1 決定問題の規約
文字列の有限アルファベットと、LAの項・論理式・文に対する有効な符号化を一つ固定する。正しい文のコードであるか否かは決定可能であり、正しい文のコードから否定のコードを計算する操作も全域計算可能である。
定義 1.1. 有限文字列xに対して、次の四言語を定める。
VALAPRVASATAUNSATA={┌φ┐∣φ は妥当な LA 文},={┌φ┐∣φ は LA 文かつ ⊢φ},={┌φ┐∣φ は充足可能な LA 文},={┌φ┐∣φ は充足不能な LA 文}.正しいLA文を表さない文字列は、四言語のいずれにも属さないと定める。理論Tの定理集合は
Thm(T)={┌φ┐∣φ は LA 文かつ T⊢φ}とする。
この定義では、Aに属する入力だけでなく、すべての入力に対してf(x)を定める必要がある。したがって、以下の還元では非論理式コードに対する出力も指定する。
2 Robinson 算術 Q の本質的決定不能性
定義 2.1. 計算可能に列挙することができる理論Sが本質的に決定不能であるとは、Sを含む任意の無矛盾かつ計算可能に列挙することができる理論Tに対して、Thm(T)が決定不能であることをいう。
定理 2.2 (Q の本質的決定不能性).Tを、Q⊆Tを満たす無矛盾かつ計算可能に列挙することができるLA理論とする。このとき、Thm(T)は決定不能である。したがって、Qは本質的に決定不能である。
証明.Thm(T)が決定可能であると仮定する。LAのすべての文を重複を許して計算可能に
σ0,σ1,σ2,…と列挙する。有限集合Δnを帰納的に構成し、Tn=T∪Δnが無矛盾であるように保つ。初期値をΔ0=∅とする。
Δnの文の連言をδnと書く。Δnが空である場合には、δnを論理的に妥当な固定文とする。有限回の演繹定理により、Tn∪{σn}が矛盾することと
T⊢δn→(σn→⊥)とは同値である。右辺の式はnから有効に構成されるため、仮定したThm(T)の決定手続きを用いて、Tn∪{σn}の無矛盾性を決定することができる。
Tn∪{σn}が無矛盾ならば
Δn+1=Δn∪{σn}とする。矛盾するならば
Δn+1=Δn∪{¬σn}とする。後者の場合にもTn+1は無矛盾である。実際、Tn∪{¬σn}も矛盾すると仮定すると、演繹定理からTn⊢¬σnとTn⊢¬¬σnが得られる。古典論理ではTn⊢σnも得られるため、Tnの無矛盾性に反する。
構成した理論を
U=T∪n∈N⋃Δnとする。各段階の選択は全域の決定手続きによって有効に実行されるため、Uは計算可能に列挙することができる。Uの有限導出で使用される追加公理は、ある一つのΔnにすべて含まれる。各Tnは無矛盾であるから、Uも無矛盾である。また、各LA文σは列挙のある段階に現れ、その段階でσまたは¬σがUに加えられる。したがって、Uは構文論的に完全である。
一方、Q⊆T⊆Uであり、Uは無矛盾かつ計算可能に列挙することができる。§E16.23 定理 4.2をUに適用すると、U⊬RUかつU⊬¬RUを満たす Rosser 文RUが存在する。これはUの構文論的完全性に反する。ゆえに、Thm(T)は決定不能である。▨
§E16.15 定理 2.2により標準モデルがQのモデルであるため、Qは無矛盾である。また、Qの公理は有限個なので、Qは計算可能に列挙することができる。したがって、定理をT=Qに適用すると、Thm(Q)は決定不能である。
3 Q の定理集合から妥当性への全域還元
§E16.15 定義 2.1で定めたQの七つの公理は文である。それらの連言を
q=Q1∧Q2∧⋯∧Q7
と書く。また、⊥を固定した充足不能なLA文とする。
定理 3.1. 次の関係が成り立つ。
- Thm(Q)≤mVALAである。
- VALA=PRVAである。
- VALA≤mUNSATAである。
- VALA、PRVA、SATA、UNSATAはいずれも決定不能である。
証明. 最初に、全域計算可能関数fQを次のように定める。
fQ(x)={┌q→φ┐,┌⊥┐,x=┌φ┐ が正しい LA 文のコードである場合,x が正しい LA 文のコードでない場合.構文検査と式の結合は計算可能なので、fQは全域計算可能である。正しい文φについて、有限回の演繹定理と命題論理による連言の変形から
Q⊢φ⟺⊢q→φが成り立つ。一階述語論理の健全性と、§E16.12 定理 5.2を空理論に適用すると、さらに
⊢q→φ⟺⊨q→φが成り立つ。したがって、正しい文のコードxについて
x∈Thm(Q)⟺fQ(x)∈VALAを得る。xが正しい文のコードでない場合には、定義によりx∈/Thm(Q)であり、fQ(x)=┌⊥┐∈/VALAである。ゆえに同値はすべての文字列xについて成り立ち、Thm(Q)≤mVALAである。
次に、正しいLA文φに対して、健全性と完全性定理を空理論に適用すると
⊨φ⟺⊢φを得る。非論理式コードはいずれの言語にも含めないという規約も両辺で同じである。したがって、VALA=PRVAである。完全性定理は、第一にThm(Q)≤mVALAの証明でQ⊢φ⟺⊨q→φを得る箇所、第二にVALA=PRVAを得る箇所の双方で用いている。完全性定理から決定手続きの存在を導いているのではない。
続いて、全域計算可能関数gを次のように定める。
g(x)={┌¬φ┐,┌∀v(v=v)┐,x=┌φ┐ が正しい LA 文のコードである場合,x が正しい LA 文のコードでない場合.正しい文φについて、φがすべてのLA構造で真であることと、¬φを満たすLA構造が存在しないこととは同値である。したがって、
┌φ┐∈VALA⟺g(┌φ┐)∈UNSATAが成り立つ。非論理式コードxについては、x∈/VALAであり、g(x)=┌∀v(v=v)┐は充足可能なのでg(x)∈/UNSATAである。ゆえに、VALA≤mUNSATAである。
§E15.6 命題 1.3の対偶により、Thm(Q)が決定不能でThm(Q)≤mVALAであることから、VALAは決定不能である。集合としてVALA=PRVAなので、PRVAも決定不能である。同じ移送命題の対偶とVALA≤mUNSATAにより、UNSATAも決定不能である。
最後に、SATAが決定可能であると仮定する。まず、その決定手続きからUNSATAの決定手続きを構成する。入力yが正しいLA文のコードでなければ拒否し、正しい文のコードであれば、SATAの決定結果を反転する。この手続きは、非論理式コードがUNSATAに属さないという規約を守り、UNSATAを決定する。
次に、UNSATAの任意の決定手続きからThm(Q)の決定手続きを構成する。入力xに対してg(fQ(x))を計算し、その文字列がUNSATAに属するか否かを決定すればよい。二つの還元の同値から
x∈Thm(Q)⟺g(fQ(x))∈UNSATAが成り立つ。したがって、仮定したSATAの決定手続きからThm(Q)の決定手続きが得られ、Qの本質的決定不能性に反する。この二段階は、§E15.6 命題 1.3が述べる決定可能性の移送を、合成した全域還元g∘fQについて具体化したものである。ゆえに、SATAも決定不能である。▨
4 演習
問題 4.1.
- fQを正しい文のコードだけに定める方法では、many-one 還元の証明として不十分である理由を述べよ。
- Q⊢φと⊨q→φの同値において、完全性定理を用いる向きを特定せよ。
- SATAの決定手続きからThm(Q)の決定手続きを得る二段階を述べよ。
解答 (確認問題の解答).
- many-one 還元の写像は、対象集合に属する入力だけでなく、すべての有限文字列に対して値をもつ全域計算可能関数でなければならない。非論理式コードにも出力を定め、所属の同値を保つ必要がある。
- 演繹定理からQ⊢φと⊢q→φの同値を得た後、⊨q→φから⊢q→φを得る向きで完全性を用いる。逆向きは健全性による。
- 第一段階では、構文検査の後、正しい文に限ってSATAの決定結果を反転し、UNSATAの決定手続きを得る。第二段階では、入力xをg(fQ(x))に写し、得られたUNSATAの決定手続きを適用してx∈Thm(Q)を決定する。
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