§B3.9自然対数

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§B3.7 定義 2.3で定めたeeは11より大きい数なので、§B3.5 定義 1.2の底の条件a>0a>0かつa≠1a\ne1を満たします。本記事は、このeeを底とする対数を自然対数と定め、eeを底とする指数関数と自然対数が互いに逆の対応であることを確かめ、§B3.5 公式 2.2によって一般の底の対数を自然対数へ直します。最後に、真数を正の数に限らない対数について、本単元がどこまでを扱い、どこから先を別の単元へ委ねるかを述べます。

1 底をeeとする対数

定義 1.1 (自然対数).§B3.7 定義 2.3で定めたeeを底とする対数を自然対数という。本サイトでは、自然対数の底を書かずに

log⁡x=log⁡ex(x>0)\log x = \log_{e}x \qquad (x>0)

と書く。

注意 1.2 (対数の記号と底). 本サイトでは、底を書かないlog⁡\logは自然対数を表す。常用対数はlog⁡10\log_{10}と書いて底を明示する。文献によっては、自然対数をln⁡\lnと書くもの、log⁡\logで常用対数を表すもの、情報の量を扱う分野のようにlog⁡\logで底が22の対数を表すものがある。底を省いた記号を読むときは、その文献がどの底を採っているかを確かめる。

log⁡\logは§B3.5 定義 1.2で定めたlog⁡a\log_aの底をeeにとったものなので、§B3.5 定理 2.1と§B3.5 定理 3.1がそのまま当てはまります。すなわち、すべての正の数MM、NNとすべての実数rrについて

log⁡(MN)=log⁡M+log⁡N,log⁡MN=log⁡M−log⁡N,log⁡(Mr)=rlog⁡M\log(MN)=\log M+\log N, \qquad \log\frac{M}{N}=\log M-\log N, \qquad \log(M^{r})=r\log M

が成り立ち、e>1e>1なのでlog⁡\logは(0,∞)(0,\infty)で狭義単調増加です。

定理 1.3 (eeの累乗と自然対数は互いに逆の対応である). すべての実数xxについてlog⁡(ex)=x\log(e^{x})=xが成り立ち、すべての正の数yyについてelog⁡y=ye^{\log y}=yが成り立つ。

証明.xxを実数とし、p=log⁡(ex)p=\log(e^{x})と置きます。exe^{x}は正の数なのでppが定まり、§B3.5 定義 1.2によりep=exe^{p}=e^{x}です。eeは11でない正の数なので、§B3.5 定理 1.1によりexp⁡e\exp_eは単射であり、p=xp=xが従います。

次にyyを正の数とし、q=log⁡yq=\log yと置きます。§B3.5 定義 1.2によりeq=ye^{q}=yであり、q=log⁡yq=\log yを代入するとelog⁡y=ye^{\log y}=yです。▨

例 1.4 (自然対数の値).e0=1e^{0}=1、e1=ee^{1}=e、e−1=1ee^{-1}=\dfrac1e、e1/2=ee^{1/2}=\sqrt{e}なので、§B3.5 定義 1.2により

log⁡1=0,log⁡e=1,log⁡1e=−1,log⁡e=12\log 1 = 0,\qquad \log e = 1,\qquad \log\frac1e = -1,\qquad \log\sqrt{e} = \frac12

である。2<e<32<e<3なので、§B3.5 定理 3.1によりlog⁡2<log⁡e<log⁡3\log 2<\log e<\log 3、すなわちlog⁡2<1<log⁡3\log 2<1<\log 3である。

2 一般の底の対数を自然対数へ直す

§B3.5 公式 2.2で新しい底としてeeを選ぶと、底が何であっても、対数を自然対数の商として書き直すことができます。

公式 2.1 (自然対数による表示).a>0a>0、a≠1a\ne1とする。すべての正の数MMについて

log⁡aM=log⁡Mlog⁡a\log_a M = \frac{\log M}{\log a}

が成り立つ。

証明.eeは11でない正の数なので、§B3.5 公式 2.2の底bbとしてeeをとることができます。log⁡eM=log⁡M\log_e M=\log M、log⁡ea=log⁡a\log_e a=\log aなので

log⁡aM=log⁡eMlog⁡ea=log⁡Mlog⁡a\log_a M = \frac{\log_e M}{\log_e a} = \frac{\log M}{\log a}

です。▨

例 2.2 (底を自然対数へ直す).公式 2.1により

log⁡25=log⁡5log⁡2,log⁡10M=log⁡Mlog⁡10(M>0)\log_2 5 = \frac{\log 5}{\log 2},\qquad \log_{10}M = \frac{\log M}{\log 10}\quad(M>0)

である。M=eM=eと置くとlog⁡10e=log⁡elog⁡10=1log⁡10\log_{10}e=\dfrac{\log e}{\log 10}=\dfrac{1}{\log 10}であり、log⁡10e\log_{10}eとlog⁡10\log 10は互いに逆数である。

底の異なる対数どうしの関係も、この形から読み取ることができる。b>0b>0、b≠1b\ne1とすると、すべての正の数MMについてlog⁡M=log⁡b⋅log⁡bM\log M=\log b\cdot\log_b Mなので

log⁡aM=log⁡blog⁡a log⁡bM\log_a M = \frac{\log b}{\log a}\,\log_b M

である。係数log⁡blog⁡a\dfrac{\log b}{\log a}はMMによらない。とくにa>1a>1かつb>1b>1のときはlog⁡a>0\log a>0、log⁡b>0\log b>0なのでこの係数は正の数であり、底を取り替えても対数の値は正の定数倍だけ変わる。

3 真数を正の数に限らない対数について

ここまでは真数を正の数に限ってきました。真数を負の数にした場合と、変数を複素数まで広げた場合について、本単元がどこまでを扱うかを述べます。

注意 3.1 (負の数の対数と、変数を複素数に広げた場合).§B3.5 定義 1.2は真数を正の数に限っている。したがってlog⁡(−1)\log(-1)は、実数の範囲では定まらない。

変数を複素数まで広げた指数関数を定めると、すべての実数θ\thetaについて

eiθ=cos⁡θ+isin⁡θe^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta

が成り立つ。ここでiiは虚数単位である。θ=π\theta=\piと置くとeiπ=−1e^{i\pi}=-1となり、これをeiπ+1=0e^{i\pi}+1=0の形に書いたものをオイラーの等式という。この等式を§B3.5 定義 1.2と同じ形で読むとlog⁡(−1)=iπ\log(-1)=i\piとなる。しかしθ=3π\theta=3\piと置いてもe3iπ=−1e^{3i\pi}=-1となるので、同じ読み方をすればlog⁡(−1)=3iπ\log(-1)=3i\piとなる。すなわち、変数を複素数に広げると、対数の値は一つに定まらない。

本記事は、以上を形式的な計算と、よく知られた等式の紹介として述べるにとどめる。複素数を変数とする指数関数の定義、上の等式の証明、および対数の値が一つに定まらないことの扱いは、「複素解析」が与える。本記事は、これらを後続の主張の根拠に用いない。

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