§B3.1有理数乗

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整数乗ama^mは、aaを掛け合わせる回数によって定まります。一方、82/38^{2/3}のような有理数乗には累乗根が必要であり、2/3=4/62/3=4/6のどちらの表示を用いても同じ値になることを確かめなければなりません。

有理数乗は、整数乗から実数乗へ指数を広げるための基本的な段階です。本記事では底を正の数に限り、正の累乗根を用いて分数表示によらない有理数乗を定め、整数乗の指数法則とx>0x>0における微分公式が引き継がれることを示します。

1 整数乗と、底に置く条件

出発点となる整数乗の定め方を確かめます。

定義 1.1 (整数乗).aaを00でない実数とする。正の整数mmに対して、aaをmm個掛け合わせた値をama^{m}と書く。さらに

a0=1,a−m=1ama^{0} = 1, \qquad a^{-m} = \frac{1}{a^{m}}

と定める。

定理 1.2 (整数乗の指数法則).aa、bbを00でない実数とし、mm、kkを整数とする。このとき次が成り立つ。

  1. amak=am+ka^{m}a^{k} = a^{m+k}
  2. (am)k=amk(a^{m})^{k} = a^{mk}
  3. (ab)m=ambm(ab)^{m} = a^{m}b^{m}

証明.u,vu,vを非負整数とする。auava^ua^vはaaをu+vu+v個掛けた値であるから

auav=au+va^ua^v=a^{u+v}

となる。ここでは指数が00の場合にa0=1a^0=1を用いる。この等式と負の整数乗の定義から、非負整数u,vu,vについて

au−v=auava^{u-v}=\frac{a^u}{a^v}

を得る。実際、u≥vu\ge vならau=au−vava^u=a^{u-v}a^vであり、u<vu<vならav=av−uaua^v=a^{v-u}a^uである。

m,km,kを任意の整数とする。m+N≥0m+N\ge0、k+N≥0k+N\ge0を満たす非負整数NNを取ると、上の二式により

amak=am+NaNak+NaN=am+k+2Na2N=am+ka^ma^k =\frac{a^{m+N}}{a^N}\frac{a^{k+N}}{a^N} =\frac{a^{m+k+2N}}{a^{2N}} =a^{m+k}

となる。これで第一の法則が任意の整数指数について成り立つ。

k≥0k\ge0のとき、(am)k(a^m)^kはama^mをkk個掛けた値であり、第一の法則を繰り返すと(am)k=amk(a^m)^k=a^{mk}となる。k=−l<0k=-l<0のときは

(am)k=1(am)l=1aml=a−ml=amk(a^m)^k=\frac1{(a^m)^l}=\frac1{a^{ml}}=a^{-ml}=a^{mk}

である。したがって第二の法則も任意の整数kkについて成り立つ。

m≥0m\ge0のとき、(ab)m(ab)^mの因子を並べ替えると(ab)m=ambm(ab)^m=a^mb^mとなる。m=−l<0m=-l<0のときは

(ab)m=1(ab)l=1albl=a−lb−l=ambm(ab)^m=\frac1{(ab)^l}=\frac1{a^lb^l}=a^{-l}b^{-l}=a^mb^m

である。したがって第三の法則も任意の整数mmについて成り立つ。▨

指数を有理数へ広げるとき、底に置くことができる数は限られます。

注意 1.3 (底を正の数に限る理由).a=0a=0のときは、0−m=10m0^{-m} = \dfrac{1}{0^{m}}の右辺の分母が00になるので、負の整数を指数とする累乗が定まらない。

a<0a<0のときは、分母が偶数である既約分数の指数に対応する累乗根が実数の範囲に無い。たとえば(−2)1/2(-2)^{1/2}を「2乗して−2-2になる実数」として定めようとしても、実数の2乗は00以上であるから、そのような実数は存在しない。

既約分数の分母が奇数である有理数だけに限れば、負の底についても値を定めることができる。たとえば、(−8)1/3=−2(-8)^{1/3}=-2と定めることができる。しかし、13=26\dfrac13=\dfrac26と書き換えると、分母が偶数の表示には実数の6乗根を用いることができない。したがって、分数のすべての表示に同じ定義式を適用して有理数全体へ広げることはできない。本記事は、指数の表示によらない一つの定義を有理数全体に与えるため、底をa>0a>0に限る。

負の底に対して奇数分母の既約分数だけを扱う部分的な定義は、本記事の範囲外である。

2 累乗根

有理数乗を定めるために、正の数aaと正の整数nnに対して、nn乗するとaaになる正の数を用います。この数をnn乗根と呼んでan\sqrt[n]{a}と書くことと、nn乗根の積・商・累乗の計算は、「絶対値と根号の計算」が定め、証明しています。本節は、それらを引いたうえで、同記事が本記事へ委ねた一つの事実を示します。

同記事は、nn乗するとaaになる正の実数が二つ以上は無いことを示す一方、そのような実数が存在することについては、証明を本記事へ委ねています。本記事は、この存在を中間値の定理から示します。

定理 2.1 (正の数の累乗根).nnを正の整数とする。

  1. 0<x<y0<x<yならばxn<ynx^{n}<y^{n}である。したがって、正の実数xx、yyについて、xn=ynx^{n}=y^{n}ならばx=yx=yである。
  2. 正の実数aaに対して、bn=ab^{n}=aを満たす正の実数bbがただ一つ存在する。

証明.nnを正の整数とする。§A1.2 定理 2.1により、0≤x<y0\le x<yならばxn<ynx^n<y^nである。したがって第一の主張が成り立ち、bn=ab^n=aを満たす正の実数bbは二つ以上存在しない。

a>0a>0を取り、f(t)=tnf(t)=t^nと置く。関数ffは閉区間[0,1+a][0,1+a]で連続であり、

f(0)=0<a<(1+a)n=f(1+a)f(0)=0<a<(1+a)^n=f(1+a)

を満たす。§B1.10 定理 5.1により、f(b)=af(b)=aを満たすb∈(0,1+a)b\in(0,1+a)が存在する。先に示した一意性と合わせると、第二の主張が従う。▨

存在が示されたので、記号 n\sqrt[n]{\ }の意味を確かめておきます。次の定義は「絶対値と根号の計算」が§A1.2 定義 5.1として与えたものであり、本記事はこれをそのまま用います。

定義 2.2 (累乗根).a>0a>0とし、nnを正の整数とする。定理 2.1の 2 によって定まる、bn=ab^{n}=aを満たすただ一つの正の実数bbをan\sqrt[n]{a}と書き、aaの nn乗根という。n=2n=2のときはa\sqrt{a}と書く。

注意 2.3 (負の値をとる累乗根).a>0a>0とし、nnを正の整数とする。nnが偶数のとき、bn=ab^{n}=aを満たす実数はan\sqrt[n]{a}と−an-\sqrt[n]{a}の二つである。記号 n\sqrt[n]{\ }は、そのうち正のほうだけを表す。nnが奇数のときは、bn=ab^{n}=aを満たす実数はan\sqrt[n]{a}だけである。nnの偶奇による違いと、記号をa>0a>0の場合にだけ用いるという約束は、§A1.2 注意 5.2にある。

累乗根の積・商・累乗の計算は、§A1.2 公式 5.3として「絶対値と根号の計算」が証明しています。同記事が扱う指数は正の整数なので、本記事は、指数が00と負の整数である場合を含む形へ広げ、有理数乗の計算で用いる三つの等式にまとめます。

定理 2.4 (累乗根の計算).a>0a>0、b>0b>0とし、mm、nnを正の整数、kkを整数とする。このとき次が成り立つ。

  1. (an)k=akn\left(\sqrt[n]{a}\right)^{k} = \sqrt[n]{a^{k}}
  2. an bn=abn\sqrt[n]{a}\,\sqrt[n]{b} = \sqrt[n]{ab}
  3. (amn)m=an\left(\sqrt[mn]{a}\right)^{m} = \sqrt[n]{a}

証明.§A1.2 公式 5.3の積の法則により

anbn=abn\sqrt[n]{a}\sqrt[n]{b}=\sqrt[n]{ab}

となる。

kkが正の整数である場合、同じ定理の累乗の法則により(an)k=akn(\sqrt[n]{a})^k=\sqrt[n]{a^k}である。k=0k=0の場合は、1n=11^n=1と定理 2.1の一意性により1n=1\sqrt[n]{1}=1であるから、両辺は11になる。k=−l<0k=-l<0の場合、正の整数llに対する結果と整数乗の定義により

(an)k=1(an)l=1aln\left(\sqrt[n]{a}\right)^k =\frac1{(\sqrt[n]{a})^l} =\frac1{\sqrt[n]{a^l}}

となる。一方、同じ定理の商の法則から

akn=1aln=1naln=1aln\sqrt[n]{a^k} =\sqrt[n]{\frac1{a^l}} =\frac{\sqrt[n]{1}}{\sqrt[n]{a^l}} =\frac1{\sqrt[n]{a^l}}

となるので、第一の法則は負の整数kkについても成り立つ。

最後に、§A1.2 公式 5.3の入れ子の根についての法則からanm=amn\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}}=\sqrt[mn]{a}である。この等式の両辺をmm乗すると

(amn)m=(anm)m=an\left(\sqrt[mn]{a}\right)^m =\left(\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}}\right)^m =\sqrt[n]{a}

となり、第三の法則を得る。▨

3 有理数乗の定義

有理数は、整数を正の整数で割った形に書くことができます。この形を用いて有理数乗を定めます。

定義 3.1 (有理数乗).a>0a>0とする。整数mmと正の整数nnに対して

am/n=(an)ma^{m/n} = \left(\sqrt[n]{a}\right)^{m}

と定める。

一つの有理数を分数で表す表し方は一通りではありません。23\dfrac23は46\dfrac46とも書くことができます。したがって定義 3.1が値を定めるためには、どの表し方を選んでも同じ値になることを示す必要があります。

定理 3.2 (有理数乗の値は分数の表し方によらない).a>0a>0とする。整数mm、m′m'と正の整数nn、n′n'がmn=m′n′\dfrac{m}{n} = \dfrac{m'}{n'}を満たすならば

(an)m=(an′)m′\left(\sqrt[n]{a}\right)^{m} = \left(\sqrt[n']{a}\right)^{m'}

である。

証明.x=(an)mx=(\sqrt[n]{a})^m、y=(an′)m′y=(\sqrt[n']{a})^{m'}と置く。累乗根は正であるから、x,y>0x,y>0である。

定理 1.2により

xnn′=((an)n)mn′=amn′,ynn′=((an′)n′)m′n=am′nx^{nn'}=\left((\sqrt[n]{a})^n\right)^{mn'}=a^{mn'},\qquad y^{nn'}=\left((\sqrt[n']{a})^{n'}\right)^{m'n}=a^{m'n}

となる。仮定m/n=m′/n′m/n=m'/n'からmn′=m′nmn'=m'nであるため、xnn′=ynn′x^{nn'}=y^{nn'}を得る。nn′nn'乗は正の実数上で単射であるから、定理 2.1によりx=yx=yである。▨

例 3.3 (有理数乗の計算).83=2\sqrt[3]{8}=2であるから82/3=(83)2=22=48^{2/3} = \left(\sqrt[3]{8}\right)^{2} = 2^{2} = 4である。23=46\dfrac23 = \dfrac46という表し方で計算しても、86=2\sqrt[6]{8}=\sqrt{2}であるから(86)4=(2)4=4\left(\sqrt[6]{8}\right)^{4} = \left(\sqrt{2}\right)^{4} = 4となり、値は変わらない。

164=2\sqrt[4]{16}=2であるから16−3/4=(164)−3=2−3=1816^{-3/4} = \left(\sqrt[4]{16}\right)^{-3} = 2^{-3} = \dfrac18である。

4 有理数乗の指数法則

整数乗について成り立っていた三つの等式が、指数を有理数にしても成り立ちます。

定理 4.1 (有理数乗の指数法則).a>0a>0、b>0b>0とし、rr、ssを有理数とする。このときar>0a^{r}>0であり、次が成り立つ。

  1. aras=ar+sa^{r}a^{s} = a^{r+s}
  2. (ar)s=ars\left(a^{r}\right)^{s} = a^{rs}
  3. (ab)r=arbr(ab)^{r} = a^{r}b^{r}

証明. はじめにar>0a^{r}>0を示す。rrをmn\dfrac{m}{n}(mmは整数、nnは正の整数)と表すとar=(an)ma^{r} = \left(\sqrt[n]{a}\right)^{m}であり、an>0\sqrt[n]{a}>0であるからar>0a^{r}>0である。

1 を示す。定理 3.2により、rrとssを共通の分母をもつ分数r=pnr = \dfrac{p}{n}、s=qns = \dfrac{q}{n}(pp、qqは整数、nnは正の整数)で表して計算してよい。定理 1.2により

aras=(an)p(an)q=(an)p+q=a(p+q)/n=ar+sa^{r}a^{s} = \left(\sqrt[n]{a}\right)^{p}\left(\sqrt[n]{a}\right)^{q} = \left(\sqrt[n]{a}\right)^{p+q} = a^{(p+q)/n} = a^{r+s}

である。

2 を示す。r=pnr = \dfrac{p}{n}、s=qms = \dfrac{q}{m}(pp、qqは整数、mm、nnは正の整数)と表す。まずarm=ap/(mn)\sqrt[m]{a^{r}} = a^{p/(mn)}であることを確かめる。ap/(mn)=(amn)pa^{p/(mn)} = \left(\sqrt[mn]{a}\right)^{p}は正であり、定理 1.2と定理 2.4の 3 により

((amn)p)m=((amn)m)p=(an)p=ar\left(\left(\sqrt[mn]{a}\right)^{p}\right)^{m} = \left(\left(\sqrt[mn]{a}\right)^{m}\right)^{p} = \left(\sqrt[n]{a}\right)^{p} = a^{r}

である。mm乗してara^{r}になる正の実数はただ一つであるから、arm=ap/(mn)\sqrt[m]{a^{r}} = a^{p/(mn)}である。したがって

(ar)s=(arm)q=((amn)p)q=(amn)pq=apq/(mn)=ars\left(a^{r}\right)^{s} = \left(\sqrt[m]{a^{r}}\right)^{q} = \left(\left(\sqrt[mn]{a}\right)^{p}\right)^{q} = \left(\sqrt[mn]{a}\right)^{pq} = a^{pq/(mn)} = a^{rs}

である。

3 を示す。r=pnr = \dfrac{p}{n}と表すと、定理 2.4の 2 と定理 1.2により

(ab)r=(abn)p=(an bn)p=(an)p(bn)p=arbr(ab)^{r} = \left(\sqrt[n]{ab}\right)^{p} = \left(\sqrt[n]{a}\,\sqrt[n]{b}\right)^{p} = \left(\sqrt[n]{a}\right)^{p}\left(\sqrt[n]{b}\right)^{p} = a^{r}b^{r}

である。▨

指数を大きくしたときに値がどちらへ動くかは、底が11より大きいか小さいかで決まります。この性質は、指数を実数へ広げるときに用います。

定理 4.2 (有理数乗の狭義単調性).a>0a>0とし、rr、ssをr<sr<sを満たす有理数とする。

  1. a>1a>1ならばar<asa^{r} < a^{s}である。
  2. a=1a=1ならば1r=1s=11^{r} = 1^{s} = 1である。
  3. 0<a<10<a<1ならばar>asa^{r} > a^{s}である。

証明. まず、a>1a>1と正の有理数ttについてat>1a^{t}>1であることを示す。t=pnt = \dfrac{p}{n}(pp、nnは正の整数)と表す。an≤1\sqrt[n]{a} \le 1と仮定すると、定理 2.1の 1 によりa=(an)n≤1n=1a = \left(\sqrt[n]{a}\right)^{n} \le 1^{n} = 1となり、a>1a>1に反する。よってan>1\sqrt[n]{a}>1であり、ppが正の整数であるからat=(an)p>1a^{t} = \left(\sqrt[n]{a}\right)^{p} > 1である。

1 を示す。s−rs-rは正の有理数であるからas−r>1a^{s-r}>1である。定理 4.1の 1 によりas=aras−ra^{s} = a^{r}a^{s-r}であり、ar>0a^{r}>0であるからas>ar⋅1=ara^{s} > a^{r}\cdot 1 = a^{r}である。

2 を示す。正の整数nnについて1n=11^{n}=1であるから、1n=1\sqrt[n]{1}=1である。r=pnr = \dfrac{p}{n}と表すと1r=(1n)p=1p=11^{r} = \left(\sqrt[n]{1}\right)^{p} = 1^{p} = 1であり、ssについても同じ計算で1s=11^{s}=1である。

3 を示す。0<a<10<a<1のとき1a>1\dfrac1a>1である。定理 4.1の 3 によりar(1a)r=(a⋅1a)r=1r=1a^{r}\left(\dfrac1a\right)^{r} = \left(a\cdot\dfrac1a\right)^{r} = 1^{r} = 1であるからar=1(1/a)ra^{r} = \dfrac{1}{(1/a)^{r}}である。r<sr<sと 1 により(1a)r<(1a)s\left(\dfrac1a\right)^{r} < \left(\dfrac1a\right)^{s}であり、両辺は正であるから、逆数を取ると不等号の向きが変わってar>asa^{r} > a^{s}である。▨

例 4.3 (大小の比較).21/22^{1/2}、22/32^{2/3}、23/52^{3/5}の大小を比べる。指数を通分すると12=1530\dfrac12 = \dfrac{15}{30}、23=2030\dfrac23 = \dfrac{20}{30}、35=1830\dfrac35 = \dfrac{18}{30}であるから、指数の大小は12<35<23\dfrac12 < \dfrac35 < \dfrac23である。底が2>12>1であるから、定理 4.2の 1 により21/2<23/5<22/32^{1/2} < 2^{3/5} < 2^{2/3}である。

5 有理数乗の導関数

有理数乗を定義し、その値が指数の分数表示によらないことを示したので、xxを変数とする有理数乗の導関数を求めます。整数乗の導関数と合成関数の微分法は「積・商・合成関数の微分」が証明しています。

定理 5.1 (nn乗根の導関数).nnを正の整数とする。x>0x > 0を満たすすべてのxxについて、v=xnv = \sqrt[n]{x}と置くと

(xn)′=1n v n−1\left(\sqrt[n]{x}\right)' = \frac{1}{n\,v^{\,n-1}}

が成り立つ。

証明.n=1n=1のときはx1=x\sqrt[1]{x}=xであるから主張は成り立つ。以下ではn≥2n\ge2とする。

x>0x > 0を固定し、v=xnv = \sqrt[n]{x}と置く。0<∣h∣<x0 < |h| < xを満たすhhをとるとx+h>0x + h > 0であるから、u=x+hnu = \sqrt[n]{x+h}と置くことができる。このときu>0u > 0、v>0v > 0、un=x+hu^{n} = x+h、vn=xv^{n} = xである。因数分解

un−vn=(u−v)(u n−1+u n−2v+⋯+u v n−2+v n−1)u^{n} - v^{n} = (u-v)\left(u^{\,n-1} + u^{\,n-2}v + \cdots + u\,v^{\,n-2} + v^{\,n-1}\right)

の右辺にある第二の因子をSSと書く。u>0u > 0かつv>0v > 0であるからSSの各項は正であり、とくにS≥v n−1>0S \ge v^{\,n-1} > 0である。un−vn=hu^{n} - v^{n} = hであるから

∣u−v∣=∣h∣S≤∣h∣v n−1|u - v| = \frac{|h|}{S} \le \frac{|h|}{v^{\,n-1}}

となり、h→0h \to 0のときuuはvvに近づく。またh≠0h \ne 0のときun≠vnu^{n} \ne v^{n}であるからu≠vu \ne vであり、差の商は

x+hn−xnh=u−vun−vn=1S\frac{\sqrt[n]{x+h}-\sqrt[n]{x}}{h} = \frac{u-v}{u^{n}-v^{n}} = \frac{1}{S}

と書き直される。h→0h \to 0のときuuがvvに近づくので、SSのnn個の各項はいずれもv n−1v^{\,n-1}に近づき、SSはn v n−1n\,v^{\,n-1}に近づく。n v n−1≠0n\,v^{\,n-1} \ne 0であるから、差の商は1n v n−1\dfrac{1}{n\,v^{\,n-1}}に近づく。▨

定理 5.2 (有理数乗の導関数).rrを有理数とする。x>0x > 0を満たすすべてのxxについて

(x r)′=r x r−1\left(x^{\,r}\right)' = r\,x^{\,r-1}

が成り立つ。

証明.r=mnr = \dfrac{m}{n}(mmは整数、nnは正の整数)と表す。x>0x > 0に対してv(x)=xnv(x) = \sqrt[n]{x}と置くと、定義 3.1によりx r=v(x)mx^{\,r} = v(x)^{m}である。

x>0x > 0のときv(x)>0v(x) > 0であるから、§B2.10 定理 5.1により、ttの関数tmt^{m}はt=v(x)t = v(x)で微分可能であり、その導関数の値はm v(x) m−1m\,v(x)^{\,m-1}である。vvはx>0x > 0で微分可能であって値が正であるから、§B2.10 定理 4.1と定理 5.1により

(x r)′=m v(x) m−1⋅1n v(x) n−1=mn v(x) m−n\left(x^{\,r}\right)' = m\,v(x)^{\,m-1}\cdot\frac{1}{n\,v(x)^{\,n-1}} = \frac{m}{n}\,v(x)^{\,m-n}

である。一方、r−1=m−nnr - 1 = \dfrac{m-n}{n}であるから、定義 3.1によりx r−1=v(x) m−nx^{\,r-1} = v(x)^{\,m-n}である。よって(x r)′=r x r−1\left(x^{\,r}\right)' = r\,x^{\,r-1}である。▨

注意 5.3 (底を正の数に限る理由).定理 5.2はx>0x > 0についての主張である。指数が整数でないとき、負の数の有理数乗は実数の範囲でつねに定まるわけではない。たとえばx=−1x = -1、r=12r = \dfrac12の場合、t2=−1t^{2} = -1を満たす実数ttは存在しない。また、この主張をx=0x = 0まで含めた形へ広げることもできない。rrが0<r<10 < r < 1を満たす有理数のとき、導関数r x r−1r\,x^{\,r-1}の値はx→+0x \to +0で限りなく大きくなるからである。

例 5.4 (有理数乗の導関数を組み合わせる).(1)(1)x>0x > 0とし、y=x3xy = x^{3}\sqrt{x}とする。§B2.10 定理 2.1と定理 5.2により

y′=3x2⋅x1/2+x3⋅12x−1/2=3x5/2+12x5/2=72x5/2y' = 3x^{2}\cdot x^{1/2} + x^{3}\cdot\frac12 x^{-1/2} = 3x^{5/2} + \frac12 x^{5/2} = \frac72 x^{5/2}

である。y=x7/2y = x^{7/2}と書き直してから定理 5.2を用いてもy′=72x5/2y' = \dfrac72 x^{5/2}となり、二つの計算は一致する。

(2)(2)y=x2+1y = \sqrt{x^{2}+1}とする。すべての実数xxについてx2+1>0x^{2}+1 > 0であるから、外側をt>0t > 0におけるt1/2t^{1/2}、内側をx2+1x^{2}+1とみて§B2.10 定理 4.1を用いることができて

y′=12(x2+1)−1/2⋅2x=xx2+1y' = \frac12 (x^{2}+1)^{-1/2}\cdot 2x = \frac{x}{\sqrt{x^{2}+1}}

である。

前提記事