1 置換積分
置換積分では、合成関数の微分を逆にたどります。被積分関数の中に合成関数と内側の関数の導関数が現れているとき、内側の関数を新しい変数に選びます。
証明.F(g(x))を微分すると、合成関数の微分により
dxdF(g(x))=F′(g(x))g′(x)=f(g(x))g′(x)となる。したがってF∘gはf(g(x))g′(x)の原始関数である。▨
証明.fの原始関数をFとする。公式 1.1により、F∘gはf(g(x))g′(x)の原始関数である。したがって§C1.1 定理 3.1により
∫abf(g(x))g′(x)dx=F(g(b))−F(g(a))=∫g(a)g(b)f(t)dtとなる。g(a)>g(b)の場合は、端点を交換すると積分の符号が変わるので同じ等式が成り立つ。▨
定積分では、t=g(x)と置くときに被積分関数だけでなく端点もx=a,bからt=g(a),g(b)へ変えます。関数gが区間の途中で増加から減少へ変わる場合でも、公式はg′の符号を含むため、gの単調性を追加する必要はありません。
例 1.3. 不定積分
∫2xex2dxではt=x2と置くとdt=2xdxであるから、原始関数の一つはex2である。実際、
dxdex2=2xex2である。
また、定積分ではx=0,1がt=0,1に対応するので、
∫012xex2dx=∫01etdt=e−1となる。
2 部分積分
部分積分では、積の一方を微分し、他方を積分します。多項式と指数関数の積では、多項式を微分側に選ぶと次数が下がります。対数関数を含む積では、対数関数を微分側に選ぶと導関数が1/xになります。
証明.u(x)v(x)を微分すると、積の微分により
dxd(u(x)v(x))=u′(x)v(x)+u(x)v′(x)となる。右辺の第1項を移項すると、u(x)v(x)−∫u′(x)v(x)dxはu(x)v′(x)の原始関数になる。▨
証明.u(x)v(x)を微分すると
(uv)′(x)=u′(x)v(x)+u(x)v′(x)となる。両辺をaからbまで積分し、§C1.1 定理 3.1を左辺に用いると
u(b)v(b)−u(a)v(a)=∫abu′(x)v(x)dx+∫abu(x)v′(x)dxを得る。第1項を移項すれば求める等式になる。▨
例 2.3.u(x)=x、v′(x)=exと選ぶと、u′(x)=1、v(x)=exであるから
∫xexdx=xex−∫exdx=(x−1)ex+Cとなる。実際、
dxd((x−1)ex)=ex+(x−1)ex=xexである。
証明.x>0ならばlog∣x∣=logxであり、(logx)′=1/xである。x<0ならば∣x∣=−x>0であり、合成関数の微分により
dxdlog∣x∣=dxdlog(−x)=−x−1=x1となる。0をまたぐ区間では1/xが定義されないため、正側と負側の原始関数を一つの積分定数で結ぶ条件はない。▨
3 積分による増加の速さの比較
不等式を有限区間で積分すると、新しい不等式を得ることができます。指数関数と累乗の比較では、0からxまでの区間を用いるため、以下の主張ではx>0を仮定します。
定理 3.1.nを正の整数とする。すべての実数x>0について
ex>n!xnが成り立つ。
証明.n=1とし、x>0を取る。0≤t≤xではet≥1であるから、両辺を0からxまで積分すると
ex−1=∫0xetdt≥∫0x1dt=xとなる。したがってex≥x+1>x=x1/1!である。
ある正の整数nについて、すべてのx>0でex>xn/n!が成り立つと仮定する。任意のx>0を取ると、0<t≤xでは帰納法の仮定によりet>tn/n!であり、t=0でもe0=1>0=0n/n!である。したがって
ex−1=∫0xetdt≥∫0xn!tndt=(n+1)!xn+1となる。ゆえにex≥1+xn+1/(n+1)!>xn+1/(n+1)!である。数学的帰納法により、すべての正の整数nについて主張が成り立つ。▨
定理 3.2.kを正の整数とする。このとき
x→∞limexxk=0,x→∞limxlogx=0が成り立つ。
証明.x>0に対して定理 3.1をn=k+1として用いると
0<exxk<x(k+1)!となる。kは固定されているので(k+1)!は定数であり、はさみうちの原理により第1の極限を得る。
x>1に対してt=logxと置くと、x=etであり、x→∞のときt→∞である。したがって
xlogx=ett⟶0となる。最後の極限は第1の極限でk=1とした場合である。▨
閑話休題:初等関数で表すことができない原始関数e−x2には、有限回の四則演算、合成、指数関数、対数関数などからなる初等関数として表される原始関数が存在しない。この事実は、置換積分や部分積分の選び方がまだ見つかっていないという意味ではなく、リウヴィルの定理によって不可能であることが示される例である。
一方、有理関数の原始関数は部分分数分解によって有理関数、対数関数および逆三角関数を用いて構成することができる。より広い初等関数については、微分体の設定と必要な代数的判定のもとで、初等関数の原始関数が存在するかを判定し、存在する場合に構成するリッシュの方法がある。したがって、個々の積分に対する技法の選択と、原始関数が初等関数で表されるかという決定問題は区別する必要がある。
4 技法を選ぶときの確認
- 置換積分では、合成の内側に選んだ関数の導関数が被積分関数に含まれているかを確かめます。定積分では、新しい変数に合わせて両端点も変えます。
- 部分積分では、どちらを微分すれば積分が簡単になるかを確かめます。多項式と指数関数の積では、多項式を微分側に選ぶのが基本です。
- 被積分関数が合成関数と内側の導関数の積なら置換積分を、二つの因子の積で一方を微分すると簡単になるなら部分積分を検討します。公式を用いた後に被積分関数が複雑になった場合は、選択を見直します。
- 不等式を積分するときは、積分区間の向きを確かめます。0からxまで積分して大小を保つ議論ではx>0が必要です。