1 定義と解の合成
定義 1.1 (ペル方程式).Dを平方数でない正の整数とする。整数解(x,y)を求める方程式
x2−Dy2=1をペル方程式という。(x,y)=(±1,0)は常に解であり、これを自明解という。
Dが平方数でD=k2と書ける場合には、
x2−Dy2=(x−ky)(x+ky)=1
となります。二つの整数の積が1になるのは両方が1、または両方が−1の場合だけなので、この場合には自明解しかありません。したがって、Dが平方数でないという仮定が必要です。
解の合成を記述するため、α=x+yDに対してαˉ=x−yD、N(α)=ααˉとおきます。このときN(α)=x2−Dy2です。
定理 1.2 (解の合成).Dを平方数でない正整数とする。(x1,y1)と(x2,y2)がともにx2−Dy2=1の整数解ならば、
(x1x2+Dy1y2, x1y2+x2y1)もペル方程式の解である。
証明.α1=x1+y1D、α2=x2+y2Dとおく。積を展開すると
α1α2=(x1+y1D)(x2+y2D)=(x1x2+Dy1y2)+(x1y2+x2y1)D,となる。共役をとると
α1α2=(x1x2+Dy1y2)−(x1y2+x2y1)D=(x1−y1D)(x2−y2D)=αˉ1αˉ2である。したがって
N(α1α2)=α1α2⋅α1α2=α1α2⋅αˉ1αˉ2=(α1αˉ1)(α2αˉ2)=N(α1)N(α2).が成り立つ。仮定よりN(α1)=N(α2)=1であるから、N(α1α2)=1である。これは主張の整数の組がx2−Dy2=1を満たすことを意味する。▨
非自明な正の解を一つ得ると、定理 1.2を繰り返し適用して無限個の解を作ることができます。残る問題は、最初の正の解を連分数から構成することと、その構成ですべての解を得られることを示すことです。
2 平方根の周期連分数
定理 2.1.Dを平方数でない正整数とし、a0=⌊D⌋とする。整数の組(Pk,Qk)と整数akを
P0=0,Q0=1,ak=⌊QkD+Pk⌋,Pk+1=akQk−Pk,Qk+1=QkD−Pk+12によって定める。この計算では常に
0≤Pk<D,Qk>0,Qk∣D−Pk2が成り立つ。また、(Pℓ,Qℓ)=(a0,1)となる最小の整数ℓ≥1が存在し、
D=[a0;a1,a2,…,aℓ],aℓ=2a0である。したがって、(Pk,Qk)=(a0,1)を初めて得た時点が一周期の計算の停止条件になる。
証明.P0=0、Q0=1とし、表示された漸化式によって各項を順に定める。Q0はD−P02を割る。Qk∣D−Pk2が成り立つとき、Pk+1≡−Pk(modQk)であるから、Qk∣D−Pk+12である。したがってQk+1は整数である。
αk=(D+Pk)/Qkとおく。ak=⌊αk⌋とPk+1=akQk−Pkを用いて分母を有理化すると
αk−ak1=D−Pk+1Qk=Qk+1D+Pk+1=αk+1となる。k=1ではP1=a0、Q1=D−a02>0であり、
Q1P1−D=−D+a01は−1より大きく0より小さい。またα1=1/(D−a0)>1である。αk>1かつ−1<(Pk−D)/Qk<0と仮定する。αk−akは0より大きく1より小さいので、
0<D−Pk+1<Qkである。また(Pk−D)/Qk−ak<−1であるからD+Pk+1>Qk>0である。よって∣Pk+1∣<Dであり、Qk+1=(D−Pk+12)/Qk>0である。さらに
αk+1=αk−ak1>1,Qk+1Pk+1−D=(Pk−D)/Qk−ak1である。右辺の分母は−1より小さいので
−1<Qk+1Pk+1−D<0となる。αk+1>1と最後の不等式を加え、Qk+1>0を用いるとPk+1>0が得られる。帰納法により、主張した整数性、正値、整除関係がすべてのkで成り立つ。
k≥1では、整数Pkは0<Pk<Dを満たし、正整数QkはD−Pk2の約数である。したがって、現れる組(Pk,Qk)の候補は有限個しかない。さらに−1<(Pk−D)/QkからPk+Qk>Dである。次の状態(P′,Q′)が分かれば、直前の状態の第二成分は
Q=Q′D−(P′)2によって定まる。直前の第一成分PはP≡−P′(modQ)とD−Q<P<Dを満たす。この長さQの区間には、同じ剰余をもつ整数は高々一つしかない。したがって、状態の移り方には逆向きにも分岐がない。有限個の状態を進む列は、最初の状態(P1,Q1)へ戻ってから同じ列を繰り返す。
(P1,Q1)=(a0,D−a02)の直前の状態ではQ=(D−a02)/Q1=1である。またD−1<P<Dを満たす整数はP=a0だけである。よって、ある最小のℓ≥1で(Pℓ,Qℓ)=(a0,1)となり、その次に(P1,Q1)が再び現れる。akは状態から一意に定まるので、a1,…,aℓが繰り返される。最後にaℓ=⌊D+a0⌋=2a0である。▨
定理 2.2.Dを平方数でない正整数とし、定理 2.1の周期長をℓとする。近似分数pk/qk=[a0;a1,…,ak]を
p−2=0,p−1=1,pk=akpk−1+pk−2,q−2=1,q−1=0,qk=akqk−1+qk−2によって計算すると、すべてのk≥0について
pk2−Dqk2=(−1)k+1Qk+1が成り立つ。したがって、pk2−Dqk2=1が初めて成り立つ添字は、ℓが偶数ならk=ℓ−1、ℓが奇数ならk=2ℓ−1である。
証明.pk,qkの漸化式から
pkqk−1−pk−1qk=(−1)k+1が帰納的に得られる。完全商αk+1=(D+Pk+1)/Qk+1を末尾に残して有限連分数を漸化式でまとめると
D=qkαk+1+qk−1pkαk+1+pk−1となる。αk+1を代入し、有理数部分とDの係数を比較すると
pk=Pk+1qk+Qk+1qk−1,Dqk=Pk+1pk+Qk+1pk−1を得る。したがって
pk2−Dqk2=pk(pk−Pk+1qk)−Qk+1pk−1qk=Qk+1(pkqk−1−pk−1qk)=(−1)k+1Qk+1.Qk+1=1なら、定理 2.1の証明で得たD−Qk+1<Pk+1<DによりPk+1=a0である。したがってQk+1=1となるのはk+1がℓの正の倍数である場合に限る。(−1)k+1=1も必要なので、条件を満たす最小のk+1は、ℓが偶数ならℓ、ℓが奇数なら2ℓである。
D=2では(P1,Q1)=(1,1)でℓ=1であり、指定された添字k=1ではp1/q1=[1;2]=3/2、32−2⋅22=1となる。D=3では(P1,Q1)=(1,2)、(P2,Q2)=(1,1)でℓ=2であり、指定された添字k=1ではp1/q1=[1;1]=2/1、22−3⋅12=1となる。二つの小さい場合でも添字は一致する。▨
以上により、周期を計算すれば非自明な正の解が得られます。次の定理では、その解が基本解であり、解を合成する方法ですべての整数解が得られることを示します。
定理 2.3 (ラグランジュの定理).Dを平方数でない正整数とする。ペル方程式は非自明な正整数解をもち、x+yD>1が最小となる正整数解(x,y)が存在する。この解を基本解と呼ぶ。定理 2.2が指定する近似分数が基本解を与える。基本解をε=x1+y1Dと書けば、すべての正整数解は
εn=xn+ynD(n=1,2,3,…)によって尽くされる。整数解全体は(±1,0)と、n≥1に対する(±xn,±yn)であり、二つの符号は独立に選べる。
証明.定理 2.2が指定する近似分数をp/qとすれば、p2−Dq2=1であり、p,qは正整数である。したがって非自明な正整数解が存在する。
正整数解(x,y)に対してx2−Dy2=1ならgcd(x,y)=1であり、
0<D−yx=y2(D+x/y)1<2y21である。ここで、無理数θ、整数c、正整数dについて、既約分数c/dが∣θ−c/d∣<1/(2d2)を満たすなら、c/dはθの近似分数であることを示す。θの近似分数をpj/qjとし、qj≤dとなる最大のjを取る。このときqj≤d<qj+1である。Q=qj、R=qj−1、t=[aj+1;aj+2,…]、a=⌊t⌋とおくと
θ=Qt+Rpjt+pj−1,qj+1=aQ+R,かつ0≤R≤Qである。連続する近似分数の行列式は±1なので、ある整数U,Vが存在して
(c,d)=U(pj,Q)+V(pj−1,R)と書ける。この表示と上の分数表示から
θ−dc=d(Qt+R)∣U−Vt∣を得る。
V=0なら、c/dが既約でd>0であることからU=1であり、c/d=pj/qjである。V=0とする。V<0ならd=UQ+VR≥QからU>0であり、2d∣U−Vt∣≥2Q(1+t)>Qt+Rである。V>0かつU≤0なら2d∣U−Vt∣≥2Qt>Qt+Rである。
U,V>0の場合には、d<aQ+Rから1≤U≤a−1である。2d(Vt−U)はVとともに増加するので、V=1の場合を調べれば足りる。r=R/Qとおくと、必要な不等式は
2(U+r)(t−U)≥t+rである。左辺と右辺の差はUについて下向きに開く二次式なので、1≤U≤a−1における最小値は端点で得られる。t=a+f、0<f<1と書けば、U=1での差は
t−2+r(2t−3)≥0,U=a−1での差は
a−2+(2a−3)f+r(1+2f)≥0である。したがってV=0のすべての場合に
θ−dc≥2d21となる。仮定に反するのでV=0であり、c/dは近似分数である。
この近似判定により、ペル方程式のすべての正整数解x/yはDの近似分数に現れる。定理 2.2は値1を初めて与える添字を特定しているので、そこで得る解をε=x1+y1Dとすれば、x1+y1D>1は正整数解の中で最小である。実際、t>1に対して(t−t−1)/(2D)は狭義に増加し、解ではy=(t−t−1)/(2D)であるから、より小さい解はより小さい分母をもつ。近似分数の分母は漸化式により添字とともに増加し、指定された近似分数より小さい分母はそれより前の添字にしか現れない。したがって、そのような解は存在しない。
α=x+yDを任意の正整数解とする。ε>1であり、εn≥1+n(ε−1)であるから、ある整数r≥0が存在して
εr≤α<εr+1となる。εr=A+BDと書けばε−r=A−BDであり、
β=αε−r=(xA−DyB)+(yA−xB)Dは整数係数をもち、1≤β<εかつββˉ=1を満たす。β=X+YDと書くと
X=2β+β−1≥1,Y=2Dβ−β−1≥0である。β>1なら(X,Y)は基本解より小さい非自明な正整数解となるので、基本解の最小性に反する。よってβ=1であり、α=εrである。
最後に、非自明な整数解(x,y)ではxとyはともに0でない。方程式はxとyのそれぞれの符号を変えても保たれるので、(∣x∣,∣y∣)に正整数解の分類を適用できる。これに自明解(±1,0)を加えると、主張した整数解全体が得られる。▨
3 具体例
例 3.1.D=2では2=[1;2]=[1;2,2,2,…]である。近似分数を計算すると
[1]=1,[1;2]=1+21=23.3/2に対応する(x,y)=(3,2)について
32−2×22=9−8=1であるから、この組が基本解である。定理 1.2により基本解を合成すると
(3+22)2=9+122+8=17+122であるから、次の解は(x,y)=(17,12)である。元の方程式へ代入すると
172−2×122=289−288=1となる。以後も(3+22)3,(3+22)4,…によって解が得られる。