概要

本単元は、合同、相似、円の性質を根拠として、図形の性質と位置関係を証明します。三角形の相似条件と円周角の定理から始め、接弦定理、方べきの定理と根軸、三角形の五心、チェバとメネラウスの定理へ進みます。そのうえで、一直線上の四点について、一点からの射影で保たれる量として複比を定め、射影変換と反転を経て、パップスの六角形定理に至ります。

本単元の中心は計算ではなく証明です。どの定理にも、合同、相似、円の性質だけから出発する初等幾何による主証明を置きます。同じ図形を座標、ベクトル、複素数によって計算する方法は「図形と方程式」で扱い、本単元ではこれを別証明として主証明の後に示します。図を動かして結論が保たれることを確かめる作業は、予想を立てるために用い、証明の代わりには用いません。

この単元のねらい

本単元は、読者が次に掲げる能力を習得することを目標とします。

  • 三角形の相似条件を判定し、対応する頂点の順序を保ったまま、相似を用いた証明を組み立てることができます。
  • 平行線が作る線分の比と、内角の二等分線が対辺を分ける比を、相似へ帰着させて証明することができます。
  • 相似比から面積比と体積比を導き、そこから相似比へ戻すときに平方根と立方根のどちらを取るのかを区別することができます。
  • 三平方の定理とその逆を、それぞれ別の主張として区別し、証明して用いることができます。
  • 円周角の定理とその逆を用いて、角の相等と、四点が同一円周上にあることを示すことができます。
  • 接弦定理、方べきの定理、根軸を証明し、円に関する位置関係の問題に適用することができます。
  • 三角形の五心について、それぞれを定める三本の直線が一点で交わることを、定義の違いに応じた方法で証明することができます。
  • チェバの定理とメネラウスの定理を、有向線分比の符号を含めて正しく述べ、共点と共線の判定に用いることができます。
  • 尺規作図の手順を構成し、その手順が目的の図形を与える根拠を示すことができます。
  • 一点からの射影で保たれる量として複比を定め、射影変換と反転によって配置を単純にすることができます。
  • 図による観察と証明を区別し、仮定を外したときに結論が崩れることを具体例によって示すことができます。

前提知識

本単元は、「集合と論理」で扱う定理と逆の区別、背理法、場合分けを用います。定理とその逆をそれぞれ別に証明する必要があることは、本単元の全体を通じて繰り返し現れます。

図形の題材としては、中学校までに扱う合同、相似、円の基本的な性質を用います。ただし本単元は、これらを図をかいて確かめる段階では扱わず、既知の性質から証明する水準で組み直します。

主証明はいずれも初等幾何によるので、本単元を読むために座標やベクトルの知識は要りません。主証明の後に置く別証明では、座標、位置ベクトルと内積、複素数、行列を用います。これらの計算は「図形と方程式」で扱うので、別証明まで読む読者は、そこで確かめることができます。同次座標と3次の行列は、複比と射影変換を扱う記事の中で導入します。

この単元を貫く4つの方針

本単元の各記事は、次の4点を共通の方針とします。

  1. 定理を初等幾何によって証明します。 座標や三角比に頼らず、合同、相似、円の性質だけから定理を証明することを第一とします。他の方法による証明は、初等幾何による証明の後に別証明として示します。
  2. 観察と証明を区別します。 図を動かして結論が保たれることを確かめる作業と、証明とを区別します。観察は予想を立てるために用い、証明の代わりには用いません。
  3. 仮定を証明のどこで用いたのかを示します。 定理の仮定を一つ外すと結論が崩れることを、具体例または図によって示します。これによって、証明のどの段階でその仮定を用いたのかが定まります。
  4. 配置と場合分けを管理します。 点が線分の内部にあるか外部にあるか、角が鋭角か鈍角かによって、図の配置は変わります。三点が一直線上に並ぶ、二点が一致する、角が0∘0^\circまたは180∘180^\circになるといった退化した配置についても、仮定によって除くのか、証明の中で場合を分けて扱うのかをそのつど明示します。有向線分比や有向角を導入して場合分けをまとめる方法も扱います。

難易度区分

本単元は、23記事を「基礎」10記事と「応用・発展」13記事に分けます。

本単元は、まず三角形の相似条件と円周角の定理を証明します。この二つが、以降のほとんどすべての証明の根拠になります。次に、それらを用いて円に関する量を求め、三本の直線が一点で交わる理由と、三点が一直線上に並ぶ条件を扱います。応用・発展では、基礎で証明した定理だけから導くことができる三つの定理を先に置き、そのうえで、長さや角ではなく、一点からの射影で保たれる量に着目して、同じ図形をもう一度見直します。

基礎の10記事は、本単元で必ず読む内容であり、順に読むことを想定しています。応用・発展の13記事は必修ではなく、読者は関心に応じて選んで読むことができます。

基礎

三角形の相似条件と円周角の定理という、初等幾何のほとんどの証明が根拠とする二つを証明し、それらを用いて円に関する量と、三本の直線が一点で交わる理由を扱う段階です。はじめの数記事は中学校までに扱う内容と重なりますが、ここでは図をかいて確かめたことを根拠とせず、既知の性質から証明します。その後は、証明の進め方が定理ごとに異なることを意識して扱います。各記事が扱う内容は、次のとおりです。

  • 三角形の相似条件と、相似を使った証明 — 対応する角がすべて等しく、対応する辺の比がすべて等しいことによって相似を定義し、合同条件と対応させて相似条件を並べます。二組の角がそれぞれ等しい二つの三角形が相似であることを証明し、平行線から相似な三角形と辺の比の等式を導きます。証明では対応する頂点の順序を崩しません。
  • 平行線と線分の比 — 三角形の二辺の中点を結ぶ線分が残りの一辺と平行で、長さがその一辺の半分になることを、相似比が1:21:2である場合として証明します。内角の二等分線が対辺を分ける比と、その角をはさむ二辺の比が等しいことは、補助線として平行線を一本引き、相似へ帰着させて示します。
  • 相似比と面積比・体積比 — 相似比がkkのとき、面積比がk2k^2、体積比がk3k^3になることを、図形を分割して証明します。対象は、有限個の三角形へ分割することができる多角形と、対応する有限個の角錐へ分割することができる多面体に限ります。面積比や体積比から相似比へ戻すときに平方根と立方根のどちらを取るのかを区別し、縮尺や模型の題材にも適用します。
  • 三平方の定理とその逆 — 直角三角形の斜辺の2乗が残りの二辺の2乗の和に等しいことを、垂線が作る相似による証明と、正方形の面積の分割による証明の二通りで示し、両者を比べます。逆については、最大辺の2乗が他の二辺の2乗の和に等しければ、その向かいの角が直角になることを、別の主張として証明します。
  • 円周角の定理とその逆 — 同じ弧に対する円周角が中心角の半分に等しく、点の位置によらないことを、中心が円周角の内部にある場合と外部にある場合に分けて証明します。逆については、線分の両端を通る直線の同じ側にある二点から、その線分を見込む角が等しければ四点が同一円周上にあることを示し、同じ側にあるという仮定を落とすと成り立たないことを確かめます。
  • 円の接線・接弦定理と、四点が同一円周上にある条件 — 円と共有点をただ一つもつ直線として接線を定め、接点を通る半径と直交することを示します。接点で接線と弦が作る角が、その弦に関して反対側の弧から見込む円周角に等しいことを証明します。円に内接する四角形の向かい合う角の和が180∘180^\circになることと、凸四角形についてその逆を示し、四点が同一円周上にあることを角によって判定します。
  • 方べきの定理と根軸 — 点の方べきを、中心までの距離の2乗から半径の2乗を引いた符号つきの量として定義します。割線が円と交わる二点までの符号つきの長さの積と、外部の点から引いた接線の長さの2乗が、いずれも方べきに等しいことを証明します。中心が相異なる二円では、方べきが等しい点の全体が、中心を結ぶ直線に垂直な一本の直線(根軸)になります。中心が一致する相異なる二円では、方べきが等しい点はありません。
  • 三角形の五心 — 重心、外心、内心、垂心、傍心について、それぞれを定める三本の直線が一点で交わることを、面積の分割、等距離な点の軌跡、直角から作る円と円周角によって証明します。三角形の形による外心と垂心の位置と、オイラー線も扱います。五心の共点はいずれも初等幾何によって証明し、位置ベクトルと内積による別証明を併せて示します。
  • チェバの定理・メネラウスの定理とその逆 — 頂点と対辺上の点を結ぶ三本の直線が一点で交わる条件と、三辺上の三点が一直線上に並ぶ条件を、比の積として扱います。チェバの定理では積が11、メネラウスの定理では積が−1-1になることと、それぞれの逆を証明します。外分まで同じ式で扱うために有向線分比を導入して符号を定め、積が11でも三本が互いに平行になる場合を区別します。位置ベクトルによる別証明も示します。
  • 尺規作図とその根拠 — 目盛りのない定規とコンパスによる有限回の操作として尺規作図を定めます。垂直二等分線、正三角形、角の二等分線、指定した点を通る垂線と平行線について、各手順が目的の図形を与えることを証明します。角の三等分と立方体倍積は問いを立てるところまでとし、同じ道具で作図することができるかどうかの決着は「体論入門」で扱います。

応用・発展

はじめに、基礎で証明した定理だけから導くことができる三つの定理を扱います。続いて、長さや角ではなく、一点からの射影で保たれる量に着目して、初等幾何をもう一度見直します。チェバとメネラウスの定理で導入した有向線分比から複比を定め、射影変換と反転によって、配置による場合分けが減る場面を扱います。高等学校の標準的な範囲を超えますが、基礎からの延長として読むことができます。必修ではないので、読者は関心のある記事から選んで読むことができます。各記事が扱う内容は、次のとおりです。

  • 中線定理 — 三角形の頂点と対辺の中点を結ぶ中線について、二辺の2乗の和が、中線の2乗と対辺の半分の2乗の和の 2倍に等しいことを示します。頂点から対辺へ垂線を下ろし、三平方の定理を二度用いる証明を主証明とし、座標や位置ベクトルによる計算は別証明として扱います。
  • ヴィヴィアーニの定理 — 正三角形の内部の点から三辺へ下ろした垂線の長さの和が、点の位置によらず正三角形の高さに等しいことを示します。点と各頂点を結んで三つの三角形へ分け、面積を全体と部分の二通りに数える証明を主証明とします。境界上の点でも同じ計算で成り立ち、外部の点では成り立たないことも確かめます。
  • シムソン線 — 外接円上に頂点と異なる点をとり、そこから三辺を含む三直線へ下ろした垂線の足が一直線上に並ぶことを示します。垂線が作る直角から、四点が同一円周上にある配置を二度取り出し、角を移して共線を導きます。複素数による計算は別証明として扱います。外接円上にあるという仮定を落とすと成り立ちません。
  • 複比とその射影不変性 — 同一直線上の相異なる四点について、二つの有向線分比の商として複比を定義します。直線の外にある一点からの射影で四点を別の直線上へ写しても複比が変わらないことを、メネラウスの定理を繰り返し用いて証明します。長さも長さの比も一般には変わるのに複比だけが変わらないことを扱い、行列と同次座標による別証明も示します。
  • 調和点列と調和共役 — 複比が−1-1になる四点を調和点列と呼び、二点と、その中点でない第三の点に対して、条件を満たす第四の点がただ一つ定まることを、完全四辺形による作図とともに証明します。線分ABABに平行な直線があれば、目盛りのない定規だけでABABの中点を作図することができます。この中点は、ABAB上の無限遠点の、AAとBBに関する調和共役にあたります。平行線がなければ、定規だけでは中点を作図することができません。
  • 極線と極点、双対原理 — 中心を原点とする円について、原点でない点の座標を係数とする一次式を半径の2乗とおいて定まる直線を極線と呼び、もとの点をその極点と呼びます。外部の点では極線が二本の接線の接点を結ぶ直線になり、内部の点では実際の接線がないまま同じ式で定まります。点QQが点PPの極線上にあることと、点PPが点QQの極線上にあることが同値であることを示し、点と直線を入れ替えても主張が成り立つことを扱います。
  • 射影変換と無限遠直線 — 一点からの射影を有限回合成したものとして射影変換を定義し、平行な直線の族が共有する無限遠点の全体を無限遠直線と呼びます。点が直線上にあることと四点の複比が保たれることを示し、平行かどうかによる場合分けが消えることと、扱いやすい配置へ移して証明し、逆変換でもとへ戻す手順を扱います。同次座標と3次の行列による別証明も示します。長さや角による結論は、射影変換ではもとへ戻すことができません。
  • パップスの六角形定理 — 一方の直線上の三点と他方の直線上の三点を交互に結ぶ六角形について、向かい合う辺の交点となる三点が一直線上に並ぶことを、一点からの射影による複比の保存とメネラウスの定理によって証明します。円周上の点からの射影を扱うには三角比が必要になるので、円が絡む場合は「幾何の定理ギャラリー」で扱います。
  • 反転と円円対応 — 中心と正の半径を定め、中心以外の点を同じ半直線上の点へ、中心からの二つの距離の積が半径の2乗になるように移す操作として反転を定義します。中心を通らない円は円へ、中心を通る円は直線へ、中心を通らない直線は中心を通る円へ移ることを示し、交わる二曲線の交点における接線のなす角の大きさが保たれることも証明します。長さは保たれないので、反転して得た結論は距離の公式でもとへ戻します。
  • 幾何の技法 — 補助線を偶然の着想ではなく探索の結果として扱い、等しい角を増やす、相似を作る、四点が同一円周上にある配置を作る、積や比を作るという目的ごとに、引き方を整理します。鋭角三角形の垂心を一辺に関して反射した点が外接円上にあることを、角の和によって証明します。問題を解く演習は「競技数学:初等幾何」で扱います。
  • 射影・複比の実戦 — 同一直線上の四点の複比を有限座標の式で確かめ、値が−1-1になる調和共役の関係を問題に用います。有向線分比を複比にまとめ、射影変換で計算しやすい配置へ移し、変わらない複比の等式だけをもとの配置へ戻す順序で解きます。一般の射影不変性の証明は「複比とその射影不変性」で扱います。
  • 反転の実戦 — どの点を反転の中心に取るかによって配置の複雑さが変わることを扱い、複数の円が通る点を中心に取って、円どうしの条件を直線どうしの条件へ置き換えます。二円が二点で交わる配置では、一方の交点を中心とする反転によって二円が二本の直線へ移ることを示します。長さは保たれないので、反転した後の長さをもとの長さと同一視しません。
  • 競技数学:初等幾何 — 配置の読み取り、補助線、相似、四点が同一円周上にある配置、反転を用いる問題を解きます。相似から線分の積の関係を導く問題、鋭角三角形の垂心を一辺に関して反射した点が外接円上にあることを示す問題、対辺を分ける比から、頂点と対辺上の点を結ぶ線分が角の二等分線であることを示す問題を扱い、いずれも初等幾何によって証明し、座標やベクトルによる方法は別証明として扱います。

学習到達点の確認方法

同じ図形であっても、本単元が確かめる内容は区分によって異なります。

  • 基礎では、読者が相似条件と円周角の定理を正確に述べ、対応関係と場合分けを保ったまま証明を組み立てることができるかを確かめます。また、読者が定理とその逆を区別することができるかを確かめます。さらに、三本の直線が一点で交わることや、四点が同一円周上にあることを、適した方法を選んで証明することができるかを確かめます。有向線分比を用いる場面では、読者が符号の定め方を最後まで保つことができるかを確かめます。
  • 応用・発展では、読者が、どの量が射影や反転によって保たれるかに着目して方針を立てることができるかを確かめます。また、読者が射影や反転によって配置を単純にすることができるかを確かめます。

本単元は、演習に、証明を構成する問題を中心に用います。動かせる図では、読者は点を動かして結論が保たれることを観察することができますが、その観察は証明の代わりにはなりません。証明を伴う解答では、用いた定理、補助線の取り方、場合分け、仮定を用いた箇所を確かめます。読者が、仮定を外したときに結論が崩れる例を示すことができることも、理解の一部として扱います。

前後の単元との関係

  • 集合と論理 — 同単元は、命題と条件、定理と逆の区別、背理法、場合分けを扱います。本単元は、これらを図形の論証に用います。
  • 図形と方程式 — 同単元は、同じ図形を座標、ベクトル、複素数によって計算します。本単元の三平方の定理は二点間の距離の公式にあたり、相似は三角比の定義の根拠にあたります。本単元が別証明として示す計算は、同単元で体系的に扱います。
  • 幾何の定理ギャラリー — 本単元は、証明に用いる道具そのものを、相似と円周角から順に、先の記事の結果を次の記事の根拠として導入します。同単元は、その道具によって証明することができる個々の定理を、他の記事を前提とせずに一つずつ扱います。九点円、フォイエルバッハの定理、デザルグの定理、ポンスレの閉形定理は同単元が扱います。本単元のパップスの六角形定理に対応する、円錐曲線に内接する六角形についてのパスカルの定理と、その双対にあたるブリアンションの定理も、三角比と円錐曲線を要するので同単元が扱います。
  • 複素解析 — 同単元は、等角写像と一次分数変換を扱います。本単元の反転が交点における角の大きさを保つことと、四点の複比が保たれることは、同単元で正則関数の性質として再び現れます。無限遠点を加えた複素数平面の上での一次分数変換そのものは「幾何の定理ギャラリー」が扱います。
  • 体論入門 — 同単元は、体の拡大とその次数によって、定規とコンパスで作図することができる図形を判定します。本単元の尺規作図で立てた作図可能性の問いは、同単元で決着します。
  • 多様体入門 および Riemann 幾何 I — 前者は曲がった空間そのものの扱い方を定め、後者はその上に計量を置いて長さと角を測ります。本単元が扱うユークリッド平面は、後者が扱う定曲率空間のうち、曲率が00である場合にあたります。

教育課程上の位置づけと参考年次

本単元の内容と各国の教育課程との主な対応は、次のとおりです。初等幾何の論証は、中等教育の前半に置く国と、後半まで継続して扱う国とに分かれます。応用・発展に置く13記事は、ここに挙げるいずれの国でも、独立した項目としては高等学校の課程に置かれていません。中線定理のように、教科書の問題として現れるものはあります。各項の記述は、それぞれが挙げるリンク先の文書に基づきます。日本の平成30年告示、韓国の2022改訂教育課程、中国の2017年版2020年修訂は版を特定した参照であり、版を特定していないリンクは、教育課程の改訂によって内容が変わることがあります。

  • 日本 — 本単元は、高等学校学習指導要領(平成30年告示)の「数学A 図形の性質」に主として対応します。本単元が扱う三角形の五心、チェバとメネラウスの定理、円に関する性質、作図は、同科目の内容と重なります。基礎に置く記事のうち相似、三平方の定理、円周角の定理は、中学校学習指導要領(平成29年告示)の第3学年「図形」に対応します。
  • 韓国 — 2022改訂教育課程では、相似、ピタゴラスの定理、円の性質を中学校段階で扱います。高等学校の共通科目では、図形を座標と方程式によって扱う内容が中心になります。
  • 中国 — 普通高中课程方案和语文等学科课程标准(2017年版2020年修订)では、高等学校の必修課程に立体幾何の初歩を、選択性必修課程に平面解析幾何を置きます。平面図形の合同、相似、円の性質に関する論証は、義務教育段階の「图形与几何」で扱います。
  • 米国 — 連邦教育省の説明のとおり、教育基準は州が定めます。比較資料として Common Core State Standards for Mathematicsを用いると、 High School Geometryの「Congruence」「Similarity, Right Triangles, and Trigonometry」「Circles」に対応します。同基準は、合同と相似に基づく証明、円周角、接線、作図とその根拠を明示的に扱います。
  • フランス — lycée général et technologiqueの数学課程では、タレスの定理とピタゴラスの定理を中学校段階(collège)で扱い、高等学校では座標とベクトルによる幾何が中心になります。合成的な論証の比重は、日本の数学Aに比べて小さいです。
  • ドイツ — 各州が学校課程を定め、 KMKが全国共通の到達基準を示します。州別の例として、バイエルン州LehrplanPLUSでは、中等段階Iでピタゴラスの定理、相似と線分比の定理、円周角の定理を扱います。観察による予想と証明を区別する扱いは、同課程の記述に明示されています。
  • イギリス(England) — National Curriculum: mathematics programmes of studyの Key stage 3・4「Geometry and measures」に主として対応します。同課程は合同と相似、ピタゴラスの定理、作図を扱い、上位段階では円に関する定理とその証明を扱います。 GCE AS and A level mathematicsでは、幾何を主として座標幾何とベクトルとして扱い、合成的な論証を必修内容に含めません。