§E13.2整数分割と母関数

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正の整数nnを、順序を無視して正の整数の和へ分ける方法の総数を分割数という。分割数には、部分の個数についても部分の大きさについても閉じた漸化式が知られていない。そのかわり、分割数の母関数は

11−x⋅11−x2⋅11−x3⋯\frac{1}{1-x}\cdot\frac{1}{1-x^{2}}\cdot\frac{1}{1-x^{3}}\cdots

という無限積の形をとる。第kk因子が「大きさkkの部分を何個使うか」を担うためである。

この積を書くには、無限個の因子の積が何を意味するかを先に決めなければならない。先行記事が定義した形式的冪級数の環には、無限積が定義されていない。本記事は、各次数の係数が有限個の因子だけから定まるという条件のもとで無限積を定義し、この枠組みで Euler 積を完全に証明する。そのうえで、相異なる部分への分割数と奇数部分への分割数が等しいことを、二つの無限積の係数比較によって証明する。分割数の漸近公式は扱わない。

1 分割、Ferrers 図形、共役分割

定義 1.1.nnを非負整数とする。nnの分割 (integer partition) とは、非増加な正の整数の有限列

λ=(λ1,λ2,…,λr),λ1≥λ2≥⋯≥λr≥1,∑i=1rλi=n\lambda=(\lambda_1,\lambda_2,\dots,\lambda_r),\qquad \lambda_1\ge\lambda_2\ge\dots\ge\lambda_r\ge1,\qquad \sum_{i=1}^{r}\lambda_i=n

のことをいい、λ⊢n\lambda\vdash nと書く。各λi\lambda_iをλ\lambdaの部分 (part)、rrを部分の個数 (number of parts) とよぶ。n=0n=0に対しては長さ00の列(空の分割)を唯一の分割とする。nnの分割の総数を分割数 (partition number) とよびp(n)p(n)と書く。とくにp(0)=1p(0)=1である。

分割は部分の重複度によっても記述することができる。この記述は Euler 積の証明で用いる。

命題 1.2. 非負整数nnを固定する。nnの分割λ\lambdaに対し、k≥1k\ge1について

mk(λ)=∣{i : λi=k}∣m_k(\lambda)=\bigl|\{i\ :\ \lambda_i=k\}\bigr|

と定める。写像λ↦(mk(λ))k≥1\lambda\mapsto(m_k(\lambda))_{k\ge1}は、nnの分割の全体から、次を満たす非負整数の族(mk)k≥1(m_k)_{k\ge1}の全体への全単射である。

  1. mk≠0m_k\ne0となるkkは有限個である。
  2. ∑k≥1kmk=n\sum_{k\ge1}km_k=nが成り立つ。

さらに、n≥1n\ge1のときmk≠0m_k\ne0ならばk≤nk\le nである。

証明.λ⊢n\lambda\vdash nとする。λ\lambdaの部分は有限個であるからmk(λ)≠0m_k(\lambda)\ne0となるkkは有限個である。部分を値ごとに分類すると、加法原理(§D2.2 定理 2.1)により∑k≥1kmk(λ)=∑i=1rλi=n\sum_{k\ge1}km_k(\lambda)=\sum_{i=1}^{r}\lambda_i=nである。またmk(λ)≠0m_k(\lambda)\ne0ならばkkはλ\lambdaの部分の一つであり、k≤∑iλi=nk\le\sum_i\lambda_i=nである。

逆写像を作る。条件を満たす族(mk)k≥1(m_k)_{k\ge1}に対し、値kkをmkm_k個ずつ、kkの大きい順に並べた有限列をλ(m)\lambda(m)と定める。この列は非増加な正の整数の列であり、成分の総和は∑kkmk=n\sum_k km_k=nであるからnnの分割である。構成からmk(λ(m))=mkm_k(\lambda(m))=m_kであり、逆に非増加列λ\lambdaは各値の重複度によって一意に定まるのでλ(m(λ))=λ\lambda(m(\lambda))=\lambdaである。ゆえに二つの写像は互いに逆であり、主張の写像は全単射である。▨

定義 1.3.λ=(λ1,…,λr)⊢n\lambda=(\lambda_1,\dots,\lambda_r)\vdash nとする。λ\lambdaの Ferrers 図形 (Ferrers diagram) とは、正の整数の対の集合

D(λ)={(i,j)∈Z≥1×Z≥1 : 1≤i≤r, 1≤j≤λi}D(\lambda)=\bigl\{(i,j)\in\mathbb Z_{\ge1}\times\mathbb Z_{\ge1}\ :\ 1\le i\le r,\ 1\le j\le\lambda_i\bigr\}

のことをいう。図としては、第ii行にλi\lambda_i個の点を左揃えで置き、i=1i=1からi=ri=rまで上から順に並べたものである。行の長さは上から下へ単調非増加である。

λ1≥1\lambda_1\ge1のとき、1≤j≤λ11\le j\le\lambda_1に対し

λj′=∣{i : 1≤i≤r, λi≥j}∣\lambda'_j=\bigl|\{i\ :\ 1\le i\le r,\ \lambda_i\ge j\}\bigr|

と定め、λ′=(λ1′,…,λλ1′)\lambda'=(\lambda'_1,\dots,\lambda'_{\lambda_1})をλ\lambdaの共役分割 (conjugate partition) とよぶ。空の分割の共役は空の分割と定める。

命題 1.4.λ⊢n\lambda\vdash nとする。このとき次が成り立つ。

  1. λ′\lambda'はnnの分割である。
  2. D(λ′)={(j,i) : (i,j)∈D(λ)}D(\lambda')=\{(j,i)\ :\ (i,j)\in D(\lambda)\}である。
  3. (λ′)′=λ(\lambda')'=\lambdaである。とくにλ↦λ′\lambda\mapsto\lambda'はnnの分割の全体からそれ自身への全単射である。
  4. λ\lambdaの部分の個数はλ′\lambda'の最大の部分に等しく、λ\lambdaの最大の部分はλ′\lambda'の部分の個数に等しい。

証明. 空の分割については四つの主張はいずれも定義から直ちに従うので、以下r≥1r\ge1とする。

(1)を示す。1≤j<j′≤λ11\le j<j'\le\lambda_1のとき{i:λi≥j′}⊆{i:λi≥j}\{i:\lambda_i\ge j'\}\subseteq\{i:\lambda_i\ge j\}であるからλj′′≤λj′\lambda'_{j'}\le\lambda'_jであり、λ′\lambda'は非増加である。j≤λ1j\le\lambda_1のときλ1≥j\lambda_1\ge jであるから1∈{i:λi≥j}1\in\{i:\lambda_i\ge j\}でありλj′≥1\lambda'_j\ge1である。総和については、D(λ)D(\lambda)の元を第二成分jjの値ごとに分類すると、jjを固定したときの元の個数は∣{i:λi≥j}∣=λj′|\{i:\lambda_i\ge j\}|=\lambda'_jであるから、加法原理(§D2.2 定理 2.1)により

∑j=1λ1λj′=∣D(λ)∣=∑i=1rλi=n\sum_{j=1}^{\lambda_1}\lambda'_j=|D(\lambda)|=\sum_{i=1}^{r}\lambda_i=n

である。最後の等号も、D(λ)D(\lambda)を第一成分ごとに分類した加法原理による。ゆえにλ′⊢n\lambda'\vdash nである。

(2)を示す。λ\lambdaは非増加であるから、1≤j≤λ11\le j\le\lambda_1に対し

{i : 1≤i≤r, λi≥j}={1,2,…,λj′}\{i\ :\ 1\le i\le r,\ \lambda_i\ge j\}=\{1,2,\dots,\lambda'_j\}

である。実際、λi≥j\lambda_i\ge jかつi′<ii'<iならばλi′≥λi≥j\lambda_{i'}\ge\lambda_i\ge jであるから、この集合は11から始まる連続した区間であり、その要素数はλj′\lambda'_jである。したがって

(j,i)∈D(λ′)  ⟺  1≤j≤λ1 かつ 1≤i≤λj′  ⟺  1≤j≤λ1 かつ λi≥j  ⟺  (i,j)∈D(λ)(j,i)\in D(\lambda') \iff 1\le j\le\lambda_1\ \text{かつ}\ 1\le i\le\lambda'_j \iff 1\le j\le\lambda_1\ \text{かつ}\ \lambda_i\ge j \iff (i,j)\in D(\lambda)

である。最後の同値では、(i,j)∈D(λ)(i,j)\in D(\lambda)が1≤i≤r1\le i\le rかつ1≤j≤λi1\le j\le\lambda_iを意味することと、λi≥j≥1\lambda_i\ge j\ge1がi≤ri\le rとj≤λ1j\le\lambda_1を含意することを用いた。

(3)を示す。(2)をλ′\lambda'へ適用するとD((λ′)′)D((\lambda')')はD(λ′)D(\lambda')の第一成分と第二成分を入れ替えた集合であり、ふたたび(2)によりD(λ)D(\lambda)に等しい。分割はその Ferrers 図形の第ii行の点の個数として復元されるので(λ′)′=λ(\lambda')'=\lambdaである。共役はnnの分割の全体からそれ自身への写像であり、自分自身が逆写像であるから全単射である。

(4)を示す。λ′\lambda'の最大の部分はλ1′=∣{i:λi≥1}∣=r\lambda'_1=|\{i:\lambda_i\ge1\}|=rであり、これはλ\lambdaの部分の個数である。λ′\lambda'の部分の個数は定義からλ1\lambda_1であり、これはλ\lambdaの最大の部分である。▨

例 1.5 (共役分割の計算).λ=(4,2,2,1)⊢9\lambda=(4,2,2,1)\vdash9とする。定義により

λ1′=∣{i:λi≥1}∣=4,λ2′=∣{i:λi≥2}∣=3,λ3′=∣{i:λi≥3}∣=1,λ4′=∣{i:λi≥4}∣=1\lambda'_1=|\{i:\lambda_i\ge1\}|=4,\quad \lambda'_2=|\{i:\lambda_i\ge2\}|=3,\quad \lambda'_3=|\{i:\lambda_i\ge3\}|=1,\quad \lambda'_4=|\{i:\lambda_i\ge4\}|=1

であるからλ′=(4,3,1,1)\lambda'=(4,3,1,1)である。部分の総和は4+3+1+1=94+3+1+1=9であり、命題 1.4 (1)と一致する。さらにλ′\lambda'の共役を計算すると

(λ′)1′=4,(λ′)2′=2,(λ′)3′=2,(λ′)4′=1(\lambda')'_1=4,\quad(\lambda')'_2=2,\quad(\lambda')'_3=2,\quad(\lambda')'_4=1

であり(λ′)′=(4,2,2,1)=λ(\lambda')'=(4,2,2,1)=\lambdaとなる。λ\lambdaの部分の個数44はλ′\lambda'の最大の部分44に等しく、λ\lambdaの最大の部分44はλ′\lambda'の部分の個数44に等しい。

系 1.6. 非負整数nnと正の整数mmに対し、nnの分割で部分の個数がmm以下であるものの個数は、nnの分割で各部分がmm以下であるものの個数に等しい。

証明.命題 1.4 (3)により、共役はnnの分割の全体上の全単射である。命題 1.4 (4)により、λ\lambdaの部分の個数がmm以下であることとλ′\lambda'の最大の部分がmm以下であること、すなわちλ′\lambda'の各部分がmm以下であることは同値である。したがって共役は、部分の個数がmm以下である分割の全体から、各部分がmm以下である分割の全体への全単射を与える。全単射原理(§D2.2 命題 1.5)により両者の個数は等しい。▨

2 形式的冪級数の無限積

本記事も係数を有理数体Q\mathbb Qに取る。形式的冪級数の和、Cauchy 積および係数抽出[xn][x^{n}]の定義は§D2.4 定義 4.1と§E13.1 定義 1.1が与える。これらの演算についてQ[[x]]\mathbb Q[[x]]が単位元をもつ可換環であることは§E13.1 命題 1.2が与える。本記事では、有限個の因子の積の並べ替えと分配法則による展開を繰り返し用いるので、この事実を随所で参照する。

無限個の因子の積を定義するために、まず各級数がどの次数から始まるかを測る量を導入する。

定義 2.1.F∈Q[[x]]F\in\mathbb Q[[x]]がF≠0F\ne0のとき、[xn]F≠0[x^{n}]F\ne0を満たす最小の非負整数nnをFFの位数 (order of a formal power series) とよびord⁡(F)\operatorname{ord}(F)と書く。F=0F=0のときはord⁡(0)=∞\operatorname{ord}(0)=\inftyと定め、任意の整数nnに対して∞>n\infty>n、任意のm∈Z≥0∪{∞}m\in\mathbb Z_{\ge0}\cup\{\infty\}に対して∞+m=∞\infty+m=\inftyと約束する。

補題 2.2.F,G∈Q[[x]]F,G\in\mathbb Q[[x]]に対しord⁡(FG)=ord⁡(F)+ord⁡(G)\operatorname{ord}(FG)=\operatorname{ord}(F)+\operatorname{ord}(G)が成り立つ。

証明.F=0F=0またはG=0G=0のときはFG=0FG=0であり、両辺とも∞\inftyである。以下F≠0F\ne0かつG≠0G\ne0とし、p=ord⁡(F)p=\operatorname{ord}(F)、q=ord⁡(G)q=\operatorname{ord}(G)と置く。Cauchy 積の定義(§D2.4 定義 4.1)により

[xn](FG)=∑j=0n([xj]F)([xn−j]G)[x^{n}](FG)=\sum_{j=0}^{n}\bigl([x^{j}]F\bigr)\bigl([x^{n-j}]G\bigr)

である。

n<p+qn<p+qとする。各項について、j<pj<pならば[xj]F=0[x^{j}]F=0であり、j≥pj\ge pならばn−j≤n−p<qn-j\le n-p<qであるから[xn−j]G=0[x^{n-j}]G=0である。ゆえに[xn](FG)=0[x^{n}](FG)=0である。

n=p+qn=p+qとする。j<pj<pの項とj>pj>pの項(このときn−j<qn-j<q)はいずれも00であるから、[xn](FG)=([xp]F)([xq]G)[x^{n}](FG)=([x^{p}]F)([x^{q}]G)である。Q\mathbb Qは体であり零因子をもたないので、この値は00でない。ゆえにord⁡(FG)=p+q\operatorname{ord}(FG)=p+qである。▨

定義 2.3. 添字集合II上の族(Fi)i∈I(F_i)_{i\in I}(各Fi∈Q[[x]]F_i\in\mathbb Q[[x]])が総和可能 (summable family) であるとは、各非負整数nnに対して

In={i∈I : ord⁡(Fi)≤n}I_n=\{i\in I\ :\ \operatorname{ord}(F_i)\le n\}

が有限集合であることをいう。このとき

[xn]∑i∈IFi:=∑i∈In[xn]Fi[x^{n}]\sum_{i\in I}F_i:=\sum_{i\in I_n}[x^{n}]F_i

と定めることにより、形式的冪級数∑i∈IFi∈Q[[x]]\sum_{i\in I}F_i\in\mathbb Q[[x]]が定まる。i∉Ini\notin I_nならばord⁡(Fi)>n\operatorname{ord}(F_i)>nすなわち[xn]Fi=0[x^{n}]F_i=0であるから、右辺はInI_nを含む任意の有限集合J⊆IJ\subseteq Iについて∑i∈J[xn]Fi\sum_{i\in J}[x^{n}]F_iに等しい。

無限積は、有限個の因子だけを掛けた積の係数が、因子を増やしても変わらなくなることによって定義する。

命題 2.4. 族(Gi)i∈I(G_i)_{i\in I}(各Gi∈Q[[x]]G_i\in\mathbb Q[[x]])が総和可能であるとする。有限部分集合J⊆IJ\subseteq Iに対しPJ=∏i∈J(1+Gi)P_J=\prod_{i\in J}(1+G_i)と置く(J=∅J=\emptysetのときP∅=1P_\emptyset=1)。このとき、各非負整数nnと、In⊆J⊆J′I_n\subseteq J\subseteq J'を満たす任意の有限部分集合J,J′⊆IJ,J'\subseteq Iに対し

[xn]PJ=[xn]PJ′[x^{n}]P_J=[x^{n}]P_{J'}

が成り立つ。

証明.§E13.1 命題 1.2 (4)の分配法則を有限個の因子へ繰り返し適用し、§E13.1 命題 1.2 (3)の結合性と§E13.1 命題 1.2 (2)の可換性によって因子を集めると、

PJ′=∏i∈J′(1+Gi)=∑S⊆J′ ∏i∈SGiP_{J'}=\prod_{i\in J'}(1+G_i)=\sum_{S\subseteq J'}\ \prod_{i\in S}G_i

である(右辺はJ′J'の部分集合にわたる有限和であり、S=∅S=\emptysetの項は11と読む)。

S⊆J′S\subseteq J'がS⊆JS\subseteq Jを満たさないとする。このときi0∈S∖Ji_0\in S\setminus Jが存在する。In⊆JI_n\subseteq Jであるからi0∉Ini_0\notin I_nであり、ord⁡(Gi0)>n\operatorname{ord}(G_{i_0})>nである。補題 2.2を繰り返し用いると

ord⁡(∏i∈SGi)=∑i∈Sord⁡(Gi)≥ord⁡(Gi0)>n\operatorname{ord}\Bigl(\prod_{i\in S}G_i\Bigr)=\sum_{i\in S}\operatorname{ord}(G_i)\ge\operatorname{ord}(G_{i_0})>n

であるから[xn]∏i∈SGi=0[x^{n}]\prod_{i\in S}G_i=0である。ゆえに

[xn]PJ′=∑S⊆J[xn]∏i∈SGi=[xn]PJ[x^{n}]P_{J'}=\sum_{S\subseteq J}[x^{n}]\prod_{i\in S}G_i=[x^{n}]P_J

となる。▨

定義 2.5. 族(Gi)i∈I(G_i)_{i\in I}が総和可能であるとき、

[xn]∏i∈I(1+Gi):=[xn]∏i∈In(1+Gi)[x^{n}]\prod_{i\in I}(1+G_i):=[x^{n}]\prod_{i\in I_n}(1+G_i)

と定める。命題 2.4により右辺はInI_nを含む有限部分集合の取り方によらないので、この式は形式的冪級数∏i∈I(1+Gi)∈Q[[x]]\prod_{i\in I}(1+G_i)\in\mathbb Q[[x]]を定める。IIが有限集合のときは通常の有限積に一致する。

係数の計算では、有限個の因子の積の係数を成分ごとの和として書き下す。

補題 2.6.r≥1r\ge1とし、F1,…,Fr∈Q[[x]]F_1,\dots,F_r\in\mathbb Q[[x]]とする。各非負整数nnに対し

[xn]∏k=1rFk=∑n1,…,nr≥0n1+⋯+nr=n ∏k=1r[xnk]Fk[x^{n}]\prod_{k=1}^{r}F_k=\sum_{\substack{n_1,\dots,n_r\ge0\\ n_1+\dots+n_r=n}}\ \prod_{k=1}^{r}[x^{n_k}]F_k

が成り立つ。右辺は有限和である。

証明.rr個の因子の積は§E13.1 命題 1.2 (3)により括弧の付け方によらず定まる。rrについての帰納法で示す。r=1r=1のときは両辺とも[xn]F1[x^{n}]F_1である。r≥2r\ge2とし、r−1r-1について主張が成り立つとする。Cauchy 積の定義(§D2.4 定義 4.1)と帰納法の仮定により

[xn]∏k=1rFk=∑nr=0n([xn−nr]∏k=1r−1Fk)([xnr]Fr)=∑nr=0n ∑n1+⋯+nr−1=n−nr ∏k=1r[xnk]Fk[x^{n}]\prod_{k=1}^{r}F_k =\sum_{n_r=0}^{n}\Bigl([x^{n-n_r}]\prod_{k=1}^{r-1}F_k\Bigr)\bigl([x^{n_r}]F_r\bigr) =\sum_{n_r=0}^{n}\ \sum_{\substack{n_1+\dots+n_{r-1}=n-n_r}}\ \prod_{k=1}^{r}[x^{n_k}]F_k

となる。右辺の二重和は、n1+⋯+nr=nn_1+\dots+n_r=nを満たす非負整数の組の全体にわたる和にほかならない。組の個数は有限であるから和は有限和である。▨

補題 2.7. 正の整数kkに対しQk=∑j≥0xjk∈Q[[x]]Q_k=\sum_{j\ge0}x^{jk}\in\mathbb Q[[x]]と置く(族(xjk)j≥0(x^{jk})_{j\ge0}は位数がjkjkであるから総和可能である)。このとき

[xn]Qk={1,k∣n,0,それ以外[x^{n}]Q_k=\begin{cases}1,&k\mid n,\\ 0,&\text{それ以外}\end{cases}

であり、(1−xk)Qk=1(1-x^{k})Q_k=1が成り立つ。すなわちQkQ_kは1−xk1-x^{k}のQ[[x]]\mathbb Q[[x]]における逆元であり、Qk=(1−xk)−1Q_k=(1-x^{k})^{-1}と書く。

証明. 係数の値は定義 2.3の定義から直ちに従う。n=jkn=jkを満たす非負整数jjはk∣nk\mid nのときちょうど一つ存在し、そのとき[xn]xjk=1[x^{n}]x^{jk}=1、他の項は00である。

(1−xk)Qk(1-x^{k})Q_kの係数を計算する。Cauchy 積により[xn]((1−xk)Qk)=[xn]Qk−[xn−k]Qk[x^{n}]\bigl((1-x^{k})Q_k\bigr)=[x^{n}]Q_k-[x^{n-k}]Q_kである(n<kn<kのとき第二項は00と読む)。n=0n=0のとき値は1−0=11-0=1である。n≥1n\ge1でk∣nk\mid nのときn≥kn\ge kであり、k∣(n−k)k\mid(n-k)であるから値は1−1=01-1=0である。k∤nk\nmid nのときk∤(n−k)k\nmid(n-k)でもあるから値は0−0=00-0=0である。ゆえに(1−xk)Qk=1(1-x^{k})Q_k=1である。▨

3 分割数の母関数

3.1 証明方針

nnを固定して、無限積∏k≥1(1−xk)−1\prod_{k\ge1}(1-x^{k})^{-1}の第nn係数を求める。無限積の定義により、この係数は位数がnn以下の因子だけを掛けた有限積の第nn係数に等しい。第kk因子Qk=(1−xk)−1Q_k=(1-x^{k})^{-1}は、11からQk−1Q_k-1を引いた形で見ると位数kkの級数を加えたものであるから、残る因子はk=1,…,nk=1,\dots,nである。

次に、この有限積の第nn係数を補題 2.6によって成分ごとの和へ書き下す。第kk因子から取り出す次数nkn_kはkkの倍数でなければ寄与が消え、kkの倍数ならば係数11を与える。したがって係数は、nk=kmkn_k=km_kと書いたときの非負整数の組(m1,…,mn)(m_1,\dots,m_n)で∑kkmk=n\sum_k km_k=nを満たすものの個数に等しい。この組は、命題 1.2によりnnの分割と一対一に対応する。以上で係数がp(n)p(n)に等しいことが従う。

定理 3.1 (分割数の母関数の Euler 積). 族(Qk−1)k≥1(Q_k-1)_{k\ge1}は総和可能であり、定義 2.5の意味で

∑n≥0p(n)xn=∏k≥111−xk\sum_{n\ge0}p(n)x^{n}=\prod_{k\ge1}\frac{1}{1-x^{k}}

が成り立つ。ここで右辺は∏k≥1Qk\prod_{k\ge1}Q_kを表す。

証明.Gk=Qk−1=∑j≥1xjkG_k=Q_k-1=\sum_{j\ge1}x^{jk}と置く。補題 2.7により[xm]Gk[x^{m}]G_kはk∣mk\mid mかつm≥1m\ge1のとき11、それ以外のとき00である。ゆえにord⁡(Gk)=k\operatorname{ord}(G_k)=kであり、各nnに対して{k≥1:ord⁡(Gk)≤n}={1,2,…,n}\{k\ge1:\operatorname{ord}(G_k)\le n\}=\{1,2,\dots,n\}は有限集合である。したがって族(Gk)k≥1(G_k)_{k\ge1}は総和可能であり、無限積∏k≥1(1+Gk)=∏k≥1Qk\prod_{k\ge1}(1+G_k)=\prod_{k\ge1}Q_kが定まる。

n=0n=0のとき、{k:ord⁡(Gk)≤0}=∅\{k:\operatorname{ord}(G_k)\le0\}=\emptysetであるから定義により[x0]∏k≥1Qk=[x0]1=1=p(0)[x^{0}]\prod_{k\ge1}Q_k=[x^{0}]1=1=p(0)である。

n≥1n\ge1とする。定義 2.5により

[xn]∏k≥1Qk=[xn]∏k=1nQk[x^{n}]\prod_{k\ge1}Q_k=[x^{n}]\prod_{k=1}^{n}Q_k

である。補題 2.6をFk=QkF_k=Q_k(k=1,…,nk=1,\dots,n)へ適用すると

[xn]∏k=1nQk=∑n1,…,nn≥0n1+⋯+nn=n ∏k=1n[xnk]Qk[x^{n}]\prod_{k=1}^{n}Q_k=\sum_{\substack{n_1,\dots,n_n\ge0\\ n_1+\dots+n_n=n}}\ \prod_{k=1}^{n}[x^{n_k}]Q_k

となる。補題 2.7により、積∏k=1n[xnk]Qk\prod_{k=1}^{n}[x^{n_k}]Q_kは、すべてのkkについてk∣nkk\mid n_kが成り立つとき11、そうでないとき00である。したがって右辺は

∣{(n1,…,nn)∈Z≥0n : ∑k=1nnk=n, k∣nk (1≤k≤n)}∣\Bigl|\Bigl\{(n_1,\dots,n_n)\in\mathbb Z_{\ge0}^{n}\ :\ \sum_{k=1}^{n}n_k=n,\ k\mid n_k\ (1\le k\le n)\Bigr\}\Bigr|

に等しい。k∣nkk\mid n_kを満たす非負整数nkn_kはnk=kmkn_k=km_k(mk∈Z≥0m_k\in\mathbb Z_{\ge0})と一意に書くことができるので、この集合は

{(m1,…,mn)∈Z≥0n : ∑k=1nkmk=n}\Bigl\{(m_1,\dots,m_n)\in\mathbb Z_{\ge0}^{n}\ :\ \sum_{k=1}^{n}km_k=n\Bigr\}

と全単射に対応する。命題 1.2により、∑k≥1kmk=n\sum_{k\ge1}km_k=nを満たす非負整数の族でmk≠0m_k\ne0となるkkが有限個であるものはnnの分割と一対一に対応し、しかも同命題の最後の主張によりmk≠0m_k\ne0ならばk≤nk\le nである。ゆえに上の集合はnnの分割の全体と全単射に対応し、その要素数はp(n)p(n)である。全単射原理(§D2.2 命題 1.5)により

[xn]∏k≥1Qk=p(n)[x^{n}]\prod_{k\ge1}Q_k=p(n)

が成り立つ。nnは任意であったから主張を得る。▨

例 3.2 (第55係数の検算).n=5n=5について定理 3.1の両辺を手で計算する。∑k=15kmk=5\sum_{k=1}^{5}km_k=5を満たす非負整数の組(m1,…,m5)(m_1,\dots,m_5)を列挙すると

(5,0,0,0,0),(3,1,0,0,0),(1,2,0,0,0),(2,0,1,0,0),(0,1,1,0,0),(1,0,0,1,0),(0,0,0,0,1)(5,0,0,0,0),\quad(3,1,0,0,0),\quad(1,2,0,0,0),\quad(2,0,1,0,0),\quad(0,1,1,0,0),\quad(1,0,0,1,0),\quad(0,0,0,0,1)

の77個である。対応する分割はそれぞれ

(1,1,1,1,1),(2,1,1,1),(2,2,1),(3,1,1),(3,2),(4,1),(5)(1,1,1,1,1),\quad(2,1,1,1),\quad(2,2,1),\quad(3,1,1),\quad(3,2),\quad(4,1),\quad(5)

であり、55の分割をすべて尽くしている。ゆえにp(5)=7p(5)=7であり、両辺の第55係数が一致する。

4 相異なる部分と奇数部分

二つの無限積の係数が、それぞれ制限つきの分割数を与えることを確かめる。

命題 4.1.nnの分割で部分がすべて相異なるものの個数をq(n)q(n)と書く。族(xk)k≥1(x^{k})_{k\ge1}は総和可能であり、各非負整数nnに対し

[xn]∏k≥1(1+xk)=q(n)[x^{n}]\prod_{k\ge1}(1+x^{k})=q(n)

が成り立つ。

証明.ord⁡(xk)=k\operatorname{ord}(x^{k})=kであるから{k≥1:ord⁡(xk)≤n}={1,…,n}\{k\ge1:\operatorname{ord}(x^{k})\le n\}=\{1,\dots,n\}は有限集合であり、族は総和可能である。n=0n=0のとき、この集合は空であるから[x0]∏k≥1(1+xk)=1[x^{0}]\prod_{k\ge1}(1+x^{k})=1であり、q(0)=1q(0)=1(空の分割)と一致する。

n≥1n\ge1とする。定義 2.5により第一の等号が成り立ち、§E13.1 命題 1.2の分配法則と結合性を有限個の因子へ繰り返し適用すると第二の等号が成り立つ。

[xn]∏k≥1(1+xk)=[xn]∏k=1n(1+xk)=∑S⊆{1,…,n}[xn]∏k∈Sxk[x^{n}]\prod_{k\ge1}(1+x^{k})=[x^{n}]\prod_{k=1}^{n}(1+x^{k})=\sum_{S\subseteq\{1,\dots,n\}}[x^{n}]\prod_{k\in S}x^{k}

である。∏k∈Sxk=x∑k∈Sk\prod_{k\in S}x^{k}=x^{\sum_{k\in S}k}であるから、右辺は∑k∈Sk=n\sum_{k\in S}k=nを満たす部分集合S⊆{1,…,n}S\subseteq\{1,\dots,n\}の個数に等しい。

このようなSSと、nnの分割で部分がすべて相異なるものとの対応を作る。SSに対し、SSの元を大きい順に並べた列は、部分が相異なるnnの分割である。逆に、部分が相異なるnnの分割λ\lambdaに対し、その部分の集合S(λ)S(\lambda)は∑k∈S(λ)k=n\sum_{k\in S(\lambda)}k=nを満たし、各部分はnn以下であるからS(λ)⊆{1,…,n}S(\lambda)\subseteq\{1,\dots,n\}である。二つの対応は互いに逆であるから全単射であり、全単射原理(§D2.2 命題 1.5)により右辺はq(n)q(n)に等しい。▨

命題 4.2.nnの分割で部分がすべて奇数であるものの個数をpodd(n)p_{\mathrm{odd}}(n)と書く。族(Q2k−1−1)k≥1(Q_{2k-1}-1)_{k\ge1}は総和可能であり、各非負整数nnに対し

[xn]∏k≥111−x2k−1=podd(n)[x^{n}]\prod_{k\ge1}\frac{1}{1-x^{2k-1}}=p_{\mathrm{odd}}(n)

が成り立つ。ここで左辺は∏k≥1Q2k−1\prod_{k\ge1}Q_{2k-1}を表す。

証明.Gk=Q2k−1−1=∑j≥1xj(2k−1)G_k=Q_{2k-1}-1=\sum_{j\ge1}x^{j(2k-1)}と置く。補題 2.7によりord⁡(Gk)=2k−1\operatorname{ord}(G_k)=2k-1であるから、各nnに対し{k≥1:ord⁡(Gk)≤n}={k≥1:2k−1≤n}\{k\ge1:\operatorname{ord}(G_k)\le n\}=\{k\ge1:2k-1\le n\}は有限集合であり、族は総和可能である。n=0n=0のときこの集合は空であるから[x0]∏k≥1Q2k−1=1=podd(0)[x^{0}]\prod_{k\ge1}Q_{2k-1}=1=p_{\mathrm{odd}}(0)である。

n≥1n\ge1とし、On={k≥1:2k−1≤n}O_n=\{k\ge1:2k-1\le n\}と置く。定義 2.5により

[xn]∏k≥1Q2k−1=[xn]∏k∈OnQ2k−1[x^{n}]\prod_{k\ge1}Q_{2k-1}=[x^{n}]\prod_{k\in O_n}Q_{2k-1}

である。補題 2.6を因子Q2k−1Q_{2k-1}(k∈Onk\in O_n)へ適用すると

[xn]∏k∈OnQ2k−1=∑(nk)k∈On∈Z≥0On∑knk=n ∏k∈On[xnk]Q2k−1[x^{n}]\prod_{k\in O_n}Q_{2k-1}=\sum_{\substack{(n_k)_{k\in O_n}\in\mathbb Z_{\ge0}^{O_n}\\ \sum_k n_k=n}}\ \prod_{k\in O_n}[x^{n_k}]Q_{2k-1}

となる。補題 2.7により、積∏k[xnk]Q2k−1\prod_{k}[x^{n_k}]Q_{2k-1}は、すべてのk∈Onk\in O_nについて(2k−1)∣nk(2k-1)\mid n_kが成り立つとき11、そうでないとき00である。(2k−1)∣nk(2k-1)\mid n_kを満たす非負整数nkn_kはnk=(2k−1)mkn_k=(2k-1)m_k(mk∈Z≥0m_k\in\mathbb Z_{\ge0})と一意に書くことができるので、右辺は

∣{(mk)k∈On∈Z≥0On : ∑k∈On(2k−1)mk=n}∣\Bigl|\Bigl\{(m_k)_{k\in O_n}\in\mathbb Z_{\ge0}^{O_n}\ :\ \sum_{k\in O_n}(2k-1)m_k=n\Bigr\}\Bigr|

に等しい。

最後に、この集合と、部分がすべて奇数であるnnの分割の全体との対応を作る。命題 1.2の全単射λ↦(mk(λ))k≥1\lambda\mapsto(m_k(\lambda))_{k\ge1}は、λ\lambdaの部分がすべて奇数であることと、偶数kkに対してmk(λ)=0m_k(\lambda)=0であることを同値にする。さらに同命題の最後の主張によりmk(λ)≠0m_k(\lambda)\ne0ならばk≤nk\le nであるから、非零の重複度の添字はOnO_nの元kkに対応する奇数2k−12k-1に限られる。したがって、部分が奇数であるnnの分割と上の集合とは一対一に対応し、全単射原理(§D2.2 命題 1.5)により[xn]∏k≥1Q2k−1=podd(n)[x^{n}]\prod_{k\ge1}Q_{2k-1}=p_{\mathrm{odd}}(n)である。▨

4.1 証明方針

主定理はq(n)=podd(n)q(n)=p_{\mathrm{odd}}(n)である。二つの無限積の係数を、次数nnを固定したうえで有限積の等式へ帰着させる。

出発点は、Q[[x]]\mathbb Q[[x]]における恒等式(1+xk)(1−xk)=1−x2k(1+x^{k})(1-x^{k})=1-x^{2k}である。両辺に(1−xk)−1(1-x^{k})^{-1}を掛けて1+xk=(1−x2k)(1−xk)−11+x^{k}=(1-x^{2k})(1-x^{k})^{-1}を得る。この式をk=1,…,Nk=1,\dots,Nについて掛け合わせると、右辺には∏k≤N(1−x2k)\prod_{k\le N}(1-x^{2k})と∏k≤N(1−xk)−1\prod_{k\le N}(1-x^{k})^{-1}が現れる。

中間目標は、後者の偶数番号の因子を前者と相殺することである。kkが偶数のとき(1−xk)−1(1-x^{k})^{-1}はk=2jk=2jの形をもち、j≤⌊N/2⌋j\le\lfloor N/2\rfloorである。∏k≤N(1−x2k)\prod_{k\le N}(1-x^{2k})のうちj≤⌊N/2⌋j\le\lfloor N/2\rfloorに対応する因子(1−x2j)(1-x^{2j})と相殺し、残るのはj>⌊N/2⌋j>\lfloor N/2\rfloorに対応する因子の積である。この残余の各因子はxN+1x^{N+1}以上の項しかもたないので、次数n≤Nn\le Nの係数には寄与しない。

以上により、n≤Nn\le Nのとき∏k≤N(1+xk)\prod_{k\le N}(1+x^{k})と∏k≤N, k 奇数(1−xk)−1\prod_{k\le N,\ k\ \text{奇数}}(1-x^{k})^{-1}の第nn係数が一致する。最後に、無限積の第nn係数が有限部分積の第nn係数に等しいこと(命題 2.4)を用いてNNを消し、命題 4.1と命題 4.2で係数を数え上げの言葉へ戻す。

定理 4.3.Q[[x]]\mathbb Q[[x]]において

∏k≥1(1+xk)=∏k≥111−x2k−1\prod_{k\ge1}(1+x^{k})=\prod_{k\ge1}\frac{1}{1-x^{2k-1}}

が成り立つ。したがって、各非負整数nnに対しq(n)=podd(n)q(n)=p_{\mathrm{odd}}(n)である。すなわち、nnを相異なる正の整数の和に分ける方法の総数と、nnを奇数の和に分ける方法の総数は等しい。

証明. 非負整数nnを固定し、NNをN≥max⁡(n,1)N\ge\max(n,1)を満たす整数とする。M=⌊N/2⌋M=\lfloor N/2\rfloorと置く。

段階 1。各k≥1k\ge1に対し、Cauchy 積により(1+xk)(1−xk)=1−x2k(1+x^{k})(1-x^{k})=1-x^{2k}である。補題 2.7により1−xk1-x^{k}は可逆であるから、両辺にQk=(1−xk)−1Q_k=(1-x^{k})^{-1}を掛けて

1+xk=(1−x2k) Qk1+x^{k}=(1-x^{2k})\,Q_k

を得る。

段階 2。段階 1 の式をk=1,…,Nk=1,\dots,Nについて掛け合わせると、§E13.1 命題 1.2によりQ[[x]]\mathbb Q[[x]]が可換環であることから

∏k=1N(1+xk)=(∏k=1N(1−x2k))(∏k=1NQk)\prod_{k=1}^{N}(1+x^{k})=\Bigl(\prod_{k=1}^{N}(1-x^{2k})\Bigr)\Bigl(\prod_{k=1}^{N}Q_k\Bigr)

となる。

段階 3。右側の積を偶奇で分ける。因子の並べ替えには§E13.1 命題 1.2 (2)と§E13.1 命題 1.2 (3)を用いる。{1,…,N}\{1,\dots,N\}のうち偶数であるものは2,4,…,2M2,4,\dots,2Mであるから

∏k=1NQk=(∏1≤k≤Nk 奇数Qk)(∏j=1MQ2j)\prod_{k=1}^{N}Q_k=\Bigl(\prod_{\substack{1\le k\le N\\ k\ \text{奇数}}}Q_k\Bigr)\Bigl(\prod_{j=1}^{M}Q_{2j}\Bigr)

である。

段階 4。補題 2.7により(1−x2j)Q2j=1(1-x^{2j})Q_{2j}=1である。§E13.1 命題 1.2 (2)と§E13.1 命題 1.2 (3)によって因子を組み替えると

(∏k=1N(1−x2k))(∏j=1MQ2j)=(∏j=1M(1−x2j)Q2j)(∏k=M+1N(1−x2k))=∏k=M+1N(1−x2k)\Bigl(\prod_{k=1}^{N}(1-x^{2k})\Bigr)\Bigl(\prod_{j=1}^{M}Q_{2j}\Bigr) =\Bigl(\prod_{j=1}^{M}(1-x^{2j})Q_{2j}\Bigr)\Bigl(\prod_{k=M+1}^{N}(1-x^{2k})\Bigr) =\prod_{k=M+1}^{N}(1-x^{2k})

である。N≥1N\ge1のときM=⌊N/2⌋<NM=\lfloor N/2\rfloor<Nであるから、右端の積は空でない。段階 2 と段階 3 と合わせて

∏k=1N(1+xk)=(∏1≤k≤Nk 奇数Qk)⋅RN,RN=∏k=M+1N(1−x2k)\prod_{k=1}^{N}(1+x^{k})=\Bigl(\prod_{\substack{1\le k\le N\\ k\ \text{奇数}}}Q_k\Bigr)\cdot R_N, \qquad R_N=\prod_{k=M+1}^{N}(1-x^{2k})

を得る。

段階 5。RN=1+ENR_N=1+E_Nと置く。§E13.1 命題 1.2の分配法則によりENE_Nは、M+1≤k≤NM+1\le k\le Nを満たすkkの空でない部分集合SSにわたる±∏k∈Sx2k\pm\prod_{k\in S}x^{2k}の和である。各項の位数は∑k∈S2k≥2(M+1)\sum_{k\in S}2k\ge2(M+1)である。M=⌊N/2⌋≥(N−1)/2M=\lfloor N/2\rfloor\ge(N-1)/2であるから2(M+1)≥N+1>n2(M+1)\ge N+1>nである。ゆえにord⁡(EN)>n\operatorname{ord}(E_N)>nである。

段階 6。段階 4 の等式の両辺の第nn係数を取る。補題 2.2により

ord⁡(∏k≤Nk 奇数Qk⋅EN)≥ord⁡(EN)>n\operatorname{ord}\Bigl(\prod_{\substack{k\le N\\ k\ \text{奇数}}}Q_k\cdot E_N\Bigr)\ge\operatorname{ord}(E_N)>n

であるから、この積の第nn係数は00である。ゆえに

[xn]∏k=1N(1+xk)=[xn]∏1≤k≤Nk 奇数Qk[x^{n}]\prod_{k=1}^{N}(1+x^{k})=[x^{n}]\prod_{\substack{1\le k\le N\\ k\ \text{奇数}}}Q_k

である。

段階 7。N≥nN\ge nであるから、{k≥1:ord⁡(xk)≤n}={1,…,n}⊆{1,…,N}\{k\ge1:\operatorname{ord}(x^{k})\le n\}=\{1,\dots,n\}\subseteq\{1,\dots,N\}であり、命題 2.4により左辺は[xn]∏k≥1(1+xk)[x^{n}]\prod_{k\ge1}(1+x^{k})に等しい。同様に、ord⁡(Q2k−1−1)=2k−1\operatorname{ord}(Q_{2k-1}-1)=2k-1であるから、位数がnn以下の奇数番号の因子はすべて{1≤k≤N, k 奇数}\{1\le k\le N,\ k\ \text{奇数}\}に含まれ、右辺は[xn]∏k≥1Q2k−1[x^{n}]\prod_{k\ge1}Q_{2k-1}に等しい。

nnは任意であったから、二つの無限積は係数がすべて一致し、等しい。命題 4.1と命題 4.2により、第nn係数はそれぞれq(n)q(n)とpodd(n)p_{\mathrm{odd}}(n)であるからq(n)=podd(n)q(n)=p_{\mathrm{odd}}(n)である。▨

例 4.4 (n=6n=6とn=7n=7での検算).n=6n=6のとき、部分が相異なる分割は

(6),(5,1),(4,2),(3,2,1)(6),\quad(5,1),\quad(4,2),\quad(3,2,1)

の44個である((4,1,1)(4,1,1)などは部分が重複するので除く)。部分がすべて奇数である分割は

(5,1),(3,3),(3,1,1,1),(1,1,1,1,1,1)(5,1),\quad(3,3),\quad(3,1,1,1),\quad(1,1,1,1,1,1)

の44個である。ゆえにq(6)=podd(6)=4q(6)=p_{\mathrm{odd}}(6)=4である。

n=7n=7のとき、部分が相異なる分割は

(7),(6,1),(5,2),(4,3),(4,2,1)(7),\quad(6,1),\quad(5,2),\quad(4,3),\quad(4,2,1)

の55個であり、部分がすべて奇数である分割は

(7),(5,1,1),(3,3,1),(3,1,1,1,1),(1,1,1,1,1,1,1)(7),\quad(5,1,1),\quad(3,3,1),\quad(3,1,1,1,1),\quad(1,1,1,1,1,1,1)

の55個である。ゆえにq(7)=podd(7)=5q(7)=p_{\mathrm{odd}}(7)=5である。いずれも定理 4.3と一致する。

5 演習

問題 5.1.

  1. 命題 2.4の証明では、S⊈JS\not\subseteq Jを満たす部分集合の寄与が消えることを補題 2.2によって示した。位数について等号ではなく不等号ord⁡(FG)≥ord⁡(F)+ord⁡(G)\operatorname{ord}(FG)\ge\operatorname{ord}(F)+\operatorname{ord}(G)しか使っていない箇所を特定し、係数体が零因子をもつ可換環である場合にも同命題が成り立つことを証明せよ。
  2. 定理 3.1の証明を、nnを固定したときに残る因子がk=1,…,nk=1,\dots,nであることの理由から書き起こして再現せよ。とくに、無限積の定義のどの部分が「有限個の因子だけを見ればよい」という段階を保証しているかを明示せよ。
  3. 定理 4.3の証明の段階 5 で、2(M+1)≥N+12(M+1)\ge N+1を示すためにM=⌊N/2⌋M=\lfloor N/2\rfloorを用いた。NNが偶数の場合と奇数の場合に分けてこの不等式を確かめ、MMを⌊N/2⌋\lfloor N/2\rfloorより小さく取ると証明のどこが破れるかを述べよ。
  4. 定理 4.3の証明にならって、nnの分割で同じ部分を33回以上は使わないものの個数と、nnの分割で部分が33の倍数でないものの個数が等しいことを、対応する二つの無限積の等式から証明せよ。
  5. 系 1.6を用いて、n=8n=8の分割で部分の個数が33以下であるものと、各部分が33以下であるものをそれぞれ列挙し、個数が一致することを確かめよ。
  6. 命題 1.4 (2)の証明では、λ\lambdaが非増加であることから{i:λi≥j}\{i:\lambda_i\ge j\}が11から始まる区間になることを用いた。非増加という仮定を外した正の整数の列に対して、同じ定義でλ′\lambda'を作ると命題 1.4 (2)が成り立たない例を一つ挙げよ。

6 扱った範囲と次の記事

正の整数の分割、Ferrers 図形および共役分割を定義し、共役が分割の全体上の対合であることを証明した。形式的冪級数の位数、総和可能な族および無限積を定義し、分割数の母関数が Euler 積∏k≥1(1−xk)−1\prod_{k\ge1}(1-x^{k})^{-1}に等しいことを完全に証明した。さらに、相異なる部分への分割数と奇数部分への分割数が等しいことを、二つの無限積の係数比較によって証明した。

分割数の漸近公式、五角数定理による漸化式、および Jacobi の三重積のような恒等式は扱っていない。次の記事では、有限半順序集合の上で定義される接合代数を導入し、包除原理を含む反転公式を Möbius 関数によって統一的に扱う。

参考文献

  1. George E. Andrews, The Theory of Partitions, Cambridge Mathematical Library, Cambridge University Press, 1998, originally published 1976.分割、Ferrers 図形、共役分割および相異なる部分と奇数部分の等数性を参考にした。
  2. Richard P. Stanley, Enumerative Combinatorics, 2nd ed., Cambridge Studies in Advanced Mathematics 49, vol. 1, Cambridge University Press, Cambridge, 2011.分割数の母関数を無限積として扱う定式化を参考にした。
  3. Ivan Niven, Formal power series, The American Mathematical Monthly 76 (1969), no. 8, 871–889.形式的冪級数の位数と無限積を収束と無関係に扱う枠組みを参考にした。

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