1 論理式の有限高さ構成
有限段階の和集合として定めたため、すべての論理式は有限の高さをもつ。タグは外側の構成子を記号列の解析に依存せず一意にする。
命題 1.2. 任意のφ∈Form(P)は、命題変数、¬ψ、(ψ→χ)のちょうど一つの形をとる。後二者では直下の論理式も一意である。また、Pを含み、否定と含意の構成で閉じた任意の集合CはForm(P)を含む。
証明. 三種類のタグの像は互いに素であり、各タグ付き構成子は引数について単射である。したがって三つの形は排反であり、直下の論理式も一意である。
最小性を示す。Cが主張の条件を満たすとする。通常記法の下でF0=P⊆Cである。Fn⊆Cと仮定すると、Cの閉性からFn+1⊆Cである。自然数に関する帰納法により、すべてのn<ωについてFn⊆Cとなる。ゆえにForm(P)=⋃n<ωFn⊆Cである。▨
定理 1.3.A⊆Form(P)が次の条件を満たすとする。
- すべてのp∈Pについてp∈Aである。
- φ∈Aならば¬φ∈Aである。
- φ,ψ∈Aならば(φ→ψ)∈Aである。
このときA=Form(P)である。
証明.Fn⊆Aをnに関して帰納的に示す。F0=P⊆Aである。Fn⊆Aと仮定すると、第二条件と第三条件によりFn+1⊆Aである。したがってForm(P)=⋃n<ωFn⊆Aである。逆の包含はAの仮定に含まれる。▨
構造帰納法は論理式についての性質を証明する。構造再帰は論理式から別の集合への写像を定義する。
定理 1.4. 集合X、写像a:P→X、写像N:X→X、写像I:X×X→Xを与える。このとき、次を満たす写像h:Form(P)→Xが一意に存在する。
h(p)=a(p),h(¬φ)=N(h(φ)),h(φ→ψ)=I(h(φ),h(ψ)).
証明.hn:Fn→Xをnに関して構成する。h0=aとする。hnが定まったとき、Fn+1∖Fnの各元には一意可読性によって外側の構成子と直下の論理式が一意に定まる。直下の論理式はFnに属するので、表示された二つの再帰式によってhn+1を定める。Fn上ではhn+1=hnとする。この構成は整合しているから、
h=n<ω⋃hnは求める写像である。
gも同じ再帰式を満たすとする。hとgがFn上で一致することをnに関して帰納的に示す。F0上では両者ともaである。Fn上で一致すれば、再帰式と一意可読性によりFn+1上でも一致する。したがってh=gである。▨
例 1.5 (構文木の高さ).p,q∈Pとする。論理式
¬(p→¬q)の高さは3である。外側から順に否定、含意、右側の否定を除くと命題変数に到達する。派生記号ではp∧qと書くが、構文上は原始記号による左辺の木を指す。
2 付値と真理値
定義 2.1. 二元集合を2={0,1}とする。命題変数への写像v:P→2を付値 (valuation) という。論理式の 真理値 (truth value)v:Form(P)→2は
v(p)=v(p),v(¬φ)=1−v(φ),v(φ→ψ)={01v(φ)=1 かつ v(ψ)=0,それ以外によって定める。v(φ)=1をv⊨φと書く。
系 2.2. 任意の付値v:P→2は、定義 2.1の再帰式を満たす真理値関数へ一意に拡張される。
証明.定理 1.4においてX=2とし、NとIを否定と含意の真理値演算に取れば、存在と一意性を得る。構造再帰定理は本稿で証明済みであるから、別の存在仮定を用いていない。▨
命題 2.3.Var(φ)をφに現れる命題変数の有限集合とする。付値v,w:P→2がVar(φ)上で一致するなら、v(φ)=w(φ)である。
証明.Var(p)={p}、Var(¬ψ)=Var(ψ)、Var(ψ→χ)=Var(ψ)∪Var(χ)と再帰的に定める。φに関する構造帰納法を用いる。命題変数の場合は仮定そのものである。否定の場合は帰納法の仮定と否定の真理値規則から従う。含意の場合は二つの直下の論理式に帰納法の仮定を適用し、含意の真理値規則を用いる。▨
例 2.4 (派生結合子の意味). 定義を展開すると、v⊨φ∧ψはv⊨φかつv⊨ψと同値である。また、v⊨φ∨ψはv⊨φまたはv⊨ψと同値である。ここで「または」は両方が真である場合を含む。
3 三つの意味論的概念
定義 3.1.φ∈Form(P)、Γ⊆Form(P)とする。
- φが充足可能 (satisfiable) であるとは、v⊨φを満たす付値v:P→2が少なくとも一つ存在することをいう。
- φが恒真 (valid) であるとは、すべての付値v:P→2についてv⊨φが成り立つことをいい、⊨PLφと書く。
- φがΓの意味論的帰結 (semantic consequence) であるとは、すべての付値v:P→2について、v⊨γがすべてのγ∈Γについて成り立つならv⊨φが成り立つことをいい、Γ⊨PLφと書く。
命題 3.2. 次が成り立つ。
- 任意のφ∈Form(P)について、φが恒真であることと、{¬φ}を同時に真にする付値が存在しないことは同値である。
- 任意のΓ⊆Form(P)と任意のφ∈Form(P)について、Γ⊨PLφであることと、Γ∪{¬φ}を同時に真にする付値が存在しないことは同値である。
- P=∅ならば、充足可能であるが恒真でない論理式が存在する。
証明.(1)はv(¬φ)=1−v(φ)による。(2)について、Γ⊨PLφが成り立たないことは、すべてのγ∈Γを真にし、φを偽にする付値が存在することと同値である。否定の真理値規則により、後者はΓ∪{¬φ}を同時に真にする付値が存在することと同値である。(3)ではP=∅であるからp∈Pを取ることができる。論理式pはv(p)=1とすれば充足可能であるが、v(p)=0とする付値の下では偽である。▨
例 3.3 (意味論的帰結の量化範囲).{p,p→q}⊨PLqである。実際、pとp→qをともに真にする付値では、含意が偽になる唯一の場合を除外するためqも真である。一方、{p∨q}⊨PLpである。v(p)=0、v(q)=1が反例を与える。
4 演習
問題 4.1.
- Var((p→q)→p)を求め、この論理式の真理値を決めるためにP上の付値全体が不要である理由を述べよ。
- p→(q→p)が恒真であることを、含意が偽になる条件から証明せよ。
- 「充足可能」と「恒真」を入れ替えることができない例を一つ与えよ。
解答 (確認問題の解答).
- 変数集合は{p,q}である。命題 2.3により、p,q上の値だけが真理値を決める。
- 外側の含意が偽ならpは真でq→pは偽である。後者が偽ならpは偽であり、矛盾する。したがって外側の含意はすべての付値で真である。
- pは充足可能であるが恒真ではない。
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構文上の形成規則は、どの文字列が論理式であるかを決める。付値の再帰的拡張は、形成規則に沿って各論理式の真理値を決める。両者を分離したうえで、次に有限個の変数に対する真理表と標準形を扱う。