1 完全数を定める
定義 1.1 (約数の総和と完全数). 正の整数nの正の約数の総和をσ(n)と書く。σ(n)=2nを満たす正の整数nを完全数という。
σ(n)はn自身も含めた総和なので、σ(n)=2nは「n自身を除く正の約数の総和がnに等しい」ことと同じ内容です。
例 1.2 (小さい完全数).6の正の約数は1,2,3,6であり、σ(6)=12=2⋅6である。
28の正の約数は1,2,4,7,14,28であり、σ(28)=56=2⋅28である。
496=24⋅31と8128=26⋅127も完全数である。
これらを2のべきと奇数の積に分けると、6=21⋅3、28=22⋅7、496=24⋅31、8128=26⋅127となります。奇数の側の3,7,31,127はいずれも素数であり、しかも3=22−1、7=23−1、31=25−1、127=27−1と、2のべきから1を引いた形をしています。さらに、2のべきの指数と、2p−1のpの間には21⋅(22−1)、22⋅(23−1)、24⋅(25−1)、26⋅(27−1)という関係があります。そこで、偶数の完全数が2p−1(2p−1)の形に限るのではないか、と予想することができます。以下では、この予想を二つの主張に分けて証明します。上の四つの計算は予想を立てる手段であって、すべての場合についての証明ではありません。
2 約数の総和を計算する道具
一つめは等比数列の和です。二つめは、素数qの正の約数が1とqに限ることから従います。三つめは、gcd(m,n)=1のときmnの各正の約数がmの正の約数とnの正の約数の積として一通りに書くことができることから従います。この三つは、いずれも素数と素因数分解で導かれます。
3 十分であること
定理 3.1 (ユークリッドによる構成).pを正の整数とし、2p−1が素数であるとする。このときn=2p−1(2p−1)は完全数である。
証明.q=2p−1とおく。qは素数であり、qは奇数であるからgcd(2p−1,q)=1である。公式 2.1を用いると
σ(n)=σ(2p−1)σ(q)=(2p−1)(q+1)=q⋅2p=2⋅2p−1q=2nとなる。よってnは完全数である。▨
なお、p=1のときは21−1=1が素数ではないので、この定理の仮定を満たしません。したがって、この構成から得られる完全数はp≥2に対応するものだけであり、いずれも偶数です。
4 2p−1が素数になる場合
2p−1という形の数について、指数pが満たすべき条件があります。
定理 4.1 (メルセンヌ数が素数であるための必要条件).kを2以上の整数とする。2k−1が素数であれば、kは素数である。
証明.kが合成数であると仮定し、k=ab(a>1、b>1)と書く。このとき
2k−1=(2a)b−1=(2a−1)(1+2a+22a+⋯+2a(b−1))が成り立つ。a>1より2a−1≥3であり、b>1より右側の因数は1+2a≥5である。したがって2k−1は合成数である。対偶により、2k−1が素数ならばkは素数である。▨
定義 4.2 (メルセンヌ素数). 素数pに対して2p−1が素数であるとき、2p−1をメルセンヌ素数という。
例 4.4 (メルセンヌ素数と、対応する完全数).p=2,3,5,7に対して2p−1は3,7,31,127となり、いずれも素数である。定理 3.1から、次の完全数が得られる。
| p |
2p−1 |
2p−1(2p−1) |
| 2 |
3 |
6 |
| 3 |
7 |
28 |
| 5 |
31 |
496 |
| 7 |
127 |
8128 |
| 13 |
8191 |
33550336 |
p=11は表に現れない。注意 4.3のとおり、211−1が素数ではないからである。
5 必要であること
定理 3.1は、メルセンヌ素数から完全数を作る方法を与えました。逆に、偶数の完全数がその形のものに限ることを、オイラーが示しました。
定理 5.1 (偶数の完全数はこの形に限る).nを偶数の完全数とする。このとき2p−1が素数であるような素数pが存在して、n=2p−1(2p−1)と書くことができる。
証明.nは偶数であるから、k≥1と奇数mを用いてn=2kmと書く。2kとmは互いに素であるから、公式 2.1より
σ(n)=σ(2k)σ(m)=(2k+1−1)σ(m)である。nは完全数であるからσ(n)=2n=2k+1mであり、
(2k+1−1)σ(m)=2k+1mを得る。したがって2k+1−1は2k+1mを割り切る。2k+1−1は奇数であるからgcd(2k+1−1,2k+1)=1であり、素因数分解の一意性により2k+1−1はmを割り切る。正の整数Mを
m=(2k+1−1)Mによって定める。これを上の等式へ代入して2k+1−1で割ると
σ(m)=2k+1M=(2k+1−1)M+M=m+Mを得る。
Mとmはどちらもmの正の約数である。k≥1より2k+1−1≥3であるからM<mである。M>1と仮定すると、1,M,mはmの相異なる三つの正の約数となり、
σ(m)≥1+M+m>m+Mとなる。これはσ(m)=m+Mと両立しないので、M>1という仮定を棄却する。よってM=1であり、m=2k+1−1かつσ(m)=m+1である。正の約数の総和がm+1であるから、mの正の約数は1とmだけである。m≥3なので、mは素数である。
p=k+1とおくと、m=2p−1は素数であり、n=2p−1(2p−1)である。定理 4.1によりpは素数である。▨
6 一対一の対応
定理 6.1 (偶数の完全数とメルセンヌ素数の対応). メルセンヌ素数qをq=2p−1と表す素数pは一意に定まる。このqへ2p−1qを対応させる写像は、メルセンヌ素数の全体から偶数の完全数の全体への一対一の対応である。
証明.2p−1=2p′−1ならば2p=2p′であるからp=p′である。したがって、メルセンヌ素数qをq=2p−1と表す素数pは一意に定まる。
定理 3.1により、q=2p−1に対応する2p−1qは偶数の完全数である。定理 5.1により、すべての偶数の完全数がこの写像の値として得られる。
二つのメルセンヌ素数q=2p−1とq′=2p′−1の像が等しいと仮定する。すなわち2p−1q=2p′−1q′とする。qとq′は奇数であるから、素因数分解の一意性により両辺の2の指数が一致し、p−1=p′−1である。したがってp=p′であり、q=q′である。▨
7 未解決のまま残っている問い
ここまでで示したのは、偶数の完全数についての完全な記述です。奇数の完全数については、事情がまったく異なります。