、期待値の線形性と分散の加法性のそれぞれに要る仮定を区別することができるかを確かめます。データの扱いについては、読者が代表値を計算することに加えて、分布の形を読み取り、外れ値と標本の選ばれ方をどのように扱うかを説明することができるかを確かめます。
- 発展では、読者が標準化によって正規分布の確率を求めることができるかを確かめます。推定と検定については、読者が用いた仮定と結論の及ぶ範囲を述べることができるか、および信頼区間の 95 パーセントが何の割合であるのかを述べることができるかを確かめます。
- 応用では、読者が問題の構造に応じて、包除原理、との値をとる確率変数の和で表す方法、同じ集合を二通りに数える方法などから適したものを選ぶことができるかを確かめます。社会の問いを扱う場面では、読者が置いた仮定と評価の基準を述べ、得られた結果を現実の量へ戻して妥当性を検討することができるかを確かめます。
本単元は、演習に、場合の数、確率、期待値のように答えが一意に定まる計算問題を用います。統計的推測、データの扱い、社会の問いを数式で表す場面については、読者は、置いた仮定、手順、結論の限界を含む説明を書きます。数値が求まることと、その数値が問いに答えていることは別であるため、本単元は両者を分けて確かめます。
前後の単元との関係
- 集合と論理 — 同単元は、集合の記法と演算、および条件と集合の対応を扱います。本単元は、要素の個数を数える場面と、条件を課して考える範囲を絞る場面で、その記法を用います。
- 数と式の計算 — 同単元の「二項定理」は展開の計算を扱い、二項係数が組合せの数と一致することの説明を、本単元の「順列・組合せ」へ委ねます。本単元は、分散から標準偏差を求める場面で同単元の根号の計算を用います。
- 数列と極限 — 本単元は、確率漸化式、母関数、ランダムウォークにおいて、同単元で扱う漸化式の解法と級数の計算を用います。
- 初等整数論 — 同単元は、約数の個数やオイラー関数の計算で、本単元で扱う数え上げと包除原理を用います。
- 初等整数論ギャラリー — 同単元は、正の整数を正の整数の和として表す方法の個数を、本単元の「母関数入門」で導入する母関数の係数として求めます。
- 雑多な話題 — 同単元は、鳩の巣原理の応用、不変量、極端原理、彩色論法など、分野を横断して用いる方法を一つずつ取り上げます。本単元は、鳩の巣原理そのものの導入を扱います。
- 離散数学とアルゴリズム — 同単元は、本単元が計算として扱う数え上げの原理を全単射の構成として定義し直し、期待値の線形性を手続きの解析に用います。
- 測度と積分 — 同単元は、面積と積分を測度によって定義します。本単元がグラフの下の面積として扱う連続型の確率は、同単元で厳密に定まります。
- 確率論入門 — 同単元は、確率、独立性、期待値を測度論によって定義し、本単元が直感的に扱う概念を厳密にします。また、大数の法則と中心極限定理を証明します。本単元が近似として用いるこれらの主張は、同単元で根拠が与えられます。二項分布が正規分布に近づくことも、その特別な場合にあたります。
- 確率過程 — 同単元は、時間とともに変わる確率的な過程を一般に扱います。本単元のランダムウォークと確率漸化式は、その具体例にあたります。
- 数理統計 I — 同単元は、推定と検定の理論的な枠組みを扱います。本単元は、そのうち標本平均の分布に基づく推定と検定の手順だけを扱います。
この単元で扱わないこと
第一に、本単元は、測度論に基づく確率の定義を扱いません。標本空間、事象の-加法族、確率測度による定式化と、それに基づく期待値の定義は「確率論入門」が扱います。本単元は、有限個の場合の数の比と、グラフの下の面積としての確率を用います。
第二に、本単元は、グラフの下の面積そのものを測度によって定める扱いには立ち入りません。面積を測度によって定めることは「測度と積分」が扱います。
第三に、本単元は、大数の法則と中心極限定理を証明しません。本単元は、これらを標本平均の分布を正規分布で近似するための根拠として用いるにとどめます。二項分布が正規分布に近づくことの証明も扱いません。これらの証明は「確率論入門」が扱います。
第四に、本単元は、一般の確率過程とマルコフ連鎖の理論を扱いません。これらは「確率過程」が扱います。本単元は、ランダムウォークを、漸化式によって到達確率と歩数の期待値を求める範囲にとどめます。
第五に、本単元は、推定量の性質に関する一般論、検定の設計、多重比較を扱いません。これらは「数理統計 I」が扱います。
第六に、本単元は、母関数を形式的なべき級数として扱い、その収束には立ち入りません。
教育課程上の位置づけと参考年次
参考年次を日本の高校の学年で示すと、次のとおりです。数え上げと確率を扱う記事、すなわち「有限集合の要素の個数」「順列・組合せ」「確率の定義と「同様に確からしい」」「余事象・独立試行・反復試行」「条件付き確率とベイズの定理」は、数学Aの「場合の数と確率」に置かれ、高校1年から2年が目安です。「データの分析」と「データの可視化と外れ値」は数学Iの「データの分析」に置かれ、高校1年が目安です。「標本調査とデータの偏り」「二項分布」「正規分布と標準化」「統計的推測」は数学Bの「統計的な推測」に置かれ、高校2年から3年が目安です。「確率変数の期待値・分散」は、この二つの科目にまたがります。期待値は数学Aの「場合の数と確率」に、確率変数と確率分布、および分散と標準偏差は数学Bの「統計的な推測」に置かれます。「数学と社会生活」は、数学Aの「数学と人間の活動」および数学Bの「数学と社会生活」に対応します。
残る記事について、本単元は学年の目安を示しません。「鳩の巣原理」「確率漸化式」「包除原理の一般形」「母関数入門」「ランダムウォークと漸化式の応用」「期待値の線形性を使う技法」「二通りに数える」と競技数学の2記事には、日本の課程に対応する項目がありません。「確率漸化式」は、数学Aの確率と数学Bの数列を組み合わせた題材であり、単独の項目としては置かれません。
以上は本単元の中で読み進める順序の目安であって、各国の課程における学年配当ではありません。読者は、前提となる記事を読み終えていれば、目安より早い時期に読むことができます。
本単元の内容と各国の教育課程との主な対応は、次のとおりです。数え上げ、確率、統計は、多くの国で複数の科目に分かれて置かれます。
- 日本 — 高等学校学習指導要領(平成30年告示)の「数学A 場合の数と確率」「数学I データの分析」「数学B 統計的な推測」に主として対応します。数学と社会生活に関する内容は、「数学A 数学と人間の活動」および「数学B 数学と社会生活」に対応します。
- 韓国 — 2022改訂教育課程の選択科目「確率と統計(확률과 통계)」に主として対応します。場合の数、確率、統計的推測が同一科目にまとめて置かれます。
- 中国 — 普通高中课程方案和语文等学科课程标准(2017年版2020年修订)の必修課程の「概率」および「统计」と、選択性必修課程の「计数原理」および「概率与统计」に主として対応します。
- 米国 — 連邦教育省の説明のとおり、教育基準は州が定めます。比較資料として Common Core State Standards for Mathematicsを用いると、High Schoolの「Statistics and Probability」に対応します。同基準は、データの解釈、標本に基づく推測、条件付き確率と確率の規則、確率を用いた意思決定を扱います。
- フランス — lycée général et technologiqueの数学課程では、 secondeからterminaleまで各学年に「Statistiques et probabilités」が置かれます。同課程は、 premièreで確率変数と二項分布を、terminaleで標本抽出と大数の法則を扱います。
- ドイツ — 各州が学校課程を定め、 KMKが全国共通の到達基準を示します。 KMKの一般大学入学資格向け数学基準では、内容領域の一つである「Daten und Zufall(データと偶然)」に対応します。同基準は、条件付き確率、二項分布、仮説検定を扱います。
- イギリス(England) — GCE AS and A level mathematicsの「Statistics」に主として対応します。同課程は、標本抽出、データの表現と解釈、確率、二項分布と正規分布、仮説検定を扱います。順列と組合せは、 National Curriculum: mathematics programmes of studyの Key stage 4および二項展開との関連で扱われます。