§C2.7フォイエルバッハの定理

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フォイエルバッハの定理とは、三角形の九点円が内接円に内接し、3つの傍接円に外接するという定理である。

定理 1 (フォイエルバッハの定理). 非退化三角形の九点円の半径をR/2R/2、中心をNN、内接円の半径をrr、中心をII、傍接円の半径をra,rb,rcr_a,r_b,r_c、中心をIa,Ib,IcI_a,I_b,I_cとする。このとき

NI=R2−r,NIa=R2+ra,NIb=R2+rb,NIc=R2+rc.NI=\frac R2-r,\qquad NI_a=\frac R2+r_a,\quad NI_b=\frac R2+r_b,\quad NI_c=\frac R2+r_c.

したがって九点円は内接円に内接し、各傍接円に外接する。

補題 2 (接触条件). 半径ρ,σ\rho,\sigmaの2円の中心間距離が∣ρ−σ∣|\rho-\sigma|なら内接し、ρ+σ\rho+\sigmaなら外接する。

証明. 2円が接する点では、2つの中心と接点が一直線上にある。内接なら接点は中心間にあり距離は∣ρ−σ∣|\rho-\sigma|、外接なら接点の反対側に中心があり距離はρ+σ\rho+\sigmaである。逆にこの距離なら、中心を結ぶ直線上で半径の位置にある点がただ1つ一致する。▨

1 初等幾何による証明

補題 1.1. 非退化三角形ABCABCの辺の長さをa=BCa=BC、b=CAb=CA、c=ABc=AB、s=(a+b+c)/2s=(a+b+c)/2とする。内接円ω\omegaが直線BCBCに接する点をXX、A-傍接円ωa\omega_aが直線BCBCに接する点をX′X'、辺BCBCの中点をMMとする。

  1. XXは線分BCBCの内部にあり、BX=s−bBX=s-b、CX=s−cCX=s-cである。
  2. X′X'は線分BCBCの内部にあり、BX′=s−cBX'=s-c、CX′=s−bCX'=s-bである。
  3. MMは線分XX′XX'の中点であり、XX′=∣b−c∣XX'=|b-c|である。とくに、X=X′X=X'であることとb=cb=cであることは同値であり、このときX=X′=MX=X'=Mである。

証明.(1)を示す。内心IIは三角形の内部にあり、各内角の二等分線上にある(§A5.8 定理 9.2)。したがって三角形IBCIBCのBB、CCにおける角は∠B/2\angle B/2、∠C/2\angle C/2であり、どちらも90°90°より小さいから、IIから直線BCBCへ下ろした垂線の足は線分BCBCの内部にある。円の中心から接線へ下ろした垂線の足が接点である(§A5.6 補題 1.2)から、この足がXXである。同じ議論を三角形ICAICA、IABIABに適用すると、ω\omegaが直線CACA、ABABに接する点YY、ZZはそれぞれ線分CACA、ABABの内部にある。頂点AA、BB、CCはω\omegaの接線上にあって接点と異なるから、ω\omegaの外部にある。円の外部の点から引いた二本の接線の長さは等しい(§A5.7 定理 3.2)から、AY=AZAY=AZ、BZ=BXBZ=BX、CX=CYCX=CYである。BX+CX=aBX+CX=a、CY+AY=bCY+AY=b、AZ+BZ=cAZ+BZ=cであるから、第一式と第三式の和から第二式を引くと2BX=a+c−b2BX=a+c-b、すなわちBX=s−bBX=s-bを得る。CX=a−BX=s−cCX=a-BX=s-cである。

(2)を示す。傍心IaI_aはAAの内角の二等分線とBB、CCの外角の二等分線の上にあり、直線BCBCに関してAAと反対側にある(§A5.8 定理 13.1)。ωa\omega_aが直線ABAB、ACACに接する点をZ′Z'、Y′Y'とする。∠IaAB=∠A/2<90°\angle I_aAB=\angle A/2<90°であるから、IaI_aから直線ABABへ下ろした垂線の足Z′Z'は半直線ABAB上にあってAAと異なり、同様にY′Y'は半直線ACAC上にあってAAと異なる。BBにおける外角は、半直線BCBCと、半直線BABAの反対向きの半直線とが作る角である。IaI_aはその二等分線上にあって直線BCBCに関してAAと反対側にあるから、半直線BIaBI_aはこの二本の半直線のどちらとも(180°−∠B)/2<90°(180°-\angle B)/2<90°の角をなす。したがってIaI_aから直線BCBCへ下ろした垂線の足X′X'は半直線BCBC上にあってBBと異なり、Z′Z'は半直線BABAの反対向きの半直線上にあってBBと異なる。すなわちBBは線分AZ′AZ'の内部にある。CCについても同様に、X′X'は半直線CBCB上にあってCCと異なり、CCは線分AY′AY'の内部にある。ゆえにX′X'は線分BCBCの内部にある。頂点AA、BB、CCはωa\omega_aの接線上にあって接点と異なるからωa\omega_aの外部にあり、AZ′=AY′AZ'=AY'、BZ′=BX′BZ'=BX'、CY′=CX′CY'=CX'である。BBが線分AZ′AZ'の内部にあることからAZ′=c+BZ′=c+BX′AZ'=c+BZ'=c+BX'であり、同様にAY′=b+CX′AY'=b+CX'である。辺々加えてBX′+CX′=aBX'+CX'=aを用いると2AZ′=a+b+c2AZ'=a+b+c、すなわちAZ′=sAZ'=sである。したがってBX′=s−cBX'=s-c、CX′=s−bCX'=s-bを得る。

(3)を示す。XX、X′X'はともに線分BCBC上にあり、BX=s−b=CX′BX=s-b=CX'であるから、XXとX′X'はBCBCの中点MMに関して対称の位置にあり、MMは線分XX′XX'の中点である。XX′=∣BX′−BX∣=∣b−c∣XX'=|BX'-BX|=|b-c|であり、X=X′X=X'であることとXX′=0XX'=0であることとb=cb=cであることは互いに同値である。X=X′X=X'のとき、MMはXXとX′X'の中点であるからX=X′=MX=X'=Mである。▨

補題 1.2. 非退化三角形ABCABCの辺の長さをa=BCa=BC、b=CAb=CA、c=ABc=ABとし、b≠cb\ne cを仮定する。辺BCBCの中点をMM、AAから直線BCBCへ下ろした垂線の足をDD、AAの内角の二等分線と辺BCBCの交点をSSとし、XX、X′X'を補題 1.1の接点とする。直線BCBC上にBBからCCへ向かう向きを定め、MMを基準とする符号付きの長さで測ると

MD=(c−b)(c+b)2a,MS=a(c−b)2(b+c),MX=c−b2,MX′=b−c2MD=\frac{(c-b)(c+b)}{2a},\qquad MS=\frac{a(c-b)}{2(b+c)},\qquad MX=\frac{c-b}{2},\qquad MX'=\frac{b-c}{2}

である。したがってDD、SS、XXはMMから見て同じ側にあってMMと異なり、X′X'はMMに関して反対側にあってMMと異なり、

MD⋅MS=MX2=(b−c)24MD\cdot MS=MX^2=\frac{(b-c)^2}{4}

が成り立つ。またXXは線分MDMDの内部にある。

証明.s=(a+b+c)/2s=(a+b+c)/2とする。BB、CCの座標は−a/2-a/2、a/2a/2である。補題 1.1によりXX、X′X'は線分BCBC上にあってBX=s−bBX=s-b、BX′=s−cBX'=s-cであるから、XXの座標は−a/2+(s−b)=(c−b)/2-a/2+(s-b)=(c-b)/2、X′X'の座標は−a/2+(s−c)=(b−c)/2-a/2+(s-c)=(b-c)/2である。DDの座標をddとする。AD⊥BCAD\perp BCであるから、三平方の定理によりAB2=AD2+DB2AB^2=AD^2+DB^2およびAC2=AD2+DC2AC^2=AD^2+DC^2が成り立つ(DDがBBまたはCCに一致する場合も含む)。辺々引くと

c2−b2=DB2−DC2=(d+a2)2−(d−a2)2=2adc^2-b^2=DB^2-DC^2=\Bigl(d+\frac a2\Bigr)^2-\Bigl(d-\frac a2\Bigr)^2=2ad

であるからd=(c2−b2)/(2a)d=(c^2-b^2)/(2a)である。AAの内角の二等分線は辺BCBCと内部の一点SSで交わり、角の二等分線の定理(§A5.2 定理 3.1)によりBS:SC=c:bBS:SC=c:bであるからBS=ac/(b+c)BS=ac/(b+c)であり、SSの座標は

−a2+acb+c=a(c−b)2(b+c)-\frac a2+\frac{ac}{b+c}=\frac{a(c-b)}{2(b+c)}

である。四つの座標のうちMDMD、MSMS、MXMXはc−bc-bと同じ符号をもつ零でない数であり、MX′MX'は反対の符号をもつ零でない数である。MD⋅MS=(c−b)2/4=MX2MD\cdot MS=(c-b)^2/4=MX^2は直接の計算による。MD/MX=(b+c)/aMD/MX=(b+c)/aは三角不等式により11より大きいから、XXは線分MDMDの内部にある。▨

補題 1.3. 非退化三角形ABCABCの辺の長さをb=CAb=CA、c=ABc=ABとし、b≠cb\ne cを仮定する。内心をII、内接円をω\omega、A-傍接円をωa\omega_aとし、直線AIAIに関する対称移動をσ\sigma、直線BCBCのσ\sigmaによる像をℓ′\ell'、外接円のAAにおける接線をtAt_Aとする。SSをAAの内角の二等分線と辺BCBCの交点とする。

  1. ℓ′\ell'はω\omegaとωa\omega_aの両方に接する。
  2. ℓ′≠BC\ell'\ne BCであり、ℓ′\ell'と直線BCBCの共有点はSSだけである。
  3. ℓ′\ell'とtAt_Aは相異なる平行線である。

証明. 直線AIAIはAAの内角の二等分線であり(§A5.8 定理 9.2)、傍心IaI_aもこの直線上にある(§A5.8 定理 13.1)。σ\sigmaは直線AIAI上の各点を動かさない等長変換であるから、σ(ω)\sigma(\omega)は中心σ(I)=I\sigma(I)=I、半径rrの円、すなわちω\omegaであり、同様にσ(ωa)=ωa\sigma(\omega_a)=\omega_aである。等長変換は直線を直線へ、円を円へ写し、共有点の個数を保つ。直線BCBCはω\omegaとただ一つの共有点XXをもつから、ℓ′=σ(BC)\ell'=\sigma(BC)はω\omegaとただ一つの共有点σ(X)\sigma(X)をもち、ω\omegaに接する。同様にℓ′\ell'はωa\omega_aにσ(X′)\sigma(X')で接する。これで(1)は示された。

SSは直線AIAI上にあるからσ(S)=S\sigma(S)=Sであり、S∈BCS\in BCからS∈ℓ′S\in\ell'である。直線AIAIは∠BAC\angle BACを二等分するから、σ\sigmaは半直線ABABと半直線ACACを入れ替える。したがってC′=σ(C)C'=\sigma(C)は半直線ABAB上でAC′=bAC'=bを満たす点、B′=σ(B)B'=\sigma(B)は半直線ACAC上でAB′=cAB'=cを満たす点であり、ℓ′\ell'はB′B'、C′C'を通る。ℓ′=BC\ell'=BCと仮定すると、B′B'は直線BCBCと半直線ACACの共有点、すなわちCCに一致し、c=AB′=AC=bc=AB'=AC=bとなって仮定b≠cb\ne cに反する。ゆえにℓ′≠BC\ell'\ne BCであり、相異なる二直線の共有点はSSだけである。これで(2)は示された。

tAt_A上に、直線ABABに関してCCと反対側の点TTをとる。接弦定理(§A5.6 定理 3.1)により∠TAB=∠ACB\angle TAB=\angle ACBである。三角形AC′B′AC'B'は三角形ACBACBのσ\sigmaによる像であるから両者は合同であり、∠AC′B′=∠ACB\angle AC'B'=\angle ACBである。B′B'は半直線ACAC上のAAと異なる点であるから、直線ABABに関してCCと同じ側、したがってTTと反対側にある。C′C'は半直線ABAB上のAAと異なる点であるから∠TAB=∠TAC′\angle TAB=\angle TAC'である。ゆえに、直線AC′AC'を横断線とすると、AAにおける角∠TAC′\angle TAC'とC′C'における角∠AC′B′\angle AC'B'は錯角の位置にあって等しく、tA∥ℓ′t_A\parallel\ell'である。A∈tAA\in t_Aであり、σ(A)=A∉BC\sigma(A)=A\notin BCからA∉ℓ′A\notin\ell'であるから、二直線は相異なる。これで(3)は示された。▨

補題 1.4. 非退化三角形ABCABCの辺の長さをb=CAb=CA、c=ABc=ABとし、b≠cb\ne cを仮定する。辺BCBCの中点をMM、ρ=∣b−c∣/2\rho=|b-c|/2とし、中心MM、半径ρ\rhoの反転をφ\varphiとする。内接円ω\omega、A-傍接円ωa\omega_a、九点円ν\nuとそれらの中心・半径の記号は定理 1のとおりとし、ℓ′\ell'を補題 1.3の直線とする。

  1. φ(ω)=ω\varphi(\omega)=\omegaおよびφ(ωa)=ωa\varphi(\omega_a)=\omega_aである。
  2. φ\varphiはν\nuからMMを除いた部分を直線ℓ′\ell'の上へ全単射に写す。

証明.(1)を示す。XX、X′X'を補題 1.1の接点とするとMX=MX′=ρMX=MX'=\rhoである。ω\omegaはXXで直線BCBCに接するからIX⊥BCIX\perp BCであり(§A5.6 補題 1.2)、三平方の定理からMI2−r2=MX2=ρ2MI^2-r^2=MX^2=\rho^2である。反転の中心に関する方べきが反転の半径の平方に等しい円は、反転で自分自身へ写る。実際、§A5.19 定理 3.1においてd=MI2−r2=ρ2d=MI^2-r^2=\rho^2とすると、ω\omegaの像は中心II、半径rrの円である。ωa\omega_aについてもMIa2−ra2=MX′2=ρ2MI_a^2-r_a^2=MX'^2=\rho^2から同じ結論を得る。

(2)を示す。ν\nuはMMを通る(§C2.3 定理 1)。反転の中心MMを通る円は、MMを除いて、MMを通らない一本の直線の上へ全単射に写り、その直線はMMと円の中心を結ぶ直線に垂直である(§A5.19 定理 3.1。像の直線の方程式の法線ベクトルが、MMから円の中心へ向かうベクトルである)。ν\nuの像の直線をℓ\ellとするとM∉ℓM\notin\ellかつℓ⊥MN\ell\perp MNである。

DDをAAから直線BCBCへ下ろした垂線の足、SSをAAの内角の二等分線と辺BCBCの交点とする。補題 1.2によりD≠MD\ne Mであり、DDとSSはMMから見て同じ側にあってMD⋅MS=ρ2MD\cdot MS=\rho^2を満たす。したがってφ(D)=S\varphi(D)=Sである。DDはAAからの高さの足であるからν\nu上にあり(§C2.3 定理 1)、S∈ℓS\in\ellである。

ν\nuのMMにおける接線をtMt_MとするとtM⊥MNt_M\perp MNであり(§A5.6 補題 1.2)、ℓ⊥MN\ell\perp MNと合わせてℓ\ellとtMt_Mは平行である(M∈tMM\in t_M、M∉ℓM\notin\ellから相異なる)。重心をGGとし、各点PPを、直線PGPG上でGGに関してPPと反対側にありGP′=GP/2GP'=GP/2を満たす点P′P'へ写す写像をhhとする(h(G)=Gh(G)=G)。hhはGGを中心とする相似比−1/2-1/2の相似拡大であり、直線を平行な直線へ、円を円へ写し、共有点の個数を保つ。§A5.8 定理 5.1によりGGは線分AMAM上にあってAG:GM=2:1AG:GM=2:1を満たすからh(A)=Mh(A)=Mであり、同様にh(B)h(B)、h(C)h(C)はそれぞれ辺CACA、ABABの中点MbM_b、McM_cである。したがってhhは外接円Γ\GammaをMM、MbM_b、McM_cを通る円へ写し、一直線上にない三点を通る円はただ一つであるから、この円はν\nuである(§C2.3 定理 1)。h(tA)h(t_A)はMMを通りν\nuとただ一つの共有点MMをもつ直線、すなわちtMt_Mであるから、tM∥tAt_M\parallel t_Aである。補題 1.3 (3)によりtA∥ℓ′t_A\parallel\ell'であるから、ℓ∥ℓ′\ell\parallel\ell'である。ℓ\ellとℓ′\ell'はともにSSを通るから(補題 1.3 (2))、ℓ=ℓ′\ell=\ell'である。▨

補題 1.5. 二つの円Γ1\Gamma_1、Γ2\Gamma_2の中心をP1P_1、P2P_2、半径をρ1\rho_1、ρ2\rho_2とし、両円がちょうど一つの共有点TTをもつとする。このときP1≠P2P_1\ne P_2であり、TTは直線P1P2P_1P_2上にあり、P1P2=ρ1+ρ2P_1P_2=\rho_1+\rho_2またはP1P2=∣ρ1−ρ2∣P_1P_2=|\rho_1-\rho_2|が成り立つ。

証明.P1=P2P_1=P_2と仮定すると、TTが両円上にあることからρ1=P1T=P2T=ρ2\rho_1=P_1T=P_2T=\rho_2であり、Γ1=Γ2\Gamma_1=\Gamma_2となって共有点は無限個になる。したがってP1≠P2P_1\ne P_2である。TTが直線P1P2P_1P_2上にないと仮定すると、直線P1P2P_1P_2に関するTTの対称点T′T'はTTと異なる。中心を通る直線に関する対称移動は円を自分自身へ写すから、T′T'はΓ1\Gamma_1とΓ2\Gamma_2の両方の上にあり、共有点がただ一つであることに反する。したがってTTは直線P1P2P_1P_2上にある。TTが線分P1P2P_1P_2上にあればP1P2=P1T+TP2=ρ1+ρ2P_1P_2=P_1T+TP_2=\rho_1+\rho_2であり、線分P1P2P_1P_2の外にあればP1P2=∣P1T−TP2∣=∣ρ1−ρ2∣P_1P_2=|P_1T-TP_2|=|\rho_1-\rho_2|である。▨

以下は定理 1の初等幾何による証明である。

証明. 辺の長さをa=BCa=BC、b=CAb=CA、c=ABc=ABとし、辺BCBCの中点をMM、内接円ω\omegaが直線BCBCに接する点をXX、A-傍接円ωa\omega_aが直線BCBCに接する点をX′X'、九点円をν\nuとする。

はじめにb≠cb\ne cとする。ρ=∣b−c∣/2>0\rho=|b-c|/2>0とし、中心MM、半径ρ\rhoの反転をφ\varphi、補題 1.3の直線をℓ′\ell'とする。ℓ′\ell'はω\omegaとただ一つの共有点TTをもち、ωa\omega_aとただ一つの共有点T′T'をもつ(補題 1.3 (1))。ℓ′\ell'と直線BCBCの共有点はSSだけであり(補題 1.3 (2))、補題 1.2によりS≠MS\ne Mであるから、M∉ℓ′M\notin\ell'であり、TT、T′T'はMMと異なる。φ\varphiはMMを除いた平面の上の全単射であってφ∘φ\varphi\circ\varphiは恒等写像である(§A5.19 定理 2.2)。MMと異なる点PPについて、補題 1.4によりP∈νP\in\nuとφ(P)∈ℓ′\varphi(P)\in\ell'は同値であり(φ\varphiはν\nuからMMを除いた部分をℓ′\ell'の上へ全単射に写し、MMを除いた平面の上で単射である)、P∈ωP\in\omegaとφ(P)∈ω\varphi(P)\in\omegaは同値である。したがって、PPがν\nuとω\omegaの共有点であることと、φ(P)∈ℓ′∩ω={T}\varphi(P)\in\ell'\cap\omega=\{T\}すなわちP=φ(T)P=\varphi(T)であることは同値である。MMについては、MI2=r2+ρ2>r2MI^2=r^2+\rho^2>r^2からM∉ωM\notin\omegaである。ゆえにν\nuとω\omegaの共有点はφ(T)\varphi(T)ただ一つであり、補題 1.5によりNI=R/2+rNI=R/2+rまたはNI=∣R/2−r∣NI=|R/2-r|である。

ν\nuと直線BCBCの共有点はMMと、AAからの高さの足DDである(§C2.3 定理 1。b≠cb\ne cからD≠MD\ne M)。円と直線が二点で交わるとき、その二点を結ぶ線分の内部の点は円の内部にあり、その線分の外側にある直線上の点は円の外部にある。補題 1.2によりXXは線分MDMDの内部にあるからNX<R/2NX<R/2である。NI=R/2+rNI=R/2+rと仮定すると、三角不等式からNX≥NI−IX=R/2NX\ge NI-IX=R/2となり矛盾する。したがってNI=∣R/2−r∣NI=|R/2-r|である。r>R/2r>R/2と仮定するとNI=r−R/2NI=r-R/2であり、M∈νM\in\nuからIM≤IN+NM=rIM\le IN+NM=rとなるが、IM2=r2+ρ2>r2IM^2=r^2+\rho^2>r^2に反する。ゆえにr≤R/2r\le R/2であり、NI=R/2−rNI=R/2-rである。

ωa\omega_aについても同様に、MIa2=ra2+ρ2MI_a^2=r_a^2+\rho^2からM∉ωaM\notin\omega_aであり、φ(ωa)=ωa\varphi(\omega_a)=\omega_aと合わせて、ν\nuとωa\omega_aの共有点はφ(T′)\varphi(T')ただ一つである。補題 1.5によりNIa=R/2+raNI_a=R/2+r_aまたはNIa=∣R/2−ra∣NI_a=|R/2-r_a|である。補題 1.2によりX′X'はMMに関してDDと反対側にあるから線分MDMDの外にあり、NX′>R/2NX'>R/2である。NIa=∣R/2−ra∣NI_a=|R/2-r_a|と仮定する。ra≤R/2r_a\le R/2ならばNX′≤NIa+IaX′=R/2NX'\le NI_a+I_aX'=R/2となって矛盾し、ra>R/2r_a>R/2ならばIaM≤IaN+NM=raI_aM\le I_aN+NM=r_aとなってIaM>raI_aM>r_aに反する。ゆえにNIa=R/2+raNI_a=R/2+r_aである。

次にb=cb=cとする。AB=ACAB=AC、BM=CMBM=CMであるから三角形ABMABMとACMACMは合同であり、∠BAM=∠CAM\angle BAM=\angle CAMかつ∠AMB=∠AMC=90°\angle AMB=\angle AMC=90°である。すなわち直線AMAMはAAの内角の二等分線であり、かつ辺BCBCの垂直二等分線である。したがってIIとIaI_a(§A5.8 定理 9.2、§A5.8 定理 13.1)、外心OO、垂心HH(AAからの高さは直線AMAMである)はすべて直線AMAM上にあり、OHOHの中点NNも直線AMAM上にある。補題 1.1によりX=X′=MX=X'=Mであるから、ω\omegaとωa\omega_aはともにMMで直線BCBCに接し、IM=rIM=r、IaM=raI_aM=r_aである。NM=R/2>0NM=R/2>0からN≠MN\ne Mであり、NM⊥BCNM\perp BCであるから、直線BCBCはν\nuにMMで接する(§A5.6 補題 1.2)。円は、接点を除いて、接線に関して中心と同じ側にある。辺CACAの中点MbM_bはν\nu上にあって直線BCBCに関してAAと同じ側にあるから、NNは直線BCBCに関してAAと同じ側にある。IIは三角形の内部にあるからAAと同じ側にあり、IaI_aはAAと反対側にある。ゆえに直線AMAM上でMMはNNとIaI_aの間にあり、NIa=NM+MIa=R/2+raNI_a=NM+MI_a=R/2+r_aである。

NINIについては、三角形が正三角形でない場合と正三角形である場合に分ける。正三角形でなければ、ある頂点から出る二辺の長さが異なる。その頂点を改めてAAと呼ぶと、ω\omega、ν\nuとそれらの中心・半径は頂点の呼び方によらないから、b≠cb\ne cの場合の議論によりNI=R/2−rNI=R/2-rである。正三角形の場合、各頂点について上の合同の議論を適用すると、各辺の垂直二等分線は対頂点を通ってその内角を二等分し、対頂点からの高さでもある。したがってO=I=HO=I=Hであり、N=O=IN=O=Iである。補題 1.1によりX=MX=Mであるから、ω\omegaは中心IIでMMを通る円、ν\nuは中心N=IN=IでMMを通る円であり、ν=ω\nu=\omega、R/2=rR/2=r、NI=0=R/2−rNI=0=R/2-rである。

B-傍接円と C-傍接円については、頂点の名前を巡回させてNIa=R/2+raNI_a=R/2+r_aの議論を適用するとNIb=R/2+rbNI_b=R/2+r_b、NIc=R/2+rcNI_c=R/2+r_cを得る。以上で四つの距離の等式が示されたので、補題 2により九点円は内接円に内接し、三つの傍接円に外接する。▨

注意 1.6. 正三角形では九点円と内接円は同一の円であり、NI=0NI=0、r=R/2r=R/2である。この場合の内接は二円の一致であり、接点は円周全体である。三つの傍接円との外接は正三角形でも通常の意味で成り立ち、接点は各辺の中点である。

2 別証明:ベクトルによる証明

以下は、外心を原点とするベクトル計算による別証明である。

証明の方針。 2円の接触を中心間距離の等式に翻訳する。九点円の半径はR/2R/2なので、中心間距離公式が得られれば接触は直ちに従う。

補題 2.1 (フォイエルバッハの中心間距離公式). 非退化三角形について、九点円中心NNと内心・傍心の距離は

NI=R2−r,NIa=R2+raNI=\frac R2-r,\qquad NI_a=\frac R2+r_a

および巡回置換で得られる式を満たす。

証明. 外心を原点に取り、頂点の位置ベクトルをa,b,c\mathbf a,\mathbf b,\mathbf c(ノルムRR)とする。九点円中心は

n=a+b+c2.\mathbf n=\frac{\mathbf a+\mathbf b+\mathbf c}{2}.

辺長をa=BC,b=CA,c=ABa=BC,b=CA,c=AB、半周長をs=(a+b+c)/2s=(a+b+c)/2と置く。内心は辺長を重みとする重心

i=aa+bb+cc2s\mathbf i=\frac{a\mathbf a+b\mathbf b+c\mathbf c}{2s}

である。ここで

a⋅b=R2−c22,b⋅c=R2−a22,c⋅a=R2−b22\mathbf a\mathbin{\cdot}\mathbf b=R^2-\frac{c^2}{2}, \qquad \mathbf b\mathbin{\cdot}\mathbf c=R^2-\frac{a^2}{2}, \qquad \mathbf c\mathbin{\cdot}\mathbf a=R^2-\frac{b^2}{2}

を使う。x=s−a,y=s−b,z=s−cx=s-a,y=s-b,z=s-cと置けばa=y+z,b=z+x,c=x+ya=y+z,b=z+x,c=x+y、x+y+z=sx+y+z=sである。またヘロンの公式と面積公式より

Δ2=sxyz,Δ=rs,abc=4RΔ.\Delta^2=sxyz,\qquad \Delta=rs,\qquad abc=4R\Delta.

まず

n−i=xa+yb+zc2s\mathbf n-\mathbf i=\frac{x\mathbf a+y\mathbf b+z\mathbf c}{2s}

である。∣a∣=∣b∣=∣c∣=R|\mathbf a|=|\mathbf b|=|\mathbf c|=Rと内積の式を使うと

4s2∣n−i∣2=R2s2−(c2xy+a2yz+b2zx).4s^2|\mathbf n-\mathbf i|^2 =R^2s^2-\bigl(c^2xy+a^2yz+b^2zx\bigr).

ここでa=y+z,b=z+x,c=x+ya=y+z,b=z+x,c=x+yを展開すると

c2xy+a2yz+b2zx=s(abc−4xyz)c^2xy+a^2yz+b^2zx=s\bigl(abc-4xyz\bigr)

である。したがって

4s2∣n−i∣2=R2s2−4RΔs+4Δ2=s2(R−2r)2,\begin{aligned} 4s^2|\mathbf n-\mathbf i|^2 &=R^2s^2-4R\Delta s+4\Delta^2\\ &=s^2(R-2r)^2, \end{aligned}

ゆえにNI=R/2−rNI=R/2-rとなる。

次に A-傍心については

ia=−aa+bb+cc2x\mathbf i_a=\frac{-a\mathbf a+b\mathbf b+c\mathbf c}{2x}

なので

n−ia=sa−zb−yc2x.\mathbf n-\mathbf i_a=\frac{s\mathbf a-z\mathbf b-y\mathbf c}{2x}.

同じ内積計算から

4x2∣n−ia∣2=R2x2+c2sz−a2yz+b2sy.4x^2|\mathbf n-\mathbf i_a|^2 =R^2x^2+c^2sz-a^2yz+b^2sy.

さらにa=y+z,b=z+x,c=x+ya=y+z,b=z+x,c=x+yの直接展開により

c2sz−a2yz+b2sy=abc x+4Δ2.c^2sz-a^2yz+b^2sy=abc\,x+4\Delta^2.

ここでra=Δ/xr_a=\Delta/xとabc=4RΔabc=4R\Deltaを代入すると

4x2∣n−ia∣2=R2x2+4RΔx+4Δ2=x2(R+2ra)2,\begin{aligned} 4x^2|\mathbf n-\mathbf i_a|^2 &=R^2x^2+4R\Delta x+4\Delta^2\\ &=x^2(R+2r_a)^2, \end{aligned}

したがってNIa=R/2+raNI_a=R/2+r_aである。B-傍心と C-傍心については添字を巡回させれば同じ式が得られる。以上で中心間距離公式が示された。▨

証明. 九点円の半径はR/2R/2である。中心間距離公式から

NI=R2−r=∣R2−r∣NI=\frac R2-r=\left|\frac R2-r\right|

なので、接触条件の補題により九点円は内接円に内接する。また

NIa=R2+ra,NIb=R2+rb,NIc=R2+rcNI_a=\frac R2+r_a,\qquad NI_b=\frac R2+r_b,\qquad NI_c=\frac R2+r_c

はそれぞれ九点円の半径と傍接円の半径の和である。したがって九点円は3つの傍接円に外接する。正三角形ではN=IN=Iなどの中心一致が起こるが、半径は正であり、接触の等式自体は保たれる。▨

参考文献

  1. H. S. M. Coxeter and S. L. Greitzer, Geometry Revisited, New Mathematical Library 19, Mathematical Association of America, 1967.

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