§A4.12位数と原始根

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(mmと互いに素な)aaの、法mmに関する位数とは、aaのべきを掛け続けて初めて11に戻ってくるまでの歩数のことです。 べき乗a,a2,a3,…a, a^2, a^3, \dotsを法mmで見ていくと、いずれ必ず周期的に繰り返しますが、その最短周期こそが位数です。位数がちょうど法の「サイズ」いっぱいになる特別な元を原始根と呼び、これが modmmの乗法構造をまるごと1個の元から生成します。

1 位数の定義と基本性質

定義 1.1 (位数).mmを正整数、gcd⁡(a,m)=1\gcd(a, m) = 1とする。

ak≡1(modm)a^k \equiv 1 \pmod{m}

を満たす最小の正整数kkを、aaの(法mmに関する)位数といい、ord⁡m(a)\operatorname{ord}_m(a)(文脈が明らかなときは単にord⁡(a)\operatorname{ord}(a))と書く。

こんなkkが存在することは自明ではありませんが、オイラーの定理(合同式とオイラー関数、発展レベル)が「gcd⁡(a,m)=1\gcd(a,m)=1ならaφ(m)≡1(modm)a^{\varphi(m)} \equiv 1 \pmod m」を保証してくれるので、k=φ(m)k = \varphi(m)という候補が少なくとも1つ手に入り、最小値の存在が言えます。

命題 1.2.gcd⁡(a,m)=1\gcd(a, m) = 1とする。正整数nnについて

an≡1(modm)  ⟺  ord⁡(a)∣n.a^n \equiv 1 \pmod{m} \iff \operatorname{ord}(a) \mid n.

証明.d=ord⁡(a)d = \operatorname{ord}(a)とおく。

(⇐\Leftarrow)d∣nd \mid nならn=dkn = dkと書け、an=(ad)k≡1k=1(modm)a^n = (a^d)^k \equiv 1^k = 1 \pmod m。

(⇒\Rightarrow)an≡1(modm)a^n \equiv 1 \pmod mとする。除法の原理(基礎)よりn=qd+rn = qd + r,0≤r<d0 \le r < dを満たす整数q,rq, rがただ一組存在する。このとき

an=aqd+r=(ad)q ar≡1q ar=ar(modm)a^n = a^{qd + r} = (a^d)^q \, a^r \equiv 1^q \, a^r = a^r \pmod m

なので、仮定an≡1a^n \equiv 1と合わせてar≡1(modm)a^r \equiv 1 \pmod mを得る。ここでもしr>0r > 0なら、0<r<d0 < r < dを満たす正整数rrでar≡1a^r \equiv 1となってしまい、ddが「ak≡1a^k \equiv 1となる最小の正整数」であることに反する。よってr=0r = 0、すなわちn=qdn = qdでd∣nd \mid n。▨

系 1.3.gcd⁡(a,m)=1\gcd(a, m) = 1ならばord⁡(a)∣φ(m)\operatorname{ord}(a) \mid \varphi(m)。

証明. オイラーの定理よりaφ(m)≡1(modm)a^{\varphi(m)} \equiv 1 \pmod mなので、命題 1.2をn=φ(m)n = \varphi(m)に適用すればよい。▨

この系は実用上とても強力です。位数の候補を11から総当たりする代わりに、φ(m)\varphi(m)の約数だけを調べればよいことになります。

定義 1.4 (原始根).gcd⁡(g,m)=1\gcd(g, m) = 1かつord⁡m(g)=φ(m)\operatorname{ord}_m(g) = \varphi(m)のとき、ggを(法mmの)原始根という。

原始根ggは、そのべきg,g2,…,gφ(m)g, g^2, \dots, g^{\varphi(m)}が既約剰余系(mmと互いに素な剰余類の全体)をちょうど尽くします——11個の元から乗法群全体が生成されるわけです。

2 原始根の存在

すべての法に原始根があるわけではありません(注意 2.3)が、法が素数のときは必ず存在します。

定理 2.1.ppを素数とする。このとき法ppの原始根が存在する。

証明.ddをp−1p - 1の約数とし、1,2,…,p−11, 2, \dots, p-1のうち位数がちょうどddであるものの個数をψ(d)\psi(d)と書く。

ステップ 1(総和).系 1.3より、1≤a≤p−11 \le a \le p-1の位数は必ずp−1=φ(p)p - 1 = \varphi(p)の約数なので、

∑d∣p−1ψ(d)=p−1.\sum_{d \mid p-1} \psi(d) = p - 1.

ステップ 2(鍵となる事実).Z/pZ\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}は体であり、体上の多項式xd−1x^d - 1の根は高々dd個しかない(因数定理より)。したがって合同方程式xd≡1(modp)x^d \equiv 1 \pmod pの解は高々dd個。ここで用いた「根が1つ見つかるたびに1次式で割り切れる」という事実は「数と式の計算」の因数定理であり、それをZ/pZ\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}の上で使ってよい根拠(剰余類の全体が体になること、および体上の多項式の根の個数が次数を超えないこと)は本記事では認めて用います。環や体の言葉による一般的な扱いは「環と加群」が行います。

ステップ 3(ψ(d)>0\psi(d) > 0なら尽くされる). もし位数がちょうどddの元aaが1つでもあるとする。a,a2,…,ada, a^2, \dots, a^dのdd個は互いに相異なる(ai≡aja^i \equiv a^j,1≤i<j≤d1 \le i < j \le dとするとaj−i≡1a^{j-i} \equiv 1となるが0<j−i<d0 < j - i < dはddの最小性に反する)。しかも各(ai)d=(ad)i≡1(a^i)^d = (a^d)^i \equiv 1なので、これらdd個はすべてxd≡1(modp)x^d \equiv 1 \pmod pの解。ステップ 2 より解は高々dd個しかないから、a,a2,…,ada, a^2, \dots, a^dが解のすべてである。

ステップ 4(位数ddのものを数える).aia^iの位数はd/gcd⁡(i,d)d / \gcd(i, d)である(一般に巡回する元のべきの位数はこの公式に従う)。これがddに等しいのはgcd⁡(i,d)=1\gcd(i, d) = 1のときで、1≤i≤d1 \le i \le dの範囲にそのようなiiはちょうどφ(d)\varphi(d)個ある。位数ddの元はすべてステップ 3 のdd個の解の中にある(それ自身xd≡1x^d \equiv 1の解だから)ので、

ψ(d)>0  ⟹  ψ(d)=φ(d).\psi(d) > 0 \implies \psi(d) = \varphi(d).

一方ψ(d)=0\psi(d) = 0の場合もある。まとめると、すべてのd∣p−1d \mid p-1でψ(d)∈{0,φ(d)}\psi(d) \in \{0, \varphi(d)\}、特にψ(d)≤φ(d)\psi(d) \le \varphi(d)。

ステップ 5(等号の強制). オイラー関数の基本等式(発展レベル)

∑d∣p−1φ(d)=p−1\sum_{d \mid p-1} \varphi(d) = p - 1

と、ステップ 1 の∑d∣p−1ψ(d)=p−1\sum_{d \mid p-1} \psi(d) = p-1を見比べる。各項でψ(d)≤φ(d)\psi(d) \le \varphi(d)なのに総和が完全に一致するので、どのd∣p−1d \mid p-1でもψ(d)=φ(d)\psi(d) = \varphi(d) でなければならない(1つでもψ(d)<φ(d)\psi(d) < \varphi(d)なら左辺の総和が右辺より真に小さくなってしまう)。

特にd=p−1d = p - 1でψ(p−1)=φ(p−1)≥1>0\psi(p-1) = \varphi(p-1) \ge 1 > 0。すなわち位数がちょうどp−1=φ(p)p-1 = \varphi(p)の元が存在する——これが原始根である。▨

例 2.2.p=7p = 7でg=3g = 3の位数を調べる。

31≡3,32≡2,33≡6,34≡4,35≡5,36≡1(mod7).3^1 \equiv 3,\quad 3^2 \equiv 2,\quad 3^3 \equiv 6,\quad 3^4 \equiv 4,\quad 3^5 \equiv 5,\quad 3^6 \equiv 1 \pmod 7.

11から66が過不足なく1回ずつ現れ、位数はちょうど6=φ(7)6 = \varphi(7)。よって33は法77の原始根である。

注意 2.3. 原始根が存在する法は、1,2,4,pk,2pk1, 2, 4, p^k, 2p^k(ppは奇素数、k≥1k \ge 1)の形のものに限られることが知られている(証明は本記事では略す)。たとえばm=8m = 8には原始根が存在しない:φ(8)=4\varphi(8) = 4だが、奇数1,3,5,71, 3, 5, 7の平方はどれも

12≡32≡52≡72≡1(mod8)1^2 \equiv 3^2 \equiv 5^2 \equiv 7^2 \equiv 1 \pmod 8

となり、すべての元の位数が11か22にしかならず、位数44の元が存在し得ない。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の問いに答えよ。ord_p(a) は aka^k≡\equiv 1 (mod p) を満たす最小の正整数 k(a の法 p における位数)を表す。

解法の型ord_p(a) は必ず p−1 の約数(オイラーの定理+除法の原理)。ord_p(a) == p−1 のとき a は原始根で、原始根の個数は ϕ(p−1)\phi(p-1)

  1. 法 7 の原始根は全部でいくつあるか求めよ。

    #{ a∈(Z/7Z)×:ord⁡7(a)=6 }=?\#\{\, a \in (\mathbb{Z}/7\mathbb{Z})^{\times} : \operatorname{ord}_{7}(a) = 6 \,\} = ?
  2. 5 の法 19 における位数 ord_19(5) を求めよ。

    ord⁡19(5)=?\operatorname{ord}_{19}(5) = ?
  3. 8 の法 17 における位数 ord_17(8) を求めよ。

    ord⁡17(8)=?\operatorname{ord}_{17}(8) = ?
  4. 3 は法 17 の原始根であるか判定せよ。

    a=3,p=17:a は法 p の原始根か?a = 3, \quad p = 17 : \quad a \text{ は法 } p \text{ の原始根か?}
  5. 16 の法 19 における位数 ord_19(16) を求めよ。

    ord⁡19(16)=?\operatorname{ord}_{19}(16) = ?
  6. 4 は法 13 の原始根であるか判定せよ。

    a=4,p=13:a は法 p の原始根か?a = 4, \quad p = 13 : \quad a \text{ は法 } p \text{ の原始根か?}
  7. 2 は法 17 の原始根であるか判定せよ。

    a=2,p=17:a は法 p の原始根か?a = 2, \quad p = 17 : \quad a \text{ は法 } p \text{ の原始根か?}
  8. 8 の法 11 における位数 ord_11(8) を求めよ。

    ord⁡11(8)=?\operatorname{ord}_{11}(8) = ?
  9. 法 11 の原始根は全部でいくつあるか求めよ。

    #{ a∈(Z/11Z)×:ord⁡11(a)=10 }=?\#\{\, a \in (\mathbb{Z}/11\mathbb{Z})^{\times} : \operatorname{ord}_{11}(a) = 10 \,\} = ?
  10. 3 の法 7 における位数 ord_7(3) を求めよ。

    ord⁡7(3)=?\operatorname{ord}_{7}(3) = ?

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の問いに答えよ。ord_p(a) は aka^k≡\equiv 1 (mod p) を満たす最小の正整数 k(a の法 p における位数)を表す。

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