§C2.3九点円

最終更新

三角形では、三辺の中点、三本の高さの足、垂心と各頂点を結ぶ線分の中点という、定め方の異なる九点を取ることができます。本記事は、三角形の形を変えても九点が一つの円周上にあるという九点円と、その中心および半径を扱います。

定理 1 (九点円). 非退化三角形△ABC\triangle \mathrm{ABC}の外心をO\mathrm{O}、外接円の半径をR>0R>0、垂心をH\mathrm{H}とし、OH\mathrm{OH}の中点をN\mathrm{N}とする。次の9点は、中心N\mathrm{N}、半径R2\dfrac{R}{2}の同一円周上にある。

  1. 三辺の中点MA,MB,MC\mathrm{M_A},\mathrm{M_B},\mathrm{M_C}
  2. 三本の高さの足HA,HB,HC\mathrm{H_A},\mathrm{H_B},\mathrm{H_C}
  3. H\mathrm{H}と各頂点を結ぶ線分の中点EA,EB,EC\mathrm{E_A},\mathrm{E_B},\mathrm{E_C}

三角形は鋭角三角形、直角三角形、鈍角三角形、正三角形のいずれでもよい。9点の一部が一致する場合も、R/2>0R/2>0であるから円は退化しない。

頂点A\mathrm{A}をドラッグするか、二本のスライダーを動かすと、三角形の形が変わります。9点は形によらず同じ円周上にあります。

最初に、垂心が鋭角三角形以外でも一意に定まることを初等幾何で確かめます。点の順序や配置によらずに角の等式を扱うため、本記事は二直線のなす向きをもつ角を用います。

定義 2 (向きをもつ角). 二直線ℓ,m\ell,mの向きをもつ角∠(ℓ,m)\angle(\ell,m)を、ℓ\ellを反時計回りに回してmmと平行にするための回転角として、180°180°を法として定める。任意の直線ℓ,m,n\ell,m,nについて

∠(ℓ,m)+∠(m,n)=∠(ℓ,n),∠(m,ℓ)=−∠(ℓ,m)\angle(\ell,m)+\angle(m,n)=\angle(\ell,n),\qquad \angle(m,\ell)=-\angle(\ell,m)

が成り立つ。ℓ′⊥ℓ\ell'\perp\ellかつm′⊥mm'\perp mならば∠(ℓ′,m′)=∠(ℓ,m)\angle(\ell',m')=\angle(\ell,m)である。直線に関する対称移動σ\sigmaは∠(σ(ℓ),σ(m))=−∠(ℓ,m)\angle(\sigma(\ell),\sigma(m))=-\angle(\ell,m)を満たす。相異なる四点P,Q,R,S\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R},\mathrm{S}について、P,Q,R\mathrm{P},\mathrm{Q},\mathrm{R}とS,Q,R\mathrm{S},\mathrm{Q},\mathrm{R}がいずれも一直線上にないとき、四点が同一円周上にあることと

∠(PQ,PR)=∠(SQ,SR)(mod180°)\angle(\mathrm{PQ},\mathrm{PR})=\angle(\mathrm{SQ},\mathrm{SR})\pmod {180°}

は同値である(円周角の定理とその逆)。

定理 3. 非退化三角形の三本の高さは一点で交わる。

証明.A\mathrm{A}とB\mathrm{B}からの高さの足をそれぞれHA\mathrm{H_A}、HB\mathrm{H_B}とし、二直線AHA\mathrm{AH_A}、BHB\mathrm{BH_B}の交点をH\mathrm{H}とする。三角形が非退化であるため、二直線は平行でなく、交点H\mathrm{H}は一意に定まる。

△ABC\triangle\mathrm{ABC}が直角三角形である場合、直角をなす二辺は他の二頂点からの高さであり、直角の頂点で交わる。残る高さもその頂点を通るから、主張は成り立つ。以下では三角形の三つの角がいずれも直角でない場合を扱う。

HA=B\mathrm{H_A}=\mathrm{B}とすると直線AB\mathrm{AB}がBC\mathrm{BC}に垂直となって∠B=90°\angle \mathrm{B}=90°であるから、HA\mathrm{H_A}はB\mathrm{B}と異なり、同じ理由でC\mathrm{C}とも異なる。HB\mathrm{H_B}も同じ理由でA\mathrm{A}、C\mathrm{C}と異なる。また、H\mathrm{H}が直線AB\mathrm{AB}上にあるとすると、H≠A\mathrm{H}\ne\mathrm{A}の場合には直線AH=AB\mathrm{AH}=\mathrm{AB}がBC\mathrm{BC}に垂直となって∠B=90°\angle \mathrm{B}=90°、H=A\mathrm{H}=\mathrm{A}の場合には直線BH=BA\mathrm{BH}=\mathrm{BA}がCA\mathrm{CA}に垂直となって∠A=90°\angle \mathrm{A}=90°となる。ゆえにH\mathrm{H}は直線AB\mathrm{AB}上になく、同じ議論により直線BC\mathrm{BC}、CA\mathrm{CA}上にもない。したがって以下で用いる四点の組は、いずれも相異なり、どの三点も一直線上にない。

∠AHAB=∠AHBB=90°\angle \mathrm{A H_A B}=\angle \mathrm{A H_B B}=90°であるから、四点A,HA,B,HB\mathrm{A},\mathrm{H_A},\mathrm{B},\mathrm{H_B}は直径AB\mathrm{AB}の円周上にある。また、∠CHAH=∠CHBH=90°\angle \mathrm{C H_A H}=\angle \mathrm{C H_B H}=90°であるから、四点C,HA,H,HB\mathrm{C},\mathrm{H_A},\mathrm{H},\mathrm{H_B}は直径CH\mathrm{CH}の円周上にある。

定義 2の向きをもつ角と共円判定を用いる。後者の円で弦HBH\mathrm{H_BH}を見込む角を比べ、前者の円で弦HBB\mathrm{H_BB}を見込む角を比べると

∠(CHB,CH)=∠(HAHB,HAH),∠(AHB,AB)=∠(HAHB,HAB)\angle(\mathrm{CH_B},\mathrm{CH})=\angle(\mathrm{H_AH_B},\mathrm{H_AH}), \qquad \angle(\mathrm{AH_B},\mathrm{AB})=\angle(\mathrm{H_AH_B},\mathrm{H_AB})

を得る。直線HAH\mathrm{H_AH}は直線HAB\mathrm{H_AB}に垂直であるから

∠(HAHB,HAH)=∠(HAHB,HAB)+90°(mod180°)\angle(\mathrm{H_AH_B},\mathrm{H_AH})=\angle(\mathrm{H_AH_B},\mathrm{H_AB})+90°\pmod {180°}

であり、直線CHB\mathrm{CH_B}と直線AHB\mathrm{AH_B}はともに直線CA\mathrm{CA}である。三つを合わせると

∠(CA,CH)=∠(HAHB,HAH)=∠(HAHB,HAB)+90°=∠(CA,AB)+90°(mod180°)\angle(\mathrm{CA},\mathrm{CH}) =\angle(\mathrm{H_AH_B},\mathrm{H_AH}) =\angle(\mathrm{H_AH_B},\mathrm{H_AB})+90° =\angle(\mathrm{CA},\mathrm{AB})+90°\pmod {180°}

となる。向きをもつ角の加法により

∠(AB,CH)=∠(AB,CA)+∠(CA,CH)=∠(AB,CA)+∠(CA,AB)+90°=90°(mod180°).\angle(\mathrm{AB},\mathrm{CH}) =\angle(\mathrm{AB},\mathrm{CA})+\angle(\mathrm{CA},\mathrm{CH}) =\angle(\mathrm{AB},\mathrm{CA})+\angle(\mathrm{CA},\mathrm{AB})+90° =90°\pmod {180°}.

ゆえにCH\mathrm{CH}はC\mathrm{C}から直線AB\mathrm{AB}へ下ろした高さであり、三本の高さはH\mathrm{H}で交わる。▨

1 初等幾何による証明

この節は定理 1を初等幾何によって証明します。

補題 1.1. 非退化三角形△ABC\triangle \mathrm{ABC}の外心をO\mathrm{O}、垂心をH\mathrm{H}とし、直線AO\mathrm{AO}と外接円の交点のうちA\mathrm{A}でない方をA′\mathrm{A}'とする。辺BC\mathrm{BC}の中点MA\mathrm{M_A}は、線分HA′\mathrm{HA}'の中点である。頂点B\mathrm{B}、C\mathrm{C}についても、頂点の名前を入れ替えた同じ主張が成り立つ。

証明.H=B\mathrm{H}=\mathrm{B}であれば、B\mathrm{B}はA\mathrm{A}からの高さの上にあるからAB⊥BC\mathrm{AB}\perp\mathrm{BC}、すなわち∠B=90°\angle \mathrm{B}=90°である。逆に∠B=90°\angle \mathrm{B}=90°であれば、A\mathrm{A}からの高さとC\mathrm{C}からの高さはいずれもB\mathrm{B}を通るからH=B\mathrm{H}=\mathrm{B}である。H=C\mathrm{H}=\mathrm{C}と∠C=90°\angle \mathrm{C}=90°についても、同じ同値が成り立つ。

∠B=90°\angle \mathrm{B}=90°の場合を先に扱う。円周角の定理の逆により、AC\mathrm{AC}は外接円の直径である。したがってO\mathrm{O}は線分AC\mathrm{AC}の中点であり、直線AO\mathrm{AO}と外接円のA\mathrm{A}でない交点はC\mathrm{C}であるからA′=C\mathrm{A}'=\mathrm{C}となる。このときH=B\mathrm{H}=\mathrm{B}であり、線分HA′\mathrm{HA}'は辺BC\mathrm{BC}そのものであるから、その中点はMA\mathrm{M_A}である。∠C=90°\angle \mathrm{C}=90°の場合には、B\mathrm{B}とC\mathrm{C}を入れ替えて同じ議論を行う。

以下、∠B\angle \mathrm{B}と∠C\angle \mathrm{C}がいずれも90°90°でない場合を扱う。前段の同値によりH\mathrm{H}はB\mathrm{B}ともC\mathrm{C}とも異なる。さらにH\mathrm{H}は直線BC\mathrm{BC}上にない。H\mathrm{H}が直線BC\mathrm{BC}上にあるとすると、B\mathrm{B}からの高さは直線BH=BC\mathrm{BH}=\mathrm{BC}であり、これがCA\mathrm{CA}に垂直であることから∠C=90°\angle \mathrm{C}=90°となって仮定に反するからである。また、A′=C\mathrm{A}'=\mathrm{C}であればAC\mathrm{AC}が外接円の直径となり、円周角の定理により∠B=90°\angle \mathrm{B}=90°となる。A′=B\mathrm{A}'=\mathrm{B}であれば同じ理由で∠C=90°\angle \mathrm{C}=90°となる。いずれも仮定に反するから、A′\mathrm{A}'はB\mathrm{B}ともC\mathrm{C}とも異なり、直線BC\mathrm{BC}と外接円の共有点はB\mathrm{B}とC\mathrm{C}だけであるから、A′\mathrm{A}'も直線BC\mathrm{BC}上にない。

線分AA′\mathrm{AA}'は外接円の直径であり、B\mathrm{B}とC\mathrm{C}はその両端と異なる外接円上の点である。したがって円周角の定理により

∠ABA′=∠ACA′=90°\angle \mathrm{ABA}'=\angle \mathrm{ACA}'=90°

となり、BA′⊥AB\mathrm{BA}'\perp\mathrm{AB}かつCA′⊥AC\mathrm{CA}'\perp\mathrm{AC}を得る。一方、H\mathrm{H}は垂心であるからCH⊥AB\mathrm{CH}\perp\mathrm{AB}かつBH⊥AC\mathrm{BH}\perp\mathrm{AC}である。同一の直線に垂直な二直線は平行であるから

BA′∥CH,CA′∥BH\mathrm{BA}'\parallel \mathrm{CH},\qquad \mathrm{CA}'\parallel \mathrm{BH}

が成り立つ。三点B,H,C\mathrm{B},\mathrm{H},\mathrm{C}は一直線上になく、四角形BHCA′\mathrm{BHCA}'は向かい合う二組の辺がそれぞれ平行であるから、平行四辺形である。平行四辺形の二本の対角線はそれぞれの中点で交わるから、対角線BC\mathrm{BC}の中点MA\mathrm{M_A}は対角線HA′\mathrm{HA}'の中点でもある。

頂点B\mathrm{B}、C\mathrm{C}については、頂点の名前を入れ替えて同じ議論を行う。▨

補題 1.2. 非退化三角形△ABC\triangle \mathrm{ABC}の垂心H\mathrm{H}の、直線BC\mathrm{BC}に関する鏡像をHA∗\mathrm{H_A^{*}}とすると、HA∗\mathrm{H_A^{*}}は△ABC\triangle \mathrm{ABC}の外接円上にある。直線CA\mathrm{CA}、AB\mathrm{AB}に関するH\mathrm{H}の鏡像についても、同じことが成り立つ。

証明.H\mathrm{H}が直線BC\mathrm{BC}上にある場合を先に扱う。H≠B\mathrm{H}\ne\mathrm{B}とすると、B\mathrm{B}からの高さは直線BH=BC\mathrm{BH}=\mathrm{BC}であり、これがCA\mathrm{CA}に垂直であることから∠C=90°\angle \mathrm{C}=90°、したがってH=C\mathrm{H}=\mathrm{C}となる。ゆえにH\mathrm{H}はB\mathrm{B}またはC\mathrm{C}に一致する。直線BC\mathrm{BC}に関する鏡映はこの直線上の点を動かさないからHA∗=H\mathrm{H_A^{*}}=\mathrm{H}であり、H\mathrm{H}は頂点として外接円上にある。

以下、H\mathrm{H}が直線BC\mathrm{BC}上にない場合を扱う。このときH\mathrm{H}はB\mathrm{B}ともC\mathrm{C}とも異なり、HA∗\mathrm{H_A^{*}}も直線BC\mathrm{BC}上にない。鏡映はB\mathrm{B}とC\mathrm{C}を動かさないから、HA∗=B\mathrm{H_A^{*}}=\mathrm{B}はH=B\mathrm{H}=\mathrm{B}を、HA∗=C\mathrm{H_A^{*}}=\mathrm{C}はH=C\mathrm{H}=\mathrm{C}を意味し、どちらも起こらない。HA∗=A\mathrm{H_A^{*}}=\mathrm{A}の場合にはHA∗\mathrm{H_A^{*}}は外接円上にあるから、以下ではHA∗≠A\mathrm{H_A^{*}}\ne\mathrm{A}とする。

直線HB\mathrm{HB}はCA\mathrm{CA}に垂直であり、直線HC\mathrm{HC}はAB\mathrm{AB}に垂直であるから、定義 2の垂直な二直線についての等式により

∠(HB,HC)=∠(CA,AB)(mod180°)\angle(\mathrm{HB},\mathrm{HC})=\angle(\mathrm{CA},\mathrm{AB})\pmod {180°}

である。直線BC\mathrm{BC}に関する鏡映はB\mathrm{B}とC\mathrm{C}を固定し、H\mathrm{H}をHA∗\mathrm{H_A^{*}}へ写すから、同じ定義の対称移動についての等式により

∠(HA∗B,HA∗C)=−∠(HB,HC)=∠(AB,AC)(mod180°)\angle(\mathrm{H_A^{*}B},\mathrm{H_A^{*}C})=-\angle(\mathrm{HB},\mathrm{HC})=\angle(\mathrm{AB},\mathrm{AC}) \pmod {180°}

を得る。四点A,B,C,HA∗\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{H_A^{*}}は相異なり、A,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}とHA∗,B,C\mathrm{H_A^{*}},\mathrm{B},\mathrm{C}はいずれも一直線上にないから、定義 2の共円判定によりHA∗\mathrm{H_A^{*}}は△ABC\triangle \mathrm{ABC}の外接円上にある。

直線CA\mathrm{CA}、AB\mathrm{AB}に関する鏡像については、頂点の名前を入れ替えて同じ議論を行う。▨

以上の二つの補題により、定理 1を証明します。

証明. 中心H\mathrm{H}、相似比12\dfrac12の相似変換をhhとする。このhhは、各点X\mathrm{X}を線分HX\mathrm{HX}の中点へ写す。相似変換は円を円へ写し、もとの円の中心を像の円の中心とし、半径を相似比倍にする。h(O)h(\mathrm{O})は線分HO\mathrm{HO}の中点であり、これはN\mathrm{N}である。したがって外接円の像Γ′\Gamma'は、中心N\mathrm{N}、半径R2\dfrac{R}{2}の円である。

A\mathrm{A}は外接円上にあり、h(A)h(\mathrm{A})は線分HA\mathrm{HA}の中点EA\mathrm{E_A}であるから、EA\mathrm{E_A}はΓ′\Gamma'上にある。

補題 1.1の点A′\mathrm{A}'は外接円上にあり、h(A′)h(\mathrm{A}')は線分HA′\mathrm{HA}'の中点である。同じ補題により、この中点はMA\mathrm{M_A}である。したがってMA\mathrm{M_A}はΓ′\Gamma'上にある。

補題 1.2の点HA∗\mathrm{H_A^{*}}は外接円上にあり、h(HA∗)h(\mathrm{H_A^{*}})は線分HHA∗\mathrm{HH_A^{*}}の中点である。鏡映の定義により、この中点はH\mathrm{H}から直線BC\mathrm{BC}へ下ろした垂線の足である。A\mathrm{A}からの高さはH\mathrm{H}を通り直線BC\mathrm{BC}に垂直な直線であり、H\mathrm{H}を通って直線BC\mathrm{BC}に垂直な直線は一本しかないから、この足はHA\mathrm{H_A}に一致する。したがってHA\mathrm{H_A}はΓ′\Gamma'上にある。

頂点B\mathrm{B}、C\mathrm{C}について頂点の名前を入れ替えて同じ議論を行うと、EB,EC,MB,MC,HB,HC\mathrm{E_B},\mathrm{E_C},\mathrm{M_B},\mathrm{M_C},\mathrm{H_B},\mathrm{H_C}もΓ′\Gamma'上にある。ゆえに9点はすべて中心N\mathrm{N}、半径R2\dfrac{R}{2}の円Γ′\Gamma'上にある。R>0R>0であるからΓ′\Gamma'は退化しない。▨

注意 1.3. 上の証明は、三角形が鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のいずれであるかによる場合分けを含まない。場合分けは二つの補題の内部にあり、どちらでも∠B\angle \mathrm{B}または∠C\angle \mathrm{C}が直角である配置、すなわち垂心が頂点B\mathrm{B}またはC\mathrm{C}に一致する配置で生じる。この配置では補題 1.1の四角形BHCA′\mathrm{BHCA}'が平行四辺形をなさず、補題 1.2の四点共円の判定も適用することができないため、どちらの補題でもその場合を別に確かめた。補題 1.2では、HA∗=A\mathrm{H_A^{*}}=\mathrm{A}となる配置、すなわちH\mathrm{H}がA\mathrm{A}の直線BC\mathrm{BC}に関する鏡像である配置も別に扱った。この配置は∠B\angle \mathrm{B}と∠C\angle \mathrm{C}が直角でない鈍角三角形でも実際に起こる。たとえばA=(0,1)\mathrm{A}=(0,1)、B=(2,0)\mathrm{B}=(2,0)、C=(1/2,0)\mathrm{C}=(1/2,0)とすると∠C\angle \mathrm{C}が鈍角でH=(0,−1)\mathrm{H}=(0,-1)となり、HA∗=A\mathrm{H_A^{*}}=\mathrm{A}である。このときHA∗\mathrm{H_A^{*}}は頂点として外接円上にあるから、共円判定を用いずに結論を得る。三頂点が一直線上にある配置は、非退化という仮定によって除いてある。 9点のうちいくつかが一致する配置は除いていない。相似hhは外接円の全体をΓ′\Gamma'へ写すので、像の点が重なっても結論は変わらない。

2 位置ベクトルによる別証明

定理 2.1 (垂心の位置ベクトル).△ABC\triangle \mathrm{ABC}の外心O\mathrm{O}を原点とし、各頂点の位置ベクトルをa⃗,b⃗,c⃗\vec a,\vec b,\vec cとする。三本の高さの交点H\mathrm{H}の位置ベクトルは

h⃗=a⃗+b⃗+c⃗\vec h=\vec a+\vec b+\vec c

である。

証明.h⃗′:=a⃗+b⃗+c⃗\vec h':=\vec a+\vec b+\vec cで定まる点H′\mathrm{H}'を取る。辺BC\mathrm{BC}の中点をMA\mathrm{M_A}とすると

m⃗A=b⃗+c⃗2,h⃗′−a⃗=b⃗+c⃗=2m⃗A\vec m_A=\frac{\vec b+\vec c}{2},\qquad \vec h'-\vec a=\vec b+\vec c=2\vec m_A

となる。∣OB∣=∣OC∣=R|\mathrm{OB}|=|\mathrm{OC}|=Rであるから、O≠MA\mathrm{O}\ne\mathrm{M_A}の場合には直線OMA\mathrm{OM_A}はBC\mathrm{BC}の垂直二等分線である。したがってh⃗′−a⃗\vec h'-\vec aはBC\mathrm{BC}に垂直であり、H′\mathrm{H}'はA\mathrm{A}からの高さの上にある。

O=MA\mathrm{O}=\mathrm{M_A}の場合にはb⃗+c⃗=0⃗\vec b+\vec c=\vec 0であるからH′=A\mathrm{H}'=\mathrm{A}となり、この場合にもH′\mathrm{H}'はA\mathrm{A}からの高さの上にある。h⃗′\vec h'の式はa⃗,b⃗,c⃗\vec a,\vec b,\vec cについて対称であるから、同じ議論によりH′\mathrm{H}'は残り二本の高さの上にもある。したがって三本の高さはH′\mathrm{H}'で交わり、垂心の定義からH′=H\mathrm{H}'=\mathrm{H}である。ゆえに主張の式を得る。▨

証明.O\mathrm{O}を原点とし、定理 2.1を適用して

n⃗=h⃗2=a⃗+b⃗+c⃗2\vec n=\frac{\vec h}{2}=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}{2}

と書く。定義から

m⃗A=b⃗+c⃗2,e⃗A=a⃗+h⃗2=2a⃗+b⃗+c⃗2\vec m_A=\frac{\vec b+\vec c}{2},\qquad \vec e_A=\frac{\vec a+\vec h}{2}=\frac{2\vec a+\vec b+\vec c}{2}

であるから

m⃗A−n⃗=−a⃗2,e⃗A−n⃗=a⃗2\vec m_A-\vec n=-\frac{\vec a}{2},\qquad \vec e_A-\vec n=\frac{\vec a}{2}

を得る。∣a⃗∣=R|\vec a|=Rであるため、MA\mathrm{M_A}とEA\mathrm{E_A}はN\mathrm{N}から距離R/2R/2にあり、線分MAEA\mathrm{M_AE_A}はこの円の直径である。B\mathrm{B}、C\mathrm{C}についても同じ計算を行うと、三辺の中点と三つのオイラー点が円周上にある。

HA=MA\mathrm{H_A}=\mathrm{M_A}またはHA=EA\mathrm{H_A}=\mathrm{E_A}の場合には、HA\mathrm{H_A}は既に得た六点の一つである。HA\mathrm{H_A}が両方と異なる場合には∠MAHAEA=90°\angle \mathrm{M_AH_AE_A}=90°であるから、円周角の定理の逆によりHA\mathrm{H_A}も同じ円周上にある。HB,HC\mathrm{H_B},\mathrm{H_C}についても同じ場合分けをして議論すると、九点すべてが中心N\mathrm{N}、半径R/2R/2の円周上にある。▨

この別証明では、辺の中点とオイラー点のN\mathrm{N}に対する位置ベクトルが±a⃗/2,±b⃗/2,±c⃗/2\pm\vec a/2,\pm\vec b/2,\pm\vec c/2になります。六つの点がN\mathrm{N}から等距離にあり、残る三つの垂線の足が三本の直径を直角に見込むという構造が、位置ベクトルによって表されています。

定理 2.2 (九点円(主定理)). 非退化三角形の各辺の中点3つ、各頂点から対辺へ下ろした垂線の足3つ、垂心と各頂点の中点3つは、同じ円周上にある。

証明.定理 1を適用すると、9点は中心N\mathrm{N}、半径R/2R/2の同一円周上にある。▨

定理 2.3 (九点円の半径と中心). 九点円の半径は外接円の半径の半分であり、その中心N\mathrm{N}は外心O\mathrm{O}と垂心H\mathrm{H}の中点である。三角形が正三角形でない場合、N\mathrm{N}はオイラー線上にある。正三角形の場合はN=O=H\mathrm{N}=\mathrm{O}=\mathrm{H}であり、オイラー線は一意に定まらない。

証明.定理 1を適用すると、九点円の中心はOH\mathrm{OH}の中点N\mathrm{N}であり、半径はR/2R/2である。三角形が正三角形でない場合、§C2.2 定理 1によりO,G,H\mathrm{O},\mathrm{G},\mathrm{H}は一直線上にあり、直線OH\mathrm{OH}がオイラー線である。N\mathrm{N}はOH\mathrm{OH}の中点であるから、オイラー線上にある。正三角形の場合はO=H\mathrm{O}=\mathrm{H}であるため、その中点もN=O=H\mathrm{N}=\mathrm{O}=\mathrm{H}となる。一点だけでは直線が定まらないので、この場合のオイラー線は一意に定まらない。▨

3 確認問題

問題 3.1. 非退化三角形△ABC\triangle \mathrm{ABC}の垂心をH\mathrm{H}とする。辺BC\mathrm{BC}の中点MA\mathrm{M_A}と、H\mathrm{H}とA\mathrm{A}を結ぶ線分の中点EA\mathrm{E_A}が、九点円の同一の直径の両端であることを示せ。MB\mathrm{M_B}とEB\mathrm{E_B}、MC\mathrm{M_C}とEC\mathrm{E_C}についても同じことが成り立つ理由を述べよ。

解答.

補題 1.1の点A′\mathrm{A}'を取ると、線分AA′\mathrm{AA}'は外接円の直径である。中心H\mathrm{H}、相似比1/21/2の相似hhは外接円を九点円へ写し、外接円の中心O\mathrm{O}を九点円の中心N\mathrm{N}へ写すから、O\mathrm{O}を通る弦AA′\mathrm{AA}'の像はN\mathrm{N}を通る弦、すなわち九点円の直径である。h(A)h(\mathrm{A})は線分HA\mathrm{HA}の中点EA\mathrm{E_A}であり、同じ補題によりh(A′)h(\mathrm{A}')は線分HA′\mathrm{HA}'の中点MA\mathrm{M_A}である。したがって線分EAMA\mathrm{E_AM_A}は九点円の直径であり、MA\mathrm{M_A}とEA\mathrm{E_A}はその両端である。MB\mathrm{M_B}とEB\mathrm{E_B}、MC\mathrm{M_C}とEC\mathrm{E_C}については、同じ補題が頂点B\mathrm{B}、C\mathrm{C}についても成り立つので、頂点の名前を入れ替えて同じ議論を行う。▨

問題 3.2.∠A=90°\angle\mathrm{A}=90°の直角三角形と正三角形について、九点のうち一致するものを列挙せよ。また、点が一致しても九点円が退化しない理由を答えよ。

解答.

∠A=90°\angle\mathrm{A}=90°の場合、H=A\mathrm{H}=\mathrm{A}であるからHB=HC=EA=A\mathrm{H_B}=\mathrm{H_C}=\mathrm{E_A}=\mathrm{A}、EB=MC\mathrm{E_B}=\mathrm{M_C}、EC=MB\mathrm{E_C}=\mathrm{M_B}となる。正三角形の場合、各高さの足は対応する辺の中点であるからHA=MA\mathrm{H_A}=\mathrm{M_A}、HB=MB\mathrm{H_B}=\mathrm{M_B}、HC=MC\mathrm{H_C}=\mathrm{M_C}となる。いずれの場合も三角形は非退化であり、外接円の半径はR>0R>0である。したがって九点円の半径R/2R/2は正であり、円は退化しない。▨

4 もう少し先へ

九点円は内接円と三つの傍接円のすべてに接します。この事実はフォイエルバッハの定理と呼ばれ、その証明は後続の項目で扱います。

「オイラー線」という名称には、外心・重心・垂心が一直線上にありOG:GH=1:2\mathrm{OG}:\mathrm{GH}=1:2となる主張も含まれます。本記事の九点円そのものの構成では重心を用いません。九点円の中心N\mathrm{N}がオイラー線上にあるという帰結だけは、§C2.2 定理 1を通じて外心・重心・垂心の共線性を用います。

参考文献

  1. H. S. M. Coxeter and S. L. Greitzer, Geometry Revisited, New Mathematical Library 19, Mathematical Association of America, 1967.

前提記事