§E21.6米田の補題と表現可能関手

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圏の中では、対象の内部の構造を用いることができず、対象と対象の間の射だけを用いることができる。「極限と余極限」が極限を定義したときも、条件は任意の対象XXからの射の族についての存在と一意性であった。この扱い方が対象をどこまで決めるかを、本記事で確かめる。

局所小圏C\mathcal Cの対象AAに対して、各対象XXへ射の集合Hom⁡C(X,A)\operatorname{Hom}_{\mathcal C}(X, A)を対応させる関手hA:Cop→Seth_A : \mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}を作る。本記事が示すのは次の三つである。第一に、hAh_Aから関手F:Cop→SetF : \mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}への自然変換の全体が、集合F(A)F(A)と全単射に対応する。第二に、対応A↦hAA \mapsto h_Aは関手であり、C\mathcal Cの射の全体を自然変換の全体へ全単射に写す。第三に、関手FFがあるhAh_Aと自然同型であることはF(A)F(A)のただ一つの元によって記述され、その元まで込めた表現は同型を除いて一意である。第二と第三は、いずれも第一から導く。

1 局所小圏と hom 関手

射の全体を集合として扱うために、圏に条件を課す。§E21.1 定義 1.1は射の集まりが集合であることを要求していないので、この条件を改めて定義する。

定義 1.1. 圏C\mathcal Cが局所小 (locally small) であるとは、C\mathcal Cの任意の対象A,BA, Bについて、射の集まりHom⁡C(A,B)\operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, B)が集合であることをいう。局所小である圏を局所小圏 (locally small category) という。

この条件は、各対象の組に対する射の全体だけについてのものである。対象の全体については何も要求していないので、その扱いを先に述べる。

注意 1.2 (本単元における大きさの扱い). 本単元は、対象の全体が集合であるかどうかを問題にしない。集合でない集まりを扱うための語を導入せず、必要な条件はすべて局所小性として仮定に書く。大きさを体系的に管理する方法は「圏論 II」が扱う。

以下、C\mathcal Cを局所小圏とする。対象AAを固定し、各対象へ、AAを終域とする射の集合と、AAを始域とする射の集合を対応させる。

定義 1.3. 局所小圏C\mathcal Cの対象AAに対して、次の二つの対応を定める。

  1. 各対象XXに集合hA(X)=Hom⁡C(X,A)h_A(X) = \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(X, A)を対応させ、C\mathcal Cの各射u:X→Yu : X \to Yに写像 hA(u):Hom⁡C(Y,A)⟶Hom⁡C(X,A),hA(u)(v)=v∘uh_A(u) : \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(Y, A) \longrightarrow \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(X, A), \qquad h_A(u)(v) = v \circ u を対応させる。
  2. 各対象XXに集合hA(X)=Hom⁡C(A,X)h^A(X) = \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, X)を対応させ、C\mathcal Cの各射u:X→Yu : X \to Yに写像 hA(u):Hom⁡C(A,X)⟶Hom⁡C(A,Y),hA(u)(v)=u∘vh^A(u) : \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, X) \longrightarrow \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, Y), \qquad h^A(u)(v) = u \circ v を対応させる。

hAh_AをHom⁡C(−,A)\operatorname{Hom}_{\mathcal C}(-, A)、hAh^AをHom⁡C(A,−)\operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, -)とも書く。

さらに、二つの記号を射に施したものへ次の名前を与える。C\mathcal Cの任意の射v:B→Cv : B \to CとC\mathcal Cの任意の対象ZZについて、上の定義を対象ZZに対して用いて得られる写像

hZ(v):Hom⁡C(Z,B)⟶Hom⁡C(Z,C),hZ(v)(w)=v∘wh^Z(v) : \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(Z, B) \longrightarrow \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(Z, C), \qquad h^Z(v)(w) = v \circ w

をHom⁡(Z,v)\operatorname{Hom}(Z, v)と書き、同じく対象ZZに対して得られる写像

hZ(v):Hom⁡C(C,Z)⟶Hom⁡C(B,Z),hZ(v)(w)=w∘vh_Z(v) : \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(C, Z) \longrightarrow \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(B, Z), \qquad h_Z(v)(w) = w \circ v

をHom⁡(v,Z)\operatorname{Hom}(v, Z)と書く。

二つの記号の向きは異なる。hAh_Aは射u:X→Yu : X \to Yに対してhA(Y)h_A(Y)からhA(X)h_A(X)への写像を与えるので反変であり、hAh^AはhA(X)h^A(X)からhA(Y)h^A(Y)への写像を与えるので共変である。反変であることは、§E21.2 定義 2.2に従って、反対圏Cop\mathcal C^{\mathrm{op}}(§E21.1 定義 5.1)からの関手であることとして述べる。

命題 1.4.C\mathcal Cを局所小圏、AAをその対象とする。定義 1.3のhAh_Aは関手Cop→Set\mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}であり、hAh^Aは関手C→Set\mathcal C \to \mathbf{Set}である。

証明.C\mathcal Cは局所小であるから、各対象XXについてhA(X)h_A(X)とhA(X)h^A(X)は集合である。またv∈Hom⁡(Y,A)v \in \operatorname{Hom}(Y, A)とu:X→Yu : X \to Yに対してv∘u∈Hom⁡(X,A)v \circ u \in \operatorname{Hom}(X, A)であり、v∈Hom⁡(A,X)v \in \operatorname{Hom}(A, X)とu:X→Yu : X \to Yに対してu∘v∈Hom⁡(A,Y)u \circ v \in \operatorname{Hom}(A, Y)であるから、二つの対応の終域の指定は正しい。

§E21.2 命題 2.3により、対応hAh_Aが関手Cop→Set\mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}であることは、C\mathcal Cの任意の対象XXと任意の射u:X→Yu : X \to Y、w:Y→Zw : Y \to Zについて

hA(idX)=idhA(X),hA(w∘u)=hA(u)∘hA(w)h_A(\mathrm{id}_X) = \mathrm{id}_{h_A(X)}, \qquad h_A(w \circ u) = h_A(u) \circ h_A(w)

が成り立つことと同じである。第一の等式は、任意のv∈Hom⁡(X,A)v \in \operatorname{Hom}(X, A)についてhA(idX)(v)=v∘idX=vh_A(\mathrm{id}_X)(v) = v \circ \mathrm{id}_X = vであることから従う。第二の等式は、任意のv∈Hom⁡(Z,A)v \in \operatorname{Hom}(Z, A)について、合成の結合律により

hA(w∘u)(v)=v∘(w∘u)=(v∘w)∘u=hA(u)(hA(w)(v))h_A(w \circ u)(v) = v \circ (w \circ u) = (v \circ w) \circ u = h_A(u)\bigl(h_A(w)(v)\bigr)

が成り立つことから従う。

hAh^Aについても同様に確かめる。任意のv∈Hom⁡(A,X)v \in \operatorname{Hom}(A, X)についてhA(idX)(v)=idX∘v=vh^A(\mathrm{id}_X)(v) = \mathrm{id}_X \circ v = vであるからhA(idX)=idhA(X)h^A(\mathrm{id}_X) = \mathrm{id}_{h^A(X)}である。また任意のv∈Hom⁡(A,X)v \in \operatorname{Hom}(A, X)について

hA(w∘u)(v)=(w∘u)∘v=w∘(u∘v)=hA(w)(hA(u)(v))h^A(w \circ u)(v) = (w \circ u) \circ v = w \circ (u \circ v) = h^A(w)\bigl(h^A(u)(v)\bigr)

であるからhA(w∘u)=hA(w)∘hA(u)h^A(w \circ u) = h^A(w) \circ h^A(u)である。したがってhAh^Aは§E21.2 定義 1.1の意味で関手C→Set\mathcal C \to \mathbf{Set}である。▨

§E21.3 定義 5.1により、関手Cop→Set\mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}を前層といい、前層を対象、自然変換を射とする関手圏[Cop,Set][\mathcal C^{\mathrm{op}}, \mathbf{Set}]を前層の圏という。したがって命題 1.4は、各対象AAが前層hAh_Aを定めることを述べている。

注意 1.5 (自然変換の全体を表す記号). 関手F,G:Cop→SetF, G : \mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}に対して、FFからGGへの自然変換(§E21.3 定義 1.1)の全体をNat⁡(F,G)\operatorname{Nat}(F, G)と書く。自然変換はC\mathcal Cの各対象ごとに写像を与える族であるから、Nat⁡(F,G)\operatorname{Nat}(F, G)が集合であることはC\mathcal Cの局所小性だけからは従わない。本記事が用いるのはF=hAF = h_Aの場合であり、この場合にNat⁡(hA,G)\operatorname{Nat}(h_A, G)が集合であることは定理 2.1から従う。

hom 関手を、二つの対象の間の射が高々一つしかない圏の上で書き下す。この圏ではhah_aの値が空集合か一元集合のいずれかになり、関手性が順序の推移律に対応する。

例 1.6 (前順序集合の圏の hom 関手). 前順序集合(P,≤)(P, \le)を§E21.1 命題 3.1によって圏とみなす。この圏では、x≤yx \le yのときHom⁡(x,y)\operatorname{Hom}(x, y)がただ一つの元からなり、そうでないとき空集合であるから、いずれの場合も集合であり、この圏は局所小である。対象a∈Pa \in Pに対して、x≤ax \le aが成り立つときha(x)=Hom⁡(x,a)h_a(x) = \operatorname{Hom}(x, a)はただ一つの元からなる集合であり、x≤ax \le aが成り立たないときha(x)h_a(x)は空集合である。射u:x→yu : x \to y、すなわちx≤yx \le yに対して写像ha(u):ha(y)→ha(x)h_a(u) : h_a(y) \to h_a(x)が存在することは、y≤ay \le aならば推移律によりx≤ax \le aが成り立つことにほかならない。y≤ay \le aが成り立たないときはha(y)h_a(y)が空集合であり、空集合を始域とする写像はただ一つ存在するので、この場合も条件は満たされる。

2 米田の補題

2.1 証明方針

自然変換η:hA⇒F\eta : h_A \Rightarrow Fは、C\mathcal Cの各対象XXごとに写像ηX:Hom⁡(X,A)→F(X)\eta_X : \operatorname{Hom}(X, A) \to F(X)を与える族であり、対象の個数だけの情報をもつ。これに対してF(A)F(A)は一つの集合である。示すべきことは、この族がF(A)F(A)のただ一つの元から復元されることである。

出発点は、hA(A)=Hom⁡(A,A)h_A(A) = \operatorname{Hom}(A, A)が特別な元idA\mathrm{id}_Aをもつことである。中間目標は、η\etaの値ηX(u)\eta_X(u)が、a=ηA(idA)a = \eta_A(\mathrm{id}_A)と射uuだけからF(u)(a)F(u)(a)として決まることである。本質的な一手は、η\etaの自然性の四角形を射u:X→Au : X \to Aに適用し、Hom⁡(A,A)\operatorname{Hom}(A, A)の元idA\mathrm{id}_Aを代入することである。この代入によって、四角形の一方の道がηX(u)\eta_X(u)となり、他方の道がF(u)(a)F(u)(a)となる。

定理 2.1 (米田の補題).C\mathcal Cを局所小圏、F:Cop→SetF : \mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}を関手、AAをC\mathcal Cの対象とする。このとき

Φ:Nat⁡(hA,F)⟶F(A),Φ(η)=ηA(idA)\Phi : \operatorname{Nat}(h_A, F) \longrightarrow F(A), \qquad \Phi(\eta) = \eta_A(\mathrm{id}_A)

は全単射である。逆写像は、a∈F(A)a \in F(A)に対して、成分が

Ψ(a)X:Hom⁡C(X,A)⟶F(X),Ψ(a)X(u)=F(u)(a)\Psi(a)_X : \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(X, A) \longrightarrow F(X), \qquad \Psi(a)_X(u) = F(u)(a)

で与えられる自然変換Ψ(a):hA⇒F\Psi(a) : h_A \Rightarrow Fを対応させる写像Ψ:F(A)→Nat⁡(hA,F)\Psi : F(A) \to \operatorname{Nat}(h_A, F)である。とくにNat⁡(hA,F)\operatorname{Nat}(h_A, F)は集合である。

証明. 三段に分ける。第一段でΨ(a)\Psi(a)が自然変換であることを示し、第二段でΦ∘Ψ\Phi \circ \Psiが恒等写像であることを示し、第三段でΨ∘Φ\Psi \circ \Phiが恒等写像であることを示す。

第一段。a∈F(A)a \in F(A)を固定する。各対象XXについて、u∈Hom⁡(X,A)u \in \operatorname{Hom}(X, A)に対してF(u):F(A)→F(X)F(u) : F(A) \to F(X)であるからF(u)(a)∈F(X)F(u)(a) \in F(X)であり、Ψ(a)X\Psi(a)_Xは写像hA(X)→F(X)h_A(X) \to F(X)である。C\mathcal Cの射u:X→Yu : X \to Yをとる。hAh_AとFFはともにCop\mathcal C^{\mathrm{op}}からの関手であるから、示すべき自然性の四角形は

Ψ(a)X∘hA(u)=F(u)∘Ψ(a)Y\Psi(a)_X \circ h_A(u) = F(u) \circ \Psi(a)_Y

であり、両辺はhA(Y)=Hom⁡(Y,A)h_A(Y) = \operatorname{Hom}(Y, A)からF(X)F(X)への写像である。v∈Hom⁡(Y,A)v \in \operatorname{Hom}(Y, A)をとると、左辺は

Ψ(a)X(hA(u)(v))=Ψ(a)X(v∘u)=F(v∘u)(a)\Psi(a)_X\bigl(h_A(u)(v)\bigr) = \Psi(a)_X(v \circ u) = F(v \circ u)(a)

であり、右辺は

F(u)(Ψ(a)Y(v))=F(u)(F(v)(a))=(F(u)∘F(v))(a)F(u)\bigl(\Psi(a)_Y(v)\bigr) = F(u)\bigl(F(v)(a)\bigr) = \bigl(F(u) \circ F(v)\bigr)(a)

である。§E21.2 命題 2.3により、FFがCop\mathcal C^{\mathrm{op}}からの関手であることはF(v∘u)=F(u)∘F(v)F(v \circ u) = F(u) \circ F(v)を意味する。したがって両辺は一致し、Ψ(a)\Psi(a)は自然変換hA⇒Fh_A \Rightarrow Fである。

第二段。a∈F(A)a \in F(A)をとる。FFが関手であることからF(idA)=idF(A)F(\mathrm{id}_A) = \mathrm{id}_{F(A)}であるから

Φ(Ψ(a))=Ψ(a)A(idA)=F(idA)(a)=a\Phi\bigl(\Psi(a)\bigr) = \Psi(a)_A(\mathrm{id}_A) = F(\mathrm{id}_A)(a) = a

である。ゆえにΦ∘Ψ=idF(A)\Phi \circ \Psi = \mathrm{id}_{F(A)}である。

第三段。η∈Nat⁡(hA,F)\eta \in \operatorname{Nat}(h_A, F)をとり、a=Φ(η)=ηA(idA)a = \Phi(\eta) = \eta_A(\mathrm{id}_A)とおく。C\mathcal Cの対象XXと射u:X→Au : X \to Aを任意にとる。η\etaの自然性の四角形を射u:X→Au : X \to Aに適用すると

ηX∘hA(u)=F(u)∘ηA\eta_X \circ h_A(u) = F(u) \circ \eta_A

であり、両辺はhA(A)=Hom⁡(A,A)h_A(A) = \operatorname{Hom}(A, A)からF(X)F(X)への写像である。この等式の両辺をidA\mathrm{id}_Aで評価する。左辺は

ηX(hA(u)(idA))=ηX(idA∘u)=ηX(u)\eta_X\bigl(h_A(u)(\mathrm{id}_A)\bigr) = \eta_X(\mathrm{id}_A \circ u) = \eta_X(u)

であり、右辺は

F(u)(ηA(idA))=F(u)(a)=Ψ(a)X(u)F(u)\bigl(\eta_A(\mathrm{id}_A)\bigr) = F(u)(a) = \Psi(a)_X(u)

である。XXとuuは任意であったから、すべての対象XXについてηX=Ψ(a)X\eta_X = \Psi(a)_Xであり、η=Ψ(Φ(η))\eta = \Psi(\Phi(\eta))である。ゆえにΨ∘Φ=idNat⁡(hA,F)\Psi \circ \Phi = \mathrm{id}_{\operatorname{Nat}(h_A, F)}である。

第二段と第三段によりΦ\PhiとΨ\Psiは互いに逆であるから、Φ\Phiは全単射である。とくにNat⁡(hA,F)\operatorname{Nat}(h_A, F)は集合F(A)F(A)と全単射に対応するので集合である。▨

証明が用いた仮定は、C\mathcal Cが局所小であること、FFがCop\mathcal C^{\mathrm{op}}からの関手であること、およびη\etaが自然であることの三つだけである。FFに他の条件を課していないので、FFをhBh_Bに取り替えることもできる。この特別な場合が次の節の主題である。

例 2.2 (有限な圏における米田の補題の確認).P={0,1}P = \{0, 1\}に0≤10 \le 1で定まる順序を入れ、§E21.1 命題 3.1により圏C\mathcal Cとみなす。00から11への射をuuと書くと、C\mathcal Cの射はid0\mathrm{id}_0、id1\mathrm{id}_1、uuの三つである。

A=1A = 1ととるとh1(0)=Hom⁡(0,1)={u}h_1(0) = \operatorname{Hom}(0, 1) = \{u\}、h1(1)=Hom⁡(1,1)={id1}h_1(1) = \operatorname{Hom}(1, 1) = \{\mathrm{id}_1\}である。関手F:Cop→SetF : \mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}を、F(1)={a,b}F(1) = \{a, b\}、F(0)={c}F(0) = \{c\}、F(u):F(1)→F(0)F(u) : F(1) \to F(0)を唯一の写像として定める。定理 2.1はNat⁡(h1,F)\operatorname{Nat}(h_1, F)とF(1)F(1)が全単射に対応することを述べるので、自然変換の個数は22でなければならない。

実際に数える。自然変換η:h1⇒F\eta : h_1 \Rightarrow Fは、写像η1:{id1}→{a,b}\eta_1 : \{\mathrm{id}_1\} \to \{a, b\}とη0:{u}→{c}\eta_0 : \{u\} \to \{c\}の組である。η0\eta_0は終域が一元集合であるから一通りに定まる。射uuについての自然性の四角形はη0∘h1(u)=F(u)∘η1\eta_0 \circ h_1(u) = F(u) \circ \eta_1であり、両辺をid1\mathrm{id}_1で評価すると、左辺はη0(id1∘u)=η0(u)=c\eta_0(\mathrm{id}_1 \circ u) = \eta_0(u) = c、右辺はF(u)(η1(id1))=cF(u)(\eta_1(\mathrm{id}_1)) = cである。したがって自然性はη1\eta_1の選び方によらず成り立つ。ゆえに自然変換はη1(id1)=a\eta_1(\mathrm{id}_1) = aのものとη1(id1)=b\eta_1(\mathrm{id}_1) = bのものの二つであり、∣F(1)∣=2|F(1)| = 2と一致する。

3 米田埋め込み

FFとしてhBh_Bをとると、定理 2.1のΨ\PsiはHom⁡(A,B)\operatorname{Hom}(A, B)の元から自然変換hA⇒hBh_A \Rightarrow h_Bを作る。この対応に名前を与える。

定義 3.1. 局所小圏C\mathcal Cに対して、対応yyを次で定める。

  1. 各対象AAに前層y(A)=hAy(A) = h_Aを対応させる。
  2. 各射f:A→Bf : A \to Bに、成分が y(f)X:Hom⁡C(X,A)⟶Hom⁡C(X,B),y(f)X(u)=f∘uy(f)_X : \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(X, A) \longrightarrow \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(X, B), \qquad y(f)_X(u) = f \circ u で与えられる族y(f)y(f)を対応させる。

y(f)y(f)が自然変換hA⇒hBh_A \Rightarrow h_Bであることは、改めて確かめる必要がない。定理 2.1をF=hBF = h_B、a=f∈hB(A)=Hom⁡(A,B)a = f \in h_B(A) = \operatorname{Hom}(A, B)に対して用いると、Ψ(f)\Psi(f)は自然変換であり、その成分は

Ψ(f)X(u)=hB(u)(f)=f∘u\Psi(f)_X(u) = h_B(u)(f) = f \circ u

であるからΨ(f)=y(f)\Psi(f) = y(f)である。

米田の補題の全単射Φ\Phiは、対象AAと関手FFの二つの変数をもつ。これらを動かしたときの振る舞いを述べる。以下では、自然変換の垂直合成(§E21.3 命題 1.3)を記号∘\circで書く。垂直合成は関手圏[Cop,Set][\mathcal C^{\mathrm{op}}, \mathbf{Set}]の合成であり(§E21.3 定義 4.1)、本記事は圏の合成をつねに∘\circで書くからである。§E21.3 命題 1.3は同じ演算を並置θη\theta\etaで書いているので、演算は同じで記号だけが異なる。

命題 3.2.C\mathcal Cを局所小圏とし、F,F′:Cop→SetF, F' : \mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}を関手とする。定理 2.1の全単射を、変数を明示してΦA,F:Nat⁡(hA,F)→F(A)\Phi_{A, F} : \operatorname{Nat}(h_A, F) \to F(A)と書く。

  1. C\mathcal Cの射f:A→Bf : A \to Bと自然変換η∈Nat⁡(hB,F)\eta \in \operatorname{Nat}(h_B, F)について ΦA,F(η∘y(f))=F(f)(ΦB,F(η))\Phi_{A, F}\bigl(\eta \circ y(f)\bigr) = F(f)\bigl(\Phi_{B, F}(\eta)\bigr) が成り立つ。ここでy(f)y(f)は定義 3.1の自然変換であり、η∘y(f)\eta \circ y(f)はその垂直合成である。
  2. 自然変換θ:F⇒F′\theta : F \Rightarrow F'と自然変換η∈Nat⁡(hA,F)\eta \in \operatorname{Nat}(h_A, F)について ΦA,F′(θ∘η)=θA(ΦA,F(η))\Phi_{A, F'}(\theta \circ \eta) = \theta_A\bigl(\Phi_{A, F}(\eta)\bigr) が成り立つ。

証明.(1)を示す。垂直合成の成分は(η∘y(f))A=ηA∘y(f)A(\eta \circ y(f))_A = \eta_A \circ y(f)_Aであるから、左辺は

ΦA,F(η∘y(f))=ηA(y(f)A(idA))=ηA(f∘idA)=ηA(f)\Phi_{A, F}\bigl(\eta \circ y(f)\bigr) = \eta_A\bigl(y(f)_A(\mathrm{id}_A)\bigr) = \eta_A(f \circ \mathrm{id}_A) = \eta_A(f)

である。右辺を計算する。η:hB⇒F\eta : h_B \Rightarrow Fの自然性の四角形を射f:A→Bf : A \to Bに適用すると

ηA∘hB(f)=F(f)∘ηB\eta_A \circ h_B(f) = F(f) \circ \eta_B

であり、両辺はhB(B)=Hom⁡(B,B)h_B(B) = \operatorname{Hom}(B, B)からF(A)F(A)への写像である。両辺をidB\mathrm{id}_Bで評価すると、左辺は

ηA(hB(f)(idB))=ηA(idB∘f)=ηA(f)\eta_A\bigl(h_B(f)(\mathrm{id}_B)\bigr) = \eta_A(\mathrm{id}_B \circ f) = \eta_A(f)

であり、右辺はF(f)(ηB(idB))=F(f)(ΦB,F(η))F(f)(\eta_B(\mathrm{id}_B)) = F(f)(\Phi_{B, F}(\eta))である。したがって

ΦA,F(η∘y(f))=ηA(f)=F(f)(ΦB,F(η))\Phi_{A, F}\bigl(\eta \circ y(f)\bigr) = \eta_A(f) = F(f)\bigl(\Phi_{B, F}(\eta)\bigr)

が成り立つ。

(2)を示す。垂直合成の成分は(θ∘η)A=θA∘ηA(\theta \circ \eta)_A = \theta_A \circ \eta_Aであるから

ΦA,F′(θ∘η)=(θ∘η)A(idA)=θA(ηA(idA))=θA(ΦA,F(η))\Phi_{A, F'}(\theta \circ \eta) = (\theta \circ \eta)_A(\mathrm{id}_A) = \theta_A\bigl(\eta_A(\mathrm{id}_A)\bigr) = \theta_A\bigl(\Phi_{A, F}(\eta)\bigr)

である。▨

1 は、FFを固定して対応A↦Nat⁡(hA,F)A \mapsto \operatorname{Nat}(h_A, F)とA↦F(A)A \mapsto F(A)をともにCop\mathcal C^{\mathrm{op}}からSet\mathbf{Set}への関手とみなしたとき、Φ\Phiの成分が自然変換をなすことを述べている。前者が関手であることは、次の節で示すyyの関手性(定理 3.4)から従う。実際、C\mathcal Cの射f:A→Bf : A \to Bに写像η↦η∘y(f)\eta \mapsto \eta \circ y(f)を対応させると、y(idA)y(\mathrm{id}_A)が恒等自然変換であることからη↦η∘y(idA)\eta \mapsto \eta \circ y(\mathrm{id}_A)は恒等写像であり、f:A→Bf : A \to Bとg:B→Cg : B \to Cについてy(g∘f)=y(g)∘y(f)y(g \circ f) = y(g) \circ y(f)と垂直合成の結合律からη↦η∘y(g∘f)\eta \mapsto \eta \circ y(g \circ f)は二つの対応の合成に一致する。値が集合であることは定理 2.1による。定理 3.4の証明は本命題を用いないので、循環は生じない。2 は、AAを固定してFFを動かしたときの同じ主張である。1 の証明が用いたのはη\etaの自然性の四角形だけであり、2 の証明が用いたのは垂直合成の定義だけである。

次に、関手が射の全体をどのように写すかについての語を定める。この語は、米田埋め込みがC\mathcal Cの射の全体と自然変換の全体をどこまで一致させるかを述べるために用いる。

定義 3.3. 関手G:C→DG : \mathcal C \to \mathcal DとC\mathcal Cの対象の組(A,B)(A, B)について、Hom⁡C(A,B)\operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, B)とHom⁡D(G(A),G(B))\operatorname{Hom}_{\mathcal D}(G(A), G(B))がともに集合であるとき、GGは写像

GA,B:Hom⁡C(A,B)⟶Hom⁡D(G(A),G(B)),GA,B(f)=G(f)G_{A, B} : \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, B) \longrightarrow \operatorname{Hom}_{\mathcal D}\bigl(G(A), G(B)\bigr), \qquad G_{A, B}(f) = G(f)

を定める。すべての対象の組についてこの写像が定まり、かつ単射であるとき、GGは忠実 (faithful) であるという。すべての組についてこの写像が定まり、かつ全射であるとき、GGは充満 (full) であるという。忠実かつ充満であるとき、GGは充満忠実 (fully faithful) であるという。

米田の補題をF=hBF = h_Bの場合に用いると、Nat⁡(hA,hB)\operatorname{Nat}(h_A, h_B)がhB(A)=Hom⁡C(A,B)h_B(A) = \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, B)と全単射に対応する。この特別な場合が、yyについての次の定理である。すなわち、C\mathcal Cの射の全体と、対応する前層の間の自然変換の全体とが、yyによって過不足なく対応する。

定理 3.4.C\mathcal Cを局所小圏とする。定義 3.1の対応yyは関手

y:C⟶[Cop,Set]y : \mathcal C \longrightarrow [\mathcal C^{\mathrm{op}}, \mathbf{Set}]

であり、充満忠実である。すなわち、C\mathcal Cの任意の対象A,BA, Bについて

yA,B:Hom⁡C(A,B)⟶Nat⁡(hA,hB),yA,B(f)=y(f)y_{A, B} : \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, B) \longrightarrow \operatorname{Nat}(h_A, h_B), \qquad y_{A, B}(f) = y(f)

は全単射である。

証明.yyが関手であることを示す。§E21.3 定義 4.1により、関手圏[Cop,Set][\mathcal C^{\mathrm{op}}, \mathbf{Set}]の合成は垂直合成であり、対象hAh_Aの恒等射は恒等自然変換idhA\mathrm{id}_{h_A}(§E21.3 命題 1.2)である。任意の対象XXと任意のu∈Hom⁡(X,A)u \in \operatorname{Hom}(X, A)について

y(idA)X(u)=idA∘u=uy(\mathrm{id}_A)_X(u) = \mathrm{id}_A \circ u = u

であるからy(idA)y(\mathrm{id}_A)はhAh_Aの恒等射である。またf:A→Bf : A \to B、g:B→Cg : B \to Cとu∈Hom⁡(X,A)u \in \operatorname{Hom}(X, A)について、合成の結合律により

y(g∘f)X(u)=(g∘f)∘u=g∘(f∘u)=y(g)X(y(f)X(u))y(g \circ f)_X(u) = (g \circ f) \circ u = g \circ (f \circ u) = y(g)_X\bigl(y(f)_X(u)\bigr)

であるから、垂直合成の定義(§E21.3 命題 1.3)によりy(g∘f)=y(g)∘y(f)y(g \circ f) = y(g) \circ y(f)である。ゆえにyyは関手である。

充満忠実性を示す。A,BA, BをC\mathcal Cの対象とする。定理 2.1をF=hBF = h_Bに対して適用すると、

ΦA,hB:Nat⁡(hA,hB)⟶hB(A)=Hom⁡C(A,B)\Phi_{A, h_B} : \operatorname{Nat}(h_A, h_B) \longrightarrow h_B(A) = \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, B)

は全単射であり、その逆写像はΨ\Psiである。とくにNat⁡(hA,hB)\operatorname{Nat}(h_A, h_B)は集合であるから、定義 3.3の意味で写像yA,By_{A, B}が定まる。f∈Hom⁡C(A,B)f \in \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, B)に対して、既に確かめたとおりΨ(f)=y(f)\Psi(f) = y(f)であるからΨ=yA,B\Psi = y_{A, B}である。全単射の逆写像は全単射であるから、yA,By_{A, B}は全単射である。yA,By_{A, B}は単射であるからyyは忠実であり、全射であるからyyは充満である。▨

忠実であることが単射性、充満であることが全射性である。全単射であることは両方をまとめたものであり、「C\mathcal Cの射A→BA \to Bと自然変換hA⇒hBh_A \Rightarrow h_Bが過不足なく対応する」ことを述べている。この対応から、対象そのものの同型についての主張が従う。

系 3.5.C\mathcal Cを局所小圏、A,BA, Bをその対象とする。自然同型α:hA⇒hB\alpha : h_A \Rightarrow h_Bが存在するならば、α=y(f)\alpha = y(f)を満たす射f:A→Bf : A \to Bがただ一つ存在し、そのffは同型射である。とくにA≅BA \cong Bである。逆に、同型射f:A→Bf : A \to Bが存在すればy(f)y(f)は自然同型である。

証明.α:hA⇒hB\alpha : h_A \Rightarrow h_Bを自然同型とする。§E21.3 定義 1.1により、α\alphaのすべての成分αX\alpha_XはSet\mathbf{Set}の同型射であり、§E21.1 命題 6.4により、これはαX\alpha_Xが全単射であることと同じである。

定理 3.4によりyA,By_{A, B}は全単射であるから、α=y(f)\alpha = y(f)を満たすf∈Hom⁡C(A,B)f \in \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, B)がただ一つ存在する。このffが同型射であることを示す。

成分y(f)B:Hom⁡(B,A)→Hom⁡(B,B)y(f)_B : \operatorname{Hom}(B, A) \to \operatorname{Hom}(B, B)は全射であるから、y(f)B(g)=f∘g=idBy(f)_B(g) = f \circ g = \mathrm{id}_Bを満たすg:B→Ag : B \to Aが存在する。このggについて、合成の結合律と単位律により

y(f)A(g∘f)=f∘(g∘f)=(f∘g)∘f=idB∘f=f=f∘idA=y(f)A(idA)y(f)_A(g \circ f) = f \circ (g \circ f) = (f \circ g) \circ f = \mathrm{id}_B \circ f = f = f \circ \mathrm{id}_A = y(f)_A(\mathrm{id}_A)

が成り立つ。成分y(f)A:Hom⁡(A,A)→Hom⁡(A,B)y(f)_A : \operatorname{Hom}(A, A) \to \operatorname{Hom}(A, B)は単射であるからg∘f=idAg \circ f = \mathrm{id}_Aである。f∘g=idBf \circ g = \mathrm{id}_Bと合わせて、§E21.1 定義 6.1によりffは同型射である。

逆を示す。f:A→Bf : A \to Bを同型射、f−1f^{-1}をその逆射とする。yyが関手であることから

y(f)∘y(f−1)=y(f∘f−1)=y(idB),y(f−1)∘y(f)=y(f−1∘f)=y(idA)y(f) \circ y(f^{-1}) = y(f \circ f^{-1}) = y(\mathrm{id}_B), \qquad y(f^{-1}) \circ y(f) = y(f^{-1} \circ f) = y(\mathrm{id}_A)

であり、右辺はそれぞれhBh_BとhAh_Aの恒等自然変換である。成分をとると、各対象XXについてy(f)Xy(f)_Xは逆写像y(f−1)Xy(f^{-1})_Xをもつので全単射であり、Set\mathbf{Set}の同型射である。ゆえにy(f)y(f)は自然同型である。▨

ここまでは前層、すなわち反変な関手だけを扱った。共変な関手についての形は、圏をCop\mathcal C^{\mathrm{op}}に取り替えれば同じ主張から得られるので、証明を別に書く必要がない。

注意 3.6 (共変の形).定理 2.1を圏Cop\mathcal C^{\mathrm{op}}に対して適用する。§E21.1 命題 5.2により(Cop)op=C(\mathcal C^{\mathrm{op}})^{\mathrm{op}} = \mathcal Cであり、Cop\mathcal C^{\mathrm{op}}の対象AAに対する hom 関手は

Hom⁡Cop(−,A)=Hom⁡C(A,−)=hA\operatorname{Hom}_{\mathcal C^{\mathrm{op}}}(-, A) = \operatorname{Hom}_{\mathcal C}(A, -) = h^A

である。したがって、局所小圏C\mathcal C、関手G:C→SetG : \mathcal C \to \mathbf{Set}および対象AAについて、

Φ:Nat⁡(hA,G)⟶G(A),Φ(η)=ηA(idA)\Phi : \operatorname{Nat}(h^A, G) \longrightarrow G(A), \qquad \Phi(\eta) = \eta_A(\mathrm{id}_A)

は全単射であり、その逆写像はa∈G(A)a \in G(A)に対してΨ(a)X(u)=G(u)(a)\Psi(a)_X(u) = G(u)(a)(u:A→Xu : A \to X)で定まる自然変換を与える。この主張は定理 2.1を圏を取り替えて読んだものであるから、証明を繰り返さない。

4 表現可能関手と普遍元

hAh_Aの形をした前層は、対象AAから作られる。逆に、与えられた前層がこの形に表されるかどうかを問うことができる。

定義 4.1.C\mathcal Cを局所小圏、F:Cop→SetF : \mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}を関手とする。C\mathcal Cの対象AAと自然同型α:hA⇒F\alpha : h_A \Rightarrow Fの組(A,α)(A, \alpha)が存在するとき、FFは表現可能 (representable) であるという。この組(A,α)(A, \alpha)をFFの表現 (representation) といい、AAを表現対象 (representing object) という。

共変関手G:C→SetG : \mathcal C \to \mathbf{Set}についても、注意 3.6に従って、自然同型hA⇒Gh^A \Rightarrow Gが存在するときにGGは表現可能であるという。

米田の補題は、hAh_AからFFへの自然変換をF(A)F(A)の元によって記述する。表現とは、そのうち自然同型であるものである。したがって、表現がどの元に対応するかを条件として書き下すことができる。

定理 4.2.C\mathcal Cを局所小圏、F:Cop→SetF : \mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}を関手、AAをC\mathcal Cの対象とする。F(A)F(A)の元aaについて、次の二つは同値である。

  1. 定理 2.1のΨ(a):hA⇒F\Psi(a) : h_A \Rightarrow Fは自然同型である。すなわち(A,Ψ(a))(A, \Psi(a))はFFの表現である。
  2. C\mathcal Cの任意の対象XXと任意の元x∈F(X)x \in F(X)に対して、F(u)(a)=xF(u)(a) = xを満たす射u:X→Au : X \to Aがただ一つ存在する。

この条件を満たすaaを、表現(A,Ψ(a))(A, \Psi(a))の普遍元という。AAを表現対象とするFFの表現の全体と、(2)を満たすF(A)F(A)の元の全体は、定理 2.1のΦ\PhiとΨ\Psiによって互いに全単射に対応する。

証明.§E21.3 定義 1.1により、自然変換Ψ(a)\Psi(a)が自然同型であることは、すべての対象XXについて成分Ψ(a)X\Psi(a)_XがSet\mathbf{Set}の同型射であることと同じであり、§E21.1 命題 6.4により、これはすべてのXXについてΨ(a)X\Psi(a)_Xが全単射であることと同じである。

対象XXを固定する。Ψ(a)X:Hom⁡(X,A)→F(X)\Psi(a)_X : \operatorname{Hom}(X, A) \to F(X)はuuをF(u)(a)F(u)(a)へ写す写像であるから、Ψ(a)X\Psi(a)_Xが全単射であることは、任意のx∈F(X)x \in F(X)に対してF(u)(a)=xF(u)(a) = xを満たすu∈Hom⁡(X,A)u \in \operatorname{Hom}(X, A)がただ一つ存在することと同じである。すべてのXXについて量化すると、(1)⇔\Leftrightarrow(2)が得られる。

最後の主張を示す。定理 2.1によりΦ\PhiとΨ\Psiは互いに逆な全単射である。いま示した同値は、Ψ\Psiによる対応のもとで、(2)を満たす元の全体が、AAを表現対象とする表現の全体、すなわち自然同型hA⇒Fh_A \Rightarrow Fの全体へ写ることを述べている。全単射をこの二つの部分へ制限したものは、ふたたび全単射である。▨

表現対象は一つに定まるとは限らないが、同型を除いて一つに定まる。しかも、普遍元を対応させる同型射は一意である。

系 4.3.C\mathcal Cを局所小圏、F:Cop→SetF : \mathcal C^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}を関手とし、AAとBBをC\mathcal Cの対象とする。元a∈F(A)a \in F(A)と元b∈F(B)b \in F(B)がともに定理 4.2 (2)を満たすとする。このとき、

F(t)(b)=aF(t)(b) = a

を満たす射t:A→Bt : A \to Bがただ一つ存在し、そのttは同型射である。さらにΨ(a)=Ψ(b)∘y(t)\Psi(a) = \Psi(b) \circ y(t)が成り立つ。

証明.bbが定理 4.2 (2)を満たすことを、X=AX = Aとx=a∈F(A)x = a \in F(A)に対して用いる。F(t)(b)=aF(t)(b) = aを満たす射t:A→Bt : A \to Bがただ一つ存在する。同様に、aaが定理 4.2 (2)を満たすことをX=BX = Bとx=b∈F(B)x = b \in F(B)に対して用いると、F(s)(a)=bF(s)(a) = bを満たす射s:B→As : B \to Aがただ一つ存在する。

ttが同型射であることを示す。s:B→As : B \to Aとt:A→Bt : A \to Bの合成t∘s:B→Bt \circ s : B \to Bについて、FFがCop\mathcal C^{\mathrm{op}}からの関手であることによりF(t∘s)=F(s)∘F(t)F(t \circ s) = F(s) \circ F(t)であるから

F(t∘s)(b)=F(s)(F(t)(b))=F(s)(a)=b=F(idB)(b)F(t \circ s)(b) = F(s)\bigl(F(t)(b)\bigr) = F(s)(a) = b = F(\mathrm{id}_B)(b)

である。ここでbbに対する定理 4.2 (2)をX=BX = Bとx=bx = bに対して用いると、F(u)(b)=bF(u)(b) = bを満たすu:B→Bu : B \to Bはただ一つであるからt∘s=idBt \circ s = \mathrm{id}_Bである。同様にs∘t:A→As \circ t : A \to Aについて

F(s∘t)(a)=F(t)(F(s)(a))=F(t)(b)=a=F(idA)(a)F(s \circ t)(a) = F(t)\bigl(F(s)(a)\bigr) = F(t)(b) = a = F(\mathrm{id}_A)(a)

であり、aaに対する定理 4.2 (2)の一意性からs∘t=idAs \circ t = \mathrm{id}_Aである。ゆえにttは同型射であり、その逆射はssである。

最後の等式を示す。命題 3.2 (1)をf=tf = t、η=Ψ(b)\eta = \Psi(b)に対して用いると

ΦA,F(Ψ(b)∘y(t))=F(t)(ΦB,F(Ψ(b)))=F(t)(b)=a\Phi_{A, F}\bigl(\Psi(b) \circ y(t)\bigr) = F(t)\bigl(\Phi_{B, F}(\Psi(b))\bigr) = F(t)(b) = a

である。一方ΦA,F(Ψ(a))=a\Phi_{A, F}(\Psi(a)) = aであり、定理 2.1によりΦA,F\Phi_{A, F}は全単射であるからΨ(b)∘y(t)=Ψ(a)\Psi(b) \circ y(t) = \Psi(a)である。▨

5 表現可能関手の例

二つの例で、表現対象と普遍元を明示し、定理 4.2の条件を直接確かめる。第一の例は共変関手、第二の例は反変関手である。

例 5.1 (忘却関手はZ\mathbb Zで表現される). 群と群準同型のなす圏Grp\mathbf{Grp}(§E21.1 例 2.2)をとり、U:Grp→SetU : \mathbf{Grp} \to \mathbf{Set}を忘却関手(§E21.2 命題 3.1)とする。すなわちUUは、群GGにその台集合を、群準同型にそれを写像とみなしたものを対応させる。UUは表現可能であり、表現対象は加法群Z\mathbb Z、普遍元は1∈U(Z)1 \in U(\mathbb Z)である。

注意 3.6により、示すべきことは、各群GGについて

Ψ(1)G:Hom⁡Grp(Z,G)⟶U(G),Ψ(1)G(φ)=U(φ)(1)=φ(1)\Psi(1)_G : \operatorname{Hom}_{\mathbf{Grp}}(\mathbb Z, G) \longrightarrow U(G), \qquad \Psi(1)_G(\varphi) = U(\varphi)(1) = \varphi(1)

が全単射であることである。

単射性を示す。群準同型φ:Z→G\varphi : \mathbb Z \to Gは、任意のn∈Zn \in \mathbb Zについてφ(n)=φ(1)n\varphi(n) = \varphi(1)^nを満たす。実際、φ(0)\varphi(0)はGGの単位元であり、n≥0n \ge 0についてはφ(n+1)=φ(n)φ(1)\varphi(n + 1) = \varphi(n)\varphi(1)からnnについての帰納法によってφ(n)=φ(1)n\varphi(n) = \varphi(1)^nが従う。n<0n < 0のときはm=−nm = -nとおくとm>0m > 0であり、φ(n)φ(m)=φ(n+m)=φ(0)\varphi(n)\varphi(m) = \varphi(n + m) = \varphi(0)であるから

φ(n)=φ(m)−1=(φ(1)m)−1=φ(1)−m=φ(1)n\varphi(n) = \varphi(m)^{-1} = \bigl(\varphi(1)^m\bigr)^{-1} = \varphi(1)^{-m} = \varphi(1)^n

である。したがってφ(1)\varphi(1)が定まればφ\varphiが定まる。

全射性を示す。g∈U(G)g \in U(G)をとり、φg(n)=gn\varphi_g(n) = g^nと定める。整数のべきについての等式gm+n=gmgng^{m+n} = g^m g^nによりφg\varphi_gは群準同型であり、φg(1)=g\varphi_g(1) = gである。

ゆえにΨ(1)G\Psi(1)_Gは全単射であり、Ψ(1)\Psi(1)は自然同型hZ⇒Uh^{\mathbb Z} \Rightarrow Uである。この事実は、Z\mathbb Zが一つの元で生成される自由群であることの言い換えである。自由群とその普遍性は「群論入門」が扱う。

次の例は反変関手の場合であり、普遍元が部分集合として具体的に定まる。

例 5.2 (べき集合関手は二元集合で表現される).§E21.2 命題 3.2の反変関手P∗:Setop→Set\mathcal P^* : \mathbf{Set}^{\mathrm{op}} \to \mathbf{Set}をとる。これは集合XXにその部分集合の全体P(X)\mathcal P(X)を対応させ、写像u:X→Yu : X \to Yに逆像をとる写像

P∗(u):P(Y)⟶P(X),P∗(u)(S)=u−1(S)\mathcal P^*(u) : \mathcal P(Y) \longrightarrow \mathcal P(X), \qquad \mathcal P^*(u)(S) = u^{-1}(S)

を対応させる関手である(逆像の定義は§E1.1 定義 4.1)。

2={0,1}2 = \{0, 1\}とおく。P∗\mathcal P^*は表現可能であり、表現対象は22、普遍元は{1}∈P(2)\{1\} \in \mathcal P(2)である。示すべきことは、各集合XXについて

Ψ({1})X:Hom⁡Set(X,2)⟶P(X),Ψ({1})X(u)=P∗(u)({1})=u−1({1})\Psi(\{1\})_X : \operatorname{Hom}_{\mathbf{Set}}(X, 2) \longrightarrow \mathcal P(X), \qquad \Psi(\{1\})_X(u) = \mathcal P^*(u)(\{1\}) = u^{-1}(\{1\})

が全単射であることである。

全射性を示す。S⊆XS \subseteq Xに対してχS:X→2\chi_S : X \to 2を、x∈Sx \in SのときχS(x)=1\chi_S(x) = 1、そうでないときχS(x)=0\chi_S(x) = 0と定めるとχS−1({1})=S\chi_S^{-1}(\{1\}) = Sである。

単射性を示す。u,v:X→2u, v : X \to 2がu−1({1})=v−1({1})u^{-1}(\{1\}) = v^{-1}(\{1\})を満たすとする。任意のx∈Xx \in Xについて

u(x)=1  ⟺  x∈u−1({1})=v−1({1})  ⟺  v(x)=1u(x) = 1 \iff x \in u^{-1}(\{1\}) = v^{-1}(\{1\}) \iff v(x) = 1

である。u(x)u(x)とv(x)v(x)は{0,1}\{0, 1\}の元であるから、u(x)=1u(x) = 1とv(x)=1v(x) = 1が同値であることからu(x)=v(x)u(x) = v(x)が従う。ゆえにu=vu = vである。

したがってΨ({1})\Psi(\{1\})は自然同型h2⇒P∗h_2 \Rightarrow \mathcal P^*であり、P∗\mathcal P^*は22によって表現される。

6 演習

問題 6.1.

  1. 定理 2.1の証明の第三段が、η\etaの自然性の四角形をどの射に適用し、どの元を代入したかを述べよ。その四角形に現れる四つの写像の始域と終域を書き下せ。
  2. 命題 3.2 (1)をF=hCF = h_Cの場合に書き下し、両辺をC\mathcal Cの射の合成として表せ。
  3. 定理 3.4の証明ではyA,By_{A, B}が定理 2.1のΨ\Psiと一致することを用いた。この一致を確かめ、忠実であることと充満であることが、それぞれΨ\Psiのどの性質に対応するかを述べよ。
  4. 系 3.5の証明で、y(f)By(f)_Bの全射性とy(f)Ay(f)_Aの単射性をそれぞれどこで用いたかを特定し、二つが証明のどの段階で必要になるかを説明せよ。
  5. 例 5.2の自然同型から、定理 2.1のΦ\Phiによって普遍元{1}\{1\}を取り出す計算を再現せよ。
  6. 恒等関手Set→Set\mathbf{Set} \to \mathbf{Set}が一元集合{∗}\{\ast\}によって表現されることを、普遍元を明示して示せ。
  7. 系 4.3の証明を、FFが共変関手である場合へ書き換えよ。射の向きがどこで変わるかを明示せよ。

7 扱った範囲と次の記事

本記事では、局所小圏を定義し、対象AAが定める hom 関手hAh_AとhAh^Aを構成し、Nat⁡(hA,F)\operatorname{Nat}(h_A, F)とF(A)F(A)の全単射(米田の補題)を証明した。この全単射が対象と関手の両方について自然であることを示し、米田埋め込みyyが関手であって充満忠実であること、およびhA≅hBh_A \cong h_BならばA≅BA \cong Bであることを導いた。さらに、表現可能関手を定義し、表現が普遍元と一対一に対応すること、および表現が同型を除いて一意であることを、いずれも米田の補題の系として証明した。

次の記事「モノ射とエピ射」では、射の単射性と全射性にあたる概念を消去律によって定義し、それがy(f)y(f)の各成分の単射性として述べられることを示す。「随伴」では、二つの関手の対応を hom 集合の自然同型として定義する。

大きさを体系的に管理する方法、および前層を余極限によって表示する定理は「圏論 II」が扱う。本記事は局所小性を仮定として書き、それ以上の条件を用いていない。米田埋め込みの充満忠実性を、環に空間を対応させる反変関手へ適用する見方は「代数幾何入門」が扱う。

参考文献

  1. Saunders Mac Lane, Categories for the Working Mathematician, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 5, Springer, New York, 1998.米田の補題と米田埋め込みの定式化を参考にした。
  2. Emily Riehl, Category Theory in Context, Dover Publications, 2016.前層の形の米田の補題、二つの変数についての自然性、および普遍元による表現の記述を参考にした。
  3. Tom Leinster, Basic Category Theory, Cambridge University Press, Cambridge, 2014.表現の一意性を米田の補題の系として導く筋を参考にした。

前提記事