§E16.10一階論理の証明体系

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意味論的帰結Γ⊨φ\Gamma\models\varphiは、Γ\Gammaを満たすすべての構造と割当てがφ\varphiも満たすことを述べる。形式的導出Γ⊢φ\Gamma\vdash\varphiは、有限列に書かれた公理と推論規則だけからφ\varphiへ到達することを述べる。本記事では、一つの Hilbert 型体系を固定し、形式的導出が意味論的帰結を与えることを証明する。

一般化規則には、変数が未確定の前提に依存してはならないという条件が必要である。この条件は演繹定理と健全性の両方で用いられるため、導出の定義そのものに含める。

1 公理と推論規則

LLを集合サイズの一階言語とする。各関数記号と関係記号の項数は有限であり、等号は台集合上の同一性として解釈される。

定義 1.1. 次の公理スキーマのすべての置換例を論理公理 (logical axiom) とする。

(H1)α→(β→α),(H2)(α→(β→γ))→((α→β)→(α→γ)),(H3)(¬β→¬α)→(α→β),(Q1)∀x φ→φ[x:=t],(Q2)∀x(φ→ψ)→(φ→∀x ψ).\begin{aligned} \text{(H1)}\quad &\alpha\to(\beta\to\alpha),\\ \text{(H2)}\quad &(\alpha\to(\beta\to\gamma)) \to((\alpha\to\beta)\to(\alpha\to\gamma)),\\ \text{(H3)}\quad &(\neg\beta\to\neg\alpha)\to(\alpha\to\beta),\\ \text{(Q1)}\quad &\forall x\,\varphi\to\varphi[x:=t],\\ \text{(Q2)}\quad &\forall x(\varphi\to\psi)\to(\varphi\to\forall x\,\psi). \end{aligned}

(Q1) では、ttがφ\varphiのxxに自由に代入可能であることを要求する。 (Q2) では、x∉FV(φ)x\notin FV(\varphi)を要求する。

等号について、次の公理スキーマのすべての置換例を加える。

  1. 任意の項ttに対するt=tt=t。
  2. 各nn項関数記号ffに対する (t1=u1∧⋯∧tn=un)→f(t1,…,tn)=f(u1,…,un).(t_1=u_1\land\cdots\land t_n=u_n) \to f(t_1,\ldots,t_n)=f(u_1,\ldots,u_n).
  3. 各nn項関係記号RRに対する (t1=u1∧⋯∧tn=un)→(R(t1,…,tn)↔R(u1,…,un)).(t_1=u_1\land\cdots\land t_n=u_n) \to\bigl(R(t_1,\ldots,t_n)\leftrightarrow R(u_1,\ldots,u_n)\bigr).

(3)では、二項の論理的等号もR(v1,v2)R(v_1,v_2)として扱う。n=0n=0の連言は恒真な論理式と解釈するので、零項関数と零項関係の場合も公理スキーマに含まれる。

推論規則は、次の二つである。

χ→ηχη(modus ponens),χ∀xχ(一般化).\frac{\chi\to\eta\qquad\chi}{\eta} \quad\text{(modus ponens)}, \qquad \frac{\chi}{\forall x\chi} \quad\text{(一般化)}.

定義 1.2.Γ⊆Form⁡(L)\Gamma\subseteq\operatorname{Form}(L)とする。Γ\Gammaからの導出 (derivation) とは、論理式χi\chi_iと有限な依存前提集合Δi⊆Γ\Delta_i\subseteq\Gammaの組(χi,Δi)(\chi_i,\Delta_i)からなる有限列であり、各行が次のいずれかであるものをいう。

  1. χi∈Γ\chi_i\in\Gammaであり、Δi={χi}\Delta_i=\{\chi_i\}である。
  2. χi\chi_iは定義 1.1の公理の置換例であり、Δi=∅\Delta_i=\varnothingである。
  3. 先行する二行(η→χi,Δj)(\eta\to\chi_i,\Delta_j)と(η,Δk)(\eta,\Delta_k)へ modus ponens を適用して得られ、Δi=Δj∪Δk\Delta_i=\Delta_j\cup\Delta_kである。
  4. 先行する一行(χ,Δi)(\chi,\Delta_i)から一般化によってχi=∀xχ\chi_i=\forall x\chiとして得られ、かつすべてのδ∈Δi\delta\in\Delta_iについてx∉FV(δ)x\notin FV(\delta)である。

末尾の論理式がφ\varphiである導出が存在するとき、Γ⊢φ\Gamma\vdash\varphiと書く。Γ=∅\Gamma=\varnothingのときは⊢φ\vdash\varphiと書く。通常は依存前提集合を行に表示しない。

依存前提集合は、その行で未解消のまま実際に用いた前提を記録する。したがって一般化規則は、一般化する変数がその行のどの前提にも自由に現れない場合に限って用いられる。未使用の前提をΓ\Gammaに追加しても各行の依存前提集合は変わらないため、導出の単調性が保たれる。

注意 1.3 (公理であることと公理判定の計算可能性). 以上の定義は、各公理スキーマの置換例からなる集合を数学的に定める。公理であるかを符号から判定する手続きについて主張するためには、言語の記号と項・論理式の符号化、記号の項数を判定する方法、および代入可能性を判定する方法を別に固定しなければならない。本記事の健全性と演繹定理は、そのような有効性の仮定を必要としない。

2 命題論理から用いる派生則

一階 Hilbert 系の H1–H3 は、古典命題 Hilbert 系と同じである。量化子を含む論理式も、命題論理の公理スキーマでは一つの命題変数のように置換することができる。

補題 2.1. 連言と双条件を否定と含意による本記事の略記とする。任意の論理式について、H1–H3 と modus ponens だけから次の図式を導くことができる。

  1. 恒等式α→α\alpha\to\alpha、弱化、共通前件の modus ponens、および含意の推移が成り立つ。すなわち、Γ⊢β\Gamma\vdash\betaならΓ⊢α→β\Gamma\vdash\alpha\to\betaであり、 Γ⊢α→(β→γ),Γ⊢α→β⟹Γ⊢α→γ,\Gamma\vdash\alpha\to(\beta\to\gamma),\quad \Gamma\vdash\alpha\to\beta \quad\Longrightarrow\quad \Gamma\vdash\alpha\to\gamma, さらにΓ⊢α→β\Gamma\vdash\alpha\to\betaかつΓ⊢β→γ\Gamma\vdash\beta\to\gammaならΓ⊢α→γ\Gamma\vdash\alpha\to\gammaである。
  2. 連言について ⊢(α∧β)→α,⊢(α∧β)→β,⊢α→(β→α∧β)\vdash(\alpha\land\beta)\to\alpha, \qquad \vdash(\alpha\land\beta)\to\beta, \qquad \vdash\alpha\to(\beta\to\alpha\land\beta) が成り立つ。
  3. 双条件について ⊢(α↔β)→(α→β),⊢(α↔β)→(β→α),⊢(α→β)→((β→α)→(α↔β))\begin{aligned} &\vdash(\alpha\leftrightarrow\beta)\to(\alpha\to\beta),\qquad \vdash(\alpha\leftrightarrow\beta)\to(\beta\to\alpha),\\ &\vdash(\alpha\to\beta)\to((\beta\to\alpha)\to(\alpha\leftrightarrow\beta)) \end{aligned} が成り立つ。
  4. 否定と含意は双条件を保つ。すなわち、 ⊢(α↔β)→(¬α↔¬β),⊢(α↔α′)→((β↔β′)→((α→β)↔(α′→β′)))\begin{aligned} &\vdash(\alpha\leftrightarrow\beta)\to(\neg\alpha\leftrightarrow\neg\beta),\\ &\vdash(\alpha\leftrightarrow\alpha')\to ((\beta\leftrightarrow\beta')\to ((\alpha\to\beta)\leftrightarrow(\alpha'\to\beta'))) \end{aligned} が成り立つ。
  5. ρ\rhoを固定し、⊥ρ:=ρ∧¬ρ\bot_\rho:=\rho\land\neg\rhoと置くと、 ⊢α→(¬α→⊥ρ),⊢⊥ρ→α,⊢⊥ρ→¬α\vdash\alpha\to(\neg\alpha\to\bot_\rho), \qquad \vdash\bot_\rho\to\alpha, \qquad \vdash\bot_\rho\to\neg\alpha が成り立つ。

証明. 最初に、この証明の内部だけで用いる仮定除去変換を証明する。H1–H3 と modus ponens だけからなる有限導出でΛ∪{A}⊢0B\Lambda\cup\{A\}\vdash_0 Bなら、Λ⊢0A→B\Lambda\vdash_0 A\to Bである。実際、導出の各行δ\deltaに対してA→δA\to\deltaを作る。δ=A\delta=Aの場合は、H1 の二つの例

A→((A→A)→A),A→(A→A) A\to((A\to A)\to A), \qquad A\to(A\to A)

と、H2 でβ=A→A\beta=A\to A、γ=A\gamma=Aとした例へ modus ponens を二回適用し、A→AA\to Aを得る。δ\deltaが H1–H3 の例またはΛ\Lambdaの元なら、δ\deltaと H1 の例δ→(A→δ)\delta\to(A\to\delta)からA→δA\to\deltaを得る。δ\deltaがη→δ\eta\to\deltaとη\etaへの modus ponens から得られたなら、帰納法で得たA→(η→δ)A\to(\eta\to\delta)とA→ηA\to\etaを H2 で結ぶ。この三場合で変換は閉じる。以下で一時的な仮定を外すときは、この有限変換だけを用いる。

(1)の恒等式は今の構成で得た。弱化はβ\betaと H1 の例β→(α→β)\beta\to(\alpha\to\beta)への modus ponens である。共通前件の規則は H2 へ modus ponens を二回適用して得る。含意の推移では、β→γ\beta\to\gammaを弱化してα→(β→γ)\alpha\to(\beta\to\gamma)とし、共通前件の規則を適用する。

連言以下の導出に用いる四つの補助図式を作る。まず

A→((A→B)→B)(A)\tag{A} A\to((A\to B)\to B)

は、一時的な仮定A,A→BA,A\to Bへの modus ponens の後に仮定除去変換を二回適用して得る。ϑ=A→(A→A)\vartheta=A\to(A\to A)と置くとϑ\varthetaは H1 の例である。H3 の二つの例

(¬¬ϑ→¬¬A)→(¬A→¬ϑ),(¬A→¬ϑ)→(ϑ→A)(\neg\neg\vartheta\to\neg\neg A)\to(\neg A\to\neg\vartheta), \qquad (\neg A\to\neg\vartheta)\to(\vartheta\to A)

を(1)の含意の推移で結び、H1 の例¬¬A→(¬¬ϑ→¬¬A)\neg\neg A\to(\neg\neg\vartheta\to\neg\neg A)ともう一度結ぶと¬¬A→(ϑ→A)\neg\neg A\to(\vartheta\to A)を得る。(A) と定理ϑ\varthetaから(ϑ→A)→A(\vartheta\to A)\to Aを得て、推移を用いると

⊢¬¬A→A(B)\tag{B}\vdash\neg\neg A\to A

となる。(B) でAAを¬A\neg Aに置き換え、H3 の例

(¬¬¬A→¬A)→(A→¬¬A)(\neg\neg\neg A\to\neg A)\to(A\to\neg\neg A)

へ modus ponens を適用すると

⊢A→¬¬A(C1)\tag{C1}\vdash A\to\neg\neg A

を得る。H1 の例¬A→(¬B→¬A)\neg A\to(\neg B\to\neg A)と H3 の例(¬B→¬A)→(A→B)(\neg B\to\neg A)\to(A\to B)を推移で結ぶと

⊢¬A→(A→B)(C2)\tag{C2}\vdash\neg A\to(A\to B)

を得る。次にA→BA\to Bを一時的に仮定する。(B)、この仮定、(C1) を推移で結んで¬¬A→¬¬B\neg\neg A\to\neg\neg Bを得る。H3 の例

(¬¬A→¬¬B)→(¬B→¬A)(\neg\neg A\to\neg\neg B)\to(\neg B\to\neg A)

へ modus ponens を適用し、仮定除去変換を用いると

⊢(A→B)→(¬B→¬A)(C3)\tag{C3}\vdash(A\to B)\to(\neg B\to\neg A)

となる。また、(A) をB=CB=Cとした式と、(C3) をA=A→CA=A\to C、B=CB=Cとした式を推移で結ぶと

⊢A→(¬C→¬(A→C))(C3’)\tag{C3'}\vdash A\to(\neg C\to\neg(A\to C))

を得る。最後にU=A→CU=A\to CとV=¬A→CV=\neg A\to Cを一時的に仮定する。¬C\neg Cをさらに仮定すると、(C3) とVVから¬¬A\neg\neg A、(B) からAAを得る。(C3') とAAから¬C→¬U\neg C\to\neg Uを得て、仮定¬C\neg Cへの modus ponens により¬U\neg Uとなる。仮定¬C\neg Cだけを外すと¬C→¬U\neg C\to\neg Uである。H3 の例(¬C→¬U)→(U→C)(\neg C\to\neg U)\to(U\to C)からU→CU\to Cを得て、仮定UUへの modus ponens でCCとなる。VV、次にUUを外すと

⊢(A→C)→((¬A→C)→C)(C4)\tag{C4}\vdash(A\to C)\to((\neg A\to C)\to C)

を得る。

(2)を示す。K:=α∧β=¬(α→¬β)K:=\alpha\land\beta=\neg(\alpha\to\neg\beta)と置く。K,¬αK,\neg\alphaを仮定すると、(C2) からα→¬β\alpha\to\neg\betaを得て、(C2) をA=α→¬βA=\alpha\to\neg\beta、B=αB=\alphaとしてKKと結べばα\alphaを得る。したがってKKの下で¬α→α\neg\alpha\to\alphaであり、恒等式α→α\alpha\to\alphaと (C4) からα\alphaを得る。仮定KKを外すとK→αK\to\alphaである。

次にK,α,¬βK,\alpha,\neg\betaを仮定する。H1 からα→¬β\alpha\to\neg\betaを得て、直前と同じくKKから (C2) を用いるとβ\betaを得る。仮定¬β\neg\betaを外し、恒等式β→β\beta\to\betaと (C4) を用いると、K,αK,\alphaからβ\betaを得る。またK,¬αK,\neg\alphaからは、上で得たα\alphaと、K,αK,\alphaからの同じ有限導出を続けてβ\betaを得る。二つを仮定除去変換で含意にし、(C4) を適用するとKKからβ\betaを得る。よってK→βK\to\betaである。

連言の導入では、α,β\alpha,\betaを仮定する。(C1) から¬¬β\neg\neg\betaを得る。(A) をA=αA=\alpha、B=¬βB=\neg\betaとした式と、(C3) をA=α→¬βA=\alpha\to\neg\beta、B=¬βB=\neg\betaとした式を推移で結ぶとα→(¬¬β→¬(α→¬β))\alpha\to(\neg\neg\beta\to\neg(\alpha\to\neg\beta))を得る。二回の modus ponens の後に二つの仮定を外せばα→(β→α∧β)\alpha\to(\beta\to\alpha\land\beta)となる。

(3)は、α↔β\alpha\leftrightarrow\betaが(α→β)∧(β→α)(\alpha\to\beta)\land(\beta\to\alpha)の略記であることと、(2)の二つの射影および導入を、それぞれα→β\alpha\to\betaとβ→α\beta\to\alphaへ適用して得る。

(4)の否定の場合には、α↔β\alpha\leftrightarrow\betaを仮定する。(3)の二つの射影と (C3) から¬α→¬β\neg\alpha\to\neg\betaと¬β→¬α\neg\beta\to\neg\alphaを得て、(3)の導入で¬α↔¬β\neg\alpha\leftrightarrow\neg\betaにまとめる。仮定を外せば表示した図式を得る。

含意の場合にはα↔α′\alpha\leftrightarrow\alpha'とβ↔β′\beta\leftrightarrow\beta'を仮定する。(3)から四方向の含意を取り出す。さらにα→β\alpha\to\betaを仮定し、α′→α\alpha'\to\alpha、α→β\alpha\to\beta、β→β′\beta\to\beta'を(1)の推移で結ぶ。追加した仮定を外すと(α→β)→(α′→β′)(\alpha\to\beta)\to(\alpha'\to\beta')となる。逆にα′→β′\alpha'\to\beta'を仮定し、α→α′\alpha\to\alpha'、α′→β′\alpha'\to\beta'、β′→β\beta'\to\betaを結んで仮定を外すと、逆向きの含意を得る。(3)で双条件にまとめ、最初の二つの仮定を外すと表示した含意の合同図式を得る。

(5)ではα,¬α\alpha,\neg\alphaを仮定する。(C2) を二回用いてρ\rhoと¬ρ\neg\rhoを得て、(2)の連言導入から⊥ρ\bot_\rhoを得る。二つの仮定を外すと(5)の最初の式になる。⊥ρ\bot_\rhoを仮定した場合には、(2)の射影からρ\rhoと¬ρ\neg\rhoを得る。(C2) と二回の modus ponens によりα\alphaを得て仮定を外せば⊥ρ→α\bot_\rho\to\alphaとなり、α\alphaを¬α\neg\alphaに置き換えれば最後の式も得る。

すべての仮定除去は冒頭の有限変換であり、量化公理、一般化規則、および完全性定理を用いていない。▨

補題 2.2. 任意の論理式α,β\alpha,\betaと変数xxについて

⊢∀x(α→β)→(∀xα→∀xβ)\vdash\forall x(\alpha\to\beta)\to(\forall x\alpha\to\forall x\beta)

が成り立つ。

証明. Q1 の二つの例

∀x(α→β)→(α→β),∀xα→α\forall x(\alpha\to\beta)\to(\alpha\to\beta), \qquad \forall x\alpha\to\alpha

と補題 2.1 (1)にある弱化、共通前件の modus ponens、および含意の推移から

⊢∀x(α→β)→(∀xα→β)\vdash\forall x(\alpha\to\beta)\to(\forall x\alpha\to\beta)

を得る。C:=∀x(α→β)C:=\forall x(\alpha\to\beta)、D:=∀xαD:=\forall x\alphaと置くと、この定理は⊢C→(D→β)\vdash C\to(D\to\beta)である。定理全体をxxで一般化して⊢∀x(C→(D→β))\vdash\forall x(C\to(D\to\beta))を得る。x∉FV(C)x\notin FV(C)なので、Q2 と modus ponens により⊢C→∀x(D→β)\vdash C\to\forall x(D\to\beta)である。またx∉FV(D)x\notin FV(D)なので、Q2 の例

∀x(D→β)→(D→∀xβ)\forall x(D\to\beta)\to(D\to\forall x\beta)

は公理である。補題 2.1 (1)で二つの含意を合成すると

⊢∀x(α→β)→(∀xα→∀xβ)\vdash\forall x(\alpha\to\beta)\to(\forall x\alpha\to\forall x\beta)

を得る。▨

3 α 同値と構文的同値

捕獲回避代入は α 同値類上で定まるが、Hilbert 系の定理は α 同値類で割る前の構文上の論理式(以下、raw 論理式)について述べられる。したがって、代入結果の代表を取り替えるためには、意味論的な α 不変性だけでなく、α 同値な二つの raw 論理式の双条件が実際に導出されることが必要である。

補題 3.1. raw 論理式α,β\alpha,\betaが α 同値であるならば、

⊢α↔β\vdash\alpha\leftrightarrow\beta

が成り立つ。この導出には、完全性定理を用いない。

証明. 最初に、α 同値の生成元である一つの安全な束縛変数改名を扱う。z∉FV(η)z\notin FV(\eta)とし、∀xη\forall x\etaのxxに束縛された出現をzzへ安全に改名して∀zη′\forall z\eta'を得たとする。安全性の条件により、raw な通常代入として

η′=η[x:=z],η=η′[z:=x]\eta'=\eta[x:=z], \qquad \eta=\eta'[z:=x]

が成り立ち、いずれの代入も捕獲を起こさない。Q1 から

⊢∀xη→η′\vdash\forall x\eta\to\eta'

を得る。この定理全体をzzで一般化する。z∉FV(∀xη)z\notin FV(\forall x\eta)なので、Q2 と modus ponens によって

⊢∀xη→∀zη′\vdash\forall x\eta\to\forall z\eta'

を得る。改名後にはx∉FV(η′)x\notin FV(\eta')であり、xxはη′\eta'の自由なzzに代入可能である。したがって、Q1 から⊢∀zη′→η\vdash\forall z\eta'\to\etaを得て、この定理全体をxxで一般化し、 Q2 を適用すると

⊢∀zη′→∀xη\vdash\forall z\eta'\to\forall x\eta

となる。補題 2.1 (3)で二方向をまとめれば、⊢∀xη↔∀zη′\vdash\forall x\eta\leftrightarrow\forall z\eta'である。

次に、この導出が α 同値を生成する同値閉包と合同閉包を保つことを示す。反射性は⊢α→α\vdash\alpha\to\alphaの二つのコピーを補題 2.1 (3)でまとめて得る。対称性と推移性は、双条件から二方向の含意を取り出し、補題 2.1 (1)で含意を合成してから、補題 2.1 (3)で再び双条件にまとめて得る。否定と含意に関する合同性は、補題 2.1 (4)そのものである。

全称量化子に関して⊢α↔β\vdash\alpha\leftrightarrow\betaとする。補題 2.1 (3)から⊢α→β\vdash\alpha\to\betaと⊢β→α\vdash\beta\to\alphaを得る。それぞれをxxで一般化し、補題 2.2を適用すると

⊢∀xα→∀xβ,⊢∀xβ→∀xα\vdash\forall x\alpha\to\forall x\beta, \qquad \vdash\forall x\beta\to\forall x\alpha

となるので、補題 2.1 (3)によって⊢∀xα↔∀xβ\vdash\forall x\alpha\leftrightarrow\forall x\betaを得る。以上を、α 同値を生成する安全な一段改名、同値関係の三規則、および原始構成子の合同規則からなる生成列に関して帰納的に適用すれば、任意の α 同値な raw 論理式について結論が従う。▨

以後、捕獲回避代入の結果を raw 論理式として表示するときは、出力となる α 同値類から一つの代表を選ぶ。代表を別のものへ取り替えても、直前の補題によって構文的な双条件を両方向に挿入することができる。

4 等号から導かれる規則

等号公理は、等号そのものの対称性と推移性を個別の公理にはしていない。等号の対称律と推移律は、等号を二項関係として扱う合同公理から導かれる。

補題 4.1. 任意の項t,u,vt,u,vについて、次が成り立つ。

⊢t=u→u=t,⊢(t=u∧u=v)→t=v.\vdash t=u\to u=t, \qquad \vdash(t=u\land u=v)\to t=v.

証明. 等号の関係合同公理で、原子式z1=z2z_1=z_2の組(t,t)(t,t)と(u,t)(u,t)を比較すると、

(t=u∧t=t)→((t=t)↔(u=t))(t=u\land t=t)\to((t=t)\leftrightarrow(u=t))

を得る。⊢t=t\vdash t=tと補題 2.1 (2)および補題 2.1 (3)を用い、連言の導入と双条件の射影を展開すると⊢t=u→u=t\vdash t=u\to u=tが従う。

次に、原子式z1=z2z_1=z_2の組(t,u)(t,u)と(t,v)(t,v)を比較すると、

(t=t∧u=v)→((t=u)↔(t=v))(t=t\land u=v)\to((t=u)\leftrightarrow(t=v))

を得る。⊢t=t\vdash t=tと補題 2.1 (2)および補題 2.1 (3)を用い、前提t=u∧u=vt=u\land u=vからu=vu=vとt=ut=uを取り出すとt=vt=vを得る。基本派生則の証明冒頭にある仮定除去変換で前提を含意の左辺へ移すことができるため、表示した定理を得る。▨

定理 4.2.φ(z1,…,zn)\varphi(z_1,\ldots,z_n)の表示された自由変数へ、項t1,…,tnt_1,\ldots,t_nとu1,…,unu_1,\ldots,u_nを捕獲を避けて同時代入する。EEを

E=(t1=u1∧⋯∧tn=un)E=(t_1=u_1\land\cdots\land t_n=u_n)

とする。このとき

⊢E→(φ[t1/z1,…,tn/zn]↔φ[u1/z1,…,un/zn])\vdash E\to \bigl(\varphi[t_1/z_1,\ldots,t_n/z_n] \leftrightarrow \varphi[u_1/z_1,\ldots,u_n/z_n]\bigr)

が成り立つ。n=0n=0の場合には、同じ論理式どうしの双条件を得る。

証明.φ\varphiの高さに関する帰納法を用いる。最初に、任意の項r(z1,…,zn)r(z_1,\ldots,z_n)について

⊢E→r(tˉ)=r(uˉ)\vdash E\to r(\bar t)=r(\bar u)

となることを項の構造に関する帰納法で示す。r=zir=z_iの場合は、補題 2.1 (2)を繰り返してEEから第iiの連言肢ti=uit_i=u_iを取り出す。rrが表示された変数以外の変数または定数なら、反射律と H1 を用いる。r=f(r1,…,rk)r=f(r_1,\ldots,r_k)の場合は、帰納法の仮定から得たkk個の等式をEEの下で補題 2.1 (1)にある共通前件の規則と補題 2.1 (2)の連言導入を繰り返し、連言にまとめてからkk項関数記号ffの合同公理を適用する。k=0k=0では、結論は反射律そのものである。

原子式が等号r=qr=qの場合は、項について得た二つの等式と、等号を二項関係として扱う合同公理を用いる。原子式がR(r1,…,rk)R(r_1,\ldots,r_k)の場合も、項について得たkk個の等式を補題 2.1 (1)と補題 2.1 (2)によってEEの下で連言にまとめ、RRの合同公理を用いる。k=0k=0では空の連言を前件とする零項関係の合同公理が同じ原子式どうしの双条件を与える。

φ=¬ψ\varphi=\neg\psiの場合は、帰納法の仮定E→(ψ(tˉ)↔ψ(uˉ))E\to(\psi(\bar t)\leftrightarrow\psi(\bar u))と補題 2.1 (4)にある否定の合同図式を、補題 2.1 (1)の含意の推移で結ぶ。φ=ψ→χ\varphi=\psi\to\chiの場合は、二つの帰納法の仮定と補題 2.1 (4)にある含意の二引数の合同図式へ、補題 2.1 (1)の共通前件の modus ponens を二回適用する。

φ=∀yψ\varphi=\forall y\psiの場合を考える。wwをψ\psi、EE、および代入するすべての項のいずれにも現れない新しい変数とし、束縛変数を安全に改名して

∀yψ≡α∀wχ\forall y\psi\equiv_\alpha\forall w\chi

とする。改名は論理式の高さを変えないので、χ\chiには帰納法の仮定を適用することができる。χ(tˉ)\chi(\bar t)とχ(uˉ)\chi(\bar u)を、χ\chiへの捕獲回避同時代入の raw な代表として選ぶ。帰納法の仮定と補題 2.1 (3)の二つの射影から、定理

⊢E→(χ(tˉ)→χ(uˉ))\vdash E\to(\chi(\bar t)\to\chi(\bar u))

と逆向きの定理をそれぞれ得る。最初の定理全体をwwで一般化し、w∉FV(E)w\notin FV(E)を用いて Q2 を適用すると

⊢E→∀w(χ(tˉ)→χ(uˉ))\vdash E\to\forall w(\chi(\bar t)\to\chi(\bar u))

となる。補題 2.2と補題 2.1 (1)を用いると

⊢E→(∀wχ(tˉ)→∀wχ(uˉ))\vdash E\to(\forall w\chi(\bar t)\to\forall w\chi(\bar u))

を得る。同じ議論を逆向きにも行う。補題 2.1 (3)にある双条件の導入図式へ、補題 2.1 (1)の共通前件の modus ponens を二回適用すると

⊢E→(∀wχ(tˉ)↔∀wχ(uˉ))\vdash E\to \bigl(\forall w\chi(\bar t)\leftrightarrow\forall w\chi(\bar u)\bigr)

を得る。§E16.7 定理 2.2により捕獲回避代入は α 同値類上で定まるので、元の raw 論理式∀yψ\forall y\psiへの二つの代入結果をそれぞれLt,LuL_t,L_uと書けば、

Lt≡α∀wχ(tˉ),Lu≡α∀wχ(uˉ)L_t\equiv_\alpha\forall w\chi(\bar t), \qquad L_u\equiv_\alpha\forall w\chi(\bar u)

である。A:=∀wχ(tˉ)A:=\forall w\chi(\bar t)、B:=∀wχ(uˉ)B:=\forall w\chi(\bar u)と置く。補題 3.1と補題 2.1 (3)の射影から、

⊢Lt→A,⊢A→Lt,⊢Lu→B,⊢B→Lu\vdash L_t\to A, \qquad \vdash A\to L_t, \qquad \vdash L_u\to B, \qquad \vdash B\to L_u

を得る。一時的にEEを仮定する。直前に得た⊢E→(A→B)\vdash E\to(A\to B)へ modus ponens を適用してA→BA\to Bを得る。これをLt→AL_t\to AおよびB→LuB\to L_uと補題 2.1 (1)の含意の推移で合成するとLt→LuL_t\to L_uとなる。基本派生則の証明冒頭にある仮定除去変換でEEを外せば⊢E→(Lt→Lu)\vdash E\to(L_t\to L_u)である。逆向きの⊢E→(B→A)\vdash E\to(B\to A)と残る二つの射影を用いると、同様に⊢E→(Lu→Lt)\vdash E\to(L_u\to L_t)を得る。最後に、補題 2.1 (3)にある双条件の導入図式へ補題 2.1 (1)の共通前件の modus ponens を二回適用すると

⊢E→(Lt↔Lu)\vdash E\to(L_t\leftrightarrow L_u)

となる。この式は、元の raw な代表について求める結論である。以上で原始構成子のすべての場合を処理した。▨

5 演繹定理

定理 5.1 (演繹定理). 任意の前提集合Γ\Gammaと論理式θ,φ\theta,\varphiについて、

Γ∪{θ}⊢φ⟺Γ⊢θ→φ\Gamma\cup\{\theta\}\vdash\varphi \quad\Longleftrightarrow\quad \Gamma\vdash\theta\to\varphi

が成り立つ。

証明の方針は、左辺の有限導出の各行χ\chiに対してΓ⊢θ→χ\Gamma\vdash\theta\to\chiを構成することである。一般化の行では、元の導出規則の条件からx∉FV(θ)x\notin FV(\theta)が得られることを用いる。

証明. まず左から右を示す。Γ∪{θ}\Gamma\cup\{\theta\}からの導出の長さに関する帰納法を用い、各行(χ,Δ)(\chi,\Delta)についてΓ⊢θ→χ\Gamma\vdash\theta\to\chiを構成する。行χ\chiがΓ\Gammaの要素または公理なら、Γ⊢χ\Gamma\vdash\chiであり、補題 2.1 (1)にある弱化からΓ⊢θ→χ\Gamma\vdash\theta\to\chiを得る。行がθ\theta自身なら、補題 2.1 (1)からΓ⊢θ→θ\Gamma\vdash\theta\to\thetaを得る。

χ\chiがη→χ\eta\to\chiとη\etaへの modus ponens から得られたとする。帰納法の仮定はΓ⊢θ→(η→χ)\Gamma\vdash\theta\to(\eta\to\chi)とΓ⊢θ→η\Gamma\vdash\theta\to\etaを与える。H2 へ modus ponens を二回適用するとΓ⊢θ→χ\Gamma\vdash\theta\to\chiを得る。

χ=∀xη\chi=\forall x\etaが(η,Δ)(\eta,\Delta)の一般化から得られたとする。θ∈Δ\theta\in\Deltaなら、一般化規則の条件からx∉FV(θ)x\notin FV(\theta)である。帰納法の仮定Γ⊢θ→η\Gamma\vdash\theta\to\etaを一般化してΓ⊢∀x(θ→η)\Gamma\vdash\forall x(\theta\to\eta)を得る。この一般化は、もとのΔ\Deltaからθ\thetaを除いた前提だけに依存し、xxは各前提に自由に現れないため適法である。Q2 によりΓ⊢θ→∀xη\Gamma\vdash\theta\to\forall x\etaを得る。

θ∉Δ\theta\notin\Deltaなら、(∀xη,Δ)(\forall x\eta,\Delta)までの実依存部分はΓ\Gammaだけからの導出である。したがってΓ⊢∀xη\Gamma\vdash\forall x\etaであり、H1 からΓ⊢θ→∀xη\Gamma\vdash\theta\to\forall x\etaを得る。

逆にΓ⊢θ→φ\Gamma\vdash\theta\to\varphiとする。依存前提集合を保った同じ導出はΓ∪{θ}\Gamma\cup\{\theta\}からの導出でもある。Γ∪{θ}\Gamma\cup\{\theta\}ではθ\thetaが前提なので、 modus ponens によりΓ∪{θ}⊢φ\Gamma\cup\{\theta\}\vdash\varphiを得る。▨

系 5.2.Γ⊢φ\Gamma\vdash\varphiならば、ある有限部分集合Γ0⊆Γ\Gamma_0\subseteq\Gammaが存在してΓ0⊢φ\Gamma_0\vdash\varphiである。

証明.Γ\Gammaからの一つの導出を固定する。導出は有限列なので、その行として現れるΓ\Gammaの要素も有限個である。導出に現れた前提の集合をΓ0\Gamma_0とする。同じ有限列の一般化条件は、より小さい前提集合Γ0\Gamma_0に対しても成立するので、同じ列がΓ0\Gamma_0からの導出になる。▨

6 健全性

定理 6.1 (一階 Hilbert 系の健全性). 任意のΓ⊆Form⁡(L)\Gamma\subseteq\operatorname{Form}(L)と論理式φ\varphiについて、

Γ⊢φ⟹Γ⊨φ\Gamma\vdash\varphi\quad\Longrightarrow\quad\Gamma\models\varphi

が成り立つ。

証明の方針は、導出の各行が、その行の依存前提集合を満たす任意の構造と割当てで真であることを示すことである。量化公理では代入補題と充足の局所性を用い、一般化規則では変数が前提に自由に現れないという条件を用いる。

証明. 導出の長さに関する帰納法を用い、各行(χ,Δ)(\chi,\Delta)についてM,s⊨ΔM,s\models\DeltaならM,s⊨χM,s\models\chiとなることを示す。前提の行は依存前提集合がその前提だけからなるので真である。H1 と H2 は含意の真理値規則を直接適用すると真である。H3 が偽なら、その前件¬β→¬α\neg\beta\to\neg\alphaが真、α\alphaが真、β\betaが偽となるが、後二条件は前件を偽にするので矛盾する。

Q1 を考える。M,s⊨∀xφM,s\models\forall x\varphiなら、a=⟦t⟧sMa=\llbracket t\rrbracket_s^Mに対してM,s[x↦a]⊨φM,s[x\mapsto a]\models\varphiである。ttがxxに自由に代入可能であるため、§E16.7 系 5.3からM,s⊨φ[x:=t]M,s\models\varphi[x:=t]を得る。したがって Q1 は妥当である。

Q2 を考える。M,s⊨∀x(φ→ψ)M,s\models\forall x(\varphi\to\psi)かつM,s⊨φM,s\models\varphiとする。x∉FV(φ)x\notin FV(\varphi)なので、§E16.6 定理 4.1により、任意のa∈∣M∣a\in|M|についてM,s[x↦a]⊨φM,s[x\mapsto a]\models\varphiである。Q2 の前件から同じ割当てでM,s[x↦a]⊨φ→ψM,s[x\mapsto a]\models\varphi\to\psiであるから、M,s[x↦a]⊨ψM,s[x\mapsto a]\models\psiを得る。aaは任意なのでM,s⊨∀xψM,s\models\forall x\psiであり、Q2 は妥当である。

等号の反射公理は、等号が同一性として解釈されるため真である。関数合同公理では、各⟦ti⟧sM=⟦ui⟧sM\llbracket t_i\rrbracket_s^M=\llbracket u_i\rrbracket_s^Mなら、関数fMf^Mを同じ引数列へ適用した値が一致する。関係合同公理では、同じ引数列が関係RMR^Mに属するかどうかは一致する。n=0n=0の場合は比較する引数が無く、同じ定数の値または同じ零項関係の真理値を比較するので妥当である。

modus ponens が真理を保存することは含意の意味から従う。χ\chiから∀xχ\forall x\chiへの一般化を考え、この行の依存前提集合をΔ\Deltaとする。M,s⊨ΔM,s\models\Deltaと仮定する。任意のa∈∣M∣a\in|M|について、一般化条件と§E16.6 定理 4.1によりM,s[x↦a]⊨ΔM,s[x\mapsto a]\models\Deltaである。帰納法の仮定を割当てs[x↦a]s[x\mapsto a]へ適用するとM,s[x↦a]⊨χM,s[x\mapsto a]\models\chiを得る。したがってM,s⊨∀xχM,s\models\forall x\chiである。

導出の末尾の依存前提集合はΓ\Gammaの部分集合である。M,s⊨ΓM,s\models\Gammaを満たす任意の構造と割当てへ帰納法の結論を適用するとM,s⊨φM,s\models\varphiを得る。したがってΓ⊨φ\Gamma\models\varphiである。▨

例 6.2 (一般化条件を外すことができない例). 一要素述語PPをもつ言語で、前提P(x)P(x)からP(x)P(x)自身は導出することができる。一般化条件を外せばP(x)⊢∀xP(x)P(x)\vdash\forall xP(x)となる。しかし、台集合{0,1}\{0,1\}、PM={0}P^M=\{0\}、s(x)=0s(x)=0とすればM,s⊨P(x)M,s\models P(x)である一方、M,s⊭∀xP(x)M,s\not\models\forall xP(x)である。したがって、その規則は健全ではない。

7 構文的無矛盾性

変数x0x_0を一つ固定し、

⊥:=(∀x0 x0=x0)∧¬(∀x0 x0=x0)\bot:=(\forall x_0\,x_0=x_0)\land\neg(\forall x_0\,x_0=x_0)

と略記する。この文はどの構造でも偽である。

定義 7.1.LLを集合サイズの一階言語とし、⊢L\vdash_Lを定義 1.2がLLについて定めた導出可能性とする。前提集合Γ⊆Form⁡(L)\Gamma\subseteq\operatorname{Form}(L)が LLにおいて構文的に無矛盾 (syntactically consistent in L) であるとは、

¬∃χ∈Form⁡(L) (Γ⊢Lχ ∧ Γ⊢L¬χ)\neg\exists\chi\in\operatorname{Form}(L)\,(\Gamma\vdash_L\chi\ \land\ \Gamma\vdash_L\neg\chi)

が成り立つことをいう。どの言語について述べているかが文脈から定まる場合には、添字を省いてΓ⊢χ\Gamma\vdash\chiと書き、単に構文的に無矛盾であるという。

Γ\Gammaが文だけからなる場合、すなわちLL理論S⊆Sent⁡(L)S\subseteq\operatorname{Sent}(L)の場合も、この定義をそのまま適用する。Sent⁡(L)⊆Form⁡(L)\operatorname{Sent}(L)\subseteq\operatorname{Form}(L)であるから、理論の無矛盾性は前提集合の無矛盾性の特別な場合である。

命題論理にも同じ名前の概念があり、条件の形も同じである。異なるのは、判定に用いる導出関係が本記事の一階 Hilbert 系のものである点だけである(§E16.4 定義 5.1)。

命題 7.2. 集合サイズの各言語LLと各前提集合Γ⊆Form⁡(L)\Gamma\subseteq\operatorname{Form}(L)について、古典一階 Hilbert 系では次が同値である。

  1. Γ\GammaはLLにおいて構文的に無矛盾である。
  2. Γ⊬L⊥\Gamma\nvdash_L\botである。

証明.⊥\botはLLに属さない非論理記号を含まないので、以下の各行はすべてForm⁡(L)\operatorname{Form}(L)に属する。Γ⊢Lχ\Gamma\vdash_L\chiかつΓ⊢L¬χ\Gamma\vdash_L\neg\chiなら、補題 2.1 (5)をρ=∀x0 x0=x0\rho=\forall x_0\,x_0=x_0として得るχ→(¬χ→⊥)\chi\to(\neg\chi\to\bot)へ modus ponens を二回適用し、Γ⊢L⊥\Gamma\vdash_L\botを得る。逆にΓ⊢L⊥\Gamma\vdash_L\botなら、補題 2.1 (5)の⊥→χ\bot\to\chiと⊥→¬χ\bot\to\neg\chiへ modus ponens を適用してΓ⊢Lχ\Gamma\vdash_L\chiかつΓ⊢L¬χ\Gamma\vdash_L\neg\chiを得る。したがって二つの条件は同値である。▨

系 7.3. 集合サイズの各言語LLと各前提集合Γ⊆Form⁡(L)\Gamma\subseteq\operatorname{Form}(L)について、Γ\Gammaを満たすLL構造と割当てが存在するなら、Γ\GammaはLLにおいて構文的に無矛盾である。

証明.Γ⊢L⊥\Gamma\vdash_L\botなら、健全性によりΓ⊨⊥\Gamma\models\botとなる。しかし⊥\botはどの構造と割当てでも偽なので、Γ\Gammaのモデルが存在することに反する。命題 7.2によりΓ\GammaはLLにおいて構文的に無矛盾である。▨

8 演習

問題 8.1.

  1. ∀xP(x)⊢P(t)\forall xP(x)\vdash P(t)の一行の根拠を、代入可能性の条件とともに述べよ。
  2. P(x)⊢∀xP(x)P(x)\vdash\forall xP(x)が本記事の体系で導出することができないことを、健全性を用いて証明せよ。
  3. Γ∪{θ}⊢∀xη\Gamma\cup\{\theta\}\vdash\forall x\etaの最後の規則が一般化であるとする。演繹定理の証明でx∉FV(θ)x\notin FV(\theta)が必要になる箇所を示せ。
  4. zzが安全な新変数であるとき、⊢∀xη→∀zη[x:=z]\vdash\forall x\eta\to\forall z\eta[x:=z]を Q1、Q2、および一般化規則から導け。
解答 (確認問題の解答).
  1. ttがP(x)P(x)のxxに自由に代入可能なら、Q1 の例∀xP(x)→P(t)\forall xP(x)\to P(t)と前提∀xP(x)\forall xP(x)へ modus ponens を適用する。
  2. 例 6.2の構造と割当てでは前提が真で結論が偽である。もし導出することができるなら、健全性により意味論的帰結が成り立つため、矛盾する。
  3. 帰納法の仮定から得たΓ⊢θ→η\Gamma\vdash\theta\to\etaを一般化してΓ⊢∀x(θ→η)\Gamma\vdash\forall x(\theta\to\eta)とした後、Q2∀x(θ→η)→(θ→∀xη)\forall x(\theta\to\eta)\to(\theta\to\forall x\eta)を用いる。 Q2 の変数条件がx∉FV(θ)x\notin FV(\theta)を要求する。元の導出の一般化条件が、xxがΓ∪{θ}\Gamma\cup\{\theta\}のどの前提にも自由に現れないことを保証する。
  4. Q1 により⊢∀xη→η[x:=z]\vdash\forall x\eta\to\eta[x:=z]である。この定理全体をzzで一般化し、z∉FV(∀xη)z\notin FV(\forall x\eta)を用いて Q2 を適用すると、求める定理を得る。

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参考文献

  1. Herbert B. Enderton, A Mathematical Introduction to Logic, 2nd ed., Academic Press, 2001.一階論理の Hilbert 型体系、演繹定理、および健全性の扱いを参考にした。
  2. George Tourlakis, Lectures in Logic and Set Theory, Cambridge Studies in Advanced Mathematics 82, vol. 1, Cambridge University Press, 2003.量化公理、等号公理、および形式的導出の扱いを参考にした。

前提記事