§C3.3偶数の完全数とメルセンヌ素数

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偶数の完全数とメルセンヌ素数では、偶数の完全数が2p−1(2p−1)2^{p-1}(2^p-1)の形であり、2p−12^p-1が素数である場合と一対一に対応することを扱います。奇数の完全数が存在するかどうかは未解決です。

1 完全数を定める

定義 1.1 (約数の総和と完全数). 正の整数nnの正の約数の総和をσ(n)\sigma(n)と書く。σ(n)=2n\sigma(n) = 2nを満たす正の整数nnを完全数という。

σ(n)\sigma(n)はnn自身も含めた総和なので、σ(n)=2n\sigma(n) = 2nは「nn自身を除く正の約数の総和がnnに等しい」ことと同じ内容です。

例 1.2 (小さい完全数).66の正の約数は1,2,3,61, 2, 3, 6であり、σ(6)=12=2⋅6\sigma(6) = 12 = 2 \cdot 6である。

2828の正の約数は1,2,4,7,14,281, 2, 4, 7, 14, 28であり、σ(28)=56=2⋅28\sigma(28) = 56 = 2 \cdot 28である。

496=24⋅31496 = 2^4 \cdot 31と8128=26⋅1278128 = 2^6 \cdot 127も完全数である。

これらを22のべきと奇数の積に分けると、6=21⋅36 = 2^1 \cdot 3、28=22⋅728 = 2^2 \cdot 7、496=24⋅31496 = 2^4 \cdot 31、8128=26⋅1278128 = 2^6 \cdot 127となります。奇数の側の3,7,31,1273, 7, 31, 127はいずれも素数であり、しかも3=22−13 = 2^2 - 1、7=23−17 = 2^3 - 1、31=25−131 = 2^5 - 1、127=27−1127 = 2^7 - 1と、22のべきから11を引いた形をしています。さらに、22のべきの指数と、2p−12^p - 1のppの間には21⋅(22−1)2^1 \cdot (2^2-1)、22⋅(23−1)2^2 \cdot (2^3-1)、24⋅(25−1)2^4 \cdot (2^5-1)、26⋅(27−1)2^6 \cdot (2^7-1)という関係があります。そこで、偶数の完全数が2p−1(2p−1)2^{p-1}(2^p - 1)の形に限るのではないか、と予想することができます。以下では、この予想を二つの主張に分けて証明します。上の四つの計算は予想を立てる手段であって、すべての場合についての証明ではありません。

2 約数の総和を計算する道具

公式 2.1 (約数の総和).k≥0k \ge 0について

σ(2k)=1+2+⋯+2k=2k+1−1\sigma(2^k) = 1 + 2 + \cdots + 2^k = 2^{k+1} - 1

が成り立つ。またqqが素数であればσ(q)=q+1\sigma(q) = q + 1である。さらに、mmとnnが互いに素であればσ(mn)=σ(m) σ(n)\sigma(mn) = \sigma(m)\,\sigma(n)が成り立つ。

一つめは等比数列の和です。二つめは、素数qqの正の約数が11とqqに限ることから従います。三つめは、gcd⁡(m,n)=1\gcd(m,n) = 1のときmnmnの各正の約数がmmの正の約数とnnの正の約数の積として一通りに書くことができることから従います。この三つは、いずれも素数と素因数分解で導かれます。

3 十分であること

定理 3.1 (ユークリッドによる構成).ppを正の整数とし、2p−12^p - 1が素数であるとする。このときn=2p−1(2p−1)n = 2^{p-1}(2^p - 1)は完全数である。

証明.q=2p−1q=2^p-1とおく。qqは素数であり、qqは奇数であるからgcd⁡(2p−1,q)=1\gcd(2^{p-1},q)=1である。公式 2.1を用いると

σ(n)=σ(2p−1) σ(q)=(2p−1)(q+1)=q⋅2p=2⋅2p−1q=2n\sigma(n) = \sigma(2^{p-1})\,\sigma(q) = (2^p - 1)(q + 1) = q \cdot 2^p = 2 \cdot 2^{p-1} q = 2n

となる。よってnnは完全数である。▨

なお、p=1p = 1のときは21−1=12^1 - 1 = 1が素数ではないので、この定理の仮定を満たしません。したがって、この構成から得られる完全数はp≥2p \ge 2に対応するものだけであり、いずれも偶数です。

4 2p−12^p - 1が素数になる場合

2p−12^p - 1という形の数について、指数ppが満たすべき条件があります。

定理 4.1 (メルセンヌ数が素数であるための必要条件).kkを22以上の整数とする。2k−12^k - 1が素数であれば、kkは素数である。

証明.kkが合成数であると仮定し、k=abk=ab(a>1a>1、b>1b>1)と書く。このとき

2k−1=(2a)b−1=(2a−1)(1+2a+22a+⋯+2a(b−1))2^k - 1 = (2^a)^b - 1 = (2^a - 1)\bigl(1 + 2^a + 2^{2a} + \cdots + 2^{a(b-1)}\bigr)

が成り立つ。a>1a>1より2a−1≥32^a-1\ge3であり、b>1b>1より右側の因数は1+2a≥51+2^a\ge5である。したがって2k−12^k-1は合成数である。対偶により、2k−12^k-1が素数ならばkkは素数である。▨

定義 4.2 (メルセンヌ素数). 素数ppに対して2p−12^p - 1が素数であるとき、2p−12^p - 1をメルセンヌ素数という。

注意 4.3 (逆は成り立たない).定理 4.1の逆は成り立たない。p=11p = 11は素数であるが、211−1=2047=23⋅892^{11} - 1 = 2047 = 23 \cdot 89であり、素数ではない。したがって、素数ppを選んでも2p−12^p - 1が素数になるとは限らない。

例 4.4 (メルセンヌ素数と、対応する完全数).p=2,3,5,7p = 2, 3, 5, 7に対して2p−12^p - 1は3,7,31,1273, 7, 31, 127となり、いずれも素数である。定理 3.1から、次の完全数が得られる。

pp 2p−12^p - 1 2p−1(2p−1)2^{p-1}(2^p-1)
22 33 66
33 77 2828
55 3131 496496
77 127127 81288128
1313 81918191 3355033633550336

p=11p = 11は表に現れない。注意 4.3のとおり、211−12^{11} - 1が素数ではないからである。

5 必要であること

定理 3.1は、メルセンヌ素数から完全数を作る方法を与えました。逆に、偶数の完全数がその形のものに限ることを、オイラーが示しました。

定理 5.1 (偶数の完全数はこの形に限る).nnを偶数の完全数とする。このとき2p−12^p - 1が素数であるような素数ppが存在して、n=2p−1(2p−1)n = 2^{p-1}(2^p - 1)と書くことができる。

証明.nnは偶数であるから、k≥1k\ge1と奇数mmを用いてn=2kmn=2^kmと書く。2k2^kとmmは互いに素であるから、公式 2.1より

σ(n)=σ(2k) σ(m)=(2k+1−1) σ(m)\sigma(n) = \sigma(2^k)\,\sigma(m) = (2^{k+1} - 1)\,\sigma(m)

である。nnは完全数であるからσ(n)=2n=2k+1m\sigma(n)=2n=2^{k+1}mであり、

(2k+1−1) σ(m)=2k+1m(2^{k+1} - 1)\,\sigma(m) = 2^{k+1} m

を得る。したがって2k+1−12^{k+1}-1は2k+1m2^{k+1}mを割り切る。2k+1−12^{k+1}-1は奇数であるからgcd⁡(2k+1−1,2k+1)=1\gcd(2^{k+1}-1,2^{k+1})=1であり、素因数分解の一意性により2k+1−12^{k+1}-1はmmを割り切る。正の整数MMを

m=(2k+1−1)Mm = (2^{k+1} - 1) M

によって定める。これを上の等式へ代入して2k+1−12^{k+1}-1で割ると

σ(m)=2k+1M=(2k+1−1)M+M=m+M\sigma(m) = 2^{k+1} M = (2^{k+1} - 1)M + M = m + M

を得る。

MMとmmはどちらもmmの正の約数である。k≥1k\ge1より2k+1−1≥32^{k+1}-1\ge3であるからM<mM<mである。M>1M>1と仮定すると、1,M,m1,M,mはmmの相異なる三つの正の約数となり、

σ(m)≥1+M+m>m+M\sigma(m) \ge 1 + M + m > m + M

となる。これはσ(m)=m+M\sigma(m)=m+Mと両立しないので、M>1M>1という仮定を棄却する。よってM=1M=1であり、m=2k+1−1m=2^{k+1}-1かつσ(m)=m+1\sigma(m)=m+1である。正の約数の総和がm+1m+1であるから、mmの正の約数は11とmmだけである。m≥3m\ge3なので、mmは素数である。

p=k+1p=k+1とおくと、m=2p−1m=2^p-1は素数であり、n=2p−1(2p−1)n=2^{p-1}(2^p-1)である。定理 4.1によりppは素数である。▨

6 一対一の対応

定理 6.1 (偶数の完全数とメルセンヌ素数の対応). メルセンヌ素数qqをq=2p−1q=2^p-1と表す素数ppは一意に定まる。このqqへ2p−1q2^{p-1}qを対応させる写像は、メルセンヌ素数の全体から偶数の完全数の全体への一対一の対応である。

証明.2p−1=2p′−12^p-1=2^{p'}-1ならば2p=2p′2^p=2^{p'}であるからp=p′p=p'である。したがって、メルセンヌ素数qqをq=2p−1q=2^p-1と表す素数ppは一意に定まる。

定理 3.1により、q=2p−1q=2^p-1に対応する2p−1q2^{p-1}qは偶数の完全数である。定理 5.1により、すべての偶数の完全数がこの写像の値として得られる。

二つのメルセンヌ素数q=2p−1q=2^p-1とq′=2p′−1q'=2^{p'}-1の像が等しいと仮定する。すなわち2p−1q=2p′−1q′2^{p-1}q=2^{p'-1}q'とする。qqとq′q'は奇数であるから、素因数分解の一意性により両辺の22の指数が一致し、p−1=p′−1p-1=p'-1である。したがってp=p′p=p'であり、q=q′q=q'である。▨

7 未解決のまま残っている問い

ここまでで示したのは、偶数の完全数についての完全な記述です。奇数の完全数については、事情がまったく異なります。

注意 7.1 (奇数の完全数とメルセンヌ素数の個数). 奇数の完全数が存在するかどうかは、未解決の問題である。本記事は、この問いを問いとして述べるにとどめ、存在するとも存在しないとも述べない。定理 5.1の証明はnnが偶数であることをn=2kmn = 2^k m(k≥1k \ge 1)と書く最初の段階で用いており、奇数のnnにはそのまま適用することができない。

メルセンヌ素数が無限に存在するかどうかも、未解決の問題である。定理 6.1により、この問いは、偶数の完全数が無限に存在するかという問いと同じ内容である。

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