§E9.15Radon–Nikodym の定理と Lebesgue 分解

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同じ可測空間上の正測度ν\nuが正測度μ\muに関して絶対連続であるとき、 Radon–Nikodym の定理はν\nuを一つの非負可測関数のμ\muに関する積分として表す。有限測度の場合の証明では、積分によってν\nu以下の測度を与える関数を集め、その積分値を最大にする関数を構成する。最大の関数が表しきれない残差が存在すると仮定し、残差からμ\muの正の定数倍を引いた符号付き測度へ Hahn 分解を適用すると、候補関数をさらに増加させることができる。最大性との矛盾により残差が消える。

シグマ有限な場合には、μ\muとν\nuの双方が有限となる可測集合へXXを可算分割する。各部分で有限測度の場合の定理を適用し、局所的な関数を貼り合わせる。単調収束定理は、積分から測度を構成する箇所、候補関数の増加極限をとる箇所、および局所的な関数を貼り合わせる箇所で用いる。

本記事は、絶対連続性、相互特異性、および Hahn 分解を§E9.14 定義 6.1、§E9.14 定義 4.1、および§E9.14 定理 3.2 (Hahn 分解)から用いる。積分については、非負可測関数の線形性§E9.6 定理 2.5と単調収束定理§E9.7 定理 1.1 (単調収束定理)を用いる。

1 非負可測関数から定まる測度

Radon–Nikodym の定理の結論に現れる集合関数が正測度であることを最初に証明する。可算加法性は、互いに交わらない集合の指示関数の有限和を増加させ、単調収束定理を適用することによって得られる。

定義 1.1.(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、f:X→[0,∞]f:X\to[0,\infty]を非負拡張実数値可測関数とする。E∈FE\in\mathcal{F}に対して

∫Ef dμ=∫Xf1E dμ\int_E f\,d\mu = \int_X f\mathbf{1}_E\,d\mu

と定める。積f1Ef\mathbf{1}_Eでは、x∉Ex\notin Eかつf(x)=∞f(x)=\inftyの場合にも0⋅∞=00\cdot\infty=0とする。

命題 1.2.(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、f:X→[0,∞]f:X\to[0,\infty]を非負拡張実数値可測関数とする。各E∈FE\in\mathcal{F}に対して

λf(E)=∫Ef dμ\lambda_f(E)=\int_E f\,d\mu

と定める。このとき、λf\lambda_fは(X,F)(X,\mathcal{F})上の正測度であり、

λf≪μ\lambda_f\ll\mu

が成り立つ。

証明. 指示関数1E\mathbf{1}_Eは可測であり、非負可測関数と指示関数の積も可測であるから、λf(E)\lambda_f(E)はすべてのE∈FE\in\mathcal{F}について定義される。空集合の指示関数は定数関数00なので、

λf(∅)=∫X0 dμ=0\lambda_f(\emptyset)=\int_X0\,d\mu=0

である。

E1,E2,⋯∈FE_1,E_2,\dots\in\mathcal{F}が二つずつ交わらないとする。各正の整数mmに対して

sm=f1⋃k=1mEk=∑k=1mf1Eks_m = f\mathbf{1}_{\bigcup_{k=1}^{m}E_k} = \sum_{k=1}^{m}f\mathbf{1}_{E_k}

とおく。各sms_mは非負可測関数であり、

sm↑f1⋃k=1∞Eks_m\uparrow f\mathbf{1}_{\bigcup_{k=1}^{\infty}E_k}

が点ごとに成り立つ。有限和に対する非負可測関数の積分の線形性と§E9.7 定理 1.1により、

λf(⋃k=1∞Ek)=∫Xf1⋃k=1∞Ek dμ=lim⁡m→∞∫Xsm dμ=lim⁡m→∞∑k=1m∫Xf1Ek dμ=∑k=1∞λf(Ek).\begin{aligned} \lambda_f\left(\bigcup_{k=1}^{\infty}E_k\right) &= \int_X f\mathbf{1}_{\bigcup_{k=1}^{\infty}E_k}\,d\mu\\ &= \lim_{m\to\infty}\int_Xs_m\,d\mu\\ &= \lim_{m\to\infty}\sum_{k=1}^{m}\int_Xf\mathbf{1}_{E_k}\,d\mu\\ &= \sum_{k=1}^{\infty}\lambda_f(E_k). \end{aligned}

すべての項は非負であるため、この計算に未定義な無限量の差は現れない。したがって、λf\lambda_fは正測度である。

E∈FE\in\mathcal{F}がμ(E)=0\mu(E)=0を満たすとする。関数f1Ef\mathbf{1}_EはEEの外で00である。§E9.6 補題 4.1により

λf(E)=∫Xf1E dμ=0\lambda_f(E)=\int_Xf\mathbf{1}_E\,d\mu=0

である。ゆえにλf≪μ\lambda_f\ll\muが成り立つ。▨

この命題ではλf(X)=∞\lambda_f(X)=\inftyを許した。有限測度の場合の主定理ではλf(E)≤ν(E)\lambda_f(E)\leq\nu(E)を候補の条件とするため、候補から定まる測度は自動的に有限測度になる。

2 有限正測度に対する定理

有限測度の場合には、ν\nu以下の測度を与える非負可測関数の族を考える。

定義 2.1.(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、μ\muとν\nuをその上の有限正測度とする。非負拡張実数値可測関数の族

C(μ,ν)={h:X→[0,∞] | h は可測であり、∫Eh dμ≤ν(E)(E∈F)}\mathcal{C}(\mu,\nu) = \left\{ h:X\to[0,\infty] \ \middle|\ \begin{array}{l} h\text{ は可測であり、}\\ \displaystyle\int_Eh\,d\mu\leq\nu(E) \quad(E\in\mathcal{F}) \end{array} \right\}

を、μ\muとν\nuに対する候補族 (Radon–Nikodym candidate family) という。

候補族は二つの関数の点ごとの最大をとる操作で閉じている。この閉性により、積分値が上限へ近づく任意の列を増加列へ置き換えることができる。

補題 2.2.(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、μ\muとν\nuをその上の有限正測度とする。h,k∈C(μ,ν)h,k\in\mathcal{C}(\mu,\nu)ならば、

h∨k=max⁡{h,k}h\vee k=\max\{h,k\}

もC(μ,ν)\mathcal{C}(\mu,\nu)に属する。

証明. 非負拡張実数値可測関数hhとkkに対して

{h<k}=⋃q∈Q({h<q}∩{q<k})\{h<k\} = \bigcup_{q\in\mathbb{Q}} \bigl(\{h<q\}\cap\{q<k\}\bigr)

である。右辺は可測集合の可算和なので、H={h≥k}H=\{h\geq k\}は可測である。また、

{h∨k>a}={h>a}∪{k>a}\{h\vee k>a\}=\{h>a\}\cup\{k>a\}

であるから、h∨kh\vee kは非負拡張実数値可測関数である。

E∈FE\in\mathcal{F}を任意にとる。集合EEをE∩HE\cap HとE∖HE\setminus Hに分け、非負可測関数の積分の線形性を用いると、

∫E(h∨k) dμ=∫E∩Hh dμ+∫E∖Hk dμ≤ν(E∩H)+ν(E∖H)=ν(E).\begin{aligned} \int_E(h\vee k)\,d\mu &= \int_{E\cap H}h\,d\mu+\int_{E\setminus H}k\,d\mu\\ &\leq \nu(E\cap H)+\nu(E\setminus H)\\ &= \nu(E). \end{aligned}

したがって、h∨k∈C(μ,ν)h\vee k\in\mathcal{C}(\mu,\nu)である。▨

2.1 有限測度の場合の証明方針

候補族の積分値の上限をaaとする。可算選択公理を用いて、積分値がaaへ近づく候補関数の列を同時に選び、有限最大を順にとって増加列へ変える。単調収束定理による極限ffは候補族に残り、∫Xf dμ=a\int_Xf\,d\mu=aを満たす。

残差を

λ(E)=ν(E)−∫Ef dμ\lambda(E)=\nu(E)-\int_Ef\,d\mu

と定める。候補条件とν\nuの有限性により、λ\lambdaは有限正測度である。λ≠0\lambda\neq0と仮定し、各正の整数nnに対して有限符号付き測度

ηn=λ−1nμ\eta_n=\lambda-\frac{1}{n}\mu

を考える。Hahn 分解の正集合PnP_nではλ\lambdaがμ/n\mu/n以上であるため、f+1Pn/nf+\mathbf{1}_{P_n}/nも候補になる。ffの最大性からμ(Pn)=0\mu(P_n)=0が従い、絶対連続性からλ(Pn)=0\lambda(P_n)=0も従う。一方、負集合NnN_nではλ(Nn)≤μ(Nn)/n\lambda(N_n)\leq\mu(N_n)/nである。有限性によりλ(X)=0\lambda(X)=0が従い、残差が消える。

定理 2.3 (有限正測度に対する Radon–Nikodym の定理). 従属選択公理を仮定する。(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、μ\muとν\nuをその上の有限正測度とする。さらに、ν≪μ\nu\ll\muを仮定する。このとき、非負拡張実数値可測関数f:X→[0,∞]f:X\to[0,\infty]が存在して、任意のE∈FE\in\mathcal{F}に対して

ν(E)=∫Ef dμ\nu(E)=\int_Ef\,d\mu

が成り立つ。

証明. 定数関数00はC(μ,ν)\mathcal{C}(\mu,\nu)に属する。候補条件をE=XE=Xへ適用すると、すべてのh∈C(μ,ν)h\in\mathcal{C}(\mu,\nu)に対して

0≤∫Xh dμ≤ν(X)<∞0\leq\int_Xh\,d\mu\leq\nu(X)<\infty

である。したがって、

a=sup⁡{∫Xh dμ∣h∈C(μ,ν)}a = \sup\left\{ \int_Xh\,d\mu\mid h\in\mathcal{C}(\mu,\nu) \right\}

は有限の非負実数である。

各正の整数nnに対して、

hn∈C(μ,ν),∫Xhn dμ>a−1n(1)h_n\in\mathcal{C}(\mu,\nu), \qquad \int_Xh_n\,d\mu>a-\frac{1}{n} \tag{1}

を満たす候補hnh_nが存在する。従属選択公理から可算選択公理が従うことは§E1.20 定理 4.6で証明されている。可算選択公理を、各nnに対する候補の非空集合へ適用し、列(hn)n≥1(h_n)_{n\geq1}を同時に選ぶ。

各正の整数nnに対して

gn=h1∨⋯∨hng_n=h_1\vee\cdots\vee h_n

とおく。補題 2.2を有限回適用するとgn∈C(μ,ν)g_n\in\mathcal{C}(\mu,\nu)である。また、

gn≤gn+1,gn≥hng_n\leq g_{n+1}, \qquad g_n\geq h_n

が点ごとに成り立つ。関数

f=sup⁡n≥1gnf=\sup_{n\geq1}g_n

は、可測関数の増加列の点ごとの極限なので非負拡張実数値可測関数である。

E∈FE\in\mathcal{F}を任意にとる。関数列(gn1E)n≥1(g_n\mathbf{1}_E)_{n\geq1}へ単調収束定理を適用すると、

∫Ef dμ=lim⁡n→∞∫Egn dμ≤ν(E)\int_Ef\,d\mu = \lim_{n\to\infty}\int_Eg_n\,d\mu \leq\nu(E)

である。したがって、f∈C(μ,ν)f\in\mathcal{C}(\mu,\nu)である。E=XE=Xの場合と (1) から、

a≥∫Xf dμ=lim⁡n→∞∫Xgn dμ≥lim⁡n→∞∫Xhn dμ=aa \geq \int_Xf\,d\mu = \lim_{n\to\infty}\int_Xg_n\,d\mu \geq \lim_{n\to\infty}\int_Xh_n\,d\mu =a

を得る。よって、

∫Xf dμ=a.(2)\int_Xf\,d\mu=a. \tag{2}

命題 1.2によって定まる有限正測度をλf\lambda_fと書く。候補条件から0≤λf(E)≤ν(E)<∞0\leq\lambda_f(E)\leq\nu(E)<\inftyがすべてのE∈FE\in\mathcal{F}について成り立つ。そこで

λ(E)=ν(E)−λf(E)(E∈F)(3)\lambda(E)=\nu(E)-\lambda_f(E) \qquad(E\in\mathcal{F}) \tag{3}

と定める。各値は有限の非負実数である。

λ\lambdaが正測度であることを確認する。E1,E2,…E_1,E_2,\dotsが二つずつ交わらないとし、Am=⋃k=1mEkA_m=\bigcup_{k=1}^{m}E_kとA=⋃k=1∞EkA=\bigcup_{k=1}^{\infty}E_kとおく。ν\nuとλf\lambda_fの可算加法性、および両測度の有限性から

ν(Am)⟶ν(A),λf(Am)⟶λf(A)\nu(A_m)\longrightarrow\nu(A), \qquad \lambda_f(A_m)\longrightarrow\lambda_f(A)

が有限実数の極限として成り立つ。したがって、

λ(A)=ν(A)−λf(A)=lim⁡m→∞(ν(Am)−λf(Am))=lim⁡m→∞∑k=1m(ν(Ek)−λf(Ek))=∑k=1∞λ(Ek).\begin{aligned} \lambda(A) &=\nu(A)-\lambda_f(A)\\ &=\lim_{m\to\infty} \bigl(\nu(A_m)-\lambda_f(A_m)\bigr)\\ &=\lim_{m\to\infty}\sum_{k=1}^{m} \bigl(\nu(E_k)-\lambda_f(E_k)\bigr)\\ &=\sum_{k=1}^{\infty}\lambda(E_k). \end{aligned}

また、λ(∅)=0\lambda(\emptyset)=0である。ゆえに、λ\lambdaは有限正測度である。

μ(E)=0\mu(E)=0ならば、ν≪μ\nu\ll\muからν(E)=0\nu(E)=0であり、命題 1.2からλf(E)=0\lambda_f(E)=0である。(3) によりλ(E)=0\lambda(E)=0なので、

λ≪μ(4)\lambda\ll\mu \tag{4}

が成り立つ。

各正の整数nnに対して

ηn(E)=λ(E)−1nμ(E)(E∈F)\eta_n(E)=\lambda(E)-\frac{1}{n}\mu(E) \qquad(E\in\mathcal{F})

と定める。λ\lambdaとμ/n\mu/nは有限正測度である。互いに交わらない可測集合列(Ek)(E_k)に対して

∑k=1∞∣λ(Ek)−1nμ(Ek)∣≤λ(X)+1nμ(X)<∞\sum_{k=1}^{\infty} \left|\lambda(E_k)-\frac{1}{n}\mu(E_k)\right| \leq \lambda(X)+\frac{1}{n}\mu(X)<\infty

であり、両測度の可算加法性からηn\eta_nの可算加法性が従う。したがって、ηn\eta_nは有限符号付き測度である。

§E9.14 定理 3.2を各ηn\eta_nへ適用すると、Hahn 分解の集合は各nnについて空でない。従属選択公理から従う可算選択公理を用いて、Hahn 分解

X=Pn⊔Nn(n≥1)(5)X=P_n\mathbin{\sqcup}N_n \qquad(n\geq1) \tag{5}

をすべてのnnについて同時に選ぶ。PnP_nはηn\eta_nの正集合であり、NnN_nはηn\eta_nの負集合である。

固定したnnに対して

un=f+1n1Pnu_n=f+\frac{1}{n}\mathbf{1}_{P_n}

とおく。E∈FE\in\mathcal{F}を任意にとる。E∩PnE\cap P_nはηn\eta_nの正集合PnP_nの可測部分集合であるため、

0≤ηn(E∩Pn)=λ(E∩Pn)−1nμ(E∩Pn).0\leq\eta_n(E\cap P_n) = \lambda(E\cap P_n)-\frac{1}{n}\mu(E\cap P_n).

正測度λ\lambdaの単調性を用いると、

1nμ(E∩Pn)≤λ(E∩Pn)≤λ(E).(6)\frac{1}{n}\mu(E\cap P_n) \leq\lambda(E\cap P_n) \leq\lambda(E). \tag{6}

非負可測関数の積分の線形性、(3)、および (6) から

∫Eun dμ=λf(E)+1nμ(E∩Pn)≤λf(E)+λ(E)=ν(E).\begin{aligned} \int_Eu_n\,d\mu &= \lambda_f(E)+\frac{1}{n}\mu(E\cap P_n)\\ &\leq \lambda_f(E)+\lambda(E)\\ &=\nu(E). \end{aligned}

したがって、un∈C(μ,ν)u_n\in\mathcal{C}(\mu,\nu)である。(2) と候補族の積分値の上限の定義から

a≥∫Xun dμ=a+1nμ(Pn).a \geq \int_Xu_n\,d\mu = a+\frac{1}{n}\mu(P_n).

aaは有限であるため、

μ(Pn)=0(7)\mu(P_n)=0 \tag{7}

が成り立つ。(4) と (7) により

λ(Pn)=0.(8)\lambda(P_n)=0. \tag{8}

NnN_nはηn\eta_nの負集合であるから、

ηn(Nn)=λ(Nn)−1nμ(Nn)≤0.(9)\eta_n(N_n) = \lambda(N_n)-\frac{1}{n}\mu(N_n) \leq0. \tag{9}

(5)、(8)、(9)、および有限加法性により、

0≤λ(X)=λ(Pn)+λ(Nn)≤1nμ(Nn)≤1nμ(X)(10)0\leq\lambda(X) = \lambda(P_n)+\lambda(N_n) \leq\frac{1}{n}\mu(N_n) \leq\frac{1}{n}\mu(X) \tag{10}

がすべての正の整数nnについて成り立つ。μ(X)<∞\mu(X)<\inftyなので、(10) からλ(X)=0\lambda(X)=0を得る。正測度の単調性により、すべてのE∈FE\in\mathcal{F}について

0≤λ(E)≤λ(X)=00\leq\lambda(E)\leq\lambda(X)=0

である。したがってλ\lambdaは零測度であり、(3) から

ν(E)=λf(E)=∫Ef dμ\nu(E)=\lambda_f(E)=\int_Ef\,d\mu

がすべてのE∈FE\in\mathcal{F}について成り立つ。▨

3 シグマ有限な正測度への拡張

二つのシグマ有限測度を同時に有限にする可測分割を構成し、各部分へ有限測度の場合の定理を適用する。貼り合わせの積分を追跡するため、制限測度上の積分と零延長の関係を先に証明する。

補題 3.1.(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、D∈FD\in\mathcal{F}とする。

F∣D={E∩D∣E∈F}\mathcal{F}|_D=\{E\cap D\mid E\in\mathcal{F}\}

をDD上のトレースシグマ加法族とし、

μD(B)=μ(B)(B∈F∣D)\mu_D(B)=\mu(B) \qquad(B\in\mathcal{F}|_D)

と定める。関数h:D→[0,∞]h:D\to[0,\infty]がF∣D\mathcal{F}|_Dに関して可測であるとし、零延長

h^(x)={h(x),x∈D,0,x∈X∖D\widehat h(x) = \begin{cases} h(x),&x\in D,\\ 0,&x\in X\setminus D \end{cases}

を定める。このとき、μD\mu_Dは(D,F∣D)(D,\mathcal{F}|_D)上の正測度であり、h^\widehat hはF\mathcal{F}に関して可測である。さらに、

∫Dh dμD=∫Xh^ dμ\int_Dh\,d\mu_D = \int_X\widehat h\,d\mu

が[0,∞][0,\infty]において成り立つ。

証明.∅∈F∣D\emptyset\in\mathcal{F}|_Dであり、μD(∅)=0\mu_D(\emptyset)=0である。トレースシグマ加法族に含まれる二つずつ交わらない集合列はF\mathcal{F}にも含まれるため、μ\muの可算加法性をそのまま適用するとμD\mu_Dの可算加法性が得られる。したがって、μD\mu_Dは正測度である。

a≥0a\geq0に対して

{h^>a}={x∈D∣h(x)>a}\{\widehat h>a\}=\{x\in D\mid h(x)>a\}

であり、右辺はトレースシグマ加法族の元なのでF\mathcal{F}に属する。a<0a<0に対して{h^>a}=X\{\widehat h>a\}=Xである。半直線による可測性の判定から、h^\widehat hは可測である。

0≤φ≤h0\leq\varphi\leq hを満たすDD上の非負単関数φ\varphiを零延長すると、0≤φ^≤h^0\leq\widehat\varphi\leq\widehat hを満たすXX上の非負単関数が得られる。逆に、0≤ψ≤h^0\leq\psi\leq\widehat hを満たすXX上の非負単関数ψ\psiはX∖DX\setminus D上で00であり、DDへの制限ψ∣D\psi|_Dは0≤ψ∣D≤h0\leq\psi|_D\leq hを満たす非負単関数である。この二つの操作は互いに逆である。

DD上の非負単関数

φ=∑i=1mci1Bi\varphi=\sum_{i=1}^{m}c_i\mathbf{1}_{B_i}

を相異なる値による表示で書くと、その零延長ではX∖DX\setminus Dに値00の部分を加えるだけである。非負単関数の積分の定義と0⋅∞=00\cdot\infty=0という規約から

∫Dφ dμD=∑i=1mciμD(Bi)=∑i=1mciμ(Bi)=∫Xφ^ dμ\int_D\varphi\,d\mu_D = \sum_{i=1}^{m}c_i\mu_D(B_i) = \sum_{i=1}^{m}c_i\mu(B_i) = \int_X\widehat\varphi\,d\mu

が成り立つ。非負可測関数の積分は、その関数を下から抑えるすべての非負単関数の積分値の上限である。前段の対応によって両側で上限をとる候補と値が一致するため、

∫Dh dμD=∫Xh^ dμ\int_Dh\,d\mu_D=\int_X\widehat h\,d\mu

を得る。▨

次の補題は、二つのシグマ有限測度に対して同じ有限測度部分を用いることができることを示す。

補題 3.2.(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、μ\muとν\nuをその上のシグマ有限な正測度とする。このとき、二つずつ交わらない可測集合の列(Dk)k≥1(D_k)_{k\geq1}が存在して、

X=⋃k=1∞Dk,μ(Dk)<∞,ν(Dk)<∞X=\bigcup_{k=1}^{\infty}D_k, \qquad \mu(D_k)<\infty, \qquad \nu(D_k)<\infty

がすべての正の整数kkについて成り立つ。

証明. シグマ有限性の定義により、可測集合の列(An)n≥1(A_n)_{n\geq1}と(Bm)m≥1(B_m)_{m\geq1}で

X=⋃n=1∞An=⋃m=1∞Bm,μ(An)<∞,ν(Bm)<∞X=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n = \bigcup_{m=1}^{\infty}B_m, \qquad \mu(A_n)<\infty, \qquad \nu(B_m)<\infty

を満たすものが存在する。二つの列を一つずつ固定する。

正の整数の組(n,m)(n,m)を対角線順に明示的に並べ、対応する集合An∩BmA_n\cap B_mをC1,C2,…C_1,C_2,\dotsと書く。この番号づけには選択原理を用いない。

D1=C1,Dk=Ck∖⋃j=1k−1Cj(k≥2)D_1=C_1, \qquad D_k=C_k\setminus\bigcup_{j=1}^{k-1}C_j \quad(k\geq2)

と定める。各DkD_kは可測であり、集合列(Dk)(D_k)は二つずつ交わらない。Ck=An∩BmC_k=A_n\cap B_mである場合には

μ(Dk)≤μ(An)<∞,ν(Dk)≤ν(Bm)<∞\mu(D_k)\leq\mu(A_n)<\infty, \qquad \nu(D_k)\leq\nu(B_m)<\infty

である。集合族(An∩Bm)n,m≥1(A_n\cap B_m)_{n,m\geq1}はXXを覆うため、(Dk)(D_k)もXXを覆う。▨

3.1 シグマ有限な場合の証明方針

補題 3.2の分割(Dk)(D_k)を固定する。各トレース可測空間DkD_k上でμ\muとν\nuを制限すると有限正測度が得られる。有限測度の場合の定理が与える局所的な関数を、従属選択公理から従う可算選択公理によって同時に選ぶ。各関数をXXへ零延長して足し合わせ、単調収束定理を適用すると、各E∈FE\in\mathcal{F}についてν(E)\nu(E)が得られる。

定理 3.3 (シグマ有限な正測度に対する Radon–Nikodym の定理). 従属選択公理を仮定する。(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、μ\muとν\nuをその上のシグマ有限な正測度とする。さらに、ν≪μ\nu\ll\muを仮定する。このとき、非負拡張実数値可測関数f:X→[0,∞]f:X\to[0,\infty]が存在して、任意のE∈FE\in\mathcal{F}に対して

ν(E)=∫Ef dμ\nu(E)=\int_Ef\,d\mu

が成り立つ。

証明.補題 3.2によって得られる分割(Dk)k≥1(D_k)_{k\geq1}を固定する。DkD_k上のトレースシグマ加法族をF∣Dk\mathcal{F}|_{D_k}と書き、正測度

μk(B)=μ(B),νk(B)=ν(B)(B∈F∣Dk)\mu_k(B)=\mu(B), \qquad \nu_k(B)=\nu(B) \qquad(B\in\mathcal{F}|_{D_k})

を定める。分割の性質からμk\mu_kとνk\nu_kは有限正測度である。B∈F∣DkB\in\mathcal{F}|_{D_k}がμk(B)=0\mu_k(B)=0を満たすならば、μ(B)=0\mu(B)=0である。ν≪μ\nu\ll\muによりν(B)=0\nu(B)=0なので、νk≪μk\nu_k\ll\mu_kが成り立つ。

定理 2.3を(Dk,F∣Dk,μk,νk)(D_k,\mathcal{F}|_{D_k},\mu_k,\nu_k)へ適用すると、各kkに対して非負拡張実数値可測関数fk:Dk→[0,∞]f_k:D_k\to[0,\infty]が存在し、

νk(B)=∫Bfk dμk(B∈F∣Dk)(11)\nu_k(B)=\int_Bf_k\,d\mu_k \qquad(B\in\mathcal{F}|_{D_k}) \tag{11}

が成り立つ。各kkに対する関数の候補集合は空でない。§E1.20 定理 4.6により従属選択公理から可算選択公理が従うため、関数列(fk)k≥1(f_k)_{k\geq1}を同時に選ぶ。

f^k\widehat f_kをfkf_kのXXへの零延長とする。補題 3.1により、各f^k\widehat f_kは非負拡張実数値可測関数である。

sm=∑k=1mf^ks_m=\sum_{k=1}^{m}\widehat f_k

とおく。各sms_mは非負拡張実数値可測関数であり、sm≤sm+1s_m\leq s_{m+1}が点ごとに成り立つ。したがって、

f=sup⁡m≥1sm=∑k=1∞f^kf=\sup_{m\geq1}s_m = \sum_{k=1}^{\infty}\widehat f_k

は非負拡張実数値可測関数である。

E∈FE\in\mathcal{F}を任意にとる。各kkについてE∩Dk∈F∣DkE\cap D_k\in\mathcal{F}|_{D_k}である。DkD_k上の可測関数fk1E∩Dkf_k\mathbf{1}_{E\cap D_k}へ補題 3.1を適用し、(11) と合わせると、

∫Ef^k dμ=∫E∩Dkfk dμk=ν(E∩Dk)(12)\int_E\widehat f_k\,d\mu = \int_{E\cap D_k}f_k\,d\mu_k = \nu(E\cap D_k) \tag{12}

を得る。非負可測関数の有限和に対する線形性、単調収束定理、(12)、およびν\nuの可算加法性により、

∫Ef dμ=lim⁡m→∞∫Esm dμ=lim⁡m→∞∑k=1m∫Ef^k dμ=∑k=1∞ν(E∩Dk)=ν(E).\begin{aligned} \int_Ef\,d\mu &= \lim_{m\to\infty}\int_Es_m\,d\mu\\ &= \lim_{m\to\infty}\sum_{k=1}^{m}\int_E\widehat f_k\,d\mu\\ &= \sum_{k=1}^{\infty}\nu(E\cap D_k)\\ &= \nu(E). \end{aligned}

すべての項は非負であるため、ν(E)=∞\nu(E)=\inftyの場合にも等式は[0,∞][0,\infty]で定義される。▨

4 密度の一意性

存在定理だけでは、同じ測度を表す二つの関数の関係は定まらない。表される測度ν\nuのシグマ有限性を用いると、両関数が有限値をとる領域へ局所化し、積分の等式から点ごとの大小を判定することができる。

定理 4.1.(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、ν\nuを(X,F)(X,\mathcal{F})上のシグマ有限な正測度とする。f,g:X→[0,∞]f,g:X\to[0,\infty]を非負拡張実数値可測関数とし、任意のE∈FE\in\mathcal{F}に対して

ν(E)=∫Ef dμ=∫Eg dμ(13)\nu(E)=\int_Ef\,d\mu=\int_Eg\,d\mu \tag{13}

が成り立つと仮定する。このとき、

f=gf=g

がμ\muに関してほとんど至る所で成り立つ。さらに、ffとggが無限大をとる点の集合はそれぞれμ\mu-零集合である。

証明. シグマ有限性により、可測集合の列(Bk)k≥1(B_k)_{k\geq1}で

X=⋃k=1∞Bk,ν(Bk)<∞(14)X=\bigcup_{k=1}^{\infty}B_k, \qquad \nu(B_k)<\infty \tag{14}

を満たすものを固定する。

Zf,k=Bk∩{f=∞}Z_{f,k}=B_k\cap\{f=\infty\}とおく。各正の整数mmについて

m1Zf,k≤f1Bkm\mathbf{1}_{Z_{f,k}} \leq f\mathbf{1}_{B_k}

が点ごとに成り立つ。積分の単調性、非負単関数の積分の定義、および (13) から

mμ(Zf,k)≤∫Bkf dμ=ν(Bk)<∞(15)m\mu(Z_{f,k}) \leq \int_{B_k}f\,d\mu = \nu(B_k)<\infty \tag{15}

である。(15) がすべての正の整数mmについて成り立つため、μ(Zf,k)=0\mu(Z_{f,k})=0である。実際、測度が正の有限値ならば左辺はmmとともに任意に大きくなり、測度が無限大ならば左辺は最初から無限大になる。ggについても同じ議論を適用すると、

μ(Zg,k)=0\mu(Z_{g,k})=0

を得る。したがって、

Z=⋃k=1∞(Zf,k∪Zg,k)(16)Z = \bigcup_{k=1}^{\infty}(Z_{f,k}\cup Z_{g,k}) \tag{16}

はμ\mu-零集合であり、X∖ZX\setminus Z上でffとggはともに有限値をとる。

正の整数k,mk,mに対して

Ak,m=Bk∩(X∖Z)∩{f≥g+1m}A_{k,m} = B_k\cap(X\setminus Z)\cap \left\{f\geq g+\frac{1}{m}\right\}

とおく。有限値可測関数の差に関する可測性からAk,m∈FA_{k,m}\in\mathcal{F}である。Ak,m⊆BkA_{k,m}\subseteq B_kと (13)、(14) から

∫Ak,mf dμ=∫Ak,mg dμ=ν(Ak,m)<∞.(17)\int_{A_{k,m}}f\,d\mu = \int_{A_{k,m}}g\,d\mu = \nu(A_{k,m}) <\infty. \tag{17}

Ak,mA_{k,m}上の点ごとの不等式と非負可測関数の積分の単調性および線形性から

∫Ak,mf dμ≥∫Ak,mg dμ+1mμ(Ak,m).(18)\int_{A_{k,m}}f\,d\mu \geq \int_{A_{k,m}}g\,d\mu +\frac{1}{m}\mu(A_{k,m}). \tag{18}

(17) の共通の有限値を (18) の両辺へ代入すると、

μ(Ak,m)=0(19)\mu(A_{k,m})=0 \tag{19}

を得る。

x∈X∖Zx\in X\setminus Zがf(x)>g(x)f(x)>g(x)を満たすとする。(14) からx∈Bkx\in B_kを満たす正の整数kkが存在する。f(x)−g(x)>0f(x)-g(x)>0であるから、1/m≤f(x)−g(x)1/m\leq f(x)-g(x)を満たす正の整数mmが存在する。したがって、

{f>g}⊆Z∪⋃k=1∞⋃m=1∞Ak,m.\{f>g\} \subseteq Z\cup\bigcup_{k=1}^{\infty}\bigcup_{m=1}^{\infty}A_{k,m}.

(16) と (19) によりμ({f>g})=0\mu(\{f>g\})=0である。ffとggを交換した同じ議論からμ({g>f})=0\mu(\{g>f\})=0を得る。ゆえにf=gf=gがμ\muに関してほとんど至る所で成り立つ。

集合{f=∞}\{f=\infty\}は可測なμ\mu-零集合である。この集合上だけでffの値を00へ変更した関数は、有限値をとる非負可測関数であり、ffとμ\muに関してほとんど至る所で等しい。§E9.6 定理 4.2により、変更後の関数も (13) のν\nuを表す。ggについても同じ修正を行うことができる。▨

定理 3.3と定理 4.1を証明した後に、密度の記法を定義することができる。

定義 4.2. 従属選択公理を仮定する。(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、μ\muとν\nuをその上のシグマ有限な正測度とし、ν≪μ\nu\ll\muとする。任意のE∈FE\in\mathcal{F}に対して

ν(E)=∫Ef dμ\nu(E)=\int_Ef\,d\mu

を満たす非負拡張実数値可測関数ffを、ν\nuのμ\muに関する Radon–Nikodym 密度 (Radon–Nikodym density) または Radon–Nikodym 微分 (Radon–Nikodym derivative) といい、

f=dνdμf=\frac{d\nu}{d\mu}

と書く。この記法は一つの点ごとの関数ではなく、μ\muに関してほとんど至る所で等しい関数の同値類を表す。密度はμ\mu-零集合上で値を変更し、有限値をとる非負可測関数として選ぶことができる。

密度を用いて定めた測度に関する積分は、もとの測度に関する積分へ戻すことができる。この公式を、後の Lebesgue 分解で絶対連続部分の密度を明示するために用いる。

命題 4.3.(X,F,ρ)(X,\mathcal{F},\rho)を測度空間とし、g:X→[0,∞]g:X\to[0,\infty]を非負拡張実数値可測関数とする。正測度μ\muを

μ(E)=∫Eg dρ(E∈F)(20)\mu(E)=\int_Eg\,d\rho \qquad(E\in\mathcal{F}) \tag{20}

によって定める。任意の非負拡張実数値可測関数h:X→[0,∞]h:X\to[0,\infty]に対して、

∫Xh dμ=∫Xhg dρ(21)\int_Xh\,d\mu = \int_Xhg\,d\rho \tag{21}

が[0,∞][0,\infty]において成り立つ。積hghgでは0⋅∞=00\cdot\infty=0と定める。

証明.E∈FE\in\mathcal{F}に対する指示関数では、非負単関数の積分の定義と (20) から

∫X1E dμ=μ(E)=∫Eg dρ=∫X1Eg dρ\int_X\mathbf{1}_E\,d\mu = \mu(E) = \int_Eg\,d\rho = \int_X\mathbf{1}_Eg\,d\rho

を得る。

非負単関数

φ=∑i=1mci1Ei\varphi=\sum_{i=1}^{m}c_i\mathbf{1}_{E_i}

を相異なる値による表示で書く。非負可測関数の積分の有限線形性と、指示関数について証明した等式から

∫Xφ dμ=∑i=1mciμ(Ei)=∑i=1mci∫Eig dρ=∫Xφg dρ(22)\int_X\varphi\,d\mu = \sum_{i=1}^{m}c_i\mu(E_i) = \sum_{i=1}^{m}c_i\int_{E_i}g\,d\rho = \int_X\varphi g\,d\rho \tag{22}

を得る。ci=0c_i=0かつg=∞g=\inftyとなる点では、両辺で0⋅∞=00\cdot\infty=0を用いる。

§E9.5 定理 5.3により、0≤φn↑h0\leq\varphi_n\uparrow hを満たす非負単関数列を選ぶ。各φng\varphi_ngは、φn\varphi_nの値ごとの可測分割上でggの非負定数倍に等しいため可測である。また、規約0⋅∞=00\cdot\infty=0のもとで

φng↑hg\varphi_ng\uparrow hg

が点ごとに成り立つ。単調収束定理と (22) により、

∫Xh dμ=lim⁡n→∞∫Xφn dμ=lim⁡n→∞∫Xφng dρ=∫Xhg dρ.\begin{aligned} \int_Xh\,d\mu &= \lim_{n\to\infty}\int_X\varphi_n\,d\mu\\ &= \lim_{n\to\infty}\int_X\varphi_ng\,d\rho\\ &= \int_Xhg\,d\rho. \end{aligned}

したがって、(21) が成り立つ。▨

5 Lebesgue 分解

二つのシグマ有限な正測度ν\nuとμ\muを加えて

ρ=ν+μ\rho=\nu+\mu

とおく。ν\nuとμ\muはともにρ\rhoに関して絶対連続であるため、それぞれをρ\rhoに関する密度ffとggで表すことができる。集合{g>0}\{g>0\}ではμ\muがρ\rhoの零集合を検出し、集合{g=0}\{g=0\}ではμ\muが零になる。この二集合にν\nuを制限することにより、絶対連続部分と特異部分を構成する。

5.1 Lebesgue 分解の証明方針

最初に、ρ\rhoがシグマ有限であることを、μ\muとν\nuに共通する有限可測分割から証明する。 Radon–Nikodym の定理を二度適用し、

ν(E)=∫Ef dρ,μ(E)=∫Eg dρ\nu(E)=\int_Ef\,d\rho, \qquad \mu(E)=\int_Eg\,d\rho

を得る。A={g>0}A=\{g>0\}とS={g=0}S=\{g=0\}に対して

νa(E)=ν(E∩A),νs(E)=ν(E∩S)\nu_{\mathrm a}(E)=\nu(E\cap A), \qquad \nu_{\mathrm s}(E)=\nu(E\cap S)

と定める。μ(E)=0\mu(E)=0ならば、集合{g≥1/n}\{g\geq1/n\}上でρ(E)=0\rho(E)=0を導くことによりνa≪μ\nu_{\mathrm a}\ll\muを示す。μ(S)=0\mu(S)=0であり、νs\nu_{\mathrm s}はSSに集中するためνs⊥μ\nu_{\mathrm s}\perp\muとなる。

一意性では、二つの特異部分が集中するμ\mu-零集合の和を除く。その補集合では両方の特異部分が零になるので、二つの絶対連続部分が一致する。特異部分の一致を導く際には、ν\nuが有限となる可測分割上で有限値だけを差し引く。したがって、一意性の証明にも∞−∞\infty-\inftyは現れない。

定理 5.1 (シグマ有限な正測度の Lebesgue 分解). 従属選択公理を仮定する。(X,F)(X,\mathcal{F})を可測空間とし、μ\muとν\nuをその上のシグマ有限な正測度とする。このとき、(X,F)(X,\mathcal{F})上の正測度νa\nu_{\mathrm a}とνs\nu_{\mathrm s}の組で

ν=νa+νs,νa≪μ,νs⊥μ(23)\nu=\nu_{\mathrm a}+\nu_{\mathrm s}, \qquad \nu_{\mathrm a}\ll\mu, \qquad \nu_{\mathrm s}\perp\mu \tag{23}

を満たすものが一意に存在する。両成分はシグマ有限である。

具体的には、ρ=ν+μ\rho=\nu+\muとし、

f=dνdρ,g=dμdρf=\frac{d\nu}{d\rho}, \qquad g=\frac{d\mu}{d\rho}

を選ぶ。可測集合

A={x∈X∣g(x)>0},S={x∈X∣g(x)=0}A=\{x\in X\mid g(x)>0\}, \qquad S=\{x\in X\mid g(x)=0\}

に対して

νa(E)=ν(E∩A),νs(E)=ν(E∩S)(E∈F)(24)\nu_{\mathrm a}(E)=\nu(E\cap A), \qquad \nu_{\mathrm s}(E)=\nu(E\cap S) \qquad(E\in\mathcal{F}) \tag{24}

と定めることができる。

さらに、

h(x)={f(x)g(x),0<g(x)<∞,0,g(x)=0 または g(x)=∞(25)h(x) = \begin{cases} \dfrac{f(x)}{g(x)},&0<g(x)<\infty,\\ 0,&g(x)=0\text{ または }g(x)=\infty \end{cases} \tag{25}

とおくと、hhは非負拡張実数値可測関数であり、

νa(E)=∫Eh dμ(E∈F)(26)\nu_{\mathrm a}(E)=\int_Eh\,d\mu \qquad(E\in\mathcal{F}) \tag{26}

が成り立つ。したがって、hhはdνa/dμd\nu_{\mathrm a}/d\muの一つの代表である。

証明. 各E∈FE\in\mathcal{F}に対して

ρ(E)=ν(E)+μ(E)\rho(E)=\nu(E)+\mu(E)

と定める。ρ(∅)=0\rho(\emptyset)=0である。互いに交わらない可測集合列(Ek)k≥1(E_k)_{k\geq1}に対して、非負項級数の結合法則とν,μ\nu,\muの可算加法性から

ρ(⋃k=1∞Ek)=∑k=1∞ν(Ek)+∑k=1∞μ(Ek)=∑k=1∞(ν(Ek)+μ(Ek))=∑k=1∞ρ(Ek)\begin{aligned} \rho\left(\bigcup_{k=1}^{\infty}E_k\right) &= \sum_{k=1}^{\infty}\nu(E_k)+\sum_{k=1}^{\infty}\mu(E_k)\\ &= \sum_{k=1}^{\infty}\bigl(\nu(E_k)+\mu(E_k)\bigr)\\ &= \sum_{k=1}^{\infty}\rho(E_k) \end{aligned}

を得る。したがって、ρ\rhoは正測度である。

補題 3.2により、二つずつ交わらない可測集合の列(Dk)k≥1(D_k)_{k\geq1}でXXを覆い、ν(Dk)<∞\nu(D_k)<\inftyかつμ(Dk)<∞\mu(D_k)<\inftyを満たすものが存在する。各kkについて

ρ(Dk)=ν(Dk)+μ(Dk)<∞\rho(D_k)=\nu(D_k)+\mu(D_k)<\infty

なので、ρ\rhoはシグマ有限である。

ρ(E)=0\rho(E)=0ならば、非負拡張実数の和

0=ν(E)+μ(E)0=\nu(E)+\mu(E)

からν(E)=μ(E)=0\nu(E)=\mu(E)=0が従う。したがって、

ν≪ρ,μ≪ρ.\nu\ll\rho, \qquad \mu\ll\rho.

定理 3.3を二度適用し、非負拡張実数値可測関数f,gf,gを

ν(E)=∫Ef dρ,μ(E)=∫Eg dρ(E∈F)(27)\nu(E)=\int_Ef\,d\rho, \qquad \mu(E)=\int_Eg\,d\rho \qquad(E\in\mathcal{F}) \tag{27}

を満たすように選ぶ。二つの関数を選ぶ操作は有限選択であり、この操作のために可算選択公理を追加して用いる必要はない。

A={g>0}A=\{g>0\}とS={g=0}S=\{g=0\}は可測であり、X=A⊔SX=A\mathbin{\sqcup}Sである。(24) によってνa\nu_{\mathrm a}とνs\nu_{\mathrm s}を定める。正測度を可測集合へ制限した集合関数は正測度である。実際、空集合の値は00であり、互いに交わらない可測集合列とAAまたはSSとの共通部分をとってν\nuの可算加法性を適用すればよい。任意のE∈FE\in\mathcal{F}に対して

E=(E∩A)⊔(E∩S)E=(E\cap A)\mathbin{\sqcup}(E\cap S)

であるから、

ν(E)=νa(E)+νs(E).(28)\nu(E)=\nu_{\mathrm a}(E)+\nu_{\mathrm s}(E). \tag{28}

νs\nu_{\mathrm s}はSSに集中する。さらに、(27) とSS上の等式g=0g=0から

μ(S)=∫Sg dρ=0.\mu(S)=\int_Sg\,d\rho=0.

§E9.14 定義 4.1により

νs⊥μ(29)\nu_{\mathrm s}\perp\mu \tag{29}

である。

νa≪μ\nu_{\mathrm a}\ll\muを示す。E∈FE\in\mathcal{F}がμ(E)=0\mu(E)=0を満たすとし、各正の整数nnに対して

An={g≥1n}A_n=\left\{g\geq\frac{1}{n}\right\}

とおく。積分の単調性と (27) により、

0=μ(E∩An)=∫E∩Ang dρ≥1nρ(E∩An).0 = \mu(E\cap A_n) = \int_{E\cap A_n}g\,d\rho \geq \frac{1}{n}\rho(E\cap A_n).

したがって、ρ(E∩An)=0\rho(E\cap A_n)=0である。A=⋃n=1∞AnA=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_nなので、ρ\rhoの可算劣加法性からρ(E∩A)=0\rho(E\cap A)=0を得る。ν≤ρ\nu\leq\rhoであるため、

νa(E)=ν(E∩A)≤ρ(E∩A)=0.\nu_{\mathrm a}(E) = \nu(E\cap A) \leq \rho(E\cap A) =0.

ゆえに、

νa≪μ.(30)\nu_{\mathrm a}\ll\mu. \tag{30}

両成分のシグマ有限性を確認する。前に固定した(Dk)(D_k)はXXを覆い、

νa(Dk)≤ν(Dk)<∞,νs(Dk)≤ν(Dk)<∞\nu_{\mathrm a}(D_k)\leq\nu(D_k)<\infty, \qquad \nu_{\mathrm s}(D_k)\leq\nu(D_k)<\infty

を満たす。したがって、νa\nu_{\mathrm a}とνs\nu_{\mathrm s}はシグマ有限である。

次に、(25) と (26) を証明する。a≥0a\geq0に対して

{h>a}={0<g<∞}∩{f>ag}\{h>a\} = \{0<g<\infty\}\cap\{f>ag\}

である。非負拡張実数値可測関数の正の有限定数倍は可測であり、

{f>ag}=⋃q∈Q({f>q}∩{ag<q})\{f>ag\} = \bigcup_{q\in\mathbb{Q}} \bigl(\{f>q\}\cap\{ag<q\}\bigr)

であるから、{h>a}\{h>a\}は可測である。a<0a<0ならば{h>a}=X\{h>a\}=Xである。したがって、hhは非負拡張実数値可測関数である。

μ\muはシグマ有限であり、ggは (27) によってμ\muをρ\rhoに関する積分として表す。定理 4.1の有限性に関する結論により、

Zg={g=∞}Z_g=\{g=\infty\}

はρ\rho-零集合である。X∖ZgX\setminus Z_g上では

hg=f1Ahg=f\mathbf{1}_A

が点ごとに成り立つ。命題 4.3を (27) のμ\muの表示へ適用し、§E9.6 定理 4.2を用いると、

∫Eh dμ=∫Ehg dρ=∫Ef1A dρ=∫E∩Af dρ=ν(E∩A)=νa(E)\begin{aligned} \int_Eh\,d\mu &= \int_Ehg\,d\rho\\ &= \int_Ef\mathbf{1}_A\,d\rho\\ &= \int_{E\cap A}f\,d\rho\\ &= \nu(E\cap A) = \nu_{\mathrm a}(E) \end{aligned}

を得る。したがって、(26) が成り立つ。

最後に、一意性を証明する。正測度α,σ\alpha,\sigmaが

ν=α+σ,α≪μ,σ⊥μ(31)\nu=\alpha+\sigma, \qquad \alpha\ll\mu, \qquad \sigma\perp\mu \tag{31}

を満たすと仮定する。(29) によりνs\nu_{\mathrm s}はμ\muと相互特異である。相互特異性の定義から、可測集合T0,T1∈FT_0,T_1\in\mathcal{F}が存在して

νs(X∖T0)=0,μ(T0)=0,σ(X∖T1)=0,μ(T1)=0\nu_{\mathrm s}(X\setminus T_0)=0, \qquad \mu(T_0)=0, \qquad \sigma(X\setminus T_1)=0, \qquad \mu(T_1)=0

となる。T=T0∪T1T=T_0\cup T_1とおく。μ(T)=0\mu(T)=0であり、νs\nu_{\mathrm s}とσ\sigmaはともにTTに集中する。

νa≪μ\nu_{\mathrm a}\ll\mu、α≪μ\alpha\ll\mu、およびμ(T)=0\mu(T)=0から、

νa(E∩T)=α(E∩T)=0(E∈F)(32)\nu_{\mathrm a}(E\cap T)=\alpha(E\cap T)=0 \qquad(E\in\mathcal{F}) \tag{32}

である。E∖TE\setminus T上では二つの特異部分がともに零になるため、(28) と (31) から

νa(E∖T)=ν(E∖T)=α(E∖T)\nu_{\mathrm a}(E\setminus T) = \nu(E\setminus T) = \alpha(E\setminus T)

を得る。(32) と有限加法性により

νa(E)=α(E)(E∈F)(33)\nu_{\mathrm a}(E)=\alpha(E) \qquad(E\in\mathcal{F}) \tag{33}

である。この段階では非負測度へ零を足した等式だけを用いており、無限量の差をとっていない。

特異部分の一致では、前に固定した共通有限分割(Dk)(D_k)を用いる。E∈FE\in\mathcal{F}と正の整数kkを固定し、C=E∩DkC=E\cap D_kとおく。(28) と (31) から

ν(C)=νa(C)+νs(C)=α(C)+σ(C).\nu(C) = \nu_{\mathrm a}(C)+\nu_{\mathrm s}(C) = \alpha(C)+\sigma(C).

すべての項はν(Dk)<∞\nu(D_k)<\infty以下であり、(33) によりνa(C)=α(C)\nu_{\mathrm a}(C)=\alpha(C)である。有限実数の等式から共通項を差し引くと、

νs(E∩Dk)=σ(E∩Dk).\nu_{\mathrm s}(E\cap D_k)=\sigma(E\cap D_k).

集合列(Dk)(D_k)は二つずつ交わらずXXを覆うため、可算加法性から

νs(E)=∑k=1∞νs(E∩Dk)=∑k=1∞σ(E∩Dk)=σ(E).\nu_{\mathrm s}(E) = \sum_{k=1}^{\infty}\nu_{\mathrm s}(E\cap D_k) = \sum_{k=1}^{\infty}\sigma(E\cap D_k) = \sigma(E).

(33) と合わせてα=νa\alpha=\nu_{\mathrm a}かつσ=νs\sigma=\nu_{\mathrm s}を得る。存在と一意性がともに示された。▨

例 5.2 (有限集合上の Lebesgue 分解).X={1,2,3}X=\{1,2,3\}、F=P(X)\mathcal{F}=\mathcal{P}(X)とし、

μ=δ1+2δ2,ν=3δ1+δ2+5δ3\mu=\delta_1+2\delta_2, \qquad \nu=3\delta_1+\delta_2+5\delta_3

とする。μ({3})=0\mu(\{3\})=0である一方、ν({3})=5\nu(\{3\})=5であるため、ν≪μ\nu\ll\muは成り立たない。

正測度

νa=3δ1+δ2,νs=5δ3\nu_{\mathrm a}=3\delta_1+\delta_2, \qquad \nu_{\mathrm s}=5\delta_3

はν=νa+νs\nu=\nu_{\mathrm a}+\nu_{\mathrm s}を満たす。μ(E)=0\mu(E)=0ならばE⊆{3}E\subseteq\{3\}であり、νa(E)=0\nu_{\mathrm a}(E)=0なのでνa≪μ\nu_{\mathrm a}\ll\muである。νs\nu_{\mathrm s}は{3}\{3\}に集中し、μ({3})=0\mu(\{3\})=0であるからνs⊥μ\nu_{\mathrm s}\perp\muである。定理 5.1の一意性により、この組が Lebesgue 分解である。

関数

h(1)=3,h(2)=12,h(3)=0h(1)=3,\qquad h(2)=\frac12,\qquad h(3)=0

に対して、任意のE⊆XE\subseteq Xについて

∫Eh dμ=31{1∈E}+1{2∈E}=νa(E)\int_Eh\,d\mu = 3\mathbf{1}_{\{1\in E\}}+\mathbf{1}_{\{2\in E\}} = \nu_{\mathrm a}(E)

である。したがって、hhはdνa/dμd\nu_{\mathrm a}/d\muの一つの代表である。

6 仮定と選択原理の役割

証明で用いた仮定の役割を分離すると、有限測度の場合とシグマ有限な場合の違いが明確になる。

注意 6.1 (各仮定と定理の使用箇所). 本記事では、各仮定と既証明の定理を次の箇所で用いた。

  1. 絶対連続性ν≪μ\nu\ll\muは、有限測度の場合の残差λ=ν−λf\lambda=\nu-\lambda_fがλ≪μ\lambda\ll\muを満たすことを導く。最大性からμ(Pn)=0\mu(P_n)=0を得た後にλ(Pn)=0\lambda(P_n)=0を結論するため、この絶対連続性が必要である。
  2. Hahn 分解は、残差λ\lambdaとμ/n\mu/nの大小を可測集合Pn,NnP_n,N_n上で一方向に固定する。正集合PnP_nは候補関数を増加させる場所を与え、負集合NnN_nはλ(Nn)≤μ(Nn)/n\lambda(N_n)\leq\mu(N_n)/nを与える。
  3. 単調収束定理は三度用いる。第一に、ffから定まる集合関数λf\lambda_fの可算加法性を示す。第二に、候補関数の増加列の極限が候補族に残り、最大積分値を達成することを示す。第三に、シグマ有限な場合の局所密度を貼り合わせて全体の積分公式を得る。
  4. 有限性は、残差を未定義な差なしに定め、最大積分値を有限にし、λ(X)≤μ(X)/n\lambda(X)\leq\mu(X)/nからλ=0\lambda=0を導く。シグマ有限性は、有限測度の場合の定理を適用する共通可測分割を与える。また、密度の一意性では、表される測度が有限となる可測被覆を与え、密度が有限値をとる領域で積分を比較することを可能にする。

注意 6.2 (選択原理の使用箇所). 本記事は従属選択公理を仮定する。従属選択公理の第一の用途は、§E9.14 定理 3.2が仮定する選択原理を満たすことである。同定理の Hahn 分解の構成自体が従属選択公理を用いる。

§E1.20 定理 4.6により、従属選択公理から可算選択公理が従う。有限測度の場合には、積分値が上限へ近づく候補関数hnh_nをすべてのnnについて同時に選ぶ箇所と、符号付き測度λ−μ/n\lambda-\mu/nの Hahn 分解をすべてのnnについて同時に選ぶ箇所で可算選択公理を用いた。シグマ有限な場合には、各有限測度部分の密度fkf_kを同時に選ぶ箇所で可算選択公理を用いた。

二つのシグマ有限測度に共通する有限可測分割は、シグマ有限性の証人として与えられた二列を交差させ、正の整数の組を明示的に番号づけて構成した。この番号づけと非交和化には選択原理を用いない。 Lebesgue 分解で二つの密度f,gf,gを選ぶ操作は有限選択である。密度の一意性の証明には、新たな選択原理を用いない。

7 演習

次の各問では、使用する有限性、絶対連続性、および選択原理を明記する。

問題 7.1.

  1. 命題 1.2の可算加法性を再構成せよ。互いに交わらない可測集合列(Ek)(E_k)に対して用いる増加関数列を明記し、単調収束定理を適用することができる理由を述べよ。
  2. 補題 2.2の証明を再構成せよ。点ごとの最大が可測であることと、候補条件を適用する二つの可測集合が互いに交わらないことの双方を示せ。
  3. 定理 2.3の残差λ\lambdaについて、λ−μ/n\lambda-\mu/nの Hahn 分解X=Pn⊔NnX=P_n\sqcup N_nからf+1Pn/nf+\mathbf{1}_{P_n}/nが候補族に属することを証明せよ。その後、最大性と絶対連続性を用いてλ(Pn)=0\lambda(P_n)=0を導き、λ(X)≤μ(X)/n\lambda(X)\leq\mu(X)/nへ至る不等式をすべて書け。
  4. 定理 3.3で、局所密度fkf_kの零延長の和が可測であることを示せ。さらに、任意のE∈FE\in\mathcal{F}について、単調収束定理とν\nuの可算加法性を用いて∫Ef dμ=ν(E)\int_Ef\,d\mu=\nu(E)を導け。
  5. 定理 4.1の証明で、密度が無限大をとる集合を先に除く理由を説明せよ。可算閾値集合Ak,mA_{k,m}上の積分を比較し、{f>g}\{f>g\}が零集合であることを証明せよ。
  6. 定理 5.1の存在証明で、μ(E)=0\mu(E)=0からρ(E∩{g≥1/n})=0\rho(E\cap\{g\geq1/n\})=0を導き、νa≪μ\nu_{\mathrm a}\ll\muを証明せよ。一意性の証明では、特異部分を差し引く前にν\nuが有限となる分割へ制限する必要がある理由を述べよ。

8 まとめ

非負可測関数ffは、集合EEを∫Ef dμ\int_Ef\,d\muへ対応させる正測度を定める。この測度の可算加法性は単調収束定理から従い、同測度はμ\muに関して絶対連続である。

有限正測度ν≪μ\nu\ll\muに対しては、ν\nu以下の積分測度を与える候補関数の積分値を最大化した。最大関数が残す正測度λ\lambdaへ Hahn 分解を適用すると、残差が非零であれば候補関数をさらに増加させることができる。有限性によりλ(X)≤μ(X)/n\lambda(X)\leq\mu(X)/nをすべての正の整数nnについて得るため、残差は零測度である。

シグマ有限な場合には、μ\muとν\nuの双方が有限になる共通可測分割を用いた。各部分の密度を零延長し、単調収束定理によって貼り合わせると全体の密度が得られる。表される測度のシグマ有限性を用いると、二つの密度はμ\muに関してほとんど至る所で一致し、密度は有限値をとる代表へ修正することができる。

ρ=ν+μ\rho=\nu+\muに対する二つの密度を用いると、g=dμ/dρg=d\mu/d\rhoが正である部分と零である部分にXXを分けることができる。ν\nuを二部分へ制限して得られる

ν=νa+νs\nu=\nu_{\mathrm a}+\nu_{\mathrm s}

は、νa≪μ\nu_{\mathrm a}\ll\muかつνs⊥μ\nu_{\mathrm s}\perp\muを満たす一意な Lebesgue 分解である。本記事は正測度の分解だけを扱い、符号付き測度または複素測度の分解を主張しない。

参考文献

  1. Donald L. Cohn, Measure Theory, 2nd ed., Birkhäuser Advanced Texts Basler Lehrbücher, Birkhäuser, 2013.
  2. Gerald B. Folland, Real Analysis, 2nd ed., Wiley, 1999.

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