1 位数の定義と基本性質
定義 1.1 (位数).mを正整数、gcd(a,m)=1とする。
ak≡1(modm)を満たす最小の正整数kを、aの(法mに関する)位数といい、ordm(a)(文脈が明らかなときは単にord(a))と書く。
こんなkが存在することは自明ではありませんが、オイラーの定理(合同式とオイラー関数、発展レベル)が「gcd(a,m)=1ならaφ(m)≡1(modm)」を保証してくれるので、k=φ(m)という候補が少なくとも1つ手に入り、最小値の存在が言えます。
命題 1.2.gcd(a,m)=1とする。正整数nについて
an≡1(modm)⟺ord(a)∣n.
証明.d=ord(a)とおく。
(⇐)d∣nならn=dkと書け、an=(ad)k≡1k=1(modm)。
(⇒)an≡1(modm)とする。除法の原理(基礎)よりn=qd+r,0≤r<dを満たす整数q,rがただ一組存在する。このとき
an=aqd+r=(ad)qar≡1qar=ar(modm)なので、仮定an≡1と合わせてar≡1(modm)を得る。ここでもしr>0なら、0<r<dを満たす正整数rでar≡1となってしまい、dが「ak≡1となる最小の正整数」であることに反する。よってr=0、すなわちn=qdでd∣n。▨
系 1.3.gcd(a,m)=1ならばord(a)∣φ(m)。
証明. オイラーの定理よりaφ(m)≡1(modm)なので、命題 1.2をn=φ(m)に適用すればよい。▨
この系は実用上とても強力です。位数の候補を1から総当たりする代わりに、φ(m)の約数だけを調べればよいことになります。
定義 1.4 (原始根).gcd(g,m)=1かつordm(g)=φ(m)のとき、gを(法mの)原始根という。
原始根gは、そのべきg,g2,…,gφ(m)が既約剰余系(mと互いに素な剰余類の全体)をちょうど尽くします——1個の元から乗法群全体が生成されるわけです。
2 原始根の存在
すべての法に原始根があるわけではありません(注意 2.3)が、法が素数のときは必ず存在します。
定理 2.1.pを素数とする。このとき法pの原始根が存在する。
証明.dをp−1の約数とし、1,2,…,p−1のうち位数がちょうどdであるものの個数をψ(d)と書く。
ステップ 1(総和).系 1.3より、1≤a≤p−1の位数は必ずp−1=φ(p)の約数なので、
d∣p−1∑ψ(d)=p−1.ステップ 2(鍵となる事実).Z/pZは体であり、体上の多項式xd−1の根は高々d個しかない(因数定理より)。したがって合同方程式xd≡1(modp)の解は高々d個。ここで用いた「根が1つ見つかるたびに1次式で割り切れる」という事実は「数と式の計算」の因数定理であり、それをZ/pZの上で使ってよい根拠(剰余類の全体が体になること、および体上の多項式の根の個数が次数を超えないこと)は本記事では認めて用います。環や体の言葉による一般的な扱いは「環と加群」が行います。
ステップ 3(ψ(d)>0なら尽くされる). もし位数がちょうどdの元aが1つでもあるとする。a,a2,…,adのd個は互いに相異なる(ai≡aj,1≤i<j≤dとするとaj−i≡1となるが0<j−i<dはdの最小性に反する)。しかも各(ai)d=(ad)i≡1なので、これらd個はすべてxd≡1(modp)の解。ステップ 2 より解は高々d個しかないから、a,a2,…,adが解のすべてである。
ステップ 4(位数dのものを数える).aiの位数はd/gcd(i,d)である(一般に巡回する元のべきの位数はこの公式に従う)。これがdに等しいのはgcd(i,d)=1のときで、1≤i≤dの範囲にそのようなiはちょうどφ(d)個ある。位数dの元はすべてステップ 3 のd個の解の中にある(それ自身xd≡1の解だから)ので、
ψ(d)>0⟹ψ(d)=φ(d).一方ψ(d)=0の場合もある。まとめると、すべてのd∣p−1でψ(d)∈{0,φ(d)}、特にψ(d)≤φ(d)。
ステップ 5(等号の強制). オイラー関数の基本等式(発展レベル)
d∣p−1∑φ(d)=p−1と、ステップ 1 の∑d∣p−1ψ(d)=p−1を見比べる。各項でψ(d)≤φ(d)なのに総和が完全に一致するので、どのd∣p−1でもψ(d)=φ(d) でなければならない(1つでもψ(d)<φ(d)なら左辺の総和が右辺より真に小さくなってしまう)。
特にd=p−1でψ(p−1)=φ(p−1)≥1>0。すなわち位数がちょうどp−1=φ(p)の元が存在する——これが原始根である。▨
例 2.2.p=7でg=3の位数を調べる。
31≡3,32≡2,33≡6,34≡4,35≡5,36≡1(mod7).1から6が過不足なく1回ずつ現れ、位数はちょうど6=φ(7)。よって3は法7の原始根である。