§E2.5完備距離空間

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点列が収束するという条件は、あらかじめ定めた極限との距離が小さくなることを要求する。そのため、極限を先に与えることができない場面では、この条件を収束の判定に用いることができない。項どうしが互いに近づくという条件であれば極限を指定せずに書くことができるが、その条件を満たす列が空間の中に極限をもつとは限らない。番号を進めると任意の二項の距離が小さくなる点列を Cauchy 列といい、すべての Cauchy 列が空間内の点へ収束する距離空間を完備であるという。完備性は、極限の存在を個々の列ごとにではなく空間の性質として保証するため、解析学が扱う距離空間に対して広く仮定される。たとえば、標準距離を入れた実数直線は完備である。本記事では、完備性の基本的な性質と代表的な例について解説する。

1 Cauchy 列と完備性

定義 1.1 (Cauchy 列、完備性). 距離空間(X,d)(X,d)の点列(xn)n≥1(x_n)_{n\geq1}が Cauchy 列 (Cauchy sequence) であるとは、

∀ε>0 ∃N≥1 ∀m,n≥N,d(xm,xn)<ε\forall\varepsilon>0\ \exists N\geq1\ \forall m,n\geq N,\quad d(x_m,x_n)<\varepsilon

が成り立つことをいう。点列の添字は§E2.3 定義 1.1と同じく正の整数とする。(X,d)(X,d)の全 Cauchy 列がXXの点に収束するとき、(X,d)(X,d)は完備 (complete) であるという。

命題 1.2.(X,d)(X,d)の点列(xn)(x_n)がx∈Xx\in Xに収束するとき、(xn)(x_n)は Cauchy 列である。

証明.ε>0\varepsilon>0をとる。xn→xx_n\to xであるから、n≥Nn\geq Nならばd(xn,x)<ε/2d(x_n,x)<\varepsilon/2となるNNがある。m,n≥Nm,n\geq Nならば、三角不等式からd(xm,xn)≤d(xm,x)+d(x,xn)<εd(x_m,x_n)\leq d(x_m,x)+d(x,x_n)<\varepsilonである。▨

注意 1.3. Cauchy 列が収束するとは限らない。例 6.2は、項どうしが任意に近くなるが空間内の極限をもたない列を与える。完備性はこの欠落を除く条件である。

2 区間縮小法の一般化

定義 2.1.(X,d)(X,d)を距離空間とする。

diam⁡(X,d):=inf⁡{R∈[0,∞] |∀x,y∈X, d(x,y)≤R}\operatorname{diam}(X,d) := \inf \left\{ R \in [0,\infty] \,\middle| \forall x,y\in X,\ d(x,y) \leq R\right\}

と定義し、これを(X,d)(X,d)の 直径 (diameter) という。直径が有限である距離空間を 有界 (bounded) であるという。部分集合A⊆XA\subseteq Xに制限距離dAd_Aを入れたときの直径をdiam⁡(A):=diam⁡(A,dA)\operatorname{diam}(A):=\operatorname{diam}(A,d_A)と書く。

注意 2.2. 距離空間(X,d)(X,d)に対して、XXが空でなければ、

diam⁡(X,d)=sup⁡x,y∈Xd(x,y)\operatorname{diam}(X,d) = \sup_{x,y\in X}d(x,y)

である。右辺の上限は非負拡大実数の範囲でとり、距離の値が上に有界でない場合には∞\inftyとする。この等式は、上限が上界全体の最小元であることから従う。XXが空であれば、定義の右辺で下限をとる集合は[0,∞][0,\infty]であるから、diam⁡(∅,d)=0\operatorname{diam}(\emptyset,d)=0である。

したがって、空集合の場合も含め、実数R≥0R\geq0に対してdiam⁡(X,d)≤R\operatorname{diam}(X,d)\leq Rであることと、任意のx,y∈Xx,y\in Xに対してd(x,y)≤Rd(x,y)\leq Rであることは同値である。

補題 2.3.(X,d)(X, d)を距離空間、A⊂XA\subset Xを部分空間とする。このとき、diam⁡(A,d∣A)=diam⁡(A‾,d∣A‾)\operatorname{diam}(A, d|_A) = \operatorname{diam}(\tpcl{A}, d|_{\tpcl{A}})が成り立つ。

証明.diam⁡(A,d∣A)≤diam⁡(A‾,d∣A‾)\operatorname{diam}(A, d|_A) \leq \operatorname{diam}(\tpcl{A}, d|_{\tpcl{A}})は明らか。逆向きの不等式を示すため、diam⁡(A,d∣A)≤R\operatorname{diam}(A, d|_A) \leq RとなるR∈[0,∞]R\in [0,\infty]と実数ε>0\ep > 0を任意にとる。任意のx,y∈A‾x,y\in \tpcl{A}に対し、あるx′,y′∈Ax', y'\in Aが存在し、dX(x,x′),dX(y,y′)<ε/2d_X(x,x'), d_X(y,y') < \ep/2が成り立つ。このとき、

dX(x,y)≤dX(x,x′)+dX(x′,y′)+dX(y′,y)<ε/2+R+ε/2=R+εd_X(x,y) \leq d_X(x,x') + d_X(x',y') + d_X(y',y) < \ep /2 + R + \ep/2 = R + \ep

となるため、diam⁡(A‾,d∣A‾)≤diam⁡(A,d∣A)+ε\operatorname{diam}(\tpcl{A}, d|_{\tpcl{A}}) \leq \operatorname{diam}(A, d|_A) + \epが従う。ε\epは任意にとっていたので、ε→0\ep\to 0の極限をとればdiam⁡(A‾,d∣A‾)≤diam⁡(A,d∣A)\operatorname{diam}(\tpcl{A}, d|_{\tpcl{A}}) \leq \operatorname{diam}(A, d|_A)が従う。▨

補題 2.4.(X,d)(X, d)を距離空間、(xn)n∈N≥0(x_n)_{n\in \N}を(X,d)(X, d)の点列とし、An:={xk∣k≥n}A_n:= \{x_k\mid k\geq n\}とおく。このとき、点列(xn)n∈N≥0(x_n)_{n\in \N}が Cauchy 列であるための必要十分条件は、diam⁡(An)→0\operatorname{diam}(A_n)\to 0, (n→∞n\to \infty) となることである。

証明.(xn)n∈N≥0(x_n)_{n\in \N}が Cauchy 列であるとすれば、任意のε>0\ep > 0に対してあるn∈N≥0n\in \Nが存在して任意のk≥nk\geq nに対してdX(xk,xn)<ε/2d_X(x_k, x_n) < \ep/2が成り立つ。このとき、任意のk,k′≥nk,k' \geq nに対して

dX(xk,xk′)≤dX(xk,xn)+dX(xk′,xn)<ε/2+ε/2=εd_X(x_k, x_{k'})\leq d_X(x_k, x_n) + d_X(x_{k'}, x_n) < \ep/2 + \ep/2 = \ep

が成り立ち、diam⁡(An)≤ε\operatorname{diam}(A_n) \leq \epとなる。これはdiam⁡(An)→0\operatorname{diam}(A_n)\to 0, (n→∞n\to \infty) を示している。

逆にdiam⁡(An)→0\operatorname{diam}(A_n)\to 0, (n→∞n\to \infty) であるとする。任意にε>0\ep > 0をとれば、あるn∈N≥0n\in \Nが存在してdiam⁡(An)<ε\operatorname{diam}(A_n) < \epが成り立つ。任意のk,l≥nk,l\geq nに対してxk,xl∈Anx_k,x_l\in A_nであり、diam⁡(An)\operatorname{diam}(A_n)は有限であるから、注意 2.2によりdX(xk,xl)≤diam⁡(An)<εd_X(x_k,x_l)\leq\operatorname{diam}(A_n)<\epが成り立つ。ゆえに(xn)n∈N≥0(x_n)_{n\in\N}は Cauchy 列である。▨

定理 2.5.(X,d)(X,d)を距離空間とする。このとき、次の二条件は同値である。

  1. (X,d)(X,d)は完備距離空間である。
  2. XXの空でない閉部分集合の任意の減少列(Fn)n∈N≥0(F_n)_{n\in\N}がF0⊇F1⊇F2⊇⋯F_0\supseteq F_1\supseteq F_2\supseteq\cdotsおよびdiam⁡(Fn)→0\operatorname{diam}(F_n)\to0を満たすとき、⋂n∈N≥0Fn≠∅\bigcap_{n\in\N}F_n\neq\emptysetが成り立つ。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。(X,d)(X,d)が完備であるとし、条件を満たす閉集合の列(Fn)n∈N≥0(F_n)_{n\in\N}をとる。各n∈N≥0n\in\Nに対してxn∈Fnx_n\in F_nを選び、An:={xk∣k≥n}A_n:=\{x_k\mid k\geq n\}と置く。このときAn⊂FnA_n\subset F_nであるので、diam⁡(An)≤diam⁡(Fn)→0\operatorname{diam}(A_n) \leq \operatorname{diam}(F_n) \to 0(n→∞n\to \infty) となる。従って補題 2.4より(xn)n∈N≥0(x_n)_{n\in \N}は Cauchy 列であり、完備性によりあるx∈Xx\in Xに収束する。各k∈N≥0k\in\Nに対して、n≥kn\geq kならばxn∈Fkx_n\in F_kであり、FkF_kは閉集合であるから、§E2.3 定理 3.1によりx∈Fkx\in F_kである。よってx∈⋂k∈N≥0Fkx\in\bigcap_{k\in\N}F_kである。

(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。(2)を仮定し、XXの Cauchy 列(xn)n∈N≥0(x_n)_{n\in\N}をとる。n∈N≥0n\in\Nに対してAn:={xk∣k≥n}A_n := \{x_k \mid k\geq n\},Fn:=An‾F_n:=\tpcl{A_n}と置く。このとき、任意のn∈N≥0n\in \Nに対してxn∈Fnx_n\in F_nであり、An+1⊆An⊆FnA_{n+1}\subseteq A_n\subseteq F_nからFn+1⊆FnF_{n+1}\subseteq F_nが従う。さらに(xn)n∈N≥0(x_n)_{n\in\N}が Cauchy 列であることから、補題 2.3と補題 2.4より、

diam⁡(Fn)=diam⁡(An)→0,n→∞\operatorname{diam}(F_n) = \operatorname{diam}(A_n)\to 0, \qquad n\to \infty

が成り立つ。仮定により点x∈⋂n∈N≥0Fnx\in\bigcap_{n\in\N}F_nがとれる。ε>0\varepsilon>0に対してdiam⁡(FN)<ε\operatorname{diam}(F_N)<\varepsilonとなるN∈N≥0N\in\Nをとれば、n≥Nn\geq Nのときxn,x∈FNx_n,x\in F_Nであるから、d(xn,x)≤diam⁡(FN)<εd(x_n,x)\leq\operatorname{diam}(F_N)<\varepsilonである。よってxn→xx_n\to xであり、(X,d)(X,d)は完備である。▨

3 部分空間の完備性

補題 3.1.(X,d)(X,d)を距離空間、A⊆XA\subseteq Xとし、dAd_Aを§E2.1 命題 2.2で扱う制限距離とする。AAの点列(an)(a_n)について、(A,dA)(A,d_A)の Cauchy 性と(X,d)(X,d)の Cauchy 性は同値であり、各a∈Aa\in Aへの収束についても二つの空間で同値である。

証明.AAの任意の二点u,vu,vに対してdA(u,v)=d(u,v)d_A(u,v)=d(u,v)である。Cauchy 条件と収束条件はいずれもこの距離による量化された不等式であるから、両側の条件は一致する。▨

定理 3.2.(X,d)(X,d)を完備距離空間、A⊆XA\subseteq Xを閉集合とする。このとき(A,dA)(A,d_A)は完備である。

証明.(an)(a_n)を(A,dA)(A,d_A)の Cauchy 列とする。補題 3.1により(an)(a_n)はXXの Cauchy 列であり、あるa∈Xa\in Xに収束する。AAはXXの閉集合であるから、§E2.3 定理 3.1によりa∈Aa\in Aである。再び同補題を用いれば(A,dA)(A,d_A)においてもan→aa_n\to aとなる。▨

定理 3.3.(X,d)(X,d)を距離空間とし、A⊆XA\subseteq Xが制限距離dAd_Aについて完備であるとする。このときAAはXXの閉集合である。

証明.AAの点からなりXXでxxに収束する点列(an)(a_n)をとる。命題 1.2と補題 3.1により(an)(a_n)は(A,dA)(A,d_A)の Cauchy 列である。完備性からa∈Aa\in Aへ収束し、同補題によりXXでもan→aa_n\to aである。§E2.3 命題 1.3によりx=a∈Ax=a\in Aである。よってAAの点からなる収束列の極限はすべてAAに属し、§E2.3 定理 3.1によりAAは閉集合である。▨

系 3.4. 完備距離空間(X,d)(X,d)の部分集合AAについて、(A,dA)(A,d_A)が完備であることとAAがXXの閉集合であることは同値である。

証明. 閉集合ならば定理 3.2を、完備ならば定理 3.3を適用する。▨

注意 3.5. 周囲の空間の完備性は省けない。X=QX=\mathbb Qは自分自身の閉部分集合であるが、例 6.2が示すとおり完備ではない。

4 完備である空間の例

例 4.1 (実数直線の完備性). 標準距離を入れたR\mathbb Rは、§D1.10 定理 1.1により完備である。

命題 4.2 (Rn\mathbb R^nは完備である).n≥1n\geq1とし、Rn\mathbb R^nに Euclid 距離d2d_2を入れる。この距離空間は完備である。同じことが§E2.1 定義 2.5で定めるd1d_1とd∞d_\inftyにも成り立つ。

証明.(xk)(x_k)をd2d_2の Cauchy 列とし、第ii成分をxk,ix_{k,i}と書く。∣xk,i−xℓ,i∣≤d2(xk,xℓ)|x_{k,i}-x_{\ell,i}|\leq d_2(x_k,x_\ell)であるから、各成分列は実数の Cauchy 列である。§D1.10 定理 1.1によりxi∗=lim⁡kxk,ix_i^*=\lim_kx_{k,i}が存在し、x∗=(x1∗,…,xn∗)x^*=(x_1^*,\ldots,x_n^*)とおく。ε>0\varepsilon>0に対し、各iiについてk≥Nik\geq N_iならば∣xk,i−xi∗∣<ε/n|x_{k,i}-x_i^*|<\varepsilon/\sqrt nとなる。N=max⁡iNiN=\max_iN_iとすればk≥Nk\geq Nでd2(xk,x∗)<(∑i=1nε2/n)1/2=εd_2(x_k,x^*)<\left(\sum_{i=1}^n\varepsilon^2/n\right)^{1/2}=\varepsilonである。§E2.1 公式 4.2で得た評価d∞≤d2≤d1≤nd∞d_\infty\leq d_2\leq d_1\leq nd_\inftyは、三つの距離について Cauchy 性と収束性を互いに移す。▨

命題 4.3 (離散距離は完備である).XXを集合とし、§E2.1 定義 2.3の離散距離δ\deltaを入れる。この距離空間は完備である。

証明は演習とする(問題 7.1)。

5 有界関数空間と一様距離

注意 5.1. 一様距離の有限性には、§D1.4 定義 1.1に続く、空でなく上に有界な実数集合が上限をもつという公理を用いる。

定義 5.2 (有界関数空間と一様距離). 空でない集合SSに対し、有界関数空間 (space of bounded functions)Fb(S)\mathcal F_b(S)を、有界な実数値関数f:S→Rf:S\to\mathbb R全体とする。すなわち、あるM∈RM\in\mathbb Rが存在して全てのs∈Ss\in Sについて∣f(s)∣≤M|f(s)|\leq Mとなる関数を集める。f,g∈Fb(S)f,g\in\mathcal F_b(S)に対し、

d∞(f,g)=sup⁡s∈S∣f(s)−g(s)∣d_\infty(f,g)=\sup_{s\in S}|f(s)-g(s)|

と定め、この量を一様距離 (uniform metric) と呼ぶ。

命題 5.3.定義 5.2で定めたd∞d_\inftyはFb(S)\mathcal F_b(S)上の距離である。

証明.∣f(s)∣≤Mf|f(s)|\leq M_f、∣g(s)∣≤Mg|g(s)|\leq M_gならば∣f(s)−g(s)∣≤Mf+Mg|f(s)-g(s)|\leq M_f+M_gであるから、上限は有限である。d∞(f,g)=0d_\infty(f,g)=0ならば全てのssで0≤∣f(s)−g(s)∣≤00\leq|f(s)-g(s)|\leq0となりf=gf=gである。逆向きと対称律は絶対値から従う。各ssについて∣f(s)−h(s)∣≤d∞(f,g)+d∞(g,h)|f(s)-h(s)|\leq d_\infty(f,g)+d_\infty(g,h)であるから、上限を取れば三角不等式を得る。▨

補題 5.4. 実数列(an)(a_n)がaaに収束し、あるNN以降でL≤an≤UL\leq a_n\leq Uが成り立つとする。このときL≤a≤UL\leq a\leq Uである。

証明.a<La<Lならばε=(L−a)/2\varepsilon=(L-a)/2により十分大きいnnでan<La_n<Lとなり矛盾する。a>Ua>Uも同様に矛盾する。▨

定理 5.5. 空でない集合SSに対し、(Fb(S),d∞)(\mathcal F_b(S),d_\infty)は完備である。

証明.(fn)(f_n)を Cauchy 列とする。s∈Ss\in Sを固定すると∣fm(s)−fn(s)∣≤d∞(fm,fn)|f_m(s)-f_n(s)|\leq d_\infty(f_m,f_n)であるから、(fn(s))(f_n(s))は実数の Cauchy 列である。§D1.10 定理 1.1によりf(s)=lim⁡nfn(s)f(s)=\lim_nf_n(s)と定める。

d∞(fn,fN)<1d_\infty(f_n,f_N)<1となるNNを取る。∣fN(s)∣≤M|f_N(s)|\leq Mならばn≥Nn\geq Nで∣fn(s)∣<M+1|f_n(s)|<M+1である。補題 5.4を各ssに適用して∣f(s)∣≤M+1|f(s)|\leq M+1を得る。

ε>0\varepsilon>0に対して、m,n≥Nm,n\geq Nならばd∞(fm,fn)<ε/2d_\infty(f_m,f_n)<\varepsilon/2とする。m→∞m\to\inftyと補題 5.4により、n≥Nn\geq Nと各ssについて∣fn(s)−f(s)∣≤ε/2|f_n(s)-f(s)|\leq\varepsilon/2である。上限を取ればd∞(fn,f)≤ε/2<εd_\infty(f_n,f)\leq\varepsilon/2<\varepsilonとなる。▨

系 5.6.a<ba<bとし、C([a,b])C([a,b])を[a,b][a,b]上の連続な実数値関数全体とする。C([a,b])C([a,b])はFb([a,b])\mathcal F_b([a,b])の閉部分空間であり、一様距離について完備である。

証明.§D1.13 補題 2.2によりC([a,b])⊆Fb([a,b])C([a,b])\subseteq\mathcal F_b([a,b])である。ffがC([a,b])C([a,b])の閉包に属し、t0∈[a,b]t_0\in[a,b]、ε>0\varepsilon>0を取る。§E2.2 命題 2.6によりd∞(f,g)<ε/3d_\infty(f,g)<\varepsilon/3を満たすg∈C([a,b])g\in C([a,b])を取る。ggの連続性から∣t−t0∣<δ|t-t_0|<\deltaならば∣g(t)−g(t0)∣<ε/3|g(t)-g(t_0)|<\varepsilon/3となるδ>0\delta>0がある。このとき∣f(t)−f(t0)∣≤∣f(t)−g(t)∣+∣g(t)−g(t0)∣+∣g(t0)−f(t0)∣<ε|f(t)-f(t_0)|\leq|f(t)-g(t)|+|g(t)-g(t_0)|+|g(t_0)-f(t_0)|<\varepsilonである。よってC([a,b])C([a,b])は閉集合であり、定理 5.5と定理 3.2により完備である。▨

6 完備でない空間の例

補題 6.1. 任意の非負実数xxに対して、k≤x<k+1k\leq x<k+1を満たす非負整数kkがただ一つ存在する。

証明.§D1.4 命題 2.1によりx<mx<mを満たす正整数mmがあるから、S={m∈Z≥1∣x<m}S=\{m\in\mathbb Z_{\geq1}\mid x<m\}は空でない。SSは自然数からなる集合であるから、§A3.10 定理 2.1に掲げた最小数原理によりSSの最小元をm0m_0とし、k=m0−1k=m_0-1とおく。x<kx<kならばk∈Sk\in Sとなり最小性に反する。二つの整数k<ℓk<\ellが条件を満たせばx<k+1≤ℓ≤xx<k+1\leq\ell\leq xとなるから一意性も従う。▨

例 6.2 (完備でない距離空間). 以下の部分集合にはR\mathbb Rからの制限距離を入れる。

  1. Q\mathbb Qは完備でない。補題 6.1を10n210^n\sqrt2に適用してqn=kn/10nq_n=k_n/10^nとおくと、0≤2−qn<10−n0\leq\sqrt2-q_n<10^{-n}である。10n≥n10^n\geq nは帰納法で成り立つ。§D1.4 命題 2.1によりN>1/εN>1/\varepsilonを取れば、n≥Nn\geq Nで10−n≤1/n≤1/N<ε10^{-n}\leq1/n\leq1/N<\varepsilonとなり、qn→2q_n\to\sqrt2である。命題 1.2と補題 3.1により(qn)(q_n)はQ\mathbb Qの Cauchy 列である。Q\mathbb Qで収束すれば§E2.3 命題 1.3と§A3.7 定理 2.1に矛盾する。
  2. (0,1)(0,1)と(0,1](0,1]は完備でない。xn=1/(n+1)x_n=1/(n+1)はR\mathbb Rで00に収束するので両空間では Cauchy 列である。両空間内の極限を仮定すると、極限の一意性からその極限は00となり、いずれの空間にも属さない。

例 6.3 (完備であるかどうかは入れた距離によって決まる).X=(0,1]X=(0,1]にd(x,y)=∣x−y∣d(x,y)=|x-y|とd′(x,y)=∣1/x−1/y∣d'(x,y)=|1/x-1/y|を入れる。ϕ(x)=1/x\phi(x)=1/xは(X,d′)(X,d')から[1,∞)[1,\infty)への全単射等長写像である。

ddでxn→x∈Xx_n\to x\in Xならば十分大きいnnでxn>x/2x_n>x/2となり、d′(xn,x)<2∣xn−x∣/x2d'(x_n,x)<2|x_n-x|/x^2である。逆にd(xn,x)=d′(xn,x)xnx≤d′(xn,x)d(x_n,x)=d'(x_n,x)x_nx\leq d'(x_n,x)である。さらにd≤d′d\leq d'であり、δ=min⁡{x/2,εx2/2}\delta=\min\{x/2,\varepsilon x^2/2\}に対しd(x,y)<δd(x,y)<\deltaならばd′(x,y)<εd'(x,y)<\varepsilonである。したがって二つの距離は同じ収束列と同じ開集合を与える。

しかし(X,d)(X,d)は前例により非完備である。[1,∞)[1,\infty)はR\mathbb Rの閉部分集合であるから、§D1.10 定理 1.1と定理 3.2により完備である。したがって(X,d′)(X,d')は完備であり、完備性は開集合だけで定まらない。

7 演習

問題 7.1 (離散距離の完備性).命題 4.3の証明を完成させよ。

解答.

Cauchy 列(xn)(x_n)にε=1/2\varepsilon=1/2を適用する。§E2.1 定義 2.3により、十分後の任意の二項の距離が1/21/2より小さいならば両者は等しい。よって、ある番号NN以降のすべての項はxNx_Nに等しく、(xn)(x_n)はxNx_Nへ収束する。▨

問題 7.2 (一様距離における有界性の役割).定義 5.2で関数を有界なものに限らなければ、d∞d_\inftyが実数値として定まらない例を与えよ。

解答.

S=Z≥1S=\mathbb Z_{\geq1}、f(s)=sf(s)=s、g(s)=0g(s)=0とおく。{∣f(s)−g(s)∣∣s∈S}\{|f(s)-g(s)|\mid s\in S\}は上に有界でないため、その上限は実数として存在しない。▨

参考文献

  1. 松坂和夫『集合・位相入門』新装版, 岩波書店, 2018.
  2. James R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000.
  3. Stephen Willard, General Topology, Dover Publications, 2004, originally published 1970.

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