1 削除
定義 1.1.T⊆Eとする。台集合E∖Tの上の集合族I(M∖T)={I∈I: I⊆E∖T}を独立集合族とする組をM∖Tと書き、MからTを削除 (deletion) して得られる構造という。T={x}のときはM∖xとも書く。
命題 1.2.T⊆Eとする。M∖Tは台集合E∖T上のマトロイドであり、その階数関数rM∖TはrM∖T(A)=r(A)(A⊆E∖T)を満たす。またM∖Tの基底は、E∖Tに含まれるMの独立集合のうち包含に関して極大なものの全体であり、その共通の濃度はr(E∖T)である。
証明. マトロイドであること.§E13.15 定義 1.1 条件 (a)は∅∈Iかつ∅⊆E∖Tによる。§E13.15 定義 1.1 条件 (b)は、A∈I(M∖T)かつB⊆AならばB∈IかつB⊆E∖Tであることによる。§E13.15 定義 1.1 条件 (c)は、A,B∈I(M∖T)かつ∣A∣<∣B∣のときMの§E13.15 定義 1.1 条件 (c)によりx∈B∖Aが存在してA∪{x}∈Iとなり、x∈B⊆E∖TよりA∪{x}⊆E∖Tであることによる。
階数.A⊆E∖Tとする。M∖TにおいてAに含まれる独立集合とは、Aに含まれるMの独立集合にほかならない。実際、I⊆A⊆E∖TであればI∈IとI∈I(M∖T)は同値である。ゆえに最大濃度も等しくrM∖T(A)=r(A)である。
基底.M∖Tの基底はI(M∖T)の包含に関して極大な元であり、これは{I∈I: I⊆E∖T}の極大な元にほかならない。§E13.16 命題 4.2をMとA=E∖Tに対して適用すると、その共通の濃度はr(E∖T)である。▨
2 縮約
縮約は、取り除く元をすでに使ったものとして扱う操作である。階数関数によって定義すると、選び方に依存しない形で書くことができる。
定義 2.1.T⊆Eとする。関数rM/T:2E∖T→Z≥0をrM/T(A)=r(A∪T)−r(T)(A⊆E∖T)と定める。rM/Tを階数関数とする台集合E∖T上のマトロイドをM/Tと書き、MからTを縮約 (contraction) して得られるマトロイドという。M/Tがマトロイドとして定まることは命題 2.2が示す。T={x}のときはM/xとも書く。
証明.§E13.16 定義 4.4 条件 (a)を示す。T⊆A∪TとMの§E13.16 定義 4.4 条件 (b)よりr(A∪T)≥r(T)であるからrM/T(A)≥0である。AとTは交わらないから、§E13.16 補題 4.5の最後の主張をTとAへ適用してr(A∪T)≤r(T)+∣A∣を得る。ゆえにrM/T(A)≤∣A∣である。
§E13.16 定義 4.4 条件 (b)を示す。A⊆B⊆E∖TならばA∪T⊆B∪Tであり、Mの§E13.16 定義 4.4 条件 (b)よりr(A∪T)≤r(B∪T)であるからrM/T(A)≤rM/T(B)である。
§E13.16 定義 4.4 条件 (c)を示す。A,B⊆E∖Tとする。AとBはいずれもTと交わらないから(A∪T)∪(B∪T)=(A∪B)∪T,(A∪T)∩(B∪T)=(A∩B)∪Tが成り立つ。Mの§E13.16 定義 4.4 条件 (c)をA∪TとB∪Tへ適用するとr((A∪B)∪T)+r((A∩B)∪T)≤r(A∪T)+r(B∪T)であり、両辺から2r(T)を引くとrM/T(A∪B)+rM/T(A∩B)≤rM/T(A)+rM/T(B)を得る。
Mの階数関数が§E13.16 定義 4.4 条件 (a)、§E13.16 定義 4.4 条件 (b)、§E13.16 定義 4.4 条件 (c)を満たすことは§E13.16 定理 4.6による。▨
命題 2.3.T⊆Eとし、BTをTに含まれるMの独立集合のうち包含に関して極大なものとする(∣BT∣=r(T)である)。I⊆E∖Tに対し次が成り立つ。
- IがM/Tの独立集合であることと、I∪BT∈Iであることは同値である。とくにこの条件はBTの選び方に依存しない。
- IがM/Tの基底であることと、I∪BTがMの基底であることは同値である。したがってM/Tの基底全体は{B∖BT: B∈B, BT⊆B}である。
証明.§E13.16 命題 4.2よりBTは存在し∣BT∣=r(T)である。また§E13.16 定理 5.2より、IがM/Tの独立集合であることはrM/T(I)=∣I∣、すなわちr(I∪T)=r(T)+∣I∣と同値である。
(1)の十分性.I∪BT∈Iとする。IとBTは交わらないから∣I∪BT∣=∣I∣+r(T)であり、I∪BT⊆I∪Tであるからr(I∪T)≥∣I∪BT∣=r(T)+∣I∣である。一方§E13.16 補題 4.5よりr(I∪T)≤r(T)+∣I∣であるから等号が成り立ち、IはM/Tの独立集合である。
(1)の必要性.r(I∪T)=r(T)+∣I∣とする。BTはI∪Tに含まれるMの独立集合であるから、§E13.16 命題 4.2よりBT⊆Jを満たす{J′∈I: J′⊆I∪T}の極大な元Jが存在し、∣J∣=r(I∪T)=r(T)+∣I∣である。
J∩TはTに含まれる独立集合であるから∣J∩T∣≤r(T)であり、J∖T⊆(I∪T)∖T=Iであるから∣J∖T∣≤∣I∣である。二つを加えるとr(T)+∣I∣=∣J∣=∣J∩T∣+∣J∖T∣≤r(T)+∣I∣であるから、両方の不等式が等号でなければならない。とくに∣J∖T∣=∣I∣であり、J∖T⊆Iと有限性からJ∖T=I、すなわちI⊆Jである。BT⊆JでもあるからI∪BT⊆J∈Iであり、§E13.15 定義 1.1 条件 (b)よりI∪BT∈Iである。
選び方への非依存.(1)の左辺の条件rM/T(I)=∣I∣はBTを含まないから、右辺の条件もBTの選び方に依存しない。
(2)を示す。M/Tの階数はrM/T(E∖T)=r(E)−r(T)であるから、M/Tの基底の濃度はr(E)−r(T)である。
IをM/Tの基底とすると(1)よりI∪BT∈Iであり、∣I∪BT∣=(r(E)−r(T))+r(T)=r(E)である。§E13.15 系 2.4よりI∪BTはMの基底である。
逆にI⊆E∖TかつI∪BT∈Bとすると、(1)よりIはM/Tの独立集合であり、∣I∣=r(E)−r(T)であるから、§E13.15 系 2.4をM/Tへ適用してIはM/Tの基底である。
基底全体の表示.B∈BがBT⊆Bを満たすとする。B∩TはTに含まれる独立集合であってBTを含むから、BTの極大性よりB∩T=BTである。ゆえにB∖BT=B∖T⊆E∖Tであり、(B∖BT)∪BT=B∈Bであるから、いま示したことよりB∖BTはM/Tの基底である。逆にM/Tの基底Iに対しB=I∪BT∈BはBT⊆Bを満たしI=B∖BTである。▨
3 loop 元と coloop 元における削除と縮約
削除と縮約は一般には異なるマトロイドを与える。一致するのは、取り除く元が loop 元または coloop 元である場合に限る。
命題 3.1.x∈Eとする。
- xが§E13.24 定義 4.1の意味でMの loop 元ならば、任意のA⊆E∖{x}に対しr(A∪{x})=r(A)が成り立ち、M/x=M∖xである。
- xがMの coloop 元ならば、任意のA⊆E∖{x}に対しr(A∪{x})=r(A)+1が成り立ち、M/x=M∖xである。
- xが loop 元でも coloop 元でもないならば、rM/x(E∖{x})=r(E)−1かつrM∖x(E∖{x})=r(E)であり、M/x=M∖xである。
証明.(1)を示す。xが loop 元であるとはr({x})=0が成り立つことである。A⊆E∖{x}に対しA∩{x}=∅であるから、§E13.16 定理 4.6の§E13.16 定義 4.4 条件 (c)をAと{x}へ適用してr(A∪{x})+r(∅)≤r(A)+r({x})=r(A)を得る。r(∅)=0であるからr(A∪{x})≤r(A)であり、§E13.16 定義 4.4 条件 (b)よりr(A∪{x})=r(A)である。ゆえにrM/x(A)=r(A∪{x})−r({x})=r(A)−0=r(A)=rM∖x(A)であり、二つのマトロイドは同じ台集合と同じ階数関数をもつから、§E13.16 定理 5.2よりM/x=M∖xである。
(2)を示す。xが coloop 元であるとは§E13.24 命題 4.2によりxがすべての基底に属することである。A⊆E∖{x}を取り、Aに含まれる独立集合のうち極大なものIを取ると∣I∣=r(A)である(§E13.16 命題 4.2)。§E13.15 命題 2.2よりI⊆Bを満たす基底Bが存在し、仮定よりx∈Bである。I∪{x}⊆Bであるから§E13.15 定義 1.1 条件 (b)よりI∪{x}∈Iであり、x∈/Aよりx∈/Iであるから∣I∪{x}∣=r(A)+1である。I∪{x}⊆A∪{x}であるからr(A∪{x})≥r(A)+1である。§E13.16 補題 4.5よりr(A∪{x})≤r(A)+1であるから等号が成り立つ。
とくにA=∅としてr({x})=r(∅)+1=1である。ゆえにrM/x(A)=r(A∪{x})−r({x})=(r(A)+1)−1=r(A)=rM∖x(A)であり、(1)と同じ理由でM/x=M∖xである。
(3)を示す。xが coloop 元でないとする。§E13.24 命題 4.2よりx∈/Bを満たす基底Bが存在する。B⊆E∖{x}かつ∣B∣=r(E)であるからr(E∖{x})≥r(E)であり、§E13.16 定義 4.4 条件 (b)と合わせてrM∖x(E∖{x})=r(E∖{x})=r(E)である。
xが loop 元でないとするとr({x})≥1であり、§E13.16 定義 4.4 条件 (a)よりr({x})≤1であるからr({x})=1である。ゆえにrM/x(E∖{x})=r(E)−r({x})=r(E)−1である。二つのマトロイドは台集合E∖{x}の階数が異なるから相異なる。▨
4 双対は削除と縮約を交換する
定理 4.1.T⊆Eとする。台集合E∖T上のマトロイドとして(M∖T)∗=M∗/T,(M/T)∗=M∗∖Tが成り立つ。
証明. 第一の等式. 両辺の階数関数をA⊆E∖Tについて計算し、一致することを示す。§E13.16 定理 5.2により、台集合と階数関数が一致すればマトロイドは一致する。
左辺について、§E13.24 定理 2.2を台集合E∖T上のマトロイドM∖Tへ適用するとr(M∖T)∗(A)=∣A∣−rM∖T(E∖T)+rM∖T((E∖T)∖A)であり、命題 1.2よりrM∖Tはrの制限であるからr(M∖T)∗(A)=∣A∣−r(E∖T)+r(E∖(T∪A))である。ここで(E∖T)∖A=E∖(T∪A)を用いた。
右辺について、定義 2.1よりrM∗/T(A)=r∗(A∪T)−r∗(T)である。§E13.24 定理 2.2をMへ適用するとr∗(A∪T)=∣A∪T∣−r(E)+r(E∖(A∪T)),r∗(T)=∣T∣−r(E)+r(E∖T)である。AとTは交わらないから∣A∪T∣=∣A∣+∣T∣であり、差を取るとrM∗/T(A)=∣A∣+r(E∖(A∪T))−r(E∖T)である。二つの式は一致するから(M∖T)∗=M∗/Tである。
第二の等式. 第一の等式をMの代わりにM∗へ適用すると(M∗∖T)∗=(M∗)∗/T=M/Tである。ここで§E13.24 定理 1.3の(M∗)∗=Mを用いた。両辺の双対を取り、ふたたび(N∗)∗=Nを用いるとM∗∖T=((M∗∖T)∗)∗=(M/T)∗を得る。▨
5 マイナー
命題 5.1.T1,T2⊆Eが互いに交わらないとする。
- (M∖T1)∖T2=M∖(T1∪T2)。
- (M/T1)/T2=M/(T1∪T2)。
- (M∖T1)/T2=(M/T2)∖T1。
証明. いずれも台集合はE∖(T1∪T2)である。
(1)を示す。I⊆E∖(T1∪T2)について、Iが左辺の独立集合であることはI∈IかつI⊆E∖T1かつI⊆(E∖T1)∖T2であることであり、これはI∈IかつI⊆E∖(T1∪T2)と同値である。ゆえに独立集合族が一致する。
(2)を示す。A⊆E∖(T1∪T2)とする。定義 2.1を二度用いるとr(M/T1)/T2(A)=rM/T1(A∪T2)−rM/T1(T2)=(r(A∪T2∪T1)−r(T1))−(r(T2∪T1)−r(T1))であり、右辺はr(A∪(T1∪T2))−r(T1∪T2)=rM/(T1∪T2)(A)に等しい。階数関数が一致するから§E13.16 定理 5.2より二つのマトロイドは一致する。
(3)を示す。A⊆E∖(T1∪T2)とする。左辺について、命題 1.2よりrM∖T1はrの制限であるからr(M∖T1)/T2(A)=rM∖T1(A∪T2)−rM∖T1(T2)=r(A∪T2)−r(T2)である。右辺について、rM/T2のE∖(T1∪T2)への制限であるからr(M/T2)∖T1(A)=rM/T2(A)=r(A∪T2)−r(T2)である。二つは一致する。▨
定義 5.2. マトロイドNがMのマイナー (minor) であるとは、Mから削除と縮約を有限回反復してNが得られること、すなわちM0=Mから始めて、各段でMi=Mi−1∖TiまたはMi=Mi−1/Ti(TiはMi−1の台集合の部分集合)と定める有限列M0,M1,…,Mkが存在してMk=Nとなることをいう。
証明. 十分性.Xを削除しYを縮約する二段の操作は定義 5.2の反復であるから、(M∖X)/YはMのマイナーである。
必要性. 反復の長さについての帰納法で示す。非負整数kについての述語P(k)を「長さkの反復で得られるマトロイドは、互いに交わらないX,Y⊆Eによって(M∖X)/Yの形に書くことができる」と定める。
P(0)、すなわち長さ0の場合はM=(M∖∅)/∅である。
P(k)を仮定する。長さk+1の反復で得られるマトロイドをMk+1とすると、その直前のMkは長さkの反復で得られるから、Mk=(M∖X)/Y(X∩Y=∅)と書くことができ、Mkの台集合はE∖(X∪Y)である。Mk+1はMkから一段の削除または縮約で得られるから、T⊆E∖(X∪Y)を取って次の二つの場合に分ける。
削除の場合は、命題 5.1 (3)をM∖Xの上でTとYについて適用してMk+1=((M∖X)/Y)∖T=((M∖X)∖T)/Y=(M∖(X∪T))/Yとなる。最後の等号は命題 5.1 (1)による。TはYと交わらないから(X∪T)∩Y=∅である。
縮約の場合は、命題 5.1 (2)をM∖Xの上で適用してMk+1=((M∖X)/Y)/T=(M∖X)/(Y∪T)となる。TはXと交わらないからX∩(Y∪T)=∅である。
いずれの場合もMk+1は互いに交わらない二つの部分集合による(M∖X′)/Y′の形に書くことができ、P(k+1)が成り立つ。ゆえに§D2.1 命題 1.2の単純帰納法によりすべての非負整数kについてP(k)が成り立ち、有限回の反復で得られるマトロイドはすべてこの形に書くことができる。▨
系 5.4. 互いに交わらないX,Y⊆Eに対し((M∖X)/Y)∗=(M∗/X)∖Yが成り立つ。とくにMのマイナーの双対はM∗のマイナーである。
証明.定理 4.1をM∖XとYへ適用すると((M∖X)/Y)∗=(M∖X)∗∖Yである。同じ定理をMとXへ適用すると(M∖X)∗=M∗/Xであるから、((M∖X)/Y)∗=(M∗/X)∖Yを得る。右辺は定理 5.3の形であるからM∗のマイナーである。▨
6 具体例
例 6.1 (一様マトロイドの削除・縮約とマイナー).M=U2,4を台集合E={1,2,3,4}の上で取る。階数関数はr(A)=min{∣A∣,2}、r(E)=2である。
削除.T={4}とすると、M∖4の階数関数はA⊆{1,2,3}に対しmin{∣A∣,2}であるからM∖4=U2,3である。
縮約.M/4の階数関数はA⊆{1,2,3}に対しrM/4(A)=r(A∪{4})−r({4})=min{∣A∣+1, 2}−1=min{∣A∣, 1}であるからM/4=U1,3である。4は loop 元でも coloop 元でもないから、命題 3.1 (3)のとおりM∖4=M/4である。実際、台集合{1,2,3}の階数は前者が2、後者が1である。
双対との交換の検算.U2,4∗=U2,4である(§E13.24 例 2.3)。第一の等式(M∖4)∗=M∗/4を確かめる。左辺はU2,3∗=U1,3である。右辺はU2,4/4=U1,3である。両者は一致する。第二の等式(M/4)∗=M∗∖4を確かめる。左辺はU1,3∗=U2,3である。右辺はU2,4∖4=U2,3である。両者は一致する。
マイナー.(M∖{4})/{3}を計算する。M∖4=U2,3の階数関数はmin{∣A∣,2}であるから、A⊆{1,2}に対しr(M∖4)/3(A)=min{∣A∣+1, 2}−1=min{∣A∣, 1}であり、(M∖4)/3=U1,2である。
例 6.2 (グラフ的マトロイドの縮約は平行な元を生む). 頂点1,2,3,4と六本の辺a={1,2},b={1,3},c={1,4},d={2,3},e={2,4},f={3,4}からなる完全グラフK4を取り、M=M(K4)とする。§E13.16 命題 4.3よりr(F)=4−c(F)である(c(F)は(V,F)の連結成分の個数)。
削除.M∖fは、辺fを除いたグラフK4−fのグラフ的マトロイドである。実際、F⊆E∖{f}が閉路をもたないことは(V,F)が閉路をもたないことにほかならない。
縮約.M/aを調べる。r({a})=1であるからrM/a(A)=r(A∪{a})−1である。
- rM/a({b})=r({a,b})−1を計算する。(V,{a,b})の辺は{1,2}と{1,3}であり、連結成分は{1,2,3}と{4}の二つであるからr({a,b})=4−2=2でありrM/a({b})=1である。ゆえに{b}はM/aの独立集合である。
- 同様にrM/a({d})=r({a,d})−1であり、(V,{a,d})の辺は{1,2}と{2,3}、連結成分は{1,2,3}と{4}であるからr({a,d})=2、rM/a({d})=1である。
- rM/a({b,d})=r({a,b,d})−1を計算する。(V,{a,b,d})の辺は{1,2}、{1,3}、{2,3}であり、連結成分は{1,2,3}と{4}の二つであるからr({a,b,d})=4−2=2でありrM/a({b,d})=1である。∣{b,d}∣=2>1であるから{b,d}はM/aの従属集合である。
{b}と{d}が独立で{b,d}が従属であるから、{b,d}はM/aの回路である。すなわちM/aは濃度2の回路をもつ。§D2.7 定義 1.1の単純グラフのグラフ的マトロイドは、一本の辺だけからなる集合が独立であり二本の辺だけからなる集合も独立であるから、濃度2の回路をもたない。ゆえにM/aは単純グラフのグラフ的マトロイドではない。縮約は、もとのマトロイドがもたなかった小さな回路を作ることがある。
7 演習
問題 7.1.
- 命題 2.2の§E13.16 定義 4.4 条件 (c)の証明で用いた二つの等式(A∪T)∪(B∪T)=(A∪B)∪Tと(A∪T)∩(B∪T)=(A∩B)∪Tのうち、後者がA,B⊆E∖Tという条件を要することを、条件を外した反例によって示せ。
- 命題 2.3 (1)の必要性の証明では、∣J∩T∣≤r(T)と∣J∖T∣≤∣I∣の二つの不等式がともに等号になることを導いた。この段を参照せずに再現し、どちらの等号からI⊆Jが従うかを述べよ。
- 命題 2.3 (1)がBTの選び方に依存しないことを、二つの極大独立集合BTとBT′を取って直接比較する形で証明し直せ。
- 命題 3.1 (2)の証明で、Iを含む基底Bを取りx∈Bを用いた。xが coloop 元であるという仮定をどこで用いたかを明示し、仮定を落とすとr(A∪{x})≥r(A)+1が成り立たなくなる例をU1,2で構成せよ。
- 定理 4.1の第一の等式の証明を、参照せずに再現せよ。∣A∪T∣=∣A∣+∣T∣をどこで用いたか、その等式がA∩T=∅を要することを明示せよ。
- 定理 4.1の第二の等式を、第一の等式へ帰着させる方法ではなく、両辺の階数関数を直接計算する方法で証明せよ。
- 定理 5.3の帰納段階のうち、削除の場合の書き換えを、用いた命題 5.1の項目を明示しながら再現せよ。縮約の場合と削除の場合で、XとYのどちらが増えるかを述べよ。
- 例 6.2にならい、M(K4)/{a,f}の階数関数を計算し、台集合{b,c,d,e}の上でどのようなマトロイドになるかを決定せよ。
9 扱った範囲と次の記事
本記事は、削除を独立集合の制限として、縮約を階数関数のずらしとして定義し、いずれもマトロイドであることを証明した。縮約については、Tに含まれる極大独立集合BTを用いた独立集合と基底による記述を証明し、その記述がBTの選び方に依存しないことも示した。loop 元と coloop 元については削除と縮約が一致し、それ以外の元については一致しないことを階数の比較によって証明した。双対が削除と縮約を交換する二つの等式を階数関数の計算によって証明し、削除と縮約の反復が「一度の削除と一度の縮約」へ整理されることを示してマイナーを定義した。禁止マイナーによるマトロイドの類の特徴づけ、正則マトロイドと表現可能性、およびマイナーに関する整列性は扱っていない。次の記事では、各辺を独立に同じ確率で選ぶ有限ランダムグラフを定義し、部分構造の個数の期待値と、性質の閾値を扱う。