§C2.11メビウス変換と複比の保存

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メビウス変換とは、複素数平面上の点をf(z)=(az+b)/(cz+d)f(z)=(az+b)/(cz+d)(ad−bc≠0ad-bc\ne0)で移し、必要なら無限遠点も加えて定義した変換である。この記事は「複素数平面」を前提にする。複素数を実部と虚部をもつ点として見て、掛け算を回転と拡大として読むことができること、共役と絶対値を計算することができることを使う。証明では、反転・円周角・向きをもつ角といった初等幾何の道具も用いる。

ここでいう「円円対応」は、直線を無限遠点を通る円とみなす見方を含む。したがって、普通の円が普通の円へ移る場合だけでなく、円が直線へ移る場合も同じ一つの定理として扱える。

定理 1 (メビウス変換の基本不変性(主定理)). 拡張複素平面C^=C∪{∞}\widehat{\mathbb C}=\mathbb C\cup\{\infty\}上で、a,b,c,d∈Ca,b,c,d\in\mathbb C、Δ=ad−bc≠0\Delta=ad-bc\ne0とし、f(z)=(az+b)/(cz+d)f(z)=(az+b)/(cz+d)を極では∞\infty、∞\inftyではa/ca/c(c=0c=0なら∞\infty)として定める。この全単射は、直線に∞\inftyを加えたものを含む一般化円を一般化円へ写し、定義できる交角と、相異なる4点の行列式表示による複比を保存する。

1 まず図で見る:円が円または直線へ移る

具体例として

f(z)=1z−2f(z)=\frac{1}{z-2}

を考える。これは(a,b,c,d)=(0,1,1,−2)(a,b,c,d)=(0,1,1,-2)で、行列式は−1-1である。単位円上の点をz=cos⁡t+isin⁡tz=\cos t+i\sin tとすると、w=f(z)=x+iyw=f(z)=x+iyの実部と虚部は

x=cos⁡t−25−4cos⁡t,y=−sin⁡t5−4cos⁡tx=\frac{\cos t-2}{5-4\cos t},\qquad y=\frac{-\sin t}{5-4\cos t}

となる。下の図では、同じttから得た点zzとwwをそれぞれの円の上に表示している。さらに、動かす円を中心mm(実数)、半径rrの円Γ\Gammaへ一般化し、mmとrrをスライダーで変えることができるようにした。d=(2−m)2−r2d=(2-m)^2-r^2と置くと、像は中心(m−2)/d(m-2)/d、半径r/∣d∣r/|d|の円である。m=0m=0、r=1r=1が上の単位円の場合であり、このときd=3d=3で、中心−2/3-2/3、半径1/31/3が得られる。

図から「円が円になる」ことは見えた。しかし、有限個のttを動かした観察や、図を描くための数値計算は証明ではない。以下では、無限遠点を含む定義に戻り、どの点を選んでも成り立つ理由を示す。

2 拡張複素平面とメビウス変換

定義 2.1 (拡張複素平面). 拡張複素平面を

C^=C∪{∞}\widehat{\mathbb C}=\mathbb C\cup\{\infty\}

と定める。複素数zzを同じ複素数で表し、∞\inftyは有限な複素数ではない追加の1点とする。複素数zzが大きさ無限大へ近づくときの行き先を記述するため、∞\inftyの近くの座標をζ=1/z\zeta=1/zとする。

定義 2.2 (メビウス変換).a,b,c,d∈Ca,b,c,d\in\mathbb Cが

Δ=ad−bc≠0\Delta=ad-bc\ne0

を満たすとする。有限なzzでcz+d≠0cz+d\ne0のとき

f(z)=az+bcz+df(z)=\frac{az+b}{cz+d}

と定める。c≠0c\ne0かつcz+d=0cz+d=0ならf(z)=∞f(z)=\inftyとし、無限遠点では

f(∞)={a/c(c≠0),∞(c=0)f(\infty)= \begin{cases} a/c & (c\ne0),\\ \infty & (c=0) \end{cases}

と定める。このf:C^→C^f:\widehat{\mathbb C}\to\widehat{\mathbb C}をメビウス変換という。

Δ≠0\Delta\ne0ならaaとccが同時に00になることも、bbとddが同時に00になることもない。したがって、分子と分母が同時に00になる曖昧な点はない。行列

M=(abcd)M=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}

で表すと、zzを同次座標Z=(u,v)TZ=(u,v)^{\mathsf T}のz=u/vz=u/v(v≠0v\ne0)、∞=[1:0]\infty=[1:0]として

Z⟼MZZ\longmapsto MZ

と書ける。det⁡M=Δ≠0\det M=\Delta\ne0なのでこれは可逆で、逆変換は

f−1(w)=dw−b−cw+af^{-1}(w)=\frac{dw-b}{-cw+a}

(無限遠点では同じ規則を適用)である。よってメビウス変換は拡張複素平面の全単射である。

3 円と直線の統一

定義 3.1 (一般化円).C^\widehat{\mathbb C}の一般化円とは、普通の円または直線を、直線の場合には∞\inftyを加えて表した集合である。有限部分は、実数A,CA,Cと複素数BBを用いて

A∣z∣2+Bz+B‾ z‾+C=0A|z|^2+Bz+\overline{B}\,\overline z+C=0

と書ける。ただし、普通の円の場合はA≠0A\ne0、直線の場合はA=0A=0かつB≠0B\ne0とする。

補題 3.2 (相似変換と対称移動による一般化円の像).α,β∈C\alpha,\beta\in\mathbb C、α≠0\alpha\ne0とし、g(z)=αz+βg(z)=\alpha z+\beta、g(∞)=∞g(\infty)=\inftyと定める。またκ(z)=z‾\kappa(z)=\overline z、κ(∞)=∞\kappa(\infty)=\inftyと定める。ggとκ\kappaはどちらも普通の円を普通の円へ、直線を直線へ写す。したがってどちらも一般化円を一般化円へ写す。

証明. 相異なる2つの有限な複素数z,wz,wに対し∣g(z)−g(w)∣=∣α∣ ∣z−w∣|g(z)-g(w)|=|\alpha|\,|z-w|と∣κ(z)−κ(w)∣=∣z−w∣|\kappa(z)-\kappa(w)|=|z-w|が成り立つ。以下、hhをggまたはκ\kappaとし、kkをそれぞれ∣α∣|\alpha|または11とする。hhはC^\widehat{\mathbb C}の全単射であり、その逆写像g−1(w)=(w−β)/αg^{-1}(w)=(w-\beta)/\alphaとκ−1=κ\kappa^{-1}=\kappaも同じ形をもつ。

中心γ\gamma、半径r>0r>0の円Γ\Gammaについて、有限なzzがΓ\Gammaに属することと∣z−γ∣=r|z-\gamma|=rは同値である。∣h(z)−h(γ)∣=k∣z−γ∣|h(z)-h(\gamma)|=k|z-\gamma|であるから、これは∣h(z)−h(γ)∣=kr|h(z)-h(\gamma)|=krと同値である。hhはC\mathbb Cの全単射なので、h(Γ)h(\Gamma)は中心h(γ)h(\gamma)、半径krkrの円の全体である。

直線ℓ\ellの上に相異なる2点z1,z2z_1,z_2をとると、ℓ={z1+t(z2−z1)∣t∈R}\ell=\{z_1+t(z_2-z_1)\mid t\in\mathbb R\}である。ggとκ\kappaはどちらも実数倍と和を保つので、

h(z1+t(z2−z1))=h(z1)+t(h(z2)−h(z1))(t∈R)h(z_1+t(z_2-z_1))=h(z_1)+t\bigl(h(z_2)-h(z_1)\bigr)\qquad(t\in\mathbb R)

が成り立つ。hhは単射だからh(z1)≠h(z2)h(z_1)\ne h(z_2)であり、右辺がttの全体を動いて得る集合はh(z1)h(z_1)とh(z2)h(z_2)を通る直線の全体である。よってh(ℓ)h(\ell)はその直線である。h(∞)=∞h(\infty)=\inftyなので、ℓ∪{∞}\ell\cup\{\infty\}の像はh(ℓ)∪{∞}h(\ell)\cup\{\infty\}である。▨

補題 3.3 (メビウス変換の分解).Δ=ad−bc≠0\Delta=ad-bc\ne0とし、ffを定義 2.2のメビウス変換とする。c=0c=0のときd≠0d\ne0であり

f(z)=ad z+bdf(z)=\frac ad\,z+\frac bd

である。c≠0c\ne0のとき、T(z)=z+dcT(z)=z+\dfrac dc、J(z)=1zJ(z)=\dfrac1z、S(w)=ac−Δc2 wS(w)=\dfrac ac-\dfrac{\Delta}{c^2}\,wと置くと

f=S∘J∘Tf=S\circ J\circ T

がC^\widehat{\mathbb C}の全体で成り立つ。ここでT(∞)=S(∞)=∞T(\infty)=S(\infty)=\infty、J(0)=∞J(0)=\infty、J(∞)=0J(\infty)=0と定める。

証明.c=0c=0のときΔ=ad≠0\Delta=ad\ne0なのでd≠0d\ne0であり、有限なzzに対してf(z)=(az+b)/df(z)=(az+b)/dである。c=0c=0の場合の定義によりf(∞)=∞f(\infty)=\inftyであり、表示の右辺も∞\inftyを∞\inftyへ写す。

c≠0c\ne0とする。zzが有限でz≠−d/cz\ne-d/cならz+d/c≠0z+d/c\ne0であり

S(J(T(z)))=ac−Δc2⋅1z+d/c=ac−Δc(cz+d)=a(cz+d)−Δc(cz+d)=c(az+b)c(cz+d)=f(z)S(J(T(z)))=\frac ac-\frac{\Delta}{c^2}\cdot\frac{1}{z+d/c} =\frac ac-\frac{\Delta}{c(cz+d)} =\frac{a(cz+d)-\Delta}{c(cz+d)} =\frac{c(az+b)}{c(cz+d)} =f(z)

となる。3つ目の等号から4つ目の等号へはa(cz+d)−(ad−bc)=acz+bc=c(az+b)a(cz+d)-(ad-bc)=acz+bc=c(az+b)を用いた。z=−d/cz=-d/cではT(z)=0T(z)=0、J(0)=∞J(0)=\infty、S(∞)=∞S(\infty)=\inftyであり、定義でもf(−d/c)=∞f(-d/c)=\inftyである。z=∞z=\inftyではT(∞)=∞T(\infty)=\infty、J(∞)=0J(\infty)=0、S(0)=a/cS(0)=a/cであり、定義でもf(∞)=a/cf(\infty)=a/cである。▨

補題 3.4 (逆数と単位円に関する反転).ι\iotaを原点O\mathrm{O}を中心とする半径11の反転(§A5.19 定義 2.1)とし、ι(0)=∞\iota(0)=\infty、ι(∞)=0\iota(\infty)=0と定めてC^\widehat{\mathbb C}へ拡張する。κ(z)=z‾\kappa(z)=\overline zとすると、C^\widehat{\mathbb C}の全体で

J=κ∘ι=ι∘κJ=\kappa\circ\iota=\iota\circ\kappa

が成り立つ。ここでJ(z)=1/zJ(z)=1/zは補題 3.3のJJである。

証明. 複素数zzを、原点を基準点とする位置ベクトルとして見る。この同一視のもとで、複素数の絶対値は原点からの距離であり、実数倍はベクトルの実数倍である。z≠0z\ne0が有限なとき、§A5.19 定義 2.1の反転像z∗z^{*}は半直線Oz\mathrm{O}zの上にあってOz⋅Oz∗=1\mathrm{O}z\cdot\mathrm{O}z^{*}=1を満たすから、正の実数倍として

ι(z)=z∣z∣2\iota(z)=\frac{z}{|z|^{2}}

と書ける。したがって

κ(ι(z))=(z∣z∣2)‾=z‾∣z∣2=z‾zz‾=1z\kappa(\iota(z))=\overline{\left(\frac{z}{|z|^{2}}\right)}=\frac{\overline z}{|z|^{2}}=\frac{\overline z}{z\overline z}=\frac1z

であり、ι(κ(z))=z‾/∣z‾∣2=z‾/∣z∣2\iota(\kappa(z))=\overline z/|\overline z|^{2}=\overline z/|z|^{2}も同じ値である。z=0z=0では3つの写像の値がいずれも∞\infty、z=∞z=\inftyではいずれも00である。▨

定理 3.5 (メビウス変換の円円対応).ffをΔ=ad−bc≠0\Delta=ad-bc\ne0を満たすメビウス変換とする。ffはC^\widehat{\mathbb C}の一般化円を一般化円へ写す。したがって、普通の円の像は普通の円または直線であり、直線の像も普通の円または直線である。

証明.c=0c=0のとき、補題 3.3によりf(z)=(a/d)z+b/df(z)=(a/d)z+b/dであり、Δ=ad≠0\Delta=ad\ne0からa/d≠0a/d\ne0である。補題 3.2をα=a/d\alpha=a/d、β=b/d\beta=b/dに適用すると、ffは一般化円を一般化円へ写す。

c≠0c\ne0とする。補題 3.3によりf=S∘J∘Tf=S\circ J\circ Tであり、TTとSSはいずれも補題 3.2のg(z)=αz+βg(z)=\alpha z+\betaの形をもつ(TTではα=1\alpha=1、SSではα=−Δ/c2≠0\alpha=-\Delta/c^{2}\ne0)。したがってTTとSSは一般化円を一般化円へ写す。さらに補題 3.4によりJ=κ∘ιJ=\kappa\circ\iotaであり、κ\kappaも補題 3.2により一般化円を一般化円へ写す。残るι\iotaについて、一般化円Γ\Gammaを次の4つの場合に分けて調べる。位置ベクトルを複素数と同一視し、§A5.19 定理 3.1を反転の中心O\mathrm{O}が原点、半径がρ=1\rho=1の場合に適用する。

  1. Γ\GammaがO\mathrm{O}を通らない普通の円である場合。中心をγ\gamma、半径をr>0r>0としδ=∣γ∣2−r2\delta=|\gamma|^{2}-r^{2}と置くとδ≠0\delta\ne0であり、ι(Γ)\iota(\Gamma)は中心γ/δ\gamma/\delta、半径r/∣δ∣r/|\delta|の円である。この円がO\mathrm{O}を通るのは∣γ∣/∣δ∣=r/∣δ∣|\gamma|/|\delta|=r/|\delta|のとき、すなわち∣γ∣=r|\gamma|=rのときに限るが、これはO∈Γ\mathrm{O}\in\Gammaを意味するので、いまの場合には起こらない。よって像はO\mathrm{O}を通らない普通の円である。
  2. Γ\GammaがO\mathrm{O}を通る普通の円である場合。ι\iotaはΓ∖{O}\Gamma\setminus\{\mathrm{O}\}を、O\mathrm{O}を通らない直線ℓ\ellの全体へ写す。ι(O)=∞\iota(\mathrm{O})=\inftyであるからι(Γ)=ℓ∪{∞}\iota(\Gamma)=\ell\cup\{\infty\}であり、これは一般化円である。
  3. Γ=ℓ∪{∞}\Gamma=\ell\cup\{\infty\}でℓ\ellがO\mathrm{O}を通らない場合。ι(ℓ)\iota(\ell)はO\mathrm{O}を通るある円Γ′\Gamma'に含まれ、有限な点の反転像はO\mathrm{O}にならないのでι(ℓ)⊂Γ′∖{O}\iota(\ell)\subset\Gamma'\setminus\{\mathrm{O}\}である。逆の包含を次のように得る。ι\iotaはC∖{O}\mathbb C\setminus\{\mathrm{O}\}の上で自分自身を逆写像とする(§A5.19 定理 2.2の 2)。Γ′\Gamma'はO\mathrm{O}を通る円だから、場合 2 の等号をΓ′\Gamma'へ適用するとι(Γ′∖{O})\iota(\Gamma'\setminus\{\mathrm{O}\})はO\mathrm{O}を通らない直線の全体である。この直線はι(ι(ℓ))=ℓ\iota(\iota(\ell))=\ellを含むのでℓ\ellに等しい。両辺へもう一度ι\iotaを施すとΓ′∖{O}=ι(ℓ)\Gamma'\setminus\{\mathrm{O}\}=\iota(\ell)を得る。ι(∞)=O\iota(\infty)=\mathrm{O}であるからι(Γ)=Γ′\iota(\Gamma)=\Gamma'である。
  4. Γ=ℓ∪{∞}\Gamma=\ell\cup\{\infty\}でℓ\ellがO\mathrm{O}を通る場合。ι\iotaはℓ∖{O}\ell\setminus\{\mathrm{O}\}を自分自身へ写し、§A5.19 定理 2.2の 2 によりこれはℓ∖{O}\ell\setminus\{\mathrm{O}\}の上の全単射である。さらにO\mathrm{O}と∞\inftyを入れ替えるのでι(Γ)=Γ\iota(\Gamma)=\Gammaである。

いずれの場合も、上で求めたのはι(Γ)\iota(\Gamma)そのものであり、それは一般化円である。κ\kappa、TT、SSについても補題 3.2が像そのものを与える。よってf=S∘κ∘ι∘Tf=S\circ\kappa\circ\iota\circ Tは一般化円を一般化円へ写す。▨

注意 3.6 (この証明が扱う配置と除いた場合). 上の証明は、円が極を通る場合と直線が反転の中心を通る場合を場合分けとして扱っており、退化として除いてはいない。除いたのはΔ=0\Delta=0の場合だけである。Δ=0\Delta=0のとき、c≠0c\ne0ならffはz≠−d/cz\ne-d/cで値a/ca/cをとり、z=−d/cz=-d/cでは分子と分母がともに00になって式が定まらない。c=0c=0ならa=0a=0またはd=0d=0となって、ffは定数写像になるか、式そのものが定まらない。どちらの場合も像は一般化円ではない。

一般化円の方程式を同次座標で書くと、メビウス変換を行列の作用として扱うことができる。Z=(u,v)T≠0Z=(u,v)^{\mathsf T}\ne0に対し、

H=(AB‾BC),Z∗HZ=0H=\begin{pmatrix}A&\overline B\\B&C\end{pmatrix},\qquad Z^*HZ=0

と置く。ここでZ∗Z^*は共役転置である。v=1v=1とすれば定義 3.1の有限部分の方程式になり、Z=[1:0]Z=[1:0](つまり∞\infty)を代入するとA=0A=0のときだけ∞\inftyが入る。さらにdet⁡H=AC−∣B∣2<0\det H=AC-|B|^2<0なら、A≠0A\ne0のとき半径が正の円、A=0A=0のとき直線になる。

証明 (別証明:同次座標の二次形式による証明). 一般化円を表すHHを上の形でとり、W=MZW=MZとおく。MMは可逆なのでZ=M−1WZ=M^{-1}Wであり、元の一般化円の像は

W∗(M−1)∗HM−1W=0W^*(M^{-1})^*HM^{-1}W=0

を満たすWWの集合である。ここで

H′=(M−1)∗HM−1H'=(M^{-1})^*HM^{-1}

とおく。HHがエルミート行列(H∗=HH^*=H)なのでH′H'もエルミート行列であり、対角成分は実数、非対角成分は互いに共役である。また行列式は

det⁡H′=det⁡((M−1)∗)det⁡(H)det⁡(M−1)=det⁡H∣det⁡M∣2<0\det H'=\det((M^{-1})^*)\det(H)\det(M^{-1}) =\frac{\det H}{|\det M|^2}<0

となる。したがってH′H'も、W∗H′W=0W^*H'W=0が普通の円または∞\inftyを含む直線を表す型である。実際、有限部分でH′=(A′B′‾B′C′)H'=\left(\begin{smallmatrix}A'&\overline{B'}\\B'&C'\end{smallmatrix}\right)と書けば、A′≠0A'\ne0のときは平方完成により中心−B′‾/A′-\overline{B'}/A'、半径∣B′∣2−A′C′/∣A′∣\sqrt{|B'|^2-A'C'}/|A'|の円となり、A′=0A'=0のときはB′≠0B'\ne0なので直線となる。

MMは全単射だから、この零点集合は「像に含まれる集合」ではなく像そのものである。よって一般化円は一般化円へ写る。▨

普通の円が直線へ変わる境目は、その円がffの極

z0=−d/c(c≠0)z_0=-d/c\qquad(c\ne0)

を通る場合である。このとき円上のz0z_0は∞\inftyへ移るので、有限平面だけを見れば円から1点が抜け、像は直線に見える。拡張複素平面に∞\inftyを戻すと、対応は途切れない。

f(z)=1/(z−2)f(z)=1/(z-2)の極はz0=2z_0=2である。中心2−s2-s、半径s>0s>0の円はこの極を通る。u=z−2u=z-2と置くと、この円は∣u+s∣=s|u+s|=s、すなわち∣u∣2+2sRe⁡u=0|u|^2+2s\operatorname{Re}u=0である。w=f(z)=1/uw=f(z)=1/uを代入し、∣u∣2=1/∣w∣2|u|^2=1/|w|^2とRe⁡u=Re⁡w/∣w∣2\operatorname{Re}u=\operatorname{Re}w/|w|^2を用いると1+2sRe⁡w=01+2s\operatorname{Re}w=0を得る。したがって像は直線Re⁡w=−1/(2s)\operatorname{Re}w=-1/(2s)である。

4 角度の保存

定理 4.1 (メビウス変換の角度保存).ffをメビウス変換とし、p∈C^p\in\widehat{\mathbb C}で交わる2本の滑らかな曲線の接ベクトルがともに00でないとする。ffによる像曲線が定義される点で、2曲線の交角は保存される。有限点p=z0∈Cp=z_0\in\mathbb Cでcz0+d≠0cz_0+d\ne0のとき、これは特に

f′(z0)=Δ(cz0+d)2≠0f'(z_0)=\frac{\Delta}{(cz_0+d)^2}\ne0

が、2本の接ベクトルに同じ回転と拡大を施すことを意味する。角度の主張は、接線が存在し、曲線が極で途切れない範囲での主張である。

証明. まず有限な正則点z0z_0を考える。h→0h\to0に対して、分子を展開すると

f(z0+h)−f(z0)=(a(z0+h)+b)(cz0+d)−(az0+b)(c(z0+h)+d)(cz0+d)(c(z0+h)+d)=Δh(cz0+d)(c(z0+h)+d).\begin{aligned} f(z_0+h)-f(z_0) &=\frac{(a(z_0+h)+b)(cz_0+d)-(az_0+b)(c(z_0+h)+d)} {(cz_0+d)(c(z_0+h)+d)}\\ &=\frac{\Delta h}{(cz_0+d)(c(z_0+h)+d)}. \end{aligned}

したがって

lim⁡h→0f(z0+h)−f(z0)h=Δ(cz0+d)2≠0.\lim_{h\to0}\frac{f(z_0+h)-f(z_0)}{h} =\frac{\Delta}{(cz_0+d)^2}\ne0.

曲線γj(t)\gamma_j(t)(j=1,2j=1,2)がγj(0)=z0\gamma_j(0)=z_0、γj′(0)≠0\gamma'_j(0)\ne0を満たすなら、連鎖律により

(f∘γj)′(0)=f′(z0)γj′(0).(f\circ\gamma_j)'(0)=f'(z_0)\gamma'_j(0).

複素数f′(z0)f'(z_0)を掛ける操作は、絶対値を∣f′(z0)∣|f'(z_0)|倍し、偏角をarg⁡f′(z0)\arg f'(z_0)だけ足す。同じ数を2本の接ベクトルに掛けるので、2本の偏角の差、すなわち交角は変わらない。

p=∞p=\infty、またはppかf(p)f(p)が有限座標では極になる場合も、局所座標を取り替えれば同じ計算になる。具体的には∞\inftyの近くでζ=1/z\zeta=1/z、像側が∞\inftyの近くならη=1/w\eta=1/wを使う。η∘f∘ζ−1\eta\circ f\circ\zeta^{-1}はζ=0\zeta=0の近くで分子と分母が同時に消えない一次分数式となり、その導関数は上の計算(係数を取り替えただけ)で00ではない。したがって局所座標で接ベクトルに同じ複素数を掛けることになり、交角はここでも保存される。▨

特に、2つの一般化円が交わる点での角度は、メビウス変換の前後で同じである。たとえば円周角を接線との角へ読み替える発想は、既習の§A5.5 定理 1.1や接弦定理と同じく「角を別の図形の角へ移す」操作だが、メビウス変換では長さを保たなくても角度だけが残る。

命題 4.2.ffをΔ≠0\Delta\ne0のメビウス変換とし、ppを有限な複素数でffの極でないものとする。ppで交わる2本の滑らかな曲線の接ベクトルがともに00でなく、それぞれの像曲線がf(p)f(p)で接線をもつとする。このとき、 2曲線のppにおける交角は、大きさも向きも像曲線のf(p)f(p)における交角と一致する。

証明 (反転と相似変換による証明).α≠0\alpha\ne0に対するg(z)=αz+βg(z)=\alpha z+\betaを考える。α=∣α∣(cos⁡θ+isin⁡θ)\alpha=|\alpha|(\cos\theta+i\sin\theta)と書けば、ggは原点を中心とする角θ\thetaの回転と、原点を中心とする比∣α∣|\alpha|の相似拡大と、β\betaによる平行移動の合成である。回転・相似拡大・平行移動はいずれも2直線のなす角を大きさも向きも変えずに写すので、ggは交わる2曲線の接線のなす角を大きさも向きも保つ。κ(z)=z‾\kappa(z)=\overline zは実軸に関する対称移動なので、角の大きさを保ち、向きを逆にする。

c=0c=0のとき、補題 3.3によりffはα=a/d≠0\alpha=a/d\ne0、β=b/d\beta=b/dのggそのものであり、主張が従う。

c≠0c\ne0とする。補題 3.3と補題 3.4によりf=S∘κ∘ι∘Tf=S\circ\kappa\circ\iota\circ Tである。ppが極でないことからT(p)=p+d/c≠0T(p)=p+d/c\ne0であり、ι\iotaはT(p)T(p)の近傍で定義されている。S∘κS\circ\kappaは逆をもつ実一次写像なので、ι∘T\iota\circ Tによる像曲線はffによる像曲線を(S∘κ)−1(S\circ\kappa)^{-1}で写したものであり、仮定により後者がf(p)f(p)で接線をもつことから、前者もι(T(p))\iota(T(p))で接線をもつ。§A5.19 定理 4.1の仮定が満たされるので、ι\iotaはT(p)T(p)で交わる2曲線の接線のなす角の大きさを保ち、向きを逆にする。TTとSSはggの形なので角を大きさも向きも保つ。したがってffの下で、角の大きさは4つの写像を通して変わらず、向きの反転はι\iotaとκ\kappaで2回起こって打ち消し合う。よってffはppにおける交角を大きさも向きも保つ。▨

注意 4.3 (反転による証明が扱う範囲).命題 4.2は、ppが有限でffの極でない場合を扱う。この場合にはf(p)f(p)も有限である。p=∞p=\inftyの場合とppが極である場合には、§A5.19 定理 4.1を適用する有限の点が無い。この2つの場合を含む主張が定理 4.1であり、その証明が用いた局所座標ζ=1/z\zeta=1/zとη=1/w\eta=1/wによる計算が、反転による証明の届かない範囲を補っている。

5 複比

定義 5.1 (複比). 拡張複素平面上の相異なる4点z1,z2,z3,z4z_1,z_2,z_3,z_4に対し、分母が00にならないとき、その複比を同次座標で

(z1,z2;z3,z4)=[Z3,Z1][Z4,Z2][Z3,Z2][Z4,Z1],Zj=(ujvj),zj=[uj:vj](z_1,z_2;z_3,z_4) =\frac{[Z_3,Z_1][Z_4,Z_2]}{[Z_3,Z_2][Z_4,Z_1]}, \qquad Z_j=\begin{pmatrix}u_j\\v_j\end{pmatrix},\quad z_j=[u_j:v_j]

と定める。ただし

[U,V]=uUvV−vUuV[U,V]=u_Uv_V-v_Uu_V

である。相異なる4点なら分母は自動的に00でない。有限点zj∈Cz_j\in\mathbb Cでは

(z1,z2;z3,z4)=(z3−z1)(z4−z2)(z3−z2)(z4−z1).(z_1,z_2;z_3,z_4) =\frac{(z_3-z_1)(z_4-z_2)}{(z_3-z_2)(z_4-z_1)}.

同次座標の代表ZjZ_jは00でない複素数倍までしか決まらないが、分子と分母で各ZjZ_jの倍数が 1回ずつ現れるため、値は代表の選択によらない。z4=∞z_4=\inftyのときも、Z4=(1,0)TZ_4=(1,0)^{\mathsf T}を代入すればよい。有限点だけの式を使って極限を取れば

(z1,z2;z3,∞)=z3−z1z3−z2(z_1,z_2;z_3,\infty)=\frac{z_3-z_1}{z_3-z_2}

となるので、無限遠点を別の特別規則として暗記する必要はない。

実軸上の4点については、この定義は有向線分比の比と一致する。実際、既習の§A5.9 定義 2.1の向きを使えば

(A,B;X,Y)=AX‾/XB‾AY‾/YB‾(A,B;X,Y) =\frac{\overline{AX}/\overline{XB}}{\overline{AY}/\overline{YB}}

である。符号を含む比を使う点は、チェバ・メネラウスの定理§A5.9 定理 5.2から複比へ進む自然な入口になっている。

定理 5.2 (メビウス変換による複比の保存).ffをΔ≠0\Delta\ne0のメビウス変換とし、z1,z2,z3,z4z_1,z_2,z_3,z_4を複比が定義できる4点とする。すると

(f(z1),f(z2);f(z3),f(z4))=(z1,z2;z3,z4)(f(z_1),f(z_2);f(z_3),f(z_4)) =(z_1,z_2;z_3,z_4)

が成り立つ。点のうち∞\inftyが含まれる場合も、この同次座標の定義で同じ式が成り立つ。

証明. 各zjz_jの代表を列ベクトルZjZ_jとし、Wj=MZjW_j=MZ_jをf(zj)f(z_j)の代表とする。2つの列ベクトルに対する行列式の積の公式から

[Wi,Wj]=[MZi,MZj]=det⁡(M)[Zi,Zj]=Δ[Zi,Zj][W_i,W_j]=[MZ_i,MZ_j]=\det(M)[Z_i,Z_j]=\Delta[Z_i,Z_j]

を得る。よって定義をWjW_jで書き直すと

(f(z1),f(z2);f(z3),f(z4))=[W3,W1][W4,W2][W3,W2][W4,W1]=(Δ[Z3,Z1])(Δ[Z4,Z2])(Δ[Z3,Z2])(Δ[Z4,Z1])=[Z3,Z1][Z4,Z2][Z3,Z2][Z4,Z1]=(z1,z2;z3,z4).\begin{aligned} (f(z_1),f(z_2);f(z_3),f(z_4)) &=\frac{[W_3,W_1][W_4,W_2]}{[W_3,W_2][W_4,W_1]}\\ &=\frac{(\Delta[Z_3,Z_1])(\Delta[Z_4,Z_2])} {(\Delta[Z_3,Z_2])(\Delta[Z_4,Z_1])}\\ &=\frac{[Z_3,Z_1][Z_4,Z_2]}{[Z_3,Z_2][Z_4,Z_1]}\\ &=(z_1,z_2;z_3,z_4). \end{aligned}

Δ≠0\Delta\ne0なので、相異なる点は相異なる点へ移り、分母が00でないという条件も保たれる。またZj=(1,0)TZ_j=(1,0)^{\mathsf T}を許しているため、zj=∞z_j=\inftyの場合を有限点の場合へ近づける極限として追加する必要はない。同次座標の計算そのものが無限遠点を含む完全な証明になっている。▨

複比保存は、メビウス変換が長さを保つという主張ではない。たとえば最初の図でm=0m=0、r=1r=1とすると、円Γ\Gammaの半径は11から1/31/3へ変わり、中心も移る。それでも、同じ4点を変換したときの「4つの差の積の比」は変わらない。長さや角を個別に測る代わりに、変換で相殺される量を選んでいるのである。

6 複比が実数であることと四点共円

複比の値そのものは複素数だが、その値が実数になるかどうかは、4点の配置についての初等幾何の条件で言いかえることができる。

定理 6.1 (複比が実数であることと四点共円). 相異なる4つの有限な複素数z1,z2,z3,z4z_1,z_2,z_3,z_4について、複比(z1,z2;z3,z4)(z_1,z_2;z_3,z_4)が実数であることと、 4点が同一の円周上にあるか同一の直線上にあることは同値である。

証明. 4点が相異なるので、複比の分子と分母のどの因子も00ではなく、(z1,z2;z3,z4)(z_1,z_2;z_3,z_4)は00でない複素数である。

(z1,z2;z3,z4)=(z3−z1)(z4−z2)(z3−z2)(z4−z1)=(z1−z3)/(z2−z3)(z1−z4)/(z2−z4)(z_1,z_2;z_3,z_4) =\frac{(z_3-z_1)(z_4-z_2)}{(z_3-z_2)(z_4-z_1)} =\frac{(z_1-z_3)/(z_2-z_3)}{(z_1-z_4)/(z_2-z_4)}

であるから、2π2\piを法として

arg⁡(z1,z2;z3,z4)=arg⁡z1−z3z2−z3−arg⁡z1−z4z2−z4\arg(z_1,z_2;z_3,z_4) =\arg\frac{z_1-z_3}{z_2-z_3}-\arg\frac{z_1-z_4}{z_2-z_4}

が成り立つ。複素数(z1−z3)/(z2−z3)(z_1-z_3)/(z_2-z_3)の偏角は、半直線z3z2z_3z_2を半直線z3z1z_3z_1へ重ねる回転の角である。180°180°を法として見れば、これは直線z3z2z_3z_2と直線z3z1z_3z_1の向きをもつ角∠(z3z2,z3z1)\angle(z_3z_2,z_3z_1)に等しい。z4z_4についても同様である。00でない複素数が実数であることと、その偏角がπ\piの整数倍であることは同値であり、π\piは180°180°にあたる。したがって、複比が実数であることと

∠(z3z2,z3z1)=∠(z4z2,z4z1)(mod180°)\angle(z_3z_2,z_3z_1)=\angle(z_4z_2,z_4z_1)\pmod{180°}

は同値である。向きをもつ角の規約は§C2.4 定義 3により、次に用いる四点共円の判定は§C2.4 補題 5による。

この角の等式が成り立つとする。∠(z3z2,z3z1)=0\angle(z_3z_2,z_3z_1)=0の場合、直線z3z2z_3z_2と直線z3z1z_3z_1が一致するのでz1,z2,z3z_1,z_2,z_3は同一直線上にあり、∠(z4z2,z4z1)=0\angle(z_4z_2,z_4z_1)=0からz1,z2,z4z_1,z_2,z_4も同一直線上にある。z1≠z2z_1\ne z_2なので、この2つの直線はどちらもz1z_1とz2z_2を通る唯一の直線であり、4点は同一直線上にある。∠(z3z2,z3z1)≠0\angle(z_3z_2,z_3z_1)\ne0の場合、z1,z2,z3z_1,z_2,z_3もz1,z2,z4z_1,z_2,z_4も同一直線上にないので、§C2.4 補題 5を二点z2,z1z_2,z_1と、直線z1z2z_1z_2の上にない二点z3,z4z_3,z_4へ適用すると、4点は同一円周上にある。

逆に4点が同一直線上にあれば、∠(z3z2,z3z1)\angle(z_3z_2,z_3z_1)と∠(z4z2,z4z1)\angle(z_4z_2,z_4z_1)はどちらも00である。 4点が同一円周上にあれば、円周上の3点は同一直線上にないので、z3z_3とz4z_4は直線z1z2z_1z_2の上になく、§C2.4 補題 5により角の等式が成り立つ。いずれの場合も複比の偏角はπ\piの整数倍であり、複比は実数である。▨

注意 6.2 (無限遠点を含む場合と共円性の保存). 4点のうち1点が∞\inftyである場合も同じ形の主張が成り立つ。たとえばz4=∞z_4=\inftyのとき、複比は(z3−z1)/(z3−z2)(z_3-z_1)/(z_3-z_2)であり、これが実数であることは、z3−z1z_3-z_1がz3−z2z_3-z_2の実数倍であること、すなわちz1,z2,z3z_1,z_2,z_3が同一直線上にあることと同値である。∞\inftyが他の位置にある場合は、4点の順序を入れ替えると複比の値は逆数または11から引いた値などへ変わるだけで、実数であるかどうかは変わらないので、z4=∞z_4=\inftyの場合へ帰着する。直線に∞\inftyを加えたものは一般化円だから、定理 6.1は「4点が同一の一般化円の上にある」という形へ拡張される。

この形と定理 5.2を合わせると、メビウス変換は4点が同一の一般化円上にあるかどうかを変えない。これは定理 3.5を4点に制限した内容であり、複比の保存という代数的な等式が、共円・共線という初等幾何の条件を保つ形で読めることを示している。

7 複素解析への接続

有限な正則点では

f′(z)=ad−bc(cz+d)2f'(z)=\frac{ad-bc}{(cz+d)^2}

であり、Δ≠0\Delta\ne0なのでf′(z)≠0f'(z)\ne0。したがってメビウス変換は極を除けば正則で、逆変換も正則である。複素解析の言葉では、局所的に正則な逆をもつ等角写像の最も基本的な例になっている。円と直線の対応は、複素平面上の曲線を保つ性質の幾何的な現れであり、複比保存は射影幾何から複素解析へ渡る代数的な不変量である。

ここで扱ったのは有理関数としての計算と、その幾何的意味である。一般の正則関数が円を円へ写すわけではないし、正則関数の大域的な性質や留数をこの事実だけから導くこともできない。メビウス変換が特別なのは、一次分数式であり、同次座標の可逆な2次行列として扱える点にある。

参考文献

  1. John B. Conway, Functions of One Complex Variable I, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1978.
  2. Tristan Needham, Visual Complex Analysis, 25th Anniversary ed., Oxford University Press, 2023.
  3. H. S. M. Coxeter and S. L. Greitzer, Geometry Revisited, New Mathematical Library 19, Mathematical Association of America, 1967.

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