§E9.12L^p 空間

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Lebesgue 積分は、関数の大きさを積分によって測る方法を与える。しかし、零集合上だけ値が異なる二つの関数には同じ大きさが割り当てられるため、関数そのものの集合上では零ノルムをもつ非零関数が生じる。LpL^p空間を構成するには、最初にほとんど至る所で等しい関数を同一視し、その商集合上に線形演算とノルムを定める必要がある。

本記事では、任意の測度空間に対して、この商構成を代表元に依存しない形で行う。続いて Young の不等式から Hölder の不等式を導き、Hölder の不等式から Minkowski の不等式を導く。証明では測度の有限性もシグマ有限性も用いない。

1 ほとんど至る所での同一視

スカラー体をK∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}とする。測度空間(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)上の有限値K\mathbb{K}値可測関数全体を

MK(X)={ f:X→K∣f は可測である }\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X) =\{\,f:X\to\mathbb{K}\mid f\text{ は可測である}\,\}

と書く。有限値という条件は、関数が正または負の無限大を値としてとらないことを意味する。

定義 1.1.(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、f,g∈MK(X)f,g\in\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X)とする。関係∼μ\sim_\muを

f∼μg⟺ある Z∈F が存在し、 μ(Z)=0 かつ ∀x∈X∖Z, f(x)=g(x)f\sim_\mu g \quad\Longleftrightarrow\quad \text{ある }Z\in\mathcal{F}\text{ が存在し、 } \mu(Z)=0\text{ かつ } \forall x\in X\setminus Z,\ f(x)=g(x)

によって定める。

この定義は、ほとんど至る所で成り立つ性質§E9.2 定義 3.2を二つの関数の等式へ適用したものである。

命題 1.2. 任意の測度空間(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)とK∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}に対して、定義 1.1の関係∼μ\sim_\muはMK(X)\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X)上の同値関係である。

証明. 反射律を示す。任意のf∈MK(X)f\in\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X)に対して、例外集合をZ=∅Z=\emptysetとすれば、μ(Z)=0\mu(Z)=0であり、すべてのx∈X∖Zx\in X\setminus Zに対してf(x)=f(x)f(x)=f(x)である。したがって、f∼μff\sim_\mu fである。

対称律を示す。f∼μgf\sim_\mu gとする。ある可測零集合ZZが存在して、X∖ZX\setminus Z上でf=gf=gが成り立つ。等号の対称律により同じ集合上でg=fg=fが成り立つため、g∼μfg\sim_\mu fである。

推移律を示す。f∼μgf\sim_\mu gかつg∼μhg\sim_\mu hとする。可測零集合ZZとWWを、X∖ZX\setminus Z上でf=gf=gが成り立ち、X∖WX\setminus W上でg=hg=hが成り立つように選ぶ。Z∪W∈FZ\cup W\in\mathcal{F}であり、測度の可算劣加法性§E9.2 命題 2.1により

μ(Z∪W)≤μ(Z)+μ(W)=0\mu(Z\cup W)\leq\mu(Z)+\mu(W)=0

である。したがって、Z∪WZ\cup Wは可測零集合である。任意のx∈X∖(Z∪W)x\in X\setminus(Z\cup W)に対してf(x)=g(x)=h(x)f(x)=g(x)=h(x)であるから、f∼μhf\sim_\mu hが成り立つ。以上により、反射律、対称律、および推移律がすべて成り立つ。▨

商集合上に演算を定める前に、可測関数全体が点ごとの演算について閉じていることを確認する。実数値の場合は§E9.5 命題 3.1が閉性を与える。複素数値の場合は、§E9.5 定理 6.1と実部および虚部の公式を用いる。

命題 1.3. 任意の測度空間(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)とK∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}に対して、商集合

MK(X)/∼μ\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X)/{\sim_\mu}

上の加法とスカラー倍を

[f]+[g]=[f+g],α[f]=[αf](f,g∈MK(X), α∈K)[f]+[g]=[f+g], \qquad \alpha[f]=[\alpha f] \quad \bigl(f,g\in\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X),\ \alpha\in\mathbb{K}\bigr)

によって定めることができる。これらの演算は代表元に依存せず、MK(X)/∼μ\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X)/{\sim_\mu}をK\mathbb{K}上のベクトル空間にする。

証明. 最初に、点ごとの演算が有限値可測関数を与えることを示す。K=R\mathbb{K}=\mathbb{R}の場合には、§E9.5 命題 3.1によりf+gf+gとαf\alpha fは可測である。K=C\mathbb{K}=\mathbb{C}の場合には、

Re⁡(f+g)=Re⁡f+Re⁡g,Im⁡(f+g)=Im⁡f+Im⁡g\operatorname{Re}(f+g)=\operatorname{Re}f+\operatorname{Re}g, \qquad \operatorname{Im}(f+g)=\operatorname{Im}f+\operatorname{Im}g

が成り立つ。さらに、α=a+ib\alpha=a+ibおよびf=u+ivf=u+ivと書けば、

Re⁡(αf)=au−bv,Im⁡(αf)=av+bu\operatorname{Re}(\alpha f)=au-bv, \qquad \operatorname{Im}(\alpha f)=av+bu

である。実数値可測関数の代数演算に関する閉性と§E9.5 定理 6.1により、f+gf+gとαf\alpha fは複素数値可測関数である。したがって、どちらのスカラー体についても、表示式の右辺はMK(X)\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X)の元である。

次に、加法が代表元に依存しないことを示す。f∼μf′f\sim_\mu f'かつg∼μg′g\sim_\mu g'とする。可測零集合ZZとWWを、それぞれの等式の例外集合として選ぶ。前命題の証明と同じ可算劣加法性によりZ∪WZ\cup Wは可測零集合であり、X∖(Z∪W)X\setminus(Z\cup W)上では

f+g=f′+g′f+g=f'+g'

が成り立つ。したがって、f+g∼μf′+g′f+g\sim_\mu f'+g'である。この代表元に関する不変性は、二変数写像の商集合上への降下条件§E1.3 命題 4.4を満たすことを意味するため、[f]+[g]=[f+g][f]+[g]=[f+g]は代表元に依存しない。

スカラー倍について、f∼μf′f\sim_\mu f'とする。ある可測零集合ZZの外でf=f′f=f'が成り立つため、同じ集合の外でαf=αf′\alpha f=\alpha f'が成り立つ。したがって、αf∼μαf′\alpha f\sim_\mu\alpha f'であり、商集合上への降下条件§E1.3 定理 4.1によりスカラー倍も代表元に依存しない。

最後に、ベクトル空間の八つの公理§D3.6 定義 1.1を確認する。[f],[g],[h][f],[g],[h]を商集合の任意の元とし、α,β∈K\alpha,\beta\in\mathbb{K}とする。点ごとの関数演算が満たす結合法則、交換法則、および分配法則から、

([f]+[g])+[h]=[(f+g)+h]=[f+(g+h)]=[f]+([g]+[h]),[f]+[g]=[f+g]=[g+f]=[g]+[f],[f]+[0]=[f+0]=[f],[f]+[−f]=[f−f]=[0],α([f]+[g])=[α(f+g)]=[αf+αg]=α[f]+α[g],(α+β)[f]=[(α+β)f]=[αf+βf]=α[f]+β[f],(αβ)[f]=[(αβ)f]=[α(βf)]=α(β[f]),1[f]=[1f]=[f]\begin{aligned} ([f]+[g])+[h]&=[(f+g)+h]=[f+(g+h)]=[f]+([g]+[h]),\\ [f]+[g]&=[f+g]=[g+f]=[g]+[f],\\ [f]+[0]&=[f+0]=[f],\\ [f]+[-f]&=[f-f]=[0],\\ \alpha([f]+[g])&=[\alpha(f+g)]=[\alpha f+\alpha g] =\alpha[f]+\alpha[g],\\ (\alpha+\beta)[f]&=[(\alpha+\beta)f]=[\alpha f+\beta f] =\alpha[f]+\beta[f],\\ (\alpha\beta)[f]&=[(\alpha\beta)f]=[\alpha(\beta f)] =\alpha(\beta[f]),\\ 1[f]&=[1f]=[f] \end{aligned}

が成り立つ。したがって、零ベクトルは[0][0]であり、[f][f]の加法逆元は[−f][-f]である。八つの公理がすべて成り立つため、商集合はK\mathbb{K}上のベクトル空間である。▨

2 本質的上限とLpL^pの定義

p=∞p=\inftyの場合には、点ごとの上限ではなく、零集合上の値を無視した上限を用いる。

定義 2.1.(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、f∈MK(X)f\in\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X)とする。集合

Uf={ M∈[0,∞)∣∣f∣≤M が μ に関してほとんど至る所で成り立つ }\mathcal{U}_f =\{\,M\in[0,\infty)\mid |f|\leq M \text{ が }\mu\text{ に関してほとんど至る所で成り立つ}\,\}

を用いて、

ess sup⁡x∈X∣f(x)∣=inf⁡Uf∈[0,∞]\operatorname*{ess\,sup}_{x\in X}|f(x)| =\inf\mathcal{U}_f\in[0,\infty]

と定める。ただし、Uf=∅\mathcal{U}_f=\emptysetの場合にはinf⁡Uf=∞\inf\mathcal{U}_f=\inftyと定める。この値が有限であるとき、ffは本質的に有界 (essentially bounded) であるという。

本質的上限が有限である場合には、本質的上限そのものが、ほとんど至る所での上界になる。この事実は、後の端点の証明で必要となる。

補題 2.2. 任意の測度空間(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)とf∈MK(X)f\in\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X)に対して、

A=ess sup⁡x∈X∣f(x)∣<∞A=\operatorname*{ess\,sup}_{x\in X}|f(x)|<\infty

ならば、∣f∣≤A|f|\leq Aがμ\muに関してほとんど至る所で成り立つ。また、M∈[0,∞)M\in[0,\infty)について∣f∣≤M|f|\leq Mがほとんど至る所で成り立つならば、A≤MA\leq Mである。

証明.A<∞A<\inftyならば、Uf\mathcal{U}_fは空でない。各正の整数nnに対して、下限の定義により、M<A+1/nM<A+1/nを満たすM∈UfM\in\mathcal{U}_fが存在する。Uf\mathcal{U}_fは上方に閉じているため、A+1/n∈UfA+1/n\in\mathcal{U}_fである。実際、M∈UfM\in\mathcal{U}_fかつL≥ML\geq Mならば、∣f∣≤M|f|\leq Mが成り立つ例外集合と同じ集合の外で∣f∣≤L|f|\leq Lが成り立つため、L∈UfL\in\mathcal{U}_fである。ここで、

Zn={x∈X | ∣f(x)∣>A+1n}Z_n=\left\{x\in X\ \middle|\ |f(x)|>A+\frac{1}{n}\right\}

と定める。絶対値の可測性と半直線による可測性の判定§E9.5 命題 2.3によりZn∈FZ_n\in\mathcal{F}である。また、A+1/n∈UfA+1/n\in\mathcal{U}_fであるから、ZnZ_nは可測零集合に含まれる。測度の単調性によりμ(Zn)=0\mu(Z_n)=0である。可算劣加法性により

Z=⋃n=1∞ZnZ=\bigcup_{n=1}^{\infty}Z_n

は可測零集合である。任意のx∈X∖Zx\in X\setminus Zに対して、すべての正の整数nnについて

∣f(x)∣≤A+1n|f(x)|\leq A+\frac{1}{n}

である。したがって、∣f(x)∣≤A|f(x)|\leq Aである。よって、∣f∣≤A|f|\leq Aがほとんど至る所で成り立つ。

∣f∣≤M|f|\leq Mがほとんど至る所で成り立つならば、M∈UfM\in\mathcal{U}_fである。下限の定義からA=inf⁡Uf≤MA=\inf\mathcal{U}_f\leq Mが従う。▨

ここで、すべての指数に対するLpL^p空間と、後にノルムであることを証明する量を定める。

定義 2.3.(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を任意の測度空間とし、K∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}とする。

1≤p<∞1\leq p<\inftyに対して、

Lp(X,F,μ;K)={ [f]∈MK(X)/∼μ | ∫X∣f∣p dμ<∞ }L^p(X,\mathcal{F},\mu;\mathbb{K}) =\left\{\,[f]\in\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X)/{\sim_\mu} \ \middle|\ \int_X|f|^p\,d\mu<\infty\,\right\}

と定め、

∥[f]∥p=(∫X∣f∣p dμ)1/p\|[f]\|_p =\left(\int_X|f|^p\,d\mu\right)^{1/p}

と定める。

p=∞p=\inftyに対して、

L∞(X,F,μ;K)={ [f]∈MK(X)/∼μ | ess sup⁡x∈X∣f(x)∣<∞ }L^\infty(X,\mathcal{F},\mu;\mathbb{K}) =\left\{\,[f]\in\mathcal{M}_{\mathbb{K}}(X)/{\sim_\mu} \ \middle|\ \operatorname*{ess\,sup}_{x\in X}|f(x)|<\infty\,\right\}

と定め、

∥[f]∥∞=ess sup⁡x∈X∣f(x)∣\|[f]\|_\infty =\operatorname*{ess\,sup}_{x\in X}|f(x)|

と定める。測度空間とスカラー体が文脈から一意に定まる場合には、Lp(μ)L^p(\mu)またはLpL^pと略記する。

定義に現れる所属条件と量が同値類の代表元に依存しないことを確認する。

命題 2.4. 任意の測度空間(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)、任意のK∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}、および任意の1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyに対して、定義 2.3の所属条件と∥[f]∥p\|[f]\|_pの値は、同値類[f][f]の代表元に依存しない。

証明.f∼μgf\sim_\mu gとする。1≤p<∞1\leq p<\inftyの場合には、∣f∣p=∣g∣p|f|^p=|g|^pがほとんど至る所で成り立つ。絶対値写像とt↦tpt\mapsto t^pは連続であるため、可測写像の合成§E9.5 命題 1.2と連続写像の可測性§E9.5 命題 1.4により、∣f∣p|f|^pと∣g∣p|g|^pは非負可測関数である。ほとんど至る所で等しい非負可測関数の積分値の不変性§E9.6 定理 4.2により、

∫X∣f∣p dμ=∫X∣g∣p dμ\int_X|f|^p\,d\mu=\int_X|g|^p\,d\mu

である。したがって、積分の有限性とそのpp乗根は代表元に依存しない。

p=∞p=\inftyの場合を示す。M∈UfM\in\mathcal{U}_fとする。ある可測零集合WWの外で∣f∣≤M|f|\leq Mが成り立つ。また、ある可測零集合ZZの外でf=gf=gが成り立つ。W∪ZW\cup Zは可測零集合であり、その外で∣g∣=∣f∣≤M|g|=|f|\leq Mが成り立つため、M∈UgM\in\mathcal{U}_gである。ffとggを入れ替えた同じ議論によりUf=Ug\mathcal{U}_f=\mathcal{U}_gである。したがって、本質的上限の有限性と値は代表元に依存しない。▨

3 積分とLpL^pの基本補題

ノルムの正定値性には、非負可測関数の積分が零になる場合を正確に特徴づける必要がある。

補題 3.1.(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、u:X→[0,∞]u:X\to[0,\infty]を非負可測関数とする。このとき、

∫Xu dμ=0\int_Xu\,d\mu=0

であることと、u=0u=0がμ\muに関してほとんど至る所で成り立つことは同値である。

証明. 最初に∫Xu dμ=0\int_Xu\,d\mu=0とする。各正の整数nnに対して、

An={x∈X | u(x)≥1n}A_n=\left\{x\in X\ \middle|\ u(x)\geq\frac{1}{n}\right\}

とおく。半直線による可測性の判定§E9.5 命題 2.3によりAn∈FA_n\in\mathcal{F}である。点ごとに

1n1An≤u\frac{1}{n}\mathbf{1}_{A_n}\leq u

であるから、積分の単調性§E9.6 命題 2.2と単関数の積分の定義§E9.6 定義 1.1により、

0≤1nμ(An)=∫X1n1An dμ≤∫Xu dμ=00\leq\frac{1}{n}\mu(A_n) =\int_X\frac{1}{n}\mathbf{1}_{A_n}\,d\mu \leq\int_Xu\,d\mu=0

である。したがって、μ(An)=0\mu(A_n)=0である。

集合

A=⋃n=1∞AnA=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n

は可測であり、可算劣加法性によりμ(A)=0\mu(A)=0である。u(x)>0u(x)>0ならば、1/n≤u(x)1/n\leq u(x)を満たす正の整数nnが存在するため、x∈Ax\in Aである。逆にx∈Ax\in Aならばu(x)>0u(x)>0である。したがって、A={u>0}A=\{u>0\}であり、X∖AX\setminus A上でu=0u=0が成り立つ。

逆に、u=0u=0がほとんど至る所で成り立つとする。定数関数00とuuはほとんど至る所で等しい。§E9.6 定理 4.2の非負可測関数に対する主張により、

∫Xu dμ=∫X0 dμ=0\int_Xu\,d\mu=\int_X0\,d\mu=0

である。▨

点ごとの不等式が零集合上だけ破れる場合にも、積分の単調性を用いることができる。

補題 3.2.(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、u,v:X→[0,∞]u,v:X\to[0,\infty]を非負可測関数とする。u≤vu\leq vがμ\muに関してほとんど至る所で成り立つならば、

∫Xu dμ≤∫Xv dμ\int_Xu\,d\mu\leq\int_Xv\,d\mu

が成り立つ。

証明. ある可測零集合ZZが存在して、X∖ZX\setminus Z上でu≤vu\leq vが成り立つ。

u~(x)={u(x),x∈X∖Z,0,x∈Z\widetilde{u}(x)= \begin{cases} u(x),&x\in X\setminus Z,\\ 0,&x\in Z \end{cases}

とおく。a<0a<0に対して{u~>a}=X\{\widetilde{u}>a\}=Xであり、a≥0a\geq0に対して

{u~>a}=(X∖Z)∩{u>a}\{\widetilde{u}>a\}=(X\setminus Z)\cap\{u>a\}

である。したがって、半直線による可測性の判定§E9.5 命題 2.3により、u~\widetilde{u}は非負可測関数である。u~=u\widetilde{u}=uがほとんど至る所で成り立つため、§E9.6 定理 4.2により両者の積分値は等しい。一方、X∖ZX\setminus Z上では仮定によりu~=u≤v\widetilde{u}=u\leq vであり、ZZ上ではu~=0≤v\widetilde{u}=0\leq vである。したがって、点ごとにu~≤v\widetilde{u}\leq vである。§E9.6 命題 2.2を適用すると、

∫Xu dμ=∫Xu~ dμ≤∫Xv dμ\int_Xu\,d\mu =\int_X\widetilde{u}\,d\mu \leq\int_Xv\,d\mu

を得る。▨

LpL^pの和について Minkowski の不等式を証明する前に、和がLpL^pに属することを独立に示す。そのために、次の粗いスカラー不等式を用いる。

補題 3.3.K∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}、1≤p<∞1\leq p<\infty、およびa,b∈Ka,b\in\mathbb{K}に対して、

∣a+b∣p≤2p(∣a∣p+∣b∣p)|a+b|^p\leq 2^p\bigl(|a|^p+|b|^p\bigr)

が成り立つ。

証明. 三角不等式により

∣a+b∣≤∣a∣+∣b∣≤2max⁡{∣a∣,∣b∣}|a+b|\leq|a|+|b|\leq2\max\{|a|,|b|\}

である。p≥1p\geq1であるから両辺をpp乗することができ、

∣a+b∣p≤2pmax⁡{∣a∣p,∣b∣p}≤2p(∣a∣p+∣b∣p)|a+b|^p \leq2^p\max\{|a|^p,|b|^p\} \leq2^p\bigl(|a|^p+|b|^p\bigr)

を得る。▨

命題 3.4. 任意の測度空間(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)、任意のK∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}、および任意の1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyに対して、Lp(X,F,μ;K)L^p(X,\mathcal{F},\mu;\mathbb{K})は命題 1.3の商ベクトル空間の部分ベクトル空間である。特に、[f],[g]∈Lp[f],[g]\in L^pとα∈K\alpha\in\mathbb{K}ならば、[f+g]∈Lp[f+g]\in L^pかつ[αf]∈Lp[\alpha f]\in L^pである。

証明. 零関数はすべての1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyに対してLpL^pに属する。

1≤p<∞1\leq p<\inftyとする。[f],[g]∈Lp[f],[g]\in L^pならば、補題 3.3を点ごとに適用し、積分の単調性と非負線形性§E9.6 定理 2.5を用いることにより、

∫X∣f+g∣p dμ≤2p(∫X∣f∣p dμ+∫X∣g∣p dμ)<∞\int_X|f+g|^p\,d\mu \leq2^p\left(\int_X|f|^p\,d\mu+\int_X|g|^p\,d\mu\right) <\infty

を得る。したがって、[f+g]∈Lp[f+g]\in L^pである。また、

∫X∣αf∣p dμ=∣α∣p∫X∣f∣p dμ<∞\int_X|\alpha f|^p\,d\mu =|\alpha|^p\int_X|f|^p\,d\mu<\infty

であるため、[αf]∈Lp[\alpha f]\in L^pである。

p=∞p=\inftyとする。A=∥[f]∥∞A=\|[f]\|_\inftyおよびB=∥[g]∥∞B=\|[g]\|_\inftyとおく。補題 2.2により、∣f∣≤A|f|\leq Aと∣g∣≤B|g|\leq Bがそれぞれほとんど至る所で成り立つ。二つの例外集合の和集合も可測零集合であるため、

∣f+g∣≤∣f∣+∣g∣≤A+B|f+g|\leq|f|+|g|\leq A+B

がほとんど至る所で成り立つ。したがって、[f+g]∈L∞[f+g]\in L^\inftyである。さらに、∣αf∣≤∣α∣A|\alpha f|\leq|\alpha|Aがほとんど至る所で成り立つため、[αf]∈L∞[\alpha f]\in L^\inftyである。

零ベクトルを含み、加法とスカラー倍について閉じているため、各LpL^pは商ベクトル空間の部分ベクトル空間である。▨

三角不等式以外のノルム公理を先に確認する。

命題 3.5. 任意の測度空間(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)、任意のK∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}、任意の1≤p≤∞1\leq p\leq\infty、任意の[f]∈Lp[f]\in L^p、および任意のα∈K\alpha\in\mathbb{K}に対して、次の三つが成り立つ。

  1. ∥[f]∥p≥0\|[f]\|_p\geq0である。
  2. ∥[f]∥p=0\|[f]\|_p=0であることと[f]=[0][f]=[0]であることは同値である。
  3. ∥α[f]∥p=∣α∣ ∥[f]∥p\|\alpha[f]\|_p=|\alpha|\,\|[f]\|_pである。

証明.(1)を示す。非負性は積分値と本質的上限の定義から従う。

(2)を示す。1≤p<∞1\leq p<\inftyとする。∥[f]∥p=0\|[f]\|_p=0であることは

∫X∣f∣p dμ=0\int_X|f|^p\,d\mu=0

であることと同値である。補題 3.1により、∣f∣p=0|f|^p=0がほとんど至る所で成り立つ。各点で∣f∣p=0|f|^p=0であることとf=0f=0であることは同値であるため、f∼μ0f\sim_\mu0、すなわち[f]=[0][f]=[0]である。逆に[f]=[0][f]=[0]ならば、命題 2.4により

∥[f]∥p=∥[0]∥p=0\|[f]\|_p=\|[0]\|_p=0

である。

(3)を示す。有限なppに対する斉次性を示す。非負可測関数の積分の斉次性§E9.6 定理 2.5により、

∥α[f]∥p=(∫X∣αf∣p dμ)1/p=(∣α∣p∫X∣f∣p dμ)1/p=∣α∣ ∥[f]∥p\begin{aligned} \|\alpha[f]\|_p &=\left(\int_X|\alpha f|^p\,d\mu\right)^{1/p}\\ &=\left(|\alpha|^p\int_X|f|^p\,d\mu\right)^{1/p}\\ &=|\alpha|\,\|[f]\|_p \end{aligned}

である。α=0\alpha=0の場合にも両辺は00である。

p=∞p=\inftyとする。∥[f]∥∞=0\|[f]\|_\infty=0ならば、補題 2.2により∣f∣≤0|f|\leq0がほとんど至る所で成り立つ。したがって、f∼μ0f\sim_\mu0であり、[f]=[0][f]=[0]である。逆向きは代表元からの独立性による。

p=∞p=\inftyに対する斉次性を示す。α=0\alpha=0の場合には両辺が00である。α≠0\alpha\neq0とし、A=∥[f]∥∞A=\|[f]\|_\inftyとおく。∣f∣≤A|f|\leq Aがほとんど至る所で成り立つため、∣αf∣≤∣α∣A|\alpha f|\leq|\alpha|Aもほとんど至る所で成り立つ。補題 2.2により

∥α[f]∥∞≤∣α∣A\|\alpha[f]\|_\infty\leq|\alpha|A

である。一方、f=α−1(αf)f=\alpha^{-1}(\alpha f)であるから、同じ評価をαf\alpha fとα−1\alpha^{-1}へ適用すると、

A≤∣α∣−1∥α[f]∥∞A\leq|\alpha|^{-1}\|\alpha[f]\|_\infty

を得る。二つの不等式から∥α[f]∥∞=∣α∣ ∥[f]∥∞\|\alpha[f]\|_\infty=|\alpha|\,\|[f]\|_\inftyが従う。▨

4 Young の不等式と Hölder の不等式

Hölder の不等式の点ごとの根拠となる Young の不等式を、微分による最小値の判定から証明する。

補題 4.1 (Young の不等式).1<p<∞1<p<\inftyとし、q=p/(p−1)q=p/(p-1)とおく。このとき1/p+1/q=11/p+1/q=1である。任意のa,b∈[0,∞)a,b\in[0,\infty)に対して、

ab≤app+bqqab\leq\frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}

が成り立つ。等号が成り立つこととap−1=ba^{p-1}=bであることは同値である。

証明.b=0b=0とする。このときab=0ab=0であり、

0≤app+0qq0\leq\frac{a^p}{p}+\frac{0^q}{q}

である。等号が成り立つことはa=0a=0と同値であり、これはap−1=0=ba^{p-1}=0=bと同値である。

以下ではb>0b>0とする。[0,∞)[0,\infty)上の関数

Φ(t)=tpp−bt\Phi(t)=\frac{t^p}{p}-bt

を考える。c=b1/(p−1)c=b^{1/(p-1)}とおくと、c>0c>0である。関数Φ\Phiは[0,∞)[0,\infty)上で連続であり、(0,∞)(0,\infty)上で微分可能であって、

Φ′(t)=tp−1−b\Phi'(t)=t^{p-1}-b

である。したがって、Φ′(t)<0\Phi'(t)<0は0<t<c0<t<cで成り立ち、Φ′(c)=0\Phi'(c)=0であり、Φ′(t)>0\Phi'(t)>0はt>ct>cで成り立つ。微分係数の符号による増減判定から、Φ\Phiは閉区間[0,c][0,c]上で狭義単調減少である。また、任意のR>cR>cに対して、Φ\Phiは閉区間[c,R][c,R]上で狭義単調増加である。実際、いずれの閉区間でもΦ\Phiは連続であり、区間の内部では微分係数がそれぞれ負または正であるため、増減判定を適用することができる。したがって、0≤t<c0\leq t<cならばΦ(t)>Φ(c)\Phi(t)>\Phi(c)であり、t>ct>cならばR=tR=tとした後半の増減判定によりΦ(t)>Φ(c)\Phi(t)>\Phi(c)である。よって、Φ\Phiはt=ct=cでただ一つの最小値をとる。

cp−1=bc^{p-1}=bおよびq=p/(p−1)q=p/(p-1)であるから、

bc=cp=bqbc=c^p=b^q

である。したがって、

Φ(c)=cpp−bc=−bqq\Phi(c) =\frac{c^p}{p}-bc =-\frac{b^q}{q}

である。任意のa≥0a\geq0に対するΦ(a)≥Φ(c)\Phi(a)\geq\Phi(c)を書き換えると、

app−ab≥−bqq\frac{a^p}{p}-ab\geq-\frac{b^q}{q}

となり、Young の不等式を得る。最小点がただ一つであるため、等号が成り立つことはa=ca=c、すなわちap−1=ba^{p-1}=bであることと同値である。▨

共役指数の端点では、1/∞=01/\infty=0と定める。したがって、p=1p=1に共役な指数はq=∞q=\inftyであり、p=∞p=\inftyに共役な指数はq=1q=1である。

定理 4.2 (Hölder の不等式).(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を任意の測度空間とし、K∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}とする。p,q∈[1,∞]p,q\in[1,\infty]が

1p+1q=1\frac{1}{p}+\frac{1}{q}=1

を満たすとする。ただし、1/∞=01/\infty=0と定める。任意の[f]∈Lp(X,F,μ;K)[f]\in L^p(X,\mathcal{F},\mu;\mathbb{K})と[g]∈Lq(X,F,μ;K)[g]\in L^q(X,\mathcal{F},\mu;\mathbb{K})に対して、fgfgは可測かつ可積分であり、

∥[fg]∥1≤∥[f]∥p ∥[g]∥q\|[fg]\|_1\leq\|[f]\|_p\,\|[g]\|_q

が成り立つ。

証明. 最初に積fgfgの可測性を確認する。実数値の場合には§E9.5 命題 3.1による。複素数値の場合には、f=u+ivf=u+ivおよびg=s+itg=s+itと書けば、

Re⁡(fg)=us−vt,Im⁡(fg)=ut+vs\operatorname{Re}(fg)=us-vt, \qquad \operatorname{Im}(fg)=ut+vs

である。実数値可測関数の代数演算に関する閉性と§E9.5 定理 6.1によりfgfgは可測である。したがって、∣fg∣|fg|も非負可測関数である。さらに、f∼μf′f\sim_\mu f'かつg∼μg′g\sim_\mu g'ならば、二つの例外集合の和集合の外でfg=f′g′fg=f'g'が成り立つ。したがって、[fg][fg]も代表元に依存しない。

1<p<∞1<p<\inftyとする。このとき1<q<∞1<q<\inftyである。∥[f]∥p=0\|[f]\|_p=0または∥[g]∥q=0\|[g]\|_q=0ならば、命題 3.5によりf=0f=0またはg=0g=0がほとんど至る所で成り立つ。したがって、fg=0fg=0もほとんど至る所で成り立つ。補題 3.1を非負可測関数∣fg∣|fg|へ適用すると、∫X∣fg∣ dμ=0\int_X|fg|\,d\mu=0となる。したがって、fgfgは可積分であり、両辺は00である。

以下では∥[f]∥p>0\|[f]\|_p>0かつ∥[g]∥q>0\|[g]\|_q>0とする。非負可測関数

F=∣f∣∥[f]∥p,G=∣g∣∥[g]∥qF=\frac{|f|}{\|[f]\|_p}, \qquad G=\frac{|g|}{\|[g]\|_q}

を考える。補題 4.1を点ごとに適用すると、

FG≤Fpp+GqqFG\leq\frac{F^p}{p}+\frac{G^q}{q}

である。右辺は可積分であり、積分の単調性と線形性から

∫XFG dμ≤1p∫XFp dμ+1q∫XGq dμ=1p+1q=1\int_XFG\,d\mu \leq\frac{1}{p}\int_XF^p\,d\mu +\frac{1}{q}\int_XG^q\,d\mu =\frac{1}{p}+\frac{1}{q} =1

を得る。ここで、

∫XFp dμ=1∥[f]∥pp∫X∣f∣p dμ=1,∫XGq dμ=1∥[g]∥qq∫X∣g∣q dμ=1\int_XF^p\,d\mu =\frac{1}{\|[f]\|_p^p}\int_X|f|^p\,d\mu=1, \qquad \int_XG^q\,d\mu =\frac{1}{\|[g]\|_q^q}\int_X|g|^q\,d\mu=1

を用いた。したがって、

∫X∣fg∣ dμ≤∥[f]∥p ∥[g]∥q<∞.\int_X|fg|\,d\mu \leq\|[f]\|_p\,\|[g]\|_q<\infty.

この有限性はfgfgが可積分であることを示し、同じ不等式が Hölder の不等式である。

p=1p=1かつq=∞q=\inftyとする。B=∥[g]∥∞B=\|[g]\|_\inftyとおく。補題 2.2により∣g∣≤B|g|\leq Bがほとんど至る所で成り立つため、

∣fg∣≤B∣f∣|fg|\leq B|f|

もほとんど至る所で成り立つ。補題 3.2と非負可測関数の積分の斉次性により、

∫X∣fg∣ dμ≤B∫X∣f∣ dμ=∥[f]∥1 ∥[g]∥∞<∞\int_X|fg|\,d\mu \leq B\int_X|f|\,d\mu =\|[f]\|_1\,\|[g]\|_\infty<\infty

である。したがって、積の可積分性と端点の不等式が従う。

p=∞p=\inftyかつq=1q=1の場合には、前段落でffとggを入れ替えることにより、

∫X∣fg∣ dμ≤∥[f]∥∞ ∥[g]∥1\int_X|fg|\,d\mu \leq\|[f]\|_\infty\,\|[g]\|_1

を得る。以上により、すべての共役指数について主張が成り立つ。▨

5 Minkowski の不等式

有限なppについては、補題 3.3と命題 3.4により、Minkowski の不等式を用いる前にf+g∈Lpf+g\in L^pが確立されている。したがって、以下の証明で∥[f+g]∥p\|[f+g]\|_pや∣f+g∣p−1|f+g|^{p-1}を用いても循環は生じない。

定理 5.1 (Minkowski の不等式).(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を任意の測度空間とし、K∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}とする。任意の1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyと任意の[f],[g]∈Lp(X,F,μ;K)[f],[g]\in L^p(X,\mathcal{F},\mu;\mathbb{K})に対して、

∥[f+g]∥p≤∥[f]∥p+∥[g]∥p\|[f+g]\|_p\leq\|[f]\|_p+\|[g]\|_p

が成り立つ。

証明.p=1p=1とする。点ごとの三角不等式と非負可測関数の積分の単調性および加法性により、

∥[f+g]∥1=∫X∣f+g∣ dμ≤∫X(∣f∣+∣g∣) dμ=∥[f]∥1+∥[g]∥1\begin{aligned} \|[f+g]\|_1 &=\int_X|f+g|\,d\mu\\ &\leq\int_X(|f|+|g|)\,d\mu\\ &=\|[f]\|_1+\|[g]\|_1 \end{aligned}

である。

p=∞p=\inftyとする。A=∥[f]∥∞A=\|[f]\|_\inftyおよびB=∥[g]∥∞B=\|[g]\|_\inftyとおく。補題 2.2により、∣f∣≤A|f|\leq Aと∣g∣≤B|g|\leq Bがそれぞれほとんど至る所で成り立つ。二つの例外集合の和集合の外では、

∣f+g∣≤∣f∣+∣g∣≤A+B|f+g|\leq|f|+|g|\leq A+B

である。したがって、補題 2.2の第二の主張により、

∥[f+g]∥∞≤A+B=∥[f]∥∞+∥[g]∥∞\|[f+g]\|_\infty\leq A+B =\|[f]\|_\infty+\|[g]\|_\infty

である。

1<p<∞1<p<\inftyとし、q=p/(p−1)q=p/(p-1)とおく。命題 3.4によりh=f+gh=f+gはLpL^pに属する。∥[h]∥p=0\|[h]\|_p=0ならば、求める不等式は右辺の非負性から従う。以下では∥[h]∥p>0\|[h]\|_p>0とする。

関数∣h∣p−1|h|^{p-1}は非負可測関数であり、(p−1)q=p(p-1)q=pであるから、

∫X(∣h∣p−1)q dμ=∫X∣h∣p dμ<∞.\int_X\bigl(|h|^{p-1}\bigr)^q\,d\mu =\int_X|h|^p\,d\mu <\infty.

したがって、∣h∣p−1∈Lq|h|^{p-1}\in L^qであり、

∥∣h∣p−1∥q=(∫X∣h∣p dμ)1/q=∥[h]∥pp−1\bigl\||h|^{p-1}\bigr\|_q =\left(\int_X|h|^p\,d\mu\right)^{1/q} =\|[h]\|_p^{p-1}

である。

点ごとの三角不等式から

∣h∣p=∣h∣ ∣h∣p−1≤∣f∣ ∣h∣p−1+∣g∣ ∣h∣p−1|h|^p =|h|\,|h|^{p-1} \leq |f|\,|h|^{p-1}+|g|\,|h|^{p-1}

が成り立つ。右辺の二項は定理 4.2により可積分である。積分の単調性と加法性、および Hölder の不等式を順に用いると、

∥[h]∥pp=∫X∣h∣p dμ≤∫X∣f∣ ∣h∣p−1 dμ+∫X∣g∣ ∣h∣p−1 dμ≤(∥[f]∥p+∥[g]∥p)∥∣h∣p−1∥q=(∥[f]∥p+∥[g]∥p)∥[h]∥pp−1.\begin{aligned} \|[h]\|_p^p &=\int_X|h|^p\,d\mu\\ &\leq\int_X|f|\,|h|^{p-1}\,d\mu +\int_X|g|\,|h|^{p-1}\,d\mu\\ &\leq \bigl(\|[f]\|_p+\|[g]\|_p\bigr) \bigl\||h|^{p-1}\bigr\|_q\\ &= \bigl(\|[f]\|_p+\|[g]\|_p\bigr)\|[h]\|_p^{p-1}. \end{aligned}

∥[h]∥p>0\|[h]\|_p>0であるから、両辺を∥[h]∥pp−1\|[h]\|_p^{p-1}で割ることにより、

∥[f+g]∥p≤∥[f]∥p+∥[g]∥p\|[f+g]\|_p \leq\|[f]\|_p+\|[g]\|_p

を得る。以上により、すべての1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyについて主張が成り立つ。▨

Hölder の不等式と Minkowski の不等式をまとめると、次の系を得る。

系 5.2 (Hölder–Minkowski の不等式). 任意の測度空間(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)とK∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}に対して、次が成り立つ。

  1. p,q∈[1,∞]p,q\in[1,\infty]が1/p+1/q=11/p+1/q=1を満たし、[f]∈Lp[f]\in L^pかつ[g]∈Lq[g]\in L^qならば、fg∈L1fg\in L^1であり、 ∥[fg]∥1≤∥[f]∥p ∥[g]∥q\|[fg]\|_1\leq\|[f]\|_p\,\|[g]\|_q が成り立つ。ここでも1/∞=01/\infty=0と定める。
  2. 1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyかつ[f],[g]∈Lp[f],[g]\in L^pならば、 ∥[f+g]∥p≤∥[f]∥p+∥[g]∥p\|[f+g]\|_p\leq\|[f]\|_p+\|[g]\|_p が成り立つ。

証明.(1)を示す。第一の主張は定理 4.2であり、(2)を示す。第二の主張は定理 5.1である。両定理は端点を含むすべての指数について証明済みである。▨

6 ノルム線形空間としての結論

定理 6.1. 任意の測度空間(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)、任意のK∈{R,C}\mathbb{K}\in\{\mathbb{R},\mathbb{C}\}、および任意の1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyに対して、

(Lp(X,F,μ;K),∥⋅∥p)\bigl(L^p(X,\mathcal{F},\mu;\mathbb{K}),\|\cdot\|_p\bigr)

はK\mathbb{K}上のノルム線形空間である。

証明.命題 3.4によりLpL^pは命題 1.3の商ベクトル空間の部分ベクトル空間である。命題 2.4により∥⋅∥p\|\cdot\|_pはLpL^p上の写像として定まる。命題 3.5により、非負性、零ベクトルの判定、および斉次性が成り立つ。定理 5.1により三角不等式が成り立つ。したがって、∥⋅∥p\|\cdot\|_pはLpL^p上のノルムである。▨

次の有限測度空間では、同値類をとる理由と、すべての指数に対するノルムを直接計算することができる。

例 6.2 (Dirac 測度上のLpL^p).X={0,1,2}X=\{0,1,2\}、F=P(X)\mathcal{F}=\mathcal{P}(X)とし、μ=δ2\mu=\delta_2を点22における Dirac 測度とする。任意の関数f:X→Kf:X\to\mathbb{K}は可測である。

二つの関数f,g:X→Kf,g:X\to\mathbb{K}について、f∼μgf\sim_\mu gであることとf(2)=g(2)f(2)=g(2)であることは同値である。実際、集合{0,1}\{0,1\}は可測零集合であり、点22を含む可測集合の測度は11である。したがって、各同値類は点22での値だけによって決まる。

1≤p<∞1\leq p<\inftyに対して、

∥[f]∥p=(∫X∣f∣p dδ2)1/p=∣f(2)∣\|[f]\|_p =\left(\int_X|f|^p\,d\delta_2\right)^{1/p} =|f(2)|

である。また、∣f∣≤M|f|\leq Mがほとんど至る所で成り立つことは∣f(2)∣≤M|f(2)|\leq Mと同値であるため、

∥[f]∥∞=∣f(2)∣\|[f]\|_\infty=|f(2)|

である。したがって、すべての1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyについて、写像

[f]⟼f(2)[f]\longmapsto f(2)

はLp(X,δ2;K)L^p(X,\delta_2;\mathbb{K})とK\mathbb{K}の間のノルムを保つ線形全単射である。この写像の線形性は同値類上の演算の定義から従い、全射性は各c∈Kc\in\mathbb{K}に対する定数関数f(x)=cf(x)=cから従う。単射性は、f(2)=g(2)f(2)=g(2)ならば[f]=[g][f]=[g]であることから従う。

7 演習

問題 7.1.

  1. 命題 1.2の推移律を再構成し、二つの例外集合の和集合が零集合であるために用いた測度の性質を明記せよ。続いて、同じ和集合を用いて[f]+[g][f]+[g]が代表元に依存しないことを証明せよ。
  2. 補題 2.2で、各nnに対する超過集合{∣f∣>∥[f]∥∞+1/n}\{|f|>\|[f]\|_\infty+1/n\}を一つの零集合へまとめる必要がある理由を説明せよ。各nnに対する主張だけでは∣f∣≤∥[f]∥∞|f|\leq\|[f]\|_\inftyを直接導くことができない理由も述べよ。
  3. 補題 4.1の等号条件を用いて、正のノルムをもつ関数に対する定理 4.2の正規化された証明で等号が成り立つための点ごとの条件を書け。また、いずれかのノルムが零である場合を正規化の前に分ける必要がある理由を述べよ。
  4. 定理 5.1の1<p<∞1<p<\inftyの証明で、h=f+gh=f+gがLpL^pに属することをどの結果が先に保証しているかを答えよ。その結果が Minkowski の不等式を用いずに証明されていることを、用いたスカラー不等式まで遡って確認せよ。

8 扱わない内容

本記事は、LpL^p空間の完備性、単関数・連続関数・滑らかな関数の稠密性、p=2p=2の場合の内積、LpL^p双対性、および一般のノルム空間や作用素の理論を扱わない。本記事で得た結論は、任意の測度空間上でLpL^pがノルム線形空間になることまでである。

参考文献

  1. Gerald B. Folland, Real Analysis, 2nd ed., Wiley, 1999.
  2. Donald L. Cohn, Measure Theory, 2nd ed., Birkhäuser Advanced Texts Basler Lehrbücher, Birkhäuser, 2013.

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