1 量化子が及ぶ範囲
∀xや∃xは、その後ろに続く部分に対して働きます。この働く範囲を、その量化子のスコープと呼びます。スコープは括弧で示します。
∀x(P(x)⇒Q(x))と(∀xP(x))⇒Q(x)
の二つは別の命題です。前者では∀xが条件文全体に及んでおり、後者ではP(x)にしか及んでいないため、Q(x)のxは量化されていません。括弧を省いて二通りに読むことができる式を書かず、どこまでが量化子の範囲であるかを明示します。
量化子が二つ以上並ぶときは、左から順に読みます。∀x∃yP(x,y)は、「まず任意のxが与えられ、それを見てからyを選ぶ」という順序を表します。
2 順序を変えると意味が変わる
例 2.1. 次の二つを見比べます(x、yは実数の範囲を動きます)。
- ∀x∃y (y>x):「どのようなxに対しても、xに応じて選んでよいあるyが存在してy>xとなる」——真です。y=x+1とすればよいからです。
- ∃y∀x (y>x):「あるyが存在して、すべてのxに対してy>xとなる」——
偽です。すべての実数より大きい実数は存在しないからです。
内側の条件はどちらもy>xで同じですが、量化子の順序だけで真偽が逆転しました。違いは、yをxに応じて選ぶことができるのか、それともxより先にyを一つ固定するのかという点にあります。∀x∃yでは、yはxに依存してよく、xごとに別のyを取ることができます。∃y∀xでは、yを先に一つ決めた後ですべてのxを見るので、yはxに依存することができません。
3 一方向の含意だけは常に成り立つ
順序を自由に交換することはできませんが、一方向の含意は常に成り立ちます。
定理 3.1. 任意の述語Pに対し∃y∀xP(x,y)⇒∀x∃yP(x,y)が成り立つ。逆向きの含意は一般には成り立たない。
証明. 前提より、すべてのxについてP(x,y0)を満たすy0が一つ存在します。すると、各xに対してy=y0が∃yP(x,y)を満たすので、∀x∃yP(x,y)が成り立ちます。逆向きの含意が成り立たないことは、例 2.1が示しています。そこでは∀x∃y(y>x)が真であるのに∃y∀x(y>x)は偽です。▨
すべてのxに共通して使うことができるyが一つあるのなら、xごとにyを選ぶことも当然することができます。逆に、xごとにyを選ぶことができるからといって、すべてのxに共通するyが取れるとはかぎりません。
なお、∀どうし、∃どうしの入れ替えは意味を変えません。∀x∀yと∀y∀xは同じ命題であり、∃についても同様です。注意が必要なのは、∀と∃が隣り合っている場合だけです。