§E14.10完備性と Lehmann–Scheffé の定理

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十分統計量は、母数に関する情報を標本から集約する。支配された統計モデルでは、Rao–Blackwell の定理により、すべての母数で二乗可積分な不偏推定量を十分統計量で条件付けると、分散を増加させずに十分統計量の関数へ移すことができる。しかし、十分性だけからは、同じ推定対象に対する二つの不偏な関数がほとんど確実に一致するとは限らない。

すべての母数において期待値が零となる統計量の可積分な関数がほとんど確実に零となる性質を、統計量の完備性という。完備性は、統計量の不偏な関数の一意性を導く基本的な条件である。たとえば、成功確率0<p<10<p<1の Bernoulli 分布からの大きさn≥2n\geq2の無作為標本について、その和をTTとすると、T(T−1)n(n−1)\frac{T(T-1)}{n(n-1)}はp2p^2の一様最小分散不偏推定量となる。

Lehmann–Scheffé の定理は、十分性による分散の減少と完備性による一意性を結び付け、不偏推定量の最適性を有限標本のもとで確定する。

本記事では、完備性と一様最小分散不偏推定量を定義し、完備十分統計量から得られる最適性と独立性を扱う。

1 完備性と不偏推定量の一意性

定義 1.1 (完備性).(Pθ)θ∈Θ(P_\theta)_{\theta\in\Theta}を可測空間(X,A)(\mathcal X,\mathcal A)上の非空な確率測度族とし、T:(X,A)→(Y,B)T:(\mathcal X,\mathcal A)\to(\mathcal Y,\mathcal B)を統計量とする。任意の実数値B\mathcal B可測関数ggについて、

Eθ∣g(T)∣<∞,Eθ[g(T)]=0(θ∈Θ)E_\theta|g(T)|<\infty,\qquad E_\theta[g(T)]=0 \quad(\theta\in\Theta)

ならば、すべてのθ∈Θ\theta\in\Thetaで

Pθ(g(T)=0)=1P_\theta(g(T)=0)=1

となるとき、TTは族(Pθ)θ∈Θ(P_\theta)_{\theta\in\Theta}に対して 完備 (complete statistic) であるという。恒等写像を統計量としたときに完備である確率測度族を、完備な分布族という。完備かつ十分な統計量を 完備十分統計量 (complete sufficient statistic) という。

例 1.2 (十分だが完備でない統計量).X1,X2X_1,X_2を成功確率p∈(0,1)p\in(0,1)の Bernoulli 分布からの独立同分布標本とし、

T=(X1,X2)T=(X_1,X_2)

と置く。TTは標本全体の恒等写像であるため、TTを与えたときの標本の条件付き分布はTTにおける一点分布であり、ppに依存しない。したがってTTは十分統計量である。

一方、g(t1,t2)=t1−t2g(t_1,t_2)=t_1-t_2と置くと、すべてのp∈(0,1)p\in(0,1)に対して

Ep[g(T)]=Ep[X1]−Ep[X2]=p−p=0E_p[g(T)]=E_p[X_1]-E_p[X_2]=p-p=0

である。しかし、

Pp(g(T)≠0)=Pp(X1≠X2)=2p(1−p)>0P_p(g(T)\ne0) =P_p(X_1\ne X_2) =2p(1-p)>0

であるから、g(T)g(T)はほとんど確実に零ではない。したがってTTは完備ではない。

定義 1.3 (有界完備性).(Pθ)θ∈Θ(P_\theta)_{\theta\in\Theta}を(X,A)(\mathcal X,\mathcal A)上の非空な確率測度族、T:(X,A)→(Y,B)T:(\mathcal X,\mathcal A)\to(\mathcal Y,\mathcal B)を統計量とする。任意の有界実数値B\mathcal B可測関数ggに対し、すべてのθ∈Θ\theta\in\ThetaでEθ[g(T)]=0E_\theta[g(T)]=0ならば、すべてのθ∈Θ\theta\in\ThetaでPθ(g(T)=0)=1P_\theta(g(T)=0)=1となるとき、TTは族に対して 有界完備 (boundedly complete statistic) であるという。

命題 1.4. 非空な確率測度族に対して完備な統計量は、その族に対して有界完備である。

証明. 有界な実数値関数は各確率測度について可積分であるから、完備性の条件を適用することができる。▨

命題 1.5.(Pθ)θ∈Θ(P_\theta)_{\theta\in\Theta}に対して統計量T:(X,A)→(Y,B)T:(\mathcal X,\mathcal A)\to(\mathcal Y,\mathcal B)が完備であるとする。h1,h2:Y→Rh_1,h_2:\mathcal Y\to\Rを可測関数とし、すべてのθ∈Θ\theta\in\ThetaでEθ∣hj(T)∣<∞E_\theta|h_j(T)|<\infty(j=1,2)(j=1,2)および

Eθ[h1(T)]=Eθ[h2(T)]E_\theta[h_1(T)]=E_\theta[h_2(T)]

が成り立つとする。このとき、すべてのθ∈Θ\theta\in\Thetaについてh1(T)=h2(T)h_1(T)=h_2(T)がPθP_\theta-ほとんど確実に成り立つ。

証明.g=h1−h2g=h_1-h_2と置く。g(T)g(T)は各PθP_\thetaで可積分であり、すべてのθ\thetaについて期待値が零である。完備性により、各θ\thetaでg(T)=0g(T)=0がほとんど確実に成り立つ。▨

2 Lehmann–Scheffé の定理

定義 2.1 (一様最小分散不偏推定量).(Pθ)θ∈Θ(P_\theta)_{\theta\in\Theta}を(X,A)(\mathcal X,\mathcal A)上の非空な確率測度族、τ:Θ→R\tau:\Theta\to\Rを推定対象とする。実数値可測関数δ\deltaが、すべてのθ∈Θ\theta\in\Thetaについて

Eθ[δ]=τ(θ),Eθ[δ2]<∞E_\theta[\delta]=\tau(\theta),\qquad E_\theta[\delta^2]<\infty

を満たすとする。同じ二条件を満たす任意の実数値可測関数δ′\delta'に対して、すべてのθ∈Θ\theta\in\Thetaで

Var⁡θ(δ)≤Var⁡θ(δ′)\operatorname{Var}_\theta(\delta)\leq\operatorname{Var}_\theta(\delta')

となるとき、δ\deltaをτ\tauの 一様最小分散不偏推定量 (uniformly minimum variance unbiased estimator)(UMVUE)という。

定理 2.2 (Lehmann–Scheffé の定理).(X,A)(\mathcal X,\mathcal A)上の非空な確率測度族(Pθ)θ∈Θ(P_\theta)_{\theta\in\Theta}がシグマ有限測度に支配され、統計量T:(X,A)→(Y,B)T:(\mathcal X,\mathcal A)\to(\mathcal Y,\mathcal B)がこの族に対して完備かつ十分であるとする。τ:Θ→R\tau:\Theta\to\Rとし、可測関数h:Y→Rh:\mathcal Y\to\Rが、すべてのθ∈Θ\theta\in\Thetaについて

Eθ[h(T)]=τ(θ),Eθ[h(T)2]<∞E_\theta[h(T)]=\tau(\theta),\qquad E_\theta[h(T)^2]<\infty

を満たすならば、h(T)h(T)はτ\tauの UMVUE である。また、δ\deltaがτ\tauの別の UMVUE ならば、すべてのθ∈Θ\theta\in\Thetaについてδ=h(T)\delta=h(T)がPθP_\theta-ほとんど確実に成り立つ。

特に、すべての母数について二乗可積分なτ\tauの不偏推定量が一つ存在すれば、それをTTで条件付けして得られる母数共通の推定量が UMVUE となる。

証明.δ\deltaを、すべての母数について二乗可積分なτ\tauの任意の不偏推定量とする。§E14.9 定理 2.1により、母数に依存しない可測関数a:Y→Ra:\mathcal Y\to\Rが存在し、a(T)a(T)は各母数で二乗可積分なτ\tauの不偏推定量であり、

Var⁡θ(δ)−Var⁡θ(a(T))=Eθ[(δ−a(T))2]≥0(θ∈Θ)\operatorname{Var}_\theta(\delta)-\operatorname{Var}_\theta(a(T)) =E_\theta[(\delta-a(T))^2]\geq0 \quad(\theta\in\Theta)

を満たす。命題 1.5をa,ha,hに適用すると、すべてのθ\thetaについてa(T)=h(T)a(T)=h(T)がPθP_\theta-ほとんど確実に成り立つ。したがって、すべてのθ\thetaで

Var⁡θ(δ)−Var⁡θ(h(T))=Eθ[(δ−h(T))2]≥0\operatorname{Var}_\theta(\delta)-\operatorname{Var}_\theta(h(T)) =E_\theta[(\delta-h(T))^2]\geq0

である。δ\deltaは任意であったから、h(T)h(T)は UMVUE である。

δ\deltaも UMVUE ならば、それぞれの最小性から各θ\thetaで分散が等しい。上の等式によりEθ[(δ−h(T))2]=0E_\theta[(\delta-h(T))^2]=0となるので、δ=h(T)\delta=h(T)がPθP_\theta-ほとんど確実に成り立つ。

二乗可積分な不偏推定量δ0\delta_0が一つ与えられた場合には、§E14.9 定理 2.1が与える共通の条件付き期待値h0(T)h_0(T)が、定理のh(T)h(T)に課した不偏性と二乗可積分性を満たす。したがってh0(T)h_0(T)に前半の結論を適用することができる。▨

3 両側 Laplace 変換の一意性

補題 3.1.α,β\alpha,\betaをR\R上の有限正 Borel 測度とし、I⊆RI\subseteq\Rを00を含む開区間とする。すべてのs∈Is\in Iに対して

∫Resx d(α+β)(x)<∞,∫Resx dα(x)=∫Resx dβ(x)\int_{\R}e^{sx}\,d(\alpha+\beta)(x)<\infty, \qquad \int_{\R}e^{sx}\,d\alpha(x)=\int_{\R}e^{sx}\,d\beta(x)

が成り立つならば、α=β\alpha=\betaである。

証明.D={z∈C:Re⁡z∈I}D=\{z\in\C:\operatorname{Re}z\in I\}と置き、z∈Dz\in Dに対して

H(z)=∫Rezx dα(x)−∫Rezx dβ(x)H(z)=\int_{\R}e^{zx}\,d\alpha(x)-\int_{\R}e^{zx}\,d\beta(x)

と定める。§E5.3 命題 1.7 (1)により∣ezx∣=e(Re⁡z)x|e^{zx}|=e^{(\operatorname{Re}z)x}であるから、両積分は絶対収束する。

z0∈Dz_0\in Dを取り、r=Re⁡z0r=\operatorname{Re}z_0として、[r−2ε,r+2ε]⊂I[r-2\varepsilon,r+2\varepsilon]\subset Iを満たすε>0\varepsilon>0を取る。複素指数関数の絶対収束級数から、任意のv∈Cv\in\Cについて

∣ev−1∣≤∑j=1∞∣v∣jj!≤∣v∣e∣v∣|e^v-1|\leq\sum_{j=1}^{\infty}\frac{|v|^j}{j!} \leq |v|e^{|v|}

である。したがって、指数関数の加法法則§E5.3 命題 1.6を用いると、0<∣w∣<ε0<|w|<\varepsilonに対して

∣e(z0+w)x−ez0xw∣≤∣x∣erx+ε∣x∣≤1ε(e(r+2ε)x+e(r−2ε)x).\left|\frac{e^{(z_0+w)x}-e^{z_0x}}w\right| \leq |x|e^{rx+\varepsilon|x|} \leq\frac1\varepsilon \left(e^{(r+2\varepsilon)x}+e^{(r-2\varepsilon)x}\right).

最後の不等式は、ε∣x∣≤eε∣x∣\varepsilon|x|\leq e^{\varepsilon|x|}を用い、x≥0x\geq0とx<0x<0に分けると従う。右辺は仮定によりα+β\alpha+\betaについて可積分である。§E5.3 命題 1.8により差商は各xxでxez0xxe^{z_0x}に収束するから、複素数値関数に対する優収束定理§E9.7 定理 3.2を適用すると、

H′(z0)=∫Rxez0x dα(x)−∫Rxez0x dβ(x)H'(z_0)=\int_{\R}xe^{z_0x}\,d\alpha(x)-\int_{\R}xe^{z_0x}\,d\beta(x)

を得る。z0z_0は任意であったから、HHはDD上で正則である。

DDは連結な開集合であり、仮定からH(s)=0H(s)=0がすべてのs∈Is\in Iで成り立つ。一致の定理§E5.8 定理 3.1によりHHはDD上で恒等的に零である。特に、すべてのu∈Ru\in\Rについて

∫Reiux dα(x)=∫Reiux dβ(x)\int_{\R}e^{iux}\,d\alpha(x)=\int_{\R}e^{iux}\,d\beta(x)

となる。

H(0)=0H(0)=0より、m=α(R)=β(R)m=\alpha(\R)=\beta(\R)である。m=0m=0ならば両測度は零測度である。m>0m>0ならばα/m,β/m\alpha/m,\beta/mは同じ特性関数をもつ Borel 確率測度であるから、§E11.14 定理 3.3によりα/m=β/m\alpha/m=\beta/mとなる。どちらの場合もα=β\alpha=\betaを得る。▨

系 3.2.X,YX,Yを実数値確率変数とする。あるε>0\varepsilon>0に対して、両者の積率母関数が(−ε,ε)(-\varepsilon,\varepsilon)で有限であり、すべてのs∈(−ε,ε)s\in(-\varepsilon,\varepsilon)で

E[esX]=E[esY]E[e^{sX}]=E[e^{sY}]

ならば、XXとYYは同じ分布をもつ。

証明.X,YX,Yの分布をそれぞれα,β\alpha,\betaとし、I=(−ε,ε)I=(-\varepsilon,\varepsilon)として補題 3.1を適用する。▨

4 一径数指数型分布族の完備性

定理 4.1.(X,A,μ)(\mathcal X,\mathcal A,\mu)をシグマ有限測度空間とし、t:X→Rt:\mathcal X\to\Rとh:X→[0,∞)h:\mathcal X\to[0,\infty)を可測関数とする。μ({h>0})>0\mu(\{h>0\})>0とし、

H={η∈R:0<∫Xeηt(x)h(x) dμ(x)<∞},A(η)=log⁡∫Xeηt(x)h(x) dμ(x)H=\left\{\eta\in\R:0<\int_{\mathcal X}e^{\eta t(x)}h(x)\,d\mu(x)<\infty\right\}, \qquad A(\eta)=\log\int_{\mathcal X}e^{\eta t(x)}h(x)\,d\mu(x)

と置く。J⊆HJ\subseteq Hが非空な開区間を含むとし、μ\muに関する密度

pη(x)=h(x)eηt(x)−A(η),η∈Jp_\eta(x)=h(x)e^{\eta t(x)-A(\eta)},\qquad\eta\in J

で族(Pη)η∈J(P_\eta)_{\eta\in J}を定める。任意のn∈N≥1n\in\NNに対し、独立同分布標本の統計量

Tn=∑j=1nt(Xj)T_n=\sum_{j=1}^nt(X_j)

は族(Pη⊗n)η∈J(P_\eta^{\otimes n})_{\eta\in J}に対して完備かつ十分であり、最小十分でもある。

証明.§E14.5 命題 4.2によりTnT_nは十分であり、その分布はR\R上のシグマ有限測度νn\nu_nに関して密度eηs−nA(η)e^{\eta s-nA(\eta)}をもつ。g:R→Rg:\R\to\Rを可測関数で、すべてのη∈J\eta\in Jについて

Eη∣g(Tn)∣<∞,Eη[g(Tn)]=0E_\eta|g(T_n)|<\infty,\qquad E_\eta[g(T_n)]=0

を満たすものとする。JJに含まれる開区間の中にη0\eta_0を取り、[η0−ε,η0+ε]⊂J[\eta_0-\varepsilon,\eta_0+\varepsilon]\subset Jとなるε>0\varepsilon>0を取る。g+=max⁡(g,0)g^+=\max(g,0)、g−=max⁡(−g,0)g^-=\max(-g,0)と置き、正測度

α(ds)=g+(s)eη0sνn(ds),β(ds)=g−(s)eη0sνn(ds)\alpha(ds)=g^+(s)e^{\eta_0s}\nu_n(ds),\qquad \beta(ds)=g^-(s)e^{\eta_0s}\nu_n(ds)

を定める。両測度の全質量の和はenA(η0)Eη0∣g(Tn)∣e^{nA(\eta_0)}E_{\eta_0}|g(T_n)|であるから有限である。∣u∣<ε|u|<\varepsilonならば、

∫Reus d(α+β)(s)=enA(η0+u)Eη0+u∣g(Tn)∣<∞,∫Reus dα(s)−∫Reus dβ(s)=enA(η0+u)Eη0+u[g(Tn)]=0.\begin{aligned} \int_{\R}e^{us}\,d(\alpha+\beta)(s) &=e^{nA(\eta_0+u)}E_{\eta_0+u}|g(T_n)|<\infty,\\ \int_{\R}e^{us}\,d\alpha(s)-\int_{\R}e^{us}\,d\beta(s) &=e^{nA(\eta_0+u)}E_{\eta_0+u}[g(T_n)]=0. \end{aligned}

したがって補題 3.1によりα=β\alpha=\betaである。

B+={s:g(s)>0}B_+=\{s:g(s)>0\}と置くと、β(B+)=0\beta(B_+)=0であるから、α(B+)=0\alpha(B_+)=0である。ゆえにg+(s)eη0s=0g^+(s)e^{\eta_0s}=0がνn\nu_n-ほとんど至る所で成り立つ。B−={s:g(s)<0}B_-=\{s:g(s)<0\}に同じ議論を適用すると、g−(s)eη0s=0g^-(s)e^{\eta_0s}=0もνn\nu_n-ほとんど至る所で成り立つ。eη0s>0e^{\eta_0s}>0よりg=0g=0がνn\nu_n-ほとんど至る所である。各η∈J\eta\in JにおけるTnT_nの分布はνn\nu_nに絶対連続なので、すべてのη∈J\eta\in Jでg(Tn)=0g(T_n)=0がほとんど確実に成り立つ。したがってTnT_nは完備である。

JJは相異なる二点を含むので、§E14.5 系 5.3によりTnT_nは最小十分でもある。▨

命題 4.2.m∈N≥1m\in\NNを固定すると、p∈(0,1)p\in(0,1)を母数とする二項分布族Bin⁡(m,p)\operatorname{Bin}(m,p)は完備である。また、λ>0\lambda>0を母数とする Poisson 分布族Pois⁡(λ)\operatorname{Pois}(\lambda)は完備である。

証明. 二項分布は{0,…,m}\{0,\ldots,m\}上の数え上げ測度に関して

pp(k)=(mk)exp⁡{klog⁡p1−p+mlog⁡(1−p)}p_p(k)=\binom mk\exp\left\{k\log\frac p{1-p}+m\log(1-p)\right\}

と書かれる。自然母数η=log⁡(p/(1−p))\eta=\log(p/(1-p))はR\R全体を動くので、定理 4.1をn=1n=1に適用することができる。 Poisson 分布では

pλ(k)=1k!exp⁡{klog⁡λ−λ},k∈N≥0p_\lambda(k)=\frac1{k!}\exp\{k\log\lambda-\lambda\},\qquad k\in\N

であり、自然母数η=log⁡λ\eta=\log\lambdaがR\R全体を動く。同じ定理を適用すると完備性を得る。▨

例 4.3.n≥2n\geq2とし、X1,…,XnX_1,\ldots,X_nを成功確率p∈(0,1)p\in(0,1)の Bernoulli 分布からの独立同分布標本とする。T=∑j=1nXjT=\sum_{j=1}^nX_jに対して

p2^=T(T−1)n(n−1)\widehat{p^2}=\frac{T(T-1)}{n(n-1)}

はp2p^2の UMVUE である。実際、Xj2=XjX_j^2=X_jであるから、

T(T−1)=∑i≠jXiXj,Ep[T(T−1)]=∑i≠jEp[Xi]Ep[Xj]=n(n−1)p2.T(T-1)=\sum_{i\ne j}X_iX_j, \qquad E_p[T(T-1)]=\sum_{i\ne j}E_p[X_i]E_p[X_j]=n(n-1)p^2.

また0≤p2^≤10\leq\widehat{p^2}\leq1なので二乗可積分である。§E14.5 例 1.3によりTTは十分であり、T∼Bin⁡(n,p)T\sim\operatorname{Bin}(n,p)と命題 4.2により完備である。したがって定理 2.2を適用すると結論を得る。

5 Basu の定理

定義 5.1 (補助統計量).(Pθ)θ∈Θ(P_\theta)_{\theta\in\Theta}を(X,A)(\mathcal X,\mathcal A)上の非空な確率測度族とする。統計量V:(X,A)→(Z,C)V:(\mathcal X,\mathcal A)\to(\mathcal Z,\mathcal C)の分布がθ\thetaに依存しないとき、VVをこの族の 補助統計量 (ancillary statistic) という。すなわち、各B∈CB\in\mathcal Cに対してPθ(V∈B)P_\theta(V\in B)がθ\thetaによらない定数である。

定理 5.2 (Basu の定理).(Pθ)θ∈Θ(P_\theta)_{\theta\in\Theta}を(X,A)(\mathcal X,\mathcal A)上の非空な確率測度族とする。統計量T:(X,A)→(Y,B)T:(\mathcal X,\mathcal A)\to(\mathcal Y,\mathcal B)がこの族に対して有界完備かつ十分であり、V:(X,A)→(Z,C)V:(\mathcal X,\mathcal A)\to(\mathcal Z,\mathcal C)が補助統計量であるならば、すべてのθ∈Θ\theta\in\Thetaに対してTTとVVはPθP_\thetaの下で独立である。

証明.B∈CB\in\mathcal Cを取り、cB=Pθ(V∈B)c_B=P_\theta(V\in B)と置く。VVは補助統計量なので、cBc_Bはθ\thetaに依存しない。十分性により、有界実数値B\mathcal B可測関数kBk_Bが存在して、すべてのθ∈Θ\theta\in\Thetaについて

kB(T)=Eθ[1{V∈B}∣σ(T)]Pθ-ほとんど確実にk_B(T)=E_\theta[\mathbf1_{\{V\in B\}}\mid\sigma(T)] \qquad P_\theta\text{-ほとんど確実に}

を満たす。条件付き期待値の定義で積分領域をX\mathcal Xとすれば、Eθ[kB(T)]=cBE_\theta[k_B(T)]=c_Bである。kB−cBk_B-c_Bは有界で、すべての母数において期待値が零であるから、有界完備性によりkB(T)=cBk_B(T)=c_Bが各PθP_\thetaの下でほとんど確実に成り立つ。

任意のC∈BC\in\mathcal Bに対して、条件付き期待値の定義から

Pθ(T∈C,V∈B)=Eθ[1{T∈C}kB(T)]=cBPθ(T∈C)=Pθ(V∈B)Pθ(T∈C).\begin{aligned} P_\theta(T\in C,V\in B) &=E_\theta[\mathbf1_{\{T\in C\}}k_B(T)]\\ &=c_B P_\theta(T\in C) =P_\theta(V\in B)P_\theta(T\in C). \end{aligned}

B,CB,Cは任意であるから、TTとVVは各PθP_\thetaの下で独立である。▨

系 5.3.n≥2n\geq2とし、X1,…,XnX_1,\ldots,X_nをN(μ,σ2)N(\mu,\sigma^2)からの独立同分布標本とする。ただしμ∈R\mu\in\R、σ2>0\sigma^2>0とする。標本平均と不偏標本分散

X‾=1n∑j=1nXj,S2=1n−1∑j=1n(Xj−X‾)2\overline X=\frac1n\sum_{j=1}^nX_j, \qquad S^2=\frac1{n-1}\sum_{j=1}^n(X_j-\overline X)^2

は独立である。

証明.σ2>0\sigma^2>0を固定し、μ∈R\mu\in\Rを母数とする部分モデルを考える。§E14.5 例 5.4の指数型表示では、自然統計量はt(x)=xt(x)=xであり、自然母数η=μ/σ2\eta=\mu/\sigma^2はR\R全体を動く。したがって定理 4.1によりT=∑jXjT=\sum_jX_jは完備かつ十分である。

Zj=(Xj−μ)/σZ_j=(X_j-\mu)/\sigmaと置く。正規密度の変数変換により、Z1,…,ZnZ_1,\ldots,Z_nは独立な標準正規変数であり、

S2=σ2n−1∑j=1n(Zj−Z‾)2.S^2=\frac{\sigma^2}{n-1}\sum_{j=1}^n(Z_j-\overline Z)^2.

したがって、σ2\sigma^2を固定した族においてS2S^2の分布はμ\muに依存せず、S2S^2は補助統計量である。TTは完備であるから命題 1.4により有界完備でもある。したがって定理 5.2により、TTとS2S^2はこの部分モデルの各μ\muで独立である。X‾=T/n\overline X=T/nはTTの可測関数であるから、X‾\overline XとS2S^2も独立である。固定したσ2>0\sigma^2>0は任意であったから、すべての(μ,σ2)(\mu,\sigma^2)で結論が成り立つ。▨

6 指数傾斜と積率母関数

命題 6.1.QQをR\R上の Borel 確率測度とし、

MQ(s)=∫Resx Q(dx),HQ={s∈R:MQ(s)<∞}M_Q(s)=\int_{\R}e^{sx}\,Q(dx),\qquad H_Q=\{s\in\R:M_Q(s)<\infty\}

と置く。HQH_Qが00の開近傍を含むとする。s∈HQs\in H_Qに対して

Qs(B)=1MQ(s)∫Besx Q(dx),B∈B(R)Q_s(B)=\frac1{M_Q(s)}\int_Be^{sx}\,Q(dx),\qquad B\in\mathcal B(\R)

と定めると、QsQ_sは確率測度である。任意のn∈N≥1n\in\NNについて、QsQ_sからの独立同分布標本の和は、s∈int⁡(HQ)s\in\tpint{H_Q}を母数とする族で完備かつ十分である。

証明.s∈HQs\in H_Qに対して0<MQ(s)<∞0<M_Q(s)<\inftyであり、定義した非負密度esx/MQ(s)e^{sx}/M_Q(s)のQQに関する積分は1である。μ=Q\mu=Q、h=1h=1、t(x)=xt(x)=x、A(s)=log⁡MQ(s)A(s)=\log M_Q(s)と置くと一径数指数型分布族であり、int⁡(HQ)\tpint{H_Q}は非空な開区間を含む。定理 4.1を適用すると結論を得る。▨

命題 6.2. 次の表のQQについて、積率母関数MQ(s)M_Q(s)とその有限領域HQH_Qは表のとおりである。 Gamma 分布は§E14.3 定義 1.1の shape と rate による母数化を用いる。指数分布Exp⁡(λ)\operatorname{Exp}(\lambda)はGamma⁡(1,λ)\operatorname{Gamma}(1,\lambda)、カイ二乗分布χk2\chi_k^2はGamma⁡(k/2,1/2)\operatorname{Gamma}(k/2,1/2)である。

表の正の幾何変数GGは、失敗回数を表す§E11.5 定義 1.4の幾何変数KKに対してG=K+1G=K+1と定める。0<p≤10<p\leq1とすると、

P(G=j)=p(1−p)j−1(j∈N≥1),E[G]=1p,Var⁡(G)=1−pp2.P(G=j)=p(1-p)^{j-1}\quad(j\in\NN),\qquad E[G]=\frac1p,\qquad \operatorname{Var}(G)=\frac{1-p}{p^2}.

p=1p=1の確率質量関数では00=10^0=1とする。

基準分布QQと母数の範囲 MQ(s)M_Q(s) HQH_Q
Bin⁡(m,p)\operatorname{Bin}(m,p)、m∈N≥0m\in\N、0≤p≤10\leq p\leq1 (1−p+pes)m(1-p+pe^s)^m R\R
Pois⁡(λ)\operatorname{Pois}(\lambda)、λ>0\lambda>0 exp⁡{λ(es−1)}\exp\{\lambda(e^s-1)\} R\R
正の幾何変数GG、0<p<10<p<1 pes1−(1−p)es\dfrac{pe^s}{1-(1-p)e^s} (−∞,−log⁡(1−p))(-\infty,-\log(1-p))
U(a,b)U(a,b)、a<ba<b esb−esas(b−a)\dfrac{e^{sb}-e^{sa}}{s(b-a)}(s≠0s\ne0) R\R
Exp⁡(λ)\operatorname{Exp}(\lambda)、λ>0\lambda>0 λλ−s\dfrac\lambda{\lambda-s} (−∞,λ)(-\infty,\lambda)
Gamma⁡(α,λ)\operatorname{Gamma}(\alpha,\lambda)、α,λ>0\alpha,\lambda>0 (λλ−s)α\left(\dfrac\lambda{\lambda-s}\right)^\alpha (−∞,λ)(-\infty,\lambda)
N(μ,σ2)N(\mu,\sigma^2)、μ∈R\mu\in\R、σ2>0\sigma^2>0 exp⁡{μs+σ2s2/2}\exp\{\mu s+\sigma^2s^2/2\} R\R
χk2\chi_k^2、k∈N≥1k\in\NN (1−2s)−k/2(1-2s)^{-k/2} (−∞,1/2)(-\infty,1/2)

すべての行でMQ(0)=1M_Q(0)=1であり、一様分布の式はs=0s=0でこの値に連続延長する。正の幾何変数でp=1p=1の場合はG=1G=1がほとんど確実に成り立ち、MQ(s)=esM_Q(s)=e^s、HQ=RH_Q=\Rである。表の各QQから作った命題 6.1の族(Qs)s∈HQ(Q_s)_{s\in H_Q}では、独立同分布標本の和が完備かつ十分である。

証明. 演習とする(問題 7.2)。▨

7 演習

問題 7.1.命題 4.2に対して、次の方法で別証明を与えよ。

  1. 二項分布の期待値零の等式をq=p/(1−p)q=p/(1-p)の多項式に書き換え、その係数を比較せよ。
  2. Poisson 分布の期待値零の等式を冪級数に書き換え、項別微分によって係数を求めよ。項別微分の前に絶対収束を確認せよ。
解答.

(1)を示す。g:{0,…,m}→Rg:\{0,\ldots,m\}\to\Rがすべてのp∈(0,1)p\in(0,1)に対して期待値零であるとする。期待値の等式を(1−p)m>0(1-p)^m>0で割り、q=p/(1−p)q=p/(1-p)と置くと、

F(q):=∑j=0mg(j)(mj)qj=0(q>0)F(q):=\sum_{j=0}^m g(j)\binom mj q^j=0\qquad(q>0)

となる。FFは多項式であり、正の半直線上で恒等零なので、各j∈{0,…,m}j\in\{0,\ldots,m\}についてF(j)(q)=0F^{(j)}(q)=0がq>0q>0で成り立つ。各導関数は連続であるからF(j)(0)=0F^{(j)}(0)=0であり、

0=F(j)(0)=j!(mj)g(j)0=F^{(j)}(0)=j!\binom mj g(j)

を得る。(mj)>0\binom mj>0よりg(j)=0g(j)=0であり、完備性が従う。

(2)を示す。g:N≥0→Rg:\N\to\Rがすべてのλ>0\lambda>0について可積分で、期待値零であるとする。 Poisson 分布の確率質量関数を代入すると、

∑j=0∞∣g(j)∣λjj!<∞,F(λ):=∑j=0∞g(j)λjj!=0(λ>0)\sum_{j=0}^{\infty}|g(j)|\frac{\lambda^j}{j!}<\infty, \qquad F(\lambda):=\sum_{j=0}^{\infty}g(j)\frac{\lambda^j}{j!}=0 \quad(\lambda>0)

である。任意のR>0R>0に対して第一の級数はλ=R\lambda=Rで収束するので、∣x∣<R|x|<RにおいてF(x)F(x)の冪級数は絶対収束する。RRは任意であるから、収束半径は無限大である。§D1.23 定理 4.3を反復すると、FFはR\R上で何回でも微分可能であり、F(j)(0)=g(j)F^{(j)}(0)=g(j)となる。FFは(0,∞)(0,\infty)上で恒等零なので、その導関数も同区間で零である。原点での連続性からg(j)=F(j)(0)=0g(j)=F^{(j)}(0)=0を得る。したがって Poisson 分布族も完備である。▨

問題 7.2.命題 6.2を証明せよ。各行について指数傾斜QsQ_sの分布を同定し、独立同分布標本の和が完備十分となることを示せ。さらに、指数分布の積率母関数を零で二回微分し、一次積率、二次積率および分散を求めよ。

解答.

Q=Bin⁡(m,p)Q=\operatorname{Bin}(m,p)の場合、二項定理から

MQ(s)=∑j=0m(mj)pj(1−p)m−jesj=(1−p+pes)mM_Q(s)=\sum_{j=0}^m\binom mjp^j(1-p)^{m-j}e^{sj} =(1-p+pe^s)^m

である。有限和なので全s∈Rs\in\Rで有限である。d=1−p+pes>0d=1-p+pe^s>0、ps=pes/dp_s=pe^s/dと置くと、1−ps=(1−p)/d1-p_s=(1-p)/dであるから、指数傾斜の確率質量関数は

Qs({j})=(mj)psj(1−ps)m−j.Q_s(\{j\})=\binom mjp_s^j(1-p_s)^{m-j}.

したがってQs=Bin⁡(m,ps)Q_s=\operatorname{Bin}(m,p_s)である。p=0,1p=0,1およびm=0m=0でも、00=10^0=1の規約で同じ計算が成り立つ。

Q=Pois⁡(λ)Q=\operatorname{Pois}(\lambda)の場合、指数関数の級数から

MQ(s)=e−λ∑j=0∞(λes)jj!=exp⁡{λ(es−1)}M_Q(s)=e^{-\lambda}\sum_{j=0}^{\infty}\frac{(\lambda e^s)^j}{j!} =\exp\{\lambda(e^s-1)\}

であり、全実数で有限である。正規化した質量はe−λes(λes)j/j!e^{-\lambda e^s}(\lambda e^s)^j/j!なので、Qs=Pois⁡(λes)Q_s=\operatorname{Pois}(\lambda e^s)である。

正の幾何変数については、G=K+1G=K+1の定義から

P(G=j)=P(K=j−1)=p(1−p)j−1(j∈N≥1)P(G=j)=P(K=j-1)=p(1-p)^{j-1}\qquad(j\in\NN)

である。§E11.5 命題 1.5と期待値の線形性により

E[G]=E[K]+1=1−pp+1=1p,Var⁡(G)=Var⁡(K)=1−pp2.E[G]=E[K]+1=\frac{1-p}{p}+1=\frac1p, \qquad \operatorname{Var}(G)=\operatorname{Var}(K)=\frac{1-p}{p^2}.

0<p<10<p<1のとき、q=1−pq=1-pと置くと、

MQ(s)=pes∑j=0∞(qes)j=pes1−qes(qes<1).M_Q(s)=pe^s\sum_{j=0}^{\infty}(qe^s)^j =\frac{pe^s}{1-qe^s}\qquad(qe^s<1).

qes≥1qe^s\geq1では級数の一般項が零に収束しないので発散し、有限領域はs<−log⁡qs<-\log qである。この領域で

Qs({j})=(1−qes)(qes)j−1(j∈N≥1)Q_s(\{j\})=(1-qe^s)(qe^s)^{j-1}\qquad(j\in\NN)

となるから、QsQ_sは成功確率1−qes1-qe^sの正の幾何分布である。p=1p=1ならばG=1G=1なのでMQ(s)=esM_Q(s)=e^sが全実数で有限であり、指数傾斜後も同じ一点分布である。

Q=U(a,b)Q=U(a,b)の場合、s≠0s\ne0ならば

MQ(s)=1b−a∫abesx dx=esb−esas(b−a).M_Q(s)=\frac1{b-a}\int_a^b e^{sx}\,dx =\frac{e^{sb}-e^{sa}}{s(b-a)}.

被積分関数は有限区間上で有界なので、全実数で有限である。s=0s=0のとき積分は1である。∣s∣≤1|s|\leq1に対してesx≤emax⁡(∣a∣,∣b∣)e^{sx}\leq e^{\max(|a|,|b|)}がx∈[a,b]x\in[a,b]で成り立つので、優収束定理によりMQ(s)→1M_Q(s)\to1(s→0)(s\to0)を得る。指数傾斜後の密度はs≠0s\ne0のとき

qs(x)=sesxesb−esa1[a,b](x),q_s(x)=\frac{s e^{sx}}{e^{sb}-e^{sa}}\mathbf1_{[a,b]}(x),

s=0s=0のときq0(x)=(b−a)−11[a,b](x)q_0(x)=(b-a)^{-1}\mathbf1_{[a,b]}(x)である。

Q=Gamma⁡(α,λ)Q=\operatorname{Gamma}(\alpha,\lambda)の場合、s<λs<\lambdaとすると、rateλ−s>0\lambda-s>0の Gamma 密度の積分が1であることから、

MQ(s)=λαΓ(α)∫0∞xα−1e−(λ−s)x dx=(λλ−s)α.\begin{aligned} M_Q(s) &=\frac{\lambda^\alpha}{\Gamma(\alpha)} \int_0^\infty x^{\alpha-1}e^{-(\lambda-s)x}\,dx\\ &=\left(\frac\lambda{\lambda-s}\right)^\alpha. \end{aligned}

s=λs=\lambdaでは∫1Rxα−1 dx=(Rα−1)/α→∞\int_1^R x^{\alpha-1}\,dx=(R^\alpha-1)/\alpha\to\inftyなので発散する。s>λs>\lambdaではx≥1x\geq1においてe(s−λ)x≥1e^{(s-\lambda)x}\geq1であるから、同じ積分を下から抑え、やはり発散する。したがって有限領域は(−∞,λ)(-\infty,\lambda)であり、正規化した密度は

qs(x)=(λ−s)αΓ(α)xα−1e−(λ−s)x1(0,∞)(x).q_s(x)=\frac{(\lambda-s)^\alpha}{\Gamma(\alpha)}x^{\alpha-1}e^{-(\lambda-s)x}\mathbf1_{(0,\infty)}(x).

ゆえにQs=Gamma⁡(α,λ−s)Q_s=\operatorname{Gamma}(\alpha,\lambda-s)である。Γ(1)=∫0∞e−x dx=1\Gamma(1)=\int_0^\infty e^{-x}\,dx=1であるから、指数密度はGamma⁡(1,λ)\operatorname{Gamma}(1,\lambda)の密度とほとんど至る所で一致する。また、カイ二乗密度はGamma⁡(k/2,1/2)\operatorname{Gamma}(k/2,1/2)の密度と一致するので、両分布の式と有限領域はこの計算から従う。指数傾斜後は、それぞれExp⁡(λ−s)\operatorname{Exp}(\lambda-s)とGamma⁡(k/2,1/2−s)\operatorname{Gamma}(k/2,1/2-s)である。

Q=N(μ,σ2)Q=N(\mu,\sigma^2)の場合には、平方完成により

sx−(x−μ)22σ2=−(x−μ−σ2s)22σ2+μs+σ2s22.sx-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2} =-\frac{(x-\mu-\sigma^2s)^2}{2\sigma^2} +\mu s+\frac{\sigma^2s^2}{2}.

§E11.5 命題 2.5の正規密度の正規化を用いると、

MQ(s)=eμs+σ2s2/2∫R12πσ2e−(x−μ−σ2s)2/(2σ2) dx=eμs+σ2s2/2M_Q(s)=e^{\mu s+\sigma^2s^2/2} \int_{\R}\frac1{\sqrt{2\pi\sigma^2}} e^{-(x-\mu-\sigma^2s)^2/(2\sigma^2)}\,dx =e^{\mu s+\sigma^2s^2/2}

であり、全実数で有限である。正規化した密度はN(μ+σ2s,σ2)N(\mu+\sigma^2s,\sigma^2)の密度である。

各行でMQ(0)=∫1 dQ=1M_Q(0)=\int1\,dQ=1である。各有限領域は零を含む開区間であるから、命題 6.1により、s∈HQs\in H_Qを母数とする各族で独立同分布標本の和は完備かつ十分である。

指数分布についてはM(s)=λ/(λ−s)M(s)=\lambda/(\lambda-s)を微分すると、

M′(s)=λ(λ−s)2,M′′(s)=2λ(λ−s)3.M'(s)=\frac\lambda{(\lambda-s)^2},\qquad M''(s)=\frac{2\lambda}{(\lambda-s)^3}.

§E11.9 定理 4.2により

E[X]=M′(0)=1λ,E[X2]=M′′(0)=2λ2,Var⁡(X)=2λ2−1λ2=1λ2E[X]=M'(0)=\frac1\lambda,\qquad E[X^2]=M''(0)=\frac2{\lambda^2},\qquad \operatorname{Var}(X)=\frac2{\lambda^2}-\frac1{\lambda^2}=\frac1{\lambda^2}

を得る。▨

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