§C2.5ナポレオンの定理

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任意の三角形の各辺に外向きの正三角形を作り、三つの正三角形の中心を結びます。元の三角形の形を変えても三つの中心が正三角形を作ることが、ナポレオンの定理の主張です。本記事は、三つの正三角形を内向きに作る場合と、中心が一致する場合も扱います。

定理 1 (ナポレオンの定理). 非退化三角形△ABC\triangle ABCの各辺に外向き正三角形を作り、辺BC,CA,ABBC,CA,AB上の正三角形の中心をそれぞれX,Y,ZX,Y,Zとする。このとき△XYZ\triangle XYZは非退化な正三角形である。

三つの正三角形をすべて内向きに作ると、△ABC\triangle ABCが正三角形でない場合にはX,Y,ZX,Y,Zが外向きの場合と反対の向きをもつ非退化な正三角形をなし、△ABC\triangle ABCが正三角形である場合にはX,Y,ZX,Y,Zが一点に一致する。

1 回転の合成による証明

以下は、120°120°の回転の合成を用いる初等幾何の証明です。

定理 1.1.U≠VU\ne Vとし、rU,rVr_U,r_VをそれぞれU,VU,Vを中心とする同じ向きの120°120°回転とする。UVUVを一辺とする二つの正三角形の第三頂点をP,QP,Qとし、rU(P)=Qr_U(P)=QとなるようにP,QP,Qを定める。このときrV∘rUr_V\circ r_UはPPを中心とする反対向きの120°120°回転である。

証明.UVPUVPとUVQUVQはUVUVを共有して互いに反対側にある正三角形であるから、rU(P)=Qr_U(P)=Qであり、同じ向きの回転についてrV(Q)=Pr_V(Q)=Pである。したがって(rV∘rU)(P)=P(r_V\circ r_U)(P)=Pとなる。

rUr_UとrVr_Vは距離と角を保ち、各有向線分の向きをそれぞれ120°120°だけ変える。よって合成rV∘rUr_V\circ r_Uは距離を保ち、各有向線分の向きを240°240°、すなわち反対向きに120°120°だけ変える。しかもPPを固定するので、任意の点TTの像は、PPからの距離がPTPTに等しく、有向角が反対向きの120°120°となる唯一の点である。ゆえにrV∘rUr_V\circ r_UはPPを中心とする反対向きの120°120°回転である。▨

証明.A,B,CA,B,Cが反時計回りに並ぶように向きを選ぶ。外向き正三角形の中心X,Y,ZX,Y,Zのまわりの反時計回り120°120°回転をそれぞれrX,rY,rZr_X,r_Y,r_Zとする。正三角形では重心と外心が一致するため、各回転は頂点を巡回させる。外向きという選択から

rX(C)=B,rY(A)=C,rZ(B)=Ar_X(C)=B,\qquad r_Y(A)=C,\qquad r_Z(B)=A

となる。

まずX≠YX\ne Yを示す。X=YX=Yと仮定すると、rX∘rYr_X\circ r_YはXXを中心とする反対向きの120°120°回転であり、AAをBBへ送る。一方、rZ−1r_Z^{-1}も反対向きの120°120°回転でAAをBBへ送る。回転角と一つの点の像は回転中心を一意に定めるから、X=ZX=Zとなる。すると同じ中心の反時計回り120°120°回転がA↦C↦B↦AA\mapsto C\mapsto B\mapsto Aと三頂点を巡回させるので、ABCABCは正三角形であり、共通中心はその中心である。しかし、辺BCBC上の外向き正三角形の中心はAAと直線BCBCの反対側にあり、ABCABCの中心はAAと同じ側にある。この二つは両立しない。したがってX≠YX\ne Yである。

定理 1.1を中心Y,XY,Xの順に適用する。YXYXを一辺とする正三角形の適切な第三頂点をPPとすると、rX∘rYr_X\circ r_YはPPを中心とする時計回り120°120°回転である。また

(rX∘rY)(A)=rX(C)=B(r_X\circ r_Y)(A)=r_X(C)=B

である。rZ−1r_Z^{-1}も時計回り120°120°回転であり、rZ−1(A)=Br_Z^{-1}(A)=Bを満たす。回転角とAAの像BBから回転中心は一意に定まるのでP=ZP=Zである。したがってY,X,ZY,X,Zは正三角形の三頂点であり、△XYZ\triangle XYZは非退化な正三角形である。

三つの正三角形を内向きに作る場合には、上の三つの回転方向をすべて反転すると同じ合成が得られる。中心三点が一致するなら、同じ中心の120°120°回転がA,B,CA,B,Cを巡回させるのでABCABCは正三角形である。逆にABCABCが正三角形なら、三つの内向き正三角形はいずれもABCABC自身であるから、その中心は一致する。したがってABCABCが正三角形でない場合には中心三点が非退化な正三角形をなし、その向きは外向きの場合と反対になる。▨

2 三つの外接円による証明

以下は、回転を用いず、円周角と垂直二等分線から組み立てる証明です。示すのは定理 1のうち外向きの配置についての主張です。

補題 2.1.定理 1の外向きの配置において、頂点A,B,CA,B,Cがこの順に反時計回りに並ぶとする。辺BC,CA,ABBC,CA,AB上の外向き正三角形を、それぞれ△BCA′\triangle BCA'、△CAB′\triangle CAB'、△ABC′\triangle ABC'とする。ここでA′A'は直線BCBCについてAAと反対側に、B′B'は直線CACAについてBBと反対側に、C′C'は直線ABABについてCCと反対側にある。このとき次が成り立つ。

  1. ∠XBC=∠XCB=∠YCA=∠YAC=∠ZAB=∠ZBA=30°\angle XBC=\angle XCB=\angle YCA=\angle YAC=\angle ZAB=\angle ZBA=30°である。
  2. 半直線CYCYから半直線CXCXまで反時計回りに測った角は∠BCA+60°\angle BCA+60°に等しく、半直線AZAZから半直線AYAYまで反時計回りに測った角は∠BAC+60°\angle BAC+60°に等しく、半直線BXBXから半直線BZBZまで反時計回りに測った角は∠ABC+60°\angle ABC+60°に等しい。
  3. 三点X,C,YX,C,Yが同一直線上にあることと∠BCA=120°\angle BCA=120°であることは同値である。三点Y,A,ZY,A,Zが同一直線上にあることと∠BAC=120°\angle BAC=120°であること、三点Z,B,XZ,B,Xが同一直線上にあることと∠ABC=120°\angle ABC=120°であることも、それぞれ同値である。

証明. 正三角形の中心は各頂点の内角の二等分線上にあり、正三角形の内角は60°60°であるから、(1)の六つの角はいずれも30°30°である。中心は正三角形の内部にあるので、XXは直線BCBCについてAAと反対側に、YYは直線CACAについてBBと反対側に、ZZは直線ABABについてCCと反対側にある。XXは正三角形△BCA′\triangle BCA'の内部にあるのでBBともCCとも異なり、YYは正三角形△CAB′\triangle CAB'の内部にあるのでCCともAAとも異なり、ZZは正三角形△ABC′\triangle ABC'の内部にあるのでAAともBBとも異なる。したがって、以下に現れる半直線CXCX、CYCY、AZAZ、AYAY、BXBX、BZBZはいずれも定まる。

頂点CCを考える。A,B,CA,B,Cがこの順に反時計回りに並ぶので、半直線CACAから半直線CBCBまで反時計回りに測った角は∠BCA\angle BCAであり、0°0°より大きく180°180°より小さい。したがって、直線CACAについてBBを含む側にあるCCを端点とする半直線は、半直線CACAを反時計回りに0°0°より大きく180°180°より小さい角だけ回して得られるものであり、直線CBCBについてAAを含む側にあるCCを端点とする半直線は、半直線CBCBを時計回りに0°0°より大きく180°180°より小さい角だけ回して得られるものである。YYは直線CACAについてBBと反対側にあり∠YCA=30°\angle YCA=30°であるから、半直線CYCYは半直線CACAを時計回りに30°30°回した半直線である。XXは直線BCBCについてAAと反対側にあり∠XCB=30°\angle XCB=30°であるから、半直線CXCXは半直線CBCBを反時計回りに30°30°回した半直線である。よって半直線CYCYから半直線CXCXまで反時計回りに測った角は30°+∠BCA+30°30°+\angle BCA+30°である。

頂点AAでは、半直線ABABから半直線ACACまで反時計回りに測った角が∠BAC\angle BACである。ZZは直線ABABについてCCと反対側にあり∠ZAB=30°\angle ZAB=30°であるから、半直線AZAZは半直線ABABを時計回りに30°30°回した半直線である。YYは直線CACAについてBBと反対側にあり∠YAC=30°\angle YAC=30°であるから、半直線AYAYは半直線ACACを反時計回りに30°30°回した半直線である。よって半直線AZAZから半直線AYAYまで反時計回りに測った角は30°+∠BAC+30°30°+\angle BAC+30°である。

頂点BBでは、半直線BCBCから半直線BABAまで反時計回りに測った角が∠ABC\angle ABCである。XXは直線BCBCについてAAと反対側にあり∠XBC=30°\angle XBC=30°であるから、半直線BXBXは半直線BCBCを時計回りに30°30°回した半直線である。ZZは直線ABABについてCCと反対側にあり∠ZBA=30°\angle ZBA=30°であるから、半直線BZBZは半直線BABAを反時計回りに30°30°回した半直線である。よって半直線BXBXから半直線BZBZまで反時計回りに測った角は30°+∠ABC+30°30°+\angle ABC+30°である。これで(2)が示された。

三点X,C,YX,C,Yが同一直線上にあることは、半直線CXCXと半直線CYCYが同じ向きであるか反対向きであること、すなわち(2)の角が0°0°または180°180°であることと同値である。0°<∠BCA<180°0°<\angle BCA<180°から60°<∠BCA+60°<240°60°<\angle BCA+60°<240°であり、この範囲でその角が0°0°になることはなく、180°180°になるのは∠BCA=120°\angle BCA=120°のときに限る。頂点AAでは(2)の角が∠BAC+60°\angle BAC+60°で同じ範囲にあるから、Y,A,ZY,A,Zが同一直線上にあることは∠BAC=120°\angle BAC=120°と同値であり、頂点BBでは(2)の角が∠ABC+60°\angle ABC+60°で同じ範囲にあるから、Z,B,XZ,B,Xが同一直線上にあることは∠ABC=120°\angle ABC=120°と同値である。▨

補題 2.2.定理 1の外向きの配置において、辺BC,CA,ABBC,CA,AB上の外向き正三角形の外接円を、それぞれωX,ωY,ωZ\omega_X,\omega_Y,\omega_Zとする。このとき、AAがωX\omega_X上にあることと∠BAC=120°\angle BAC=120°であることは同値である。同様に、BBがωY\omega_Y上にあることと∠ABC=120°\angle ABC=120°であること、CCがωZ\omega_Z上にあることと∠BCA=120°\angle BCA=120°であることも、それぞれ同値である。

証明. 辺BCBC上の外向き正三角形を△BCA′\triangle BCA'とすると、ωX\omega_XはB,C,A′B,C,A'を通るただ一つの円である。AAとA′A'はどちらも直線BCBC上になく、直線BCBCについて反対側にある。§A5.6 系 4.3により、四点B,C,A,A′B,C,A,A'が同一円周上にあることと∠BAC+∠BA′C=180°\angle BAC+\angle BA'C=180°であることは同値である。△BCA′\triangle BCA'は正三角形であるから∠BA′C=60°\angle BA'C=60°であり、この条件は∠BAC=120°\angle BAC=120°と同値である。四点が同一円周上にあるとき、その円はB,C,A′B,C,A'を通るただ一つの円ωX\omega_Xであるから、四点が同一円周上にあることはA∈ωXA\in\omega_Xと同値である。

辺CACA上の外向き正三角形を△CAB′\triangle CAB'とすると、BBとB′B'はどちらも直線CACA上になく、直線CACAについて反対側にある。∠CB′A=60°\angle CB'A=60°であるから、同じ判定によりB∈ωYB\in\omega_Yと∠ABC=120°\angle ABC=120°は同値である。辺ABAB上の外向き正三角形を△ABC′\triangle ABC'とすると、CCとC′C'はどちらも直線ABAB上になく、直線ABABについて反対側にある。∠AC′B=60°\angle AC'B=60°であるから、同じ判定によりC∈ωZC\in\omega_Zと∠BCA=120°\angle BCA=120°は同値である。▨

補題 2.3.定理 1の外向きの配置において、頂点A,B,CA,B,Cがこの順に反時計回りに並ぶとし、辺BC,CA,ABBC,CA,AB上の外向き正三角形の外接円を、それぞれωX,ωY,ωZ\omega_X,\omega_Y,\omega_Zとする。△ABC\triangle ABCのどの内角も120°120°に等しくないとする。このとき、三つの中心X,Y,ZX,Y,Zは相異なる。さらに、A,B,CA,B,Cのいずれとも異なり、三つの円ωX,ωY,ωZ\omega_X,\omega_Y,\omega_Zのすべてに属する点FFが存在し、三直線FA,FB,FCFA,FB,FCは相異なり、どの二つのなす角の大きさも60°60°である。

証明. 辺BC,CA,ABBC,CA,AB上の外向き正三角形を、それぞれ△BCA′\triangle BCA'、△CAB′\triangle CAB'、△ABC′\triangle ABC'とする。X=YX=Yとすると、ωX\omega_XとωY\omega_YはともにCCを通り中心が同じであるから一致し、A∈ωY=ωXA\in\omega_Y=\omega_Xとなる。補題 2.2により∠BAC=120°\angle BAC=120°となって仮定に反するので、X≠YX\ne Yである。Y=ZY=Zとすると、ωY\omega_YとωZ\omega_ZはともにAAを通り中心が同じであるから一致し、B∈ωZ=ωYB\in\omega_Z=\omega_Yとなる。同じ補題により∠ABC=120°\angle ABC=120°となって仮定に反するので、Y≠ZY\ne Zである。Z=XZ=Xとすると、ωZ\omega_ZとωX\omega_XはともにBBを通り中心が同じであるから一致し、C∈ωX=ωZC\in\omega_X=\omega_Zとなる。同じ補題により∠BCA=120°\angle BCA=120°となって仮定に反するので、Z≠XZ\ne Xである。

∠BCA≠120°\angle BCA\ne120°であるから、補題 2.1 (3)によりX,C,YX,C,Yは同一直線上になく、CCは直線XYXY上にない。CCの直線XYXYに関する鏡映をFFとする。鏡映は距離を保ちXXとYYを動かさないからXF=XCXF=XCかつYF=YCYF=YCであり、FFはωX\omega_XとωY\omega_Yの共有点である。CCが直線XYXY上にないのでF≠CF\ne Cである。F=AF=AとするとA∈ωXA\in\omega_Xとなり、補題 2.2により∠BAC=120°\angle BAC=120°となって仮定に反するからF≠AF\ne Aである。F=BF=BとするとB∈ωYB\in\omega_Yとなり、同じ補題により∠ABC=120°\angle ABC=120°となって仮定に反するからF≠BF\ne Bである。

三点の並びが反時計回りか時計回りかは、三点目が最初の二点を通る直線のどちら側にあるかで決まる。B,C,AB,C,Aはこの順に反時計回りに並び、A′A'は直線BCBCについてAAと反対側にあるから、B,C,A′B,C,A'はこの順に時計回りに、すなわちA′,C,BA',C,Bはこの順に反時計回りに並ぶ。よって、頂点A′A'において半直線A′CA'Cから半直線A′BA'Bまで反時計回りに測った角は∠CA′B=60°\angle CA'B=60°である。同じ理由で、頂点B′B'において半直線B′AB'Aから半直線B′CB'Cまで、頂点C′C'において半直線C′BC'Bから半直線C′AC'Aまで反時計回りに測った角も60°60°である。§C2.4 定義 3の向きをもつ角では、これは

∠(A′B,A′C)=∠(B′C,B′A)=∠(C′A,C′B)=−60°(mod180°)\angle(A'B,A'C)=\angle(B'C,B'A)=\angle(C'A,C'B)=-60°\pmod{180°}

を意味する。

FFはωX\omega_X上にあってB,CB,Cとは異なるから、FFが直線BCBC上にあれば直線BCBCが円ωX\omega_Xと三点で交わることになるが、直線と円の共有点は高々二つである。よってF,B,CF,B,Cは同一直線上になく、FFがωY\omega_Y上にあってC,AC,Aと異なることから、同じ理由でF,C,AF,C,Aも同一直線上にない。F=A′F=A'ならば∠(FB,FC)\angle(FB,FC)と∠(A′B,A′C)\angle(A'B,A'C)は同じ角である。F≠A′F\ne A'ならば、B≠CB\ne CでありFFとA′A'はどちらも直線BCBC上にないから、円ωX\omega_X上の四点F,B,C,A′F,B,C,A'へ§C2.4 補題 5を適用して∠(FB,FC)=∠(A′B,A′C)\angle(FB,FC)=\angle(A'B,A'C)を得る。いずれの場合も∠(FB,FC)=−60°\angle(FB,FC)=-60°である。同じく、F=B′F=B'ならば∠(FC,FA)\angle(FC,FA)と∠(B′C,B′A)\angle(B'C,B'A)は同じ角であり、F≠B′F\ne B'ならば、C≠AC\ne AでありFFとB′B'はどちらも直線CACA上にないから、円ωY\omega_Y上の四点F,C,A,B′F,C,A,B'へ§C2.4 補題 5を適用して∠(FC,FA)=∠(B′C,B′A)\angle(FC,FA)=\angle(B'C,B'A)を得る。いずれの場合も∠(FC,FA)=−60°\angle(FC,FA)=-60°である。

§C2.4 補題 4により

∠(FB,FA)=∠(FB,FC)+∠(FC,FA)=−120°=60°(mod180°)\angle(FB,FA)=\angle(FB,FC)+\angle(FC,FA)=-120°=60°\pmod{180°}

である。この値は0°0°ではないからF,A,BF,A,Bは同一直線上になく、△ABC′\triangle ABC'が正三角形であることからA,B,C′A,B,C'も同一直線上にない。§C2.4 補題 4により∠(C′B,C′A)=−∠(C′A,C′B)=60°\angle(C'B,C'A)=-\angle(C'A,C'B)=60°であるから、F=C′F=C'ならばFFはωZ\omega_Z上にあり、F≠C′F\ne C'ならば、B≠AB\ne AでありFFとC′C'はどちらも直線ABAB上になく∠(FB,FA)=∠(C′B,C′A)\angle(FB,FA)=\angle(C'B,C'A)を満たすので、§C2.4 補題 5により四点F,B,A,C′F,B,A,C'は同一円周上にある。その円はA,B,C′A,B,C'を通るただ一つの円ωZ\omega_Zであるから、いずれの場合もF∈ωZF\in\omega_Zである。

最後に∠(FB,FC)=∠(FC,FA)=−60°\angle(FB,FC)=\angle(FC,FA)=-60°であり、§C2.4 補題 4により∠(FA,FB)=−∠(FB,FA)=−60°\angle(FA,FB)=-\angle(FB,FA)=-60°である。三つの値はいずれも0°0°ではないから三直線FA,FB,FCFA,FB,FCは相異なり、向きをもつ角が−60°-60°である二直線のなす角の大きさは60°60°である。▨

証明. 以下は定理 1のうち、外向きの配置についての主張の証明である。必要ならBBとCCを入れ替えて、A,B,CA,B,Cがこの順に反時計回りに並ぶとしてよい。この入れ替えは辺BCBCを保ち、辺CACAと辺ABABを交換するので、三つの中心の組{X,Y,Z}\{X,Y,Z\}を変えず、示すべき主張も変えない。辺BC,CA,ABBC,CA,AB上の外向き正三角形の外接円を、それぞれωX,ωY,ωZ\omega_X,\omega_Y,\omega_Zとする。

まず、△ABC\triangle ABCのどの内角も120°120°に等しくない場合を扱う。補題 2.3により、A,B,CA,B,Cのいずれとも異なる点FFが三つの円のすべてに属する。

同じ補題によりX,Y,ZX,Y,Zは相異なり、FFはA,B,CA,B,Cのいずれとも異なる。CCとFFはともにωX\omega_X上にあるのでXC=XFXC=XFであり、ともにωY\omega_Y上にあるのでYC=YFYC=YFである。F≠CF\ne Cであるから、§A5.8 補題 8.1によりXXとYYはともに線分CFCFの垂直二等分線上にあり、X≠YX\ne Yであるからその垂直二等分線は直線XYXYである。よって直線XYXYは直線CFCFに垂直である。

AAとFFはともにωY\omega_Y上にもωZ\omega_Z上にもあるのでYA=YFYA=YFかつZA=ZFZA=ZFであり、F≠AF\ne AとY≠ZY\ne Zから、直線YZYZは線分AFAFの垂直二等分線であって直線AFAFに垂直である。BBとFFはともにωZ\omega_Z上にもωX\omega_X上にもあるのでZB=ZFZB=ZFかつXB=XFXB=XFであり、F≠BF\ne BとZ≠XZ\ne Xから、直線ZXZXは線分BFBFの垂直二等分線であって直線BFBFに垂直である。

X,Y,ZX,Y,Zが同一直線上にあるとすると、直線XYXY、YZYZ、ZXZXは同一の直線であり、それに垂直な三直線CFCF、AFAF、BFBFは互いに平行である。この三直線はいずれもFFを通るから一致し、A,B,CA,B,Cは同一直線上に並ぶことになって、△ABC\triangle ABCが非退化であることに反する。よって△XYZ\triangle XYZは非退化な三角形である。

二直線をそれぞれ同じ向きに90°90°回して得られる二直線のなす角は、もとの二直線のなす角に等しい。直線YXYXは直線FCFCに、直線YZYZは直線FAFAに垂直であるから、直線YXYXと直線YZYZのなす角の大きさは直線FCFCと直線FAFAのなす角の大きさに等しく、補題 2.3によりそれは60°60°である。内角∠XYZ\angle XYZを挟む二直線のなす角の大きさが60°60°であるから、∠XYZ\angle XYZは60°60°または120°120°である。同じ議論により、∠YZX\angle YZXは直線FAFAと直線FBFBのなす角から、∠ZXY\angle ZXYは直線FBFBと直線FCFCのなす角から、それぞれ60°60°または120°120°である。三角形の内角の和は180°180°であり、60°60°と120°120°から三つ選んで和が180°180°になるのは三つとも60°60°の場合だけであるから、△XYZ\triangle XYZの三つの内角はいずれも60°60°である。内角がすべて等しい三角形は三辺も等しいので、△XYZ\triangle XYZは非退化な正三角形である。

次に、△ABC\triangle ABCのある内角が120°120°に等しい場合を扱う。二つの内角がともに120°120°であれば内角の和が180°180°を超えるので、120°120°に等しい内角はちょうど一つである。頂点の巡回的な付け替え(A,B,C)↦(B,C,A)(A,B,C)\mapsto(B,C,A)は反時計回りの順序と各辺の外向き正三角形を保ち、中心を(X,Y,Z)↦(Y,Z,X)(X,Y,Z)\mapsto(Y,Z,X)へ移すので、∠BAC=120°\angle BAC=120°としてよい。

補題 2.1 (2)により、半直線AZAZから半直線AYAYまで反時計回りに測った角は∠BAC+60°=180°\angle BAC+60°=180°である。したがって半直線AZAZと半直線AYAYは反対向きであり、Z,A,YZ,A,Yはこの順に同一直線上に並ぶ。とくにY≠ZY\ne Zであり、直線YZYZは半直線AYAYと半直線AZAZをともに含む。

補題 2.2によりA∈ωXA\in\omega_Xである。AAとCCはともにωX\omega_X上にあるのでXA=XCXA=XCであり、ともにωY\omega_Y上にあるのでYA=YCYA=YCである。A≠CA\ne Cであるから、§A5.8 補題 8.1によりXXとYYは線分ACACの垂直二等分線上にある。X=YX=YとするとωX\omega_XとωY\omega_YはCCを通る中心の等しい円として一致し、B∈ωX=ωYB\in\omega_X=\omega_Yから補題 2.2により∠ABC=120°\angle ABC=120°となって、120°120°に等しい内角がちょうど一つであることに反する。よってX≠YX\ne Yであり、直線XYXYは線分ACACの垂直二等分線であって直線ACACに垂直である。同様に、AAとBBはともにωX\omega_X上にもωZ\omega_Z上にもあるのでXXとZZは線分ABABの垂直二等分線上にあり、X=ZX=ZとするとC∈ωX=ωZC\in\omega_X=\omega_Zから補題 2.2により∠BCA=120°\angle BCA=120°となって同じ矛盾を得るので、X≠ZX\ne Zであり直線XZXZは直線ABABに垂直である。

補題 2.1 (1)により∠YAC=30°\angle YAC=30°であり、直線YZYZは半直線AYAYを含むから、直線YZYZと直線ACACのなす角の大きさは30°30°である。直線XYXYは直線ACACに垂直であるから、直線XYXYと直線YZYZのなす角の大きさは90°−30°=60°90°-30°=60°である。同じく∠ZAB=30°\angle ZAB=30°であり、直線YZYZは半直線AZAZを含むから、直線YZYZと直線ABABのなす角の大きさは30°30°であり、直線XZXZが直線ABABに垂直であることから、直線XZXZと直線YZYZのなす角の大きさは60°60°である。さらに、直線XYXYと直線XZXZのなす角の大きさは、それぞれに垂直な直線ACACと直線ABABのなす角の大きさに等しく、∠BAC=120°\angle BAC=120°であるからこれも60°60°である。

直線XYXYと直線YZYZのなす角の大きさが60°60°であって0°0°ではないから、この二直線は相異なり、XXは直線YZYZ上にない。よって△XYZ\triangle XYZは非退化な三角形であり、その三つの内角はそれぞれ60°60°または120°120°である。和が180°180°であることから三つとも60°60°であり、△XYZ\triangle XYZは非退化な正三角形である。▨

注意 2.4. 上の証明が扱ったのは外向きの配置だけである。内向きの配置では三つの正三角形が元の三角形と同じ側に作られるので、補題 2.1の30°30°の回転の向きがすべて逆になる。とくに△ABC\triangle ABCが正三角形である場合には、三つの内向き正三角形が△ABC\triangle ABC自身と一致するため三つの外接円も一致し、共有点を一つに定めることができない。内向きの配置についての主張と、中心三角形の向きが反転することは、回転の合成による証明と複素数による別証明が扱う。

3 複素数による別証明

証明.A,B,CA,B,Cが反時計回りに並ぶものとし、その複素数座標をa,b,ca,b,cとする。時計回り60°60°回転を表す複素数をω=e−πi/3\omega=e^{-\pi i/3}と置く。辺ABAB上の外向き正三角形の第三頂点はa+ω(b−a)a+\omega(b-a)であるから、正三角形の中心ZZは三頂点の重心として

Z=(2−ω)a+(1+ω)b3Z=\frac{(2-\omega)a+(1+\omega)b}{3}

と表される。同様に

X=(2−ω)b+(1+ω)c3,Y=(2−ω)c+(1+ω)a3X=\frac{(2-\omega)b+(1+\omega)c}{3},\qquad Y=\frac{(2-\omega)c+(1+\omega)a}{3}

となる。

∣ω∣=1|\omega|=1とω2−ω+1=0\omega^2-\omega+1=0を用いて差を整理すると

Z−YY−X=−1+ω2−ω=−12+32i\frac{Z-Y}{Y-X}=-\frac{1+\omega}{2-\omega} =-\frac12+\frac{\sqrt3}{2}i

を得る。右辺は絶対値11で偏角120°120°であるから、∣Z−Y∣=∣Y−X∣|Z-Y|=|Y-X|であり、二つの有向線分のなす角は120°120°である。右辺をλ\lambdaと置くと∣1+λ∣=1|1+\lambda|=1でもあるので

∣X−Z∣=∣(Y−X)+(Z−Y)∣=∣1+λ∣ ∣Y−X∣=∣Y−X∣|X-Z|=|(Y-X)+(Z-Y)|=|1+\lambda|\,|Y-X|=|Y-X|

となる。したがって三辺が等しく、XYZXYZは正三角形である。

内向きの場合はω\omegaをω‾\overline\omegaに替える。Y≠XY\ne Xの場合には同じ計算で差の比が偏角−120°-120°となるため、中心三角形の向きが反転する。Y=XY=Xの場合は回転の合成による証明で示したとおり、元の三角形が正三角形であり、三中心が一点に一致する。▨

注意 3.1. 元の三角形が正三角形であっても、外向きの中心三角形は退化しない。内向きでは三つの正三角形が元の三角形に一致するため、中心三点が一点に退化する。一辺だけ内向きにして回転方向を混ぜると、同じ向きの二回転を合成する鎖が切れるので、ナポレオンの定理の結論は一般には成り立たない。

4 確認問題

問題 4.1. 外向きの配置で、rX(C)=B,rY(A)=C,rZ(B)=Ar_X(C)=B,r_Y(A)=C,r_Z(B)=Aから、YXYX上に作る正三角形の第三頂点PPがZZに一致することを示せ。

解答.

定理 1.1によりrX∘rYr_X\circ r_YはPPを中心とする時計回り120°120°回転である。また(rX∘rY)(A)=B(r_X\circ r_Y)(A)=Bである。rZ−1r_Z^{-1}も時計回り120°120°回転でAAをBBへ送る。角度と一つの点の像が回転中心を一意に定めるため、P=ZP=Zである。▨

問題 4.2.A=(0,3),B=(−1,0),C=(1,0)A=(0,\sqrt3),B=(-1,0),C=(1,0)とする。辺BC,CABC,CAには外向き正三角形を作り、辺ABABにだけ内向き正三角形を作る。三つの中心を求め、中心三角形が正三角形でないことを確かめよ。

解答.

辺BC,CA,ABBC,CA,AB上の正三角形の中心を順にX,Y,ZX,Y,Zとすると

X=(0,−33),Y=(1,233),Z=(0,33)X=\left(0,-\frac{\sqrt3}{3}\right),\qquad Y=\left(1,\frac{2\sqrt3}{3}\right),\qquad Z=\left(0,\frac{\sqrt3}{3}\right)

となる。したがって

XY=2,YZ=ZX=23XY=2,\qquad YZ=ZX=\frac{2}{\sqrt3}

であり、中心三角形は正三角形でない。一辺だけ回転方向を変えたため、三つの中心回転を同じ向きで合成する対応が失われている。▨

参考文献

  1. H. S. M. Coxeter and S. L. Greitzer, Geometry Revisited, New Mathematical Library 19, Mathematical Association of America, 1967.三つの正三角形の外接円が一点を共有することを用いる初等幾何の証明を参考にしました。

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