§B1.6数学的帰納法

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数学的帰納法では、主張が始まる整数で成り立つことを確かめ、ある整数で成り立つと仮定して次の整数でも成り立つことを示します。本記事では、数列の和、不等式、整除性、漸化式で定まる数列の一般項を題材に、この二つの段階を過不足なく書く練習をします。主張が成り立つ範囲に応じて、確かめる出発点を選びます。

1 証明の手順

定理 1.1 (数学的帰納法).mmを整数とし、mm以上の各整数nnに対して主張P(n)P(n)が定まっているとする。次の二つがともに成り立つならば、mm以上のすべての整数nnについてP(n)P(n)が成り立つ。

  1. P(m)P(m)が成り立つ。
  2. mm以上のどの整数kkについても、P(k)P(k)が成り立つならばP(k+1)P(k+1)が成り立つ。

本記事では、1 を出発点、2 を帰納の段と呼びます。本記事は定理 1.1を証明せずに認めて用い、その根拠は「数学的帰納法の論理構造」に委ねます。

Q(j)=P(m+j−1)Q(j)=P(m+j-1)とおくと、j=1j=1におけるQ(1)Q(1)はP(m)P(m)であり、Q(j)Q(j)からQ(j+1)Q(j+1)を導く段はP(m+j−1)P(m+j-1)からP(m+j)P(m+j)を導く段になります。したがって§A3.10 定理 1.1をQQに適用すると、mm以上のすべての整数についての主張を得ます。

答案は、次の順に書きます。

  • 示す主張P(n)P(n)と、nnの動く範囲を書きます。
  • P(m)P(m)を直接確かめます。
  • mm以上の整数kkを取り、P(k)P(k)が成り立つと仮定します。
  • P(k+1)P(k+1)の主張の形を書き、仮定したP(k)P(k)を用いてそれを導きます。このとき、仮定を用いた箇所が式のどこであるかまで示します。
  • 定理 1.1により、mm以上のすべての整数nnについてP(n)P(n)が成り立つと結論します。

注意 1.2 (仮定するのはn=kn=kのときの主張である). 帰納の段で仮定するのは、n=kn=kという等式ではなく、n=kn=kのときの主張P(k)P(k)である。kkはmm以上の整数を表す文字であり、値を一つに決めていない。答案では「n=kn=kのときの主張が成り立つと仮定する」と書き、その主張の式を書き下す。

注意 1.3 (帰納の段では仮定を用いる). 帰納の段では、仮定したP(k)P(k)を実際に用いてP(k+1)P(k+1)を導く。仮定を用いずにP(k+1)P(k+1)を示すことができたのであれば、その主張は各nnについて直接示すことができており、数学的帰納法を用いる必要が無い。

2 等式の証明

はじめに、数列の和についての等式を証明します。帰納の段では、仮定した等式の両辺に第k+1k+1項を加えて、n=k+1n=k+1のときの等式を作ります。

定理 2.1 (11からnnまでの和). すべての正の整数nnについて

1+2+⋯+n=n(n+1)21 + 2 + \cdots + n = \frac{n(n+1)}{2}

が成り立つ。

証明.nnについての数学的帰納法で示す。示す主張P(n)P(n)は上の等式である。

出発点はn=1n=1である。左辺は11、右辺は1⋅22=1\dfrac{1\cdot 2}{2} = 1であり、両辺は一致する。

正の整数kkを取り、n=kn=kのときの主張

1+2+⋯+k=k(k+1)21 + 2 + \cdots + k = \frac{k(k+1)}{2}

が成り立つと仮定する。n=k+1n=k+1のときの主張の左辺は1+2+⋯+k+(k+1)1+2+\cdots+k+(k+1)である。この式の1+2+⋯+k1+2+\cdots+kの部分に、仮定した等式を用いると

1+2+⋯+k+(k+1)=k(k+1)2+(k+1)=k(k+1)+2(k+1)2=(k+1)(k+2)21 + 2 + \cdots + k + (k+1) = \frac{k(k+1)}{2} + (k+1) = \frac{k(k+1) + 2(k+1)}{2} = \frac{(k+1)(k+2)}{2}

である。最初の等号で仮定を用いた。右端の式はn=k+1n=k+1のときの主張の右辺であるから、n=k+1n=k+1のときの主張が成り立つ。

定理 1.1により、すべての正の整数nnについて等式が成り立つ。▨

3 不等式の証明

不等式を示すときも、段の分け方は等式の場合と同じです。ただし帰納の段では、仮定した不等式の両辺に何かを掛けたり足したりしてn=k+1n=k+1のときの不等式を作るので、その操作によって不等号の向きが変わらないことを確かめる必要があります。次のベルヌーイの不等式では、この確認に、主張が課している条件h>−1h > -1をそのまま用います。

定理 3.1 (ベルヌーイの不等式).hhをh>−1h > -1を満たす実数とし、nnを正の整数とする。このとき

(1+h)n≥1+nh(1+h)^{n} \ge 1 + nh

が成り立つ。等号が成り立つのは、n=1n=1の場合とh=0h=0の場合に限る。

証明.hhをh>−1h>-1を満たす実数として固定し、nnについての数学的帰納法で示す。

出発点はn=1n=1である。左辺は1+h1+h、右辺は1+1⋅h=1+h1 + 1\cdot h = 1+hであり、等号が成り立つ。

正の整数kkを取り、n=kn=kのときの主張(1+h)k≥1+kh(1+h)^{k} \ge 1+khが成り立つと仮定する。条件h>−1h>-1から1+h>01+h > 0であるから、この不等式の両辺に1+h1+hを掛けても不等号の向きは変わらない。したがって

(1+h)k+1=(1+h)k(1+h)≥(1+kh)(1+h)=1+(k+1)h+kh2(1+h)^{k+1} = (1+h)^{k}(1+h) \ge (1+kh)(1+h) = 1 + (k+1)h + kh^{2}

である。ここの不等号で、仮定したn=kn=kのときの主張と、1+h>01+h>0であることの両方を用いた。kkは正の整数でありh2h^{2}は00以上であるからkh2≥0kh^{2} \ge 0であり、

1+(k+1)h+kh2≥1+(k+1)h1 + (k+1)h + kh^{2} \ge 1 + (k+1)h

である。二つを合わせると(1+h)k+1≥1+(k+1)h(1+h)^{k+1} \ge 1+(k+1)hとなり、n=k+1n=k+1のときの主張が成り立つ。

定理 1.1により、すべての正の整数nnについて不等式が成り立つ。

次に、等号が成り立つ場合を調べる。n=1n=1のときは両辺とも1+h1+hであり、h=0h=0のときは両辺とも11であるから、いずれの場合も等号が成り立つ。逆にn≥2n \ge 2かつh≠0h \ne 0とする。上で示した(1+h)k+1≥(1+kh)(1+h)(1+h)^{k+1} \ge (1+kh)(1+h)をk=n−1k = n-1について読むと

(1+h)n≥(1+(n−1)h)(1+h)=1+nh+(n−1)h2(1+h)^{n} \ge \bigl(1 + (n-1)h\bigr)(1+h) = 1 + nh + (n-1)h^{2}

である。n−1≥1n-1 \ge 1とh2>0h^{2} > 0から(n−1)h2>0(n-1)h^{2} > 0であるから、(1+h)n>1+nh(1+h)^{n} > 1+nhであり、等号は成り立たない。よって等号が成り立つのは、n=1n=1の場合とh=0h=0の場合に限る。▨

注意 3.2 (条件h>−1h>-1を用いる箇所).定理 3.1の証明が条件h>−1h>-1を用いるのは、帰納の段で不等式の両辺に1+h1+hを掛ける箇所である。1+h<01+h<0であれば、両辺に掛けたときに不等号の向きが変わるので、この段の議論は成り立たない。条件を落とすと、主張そのものが偽になる。実際、h=−4h=-4、n=3n=3とすると左辺は(1−4)3=−27(1-4)^{3} = -27、右辺は1+3⋅(−4)=−111 + 3\cdot(-4) = -11であり、−27≥−11-27 \ge -11は成り立たない。

注意 3.3 (この不等式を用いる記事).定理 3.1は、「ベルヌーイの不等式」が用いる。同記事は、11以上の数aaと正の整数NNについて

0≤a1/N−1≤a−1N0 \le a^{1/N} - 1 \le \frac{a-1}{N}

という評価をこの不等式から導き、指数を有理数から実数へ広げる場面で用いる。本記事はこの不等式の証明を与える側であり、同記事はそれを応用する側である。

4 整除性の証明

整除性を示すときは、n=k+1n=k+1のときの式を、n=kn=kのときの式と、割る数の倍数であることが分かる項との和へ分けます。仮定した「n=kn=kのときの式がddの倍数である」という主張は、整数ccを用いてその式をdcdcと書くことによって用います。

定理 4.1 (n3−nn^{3}-nが66の倍数であること). すべての正の整数nnについて、n3−nn^{3}-nは66の倍数である。

証明.nnについての数学的帰納法で示す。

出発点はn=1n=1である。13−1=01^{3}-1 = 0であり、0=6⋅00 = 6\cdot 0であるから66の倍数である。

正の整数kkを取り、n=kn=kのときの主張、すなわちk3−kk^{3}-kが66の倍数であることを仮定する。このとき、ある整数ccによってk3−k=6ck^{3}-k = 6cと書くことができる。n=k+1n=k+1のときの式を展開すると

(k+1)3−(k+1)=k3+3k2+3k+1−k−1=(k3−k)+3k(k+1)=6c+3k(k+1)(k+1)^{3} - (k+1) = k^{3} + 3k^{2} + 3k + 1 - k - 1 = (k^{3}-k) + 3k(k+1) = 6c + 3k(k+1)

である。最後の等号で仮定を用いた。kkとk+1k+1は連続する二つの整数であるから、一方は偶数であり、積k(k+1)k(k+1)は偶数である。そこで、ある整数ddによってk(k+1)=2dk(k+1) = 2dと書くことができ、3k(k+1)=6d3k(k+1) = 6dである。したがって

(k+1)3−(k+1)=6c+6d=6(c+d)(k+1)^{3} - (k+1) = 6c + 6d = 6(c+d)

であり、c+dc+dは整数であるから、n=k+1n=k+1のときの主張が成り立つ。

定理 1.1により、すべての正の整数nnについてn3−nn^{3}-nは66の倍数である。▨

例 4.2 (5n−15^{n}-1が44の倍数であること). すべての正の整数nnについて、5n−15^{n}-1は44の倍数である。

出発点はn=1n=1である。51−1=45^{1}-1 = 4は44の倍数である。

正の整数kkを取り、5k−15^{k}-1が44の倍数であると仮定する。ある整数ccによって5k−1=4c5^{k}-1 = 4cと書くことができ、5k=4c+15^{k} = 4c+1である。これを用いると

5k+1−1=5⋅5k−1=5(4c+1)−1=20c+4=4(5c+1)5^{k+1} - 1 = 5\cdot 5^{k} - 1 = 5(4c+1) - 1 = 20c + 4 = 4(5c+1)

であり、5c+15c+1は整数であるから、n=k+1n=k+1のときの主張が成り立つ。仮定を用いたのは、5k5^{k}を4c+14c+1で置き換えた箇所である。定理 1.1により、すべての正の整数nnについて5n−15^{n}-1は44の倍数である。

5 出発点がn=1n=1でない主張

主張が成り立つ範囲が正の整数全体でないときは、出発点をその範囲の最小の整数に取ります。その範囲は、小さいnnについて両辺を実際に計算して定めます。

例 5.1 (小さいnnにおける2n2^{n}とn2n^{2}の大小).2n2^{n}とn2n^{2}を、n=1n=1から順に比べる。

nn 11 22 33 44 55 66
2n2^{n} 22 44 88 1616 3232 6464
n2n^{2} 11 44 99 1616 2525 3636

n=1n=1では2>12 > 1である。n=2n=2とn=4n=4では両者が等しく、n=3n=3では8<98 < 9であるから、これら三つのnnでは2n>n22^{n} > n^{2}が成り立たない。n=5n=5とn=6n=6では2n2^{n}のほうが大きい。したがって「すべての正の整数nnについて2n>n22^{n} > n^{2}」は偽である。この不等式が成り立つ正の整数はn=1n=1とn≥5n\ge5であり、帰納法で連続した尾部を示すときはn=5n=5を出発点に取る。

定理 5.2 (2n2^{n}とn2n^{2}の大小).55以上のすべての整数nnについて2n>n22^{n} > n^{2}が成り立つ。

証明.nnについての数学的帰納法で示す。定理 1.1をm=5m=5として用いる。

出発点はn=5n=5である。25=322^{5} = 32、52=255^{2} = 25であり、32>2532 > 25である。

55以上の整数kkを取り、n=kn=kのときの主張2k>k22^{k} > k^{2}が成り立つと仮定する。両辺に正の数22を掛けても不等号の向きは変わらないので

2k+1=2⋅2k>2k22^{k+1} = 2\cdot 2^{k} > 2k^{2}

である。ここの不等号で仮定を用いた。あとは2k2≥(k+1)22k^{2} \ge (k+1)^{2}を示せば結論が従う。差を取ると

2k2−(k+1)2=k2−2k−1=(k−1)2−22k^{2} - (k+1)^{2} = k^{2} - 2k - 1 = (k-1)^{2} - 2

であり、k≥5k \ge 5から(k−1)2≥16(k-1)^{2} \ge 16であるから(k−1)2−2≥14>0(k-1)^{2} - 2 \ge 14 > 0である。よって2k2>(k+1)22k^{2} > (k+1)^{2}であり、2k+1>(k+1)22^{k+1} > (k+1)^{2}が成り立つ。

定理 1.1により、55以上のすべての整数nnについて2n>n22^{n} > n^{2}が成り立つ。▨

注意 5.3 (帰納の段だけでは結論を得ることができない).定理 5.2の証明の帰納の段は、k≥3k \ge 3であれば同じ計算で成り立つ。k=3k=3のとき(k−1)2−2=2>0(k-1)^{2}-2 = 2 > 0だからである。それにもかかわらず、n=3n=3を出発点に取ることはできない。23=82^{3} = 8は32=93^{2} = 9より小さく、出発点の主張が成り立たないからである。出発点と帰納の段は別々に確かめるものであり、一方だけでは結論を得ることができない。

6 出発点を二つ取る形

隣接三項間漸化式an+2=p an+1+q ana_{n+2} = p\,a_{n+1} + q\,a_{n}で定まる数列では、an+2a_{n+2}がan+1a_{n+1}とana_{n}の二つから決まります。この形の数列の一般項を数学的帰納法で確かめるときは、n=kn=kのときの主張だけを仮定してもn=k+1n=k+1のときの主張を導くことができません。n=kn=kとn=k+1n=k+1の二つを仮定してn=k+2n=k+2のときの主張を導く形を用い、出発点も二つ確かめます。この形は、定理 1.1から導くことができます。

定理 6.1 (出発点を二つ取る数学的帰納法).mmを整数とし、mm以上の各整数nnに対して主張P(n)P(n)が定まっているとする。次の二つがともに成り立つならば、mm以上のすべての整数nnについてP(n)P(n)が成り立つ。

  1. P(m)P(m)とP(m+1)P(m+1)がともに成り立つ。
  2. mm以上のどの整数kkについても、P(k)P(k)とP(k+1)P(k+1)がともに成り立つならばP(k+2)P(k+2)が成り立つ。

証明.mm以上の各整数nnに対して、「P(n)P(n)とP(n+1)P(n+1)がともに成り立つ」という主張をQ(n)Q(n)と置く。

仮定 1 により、Q(m)Q(m)が成り立つ。

mm以上の整数kkを取り、Q(k)Q(k)が成り立つと仮定する。すなわち、P(k)P(k)とP(k+1)P(k+1)がともに成り立つ。このとき仮定 2 によりP(k+2)P(k+2)が成り立つ。P(k+1)P(k+1)とP(k+2)P(k+2)がともに成り立つので、Q(k+1)Q(k+1)が成り立つ。

定理 1.1を主張QQに適用すると、mm以上のすべての整数nnについてQ(n)Q(n)が成り立つ。Q(n)Q(n)はP(n)P(n)が成り立つことを含むので、mm以上のすべての整数nnについてP(n)P(n)が成り立つ。▨

定理 6.1が仮定するのは、直前の二つの場合です。mm以上kk以下のすべての場合を仮定する形もあり、その形と定理 1.1との関係は「数学的帰納法の論理構造」が扱います。

定理 6.2 (隣接三項間漸化式で定まる数列の一般項). 数列{an}\{a_{n}\}を、a1=1a_{1} = 1、a2=4a_{2} = 4、および

an+2=3an+1−2an(n≥1)a_{n+2} = 3a_{n+1} - 2a_{n} \qquad (n \ge 1)

によって定める。このとき、すべての正の整数nnについてan=3⋅2 n−1−2a_{n} = 3\cdot 2^{\,n-1} - 2が成り立つ。

証明.定理 6.1をm=1m=1として用いる。示す主張P(n)P(n)はan=3⋅2 n−1−2a_{n} = 3\cdot 2^{\,n-1} - 2である。

出発点を二つ確かめる。n=1n=1では3⋅20−2=13\cdot 2^{0} - 2 = 1であり、a1=1a_{1} = 1と一致する。n=2n=2では3⋅21−2=43\cdot 2^{1} - 2 = 4であり、a2=4a_{2} = 4と一致する。

正の整数kkを取り、n=kn=kのときの主張ak=3⋅2 k−1−2a_{k} = 3\cdot 2^{\,k-1} - 2と、n=k+1n=k+1のときの主張ak+1=3⋅2 k−2a_{k+1} = 3\cdot 2^{\,k} - 2がともに成り立つと仮定する。漸化式に、仮定した二つの等式を代入すると

ak+2=3ak+1−2ak=3(3⋅2 k−2)−2(3⋅2 k−1−2)=9⋅2 k−6−3⋅2 k+4=6⋅2 k−2a_{k+2} = 3a_{k+1} - 2a_{k} = 3\bigl(3\cdot 2^{\,k} - 2\bigr) - 2\bigl(3\cdot 2^{\,k-1} - 2\bigr) = 9\cdot 2^{\,k} - 6 - 3\cdot 2^{\,k} + 4 = 6\cdot 2^{\,k} - 2

である。二つめの等号で、仮定した二つの主張の両方を用いた。6⋅2 k=3⋅2 k+16\cdot 2^{\,k} = 3\cdot 2^{\,k+1}であるからak+2=3⋅2 (k+2)−1−2a_{k+2} = 3\cdot 2^{\,(k+2)-1} - 2であり、n=k+2n=k+2のときの主張が成り立つ。

定理 6.1により、すべての正の整数nnについてan=3⋅2 n−1−2a_{n} = 3\cdot 2^{\,n-1} - 2が成り立つ。▨

注意 6.3 (出発点を一つしか取らないと足りない).定理 6.2の帰納の段は、n=kn=kとn=k+1n=k+1の二つの主張を用いてn=k+2n=k+2のときの主張を導いている。したがってk=1k=1についてこの段を実行するには、n=1n=1のときの主張とn=2n=2のときの主張の両方がすでに示されている必要がある。出発点をn=1n=1の一つだけにすると、n=2n=2のときの主張を得ることができないので、n=3n=3のときの主張を導くことができない。一般項を求める手順そのものは「漸化式の解法(発展形)」が扱い、§B1.5 注意 4.5も出発点を二つ取る理由を述べている。

注意 6.4 (帰納の段は出発点以上のすべてのkkで成り立たなければならない). 帰納の段の議論は、出発点以上のどの整数kkについても成り立つ必要がある。ひとつのkkでも成り立たなければ、結論を得ることができない。次は、この点を見落とした誤った証明である。

主張は「どの有限個の馬も、たがいに同じ色である」とし、P(n)P(n)を「どのnn頭の馬も、たがいに同じ色である」とする。P(1)P(1)は成り立つ。帰納の段として、P(k)P(k)を仮定してk+1k+1頭の馬を考える。1 頭目を除いたkk頭は仮定により同じ色であり、最後の 1 頭を除いたkk頭も仮定により同じ色である。二つの組に共通して属する馬がいれば、その馬は二つの組の色をともに持つので、k+1k+1頭すべてが同じ色である。

この議論はk≥2k \ge 2では正しいが、k=1k=1では成り立たない。k=1k=1のときk+1k+1頭は 2 頭であり、 1 頭目を除いた組と 2 頭目を除いた組はそれぞれ 1 頭ずつで、共通して属する馬がいないからである。したがってP(1)P(1)からP(2)P(2)を導くことができず、この議論は主張を証明していない。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の命題を数学的帰納法で示す。n == k のときの成立(帰納法の仮定)を用いて、n == k + 1 のときの式を、仮定を代入したところから目標の形まで変形せよ。

次の命題を数学的帰納法で示すとき、n == k + 1 の場合の式を、帰納法の仮定を代入したところから目標の形まで変形せよ。

解法の型基底を確かめ、帰納の段では k+1 番目の項を足して仮定を代入し、(k+1) でくくって目標の形に合わせる

  1. 例題 1

    ∑i=1ni=n(n+1)2(n≥1)\sum_{i=1}^{n} i = \dfrac{n(n+1)}{2} \qquad (n \ge 1)
  2. 例題 2

    ∑i=1ni3=(n(n+1)2)2(n≥1)\sum_{i=1}^{n} i^{3} = \left(\dfrac{n(n+1)}{2}\right)^{2} \qquad (n \ge 1)
  3. 例題 3

    2n>n2(n≥5)2^{n} > n^{2} \qquad (n \ge 5)
  4. 例題 4

    ∑i=1n1i(i+1)=nn+1(n≥1)\sum_{i=1}^{n} \dfrac{1}{i(i+1)} = \dfrac{n}{n+1} \qquad (n \ge 1)
  5. 例題 5

    n3−n は 6 の倍数(n≥1)n^{3} - n \text{ は } 6 \text{ の倍数} \qquad (n \ge 1)
  6. 例題 6

    ∑i=1ni2=n(n+1)(2n+1)6(n≥1)\sum_{i=1}^{n} i^{2} = \dfrac{n(n+1)(2n+1)}{6} \qquad (n \ge 1)
  7. 例題 7

    5n−1 は 4 の倍数(n≥1)5^{n} - 1 \text{ は } 4 \text{ の倍数} \qquad (n \ge 1)
  8. 例題 8

    3n>2n+1(n≥2)3^{n} > 2n+1 \qquad (n \ge 2)
  9. 例題 9

    ∑i=1n(2i−1)=n2(n≥1)\sum_{i=1}^{n} (2i-1) = n^{2} \qquad (n \ge 1)

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の命題を数学的帰納法で示す。n == k のときの成立(帰納法の仮定)を用いて、n == k + 1 のときの式を、仮定を代入したところから目標の形まで変形せよ。

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