§C2.6モーリーの三等分定理

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三角形の各内角を三等分すると、各辺に近い二本ずつの三等分線から三つの交点が定まります。本記事は、元の三角形の形にかかわらず三つの交点が正三角形を作るというモーリーの三等分定理と、三等分線の存在と作図可能性の違いを扱います。

定理 1 (モーリーの三等分定理). 非退化三角形△ABC\triangle ABCの各内角を三等分する。A,BA,Bから出る三等分線のうち辺ABABに近い二直線の交点をXXとし、同様に辺BC,CABC,CAに対応する交点をそれぞれY,ZY,Zとする。このとき△XYZ\triangle XYZは正三角形である。

1 正三角形からの逆向き構成

正の角α,β,γ\alpha,\beta,\gammaがα+β+γ=60∘\alpha+\beta+\gamma=60^\circを満たすとき、角3α,3β,3γ3\alpha,3\beta,3\gammaをもつ三角形は、正三角形の周囲に六つの三角形を貼り合わせることによって得られます。貼り合わせの結果として頂点の角が3α3\alphaになることが、この節の主張です。

補題 1.1. 正の角α,β,γ\alpha,\beta,\gammaがα+β+γ=60∘\alpha+\beta+\gamma=60^\circを満たすとする。三角形A′B′X′A'B'X'が

∠X′A′B′=α,∠X′B′A′=β,∠A′X′B′=120∘+γ\angle X'A'B'=\alpha,\qquad \angle X'B'A'=\beta,\qquad \angle A'X'B'=120^\circ+\gamma

を満たすとする。線分A′B′A'B'上に、∠A′X′Z′=60∘+β\angle A'X'Z'=60^\circ+\betaを満たす点Z′Z'と、∠B′X′Y′=60∘+α\angle B'X'Y'=60^\circ+\alphaを満たす点Y′Y'が、それぞれただ一つ存在する。このとき

∠A′Z′X′=∠B′Y′X′=60∘+γ,X′Z′=X′Y′\angle A'Z'X'=\angle B'Y'X'=60^\circ+\gamma,\qquad X'Z'=X'Y'

が成り立つ。

証明.β<60∘<60∘+γ\beta<60^\circ<60^\circ+\gammaであるから0∘<60∘+β<120∘+γ=∠A′X′B′0^\circ<60^\circ+\beta<120^\circ+\gamma=\angle A'X'B'である。したがって、X′X'から出て角A′X′B′A'X'B'の内部を通り、半直線X′A′X'A'と60∘+β60^\circ+\betaの角をなす半直線がただ一つ存在し、この半直線は線分A′B′A'B'と両端以外のただ一つの点で交わる。この交点がZ′Z'である。同じ理由で、0∘<60∘+α<120∘+γ0^\circ<60^\circ+\alpha<120^\circ+\gammaであるからY′Y'もただ一つ存在する。三角形A′X′Z′A'X'Z'の内角和から

∠A′Z′X′=180∘−α−(60∘+β)=60∘+γ\angle A'Z'X'=180^\circ-\alpha-(60^\circ+\beta)=60^\circ+\gamma

であり、三角形B′X′Y′B'X'Y'の内角和から

∠B′Y′X′=180∘−β−(60∘+α)=60∘+γ\angle B'Y'X'=180^\circ-\beta-(60^\circ+\alpha)=60^\circ+\gamma

である。

線分A′B′A'B'上の相異なる二点P,QP,Qについて、PPがA′A'とQQの間にあれば、半直線X′PX'Pは角A′X′QA'X'Qの内部にあり、∠A′X′P<∠A′X′Q\angle A'X'P<\angle A'X'Qである。したがって、線分A′B′A'B'上の点はX′X'から見た角∠A′X′P\angle A'X'Pの大小によってA′A'からの順序が定まる。Z′Z'については∠A′X′Z′=60∘+β\angle A'X'Z'=60^\circ+\betaであり、Y′Y'については

∠A′X′Y′=∠A′X′B′−∠B′X′Y′=(120∘+γ)−(60∘+α)=60∘+γ−α\angle A'X'Y'=\angle A'X'B'-\angle B'X'Y'=(120^\circ+\gamma)-(60^\circ+\alpha)=60^\circ+\gamma-\alpha

である。二つの角の差は

∠A′X′Y′−∠A′X′Z′=γ−α−β=2γ−60∘\angle A'X'Y'-\angle A'X'Z'=\gamma-\alpha-\beta=2\gamma-60^\circ

であるから、γ\gammaと30∘30^\circの大小によって三つの場合に分かれる。

γ>30∘\gamma>30^\circのとき、∠A′X′Z′<∠A′X′Y′\angle A'X'Z'<\angle A'X'Y'であるから、線分A′B′A'B'上にA′,Z′,Y′,B′A',Z',Y',B'がこの順に並ぶ。Y′Y'はZ′Z'から見てB′B'の側にあるから

∠X′Z′Y′=∠X′Z′B′=180∘−∠A′Z′X′=120∘−γ\angle X'Z'Y'=\angle X'Z'B'=180^\circ-\angle A'Z'X'=120^\circ-\gamma

であり、Z′Z'はY′Y'から見てA′A'の側にあるから

∠X′Y′Z′=∠X′Y′A′=180∘−∠B′Y′X′=120∘−γ\angle X'Y'Z'=\angle X'Y'A'=180^\circ-\angle B'Y'X'=120^\circ-\gamma

である。γ<30∘\gamma<30^\circのとき、∠A′X′Y′<∠A′X′Z′\angle A'X'Y'<\angle A'X'Z'であるから、A′,Y′,Z′,B′A',Y',Z',B'がこの順に並ぶ。Y′Y'はZ′Z'から見てA′A'の側にあり、Z′Z'はY′Y'から見てB′B'の側にあるから

∠X′Z′Y′=∠X′Z′A′=60∘+γ,∠X′Y′Z′=∠X′Y′B′=60∘+γ\angle X'Z'Y'=\angle X'Z'A'=60^\circ+\gamma,\qquad \angle X'Y'Z'=\angle X'Y'B'=60^\circ+\gamma

である。どちらの場合も三角形X′Z′Y′X'Z'Y'のZ′Z'とY′Y'における二つの内角が等しいので、二つの内角が等しい三角形は二等辺三角形であるという事実によりX′Z′=X′Y′X'Z'=X'Y'である。γ=30∘\gamma=30^\circのとき、∠A′X′Z′=∠A′X′Y′\angle A'X'Z'=\angle A'X'Y'であるからZ′=Y′Z'=Y'であり、X′Z′=X′Y′X'Z'=X'Y'が成り立つ。▨

補題 1.2. 正の角α,β,γ\alpha,\beta,\gammaがα+β+γ=60∘\alpha+\beta+\gamma=60^\circを満たすとする。正三角形XYZXYZを取り、直線XZXZに関してYYと反対側に∠AXZ=60∘+β\angle AXZ=60^\circ+\betaを満たす点AAを、直線XYXYに関してZZと反対側に∠BXY=60∘+α\angle BXY=60^\circ+\alphaを満たす点BBを取る。このとき

∠AXB=120∘+γ\angle AXB=120^\circ+\gamma

が成り立つ。また、ZZとBBは直線XAXAに関して反対側にあり、YYとAAは直線XBXBに関して反対側にある。

証明.XXから出る半直線の位置を、半直線XYXYを始線とし、半直線XZXZの位置が60∘60^\circになる回転の向きに測った角で表す。位置は0∘0^\circ以上360∘360^\circ未満の値で取る。XXから出る二本の半直線の位置の差が180∘180^\circ以下ならば、その差が二本の半直線のなす角であり、差が180∘180^\circを超えるならば、360∘360^\circから差を引いた値が二本の半直線のなす角である。また、位置θ\thetaの半直線を含む直線は位置θ\thetaとθ+180∘\theta+180^\circの二本の半直線からなり、位置がθ\thetaとθ+180∘\theta+180^\circの間にある半直線と、そうでない半直線とが、この直線の両側を占める。

直線XZXZは位置60∘60^\circと240∘240^\circの半直線からなり、YYを含む半直線の位置は0∘0^\circである。AAは直線XZXZに関してYYと反対側にあり、∠AXZ=60∘+β\angle AXZ=60^\circ+\betaであるから、半直線XAXAの位置は60∘+(60∘+β)=120∘+β60^\circ+(60^\circ+\beta)=120^\circ+\betaである。位置60∘−(60∘+β)+360∘=360∘−β60^\circ-(60^\circ+\beta)+360^\circ=360^\circ-\betaの半直線もXZXZと角60∘+β60^\circ+\betaをなすが、この半直線はYYと同じ側にあるのでXAXAではない。直線XYXYは位置0∘0^\circと180∘180^\circの半直線からなり、ZZを含む半直線の位置は60∘60^\circである。BBは直線XYXYに関してZZと反対側にあり、∠BXY=60∘+α\angle BXY=60^\circ+\alphaであるから、半直線XBXBの位置は360∘−(60∘+α)=300∘−α360^\circ-(60^\circ+\alpha)=300^\circ-\alphaである。

半直線XAXAとXBXBの位置の差は

(300∘−α)−(120∘+β)=180∘−α−β=120∘+γ(300^\circ-\alpha)-(120^\circ+\beta)=180^\circ-\alpha-\beta=120^\circ+\gamma

であり、180∘180^\circ以下であるから∠AXB=120∘+γ\angle AXB=120^\circ+\gammaである。直線XAXAは位置120∘+β120^\circ+\betaと300∘+β300^\circ+\betaの半直線からなる。XZXZの位置60∘60^\circは120∘+β120^\circ+\betaと300∘+β300^\circ+\betaの間になく、XBXBの位置300∘−α300^\circ-\alphaはα+β<180∘\alpha+\beta<180^\circにより120∘+β<300∘−α<300∘+β120^\circ+\beta<300^\circ-\alpha<300^\circ+\betaを満たすので、ZZとBBは直線XAXAに関して反対側にある。直線XBXBは位置120∘−α120^\circ-\alphaと300∘−α300^\circ-\alphaの半直線からなる。XYXYの位置0∘0^\circは120∘−α120^\circ-\alphaより小さく、XAXAの位置120∘+β120^\circ+\betaは120∘−α<120∘+β<300∘−α120^\circ-\alpha<120^\circ+\beta<300^\circ-\alphaを満たすので、YYとAAは直線XBXBに関して反対側にある。▨

定理 1.3. 正の角α,β,γ\alpha,\beta,\gammaがα+β+γ=60∘\alpha+\beta+\gamma=60^\circを満たすとする。正三角形XYZXYZを取り、直線XZXZに関してYYと反対側に∠AXZ=60∘+β\angle AXZ=60^\circ+\beta、∠AZX=60∘+γ\angle AZX=60^\circ+\gammaを満たす点AAを、直線YXYXに関してZZと反対側に∠BYX=60∘+γ\angle BYX=60^\circ+\gamma、∠BXY=60∘+α\angle BXY=60^\circ+\alphaを満たす点BBを、直線ZYZYに関してXXと反対側に∠CZY=60∘+α\angle CZY=60^\circ+\alpha、∠CYZ=60∘+β\angle CYZ=60^\circ+\betaを満たす点CCを取る。(60∘+β)+(60∘+γ)=180∘−α<180∘(60^\circ+\beta)+(60^\circ+\gamma)=180^\circ-\alpha<180^\circであるからAAはただ一つ存在し、同様にB,CB,Cもただ一つ存在する。このときA,B,CA,B,Cは非退化三角形をなし、

∠BAC=3α,∠ABC=3β,∠BCA=3γ\angle BAC=3\alpha,\qquad \angle ABC=3\beta,\qquad \angle BCA=3\gamma

が成り立つ。さらに、半直線AX,AZAX,AZは角BACBACを三等分し、AXAXが辺ABABに近い三等分線、AZAZが辺ACACに近い三等分線である。同様に、半直線BX,BYBX,BYは角ABCABCを三等分してBXBXが辺BABAに近く、半直線CY,CZCY,CZは角BCABCAを三等分してCYCYが辺CBCBに近い。したがって、X,Y,ZX,Y,Zは三角形ABCABCの各辺に近い隣接三等分線の交点であり、正三角形をなす。

証明. 構成により、AAは直線XZXZに関してYYと反対側にあって∠AXZ=60∘+β\angle AXZ=60^\circ+\betaを満たし、BBは直線XYXYに関してZZと反対側にあって∠BXY=60∘+α\angle BXY=60^\circ+\alphaを満たすので、補題 1.2により∠AXB=120∘+γ\angle AXB=120^\circ+\gammaである。角α,β,120∘+γ\alpha,\beta,120^\circ+\gammaの和は180∘180^\circであるから、∠X′A′B′=α\angle X'A'B'=\alpha、∠X′B′A′=β\angle X'B'A'=\beta、∠A′X′B′=120∘+γ\angle A'X'B'=120^\circ+\gammaを満たす三角形A′B′X′A'B'X'が存在する。この三角形に補題 1.1を適用し、線分A′B′A'B'上の点Z′,Y′Z',Y'を取る。

三角形A′X′Z′A'X'Z'の内角はA′A'でα\alpha、X′X'で60∘+β60^\circ+\beta、Z′Z'で60∘+γ60^\circ+\gammaである。三角形AXZAXZの内角は、構成によりXXで60∘+β60^\circ+\beta、ZZで60∘+γ60^\circ+\gammaであり、内角和からAAでα\alphaである。二組の角が等しいので、三角形A′X′Z′A'X'Z'と三角形AXZAXZは相似であり、

A′X′AX=X′Z′XZ\frac{A'X'}{AX}=\frac{X'Z'}{XZ}

が成り立つ。同様に、三角形B′X′Y′B'X'Y'の内角はB′B'でβ\beta、X′X'で60∘+α60^\circ+\alpha、Y′Y'で60∘+γ60^\circ+\gammaであり、三角形BXYBXYの内角はXXで60∘+α60^\circ+\alpha、YYで60∘+γ60^\circ+\gamma、BBでβ\betaであるから、二つの三角形は相似であり、

B′X′BX=X′Y′XY\frac{B'X'}{BX}=\frac{X'Y'}{XY}

が成り立つ。XZ=XYXZ=XYであり、補題 1.1によりX′Z′=X′Y′X'Z'=X'Y'であるから、二つの比は等しい。すなわちA′X′:AX=B′X′:BXA'X':AX=B'X':BXである。さらに∠A′X′B′=120∘+γ=∠AXB\angle A'X'B'=120^\circ+\gamma=\angle AXBであるから、二辺の比とその間の角がそれぞれ等しい二つの三角形は相似であるという事実により、三角形A′X′B′A'X'B'と三角形AXBAXBは相似である。したがって

∠XAB=∠X′A′B′=α,∠XBA=∠X′B′A′=β\angle XAB=\angle X'A'B'=\alpha,\qquad \angle XBA=\angle X'B'A'=\beta

である。構成は、文字の置き換えX→Y→Z→XX\to Y\to Z\to X、A→B→C→AA\to B\to C\to A、α→β→γ→α\alpha\to\beta\to\gamma\to\alphaを同時に行っても同じ構成であるから、同じ置き換えにより

∠YBC=β,∠YCB=γ,∠ZCA=γ,∠ZAC=α\angle YBC=\beta,\quad \angle YCB=\gamma,\quad \angle ZCA=\gamma,\quad \angle ZAC=\alpha

を得る。

頂点AAのまわりで、∠BAX=α\angle BAX=\alpha、∠XAZ=α\angle XAZ=\alpha、∠ZAC=α\angle ZAC=\alphaである。補題 1.2によりBBとZZは直線AXAXに関して反対側にあるので、半直線AXAXとその逆向きの半直線のうちちょうど一方が角BAZBAZの内部にある。逆向きの半直線が内部にあるならば、∠BAZ\angle BAZは∠BAX\angle BAXと∠XAZ\angle XAZを除いた残りの角360∘−2α360^\circ-2\alphaに等しく、360∘−2α>180∘360^\circ-2\alpha>180^\circであるから、角の大きさが180∘180^\circ未満であることに反する。したがって半直線AXAXは角BAZBAZの内部にあり、∠BAZ=∠BAX+∠XAZ=2α\angle BAZ=\angle BAX+\angle XAZ=2\alphaである。半直線AXAXが角BAZBAZの内部にあるので、XXとBBは直線AZAZに関して同じ側にある。構成により、CCは直線ZYZYに関してXXと反対側にあって∠CZY=60∘+α\angle CZY=60^\circ+\alphaを満たし、AAは直線ZXZXに関してYYと反対側にあって∠AZX=60∘+γ\angle AZX=60^\circ+\gammaを満たすので、補題 1.2をZZを中心に(Z,X,Y,C,A,γ,α,β)(Z,X,Y,C,A,\gamma,\alpha,\beta)に対して適用すると、XXとCCは直線ZAZAに関して反対側にある。したがってBBとCCは直線AZAZに関して反対側にあるので、半直線AZAZとその逆向きの半直線のうちちょうど一方が角BACBACの内部にある。逆向きの半直線が内部にあるならば∠BAC=360∘−(2α+α)>180∘\angle BAC=360^\circ-(2\alpha+\alpha)>180^\circとなって、角の大きさが180∘180^\circ未満であることに反する。したがって半直線AZAZは角BACBACの内部にあり、

∠BAC=∠BAZ+∠ZAC=3α\angle BAC=\angle BAZ+\angle ZAC=3\alpha

である。0∘<3α<180∘0^\circ<3\alpha<180^\circであるからA,B,CA,B,Cは一直線上になく、三角形ABCABCは非退化である。半直線AX,AZAX,AZは角BACBACの内部にあってこの角をα,α,α\alpha,\alpha,\alphaに分けるので、角BACBACの三等分線であり、AXAXが辺ABABに近く、AZAZが辺ACACに近い。同じ置き換えにより、∠ABC=3β\angle ABC=3\betaであってBX,BYBX,BYがその三等分線(BXBXが辺BABAに近い)、∠BCA=3γ\angle BCA=3\gammaであってCY,CZCY,CZがその三等分線(CYCYが辺CBCBに近い)である。XXは半直線AXAXと半直線BXBXの交点であるから、辺ABABに近い二本の三等分線の交点であり、Y,ZY,Zについても同様である。XYZXYZは構成の出発点の正三角形である。▨

注意 1.4. 元の三角形から三等分線を引いてX,Y,ZX,Y,Zを定める順方向の構成では、X,Y,ZX,Y,Zにおける角の大きさは交点の定義だけからは定まらない。逆向き構成は正三角形を先に固定し、その周囲に角α,β,γ\alpha,\beta,\gammaから定まる六つの三角形を貼り合わせて角3α,3β,3γ3\alpha,3\beta,3\gammaを復元することによって、三等分線の交点を構成の中に組み込む。頂点のまわりの角の追跡は、鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のいずれでも同じ計算であり、場合分けは補題 1.1のγ\gammaと30∘30^\circの大小だけに現れる。

2 初等幾何による証明

以下は、定理 1の初等幾何による証明です。

証明.∠A=3α,∠B=3β,∠C=3γ\angle A=3\alpha,\angle B=3\beta,\angle C=3\gammaと置く。三角形の内角和から、正の角α,β,γ\alpha,\beta,\gammaはα+β+γ=60∘\alpha+\beta+\gamma=60^\circを満たす。

正三角形X′Y′Z′X'Y'Z'を一つ取り、定理 1.3を適用して三角形A′B′C′A'B'C'を作る。この三角形の角は∠A′=3α,∠B′=3β,∠C′=3γ\angle A'=3\alpha,\angle B'=3\beta,\angle C'=3\gammaであるから、二組の角が等しい二つの三角形は相似であるという事実により、三角形A′B′C′A'B'C'と三角形ABCABCは相似であり、A′↦A,B′↦B,C′↦CA'\mapsto A,B'\mapsto B,C'\mapsto Cを満たす相似変換ffが存在する。相似変換は角の大きさを保ち、直線を直線へ写すので、ffは角B′A′C′B'A'C'の辺A′B′A'B'に近い三等分線A′X′A'X'を角BACBACの辺ABABに近い三等分線AXAXへ写し、角A′B′C′A'B'C'の辺B′A′B'A'に近い三等分線B′X′B'X'を角ABCABCの辺BABAに近い三等分線BXBXへ写す。したがって、二本の三等分線の交点X′X'はXXへ写る。同様にf(Y′)=Yf(Y')=Y、f(Z′)=Zf(Z')=Zである。相似変換はすべての長さを同じ比で変えるので、X′Y′=Y′Z′=Z′X′X'Y'=Y'Z'=Z'X'からXY=YZ=ZXXY=YZ=ZXを得る。これで定理 1は示された。▨

3 三角法による別証明

以下は、定理 1の三角法による別証明です。

公式 3.1. 正の角α,β,γ\alpha,\beta,\gammaがα+β+γ=60∘\alpha+\beta+\gamma=60^\circを満たすとき、

(sin⁡3γ sin⁡αsin⁡(α+β))2+(sin⁡3α sin⁡γsin⁡(β+γ))2−2sin⁡3γ sin⁡αsin⁡(α+β)sin⁡3α sin⁡γsin⁡(β+γ)cos⁡β=16sin⁡2αsin⁡2βsin⁡2γ\begin{aligned} &\left(\frac{\sin 3\gamma\,\sin\alpha}{\sin(\alpha+\beta)}\right)^2 +\left(\frac{\sin 3\alpha\,\sin\gamma}{\sin(\beta+\gamma)}\right)^2\\ &\quad-2\frac{\sin 3\gamma\,\sin\alpha}{\sin(\alpha+\beta)} \frac{\sin 3\alpha\,\sin\gamma}{\sin(\beta+\gamma)}\cos\beta =16\sin^2\alpha\sin^2\beta\sin^2\gamma \end{aligned}

が成り立つ。

証明.0<α+β<60∘0<\alpha+\beta<60^\circかつ0<β+γ<60∘0<\beta+\gamma<60^\circであるから、二つの分母は正である。三倍角の公式を

sin⁡3u=4sin⁡usin⁡(60∘+u)sin⁡(60∘−u)\sin 3u=4\sin u\sin(60^\circ+u)\sin(60^\circ-u)

と因数分解する。α+β=60∘−γ\alpha+\beta=60^\circ-\gammaとβ+γ=60∘−α\beta+\gamma=60^\circ-\alphaを用いると

sin⁡3γsin⁡αsin⁡(α+β)=4sin⁡αsin⁡γsin⁡(60∘+γ),\frac{\sin3\gamma\sin\alpha}{\sin(\alpha+\beta)} =4\sin\alpha\sin\gamma\sin(60^\circ+\gamma),sin⁡3αsin⁡γsin⁡(β+γ)=4sin⁡αsin⁡γsin⁡(60∘+α)\frac{\sin3\alpha\sin\gamma}{\sin(\beta+\gamma)} =4\sin\alpha\sin\gamma\sin(60^\circ+\alpha)

となる。

U=60∘+γ,V=60∘+αU=60^\circ+\gamma,V=60^\circ+\alphaと置くとU+V=180∘−βU+V=180^\circ-\betaである。加法定理から

sin⁡2U+sin⁡2V−2sin⁡Usin⁡Vcos⁡β=sin⁡2U+sin⁡2V+2sin⁡Usin⁡Vcos⁡(U+V)=sin⁡2(U+V)=sin⁡2β\begin{aligned} &\sin^2U+\sin^2V-2\sin U\sin V\cos\beta\\ &=\sin^2U+\sin^2V+2\sin U\sin V\cos(U+V)\\ &=\sin^2(U+V)=\sin^2\beta \end{aligned}

を得る。先の二式を左辺へ代入して共通因子16sin⁡2αsin⁡2γ16\sin^2\alpha\sin^2\gammaをくくると、求める等式が得られる。▨

証明.∠A=3α,∠B=3β,∠C=3γ\angle A=3\alpha,\angle B=3\beta,\angle C=3\gammaと置く。辺の長さをa=BC,b=CA,c=ABa=BC,b=CA,c=ABとし、外接円の半径をRRとする。正弦定理により、正の定数k=2Rk=2Rを用いて

a=ksin⁡3α,b=ksin⁡3β,c=ksin⁡3γa=k\sin3\alpha,\qquad b=k\sin3\beta,\qquad c=k\sin3\gamma

と書く。

XXは辺ABABに対応する交点、YYは辺BCBCに対応する交点である。三角形ABXABXでは∠BAX=α,∠ABX=β\angle BAX=\alpha,\angle ABX=\betaであり、三角形BCYBCYでは∠BCY=γ,∠CBY=β\angle BCY=\gamma,\angle CBY=\betaである。正弦定理を適用すると

BX=csin⁡αsin⁡(α+β),BY=asin⁡γsin⁡(β+γ)BX=\frac{c\sin\alpha}{\sin(\alpha+\beta)},\qquad BY=\frac{a\sin\gamma}{\sin(\beta+\gamma)}

となる。

BBから出る二本の三等分線の間の角はβ\betaである。三角形BXYBXYに余弦定理を適用し、a,ca,cの表示を代入すると

XY2=k2[(sin⁡3γsin⁡αsin⁡(α+β))2+(sin⁡3αsin⁡γsin⁡(β+γ))2−2sin⁡3γsin⁡αsin⁡(α+β)sin⁡3αsin⁡γsin⁡(β+γ)cos⁡β]=16k2sin⁡2αsin⁡2βsin⁡2γ\begin{aligned} XY^2 &=k^2\left[ \left(\frac{\sin3\gamma\sin\alpha}{\sin(\alpha+\beta)}\right)^2 +\left(\frac{\sin3\alpha\sin\gamma}{\sin(\beta+\gamma)}\right)^2\right.\\ &\qquad\left.-2\frac{\sin3\gamma\sin\alpha}{\sin(\alpha+\beta)} \frac{\sin3\alpha\sin\gamma}{\sin(\beta+\gamma)}\cos\beta \right]\\ &=16k^2\sin^2\alpha\sin^2\beta\sin^2\gamma \end{aligned}

を得る。最後の等号には公式 3.1を用いた。kkと三つの正弦は正であるから、正の平方根を取って

XY=4ksin⁡αsin⁡βsin⁡γXY=4k\sin\alpha\sin\beta\sin\gamma

となる。頂点と角を巡回置換すると、YZYZとZXZXに対しても右辺は同じである。したがってXY=YZ=ZXXY=YZ=ZXであり、XYZXYZは正三角形である。▨

角の三等分線の存在は定理の仮定です。一般の角を定規とコンパスで三等分する作図可能性は別の問題であり、ここでは扱いません。モーリーはこの定理を1899年に発見しました。本記事は内角から得る第一モーリー三角形だけを扱い、外角三等分線と高次モーリー三角形は扱いません。

5 確認問題

問題 5.1.定理 1の三角形ABCABCと交点X,Y,ZX,Y,Zについて、∠A=3α,∠B=3β,∠C=3γ\angle A=3\alpha,\angle B=3\beta,\angle C=3\gammaと置く。∠AXZ=60∘+β\angle AXZ=60^\circ+\beta、∠AZX=60∘+γ\angle AZX=60^\circ+\gamma、∠AXB=120∘+γ\angle AXB=120^\circ+\gammaを示せ。

解答.

初等幾何による証明の相似変換ffは、正三角形X′Y′Z′X'Y'Z'から定理 1.3で作った三角形A′B′C′A'B'C'を三角形ABCABCへ写し、f(X′)=Xf(X')=X、f(Z′)=Zf(Z')=Zを満たす。相似変換は角の大きさを保つので、∠AXZ=∠A′X′Z′\angle AXZ=\angle A'X'Z'、∠AZX=∠A′Z′X′\angle AZX=\angle A'Z'X'、∠AXB=∠A′X′B′\angle AXB=\angle A'X'B'である。構成により∠A′X′Z′=60∘+β\angle A'X'Z'=60^\circ+\beta、∠A′Z′X′=60∘+γ\angle A'Z'X'=60^\circ+\gammaであり、補題 1.2により∠A′X′B′=120∘+γ\angle A'X'B'=120^\circ+\gammaである。▨

問題 5.2.∠A=3α,∠B=3β,∠C=3γ\angle A=3\alpha,\angle B=3\beta,\angle C=3\gammaとし、辺の長さをa=BC,c=ABa=BC,c=ABとする。正弦定理からBX,BYBX,BYを求め、三角形BXYBXYの余弦定理へ代入せよ。また、この計算が一般の角の定規とコンパスによる三等分作図を与えない理由を述べよ。

解答.

三角形ABXABXとBCYBCYに正弦定理を適用すると

BX=csin⁡αsin⁡(α+β),BY=asin⁡γsin⁡(β+γ)BX=\frac{c\sin\alpha}{\sin(\alpha+\beta)},\qquad BY=\frac{a\sin\gamma}{\sin(\beta+\gamma)}

となる。∠XBY=β\angle XBY=\betaであるから

XY2=BX2+BY2−2BX BYcos⁡βXY^2=BX^2+BY^2-2BX\,BY\cos\beta

である。三角法による証明は、すでに存在すると仮定した三等分線の間の長さを計算している。定規とコンパスだけで三等分線を構成する手順は与えていないので、作図可能性とは別の議論である。▨

参考文献

  1. John H. Conway, On Morley’s Trisector Theorem, The Mathematical Intelligencer 36 (2014), no. 3, 3.正三角形から出発して六つの三角形を貼り合わせる逆向き構成の証明を参考にしました。
  2. Eric L. Grinberg and Mehmet Orhon, Morley Trisectors and the Law of Sines with Reflections, arXiv:2003.10438v3, 2020.正弦定理を用いる証明と三等分線の配置を参考にしました。

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