§E9.5可測関数

最終更新

連続関数は、開集合の逆像を開集合へ戻すため、Borel 集合族に関して可測である。たとえば、[0,1][0,1]上の連続関数x↦xnx\mapsto x^nはすべて可測であるが、その点ごとの極限は11で不連続になる。

したがって、関数列の極限を扱う解析では、連続関数だけでは閉じた枠組みにならない。終域の可測集合の逆像がすべて可測になるという条件で定まる可測関数は、連続性より広く、点ごとの極限を保つ。可測関数は、極限操作と Lebesgue 積分を結び付けるために広く用いられる。

さらに、非負の可測関数を非負単関数の増加列で近似することにより、集合の測度から一般の関数の積分へ進む道筋が得られる。実数値関数だけでなく、拡張実数値関数と複素数値関数も同じ可測性の枠組みで扱うことができる。

本記事では、可測関数の基本的な構成と、極限に対する安定性について解説する。

1 可測空間の間の写像

可測性の定義は、終域のシグマ加法族に属するすべての集合の逆像を検査する。

定義 1.1.(X,F)(X,\mathcal{F})と(Y,G)(Y,\mathcal{G})を可測空間とし、f:X→Yf:X\to Yを写像とする。ffが F/G\mathcal{F}/\mathcal{G}可測 (F/G-measurable) であるとは、任意のB∈GB\in\mathcal{G}に対して

f−1(B)∈Ff^{-1}(B)\in\mathcal{F}

が成り立つことをいう。シグマ加法族が文脈から一意に定まる場合には、単にffが可測であるという。

逆像が合成と両立するため、可測写像の合成も可測である。

命題 1.2.(X,F)(X,\mathcal{F})、(Y,G)(Y,\mathcal{G})、(Z,H)(Z,\mathcal{H})を可測空間とする。f:X→Yf:X\to YがF/G\mathcal{F}/\mathcal{G}可測であり、g:Y→Zg:Y\to ZがG/H\mathcal{G}/\mathcal{H}可測であるならば、g∘f:X→Zg\circ f:X\to ZはF/H\mathcal{F}/\mathcal{H}可測である。

証明. 任意のC∈HC\in\mathcal{H}をとる。ggの可測性からg−1(C)∈Gg^{-1}(C)\in\mathcal{G}であり、ffの可測性からf−1(g−1(C))∈Ff^{-1}(g^{-1}(C))\in\mathcal{F}である。逆像の定義により

(g∘f)−1(C)=f−1(g−1(C))(g\circ f)^{-1}(C)=f^{-1}(g^{-1}(C))

が成り立つ。したがって、g∘fg\circ fはF/H\mathcal{F}/\mathcal{H}可測である。▨

命題 1.3.(X,F)(X,\mathcal F)と(Y,G)(Y,\mathcal G)を可測空間とし、H⊆P(Y)\mathcal H\subseteq\mathcal P(Y)がG=σ(H)\mathcal G=\sigma(\mathcal H)を満たすとする。写像f:X→Yf:X\to Yが可測であるための必要十分条件は、任意のH∈HH\in\mathcal Hに対してf−1(H)∈Ff^{-1}(H)\in\mathcal Fが成り立つことである。

証明. 必要性はH⊆G\mathcal H\subseteq\mathcal Gと可測性の定義から従う。十分性を示す。

D={B⊆Y∣f−1(B)∈F}\mathcal D=\{B\subseteq Y\mid f^{-1}(B)\in\mathcal F\}

とおく。逆像は全体集合、補集合および可算和を保つので、D\mathcal DはYY上のシグマ加法族である。仮定からH⊆D\mathcal H\subseteq\mathcal Dであり、§E9.1 命題 2.1によりG=σ(H)⊆D\mathcal G=\sigma(\mathcal H)\subseteq\mathcal Dである。したがって、任意のB∈GB\in\mathcal Gに対してf−1(B)∈Ff^{-1}(B)\in\mathcal Fであり、ffは可測である。▨

位相空間の間の連続写像は、Borel 集合族に関する可測写像を与える。

命題 1.4.(X,OX)(X,\mathcal{O}_X)と(Y,OY)(Y,\mathcal{O}_Y)を位相空間とし、F\mathcal{F}をXX上のシグマ加法族でB(X)⊆F\mathcal{B}(X)\subseteq\mathcal{F}を満たすものとする。写像f:X→Yf:X\to Yが連続であるならば、f:(X,F)→(Y,B(Y))f:(X,\mathcal{F})\to(Y,\mathcal{B}(Y))は可測である。

証明. 任意のU∈OYU\in\mathcal O_Yに対して、連続性からf−1(U)∈OX⊆B(X)⊆Ff^{-1}(U)\in\mathcal O_X\subseteq\mathcal B(X)\subseteq\mathcal Fである。B(Y)=σ(OY)\mathcal B(Y)=\sigma(\mathcal O_Y)であるから、命題 1.3によりffは可測である。▨

2 実数値写像と拡張実数値写像

拡張実数直線を

R‾=[−∞,∞]=R∪{−∞,∞}\overline{\mathbb{R}}=[-\infty,\infty] =\mathbb{R}\cup\{-\infty,\infty\}

と書き、通常の順序を拡張した全順序を入れる。

定義 2.1.R‾\overline{\mathbb{R}}に全順序から定まる順序位相を入れる。その開集合族が生成するシグマ加法族をB(R‾)\mathcal{B}(\overline{\mathbb{R}})と書く。f:X→R‾f:X\to\overline{\mathbb{R}}がF/B(R‾)\mathcal{F}/\mathcal{B}(\overline{\mathbb{R}})可測であるとき、ffを拡張実数値可測関数 (extended-real-valued measurable function) という。

拡張実数直線の Borel 集合族も、有限な端点をもつ左半直線から生成される。

命題 2.2. 拡張実数直線に順序位相を入れ、

Hext={ [−∞,a]∣a∈R }\mathcal{H}_{\mathrm{ext}} =\{\,[-\infty,a]\mid a\in\mathbb{R}\,\}

とおく。このとき、

B(R‾)=σ(Hext)\mathcal{B}(\overline{\mathbb{R}}) =\sigma(\mathcal{H}_{\mathrm{ext}})

が成り立つ。

証明. 各[−∞,a][-\infty,a]は順序位相で閉集合である。したがって、

σ(Hext)⊆B(R‾)\sigma(\mathcal{H}_{\mathrm{ext}}) \subseteq\mathcal{B}(\overline{\mathbb{R}})

である。

次の集合族を考える。

C={ (p,q)∣p,q∈Q, p<q }∪{ [−∞,q)∣q∈Q }∪{ (p,∞]∣p∈Q }.\begin{aligned} \mathcal{C} ={}&\{\,(p,q)\mid p,q\in\mathbb{Q},\ p<q\,\}\\ &{}\cup\{\,[-\infty,q)\mid q\in\mathbb{Q}\,\} \cup\{\, (p,\infty]\mid p\in\mathbb{Q}\,\}. \end{aligned}

Q\mathbb{Q}が可算であることから、C\mathcal{C}は可算である。C\mathcal{C}がR‾\overline{\mathbb{R}}の順序位相の基底であることを確認する。UUを順序位相の開集合とし、x∈U∩Rx\in U\cap\mathbb{R}とする。順序位相の定義から、実数α<x<β\alpha<x<\betaで(α,β)⊆U(\alpha,\beta)\subseteq Uを満たすものが存在する。Q\mathbb{Q}の稠密性により、

α<p<x<q<β\alpha<p<x<q<\beta

を満たすp,q∈Qp,q\in\mathbb{Q}が存在する。したがって、x∈(p,q)⊆Ux\in(p,q)\subseteq Uである。−∞∈U-\infty\in Uならば、あるβ∈R\beta\in\mathbb{R}が存在して[−∞,β)⊆U[-\infty,\beta)\subseteq Uが成り立つ。q<βq<\betaを満たすq∈Qq\in\mathbb{Q}を選べば、−∞∈[−∞,q)⊆U-\infty\in[-\infty,q)\subseteq Uである。∞∈U\infty\in Uの場合には、あるα∈R\alpha\in\mathbb{R}が存在して(α,∞]⊆U(\alpha,\infty]\subseteq Uが成り立つ。p>αp>\alphaを満たすp∈Qp\in\mathbb{Q}を選べば、∞∈(p,∞]⊆U\infty\in(p,\infty]\subseteq Uである。以上により、C\mathcal{C}は可算基である。

任意のq∈Qq\in\mathbb{Q}に対して、

[−∞,q)=⋃r∈Qr<q[−∞,r]∈σ(Hext)[-\infty,q) =\bigcup_{\substack{r\in\mathbb{Q}\\r<q}}[-\infty,r] \in\sigma(\mathcal{H}_{\mathrm{ext}})

である。任意のp∈Qp\in\mathbb{Q}に対して、

(p,∞]=R‾∖[−∞,p]∈σ(Hext)(p,\infty] =\overline{\mathbb{R}}\setminus[-\infty,p] \in\sigma(\mathcal{H}_{\mathrm{ext}})

である。さらに、p<qp<qならば、

(p,q)=[−∞,q)∖[−∞,p]∈σ(Hext)(p,q)=[-\infty,q)\setminus[-\infty,p] \in\sigma(\mathcal{H}_{\mathrm{ext}})

である。したがって、C⊆σ(Hext)\mathcal{C}\subseteq\sigma(\mathcal{H}_{\mathrm{ext}})である。

任意の順序位相の開集合は、可算集合族C\mathcal{C}の部分族の和集合である。この和集合は高々可算個の和集合であるから、すべての開集合がσ(Hext)\sigma(\mathcal{H}_{\mathrm{ext}})に属する。開集合族が生成するシグマ加法族の最小性から、

B(R‾)⊆σ(Hext)\mathcal{B}(\overline{\mathbb{R}}) \subseteq\sigma(\mathcal{H}_{\mathrm{ext}})

を得る。二つの包含により、主張が従う。▨

半直線生成を用いると、終域のすべての Borel 集合を個別に検査する必要がなくなる。

命題 2.3.(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、f:X→Rf:X\to\mathbb{R}またはf:X→R‾f:X\to\overline{\mathbb{R}}とする。値域には対応する Borel 集合族を入れる。次の条件は互いに同値であり、いずれもffが可測であることと同値である。

  1. 任意のa∈Ra\in\mathbb{R}に対して{x∈X∣f(x)>a}∈F\{x\in X\mid f(x)>a\}\in\mathcal{F}である。
  2. 任意のa∈Ra\in\mathbb{R}に対して{x∈X∣f(x)≥a}∈F\{x\in X\mid f(x)\geq a\}\in\mathcal{F}である。
  3. 任意のa∈Ra\in\mathbb{R}に対して{x∈X∣f(x)<a}∈F\{x\in X\mid f(x)<a\}\in\mathcal{F}である。
  4. 任意のa∈Ra\in\mathbb{R}に対して{x∈X∣f(x)≤a}∈F\{x\in X\mid f(x)\leq a\}\in\mathcal{F}である。

証明. 最初にf:X→R‾f:X\to\overline{\mathbb{R}}とする。ffが可測ならば、四種類の半直線がB(R‾)\mathcal{B}(\overline{\mathbb{R}})に属するので、(1)、(2)、(3)、および(4)が成り立つ。

(1)を仮定する。任意のa∈Ra\in\mathbb{R}に対して、

f−1([−∞,a])=X∖{x∈X∣f(x)>a}∈Ff^{-1}([-\infty,a]) =X\setminus\{x\in X\mid f(x)>a\}\in\mathcal{F}

である。命題 2.2と命題 1.3により、ffは可測である。

四条件の間の同値性は、任意のa∈Ra\in\mathbb{R}に対する次の集合等式から従う。

{f≥a}=⋂n=1∞{f>a−1/n},{f<a}=X∖{f≥a},{f≤a}=⋂n=1∞{f<a+1/n},{f>a}=X∖{f≤a}.\begin{aligned} \{f\geq a\} &=\bigcap_{n=1}^{\infty}\{f>a-1/n\},\\ \{f<a\} &=X\setminus\{f\geq a\},\\ \{f\leq a\} &=\bigcap_{n=1}^{\infty}\{f<a+1/n\},\\ \{f>a\} &=X\setminus\{f\leq a\}. \end{aligned}

ここで、例えば{f≥a}\{f\geq a\}は{x∈X∣f(x)≥a}\{x\in X\mid f(x)\geq a\}の略記である。シグマ加法族は可算共通部分と差集合に対して閉じているため、(1)⇒\Rightarrow(2)、(2)⇒\Rightarrow(3)、(3)⇒\Rightarrow(4)、(4)⇒\Rightarrow(1)が順に従う。

f:X→Rf:X\to\mathbb{R}の場合には、§E9.1 命題 3.3が

B(R)=σ({ (−∞,a]∣a∈R })\mathcal{B}(\mathbb{R}) =\sigma(\{\,(-\infty,a]\mid a\in\mathbb{R}\,\})

を与える。拡張実数値の場合と同じ逆像の議論および同じ集合等式により、実数値の場合の同値性も従う。▨

可測集合の指示関数は、半直線判定を直接適用する例である。

例 2.4 (可測集合の指示関数).(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、A∈FA\in\mathcal{F}とする。指示関数

1A(x)={1,x∈A,0,x∈X∖A\mathbf{1}_A(x) = \begin{cases} 1,&x\in A,\\ 0,&x\in X\setminus A \end{cases}

は実数値可測関数である。実際、任意のa∈Ra\in\mathbb{R}に対して、

{x∈X∣1A(x)>a}={X,a<0,A,0≤a<1,∅,a≥1\{x\in X\mid\mathbf{1}_A(x)>a\} = \begin{cases} X,&a<0,\\ A,&0\leq a<1,\\ \emptyset,&a\geq1 \end{cases}

であり、右辺の各集合はF\mathcal{F}に属する。

3 有限実数値可測関数の代数演算

拡張実数上では∞−∞\infty-\inftyや0⋅∞0\cdot\inftyが定義されないため、通常の代数演算に関する次の主張は有限実数値関数に限定する。

命題 3.1.(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、f,g:X→Rf,g:X\to\mathbb{R}を可測関数とする。任意のc∈Rc\in\mathbb{R}に対してcfcfは可測である。また、f+gf+g、f−gf-g、fgfg、max⁡{f,g}\max\{f,g\}、min⁡{f,g}\min\{f,g\}、および∣f∣|f|は実数値可測関数である。

証明. 写像t↦ctt\mapsto ct、t↦t2t\mapsto t^2およびt↦∣t∣t\mapsto|t|はR\R上で連続である。命題 1.4と命題 1.2により、cfcf、f2f^2および∣f∣|f|は可測である。

任意のa∈Ra\in\mathbb{R}に対して、Q\mathbb{Q}の稠密性から

{f+g>a}=⋃q∈Q({f>q}∩{g>a−q})\{f+g>a\} =\bigcup_{q\in\mathbb{Q}}\bigl(\{f>q\}\cap\{g>a-q\}\bigr)

が成り立つ。実際、f(x)+g(x)>af(x)+g(x)>aならばa−g(x)<q<f(x)a-g(x)<q<f(x)を満たすq∈Qq\in\mathbb{Q}が存在する。逆に、f(x)>qf(x)>qかつg(x)>a−qg(x)>a-qならばf(x)+g(x)>af(x)+g(x)>aである。右辺は可測集合の可算和であるから、命題 2.3によりf+gf+gは可測である。スカラー倍と加法に関する閉性から、f−g=f+(−g)f-g=f+(-g)も可測である。恒等式

fg=12((f+g)2−f2−g2)fg=\frac12\bigl((f+g)^2-f^2-g^2\bigr)

と平方、加法、減法およびスカラー倍に関する閉性から、fgfgは可測である。

任意のa∈Ra\in\mathbb{R}に対して、

{max⁡{f,g}>a}={f>a}∪{g>a},{min⁡{f,g}<a}={f<a}∪{g<a}\begin{aligned} \{\max\{f,g\}>a\}&=\{f>a\}\cup\{g>a\},\\ \{\min\{f,g\}<a\}&=\{f<a\}\cup\{g<a\} \end{aligned}

であるから、命題 2.3によりmax⁡{f,g}\max\{f,g\}とmin⁡{f,g}\min\{f,g\}は可測である。▨

4 可算上限・可算下限・点ごとの極限

拡張実数直線が正負の無限大を含むため、任意の拡張実数列は上限、下限、上極限、および下極限を拡張実数としてもつ。

定理 4.1.(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、各正の整数nnに対してfn:X→R‾f_n:X\to\overline{\mathbb{R}}を可測関数とする。このとき、点ごとに定めた

sup⁡n≥1fn,inf⁡n≥1fn,lim sup⁡n→∞fn,lim inf⁡n→∞fn\sup_{n\geq1}f_n,\qquad \inf_{n\geq1}f_n,\qquad \limsup_{n\to\infty}f_n,\qquad \liminf_{n\to\infty}f_n

は拡張実数値可測関数である。さらに、各x∈Xx\in Xにおいてlim⁡n→∞fn(x)\lim_{n\to\infty}f_n(x)が拡張実数として存在するならば、点ごとの極限

f(x)=lim⁡n→∞fn(x)f(x)=\lim_{n\to\infty}f_n(x)

によって定まるf:X→R‾f:X\to\overline{\mathbb{R}}は可測である。

証明.

S(x)=sup⁡n≥1fn(x),I(x)=inf⁡n≥1fn(x)S(x)=\sup_{n\geq1}f_n(x),\qquad I(x)=\inf_{n\geq1}f_n(x)

とおく。任意のa∈Ra\in\mathbb{R}に対して、

{S>a}=⋃n=1∞{fn>a}\{S>a\}=\bigcup_{n=1}^{\infty}\{f_n>a\}

が成り立つ。実際、あるnnが存在してfn(x)>af_n(x)>aならばS(x)>aS(x)>aである。逆に、すべてのnnに対してfn(x)≤af_n(x)\leq aならばS(x)≤aS(x)\leq aである。右辺は可測集合の可算和であるから、SSは可測である。

同じく、任意のa∈Ra\in\mathbb{R}に対して、

{I<a}=⋃n=1∞{fn<a}\{I<a\}=\bigcup_{n=1}^{\infty}\{f_n<a\}

が成り立つ。実際、あるnnが存在してfn(x)<af_n(x)<aならばI(x)<aI(x)<aである。逆に、すべてのnnに対してfn(x)≥af_n(x)\geq aならばI(x)≥aI(x)\geq aである。半直線判定から、IIも可測である。

各正の整数mmに対して、

Sm(x)=sup⁡n≥mfn(x),Im(x)=inf⁡n≥mfn(x)S_m(x)=\sup_{n\geq m}f_n(x),\qquad I_m(x)=\inf_{n\geq m}f_n(x)

とおく。前二段落を各末尾列へ適用すると、すべてのSmS_mとImI_mは可測である。拡張実数列の上極限と下極限の定義により、

lim sup⁡n→∞fn=inf⁡m≥1Sm,lim inf⁡n→∞fn=sup⁡m≥1Im\limsup_{n\to\infty}f_n=\inf_{m\geq1}S_m,\qquad \liminf_{n\to\infty}f_n=\sup_{m\geq1}I_m

が点ごとに成り立つ。前二段落の可算下限と可算上限に関する結論を適用すると、lim sup⁡nfn\limsup_n f_nとlim inf⁡nfn\liminf_n f_nは可測である。

各点で拡張実数としての極限が存在する場合には、

f=lim sup⁡n→∞fn=lim inf⁡n→∞fnf=\limsup_{n\to\infty}f_n=\liminf_{n\to\infty}f_n

が点ごとに成り立つ。したがって、ffは可測である。▨

例 4.2.[0,1][0,1]に通常の相対位相と Borel 集合族を入れ、各n∈N≥1n\in\NNに対してfn:[0,1]→Rf_n:[0,1]\to\Rをfn(x)=xnf_n(x)=x^nと定める。各fnf_nは連続であるから、命題 1.4により可測である。また、

lim⁡n→∞fn(x)={0,0≤x<1,1,x=1=1{1}(x)\lim_{n\to\infty}f_n(x) = \begin{cases} 0,&0\leq x<1,\\ 1,&x=1 \end{cases} =\mathbf{1}_{\{1\}}(x)

である。点ごとの極限は定理 4.1により可測である。また、{1}\{1\}は[0,1][0,1]の閉集合であるから、例 2.4からも可測性を確認することができる。一方、開区間(1/2,3/2)(1/2,3/2)の逆像{1}\{1\}は[0,1][0,1]の相対位相で開集合ではない。したがって、極限関数は11で連続でない。

5 単関数と増加近似

単関数は有限個の実数だけを値としてとる可測関数であり、値がすべて非負である場合を区別して非負単関数という。

定義 5.1.(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とする。実数値可測関数φ:X→R\varphi:X\to\mathbb{R}の像φ(X)\varphi(X)が有限集合であるとき、φ\varphiを単関数 (simple function) という。さらに、すべてのx∈Xx\in Xに対してφ(x)≥0\varphi(x)\geq0が成り立つ単関数を非負単関数 (nonnegative simple function) という。

単関数は、可測集合の有限分割における指示関数の線形結合として表される。

命題 5.2.(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とする。単関数φ\varphiの相異なる値をc1,…,ckc_1,\dots,c_kとし、Ai=φ−1({ci})A_i=\varphi^{-1}(\{c_i\})とおく。このとき、各AiA_iは可測であり、A1,…,AkA_1,\dots,A_kはXXの互いに交わらない分割であり、

φ=∑i=1kci1Ai\varphi=\sum_{i=1}^{k}c_i\mathbf{1}_{A_i}

が成り立つ。

逆に、A1,…,Ak∈FA_1,\dots,A_k\in\mathcal{F}がXXの互いに交わらない分割であり、c1,…,ck∈Rc_1,\dots,c_k\in\mathbb{R}であるならば、上の式で定まるφ\varphiは単関数である。c1,…,ck≥0c_1,\dots,c_k\geq0ならば、φ\varphiは非負単関数である。

証明. 各一元集合{ci}\{c_i\}はR\mathbb{R}の Borel 集合であり、φ\varphiは可測であるから、Ai∈FA_i\in\mathcal{F}である。値の逆像の定義からA1,…,AkA_1,\dots,A_kは互いに交わらず、その和集合はXXである。x∈Aix\in A_iならば、右辺の値はci=φ(x)c_i=\varphi(x)であるから、表示式が点ごとに成り立つ。

逆向きでは、任意の Borel 集合B⊆RB\subseteq\mathbb{R}に対して、

φ−1(B)=⋃{i∣ci∈B}Ai\varphi^{-1}(B)=\bigcup_{\{i\mid c_i\in B\}}A_i

である。右辺は有限個の可測集合の和集合であるから可測である。また、φ\varphiの像は{c1,…,ck}\{c_1,\dots,c_k\}の部分集合であるから有限である。したがって、φ\varphiは単関数である。c1,…,ck≥0c_1,\dots,c_k\geq0ならば、表示式からφ(x)≥0\varphi(x)\geq0がすべてのx∈Xx\in Xについて成り立つので、φ\varphiは非負単関数である。▨

任意の非負拡張実数値可測関数に対して、値を二進格子上で下から近似し、値がnn以上の部分ではnn番目の近似値をnnとする。

定理 5.3.(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、f:X→[0,∞]f:X\to[0,\infty]を拡張実数値可測関数とする。このとき、非負単関数の列(φn)n≥1(\varphi_n)_{n\geq1}が存在し、任意のx∈Xx\in Xに対して

0≤φn(x)≤φn+1(x)≤f(x)0\leq\varphi_n(x)\leq\varphi_{n+1}(x)\leq f(x)

がすべての正の整数nnについて成り立つ。さらに、

lim⁡n→∞φn(x)=f(x)\lim_{n\to\infty}\varphi_n(x)=f(x)

が任意のx∈Xx\in Xについて拡張実数の意味で成り立つ。

証明. 各正の整数nnに対して、

φn(x)={k2n,k2n≤f(x)<k+12n(0≤k<n2n),n,f(x)≥n\varphi_n(x)= \begin{cases} \dfrac{k}{2^n}, &\dfrac{k}{2^n}\leq f(x)<\dfrac{k+1}{2^n} \quad(0\leq k<n2^n),\\[6pt] n,&f(x)\geq n \end{cases}

と定める。第一の場合の整数kkは一意に定まる。

0≤k<n2n0\leq k<n2^nに対して、

An,k={x∈X | k2n≤f(x)<k+12n}A_{n,k} =\left\{x\in X\ \middle|\ \frac{k}{2^n}\leq f(x)<\frac{k+1}{2^n}\right\}

とおき、

An,n2n={x∈X∣f(x)≥n}A_{n,n2^n}=\{x\in X\mid f(x)\geq n\}

とおく。命題 2.3により、各An,kA_{n,k}は可測である。

φn=∑k=0n2nk2n1An,k\varphi_n =\sum_{k=0}^{n2^n}\frac{k}{2^n}\mathbf{1}_{A_{n,k}}

である。例 2.4と命題 3.1により、φn\varphi_nは可測である。その値域は有限集合{k/2n∣0≤k≤n2n}\{k/2^n\mid 0\leq k\leq n2^n\}に含まれ、各係数は非負である。したがって、φn\varphi_nは非負単関数である。定義から0≤φn(x)≤f(x)0\leq\varphi_n(x)\leq f(x)が任意のx∈Xx\in Xについて成り立つ。

t=f(x)t=f(x)とし、min⁡{∞,n}=n\min\{\infty,n\}=nと約束する。上の定義は

φn(x)=2−n⌊2nmin⁡{t,n}⌋\varphi_n(x) =2^{-n}\left\lfloor 2^n\min\{t,n\}\right\rfloor

と書くことができる。任意の実数uuに対して⌊2u⌋≥2⌊u⌋\lfloor2u\rfloor\geq2\lfloor u\rfloorが成り立つ。t≤nt\leq nならば、

φn+1(x)=2−(n+1)⌊2n+1t⌋≥2−(n+1) 2⌊2nt⌋=φn(x).\begin{aligned} \varphi_{n+1}(x) &=2^{-(n+1)}\lfloor2^{n+1}t\rfloor\\ &\geq2^{-(n+1)}\,2\lfloor2^nt\rfloor =\varphi_n(x). \end{aligned}

t>nt>nの場合にはφn(x)=n\varphi_n(x)=nである。また、min⁡{t,n+1}≥n\min\{t,n+1\}\geq nであるから、

φn+1(x)=2−(n+1)⌊2n+1min⁡{t,n+1}⌋≥n=φn(x)\varphi_{n+1}(x) =2^{-(n+1)} \left\lfloor2^{n+1}\min\{t,n+1\}\right\rfloor \geq n=\varphi_n(x)

である。したがって、(φn(x))n≥1(\varphi_n(x))_{n\geq1}は任意のxxについて広義単調増加である。

t<∞t<\inftyならば、n>tn>tを満たすすべての正の整数nnに対して

0≤t−φn(x)<2−n0\leq t-\varphi_n(x)<2^{-n}

が成り立つ。したがって、φn(x)→t=f(x)\varphi_n(x)\to t=f(x)である。t=∞t=\inftyならば、すべての正の整数nnに対してφn(x)=n\varphi_n(x)=nであるから、φn(x)→∞=f(x)\varphi_n(x)\to\infty=f(x)である。以上により、点ごとの収束が従う。▨

6 複素数値写像

複素数全体C\mathbb{C}をR2\mathbb{R}^2と同一視し、Euclid 位相から定まる Borel 集合族B(C)\mathcal{B}(\mathbb{C})を入れる。

定理 6.1.(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、f:X→Cf:X\to\mathbb{C}を写像とする。次の二条件は同値である。

  1. f:(X,F)→(C,B(C))f:(X,\mathcal{F})\to(\mathbb{C},\mathcal{B}(\mathbb{C}))は可測である。
  2. Re⁡f:X→R\operatorname{Re}f:X\to\mathbb{R}とIm⁡f:X→R\operatorname{Im}f:X\to\mathbb{R}は可測である。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。(1)を仮定する。座標写像

Re⁡:C→R,Im⁡:C→R\operatorname{Re}:\mathbb{C}\to\mathbb{R}, \qquad \operatorname{Im}:\mathbb{C}\to\mathbb{R}

は Euclid 位相について連続である。命題 1.4により、両座標写像は Borel 集合族に関して可測である。命題 1.2をffと各座標写像に適用すると、Re⁡f\operatorname{Re}fとIm⁡f\operatorname{Im}fは可測である。

(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。(2)を仮定する。有理数a<ba<bおよびc<dc<dに対する開長方形

R(a,b;c,d)={ z∈C∣a<Re⁡z<b, c<Im⁡z<d }R(a,b;c,d) =\{\,z\in\mathbb{C}\mid a<\operatorname{Re}z<b,\ c<\operatorname{Im}z<d\,\}

全体の集合族をRQ\mathcal{R}_{\mathbb{Q}}とする。Q4\mathbb{Q}^4が可算であるから、RQ\mathcal{R}_{\mathbb{Q}}は可算である。

U⊆CU\subseteq\mathbb{C}を開集合とし、z=x+iy∈Uz=x+iy\in Uとする。あるε>0\varepsilon>0が存在して、中心zz、半径ε\varepsilonの開円板がUUに含まれる。Q\mathbb{Q}の稠密性により、

x−ε2<a<x<b<x+ε2,y−ε2<c<y<d<y+ε2x-\frac{\varepsilon}{\sqrt{2}}<a<x<b<x+\frac{\varepsilon}{\sqrt{2}}, \qquad y-\frac{\varepsilon}{\sqrt{2}}<c<y<d<y+\frac{\varepsilon}{\sqrt{2}}

を満たす有理数a,b,c,da,b,c,dが存在する。このとき、z∈R(a,b;c,d)z\in R(a,b;c,d)であり、R(a,b;c,d)R(a,b;c,d)は上の開円板に含まれる。したがって、RQ\mathcal{R}_{\mathbb{Q}}はC\mathbb{C}の Euclid 位相の可算基である。

各R(a,b;c,d)∈RQR(a,b;c,d)\in\mathcal{R}_{\mathbb{Q}}に対して、

f−1(R(a,b;c,d))={a<Re⁡f<b}∩{c<Im⁡f<d}∈Ff^{-1}(R(a,b;c,d)) =\{a<\operatorname{Re}f<b\}\cap\{c<\operatorname{Im}f<d\} \in\mathcal{F}

である。ここで、右辺の可測性には(2)と実数の開区間が Borel 集合であることを用いた。

任意の開集合U⊆CU\subseteq\mathbb{C}は、UUに含まれるRQ\mathcal R_{\Q}の元全体の和集合である。RQ\mathcal R_{\Q}は可算であり、その各元は開集合であるから、

B(C)=σ(RQ)\mathcal B(\C)=\sigma(\mathcal R_{\Q})

である。命題 1.3により、ffは可測である。▨

7 演習

問題 7.1.X={0,1}X=\{0,1\}、F={∅,X}\mathcal{F}=\{\emptyset,X\}、G=P(X)\mathcal{G}=\mathcal{P}(X)とする。同じ恒等写像について、

id⁡X:(X,F)→(X,G)\operatorname{id}_X:(X,\mathcal{F})\to(X,\mathcal{G})

は可測でなく、

id⁡X:(X,G)→(X,F)\operatorname{id}_X:(X,\mathcal{G})\to(X,\mathcal{F})

は可測であることを示せ。

解答.

第一の恒等写像について、{0}∈G\{0\}\in\mathcal{G}であるが、

id⁡X−1({0})={0}∉F\operatorname{id}_X^{-1}(\{0\})=\{0\}\notin\mathcal{F}

であるから、この写像は可測でない。第二の恒等写像の終域の可測集合は∅\emptysetとXXだけであり、それぞれの逆像は∅\emptysetとXXである。どちらもG\mathcal{G}に属するので、第二の恒等写像は可測である。▨

参考文献

  1. Donald L. Cohn, Measure Theory, 2nd ed., Birkhäuser Advanced Texts Basler Lehrbücher, Birkhäuser, 2013.
  2. Achim Klenke, Probability Theory, 3rd ed., Universitext, Springer, 2020.

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