二つの三角形について、対応する頂点を結ぶ三本の直線がどう交わるかは頂点の位置についての条件であり、対応する辺を含む三本の直線がどう交わるかは辺の位置についての条件です。デザルグの定理は、この二つの条件を結び付けます。本記事は、対応する頂点を結ぶ三直線が一点を共有するならば対応する辺の交点が一直線上に並ぶことを、平面へ無限遠点を加えた拡張平面(§A5.17 定義 1)の中で扱います。
定義 1 (配景の位置). 平面上の二つの非退化三角形△ABC、△A′B′C′と、拡張平面の点Oが次を満たすとする。
- A=A′、B=B′、C=C′である。
- 三直線AA′、BB′、CC′は互いに相異なり、いずれもOを通る。
- Oは六つの頂点A、B、C、A′、B′、C′のいずれとも異なる。
このとき、△ABCと△A′B′C′は点Oから配景の位置 (perspective position) にあるという。
Oが無限遠点である場合、条件 (b)は三直線AA′、BB′、CC′が互いに平行であることを意味します(§A5.17 定理 1.2)。以下の主張と証明は、Oが有限点である場合と無限遠点である場合の両方を含みます。
定理 2 (デザルグの定理). 平面上の非退化三角形△ABCと△A′B′C′が拡張平面の点Oから配景の位置にあるとする。このとき、拡張平面の三点
P=AB∩A′B′,Q=BC∩B′C′,R=CA∩C′A′は定まり、一直線上にある。
同一直線上の三点X,T,Yについての有向線分比XT/TY(§A5.9 定義 2.1)の値は、直線の向きを逆にすると分子と分母がともに−1倍されるので、向きの取り方によらずに定まります。TがX、Yと異なる有限点であるとき、この値は0とも−1とも異なります(§A5.9 定理 2.2)。
補題 3. 非退化三角形△XYZと、直線XYに平行でZを通らない直線mがあり、mが直線ZXと点X1で、直線ZYと点Y1で交わるとする。このとき
X1XZX1=Y1YZY1が成り立つ。逆に、直線ZX上の点X1と直線ZY上の点Y1がいずれも三角形の頂点と異なる有限点であって上の等式を満たすなら、直線X1Y1は直線XYに平行である。
証明.§A5.9 定理 6.1に従い、直線mを、定数でないアフィン関数φの零点集合として表す。mは直線XYに平行だから両者は共有点を持たず、XとYはいずれもmの上にない。アフィン関数の定義により、直線XY上の点(1−u)X+uYについてφ((1−u)X+uY)=(1−u)φ(X)+uφ(Y)が成り立つ。φ(X)=φ(Y)とすれば、u=φ(X)/(φ(X)−φ(Y))に対応する直線XY上の点でφの値は0になり、その点がmに属して共有点が存在することになるから、矛盾する。よってφ(X)=φ(Y)であり、この値は0でない。また、mはZを通らないからφ(Z)=0である。X、Zはmの上になく直線ZXはmとX1で交わるので、§A5.9 定理 6.1を三点Z、X、X1に適用することができ、Yの側にも同様に適用することができる。したがって
X1XZX1=−φ(X)φ(Z)=−φ(Y)φ(Z)=Y1YZY1となり、前半の等式が従う。
後半を示す。X1を通り直線XYに平行な直線をm′とする。△XYZは非退化だから直線ZYは直線XYに平行でなく、したがってm′と直線ZYは有限な一点Y2を共有する。またZ∈m′とすればX1はm′と直線ZXの共有点としてZに一致し、X1=Zに反するので、m′はZを通らない。よって前半をm′に適用してZX1/X1X=ZY2/Y2Yを得る。仮定の等式と合わせるとZY2/Y2Y=ZY1/Y1Yであり、§A5.9 定理 2.2により直線ZY上でこの比をもつ点はただ一つだからY2=Y1である。ゆえに直線X1Y1はm′に一致し、直線XYに平行である。▨
配景の位置にある二つの三角形では、各頂点に0でない実数が付き、対応する辺の交わり方がその実数の比だけで決まります。
補題 4. 平面上の非退化三角形△ABCと△A′B′C′が拡張平面の点Oから配景の位置にあるとする。このとき、0でない実数μA、μB、μCが定まり、(X,Y)を(A,B)、(B,C)、(C,A)のいずれかとするとき次が成り立つ。
- 直線XYと直線X′Y′は相異なる。
- 直線XYと直線X′Y′が平行であることと、μX=μYであることとは同値である。
- 直線XYと直線X′Y′が有限な点Wで交わるならば、WはXともYとも異なる。
- 直線XYと直線X′Y′が有限な点Wで交わるならば、WYXW=−μXμYである。
配景の中心が有限点である場合、直線A′B′は三角形OABの三辺を含む三本の直線を横切ります。
配景の中心が無限遠点である場合、対応する頂点を結ぶ三直線は互いに平行になります。
証明. 直線ABと直線A′B′は相異なる。実際、両者が一致すればA′は直線ABの上にあり、A=A′だから直線AA′は直線ABに一致する。同じ理由で直線BB′も直線ABに一致し、定義 1 条件 (b)に反する。(B,C)と(C,A)についても文字を巡回させれば同じ議論が通るから、(1)が従う。拡張平面では相異なる二直線がただ一点を共有する(§A5.17 定理 1.1)ので、直線XYと直線X′Y′は平行であるか、または有限な一点で交わるかのいずれか一方である。
まずOが有限点である場合を扱う。各頂点XについてX′は直線OX上にあり、定義 1 条件 (c)によりX′=O、定義 1 条件 (a)によりX′=Xであるから、§A5.9 定理 2.2により
μX=X′XOX′は0とも−1とも異なる実数である。
Oは直線ABの上にない。実際、O∈ABとすれば直線OAと直線OBはともに直線ABに一致し、直線AA′と直線BB′が一致して定義 1 条件 (b)に反する。よって△OABは非退化であり、直線BC、CAについても同様である。
直線ABと直線A′B′が平行であるとする。Oは直線A′B′の上にない。実際、O∈A′B′とすれば直線A′B′は直線OA′=AA′に一致し、B′が直線AA′と直線BB′の共有点となるが、この二直線は相異なりOを共有するからB′=Oとなって定義 1 条件 (c)に反する。したがって補題 3を△OABと直線A′B′に適用することができ、μA=μBを得る。
逆に直線ABと直線A′B′が有限な点Pで交わるとする。P=Aである。実際、P=AとすればAは直線A′B′の上にあり、A=A′だから直線A′B′は直線AA′に一致し、上と同じ理由でB′=Oとなって仮定に反する。同様にP=Bであり、(3)が従う。そこで§A5.9 定理 6.2を△OABと、直線OA上の点A′、直線OB上の点B′、直線AB上の点Pに適用すると
A′AOA′⋅PBAP⋅B′OBB′=−1となる。BB′/B′O=B′B/OB′=1/μBであるから、AP/PB=−μB/μAを得る。これは(4)である。また、この値は§A5.9 定理 2.2により−1と異なるのでμA=μBであり、先に示したことと合わせて(2)が従う。(B,C)と(C,A)についても文字を巡回させれば同じ議論が通る。
次にOが無限遠点である場合を扱う。このとき三直線ℓA=AA′、ℓB=BB′、ℓC=CC′は互いに平行で相異なる。この三直線に共通の向きを一つ定め、各直線上の有向線分をその向きで測って
a=AA′,b=BB′,c=CC′とおく。向きを逆にするとa、b、cはいずれも−1倍されるので、以下に現れる比は向きの選び方によらない。定義 1 条件 (a)によりa、b、cはいずれも0でないから、μX=1/XX′と定めることができる。
ℓAは直線ABと異なる。実際、ℓA=ABとすればB∈ℓAとなるが、B∈ℓBでありℓAとℓBは相異なる平行線だから共有点を持たない。よってℓAと直線ABはAだけを共有し、ℓBと直線ABはBだけを共有する。とくにA′∈/ABである(A′∈ABとすればA′∈ℓA∩AB={A}となりA=A′に反する)。またAとBは相異なる平行線ℓA、ℓBの上にあるから、四点A、B、B′、A′が同一直線上に並ぶことはない。
a=bとする。このときAからA′への移動とBからB′への移動は向きも長さも等しく、四点は同一直線上にないから、四角形ABB′A′は平行四辺形である。その対辺として直線A′B′は直線ABに平行であり、両者は(1)により相異なる。逆にa=bとし、ℓB上にBB′′=aとなる点B′′をとる。同じ理由で直線A′B′′は直線ABに平行であり、B′′=B′である。もし直線A′B′も直線ABに平行なら、A′∈/ABであってA′を通り直線ABに平行な直線は一本しかないので直線A′B′と直線A′B′′は一致し、ℓBとの共有点としてB′=B′′となって矛盾する。ゆえにa=bであることと直線ABと直線A′B′が平行であることとは同値であり、μA=μBはa=bと同値であるから(2)が従う。
a=bとして(4)を示す。直線ABと直線A′B′の交点をPとする。P∈/ℓAである。実際、ℓAは上で見たとおり直線ABとAだけを共有するのでP∈ℓAはP=Aを意味し、そのとき直線A′B′は直線AA′=ℓAに一致してB′∈ℓA∩ℓBとなるが、ℓAとℓBは相異なる平行線だから共有点を持たない。同様にP∈/ℓBである。とくにP=AかつP=Bであり、(3)が従う。よって△PAA′は非退化であり、ℓBは辺AA′を含む直線に平行でPを通らず、直線PA=ABとBで、直線PA′=A′B′とB′で交わる。補題 3により
BAPB=B′A′PB′.直線ABにx(A)=0、x(B)=1となる座標をとってx(P)=qと書き、直線A′B′にx(A′)=0、x(B′)=1となる座標をとってx(P)=pと書くと、この等式はq−1=p−1、すなわちq=pとなる。
一方、△B′A′B′′は非退化であり、直線ABは辺A′B′′を含む直線に平行でB′を通らず(B′∈ABとすればB′は直線ABとℓBの唯一の共有点Bに一致してB=B′に反する)、直線B′A′=A′B′とPで、直線B′B′′=ℓBとBで交わる。補題 3により
PA′B′P=BB′′B′B=a−b.左辺は上の座標で(p−1)/(−p)に等しいからa(1−p)=−bpとなりp=a/(a−b)を得る。したがって
PBAP=1−qq=1−pp=−ba=−μAμBである。(B,C)と(C,A)についても文字を巡回させれば同じ議論が通る。▨
証明 (デザルグの定理、メネラウスの定理による).(1)により、対応する辺を含む直線の組はそれぞれ相異なる。拡張平面では相異なる二直線がただ一点を共有する(§A5.17 定理 1.1)から、P、Q、Rは拡張平面の点として定まる。また(3)により、P、Q、Rのうち有限点であるものは、対応する辺の両端の頂点のいずれとも異なる。以下、同じ補題の実数μA、μB、μCを用いる。
μA、μB、μCが互いに異なるとする。(2)により対応する辺を含む直線はどの組も平行でないから、P、Q、Rはいずれも有限点である。(4)により
QCBQ⋅RACR⋅PBAP=(−μBμC)(−μCμA)(−μAμB)=−1である。Qは直線BC上でB、Cと異なり、Rは直線CA上でC、Aと異なり、Pは直線AB上でA、Bと異なるから、§A5.9 定理 6.3によりP、Q、Rは一直線上にある。
μA=μBでありμCがこれと異なるとする。(2)により直線ABと直線A′B′は平行であり、Pは両者に共通する方向の無限遠点である(§A5.17 定理 1.2)。一方、QとRは有限点であり、(4)からBQ/QC=−μC/μBであり、逆数を取って
QBCQ=−μCμB,RACR=−μCμAであって、μA=μBよりこの二つは等しい。Qは直線CB上、Rは直線CA上にあっていずれも三角形の頂点と異なるから、補題 3の後半を△BACに適用すると、直線QRは直線BAに平行である。直線QRは直線ABと異なる。実際、両者が一致すればQは直線ABと直線BCの共有点Bに等しく、Q=Bに反する。よって§A5.17 定理 1.2により直線QRと直線ABは同じ無限遠点、すなわちPを共有する。ゆえにP、Q、Rは直線QRの上にある。μB=μCの場合とμC=μAの場合も、文字を巡回させれば同じ議論が通る。
μA=μB=μCとする。(2)により対応する辺を含む直線はどの組も平行であり、P、Q、Rはいずれも無限遠点である。無限遠点の全体は一本の直線であるから(§A5.17 定義 1)、P、Q、Rは無限遠直線の上にある。以上で三つの場合を尽くした。▨