§E9.13L^p の完備性と稠密性

最終更新

§E9.12 定義 2.3で構成したLp(μ)L^p(\mu)は、ほとんど至る所で等しい関数を同一視したノルム空間である。本記事では、Cauchy 列がこの商空間の中で極限をもつことを証明する。有限な指数については、一般の関数を単関数で近似することができることも証明する。Euclid 空間の Lebesgue 測度に限れば、近似関数へ連続性と滑らかさを順に課すこともできる。

完備性の証明では、商空間の元そのものには点ごとの値がないことに注意する必要がある。そこで、点列の各項から代表元を一つずつ選び、可測関数の列に戻してから、零集合の外で極限を構成する。この同時選択に可算選択公理を用いる。密度の証明では、一つの関数に対する近似列だけを用いるため、この追加の選択は必要ない。

以下では、(X,F,μ)(X,\mathcal F,\mu)を測度空間、K∈{R,C}\mathbb K\in\{\mathbb R,\mathbb C\}とする。1≤p<∞1\leq p<\inftyに対するノルムを

∥[f]∥p=(∫X∣f∣p dμ)1/p\lVert [f]\rVert_p =\left(\int_X |f|^p\,d\mu\right)^{1/p}

とし、p=∞p=\inftyに対するノルムを本質的上限によって定める。これらが代表元に依存せず、Minkowski の不等式を満たすことは§E9.12 命題 2.4と§E9.12 定理 5.1で証明した。

1 LpL^p空間の完備性

§E2.5 定義 1.1によれば、完備性を示すには、Lp(μ)L^p(\mu)の任意の Cauchy 列がLp(μ)L^p(\mu)の元へノルム収束することを示せばよい。有限なppとp=∞p=\inftyでは、点ごとの極限を得る仕組みが異なる。有限なppでは差分の絶対値の級数を積分で制御し、p=∞p=\inftyでは差分を同じ零集合の外で一様に制御する。

定理 1.1 (Riesz–Fischer の定理). 可算選択公理を仮定する。任意の測度空間(X,F,μ)(X,\mathcal F,\mu)、K∈{R,C}\mathbb K\in\{\mathbb R,\mathbb C\}、および1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyに対して、Lp(X,F,μ;K)L^p(X,\mathcal F,\mu;\mathbb K)は完備なノルム空間である。

可算選択公理を用いる箇所は、LpL^pの Cauchy 列の各同値類から有限値可測な代表元を一つずつ選ぶ箇所だけである。以下で用いる部分列の添字は、Cauchy 条件を満たす自然数の集合の最小元として定める。

証明.(un)n≥1(u_n)_{n\geq 1}をLp(μ;K)L^p(\mu;\mathbb K)の Cauchy 列とする。可算選択公理により、各nnに対してun=[fn]u_n=[f_n]を満たす有限値可測関数fn:X→Kf_n:X\to\mathbb Kを同時に選ぶ。

最初に1≤p<∞1\leq p<\inftyとする。各k≥1k\geq 1に対して

Ak={r∈Z≥1 | ∀m,n≥r, ∥um−un∥p<2−k}A_k =\left\{r\in\mathbb Z_{\geq 1}\ \middle|\ \forall m,n\geq r,\ \lVert u_m-u_n\rVert_p<2^{-k}\right\}

とおく。Cauchy 条件によりAkA_kは空でない。n1=min⁡A1n_1=\min A_1とし、nkn_kを定めた後に

nk+1=min⁡{r∈Ak+1∣r>nk}n_{k+1} =\min\{r\in A_{k+1}\mid r>n_k\}

と定める。右辺の集合は空でないから、この再帰的な定義は可能である。自然数の最小元を用いているため、この添字の構成は新たな選択公理を必要としない。nk∈Akn_k\in A_kかつnk+1>nkn_{k+1}>n_kであるから、

∥unk+1−unk∥p<2−k.(1)\lVert u_{n_{k+1}}-u_{n_k}\rVert_p<2^{-k}. \tag{1}

可測関数

dk=∣fnk+1−fnk∣,SN=∑k=1Ndkd_k=|f_{n_{k+1}}-f_{n_k}|, \qquad S_N=\sum_{k=1}^{N}d_k

を定める。有限和に対する Minkowski の不等式§E9.12 定理 5.1と (1) により、

∥SN∥p≤∑k=1N∥fnk+1−fnk∥p<∑k=1N2−k<1(2)\lVert S_N\rVert_p \leq\sum_{k=1}^{N} \lVert f_{n_{k+1}}-f_{n_k}\rVert_p <\sum_{k=1}^{N}2^{-k}<1 \tag{2}

である。SNpS_N^pは非負可測関数の単調増加列である。単調収束定理§E9.7 定理 1.1と (2) を用いると、

∫X(∑k=1∞dk)p dμ=lim⁡N→∞∫XSNp dμ≤1.(3)\int_X\left(\sum_{k=1}^{\infty}d_k\right)^p\,d\mu =\lim_{N\to\infty}\int_X S_N^p\,d\mu \leq 1. \tag{3}

S=∑k=1∞dkS=\sum_{k=1}^{\infty}d_kとおく。(3) からS<∞S<\inftyがほとんど至る所で成り立つことを確認する。Z={x∈X∣S(x)=∞}Z=\{x\in X\mid S(x)=\infty\}とおけば、任意の正の整数qqに対してq1Z≤Spq\mathbf 1_Z\leq S^pである。積分の単調性により

qμ(Z)≤∫XSp dμ≤1q\mu(Z)\leq\int_X S^p\,d\mu\leq 1

であるから、μ(Z)=0\mu(Z)=0である。

x∈X∖Zx\in X\setminus Zでは

∑k=1∞∣fnk+1(x)−fnk(x)∣<∞\sum_{k=1}^{\infty} |f_{n_{k+1}}(x)-f_{n_k}(x)|<\infty

である。K=R\mathbb K=\mathbb Rの場合には、差分の絶対値級数が収束するため(fnk(x))k(f_{n_k}(x))_kは Cauchy 列であり、実数の完備性により収束する。K=C\mathbb K=\mathbb Cの場合には、

∑k=1∞∣Re⁡(fnk+1(x)−fnk(x))∣≤∑k=1∞∣fnk+1(x)−fnk(x)∣<∞\sum_{k=1}^{\infty} \left|\operatorname{Re}\bigl(f_{n_{k+1}}(x)-f_{n_k}(x)\bigr)\right| \leq \sum_{k=1}^{\infty} |f_{n_{k+1}}(x)-f_{n_k}(x)|<\infty

が成り立ち、虚部についても同じ評価が成り立つ。したがって、実部の列と虚部の列はそれぞれ実数の Cauchy 列であり、実数の完備性により収束する。ゆえに(fnk(x))k(f_{n_k}(x))_kは複素数列として収束する。そこで

f(x)={lim⁡k→∞fnk(x),x∈X∖Z,0,x∈Zf(x)= \begin{cases} \displaystyle\lim_{k\to\infty}f_{n_k}(x),&x\in X\setminus Z,\\ 0,&x\in Z \end{cases}

と定める。1X∖Zfnk\mathbf 1_{X\setminus Z}f_{n_k}は有限値可測関数であり、この列はXXのすべての点でffへ収束する。実数値の場合は可測関数の極限に関する§E9.5 定理 4.1によりffは可測である。複素数値の場合は実部と虚部に同じ結果を適用し、§E9.5 定理 6.1を用いると、やはりffは可測である。

固定したj≥1j\geq 1に対して

Tj,N=∑k=jNdk,Tj=∑k=j∞dkT_{j,N}=\sum_{k=j}^{N}d_k, \qquad T_j=\sum_{k=j}^{\infty}d_k

とおく。再び有限和の Minkowski の不等式と単調収束定理を用いると、

∫XTjp dμ=lim⁡N→∞∫XTj,Np dμ≤(∑k=j∞2−k)p=2p(1−j).(4)\int_X T_j^p\,d\mu =\lim_{N\to\infty}\int_X T_{j,N}^p\,d\mu \leq \left(\sum_{k=j}^{\infty}2^{-k}\right)^p =2^{p(1-j)}. \tag{4}

X∖ZX\setminus Z上の望遠鏡和から

∣f−fnj∣≤Tj|f-f_{n_j}|\leq T_j

である。零集合ZZを無視して積分の単調性を適用し、(4) を用いると、

∥f−fnj∥p≤21−j⟶0(5)\lVert f-f_{n_j}\rVert_p\leq 2^{1-j}\longrightarrow 0 \tag{5}

を得る。とくにf−fn1∈Lp(μ;K)f-f_{n_1}\in L^p(\mu;\mathbb K)である。fn1∈Lp(μ;K)f_{n_1}\in L^p(\mu;\mathbb K)と§E9.12 命題 3.4によりf∈Lp(μ;K)f\in L^p(\mu;\mathbb K)である。

部分列だけでなくもとの列が[f][f]へ収束することを示す。ε>0\varepsilon>0を任意にとる。(un)(u_n)は Cauchy 列であるから、m,n≥Nm,n\geq Nなら∥um−un∥p<ε/2\lVert u_m-u_n\rVert_p<\varepsilon/2となるNNが存在する。(5) により、nj≥Nn_j\geq Nかつ∥unj−[f]∥p<ε/2\lVert u_{n_j}-[f]\rVert_p<\varepsilon/2を満たすjjを選ぶことができる。したがって、n≥Nn\geq Nならば

∥un−[f]∥p≤∥un−unj∥p+∥unj−[f]∥p<ε\lVert u_n-[f]\rVert_p \leq\lVert u_n-u_{n_j}\rVert_p+\lVert u_{n_j}-[f]\rVert_p <\varepsilon

である。よってun→[f]u_n\to[f]が成り立つ。

次にp=∞p=\inftyとする。有限なppの場合と同じ集合

Ak={r∈Z≥1 | ∀m,n≥r, ∥um−un∥∞<2−k}A_k =\left\{r\in\mathbb Z_{\geq 1}\ \middle|\ \forall m,n\geq r,\ \lVert u_m-u_n\rVert_\infty<2^{-k}\right\}

を用い、n1=min⁡A1n_1=\min A_1、nk+1=min⁡{r∈Ak+1∣r>nk}n_{k+1}=\min\{r\in A_{k+1}\mid r>n_k\}と定める。このとき

∥unk+1−unk∥∞<2−k.(6)\lVert u_{n_{k+1}}-u_{n_k}\rVert_\infty<2^{-k}. \tag{6}

§E9.12 補題 2.2をfnk+1−fnkf_{n_{k+1}}-f_{n_k}へ適用すると、

∣fnk+1−fnk∣≤∥unk+1−unk∥∞<2−k|f_{n_{k+1}}-f_{n_k}| \leq\lVert u_{n_{k+1}}-u_{n_k}\rVert_\infty <2^{-k}

がほとんど至る所で成り立つ。そこで、可測集合

Zk={x∈X | ∣fnk+1(x)−fnk(x)∣≥2−k}Z_k =\left\{x\in X\ \middle|\ |f_{n_{k+1}}(x)-f_{n_k}(x)|\geq2^{-k}\right\}

を正準的に定める。直前のほとんど至る所での評価によりμ(Zk)=0\mu(Z_k)=0であり、

∣fnk+1(x)−fnk(x)∣<2−k(x∈X∖Zk)(7)|f_{n_{k+1}}(x)-f_{n_k}(x)|<2^{-k} \qquad(x\in X\setminus Z_k) \tag{7}

が成り立つ。Z=⋃k=1∞ZkZ=\bigcup_{k=1}^{\infty}Z_kとおく。測度の可算劣加法性§E9.2 命題 2.1によりμ(Z)=0\mu(Z)=0である。(7) から、X∖ZX\setminus Z上では(fnk)k(f_{n_k})_kは一様 Cauchy 列である。各点で実数または複素数の完備性を用い、有限なppの場合と同様に零集合ZZ上で値を00と定めると、有限値可測関数ffを得る。さらに、x∈X∖Zx\in X\setminus Zに対して

∣f(x)−fnj(x)∣≤∑k=j∞2−k=21−j(8)|f(x)-f_{n_j}(x)| \leq\sum_{k=j}^{\infty}2^{-k} =2^{1-j} \tag{8}

である。(8) と§E9.12 補題 2.2から

∥f−fnj∥∞≤21−j⟶0(9)\lVert f-f_{n_j}\rVert_\infty\leq 2^{1-j}\longrightarrow 0 \tag{9}

を得る。f−fn1∈L∞f-f_{n_1}\in L^\inftyかつfn1∈L∞f_{n_1}\in L^\inftyであるから、§E9.12 命題 3.4によりf∈L∞f\in L^\inftyである。最後に、有限なppの場合と同じε/2\varepsilon/2の議論を (9) へ適用すると、もとの列全体が[f][f]へL∞L^\inftyノルムで収束する。

以上により、すべての1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyについてLp(μ;K)L^p(\mu;\mathbb K)は完備である。▨

有限なppの証明では、単調収束定理が差分の級数を一つのLpL^p関数として制御した。p=∞p=\inftyの証明では、可算個の例外零集合の合併を取り除くことによって、同じ役割を点ごとの一様評価が果たした。後者では積分の収束定理を用いていない。

2 単関数の稠密性

実数値の場合の単関数は§E9.5 定義 5.1で定めた。複素数値の場合にも、値域の有限性によって単関数を定める。

定義 2.1.(X,F)(X,\mathcal F)を可測空間とする。複素数値可測関数s:X→Cs:X\to\mathbb Cの像s(X)s(X)が有限集合であるとき、ssを複素単関数 (complex simple function) という。この条件は、Re⁡s\operatorname{Re}sとIm⁡s\operatorname{Im}sがともに§E9.5 定義 5.1の実数値単関数であることと同値である。

定理 2.2.(X,F,μ)(X,\mathcal F,\mu)を任意の測度空間、K∈{R,C}\mathbb K\in\{\mathbb R,\mathbb C\}とし、1≤p<∞1\leq p<\inftyとする。Lp(μ;K)L^p(\mu;\mathbb K)に属するK\mathbb K値単関数全体はLp(μ;K)L^p(\mu;\mathbb K)で稠密である。すなわち、任意の[f]∈Lp(μ;K)[f]\in L^p(\mu;\mathbb K)とε>0\varepsilon>0に対して、[s]∈Lp(μ;K)[s]\in L^p(\mu;\mathbb K)である単関数ssが存在して

∥f−s∥p<ε\lVert f-s\rVert_p<\varepsilon

を満たす。この結論には、μ(X)<∞\mu(X)<\inftyも、μ\muのシグマ有限性も必要ない。

証明. 最初にK=R\mathbb K=\mathbb Rとする。ffの正部分と負部分を

f+=max⁡{f,0},f−=max⁡{−f,0}f^+=\max\{f,0\}, \qquad f^-=\max\{-f,0\}

と書く。非負単関数による増加近似§E9.5 定理 5.3をf+f^+とf−f^-へ適用し、

0≤an↑f+,0≤bn↑f−0\leq a_n\uparrow f^+, \qquad 0\leq b_n\uparrow f^-

を満たす非負単関数列をとる。sn=an−bns_n=a_n-b_nとおけば、sns_nは実数値単関数であり、sn→fs_n\to fが各点で成り立つ。f+f^+とf−f^-は同じ点で同時に正にならず、an≤f+a_n\leq f^+、bn≤f−b_n\leq f^-であるから、

∣sn∣=an+bn≤f++f−=∣f∣(10)|s_n|=a_n+b_n\leq f^++f^-=|f| \tag{10}

である。同様に、f−sn=(f+−an)−(f−−bn)f-s_n=(f^+-a_n)-(f^--b_n)であり、二つの括弧内の関数は同じ点で同時に正にならないため、

∣f−sn∣=(f+−an)+(f−−bn)≤∣f∣|f-s_n|=(f^+-a_n)+(f^--b_n)\leq|f|

である。したがって、

∣f−sn∣p⟶0,∣f−sn∣p≤∣f∣p(11)|f-s_n|^p\longrightarrow 0, \qquad |f-s_n|^p\leq |f|^p \tag{11}

が点ごとに成り立つ。[f]∈Lp[f]\in L^pであるから∣f∣p|f|^pは可積分である。優収束定理§E9.7 定理 3.2を (11) へ適用すると、

∥f−sn∥pp=∫X∣f−sn∣p dμ⟶0.(12)\lVert f-s_n\rVert_p^p =\int_X|f-s_n|^p\,d\mu\longrightarrow 0. \tag{12}

さらに、(10) と積分の単調性により

∫X∣sn∣p dμ≤∫X∣f∣p dμ<∞\int_X|s_n|^p\,d\mu \leq\int_X|f|^p\,d\mu<\infty

である。したがって、近似に用いた各sns_n自身がLp(μ;R)L^p(\mu;\mathbb R)に属する。 (12) から、任意のε>0\varepsilon>0に対して所要のsns_nを選ぶことができる。

次にK=C\mathbb K=\mathbb Cとする。f=u+ivf=u+ivと書く。§E9.5 定理 6.1によりuuとvvは実数値可測関数であり、∣u∣≤∣f∣|u|\leq|f|、∣v∣≤∣f∣|v|\leq|f|であるから、両者はLp(μ;R)L^p(\mu;\mathbb R)に属する。前段落の構成をuuとvvに適用し、単関数列(an)(a_n)、(bn)(b_n)で

an→u,bn→v,∣an∣≤∣u∣,∣bn∣≤∣v∣,∣u−an∣≤∣u∣,∣v−bn∣≤∣v∣a_n\to u,\qquad b_n\to v, \qquad |a_n|\leq|u|,\quad |b_n|\leq|v|, \qquad |u-a_n|\leq|u|,\quad |v-b_n|\leq|v|

を満たすものをとる。sn=an+ibns_n=a_n+ib_nとおくと、sns_nは有限個の複素数だけを値としてとる可測関数であるから複素単関数であり、sn→fs_n\to fが各点で成り立つ。また、

∣sn∣≤∣an∣+∣bn∣≤∣u∣+∣v∣≤2 ∣f∣(13)|s_n| \leq|a_n|+|b_n| \leq|u|+|v| \leq\sqrt{2}\,|f| \tag{13}

であるため、各sns_nはLp(μ;C)L^p(\mu;\mathbb C)に属する。同じ評価を誤差へ適用すると、

∣f−sn∣p≤(∣u−an∣+∣v−bn∣)p≤(2 ∣f∣)p.(14)|f-s_n|^p \leq(|u-a_n|+|v-b_n|)^p \leq(\sqrt{2}\,|f|)^p. \tag{14}

左辺は点ごとに00へ収束し、右辺は可積分である。優収束定理を (14) へ適用すると∥f−sn∥p→0\lVert f-s_n\rVert_p\to0を得る。

以上の証明では、非負単関数近似と優収束定理だけを用いた。とくに、XXを有限測度の可測集合で覆う操作は用いていないため、シグマ有限性は不要である。▨

後で指示関数へ帰着するために、LpL^pに属する単関数の非零レベル集合は有限測度であることを補題として記録する。

補題 2.3.(X,F,μ)(X,\mathcal F,\mu)を測度空間、K∈{R,C}\mathbb K\in\{\mathbb R,\mathbb C\}、および1≤p<∞1\leq p<\inftyとする。s∈Lp(μ;K)s\in L^p(\mu;\mathbb K)をK\mathbb K値単関数とする。ssの相異なる非零値をc1,…,cmc_1,\dots,c_mとし、

Ej={x∈X∣s(x)=cj}E_j=\{x\in X\mid s(x)=c_j\}

とおく。このとき、各EjE_jは可測な有限測度集合であり、

s=∑j=1mcj1Ejs=\sum_{j=1}^{m}c_j\mathbf 1_{E_j}

が成り立つ。s=0s=0の場合には右辺を空和とする。

証明.ssは可測であり、各一元集合{cj}\{c_j\}はK\mathbb Kの Borel 集合であるから、Ej=s−1({cj})∈FE_j=s^{-1}(\{c_j\})\in\mathcal Fである。c1,…,cmc_1,\dots,c_mはssの相異なる非零値をすべて列挙しているため、表示式は各点で成り立つ。さらに、

∫X∣s∣p dμ=∑j=1m∣cj∣pμ(Ej)<∞\int_X|s|^p\,d\mu =\sum_{j=1}^{m}|c_j|^p\mu(E_j)<\infty

である。各∣cj∣p|c_j|^pは正であるから、いずれかのμ(Ej)\mu(E_j)が無限大ならば右辺は無限大となり、s∈Lps\in L^pに反する。したがって、すべてのEjE_jは有限測度である。s=0s=0の場合には非零値がなく、主張は空和について成り立つ。▨

3 台がコンパクトな連続関数の稠密性

以下ではd≥1d\geq1を整数とし、Rd\mathbb R^dに Lebesgue 可測集合族Ld\mathcal L_dと Lebesgue 測度λd\lambda_dを入れる。近似に用いる関数空間を次のように定める。

定義 3.1.d≥1d\geq1を整数とし、K∈{R,C}\mathbb K\in\{\mathbb R,\mathbb C\}とする。関数f:Rd→Kf:\mathbb R^d\to\mathbb Kの台 (support) を

supp⁡f={x∈Rd∣f(x)≠0}‾\operatorname{supp}f =\overline{\{x\in\mathbb R^d\mid f(x)\neq0\}}

と定める。台がコンパクトであるK\mathbb K値連続関数全体をCc(Rd;K)C_c(\mathbb R^d;\mathbb K)と書く。さらに、台がコンパクトであるK\mathbb K値C∞C^\infty級関数全体をCc∞(Rd;K)C_c^\infty(\mathbb R^d;\mathbb K)と書く。

最初に、有限測度の可測集合の指示関数を連続関数で近似する。距離関数を使うと、コンパクト集合上では11、有界開集合の外では00となる関数を直接構成することができる。

補題 3.2. 従属選択公理を仮定し、d≥1d\geq1を整数とする。E∈LdE\in\mathcal L_dとし、λd(E)<∞\lambda_d(E)<\inftyとする。任意のδ>0\delta>0に対して、0≤φ≤10\leq\varphi\leq1を満たすφ∈Cc(Rd;R)\varphi\in C_c(\mathbb R^d;\mathbb R)で

λd({x∈Rd∣1E(x)≠φ(x)})<2δ\lambda_d\bigl(\{x\in\mathbb R^d\mid \mathbf 1_E(x)\neq\varphi(x)\}\bigr)<2\delta

を満たすものが存在する。したがって、任意の1≤p<∞1\leq p<\inftyに対して

∥1E−φ∥pp<2δ\lVert\mathbf 1_E-\varphi\rVert_p^p<2\delta

である。

証明. Lebesgue 測度の内側正則性§E9.4 定理 7.1により、コンパクト集合K⊆EK\subseteq Eで

λd(E∖K)<δ(15)\lambda_d(E\setminus K)<\delta \tag{15}

を満たすものをとる。K=∅K=\emptysetならば (15) からλd(E)<δ\lambda_d(E)<\deltaであるため、φ=0\varphi=0とすれば結論が成り立つ。以下ではK≠∅K\neq\emptysetとする。

外側正則性§E9.4 定理 6.2により、E⊆UE\subseteq Uを満たす開集合UUで

λd(U∖E)<δ(16)\lambda_d(U\setminus E)<\delta \tag{16}

となるものをとる。KKは有界であるから、K⊆B(0,R)K\subseteq B(0,R)を満たすR>0R>0が存在する。

G=U∩B(0,R)G=U\cap B(0,R)

とおくと、GGはKKを含む有界開集合であり、G∖E⊆U∖EG\setminus E\subseteq U\setminus Eである。

閉集合Rd∖G\mathbb R^d\setminus Gまでの距離を

h(x)=dist⁡(x,Rd∖G)=inf⁡{∣x−y∣∣y∈Rd∖G}h(x)=\operatorname{dist}(x,\mathbb R^d\setminus G) =\inf\{|x-y|\mid y\in\mathbb R^d\setminus G\}

とおく。任意のx,x′∈Rdx,x'\in\mathbb R^dに対し、三角不等式から

∣h(x)−h(x′)∣≤∣x−x′∣|h(x)-h(x')|\leq|x-x'|

であるため、hhは連続である。また、x∈Gx\in GならばGGの開性によりh(x)>0h(x)>0である。KKは空でないコンパクト集合でありK⊆GK\subseteq Gであるから、hhはKK上で正の最小値

a=min⁡x∈Kh(x)>0a=\min_{x\in K}h(x)>0

をもつ。そこで

φ(x)=min⁡{1,h(x)a}\varphi(x)=\min\left\{1,\frac{h(x)}{a}\right\}

と定める。φ\varphiは連続であり、0≤φ≤10\leq\varphi\leq1を満たし、KK上でφ=1\varphi=1、Rd∖G\mathbb R^d\setminus G上でφ=0\varphi=0である。さらにsupp⁡φ⊆G‾\operatorname{supp}\varphi\subseteq\overline Gであり、G‾\overline Gは閉かつ有界であるから Heine–Borel の定理によりコンパクトである。よってφ∈Cc(Rd)\varphi\in C_c(\mathbb R^d)である。

KK上では1E=φ=1\mathbf 1_E=\varphi=1であり、Rd∖(E∪G)\mathbb R^d\setminus(E\cup G)上では1E=φ=0\mathbf 1_E=\varphi=0である。したがって、

{x∣1E(x)≠φ(x)}⊆(E∖K)∪(G∖E).\{x\mid\mathbf 1_E(x)\neq\varphi(x)\} \subseteq(E\setminus K)\cup(G\setminus E).

(15)、(16)、および測度の劣加法性により、この集合の測度は2δ2\delta未満である。∣1E−φ∣≤1|\mathbf 1_E-\varphi|\leq1であるから、

∥1E−φ∥pp=∫{1E≠φ}∣1E−φ∣p dλd≤λd({1E≠φ})<2δ.\lVert\mathbf 1_E-\varphi\rVert_p^p =\int_{\{\mathbf 1_E\neq\varphi\}} |\mathbf 1_E-\varphi|^p\,d\lambda_d \leq \lambda_d(\{\mathbf 1_E\neq\varphi\}) <2\delta.

▨

定理 3.3. 従属選択公理を仮定する。d≥1d\geq1、K∈{R,C}\mathbb K\in\{\mathbb R,\mathbb C\}、および1≤p<∞1\leq p<\inftyとする。Cc(Rd;K)C_c(\mathbb R^d;\mathbb K)はLp(Rd,Ld,λd;K)L^p(\mathbb R^d,\mathcal L_d,\lambda_d;\mathbb K)で稠密である。

証明.[f]∈Lp(Rd;K)[f]\in L^p(\mathbb R^d;\mathbb K)とε>0\varepsilon>0を任意にとる。定理 2.2により、LpL^pに属するK\mathbb K値単関数ssで

∥f−s∥p<ε2(17)\lVert f-s\rVert_p<\frac{\varepsilon}{2} \tag{17}

を満たすものが存在する。s=0s=0ならばg=0∈Cc(Rd;K)g=0\in C_c(\mathbb R^d;\mathbb K)とすればよい。s≠0s\neq0とし、補題 2.3により

s=∑j=1mcj1Ej,cj∈K∖{0},λd(Ej)<∞(18)s=\sum_{j=1}^{m}c_j\mathbf 1_{E_j}, \qquad c_j\in\mathbb K\setminus\{0\}, \qquad \lambda_d(E_j)<\infty \tag{18}

と書く。C=∑j=1m∣cj∣>0C=\sum_{j=1}^{m}|c_j|>0とおく。補題 3.2により、各jjに対して0≤φj≤10\leq\varphi_j\leq1を満たすφj∈Cc(Rd;R)\varphi_j\in C_c(\mathbb R^d;\mathbb R)で

∥1Ej−φj∥p<ε2C(19)\lVert\mathbf 1_{E_j}-\varphi_j\rVert_p <\frac{\varepsilon}{2C} \tag{19}

となるものをとる。この操作は有限個の集合だけを対象とするため、可算選択を必要としない。

g=∑j=1mcjφjg=\sum_{j=1}^{m}c_j\varphi_jとおく。ggはK\mathbb K値連続関数であり、その台は有限個のsupp⁡φj\operatorname{supp}\varphi_jの和集合に含まれる。この和集合はコンパクトであるからg∈Cc(Rd;K)g\in C_c(\mathbb R^d;\mathbb K)である。Minkowski の不等式と (19) により、

∥s−g∥p≤∑j=1m∣cj∣∥1Ej−φj∥p<ε2.(20)\lVert s-g\rVert_p \leq\sum_{j=1}^{m}|c_j| \lVert\mathbf 1_{E_j}-\varphi_j\rVert_p <\frac{\varepsilon}{2}. \tag{20}

(17)、(20)、および三角不等式から

∥f−g∥p≤∥f−s∥p+∥s−g∥p<ε\lVert f-g\rVert_p \leq\lVert f-s\rVert_p+\lVert s-g\rVert_p <\varepsilon

を得る。▨

4 台がコンパクトな滑らかな関数の稠密性

Cc(Rd)C_c(\mathbb R^d)の関数を滑らかにするために、台が小さい非負関数で平均を取る。ここでは一般の畳み込み理論を引用せず、mollifier の構成、平均の滑らかさ、台の評価、および一様近似を順に証明する。

補題 4.1. 従属選択公理を仮定し、d≥1d\geq1を整数とする。任意のr>0r>0に対して、次の条件を満たすηr∈Cc∞(Rd;R)\eta_r\in C_c^\infty(\mathbb R^d;\mathbb R)が存在する。

ηr≥0,supp⁡ηr=B(0,r)‾,ηr(−x)=ηr(x),∫Rdηr dλd=1.\eta_r\geq0,\qquad \operatorname{supp}\eta_r=\overline{B(0,r)},\qquad \eta_r(-x)=\eta_r(x),\qquad \int_{\mathbb R^d}\eta_r\,d\lambda_d=1.

証明. 一変数関数θ:R→R\theta:\mathbb R\to\mathbb Rを

θ(t)={e−1/t,t>0,0,t≤0\theta(t)= \begin{cases} e^{-1/t},&t>0,\\ 0,&t\leq0 \end{cases}

と定める。θ\thetaが滑らかであり、θ(m)(0)=0\theta^{(m)}(0)=0がすべてのm≥0m\geq0について成り立つことを確認する。t>0t>0では、帰納法により、各mmに対してある多項式PmP_mが存在して

θ(m)(t)=Pm(1/t)e−1/t(21)\theta^{(m)}(t)=P_m(1/t)e^{-1/t} \tag{21}

と書くことができる。実際、(21) の右辺を微分すると、再び1/t1/tの多項式とe−1/te^{-1/t}の積になる。また、任意の非負整数NNに対して、指数関数の冪級数から

es≥sN+1(N+1)!(s>0)e^s\geq\frac{s^{N+1}}{(N+1)!}\qquad(s>0)

であるため、

0≤sNe−s≤(N+1)!s⟶0(s→∞)(22)0\leq s^Ne^{-s}\leq\frac{(N+1)!}{s}\longrightarrow0 \qquad(s\to\infty) \tag{22}

である。(21) の多項式の各項へ (22) を適用すると、lim⁡t↓0θ(m)(t)=0\lim_{t\downarrow0}\theta^{(m)}(t)=0を得る。t<0t<0ではθ\thetaとすべての導関数が00である。ここで、θ(m−1)(0)=0\theta^{(m-1)}(0)=0まで構成済みであるとする。t>0t>0に対する

θ(m−1)(t)−θ(m−1)(0)t=t−1Pm−1(1/t)e−1/t\frac{\theta^{(m-1)}(t)-\theta^{(m-1)}(0)}{t} =t^{-1}P_{m-1}(1/t)e^{-1/t}

は (22) によりt↓0t\downarrow0で00へ収束し、t<0t<0に対する差商は00である。したがって、θ(m)(0)\theta^{(m)}(0)は存在して00に等しい。この議論をm=1m=1から帰納的に繰り返すと、θ\thetaはR\mathbb R上でC∞C^\infty級であり、すべての階数の導関数が00で連結する。

固定したr>0r>0に対して

qr(x)=θ(r2−∣x∣2)q_r(x)=\theta(r^2-|x|^2)

とおく。θ\thetaの滑らかさと多項式写像x↦r2−∣x∣2x\mapsto r^2-|x|^2の滑らかさからqr∈C∞(Rd)q_r\in C^\infty(\mathbb R^d)である。qrq_rはB(0,r)B(0,r)上で正であり、その外で00であるから、

supp⁡qr=B(0,r)‾.\operatorname{supp}q_r=\overline{B(0,r)}.

さらに、0≤qr≤10\leq q_r\leq1であり、台は[−r,r]d[-r,r]^dに含まれるため、

∫Rdqr dλd<∞.\int_{\mathbb R^d}q_r\,d\lambda_d<\infty.

この積分が正であることも確認する。半開立方体

Q=(−r2d,r2d]dQ=\left(-\frac{r}{2\sqrt d},\frac{r}{2\sqrt d}\right]^d

では∣x∣≤r/2|x|\leq r/2であるから、

qr(x)≥θ(3r2/4)>0.q_r(x)\geq\theta(3r^2/4)>0.

§E9.4 定義 1.1によるQQの測度は(r/d)d>0(r/\sqrt d)^d>0である。したがって、

0<θ(3r2/4)λd(Q)≤∫Rdqr dλd<∞.0< \theta(3r^2/4)\lambda_d(Q) \leq\int_{\mathbb R^d}q_r\,d\lambda_d<\infty.

正の定数

cr=(∫Rdqr dλd)−1c_r=\left(\int_{\mathbb R^d}q_r\,d\lambda_d\right)^{-1}

を定め、ηr=crqr\eta_r=c_rq_rとおく。ηr\eta_rは非負で滑らかであり、台はB(0,r)‾\overline{B(0,r)}である。qrq_rが∣x∣|x|だけに依存することからηr\eta_rは偶関数であり、定数crc_rの定義から積分は11である。▨

補題 4.2. 従属選択公理を仮定し、d≥1d\geq1を整数、K∈{R,C}\mathbb K\in\{\mathbb R,\mathbb C\}とする。φ∈Cc(Rd;K)\varphi\in C_c(\mathbb R^d;\mathbb K)とし、r>0r>0とする。補題 4.1のηr\eta_rを用いて

(Mrφ)(x)=∫Rdφ(z)ηr(x−z) dλd(z)(23)(M_r\varphi)(x) =\int_{\mathbb R^d}\varphi(z)\eta_r(x-z)\,d\lambda_d(z) \tag{23}

と定める。このときMrφ∈Cc∞(Rd;K)M_r\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^d;\mathbb K)である。さらに、

∥Mrφ−φ∥∞⟶0(r↓0)(24)\lVert M_r\varphi-\varphi\rVert_\infty\longrightarrow0 \qquad(r\downarrow0) \tag{24}

であり、任意の1≤p<∞1\leq p<\inftyに対して

∥Mrφ−φ∥p⟶0(r↓0)(25)\lVert M_r\varphi-\varphi\rVert_p\longrightarrow0 \qquad(r\downarrow0) \tag{25}

が成り立つ。

証明.φ=0\varphi=0ならば、すべてのr>0r>0に対してMrφ=0M_r\varphi=0であり、滑らかさ、台、および二つの収束はいずれも直ちに成り立つ。以下ではφ≠0\varphi\neq0とする。

K=supp⁡φK=\operatorname{supp}\varphiとおく。このときKKは空でないコンパクト集合であるから、φ\varphiは有界であり、KKは有限 Lebesgue 測度をもつ。(23) の被積分関数はz∉Kz\notin Kで00となり、KK上で有界である。したがって、各xxに対して (23) の積分は絶対収束する。

最初に滑らかさを証明する。eje_jを第jj座標方向の単位ベクトルとする。固定したxxとjjに対して、

(Mrφ)(x+hej)−(Mrφ)(x)h=∫Kφ(z)ηr(x+hej−z)−ηr(x−z)h dλd(z).(26)\frac{(M_r\varphi)(x+he_j)-(M_r\varphi)(x)}{h} = \int_K\varphi(z) \frac{\eta_r(x+he_j-z)-\eta_r(x-z)}{h}\,d\lambda_d(z). \tag{26}

∣h∣≤1|h|\leq1のとき、差商に現れる点はコンパクト集合

{x+tej−z∣∣t∣≤1, z∈K}\{x+te_j-z\mid |t|\leq1,\ z\in K\}

に属する。∂jηr\partial_j\eta_rはこの集合上で一様連続である。したがって、一変数の平均値の定理をt↦ηr(x+tej−z)t\mapsto\eta_r(x+te_j-z)へ適用すると、(26) の差商は∂jηr(x−z)\partial_j\eta_r(x-z)へz∈Kz\in Kについて一様に収束する。ゆえに

∣∫Kφ(z)(ηr(x+hej−z)−ηr(x−z)h−∂jηr(x−z))dλd(z)∣≤∥φ∥∞λd(K)sup⁡z∈K∣ηr(x+hej−z)−ηr(x−z)h−∂jηr(x−z)∣⟶0.\left| \int_K\varphi(z) \left( \frac{\eta_r(x+he_j-z)-\eta_r(x-z)}{h} -\partial_j\eta_r(x-z) \right)d\lambda_d(z) \right| \leq \lVert\varphi\rVert_\infty\lambda_d(K) \sup_{z\in K}\left| \frac{\eta_r(x+he_j-z)-\eta_r(x-z)}{h} -\partial_j\eta_r(x-z) \right| \longrightarrow0.

したがって、

∂j(Mrφ)(x)=∫Kφ(z)∂jηr(x−z) dλd(z).(27)\partial_j(M_r\varphi)(x) =\int_K\varphi(z)\partial_j\eta_r(x-z)\,d\lambda_d(z). \tag{27}

任意の多重指数α\alphaに対して∂αηr\partial^\alpha\eta_rは連続である。同じ議論を (27) へ繰り返すと、

∂α(Mrφ)(x)=∫Kφ(z)∂αηr(x−z) dλd(z)(28)\partial^\alpha(M_r\varphi)(x) =\int_K\varphi(z)\partial^\alpha\eta_r(x-z)\,d\lambda_d(z) \tag{28}

を得る。(28) の右辺の連続性も、∂αηr\partial^\alpha\eta_rのコンパクト集合上一様連続性と同じ積分評価から従う。よってMrφM_r\varphiはC∞C^\infty級である。

x∉K+B(0,r)‾x\notin K+\overline{B(0,r)}ならば、すべてのz∈Kz\in Kに対してx−z∉B(0,r)‾x-z\notin\overline{B(0,r)}であり、ηr(x−z)=0\eta_r(x-z)=0である。したがって、

supp⁡(Mrφ)⊆K+B(0,r)‾.(29)\operatorname{supp}(M_r\varphi) \subseteq K+\overline{B(0,r)}. \tag{29}

右辺はコンパクト集合K×B(0,r)‾K\times\overline{B(0,r)}の連続像であるからコンパクトである。(28) と (29) によりMrφ∈Cc∞(Rd;K)M_r\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^d;\mathbb K)である。

次に一様近似を証明する。Lebesgue 測度の平行移動不変性§E9.4 定理 5.1は、非負可測関数hhに対して

∫Rdh(z−x) dλd(z)=∫Rdh(z) dλd(z)(30)\int_{\mathbb R^d}h(z-x)\,d\lambda_d(z) =\int_{\mathbb R^d}h(z)\,d\lambda_d(z) \tag{30}

を与える。実際、指示関数に対する (30) は集合の平行移動不変性そのものであり、非負単関数へ有限線形性で拡張した後、§E9.5 定理 5.3と§E9.7 定理 1.1により任意の非負可測関数へ拡張することができる。ηr\eta_rは偶関数であるから、(30) により

∫Rdηr(x−z) dλd(z)=∫Rdηr(z−x) dλd(z)=1.(31)\int_{\mathbb R^d}\eta_r(x-z)\,d\lambda_d(z) =\int_{\mathbb R^d}\eta_r(z-x)\,d\lambda_d(z) =1. \tag{31}

(23) と (31) から

∣(Mrφ)(x)−φ(x)∣≤∫Rd∣φ(z)−φ(x)∣ηr(x−z) dλd(z).(32)|(M_r\varphi)(x)-\varphi(x)| \leq \int_{\mathbb R^d} |\varphi(z)-\varphi(x)|\eta_r(x-z)\,d\lambda_d(z). \tag{32}

台がコンパクトな連続関数はRd\mathbb R^d上で一様連続である。実際、台を含む閉球を一つ固定し、その半径を11だけ増やした閉球上では Heine–Cantor の定理を用いることができる。この閉球の外にある点を含む十分近い二点については、両方の関数値が00である。この二つの場合を合わせると全空間での一様連続性を得る。したがって、

ωφ(r)=sup⁡{∣φ(z)−φ(x)∣∣x,z∈Rd, ∣x−z∣≤r}⟶0(r↓0).\omega_\varphi(r) =\sup\{|\varphi(z)-\varphi(x)|\mid x,z\in\mathbb R^d,\ |x-z|\leq r\} \longrightarrow0 \qquad(r\downarrow0).

ηr(x−z)≠0\eta_r(x-z)\neq0ならば∣x−z∣<r|x-z|<rであるため、(32) と (31) から

∥Mrφ−φ∥∞≤ωφ(r)⟶0\lVert M_r\varphi-\varphi\rVert_\infty \leq\omega_\varphi(r)\longrightarrow0

を得る。これが (24) である。

0<r≤10<r\leq1とする。(29) により、φ\varphiとMrφM_r\varphiの台はともに固定したコンパクト集合

L=K+B(0,1)‾L=K+\overline{B(0,1)}

に含まれる。λd(L)<∞\lambda_d(L)<\inftyであるから、

∥Mrφ−φ∥pp≤λd(L)∥Mrφ−φ∥∞p⟶0.\lVert M_r\varphi-\varphi\rVert_p^p \leq \lambda_d(L)\lVert M_r\varphi-\varphi\rVert_\infty^p \longrightarrow0.

したがって、(25) が成り立つ。以上の議論では Fubini の定理を用いていない。▨

定理 4.3. 従属選択公理を仮定する。d≥1d\geq1、K∈{R,C}\mathbb K\in\{\mathbb R,\mathbb C\}、および1≤p<∞1\leq p<\inftyとする。Cc∞(Rd;K)C_c^\infty(\mathbb R^d;\mathbb K)はLp(Rd,Ld,λd;K)L^p(\mathbb R^d,\mathcal L_d,\lambda_d;\mathbb K)で稠密である。

証明.[f]∈Lp(Rd;K)[f]\in L^p(\mathbb R^d;\mathbb K)とε>0\varepsilon>0を任意にとる。定理 3.3により、φ∈Cc(Rd;K)\varphi\in C_c(\mathbb R^d;\mathbb K)で

∥f−φ∥p<ε2\lVert f-\varphi\rVert_p<\frac{\varepsilon}{2}

を満たすものが存在する。補題 4.2により、十分小さいr>0r>0に対して

∥φ−Mrφ∥p<ε2\lVert\varphi-M_r\varphi\rVert_p<\frac{\varepsilon}{2}

であり、Mrφ∈Cc∞(Rd;K)M_r\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^d;\mathbb K)である。三角不等式から

∥f−Mrφ∥p≤∥f−φ∥p+∥φ−Mrφ∥p<ε\lVert f-M_r\varphi\rVert_p \leq\lVert f-\varphi\rVert_p +\lVert\varphi-M_r\varphi\rVert_p <\varepsilon

を得る。▨

5 適用範囲と演習

三つの稠密性定理はいずれも1≤p<∞1\leq p<\inftyに対する主張である。本記事はp=∞p=\inftyについて完備性だけを主張する。Cc(Rd)C_c(\mathbb R^d)の稠密性がp=∞p=\inftyでは成り立たないことは、次の例から分かる。

例 5.1 (Cc(Rd;R)C_c(\mathbb R^d;\mathbb R)はL∞L^\inftyで稠密でない). 従属選択公理を仮定し、d≥1d\geq1を整数とする。Rd\mathbb R^d上の実数値定数関数11はL∞(Rd,Ld,λd;R)L^\infty(\mathbb R^d,\mathcal L_d,\lambda_d;\mathbb R)に属する。一方、任意のg∈Cc(Rd;R)g\in C_c(\mathbb R^d;\mathbb R)はコンパクトな台の外で00であるため、∥1−g∥∞≥1\lVert1-g\rVert_\infty\geq1である。よって、Cc(Rd;R)C_c(\mathbb R^d;\mathbb R)はL∞(Rd,Ld,λd;R)L^\infty(\mathbb R^d,\mathcal L_d,\lambda_d;\mathbb R)で稠密でない。この例により、有限なppの証明で用いた有限測度の台による評価をp=∞p=\inftyへ移すことはできない。

例 5.2 (シグマ有限でない測度空間での単関数近似). 可算選択公理を仮定する。1≤p<∞1\leq p<\inftyとし、K∈{R,C}\mathbb K\in\{\mathbb R,\mathbb C\}とする。IIを非可算集合とし、P(I)\mathcal P(I)上に数え上げ測度

μ(A)={∣A∣,A が有限集合である,∞,A が無限集合である\mu(A)= \begin{cases} |A|,&A\text{ が有限集合である},\\ \infty,&A\text{ が無限集合である} \end{cases}

を入れる。この測度空間はシグマ有限ではない。実際、有限測度集合は有限集合であり、可算選択公理のもとでは可算個の有限集合の和集合は高々可算であるから、非可算集合IIを覆うことができない。この箇所で可算選択公理を用いる。

それにもかかわらず、定理 2.2により、任意のf∈Lp(I,P(I),μ;K)f\in L^p(I,\mathcal P(I),\mu;\mathbb K)はLp(I,P(I),μ;K)L^p(I,\mathcal P(I),\mu;\mathbb K)に属するK\mathbb K値単関数で近似することができる。この場合、n≥1n\geq1に対して

Fn={i∈I∣∣f(i)∣≥1/n}F_n=\{i\in I\mid |f(i)|\geq1/n\}

は有限集合である。もし無限集合ならば∑i∈I∣f(i)∣p≥∑i∈Fnn−p=∞\sum_{i\in I}|f(i)|^p\geq\sum_{i\in F_n}n^{-p}=\inftyとなるからである。FnF_nは有限であるからf1Fnf\mathbf 1_{F_n}は単関数である。また、∣f−f1Fn∣p≤∣f∣p|f-f\mathbf 1_{F_n}|^p\leq|f|^pであり、左辺は各点で00へ収束するため、優収束定理により∥f−f1Fn∥p→0\lVert f-f\mathbf 1_{F_n}\rVert_p\to0である。この例は、単関数の稠密性にシグマ有限性が不要であることを示している。

  1. 定理 1.1の有限なppの証明で、差分の級数∑k∣fnk+1−fnk∣\sum_k|f_{n_{k+1}}-f_{n_k}|が有限であることを各点で直接仮定せず、単調収束定理からほとんど至る所で導いた箇所を説明せよ。
  2. p=∞p=\inftyの証明で、各差分に対応する零集合ZkZ_kを一つの集合⋃kZk\bigcup_k Z_kへまとめなければならない理由を述べよ。
  3. 複素数値関数に対する定理 2.2の証明で、近似単関数自身がLpL^pに属することを (13) から証明せよ。
  4. 補題 3.2で、有界開集合GGを用いることが cutoff の台のコンパクト性に必要である理由を説明せよ。
  5. 補題 4.2の微分公式 (28) が Fubini の定理を必要としない理由と、一様収束からLpL^p収束を得る際に共通の有限測度集合LLが必要である理由をそれぞれ述べよ。

参考文献

  1. Gerald B. Folland, Real Analysis, 2nd ed., Wiley, 1999.
  2. Walter Rudin, Real and Complex Analysis, 3rd ed., McGraw Hill, 1987.
  3. Lawrence C. Evans, Partial Differential Equations, 2nd ed., Graduate Studies in Mathematics 19, American Mathematical Society, Providence, R.I., 2010.

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