§E14.20正規線形モデルと分散分析

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複数の肥料を用いた区画の収量を比較するとき、観測値の変動には肥料間の平均差と同じ肥料を用いた区画間のばらつきが含まれる。群平均を比較するだけでは、平均差として説明される変動と、標本ごとに残る変動を分離することができず、群数が残差の自由度をどのように定めるかも明らかにならない。

正規線形モデルでは、許される平均ベクトルの全体を線形部分空間として表し、観測ベクトルの直交射影を当てはめ値、その直交成分を残差とする。残差が属する直交補空間の次元が誤差の自由度を与え、平均空間が入れ子になった二つのモデルでは、射影の差が追加した説明成分を与える。この幾何学的な記述は、回帰と一元配置分散分析に現れる平方和分解および F 検定を統一する基本的な枠組みである。本記事では、直交射影による正規線形モデルの推測と入れ子モデルの比較を解説する。

1 正規平均空間と直交射影

定義 1.1.M⊆Rn\mathcal M\subseteq\R^nを線形部分空間とし、σ2>0\sigma^2>0とする。観測ベクトルYYが、ある未知のμ∈M\mu\in\mathcal Mに対して

Y∼Nn(μ,σ2In)Y\sim N_n(\mu,\sigma^2I_n)

に従うとき、この統計モデルを平均空間M\mathcal Mをもつ正規線形モデル (normal linear model) という。

定理 1.2.M⊆Rn\mathcal M\subseteq\R^nを次元r<nr<nの線形部分空間とし、PPをM\mathcal Mへの直交射影とする。σ2>0\sigma^2>0、μ∈M\mu\in\mathcal Mとし、Y∼Nn(μ,σ2In)Y\sim N_n(\mu,\sigma^2I_n)とする。このとき、当てはめ値μ^=PY\widehat\mu=PYと残差e=(In−P)Ye=(I_n-P)Yは独立であり、

∥e∥2σ2∼χn−r2\frac{\lVert e\rVert^2}{\sigma^2}\sim\chi^2_{n-r}

が成り立つ。したがってs2=∥e∥2/(n−r)s^2=\lVert e\rVert^2/(n-r)はσ2\sigma^2の不偏推定量である。

証明.Z=(Y−μ)/σZ=(Y-\mu)/\sigmaとおくとZ∼Nn(0,In)Z\sim N_n(0,I_n)であり、Pμ=μP\mu=\muであるから

μ^=μ+σPZ,e=σ(In−P)Z\widehat\mu=\mu+\sigma PZ, \qquad e=\sigma(I_n-P)Z

を得る。PPとIn−PI_n-Pは実対称冪等行列であり、P(In−P)=0P(I_n-P)=0である。§E14.3 定理 3.1によりPZPZと(In−P)Z(I_n-P)Zは独立であり、In−PI_n-Pの階数はn−r>0n-r>0なので

∥(In−P)Z∥2∼χn−r2\lVert(I_n-P)Z\rVert^2\sim\chi^2_{n-r}

が成り立つ。アフィン変換は独立性を保つため、μ^\widehat\muとeeは独立である。さらに§E14.3 定義 2.2 (1)によりカイ二乗分布の平均は自由度に等しいから、E[s2]=σ2E[s^2]=\sigma^2となる。▨

2 入れ子モデルの比較

定理 2.1.M0⊊M1⊆Rn\mathcal M_0\subsetneq\mathcal M_1\subseteq\R^nを線形部分空間とし、rj=dim⁡Mjr_j=\dim\mathcal M_jが

0≤r0<r1<n0\leq r_0<r_1<n

を満たすとする。PjP_jをMj\mathcal M_jへの直交射影とし、RSS⁡j=∥(In−Pj)Y∥2\operatorname{RSS}_j=\lVert(I_n-P_j)Y\rVert^2とおく。σ2>0\sigma^2>0、0<α<10<\alpha<1とし、帰無仮説H0:μ∈M0H_0:\mu\in\mathcal M_0のもとでY∼Nn(μ,σ2In)Y\sim N_n(\mu,\sigma^2I_n)とする。RSS⁡1=0\operatorname{RSS}_1=0の標本点では次のFFを零と定める。このとき

F=(RSS⁡0−RSS⁡1)/(r1−r0)RSS⁡1/(n−r1)∼Fr1−r0,n−r1F=\frac{(\operatorname{RSS}_0-\operatorname{RSS}_1)/(r_1-r_0)}{\operatorname{RSS}_1/(n-r_1)} \sim F_{r_1-r_0,n-r_1}

が成り立ち、RSS⁡0−RSS⁡1\operatorname{RSS}_0-\operatorname{RSS}_1とRSS⁡1\operatorname{RSS}_1は独立である。したがって、FFがFr1−r0,n−r1F_{r_1-r_0,n-r_1}分布の上側α\alpha点より大きいときにH0H_0を棄却する規則は、有意水準α\alphaの検定である。

証明.P1P0=P0P1=P0P_1P_0=P_0P_1=P_0であるから、P1−P0P_1-P_0はM1∩M0⊥\mathcal M_1\cap\mathcal M_0^\perpへの直交射影であり、階数はr1−r0r_1-r_0である。また、

(P1−P0)(In−P1)=0(P_1-P_0)(I_n-P_1)=0

である。直交分解

(In−P0)Y=(P1−P0)Y+(In−P1)Y(I_n-P_0)Y=(P_1-P_0)Y+(I_n-P_1)Y

により

RSS⁡0−RSS⁡1=∥(P1−P0)Y∥2\operatorname{RSS}_0-\operatorname{RSS}_1=\lVert(P_1-P_0)Y\rVert^2

を得る。Y=μ+σZY=\mu+\sigma Z、Z∼Nn(0,In)Z\sim N_n(0,I_n)と書く。H0H_0のもとでは(P1−P0)μ=0(P_1-P_0)\mu=0かつ(In−P1)μ=0(I_n-P_1)\mu=0なので、§E14.3 定理 3.1により

RSS⁡0−RSS⁡1σ2∼χr1−r02,RSS⁡1σ2∼χn−r12\frac{\operatorname{RSS}_0-\operatorname{RSS}_1}{\sigma^2}\sim\chi^2_{r_1-r_0}, \qquad \frac{\operatorname{RSS}_1}{\sigma^2}\sim\chi^2_{n-r_1}

であり、二つの確率変数は独立である。§E14.3 定義 2.2 (3)から表示した F 法則が従う。§E14.3 命題 2.4により上側α\alpha点は一意に存在し、その上側確率はα\alphaであるから、検定のサイズはα\alphaである。▨

3 正規回帰の有限標本推測

定理 3.1.X∈Rn×pX\in\R^{n\times p}を列が一次独立な固定行列とし、p<np<nとする。β∈Rp\beta\in\R^p、σ2>0\sigma^2>0とし、

Y=Xβ+ε,ε∼Nn(0,σ2In)Y=X\beta+\varepsilon, \qquad \varepsilon\sim N_n(0,\sigma^2I_n)

とする。β^=(X⊤X)−1X⊤Y\widehat\beta=(X^\top X)^{-1}X^\top Y、H=X(X⊤X)−1X⊤H=X(X^\top X)^{-1}X^\top、e=(In−H)Ye=(I_n-H)Y、RSS⁡=∥e∥2\operatorname{RSS}=\lVert e\rVert^2、s2=RSS⁡/(n−p)s^2=\operatorname{RSS}/(n-p)とおく。以下でssまたはRSS⁡\operatorname{RSS}を分母に含む比は、RSS⁡=0\operatorname{RSS}=0、同値にs=0s=0の標本点で零と定める。このとき次が成り立つ。

  1. β^∼Np(β,σ2(X⊤X)−1)\widehat\beta\sim N_p\bigl(\beta,\sigma^2(X^\top X)^{-1}\bigr)。
  2. (n−p)s2/σ2∼χn−p2(n-p)s^2/\sigma^2\sim\chi^2_{n-p}であり、β^\widehat\betaとs2s^2は独立である。
  3. cjj=[(X⊤X)−1]jjc_{jj}=[(X^\top X)^{-1}]_{jj}とおくと、各j∈{1,…,p}j\in\{1,\ldots,p\}について β^j−βjscjj∼tn−p\frac{\widehat\beta_j-\beta_j}{s\sqrt{c_{jj}}}\sim t_{n-p} が成り立つ。
  4. 2≤p<n2\leq p<nとし、XXの第1列が1=(1,…,1)⊤\mathbf1=(1,\ldots,1)^\topであるとする。帰無仮説H0:β2=⋯=βp=0H_0:\beta_2=\cdots=\beta_p=0のもとで、Y‾=n−1∑i=1nYi\overline Y=n^{-1}\sum_{i=1}^nY_i、Y^=HY\widehat Y=HY、 ESS⁡=∥Y^−Y‾1∥2\operatorname{ESS}=\lVert\widehat Y-\overline Y\mathbf1\rVert^2 とおくと ESS⁡/(p−1)RSS⁡/(n−p)∼Fp−1,n−p\frac{\operatorname{ESS}/(p-1)}{\operatorname{RSS}/(n-p)}\sim F_{p-1,n-p} が成り立つ。

証明.(1)を示す。A=(X⊤X)−1X⊤A=(X^\top X)^{-1}X^\topとおくと、

β^=AY=β+Aε\widehat\beta=AY=\beta+A\varepsilon

である。§E11.10 定理 4.2によりAεA\varepsilonは Gaussian であり、§E14.19 系 4.1により平均は零、共分散行列はσ2(X⊤X)−1\sigma^2(X^\top X)^{-1}である。したがって主張した正規法則を得る。

(2)を示す。HHはcol⁡(X)\operatorname{col}(X)への直交射影であり、dim⁡col⁡(X)=p<n\dim\operatorname{col}(X)=p<nである。定理 1.2をM=col⁡(X)\mathcal M=\operatorname{col}(X)に適用すると、HYHYとeeは独立であり、∥e∥2/σ2∼χn−p2\lVert e\rVert^2/\sigma^2\sim\chi^2_{n-p}を得る。β^=AHY\widehat\beta=AHYはHYHYの関数であり、s2s^2はeeの関数であるから、β^\widehat\betaとs2s^2も独立である。

(3)を示す。(1)により

Zj=β^j−βjσcjj∼N(0,1)Z_j=\frac{\widehat\beta_j-\beta_j}{\sigma\sqrt{c_{jj}}}\sim N(0,1)

である。X⊤XX^\top Xは正定値なのでcjj>0c_{jj}>0である。(2)によりZjZ_jと(n−p)s2/σ2(n-p)s^2/\sigma^2は独立である。自由度が正のカイ二乗分布は零に確率を置かないためP(s=0)=0P(s=0)=0であり、§E14.3 定義 2.2 (2)より、零集合上で定めた値にかかわらず表示した比はtn−pt_{n-p}に従う。

(4)を示す。M0=span⁡{1}\mathcal M_0=\operatorname{span}\{\mathbf1\}、M1=col⁡(X)\mathcal M_1=\operatorname{col}(X)とおくと、帰無仮説はXβ∈M0X\beta\in\mathcal M_0と同値である。M0\mathcal M_0とM1\mathcal M_1への直交射影はそれぞれY↦Y‾1Y\mapsto\overline Y\mathbf1とHHである。したがって定理 2.1の分子はESS⁡\operatorname{ESS}、分母はRSS⁡\operatorname{RSS}となり、主張した F 法則を得る。▨

命題 3.2.定理 3.1と同じ仮定を置き、0<α<10<\alpha<1とする。q=qtn−p(1−α/2)>0q=q_{t_{n-p}}(1-\alpha/2)>0とし、cjj=[(X⊤X)−1]jjc_{jj}=[(X^\top X)^{-1}]_{jj}とおく。このとき次が成り立つ。

  1. 各係数βj\beta_jの水準1−α1-\alphaの正確な信頼区間は β^j±qscjj\widehat\beta_j\mathbin{\pm}q s\sqrt{c_{jj}} である。
  2. 固定したx0∈Rp∖{0}x_0\in\R^p\setminus\{0\}における平均応答x0⊤βx_0^\top\betaの水準1−α1-\alphaの正確な信頼区間は x0⊤β^±qsx0⊤(X⊤X)−1x0x_0^\top\widehat\beta\mathbin{\pm}q s\sqrt{x_0^\top(X^\top X)^{-1}x_0} である。x0=0x_0=0の場合には同じ表示は一点集合[0,0][0,0]となり、平均応答を確率11で被覆する。
  3. ε0∼N(0,σ2)\varepsilon_0\sim N(0,\sigma^2)を既存標本YY全体と独立とし、Y0=x0⊤β+ε0Y_0=x_0^\top\beta+\varepsilon_0とする。このとき新しい観測Y0Y_0の水準1−α1-\alphaの正確な予測区間は x0⊤β^±qs1+x0⊤(X⊤X)−1x0x_0^\top\widehat\beta\mathbin{\pm}q s\sqrt{1+x_0^\top(X^\top X)^{-1}x_0} である。s>0s>0である標本点では、この予測区間の半幅は、同じx0x_0における平均応答の信頼区間の半幅より大きい。s=0s=0である標本点では、二つの半幅はともに零である。

証明.(1)は定理 3.1 (3)とtt分布の対称性から

P ⁣(−q≤β^j−βjscjj≤q)=1−αP\!\left(-q\leq\frac{\widehat\beta_j-\beta_j}{s\sqrt{c_{jj}}}\leq q\right)=1-\alpha

を得る。前定理の証明でP(s=0)=0P(s=0)=0を示したので、ほとんど確実にこの不等式をβj\beta_jについて解くことができ、表示した区間を得る。

(2)を示す。x0≠0x_0\ne0ならばX⊤XX^\top Xの正定値性によりh0=x0⊤(X⊤X)−1x0>0h_0=x_0^\top(X^\top X)^{-1}x_0>0である。定理 3.1 (1)と定理 3.1 (2)により

x0⊤β^−x0⊤βsh0∼tn−p\frac{x_0^\top\widehat\beta-x_0^\top\beta}{s\sqrt{h_0}}\sim t_{n-p}

である。第一の区間と同じ反転により正確な被覆確率1−α1-\alphaを得る。x0=0x_0=0ならば推定対象と区間の両方が恒等的に零であるため、被覆確率は11である。

(3)を示す。A=(X⊤X)−1X⊤A=(X^\top X)^{-1}X^\topとおくと

Y0−x0⊤β^=ε0−x0⊤AεY_0-x_0^\top\widehat\beta=\varepsilon_0-x_0^\top A\varepsilon

は平均零、分散σ2(1+h0)\sigma^2(1+h_0)の正規変数である。x0⊤Aεx_0^\top A\varepsilonはHεH\varepsilonの関数であり、s2s^2は(In−H)ε(I_n-H)\varepsilonの関数である。定理 1.2とε0\varepsilon_0の独立性により、表示した予測誤差とs2s^2は独立である。したがって

Y0−x0⊤β^s1+h0∼tn−p\frac{Y_0-x_0^\top\widehat\beta}{s\sqrt{1+h_0}}\sim t_{n-p}

である。中央確率をY0Y_0について反転すると予測区間を得る。1+h0>h01+h_0>h_0であるから、s>0s>0ならば予測区間の半幅は平均応答の信頼区間の半幅より大きく、s=0s=0ならば両方の半幅は零である。▨

4 一元配置分散分析

定理 4.1.g≥2g\geq2とし、第jj群の標本サイズをnj≥1n_j\geq1、総標本数をN=∑j=1gnj>gN=\sum_{j=1}^g n_j>gとする。σ2>0\sigma^2>0とし、すべてのj∈{1,…,g}j\in\{1,\ldots,g\}とk∈{1,…,nj}k\in\{1,\ldots,n_j\}について

Yjk=μj+εjkY_{jk}=\mu_j+\varepsilon_{jk}

とし、εjk\varepsilon_{jk}は互いに独立にN(0,σ2)N(0,\sigma^2)に従うとする。群平均と全平均を

Y‾j=1nj∑k=1njYjk,Y‾=1N∑j=1g∑k=1njYjk\overline Y_j=\frac1{n_j}\sum_{k=1}^{n_j}Y_{jk}, \qquad \overline Y=\frac1N\sum_{j=1}^g\sum_{k=1}^{n_j}Y_{jk}

とおき、

SSW⁡=∑j=1g∑k=1nj(Yjk−Y‾j)2,SSB⁡=∑j=1gnj(Y‾j−Y‾)2\operatorname{SSW}=\sum_{j=1}^g\sum_{k=1}^{n_j}(Y_{jk}-\overline Y_j)^2, \qquad \operatorname{SSB}=\sum_{j=1}^g n_j(\overline Y_j-\overline Y)^2

と定める。このとき次が成り立つ。

  1. ∑j,k(Yjk−Y‾)2=SSB⁡+SSW⁡\sum_{j,k}(Y_{jk}-\overline Y)^2=\operatorname{SSB}+\operatorname{SSW}。
  2. 帰無仮説H0:μ1=⋯=μgH_0:\mu_1=\cdots=\mu_gのもとで、SSW⁡=0\operatorname{SSW}=0の標本点では次の比を零と定めると SSB⁡/(g−1)SSW⁡/(N−g)∼Fg−1,N−g\frac{\operatorname{SSB}/(g-1)}{\operatorname{SSW}/(N-g)}\sim F_{g-1,N-g} が成り立ち、SSB⁡\operatorname{SSB}とSSW⁡\operatorname{SSW}は独立である。

証明.RN\R^Nの座標を組(j,k)(j,k)で添字付け、M1\mathcal M_1を各群の内部で座標値が一定であるベクトル全体、M0=span⁡{1}\mathcal M_0=\operatorname{span}\{\mathbf1\}とする。dim⁡M1=g\dim\mathcal M_1=g、dim⁡M0=1\dim\mathcal M_0=1であり、M0⊊M1\mathcal M_0\subsetneq\mathcal M_1である。M1\mathcal M_1への直交射影は各(j,k)(j,k)座標をY‾j\overline Y_jに写し、M0\mathcal M_0への直交射影は各座標をY‾\overline Yに写す。したがって

RSS⁡1=SSW⁡,RSS⁡0−RSS⁡1=SSB⁡\operatorname{RSS}_1=\operatorname{SSW}, \qquad \operatorname{RSS}_0-\operatorname{RSS}_1=\operatorname{SSB}

である。第一の等式と直交分解Y−P0Y=(P1−P0)Y+(IN−P1)YY-P_0Y=(P_1-P_0)Y+(I_N-P_1)Yから(1)が従う。帰無仮説は平均ベクトルがM0\mathcal M_0に属することと同値なので、定理 2.1をr0=1r_0=1、r1=gr_1=gとして適用すると(2)の F 法則と独立性を得る。この議論はn1,…,ngn_1,\ldots,n_gが等しいことを用いない。▨

例 4.2. 群サイズが等しくない場合を具体的に計算する。三群の観測を

(Y11,Y12)=(1,3),(Y21,Y22,Y23)=(4,5,6),Y31=8(Y_{11},Y_{12})=(1,3),\qquad (Y_{21},Y_{22},Y_{23})=(4,5,6),\qquad Y_{31}=8

とする。群サイズは(n1,n2,n3)=(2,3,1)(n_1,n_2,n_3)=(2,3,1)、総標本数はN=6N=6であり、群平均は(Y‾1,Y‾2,Y‾3)=(2,5,8)(\overline Y_1,\overline Y_2,\overline Y_3)=(2,5,8)である。群平均の単純平均は55であるが、全平均は群サイズで重み付けされ、

Y‾=2⋅2+3⋅5+1⋅86=92\overline Y=\frac{2\cdot2+3\cdot5+1\cdot8}{6}=\frac92

となる。群内平方和と群間平方和はそれぞれ

SSW⁡={(1−2)2+(3−2)2}+{(4−5)2+(5−5)2+(6−5)2}+(8−8)2=4,SSB⁡=2(2−92)2+3(5−92)2+(8−92)2=512\begin{aligned} \operatorname{SSW} &=\{(1-2)^2+(3-2)^2\} +\{(4-5)^2+(5-5)^2+(6-5)^2\} +(8-8)^2 =4,\\ \operatorname{SSB} &=2\left(2-\frac92\right)^2 +3\left(5-\frac92\right)^2 +\left(8-\frac92\right)^2 =\frac{51}{2} \end{aligned}

である。全平方和も

∑j,k(Yjk−Y‾)2=(1−92)2+(3−92)2+(4−92)2+(5−92)2+(6−92)2+(8−92)2=592\begin{aligned} \sum_{j,k}(Y_{jk}-\overline Y)^2 &=\left(1-\frac92\right)^2+\left(3-\frac92\right)^2 +\left(4-\frac92\right)^2+\left(5-\frac92\right)^2\\ &\quad+\left(6-\frac92\right)^2+\left(8-\frac92\right)^2 =\frac{59}{2} \end{aligned}

となる。したがって、

592=512+4=SSB⁡+SSW⁡\frac{59}{2}=\frac{51}{2}+4=\operatorname{SSB}+\operatorname{SSW}

が確かめられる。自由度は群間でg−1=2g-1=2、群内でN−g=3N-g=3なので、観測された F 比は

F=(51/2)/24/3=15316F=\frac{(51/2)/2}{4/3}=\frac{153}{16}

である。

5 回帰推測の数値例

例 5.1.n=5n=5、p=2p=2、x=(1,2,3,4,5)⊤x=(1,2,3,4,5)^\top、y=(2,3,5,4,6)⊤y=(2,3,5,4,6)^\topとし、σ2>0\sigma^2>0のもとで切片を含む単回帰

Yi=β1+β2xi+εi,εi∼iidN(0,σ2)Y_i=\beta_1+\beta_2x_i+\varepsilon_i, \qquad \varepsilon_i\overset{\mathrm{iid}}{\sim}N(0,\sigma^2)

を考える。x‾=3\overline x=3、y‾=4\overline y=4、Sxx=10S_{xx}=10、Sxy=9S_{xy}=9であるから、最小二乗推定値はβ^1=1.3\widehat\beta_1=1.3、β^2=0.9\widehat\beta_2=0.9である。当てはめ値は(2.2,3.1,4.0,4.9,5.8)⊤(2.2,3.1,4.0,4.9,5.8)^\top、残差は(−0.2,−0.1,1.0,−0.9,0.2)⊤(-0.2,-0.1,1.0,-0.9,0.2)^\topであり、

RSS⁡=1.90,s2=1.903=1930≈0.6333,s=1930≈0.7958\operatorname{RSS}=1.90, \qquad s^2=\frac{1.90}{3}=\frac{19}{30}\approx0.6333, \qquad s=\sqrt{\frac{19}{30}}\approx0.7958

となる。また、TSS⁡=10\operatorname{TSS}=10、ESS⁡=8.10\operatorname{ESS}=8.10、R2=0.81R^2=0.81、自由度調整済み決定係数は約0.74670.7467である。

c22=1/Sxx=0.1c_{22}=1/S_{xx}=0.1なので

se⁡(β^2)=sc22=19300≈0.2517,t=91030019≈3.576\operatorname{se}(\widehat\beta_2)=s\sqrt{c_{22}}=\sqrt{\frac{19}{300}}\approx0.2517, \qquad t=\frac9{10}\sqrt{\frac{300}{19}}\approx3.576

を得る。t3t_{3}分布の上側0.0250.025点は3.1823.182なので、傾きが零であるという帰無仮説は水準5%5\%で棄却される。命題 3.2 (1)によるβ2\beta_2の95%95\%信頼区間は

0.9±3.182⋅0.2517≈[0.099,1.701]0.9\mathbin{\pm}3.182\cdot0.2517\approx[0.099,1.701]

である。

モデルの F 統計量は

F=8.10/11.90/3=24319≈12.79F=\frac{8.10/1}{1.90/3}=\frac{243}{19}\approx12.79

であり、F1,3F_{1,3}分布の上側0.050.05点10.1310.13を超える。したがって全傾きが零であるという帰無仮説も水準5%5\%で棄却される。単回帰ではF=t2F=t^2が成り立ち、実際にt2=F=243/19≈12.79t^2=F=243/19\approx12.79である。

x0=(1,6)⊤x_0=(1,6)^\topとすると、x0⊤β^=6.7x_0^\top\widehat\beta=6.7かつ

x0⊤(X⊤X)−1x0=15+(6−3)210=1.1x_0^\top(X^\top X)^{-1}x_0 =\frac15+\frac{(6-3)^2}{10}=1.1

である。命題 3.2 (2)による平均応答の95%95\%信頼区間は

6.7±3.182⋅0.79581.1≈[4.04,9.36]6.7\mathbin{\pm}3.182\cdot0.7958\sqrt{1.1}\approx[4.04,9.36]

である。命題 3.2 (3)による独立な新観測の95%95\%予測区間は

6.7±3.182⋅0.79582.1≈[3.03,10.37]6.7\mathbin{\pm}3.182\cdot0.7958\sqrt{2.1}\approx[3.03,10.37]

である。平均応答の信頼区間の半幅は約2.662.66、予測区間の半幅は約3.673.67であり、新しい誤差を含む予測区間のほうが広い。

参考文献

  1. George Casella and Roger L. Berger, Statistical Inference, 2nd ed., CRC Press, Boca Raton, 2024, originally published 2002.正規線形モデルにおける平方和、回帰係数の推測、および一元配置分散分析の標準的な定式化を参考にした。

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