§E13.15マトロイドの独立集合と基底

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有限集合の部分集合のうち「小さいものは無条件に許され、大きいものは互いに取り替えることができる」という性質をもつ族は、線形代数とグラフ理論の双方に現れる。ベクトルの族における一次独立性と、グラフの辺集合における閉路を含まないという性質は、対象も証明の道具もまったく異なるにもかかわらず、部分集合族としては同じ三つの条件を満たす。マトロイドは、その三つの条件だけを公理として取り出した構造である。

本記事は、有限台集合の上で独立集合公理を定め、包含に関して極大な独立集合として基底を定義し、基底の族が満たす交換公理を証明する。さらに、基底交換公理だけを満たす族から独立集合族を復元する操作を与え、二つの公理系が同じ対象を定めることを、両方向とも省略せずに証明する。最後に、一様マトロイド、グラフ的マトロイド、および線形マトロイドが実際に公理を満たすことを確かめる。

グラフG=(V,E)G=(V,E)、閉路、連結成分および木については§D2.7 定義 1.1、§D2.7 定義 2.1、§D2.7 定義 2.3、§D2.7 定義 3.1の定義を用いる。本記事で扱うグラフは、断りのないかぎり有限単純無向グラフである。

1 独立集合公理

定義 1.1. 有限集合EEとI⊆2E\mathcal I\subseteq 2^{E}の組M=(E,I)M=(E,\mathcal I)がマトロイド (matroid) であるとは、次の三条件を満たすことをいう。

  1. (I1)∅∈I\emptyset\in\mathcal I。
  2. (I2)A∈IA\in\mathcal IかつB⊆AB\subseteq AならばB∈IB\in\mathcal I。
  3. (I3)A,B∈IA,B\in\mathcal Iかつ∣A∣<∣B∣\lvert A\rvert<\lvert B\rvertならば、x∈B∖Ax\in B\setminus Aが存在してA∪{x}∈IA\cup\{x\}\in\mathcal Iとなる。

I\mathcal Iの元を独立集合 (independent set)、EEの部分集合でI\mathcal Iに属さないものを従属集合 (dependent set) という。EEをMMの台集合 (ground set) という。条件条件 (b)を遺伝性、条件条件 (c)を増大公理という。

条件条件 (c)が主張するのは、濃度の小さい独立集合には、濃度の大きい独立集合の元をひとつ付け加えて独立性を保つ余地が必ず残るということである。付け加える元をB∖AB\setminus Aの中から取ることが要点であり、EEの任意の元から取ってよいという主張ではない。

注意 1.2 (三つの「独立」を混同しない). 本単元では「独立」という語が三つの異なる意味で現れる。確率変数の独立性、グラフの独立集合(二頂点を結ぶ辺をもたない頂点集合)、およびマトロイドの独立集合である。本記事で独立集合と書いたときは、つねに定義 1.1の意味でのマトロイドの独立集合を指す。グラフ的マトロイドを扱う節では台集合がグラフの辺集合であるから、独立集合は辺の集合であって頂点の集合ではない。

2 基底

定義 2.1. マトロイドM=(E,I)M=(E,\mathcal I)において、包含に関して極大な独立集合を 基底 (basis) という。すなわちB∈IB\in\mathcal Iが基底であるとは、B⊊AB\subsetneq AかつA∈IA\in\mathcal Iを満たすAAが存在しないことをいう。基底の全体をB\mathcal Bと書く。

極大と最大は別の条件である。極大は包含に関する条件であり、最大は濃度に関する条件である。マトロイドではこの二つが一致するが、それは公理定義 1.1 条件 (c)から導かれる定理であって、定義から明らかなことではない。以下ではまず、任意の独立集合が基底へ延長されることを示す。

命題 2.2.M=(E,I)M=(E,\mathcal I)をマトロイドとする。任意のA∈IA\in\mathcal Iに対し、A⊆BA\subseteq Bを満たす基底BBが存在する。とくにB≠∅\mathcal B\ne\emptysetである。

証明.F={I∈I: A⊆I}\mathcal F=\{I\in\mathcal I:\ A\subseteq I\}と置く。A∈FA\in\mathcal FであるからF≠∅\mathcal F\ne\emptysetであり、EEが有限集合であるからF\mathcal Fも有限集合である。したがってF\mathcal Fの元の濃度の集合は空でない有限な非負整数の集合であり、最大値をとる元B∈FB\in\mathcal Fが存在する。

BBが基底であることを示す。B⊊IB\subsetneq IかつI∈II\in\mathcal Iを満たすIIが存在したとする。A⊆B⊆IA\subseteq B\subseteq IであるからI∈FI\in\mathcal Fであり、∣I∣>∣B∣\lvert I\rvert>\lvert B\rvertとなってBBの最大性に反する。ゆえにそのようなIIは存在せず、BBは包含に関して極大な独立集合、すなわち基底である。

最後に、定義 1.1 条件 (a)より∅∈I\emptyset\in\mathcal Iであるから、A=∅A=\emptysetに対して上の議論を適用すると基底が存在する。▨

命題 2.3. マトロイドのすべての基底は同じ濃度をもつ。

証明.B1,B2B_1,B_2を基底とし、∣B1∣<∣B2∣\lvert B_1\rvert<\lvert B_2\rvertと仮定する。B1,B2∈IB_1,B_2\in\mathcal Iであるから定義 1.1 条件 (c)を適用すると、x∈B2∖B1x\in B_2\setminus B_1が存在してB1∪{x}∈IB_1\cup\{x\}\in\mathcal Iとなる。x∉B1x\notin B_1であるからB1⊊B1∪{x}B_1\subsetneq B_1\cup\{x\}であり、B1B_1が包含に関して極大であることに反する。

ゆえに∣B1∣<∣B2∣\lvert B_1\rvert<\lvert B_2\rvertは成り立たない。B1B_1とB2B_2の役割を入れ替えると∣B2∣<∣B1∣\lvert B_2\rvert<\lvert B_1\rvertも成り立たない。したがって∣B1∣=∣B2∣\lvert B_1\rvert=\lvert B_2\rvertである。▨

系 2.4. マトロイドM=(E,I)M=(E,\mathcal I)の基底の共通の濃度をbbと書く。A∈IA\in\mathcal Iが∣A∣=b\lvert A\rvert=bを満たすならば、AAは基底である。また、任意のA∈IA\in\mathcal Iに対し∣A∣≤b\lvert A\rvert\le bが成り立つ。

証明.A∈IA\in\mathcal Iとする。命題 2.2よりA⊆BA\subseteq Bを満たす基底BBが存在し、命題 2.3より∣B∣=b\lvert B\rvert=bである。したがって∣A∣≤∣B∣=b\lvert A\rvert\le\lvert B\rvert=bである。

さらに∣A∣=b\lvert A\rvert=bならばA⊆BA\subseteq Bかつ∣A∣=∣B∣\lvert A\rvert=\lvert B\rvertであり、両者は有限集合であるからA=BA=Bとなる。ゆえにAAは基底である。▨

3 基底公理

基底の族だけを見たときに、それがマトロイドから来ていることを保証する条件を書き下す。

定義 3.1. 有限集合EEとB⊆2E\mathcal B\subseteq 2^{E}の組が基底公理系 (basis axiom system) を満たすとは、次の二条件を満たすことをいう。

  1. (B1)B≠∅\mathcal B\ne\emptyset。
  2. (B2)B1,B2∈BB_1,B_2\in\mathcal Bとx∈B1∖B2x\in B_1\setminus B_2に対し、y∈B2∖B1y\in B_2\setminus B_1が存在して(B1∖{x})∪{y}∈B(B_1\setminus\{x\})\cup\{y\}\in\mathcal Bとなる。

定理 3.2. マトロイドM=(E,I)M=(E,\mathcal I)の基底全体B\mathcal Bは定義 3.1の定義 3.1 条件 (a)と定義 3.1 条件 (b)を満たす。

証明.定義 3.1 条件 (a)を示す。命題 2.2よりB≠∅\mathcal B\ne\emptysetである。

定義 3.1 条件 (b)を示す。B1,B2∈BB_1,B_2\in\mathcal Bとし、x∈B1∖B2x\in B_1\setminus B_2とする。基底の共通の濃度をbbと書く。B1∖{x}⊆B1∈IB_1\setminus\{x\}\subseteq B_1\in\mathcal Iであるから定義 1.1 条件 (b)よりB1∖{x}∈IB_1\setminus\{x\}\in\mathcal Iであり、x∈B1x\in B_1より∣B1∖{x}∣=b−1<b=∣B2∣\lvert B_1\setminus\{x\}\rvert=b-1<b=\lvert B_2\rvertである。

定義 1.1 条件 (c)を独立集合の対(B1∖{x}, B2)(B_1\setminus\{x\},\,B_2)へ適用すると、y∈B2∖(B1∖{x})y\in B_2\setminus(B_1\setminus\{x\})が存在して(B1∖{x})∪{y}∈I(B_1\setminus\{x\})\cup\{y\}\in\mathcal Iとなる。x∉B2x\notin B_2であるからy≠xy\ne xであり、したがってy∉B1y\notin B_1、すなわちy∈B2∖B1y\in B_2\setminus B_1である。

y∉B1∖{x}y\notin B_1\setminus\{x\}であるから∣(B1∖{x})∪{y}∣=(b−1)+1=b\lvert(B_1\setminus\{x\})\cup\{y\}\rvert=(b-1)+1=bである。系 2.4より(B1∖{x})∪{y}(B_1\setminus\{x\})\cup\{y\}は基底である。▨

注意 3.3 (定義 3.1 条件 (b)は非対称な交換である). 条件定義 3.1 条件 (b)が要求するのは、B1B_1から取り除いたxxをB2B_2の元yyで置き換えた(B1∖{x})∪{y}(B_1\setminus\{x\})\cup\{y\}が基底になることだけである。同時に(B2∖{y})∪{x}(B_2\setminus\{y\})\cup\{x\}も基底になるという対称な形の主張は、本記事では仮定せず、以下のどの証明でも用いない。また定義 3.1 条件 (b)は、xxに対して条件を満たすyyが少なくとも一つ存在することを述べるのであって、B2∖B1B_2\setminus B_1のすべてのyyが条件を満たすことを述べるものではない。

4 二つの公理系の同値性

基底公理系だけを仮定した段階では、B\mathcal Bの元が同じ濃度をもつことすら明らかではない。まずそれを定義 3.1 条件 (a)と定義 3.1 条件 (b)だけから導く。

補題 4.1. 有限集合EEとB⊆2E\mathcal B\subseteq 2^{E}が定義 3.1 条件 (a)と定義 3.1 条件 (b)を満たすならば、B\mathcal Bのすべての元は同じ濃度をもつ。

証明.∣B1∣>∣B2∣\lvert B_1\rvert>\lvert B_2\rvertを満たす対(B1,B2)∈B×B(B_1,B_2)\in\mathcal B\times\mathcal Bが存在したとする。B\mathcal Bは有限集合であるから、そのような対のうち∣B1∖B2∣\lvert B_1\setminus B_2\rvertが最小のものを一つ取り、あらためて(B1,B2)(B_1,B_2)と書く。

∣B1∣>∣B2∣\lvert B_1\rvert>\lvert B_2\rvertよりB1∖B2≠∅B_1\setminus B_2\ne\emptysetであるから、x∈B1∖B2x\in B_1\setminus B_2を取ることができる。定義 3.1 条件 (b)よりy∈B2∖B1y\in B_2\setminus B_1が存在してB3=(B1∖{x})∪{y}∈BB_3=(B_1\setminus\{x\})\cup\{y\}\in\mathcal Bとなる。

y∉B1y\notin B_1であるから∣B3∣=∣B1∣−1+1=∣B1∣>∣B2∣\lvert B_3\rvert=\lvert B_1\rvert-1+1=\lvert B_1\rvert>\lvert B_2\rvertである。またy∈B2y\in B_2であるからB3∖B2=((B1∖{x})∪{y})∖B2=(B1∖B2)∖{x}B_3\setminus B_2=\bigl((B_1\setminus\{x\})\cup\{y\}\bigr)\setminus B_2=(B_1\setminus B_2)\setminus\{x\}であり、x∈B1∖B2x\in B_1\setminus B_2より∣B3∖B2∣=∣B1∖B2∣−1\lvert B_3\setminus B_2\rvert=\lvert B_1\setminus B_2\rvert-1である。したがって対(B3,B2)(B_3,B_2)は∣B3∣>∣B2∣\lvert B_3\rvert>\lvert B_2\rvertを満たし、かつ∣B3∖B2∣<∣B1∖B2∣\lvert B_3\setminus B_2\rvert<\lvert B_1\setminus B_2\rvertとなって、(B1,B2)(B_1,B_2)の最小性に反する。

ゆえに∣B1∣>∣B2∣\lvert B_1\rvert>\lvert B_2\rvertを満たす対は存在せず、B\mathcal Bのすべての元は同じ濃度をもつ。▨

次の補題は、B\mathcal Bの元に含まれる集合を、あらかじめ指定したB\mathcal Bの元へ近づけることができることを述べる。同値性の証明の中心となる道具である。

補題 4.2. 有限集合EEとB⊆2E\mathcal B\subseteq 2^{E}が定義 3.1 条件 (a)と定義 3.1 条件 (b)を満たすとし、I={A⊆E: ∃B∈B, A⊆B}\mathcal I=\{A\subseteq E:\ \exists B\in\mathcal B,\ A\subseteq B\}と置く。A∈IA\in\mathcal IとB∈BB\in\mathcal Bに対し、A⊆B′⊆A∪BA\subseteq B'\subseteq A\cup Bを満たすB′∈BB'\in\mathcal Bが存在する。

証明.G={B′∈B: A⊆B′}\mathcal G=\{B'\in\mathcal B:\ A\subseteq B'\}と置く。A∈IA\in\mathcal IであるからG≠∅\mathcal G\ne\emptysetである。G\mathcal Gは有限集合であるから、∣B′∖B∣\lvert B'\setminus B\rvertを最小にするB′∈GB'\in\mathcal Gを一つ取ることができる。

B′⊆A∪BB'\subseteq A\cup Bを示す。x∈B′∖(A∪B)x\in B'\setminus(A\cup B)が存在したとする。とくにx∈B′∖Bx\in B'\setminus Bである。定義 3.1 条件 (b)をB′,B∈BB',B\in\mathcal Bとx∈B′∖Bx\in B'\setminus Bへ適用すると、y∈B∖B′y\in B\setminus B'が存在してB′′=(B′∖{x})∪{y}∈BB''=(B'\setminus\{x\})\cup\{y\}\in\mathcal Bとなる。

x∉Ax\notin AであるからA⊆B′∖{x}⊆B′′A\subseteq B'\setminus\{x\}\subseteq B''であり、B′′∈GB''\in\mathcal Gである。さらにy∈By\in BであるからB′′∖B=((B′∖{x})∪{y})∖B=(B′∖B)∖{x}B''\setminus B=\bigl((B'\setminus\{x\})\cup\{y\}\bigr)\setminus B=(B'\setminus B)\setminus\{x\}であり、x∈B′∖Bx\in B'\setminus Bより∣B′′∖B∣=∣B′∖B∣−1\lvert B''\setminus B\rvert=\lvert B'\setminus B\rvert-1となってB′B'の最小性に反する。

ゆえにB′∖(A∪B)=∅B'\setminus(A\cup B)=\emptyset、すなわちB′⊆A∪BB'\subseteq A\cup Bである。A⊆B′A\subseteq B'はB′∈GB'\in\mathcal Gによる。▨

4.1 証明方針

示すべきことは二つの向きである。一方の向きでは、定義 3.1 条件 (a)と定義 3.1 条件 (b)を満たすB\mathcal BからI={A: ∃B∈B, A⊆B}\mathcal I=\{A:\ \exists B\in\mathcal B,\ A\subseteq B\}を作り、これが定義 1.1 条件 (a)、定義 1.1 条件 (b)、定義 1.1 条件 (c)を満たし、しかもその基底全体がもとのB\mathcal Bに一致することを示す。他方の向きでは、マトロイドの基底全体に同じ操作を施すともとの独立集合族が戻ることを示す。

三条件のうち難所は定義 1.1 条件 (c)だけである。∣A1∣<∣A2∣\lvert A_1\rvert<\lvert A_2\rvertを満たすA1,A2∈IA_1,A_2\in\mathcal Iに対して、A2A_2を含むB2∈BB_2\in\mathcal Bをまず取る。次に補題 4.2をA1A_1とB2B_2へ適用して、A1⊆B1⊆A1∪B2A_1\subseteq B_1\subseteq A_1\cup B_2を満たすB1∈BB_1\in\mathcal Bを得る。このB1B_1はA1A_1の外側ではB2B_2の元しか含まないので、B1B_1とB2B_2の濃度が等しいことと合わせて、B1B_1がA2∖A1A_2\setminus A_1の元を少なくとも一つ含むことを濃度の勘定だけで結論することができる。その元をxxとすればA1∪{x}⊆B1A_1\cup\{x\}\subseteq B_1となり、A1∪{x}∈IA_1\cup\{x\}\in\mathcal Iが従う。濃度の勘定を実行する箇所が、増大公理を得るための本質的な一手である。

定理 4.3. 有限集合EEについて次が成り立つ。

  1. B⊆2E\mathcal B\subseteq 2^{E}が (B1) と (B2) を満たすとし、I={A⊆E: ∃B∈B, A⊆B}\mathcal I=\{A\subseteq E:\ \exists B\in\mathcal B,\ A\subseteq B\}と置く。このとき(E,I)(E,\mathcal I)はマトロイドであり、その基底全体はB\mathcal Bに一致する。
  2. M=(E,I)M=(E,\mathcal I)をマトロイドとし、B\mathcal Bをその基底全体とする。このとき{A⊆E: ∃B∈B, A⊆B}=I\{A\subseteq E:\ \exists B\in\mathcal B,\ A\subseteq B\}=\mathcal Iが成り立つ。

したがって、I\mathcal IからB\mathcal Bを作る対応とB\mathcal BからI\mathcal Iを作る対応は互いに逆であり、独立集合公理系と基底公理系は同じ対象を定める。

証明. (1)の定義 1.1 条件 (a).定義 3.1 条件 (a)よりB∈BB\in\mathcal Bを取ることができ、∅⊆B\emptyset\subseteq Bであるから∅∈I\emptyset\in\mathcal Iである。

(1)の定義 1.1 条件 (b).A∈IA\in\mathcal IとしA′⊆AA'\subseteq Aとする。A⊆BA\subseteq Bを満たすB∈BB\in\mathcal Bを取るとA′⊆A⊆BA'\subseteq A\subseteq BであるからA′∈IA'\in\mathcal Iである。

(1)の定義 1.1 条件 (c).A1,A2∈IA_1,A_2\in\mathcal Iとし∣A1∣<∣A2∣\lvert A_1\rvert<\lvert A_2\rvertとする。A2⊆B2A_2\subseteq B_2を満たすB2∈BB_2\in\mathcal Bを取る。補題 4.2をA1A_1とB2B_2へ適用すると、A1⊆B1⊆A1∪B2A_1\subseteq B_1\subseteq A_1\cup B_2を満たすB1∈BB_1\in\mathcal Bが存在する。補題 4.1より∣B1∣=∣B2∣\lvert B_1\rvert=\lvert B_2\rvertであり、この共通の値をbbと書く。

B1∩(A2∖A1)≠∅B_1\cap(A_2\setminus A_1)\ne\emptysetを示す。B1∩(A2∖A1)=∅B_1\cap(A_2\setminus A_1)=\emptysetと仮定する。B1⊆A1∪B2B_1\subseteq A_1\cup B_2であるからB1∖A1⊆B2∖A1=(A2∖A1) ∪ (B2∖(A1∪A2))B_1\setminus A_1\subseteq B_2\setminus A_1=(A_2\setminus A_1)\,\cup\,\bigl(B_2\setminus(A_1\cup A_2)\bigr)であり、仮定よりB1∖A1B_1\setminus A_1はA2∖A1A_2\setminus A_1と交わらないからB1∖A1⊆B2∖(A1∪A2)B_1\setminus A_1\subseteq B_2\setminus(A_1\cup A_2)である。ゆえに∣B1∖A1∣≤∣B2∖(A1∪A2)∣≤∣B2∖A2∣.\lvert B_1\setminus A_1\rvert\le\bigl\lvert B_2\setminus(A_1\cup A_2)\bigr\rvert\le\lvert B_2\setminus A_2\rvert.A1⊆B1A_1\subseteq B_1かつA2⊆B2A_2\subseteq B_2であるから∣B1∖A1∣=b−∣A1∣\lvert B_1\setminus A_1\rvert=b-\lvert A_1\rvertかつ∣B2∖A2∣=b−∣A2∣\lvert B_2\setminus A_2\rvert=b-\lvert A_2\rvertであり、上の不等式はb−∣A1∣≤b−∣A2∣b-\lvert A_1\rvert\le b-\lvert A_2\rvert、すなわち∣A2∣≤∣A1∣\lvert A_2\rvert\le\lvert A_1\rvertを与える。これは∣A1∣<∣A2∣\lvert A_1\rvert<\lvert A_2\rvertに反する。

ゆえにx∈B1∩(A2∖A1)x\in B_1\cap(A_2\setminus A_1)が存在する。A1⊆B1A_1\subseteq B_1かつx∈B1x\in B_1であるからA1∪{x}⊆B1A_1\cup\{x\}\subseteq B_1であり、I\mathcal Iの定義よりA1∪{x}∈IA_1\cup\{x\}\in\mathcal Iである。x∈A2∖A1x\in A_2\setminus A_1であるから定義 1.1 条件 (c)が成り立つ。

(1)の基底の一致. まずB∈BB\in\mathcal Bが(E,I)(E,\mathcal I)の基底であることを示す。B∈IB\in\mathcal Iである。B⊆AB\subseteq AかつA∈IA\in\mathcal Iとすると、A⊆B′A\subseteq B'を満たすB′∈BB'\in\mathcal Bが存在し、B⊆A⊆B′B\subseteq A\subseteq B'となる。補題 4.1より∣B∣=∣B′∣\lvert B\rvert=\lvert B'\rvertであり、有限集合であるからB=A=B′B=A=B'である。ゆえにBBは包含に関して極大であり、基底である。

逆にAAを(E,I)(E,\mathcal I)の基底とする。A∈IA\in\mathcal IであるからA⊆BA\subseteq Bを満たすB∈BB\in\mathcal Bが存在し、いま示したとおりB∈IB\in\mathcal Iである。AAの極大性よりA=B∈BA=B\in\mathcal Bである。以上より(E,I)(E,\mathcal I)の基底全体はB\mathcal Bに一致する。

(2)を示す。J={A⊆E: ∃B∈B, A⊆B}\mathcal J=\{A\subseteq E:\ \exists B\in\mathcal B,\ A\subseteq B\}と置く。A∈JA\in\mathcal JならばA⊆BA\subseteq BかつB∈B⊆IB\in\mathcal B\subseteq\mathcal Iであるから、定義 1.1 条件 (b)よりA∈IA\in\mathcal Iである。逆にA∈IA\in\mathcal Iならば命題 2.2よりA⊆BA\subseteq Bを満たす基底BBが存在するのでA∈JA\in\mathcal Jである。ゆえにJ=I\mathcal J=\mathcal Iである。

互いに逆であること.(2)は、マトロイドから基底族を作り、基底族から独立集合族を作ると、もとの独立集合族に戻ることを述べている。(1)は、定義 3.1 条件 (a)と定義 3.1 条件 (b)を満たす族から独立集合族を作り、その基底族を取ると、もとの族に戻ることを述べている。したがって二つの対応は互いに逆であり、二つの公理系は同じ対象を定める。▨

5 標準例その一 — 一様マトロイド

定義 5.1.nnを非負整数、kkを0≤k≤n0\le k\le nを満たす整数とし、EEをnn元集合とする。I={A⊆E: ∣A∣≤k}\mathcal I=\{A\subseteq E:\ \lvert A\rvert\le k\}と置いたとき、(E,I)(E,\mathcal I)を一様マトロイド (uniform matroid) といいUk,nU_{k,n}と書く。

命題 5.2.定義 5.1の(E,I)(E,\mathcal I)はマトロイドであり、その基底全体はEEのkk元部分集合の全体である。

証明.定義 1.1 条件 (a)を示す。∣∅∣=0≤k\lvert\emptyset\rvert=0\le kである。

定義 1.1 条件 (b)を示す。B⊆AB\subseteq Aならば∣B∣≤∣A∣≤k\lvert B\rvert\le\lvert A\rvert\le kである。

定義 1.1 条件 (c)を示す。A,B∈IA,B\in\mathcal Iかつ∣A∣<∣B∣\lvert A\rvert<\lvert B\rvertとする。∣B∣≤k\lvert B\rvert\le kより∣A∣≤k−1\lvert A\rvert\le k-1である。∣A∣<∣B∣\lvert A\rvert<\lvert B\rvertよりB∖A≠∅B\setminus A\ne\emptysetであるからx∈B∖Ax\in B\setminus Aを取ることができ、∣A∪{x}∣=∣A∣+1≤k\lvert A\cup\{x\}\rvert=\lvert A\rvert+1\le kであるからA∪{x}∈IA\cup\{x\}\in\mathcal Iである。

基底.∣A∣=k\lvert A\rvert=kならば、A⊊A′A\subsetneq A'かつA′∈IA'\in\mathcal Iを満たすA′A'は∣A′∣≥k+1\lvert A'\rvert\ge k+1となって存在しないからAAは基底である。逆に∣A∣<k\lvert A\rvert<kならば、∣E∣=n≥k>∣A∣\lvert E\rvert=n\ge k>\lvert A\rvertよりx∈E∖Ax\in E\setminus Aが存在し、∣A∪{x}∣≤k\lvert A\cup\{x\}\rvert\le kであるからAAは極大でない。ゆえに基底はkk元部分集合に限る。▨

6 標準例その二 — グラフ的マトロイド

定義 6.1.G=(V,E)G=(V,E)を有限単純無向グラフとする。F⊆EF\subseteq Eに対し、VVを頂点集合としFFを辺集合とする部分グラフを(V,F)(V,F)と書く。I={F⊆E: (V,F) が閉路をもたない}\mathcal I=\{F\subseteq E:\ (V,F)\ \text{が閉路をもたない}\}と置いたとき、(E,I)(E,\mathcal I)をGGのグラフ的マトロイド (graphic matroid) といいM(G)M(G)と書く。I\mathcal Iの元は§D2.7 定義 3.1の意味で(V,F)(V,F)が森になる辺集合にほかならない。

補題 6.2.G=(V,E)G=(V,E)を有限単純無向グラフとし、F⊆EF\subseteq Eに対して(V,F)(V,F)が閉路をもたないとする。(V,F)(V,F)の連結成分の個数をc(F)c(F)と書くと∣F∣=∣V∣−c(F)\lvert F\rvert=\lvert V\rvert-c(F)が成り立つ。

証明.(V,F)(V,F)の連結成分をH1,…,Hc(F)H_1,\dots,H_{c(F)}とし、HiH_iの頂点数をnin_i、辺数をmim_iと書く。各HiH_iは連結であり、(V,F)(V,F)の部分グラフであるから閉路をもたない。ゆえに§D2.7 定義 3.1よりHiH_iは木であり、§D2.7 定理 3.6の定理 4.3 (1)から定理 4.3 (2)への含意によりmi=ni−1m_i=n_i-1である。

§D2.7 定義 2.3より、連結成分は到達可能性の同値類が定める部分グラフであり、FFの各辺の両端点は互いに到達可能であるからちょうど一つの連結成分に属する。また各頂点もちょうど一つの連結成分に属する。したがって∣F∣=∑i=1c(F)mi\lvert F\rvert=\sum_{i=1}^{c(F)}m_iかつ∣V∣=∑i=1c(F)ni\lvert V\rvert=\sum_{i=1}^{c(F)}n_iであり、∣F∣=∑i=1c(F)(ni−1)=∣V∣−c(F)\lvert F\rvert=\sum_{i=1}^{c(F)}(n_i-1)=\lvert V\rvert-c(F)が成り立つ。▨

命題 6.3.定義 6.1のM(G)=(E,I)M(G)=(E,\mathcal I)はマトロイドである。GGが連結ならば、その基底はGGの全域木の辺集合の全体であり、共通の濃度は∣V∣−1\lvert V\rvert-1である。

証明.定義 1.1 条件 (a)を示す。(V,∅)(V,\emptyset)は辺をもたないから閉路をもたない。

定義 1.1 条件 (b)を示す。F′⊆FF'\subseteq Fとし(V,F)(V,F)が閉路をもたないとする。(V,F′)(V,F')の閉路はF′⊆FF'\subseteq Fより(V,F)(V,F)の閉路でもあるから、(V,F′)(V,F')は閉路をもたない。

定義 1.1 条件 (c)を示す。F1,F2∈IF_1,F_2\in\mathcal Iとし∣F1∣<∣F2∣\lvert F_1\rvert<\lvert F_2\rvertとする。補題 6.2より∣V∣−c(F1)<∣V∣−c(F2)\lvert V\rvert-c(F_1)<\lvert V\rvert-c(F_2)、すなわちc(F1)>c(F2)c(F_1)>c(F_2)である。

F2∖F1F_2\setminus F_1の辺のうち、両端点が(V,F1)(V,F_1)の相異なる連結成分に属するものが存在することを示す。存在しないと仮定する。F1∩F2F_1\cap F_2の辺については、両端点が(V,F1)(V,F_1)の同一の連結成分に属することが§D2.7 定義 2.3から従う。ゆえに仮定のもとでは、F2F_2のすべての辺について両端点が(V,F1)(V,F_1)の同一の連結成分に属する。(V,F2)(V,F_2)においてuuからvvへの歩道が存在するとき、その歩道の各辺の両端点は(V,F1)(V,F_1)の同一の連結成分に属するから、歩道に沿って順に見ることによりuuとvvは(V,F1)(V,F_1)の同一の連結成分に属する。したがって(V,F2)(V,F_2)の各連結成分の頂点集合は(V,F1)(V,F_1)のある連結成分の頂点集合に含まれる。この対応によって(V,F2)(V,F_2)の連結成分から(V,F1)(V,F_1)の連結成分への写像φ\varphiが定まる。(V,F1)(V,F_1)の連結成分HHを任意に取り、HHの頂点uuを一つ取ると、uuを含む(V,F2)(V,F_2)の連結成分H′H'が存在し、φ(H′)\varphi(H')はuuを含む(V,F1)(V,F_1)の連結成分であるからφ(H′)=H\varphi(H')=Hである。ゆえにφ\varphiは全射であり、c(F2)≥c(F1)c(F_2)\ge c(F_1)となる。これはc(F1)>c(F2)c(F_1)>c(F_2)に反する。

ゆえにe={u,v}∈F2∖F1e=\{u,v\}\in F_2\setminus F_1であって、uuとvvが(V,F1)(V,F_1)の相異なる連結成分に属するものが存在する。(V,F1∪{e})(V,F_1\cup\{e\})が閉路をもたないことを示す。閉路CCが存在したとする。(V,F1)(V,F_1)は閉路をもたないからCCは辺eeを用いる。CCからeeを取り除くとuuからvvへの(V,F1)(V,F_1)における歩道が残り、uuとvvが(V,F1)(V,F_1)の同一の連結成分に属することになって矛盾する。ゆえにF1∪{e}∈IF_1\cup\{e\}\in\mathcal Iであり、e∈F2∖F1e\in F_2\setminus F_1であるから定義 1.1 条件 (c)が成り立つ。

基底.GGが連結であるとする。FFが基底であることとc(F)=1c(F)=1であることが同値であることを示す。c(F)≥2c(F)\ge2ならばGGが連結であるから、相異なる二つの連結成分の頂点を結ぶ辺e∈E∖Fe\in E\setminus Fが存在し、上と同じ議論でF∪{e}∈IF\cup\{e\}\in\mathcal IとなってFFは極大でない。逆にc(F)=1c(F)=1ならば補題 6.2より∣F∣=∣V∣−1\lvert F\rvert=\lvert V\rvert-1であり、F⊊F′F\subsetneq F'かつF′∈IF'\in\mathcal Iを満たすF′F'があれば∣F′∣≥∣V∣\lvert F'\rvert\ge\lvert V\rvertとなって補題 6.2の等式∣F′∣=∣V∣−c(F′)≤∣V∣−1\lvert F'\rvert=\lvert V\rvert-c(F')\le\lvert V\rvert-1に反する。

c(F)=1c(F)=1かつ(V,F)(V,F)が閉路をもたないことは、(V,F)(V,F)が木であること、すなわちFFがGGの全域木の辺集合であることにほかならない。このとき∣F∣=∣V∣−1\lvert F\rvert=\lvert V\rvert-1である。▨

7 追加例 — 線形マトロイド

線形マトロイドは、独立集合公理がベクトル空間の一次独立性から来ていることを示す例である。本節は一次独立と基底の言葉を用いるので、線形代数を未修の読者は読み飛ばしても以降の記事に支障はない。

定義 7.1.KKを体、WWをKK上のベクトル空間、EEを有限集合とし、各i∈Ei\in Eにベクトルvi∈Wv_i\in Wを対応させる族(vi)i∈E(v_i)_{i\in E}を与える。I={A⊆E: (vi)i∈A が一次独立}\mathcal I=\{A\subseteq E:\ (v_i)_{i\in A}\ \text{が一次独立}\}と置いたとき、(E,I)(E,\mathcal I)を族(vi)i∈E(v_i)_{i\in E}が定める線形マトロイド (linear matroid) という。ここで一次独立は§D3.8 定義 1.1の意味である。相異なる添字に同じベクトルが対応することを許し、零ベクトルが対応することも許す。空の族は一次独立であると約束する。

命題 7.2.定義 7.1の(E,I)(E,\mathcal I)はマトロイドである。

証明.定義 1.1 条件 (a)を示す。 空の族は一次独立であるから∅∈I\emptyset\in\mathcal Iである。

定義 1.1 条件 (b)を示す。A∈IA\in\mathcal IかつB⊆AB\subseteq Aとする。∑i∈Bcivi=0\sum_{i\in B}c_iv_i=0とし、i∈A∖Bi\in A\setminus Bに対しci=0c_i=0と定めると∑i∈Acivi=0\sum_{i\in A}c_iv_i=0となる。A∈IA\in\mathcal Iよりci=0c_i=0がすべてのi∈Ai\in Aについて成り立ち、とくにi∈Bi\in Bについて成り立つ。ゆえにB∈IB\in\mathcal Iである。

定義 1.1 条件 (c)を示す。A,B∈IA,B\in\mathcal Iかつ∣A∣<∣B∣\lvert A\rvert<\lvert B\rvertとする。U=span⁡{vi: i∈A}U=\operatorname{span}\{v_i:\ i\in A\}と置く。UUはWWの部分空間であり、∣A∣\lvert A\rvert個のベクトル(vi)i∈A(v_i)_{i\in A}によって生成される。

すべてのj∈Bj\in Bについてvj∈Uv_j\in Uであると仮定する。このとき(vj)j∈B(v_j)_{j\in B}はUUに属する一次独立な∣B∣\lvert B\rvert個のベクトルの族であり、UUは∣A∣\lvert A\rvert個のベクトルで生成されるから、§D3.8 補題 3.1を生成系(vi)i∈A(v_i)_{i\in A}と一次独立な族(vj)j∈B(v_j)_{j\in B}へ適用して∣B∣≤∣A∣\lvert B\rvert\le\lvert A\rvertを得る。これは∣A∣<∣B∣\lvert A\rvert<\lvert B\rvertに反する。

ゆえにj∈Bj\in Bであってvj∉Uv_j\notin Uを満たすものが存在する。i∈Ai\in Aに対してはvi∈Uv_i\in Uであるからj∉Aj\notin A、すなわちj∈B∖Aj\in B\setminus Aである。A∪{j}∈IA\cup\{j\}\in\mathcal Iを示す。∑i∈Acivi+cjvj=0\sum_{i\in A}c_iv_i+c_jv_j=0とする。cj≠0c_j\ne0とするとvj=−cj−1∑i∈Acivi∈Uv_j=-c_j^{-1}\sum_{i\in A}c_iv_i\in Uとなってvj∉Uv_j\notin Uに反する。ゆえにcj=0c_j=0であり、∑i∈Acivi=0\sum_{i\in A}c_iv_i=0からA∈IA\in\mathcal Iよりci=0c_i=0がすべてのi∈Ai\in Aについて成り立つ。したがってA∪{j}∈IA\cup\{j\}\in\mathcal Iである。▨

注意 7.3 (取替え補題を部分空間へ適用している).§D3.8 補題 3.1は「mm個のベクトルが空間を生成し、nn個のベクトルが一次独立ならばn≤mn\le mである」という形の主張である。上の証明では、この主張を全体の空間WWではなく部分空間UUに対して適用した。UUはそれ自身KK上のベクトル空間であり、(vi)i∈A(v_i)_{i\in A}がUUの生成系、(vj)j∈B(v_j)_{j\in B}がUUに属する一次独立な族であるから、適用の条件は満たされている。取り替えを一つずつ実行する形の主張は用いていない。

8 具体例

例 8.1 (三種類の標準例における公理の検算). 一様マトロイドU2,4U_{2,4}.E={1,2,3,4}E=\{1,2,3,4\}とする。独立集合は濃度22以下の部分集合であるから、その個数は1+4+6=111+4+6=11である。基底は66個の二元部分集合である。定義 3.1 条件 (b)をB1={1,2}B_1=\{1,2\}、B2={3,4}B_2=\{3,4\}、x=1x=1について確かめる。B1∖{x}={2}B_1\setminus\{x\}=\{2\}であり、y=3y=3とすると(B1∖{x})∪{y}={2,3}(B_1\setminus\{x\})\cup\{y\}=\{2,3\}は二元部分集合であるから基底である。y=4y=4としても{2,4}\{2,4\}は基底である。

三角形のグラフ的マトロイド. 頂点1,2,31,2,3と辺a={1,2}a=\{1,2\}、b={2,3}b=\{2,3\}、c={1,3}c=\{1,3\}からなるグラフGGを取る。GGの唯一の閉路は三辺すべてを用いるから、閉路を含まない辺集合は濃度22以下の部分集合の全体である。ゆえにM(G)=U2,3M(G)=U_{2,3}であり、基底は33個の二元集合である。命題 6.3の主張どおり、基底の濃度は∣V∣−1=2\lvert V\rvert-1=2である。

K4K_4のグラフ的マトロイド. 頂点1,2,3,41,2,3,4と六本の辺a={1,2}a=\{1,2\}、b={1,3}b=\{1,3\}、c={1,4}c=\{1,4\}、d={2,3}d=\{2,3\}、e={2,4}e=\{2,4\}、f={3,4}f=\{3,4\}からなる完全グラフを取る。基底の濃度は∣V∣−1=3\lvert V\rvert-1=3である。三元部分集合は(63)=20\binom{6}{3}=20個ある。そのうち閉路になるものは三角形に対応する{a,b,d}\{a,b,d\}、{a,c,e}\{a,c,e\}、{b,c,f}\{b,c,f\}、{d,e,f}\{d,e,f\}の44個である。三元部分集合が閉路を含むのは、それ自身が三角形の辺集合であるとき、かつそのときに限る。したがって基底の個数は20−4=1620-4=16である。

線形マトロイド.K=QK=\mathbb Q、W=Q2W=\mathbb Q^{2}とし、E={1,2,3,4}E=\{1,2,3,4\}に対してv1=(1,0),v2=(0,1),v3=(1,1),v4=(0,0)v_1=(1,0),\qquad v_2=(0,1),\qquad v_3=(1,1),\qquad v_4=(0,0)と定める。v4v_4は零ベクトルであるから{4}\{4\}は従属である。{1}\{1\}、{2}\{2\}、{3}\{3\}は独立である。二元集合については、v1,v2v_1,v_2はc1(1,0)+c2(0,1)=(c1, c2)=(0,0)c_1(1,0)+c_2(0,1)=(c_1,\ c_2)=(0,0)からc1=0c_1=0かつc2=0c_2=0が従うので一次独立であり、v1,v3v_1,v_3についてはc1(1,0)+c3(1,1)=(c1+c3, c3)=(0,0)c_1(1,0)+c_3(1,1)=(c_1+c_3,\ c_3)=(0,0)からc3=0c_3=0、次いでc1=0c_1=0が従うので一次独立、v2,v3v_2,v_3についても同様にc2(0,1)+c3(1,1)=(c3, c2+c3)=(0,0)c_2(0,1)+c_3(1,1)=(c_3,\ c_2+c_3)=(0,0)からc3=0c_3=0、c2=0c_2=0が従うので一次独立である。44を含む二元集合は零ベクトルを含むから従属である。三元集合はいずれもQ2\mathbb Q^{2}の三本のベクトルからなるので、§D3.8 補題 3.1を生成系v1,v2v_1,v_2へ適用すると従属である。ゆえに独立集合は∅\emptyset、{1}\{1\}、{2}\{2\}、{3}\{3\}、{1,2}\{1,2\}、{1,3}\{1,3\}、{2,3}\{2,3\}の77個であり、基底は{1,2}\{1,2\}、{1,3}\{1,3\}、{2,3}\{2,3\}の33個である。添字44はどの基底にも属さない。

9 演習

問題 9.1.

  1. 定理 3.2の証明において、定義 1.1 条件 (c)を適用する独立集合の対を(B1∖{x}, B2)(B_1\setminus\{x\},\,B_2)に取った。この対を(B1,B2)(B_1,B_2)に取ることができない理由を、濃度の条件に即して述べよ。さらに、得られたyyがxxと異なることを保証する一手を書き下し、その一手を省くと結論が導けなくなる理由を述べよ。
  2. 補題 4.1の証明を、∣B1∖B2∣\lvert B_1\setminus B_2\rvertの最小性を用いる形ではなく、∣B1∖B2∣\lvert B_1\setminus B_2\rvertについての帰納法として設計し直せ。帰納法の基底段階に何を置くかを明示せよ。
  3. 補題 4.2の証明で、x∈B′∖(A∪B)x\in B'\setminus(A\cup B)を取りB′′B''を作った後、B′′∈GB''\in\mathcal Gを確かめる段がある。この段でx∉Ax\notin Aをどこで用いたかを指摘せよ。xxをB′∖BB'\setminus Bから取り、AAの外にあることを要求しない設計にすると証明が破綻する理由を述べよ。
  4. 定理 4.3の定義 1.1 条件 (c)の証明のうち、濃度の勘定によってB1∩(A2∖A1)≠∅B_1\cap(A_2\setminus A_1)\ne\emptysetを導く部分を、参照せずに再現せよ。∣B1∣=∣B2∣\lvert B_1\rvert=\lvert B_2\rvertをどこで用いたかを明示せよ。
  5. 命題 6.3の定義 1.1 条件 (c)の証明では、(V,F2)(V,F_2)の各連結成分が(V,F1)(V,F_1)のある連結成分に含まれることからc(F2)≥c(F1)c(F_2)\ge c(F_1)を導いた。この含意を、頂点集合の分割の細かさの言葉で書き直して証明せよ。
  6. U2,4U_{2,4}において、定義 3.1 条件 (b)のyyがB2∖B1B_2\setminus B_1のすべての元について条件を満たすとは限らない例を作ることができるかを検討せよ。作ることができない場合は、Uk,nU_{k,n}でつねにすべてのyyが条件を満たすことを証明せよ。
  7. 例 8.1のK4K_4の例について、基底の個数1616を、三元部分集合の総数から閉路を数え引く方法とは別に、全域木を直接数え上げる方法で確かめよ。

11 扱った範囲と次の記事

本記事は、有限台集合上の独立集合公理定義 1.1 条件 (a)–定義 1.1 条件 (c)を定め、基底を包含に関して極大な独立集合として定義し、基底が同じ濃度をもつことと、基底族が非対称な交換公理定義 3.1 条件 (a)定義 3.1 条件 (b)を満たすことを証明した。逆に定義 3.1 条件 (a)定義 3.1 条件 (b)を満たす族から独立集合族を復元することができ、二つの対応が互いに逆であることも証明した。標準例として一様マトロイドとグラフ的マトロイドが公理を満たすことを確かめ、追加例として線形マトロイドを扱った。表現可能性、独立性の判定に要する計算量、および無限台集合への拡張は扱っていない。次の記事では、極小な従属集合として回路を、独立部分集合の最大濃度として階数を定義し、回路消去公理と階数公理を導いて、それぞれから独立集合族を復元する。

参考文献

  1. James Oxley, Matroid Theory, 2nd ed., Oxford University Press, 2011.独立集合公理、基底公理、および両者の同値性の定式化と、一様マトロイド・グラフ的マトロイド・線形マトロイドの標準例を参考にした。
  2. Bernhard Korte and Jens Vygen, Combinatorial Optimization: Theory and Algorithms, 6th ed., Algorithms and Combinatorics, Springer, 2018.有限独立集合系からマトロイドへ至る公理の並べ方と、基底の等濃度性の証明の構成を参考にした。

前提記事