1 exの導関数
定理 1.1 (exの導関数). すべての実数xについて、関数f(x)=exは微分可能であり
(ex)′=exが成り立つ。
証明.§B3.7 定理 1.1を底eに適用すると、0でない実数hについて
hex+h−ex=ex⋅heh−1です。§B3.7 定義 2.3により、hを0に近づけたときのheh−1の極限は1です。よって§B3.7 定理 1.1の後半により、fはすべての実数xで微分可能であり、f′(x)=1⋅ex=exです。▨
eは、この結論が成り立つように定めた底です。導関数を求めた結果として(ex)′=exが偶然に現れたのではなく、極限が1になる底を選んだことが、この等式の根拠そのものです。
定理 1.2 (exが満たす二つの条件). 関数y=exは、すべての実数xについてy′=yを満たし、かつy(0)=1を満たす。
例 1.4 (exを含む式の微分).
(e3x)′=3e3x,(xex)′=(1+x)ex,(e−x2)′=−2xe−x2である。一つ目と三つ目は§B2.10 定理 4.1による。一つ目では内側の関数をg(x)=3x、外側の関数をf(u)=euとしてf′(g(x))g′(x)=e3x⋅3を得る。三つ目ではg(x)=−x2としてe−x2⋅(−2x)を得る。二つ目は§B2.10 定理 2.1により1⋅ex+x⋅ex=(1+x)exである。
例 1.5 (y=exの接線). 点(0,1)におけるy=exの接線を求める。定理 1.1により接線の傾きはe0=1であり、接点は(0,1)であるから、接線の方程式はy=1+1⋅(x−0)、すなわちy=x+1である。
同じく、点(1,e)における接線の傾きはe1=eであり、接線の方程式はy=e+e(x−1)=exである。この接線は原点を通る。
2 一般の底の指数関数の導関数
一般の底a>0については、aをeの累乗として書き直してから微分します。そのように書き直すことができる根拠は、exの値域が正の数全体であり、かつ単射であることです。
定理 2.1 (正の数をeの累乗として表す).a>0とする。ec=aを満たす実数cが、ただ一つ存在する。
証明.§B3.3 定理 6.1の 4 により
ax=(ec)x=ecxです。内側の関数をg(x)=cx、外側の関数をf(u)=euとすると、gはすべての実数で微分可能でg′(x)=cであり、fは定理 1.1によりすべての実数で微分可能でf′(u)=euです。§B2.10 定理 4.1により
(ax)′=(ecx)′=ecx⋅c=caxです。▨
例 2.4 (一般の底の場合の計算).c2をec2=2を満たす実数とすると、公式 2.2により(2x)′=c22xである。c2の値は0.6931⋯であり、これは§B3.7 例 1.2の表でh2h−1の値が近づいていた数である。実際、§B3.7 定理 1.1により(2x)′のx=0での値はlimh→0h2h−1であり、いま求めた式にx=0を代入した値はc2である。
c3をec3=3を満たす実数とすると、§B3.3 定理 6.1の 4 により9x=(32)x=(3x)2であり、9=e2c3であるから、公式 2.2により(9x)′=2c39xである。
3 多項式による下からの評価
(ex)′=exという性質は、exの大きさを多項式で下から押さえることにも使えます。同じ操作を繰り返すたびに評価が一段ずつ精しくなる形になります。
定理 3.1 (exの多項式による下からの評価).nを非負整数とする。x≥0を満たすすべての実数xについて
ex≥k=0∑nk!xk=1+x+2!x2+⋯+n!xnが成り立つ。
証明.gn(x)=ex−k=0∑nk!xkとおき、x≥0でgn(x)≥0であることをnについての数学的帰納法で示します。
n=0のとき。g0(x)=ex−1です。定理 1.1によりg0′(x)=ex>0ですからg0は狭義単調増加であり、g0(0)=e0−1=0です。よってx≥0でg0(x)≥0です。
n=mのときに成り立つと仮定して、n=m+1のときを示します。(k!xk)′=(k−1)!xk−1(k≥1)ですから、定理 1.1とあわせて
gm+1′(x)=ex−k=1∑m+1(k−1)!xk−1=ex−k=0∑mk!xk=gm(x)です。帰納法の仮定によりx≥0でgm(x)≥0ですから、gm+1はx≥0で広義単調増加です。またgm+1(0)=1−1=0です。よってx≥0でgm+1(x)≥gm+1(0)=0となります。▨