1 変数分離形
dxdy=g(x)h(y)のように、右辺が「xの式」×「yの式」に分かれる微分方程式を変数分離形といいます。このとき、h(y)=0の範囲で∫h(y)dy=∫g(x)dx (+C)と解けます。h(y)1dxdy=g(x)の両辺をxで積分すると、左辺が置換積分で∫h(y)dyになるからです。dy,dxを形式的に移項して別々に積分する、と覚えると速い。積分定数は初期条件(x=x0でy=y0)で決めます。
2 例:指数的成長・減衰
代表例がdxdy=ky(変化の速さが今の量に比例)です。h(y)=y=0で変数分離すると∫ydy=∫kdx、すなわちlog∣y∣=kx+C、よってy=Aekx(A=±eC)。y≡0(h(y)=0の定数解)も解で、A=0として一般解に含まれます。人口増加・放射性崩壊(k<0)・ニュートンの冷却など、指数関数的な現象がこの一本の式から出てきます。exが「微分しても変わらない」性質がここで効いています。より本格的な存在一意性や解けない方程式の扱いは、大学の常微分方程式で展開されます。
例 2.1 (初期条件で積分定数を決める).y′=y、y(0)=2を解きます。k=1の場合なので、y=0の範囲でydy=dxと分けて積分するとlog∣y∣=x+C、すなわちy=Aexです。ここへ初期条件y(0)=2を入れるとA=2と決まり、求める解は
y=2exになります。定数解y≡0はy(0)=2を満たさないので、この初期条件のもとでは候補から外れます。
閑話休題:空のバケツは過去を語らない 微分方程式は「変化の法則から未来を予言する」道具ですが、その予言能力には面白い穴があります。底に穴の開いたバケツから水が抜けるとき、水位yはおよそdxdy=−kyに従います(トリチェリの法則)。時間を逆向きに見ればdxdy=kyで、いまy=0(空)だとしましょう。このバケツ、いつ空になったのかが方程式から復元できません。ずっと空のまま(y≡0)も解なら、「1分前まで水があって、ちょうど空になった」も「1時間前に空になった」も、すべて同じ現在(y=0)に行き着く正当な解だからです。実際、y′=kyはy≡0のほかに、任意の時刻cから立ち上がる解y=4k2(x−c)2(x≥c)を持ちます。解が1本に決まらないのです。
犯人はyがy=0の際(きわ)で「急峻すぎる」こと(傾きの変化率が無限大に発散する)です。逆に、右辺がそこそこ穏やかなら解はただ1本に決まる、という解の存在と一意性の定理が大学の常微分方程式で待っています。ニュートン力学の世界は「現在の状態が過去と未来を完全に決める」と語られがちですが、それは方程式の右辺の行儀のよさという数学的な条件あってのこと。バケツ1杯の水が、決定論の境界線を見せてくれます。