§B3.10対数関数の微分

最終更新

「自然対数」は、eeを底とする対数を自然対数と定め、eeを底とする指数関数と自然対数が互いに逆の対応であることを示しました(§B3.9 定理 1.3)。本記事は、この逆の対応と、合成関数の微分法から導く逆関数の微分法を用いて、正の数xxについて

(log⁡x)′=1x(\log x)' = \frac{1}{x}

が成り立つことを示します。

そのうえで、三つのことを扱います。第一に、対数関数の導関数から、指数関数と対数関数の基本極限を求めます。第二に、底がeeでない場合を扱います。「指数関数の微分」は、ec=ae^{c}=aを満たす実数ccを用いて(ax)′=c ax\left(a^{x}\right)' = c\,a^{x}と述べていましたが、このccがlog⁡a\log aに等しいことを確かめ、底の変換公式から一般の底の対数の導関数を求めます。第三に、積、商、累乗が入り混じった式や、指数に変数が現れる式を、両辺の対数をとってから微分する方法を扱います。

合成関数の微分法と、積・商の微分法は「積・商・合成関数の微分」が扱います。本記事は、これらを対数関数へ適用します。

1 逆関数の微分法

ffの逆関数をggとすると、ffの定義域のすべての点xxについてg(f(x))=xg(f(x))=xが成り立ちます。この等式の両辺を合成関数の微分法によって微分すると、ggの導関数をffの導関数から求める式が得られます。

定理 1.1 (逆関数の微分法).II、JJを開区間とし、f:I→Jf:I\to Jを全単射とし、g:J→Ig:J\to Iをその逆関数とする。aaをIIの点とし、b=f(a)b=f(a)と置く。ffがaaで微分可能であり、ggがbbで微分可能であるとする。このときf′(a)≠0f'(a)\ne0であり

g′(b)=1f′(a)g'(b) = \frac{1}{f'(a)}

が成り立つ。

証明.ggはffの逆関数ですから、§B2.7 定理 3.1により、IIのすべての点xxについてg(f(x))=xg(f(x)) = xです。左辺は、IIで定義されたffとJJで定義されたggの合成であり、IIのすべての点xxについてf(x)∈Jf(x)\in Jです。ffはaaで微分可能であり、ggはf(a)=bf(a)=bで微分可能ですから、§B2.10 定理 4.1により合成関数はaaで微分可能であり、その微分係数はg′(f(a)) f′(a)=g′(b) f′(a)g'(f(a))\,f'(a) = g'(b)\,f'(a)です。

等式g(f(x))=xg(f(x))=xの右辺は、xxにxx自身を対応させる関数です。§B2.10 定理 5.1をn=1n=1に適用すると、その導関数は11ですから、点aaにおける微分係数も11です。二つの微分係数は等しいので

g′(b) f′(a)=1g'(b)\,f'(a) = 1

です。積が11であり1≠01\ne0ですから、f′(a)≠0f'(a)\ne0です。両辺をf′(a)f'(a)で割ると結論を得ます。▨

定理 1.1は、逆関数ggが微分可能であることを仮定したうえで、その導関数の値を与えるものです。本記事は、自然対数の導関数を、この定理を経由せずに差の商から直接求めます。そのために必要なのは、対数関数が連続であることだけです。逆関数が連続であることは、狭義単調性と、中間値の定理から得られる全射性から従います。

定理 1.2 (狭義単調な全単射の逆関数は連続である).II、JJを開区間とし、f:I→Jf:I\to Jを狭義単調増加な全単射とする。このとき、逆関数g:J→Ig:J\to Iは狭義単調増加であり、JJのすべての点で連続である。

証明.ggが狭義単調増加であることを示します。y1<y2y_{1}<y_{2}をJJの点とし、x1=g(y1)x_{1}=g(y_{1})、x2=g(y2)x_{2}=g(y_{2})と置きます。もしx1≥x2x_{1}\ge x_{2}ならば、ffが狭義単調増加であることからy1=f(x1)≥f(x2)=y2y_{1}=f(x_{1})\ge f(x_{2})=y_{2}となり、y1<y2y_{1}<y_{2}に反します。よってx1<x2x_{1}<x_{2}です。

次に連続性を示します。JJの点bbを取り、c=g(b)c=g(b)と置きます。c−δc-\deltaとc+δc+\deltaがともにIIに属するように正の数δ\deltaを取ります。ffは狭義単調増加ですからf(c−δ)<b<f(c+δ)f(c-\delta)<b<f(c+\delta)です。yyがこの二つの値のあいだにあるとき、ggが狭義単調増加であることから

c−δ=g(f(c−δ))<g(y)<g(f(c+δ))=c+δc-\delta = g(f(c-\delta)) < g(y) < g(f(c+\delta)) = c+\delta

です。すなわち、bbに十分近いyyについてはg(y)g(y)がccからδ\delta未満しか離れません。δ\deltaはいくらでも小さく取ることができるので、yyをbbに近づけるとg(y)g(y)はc=g(b)c=g(b)に近づきます。よってggはbbで連続です。▨

注意 1.3 (中間値の定理がどこで効いているか). 上の証明は、ffがIIからJJの上への写像であること、すなわちJJのどの点も値として現れることを使っている。これがなければggの定義域が区間にならず、連続性を論じることができない。本記事が適用する相手exp⁡e\exp_eについて、この全射性は§B3.5 定理 1.1が中間値の定理から示しており、中間値の定理そのものは「関数の極限」が区間縮小法から証明している。

したがって、逆関数が微分可能であることを一般に論じる必要はない。必要なのは連続性だけであり、微分可能であることは次の節で差の商から直接得られる。

2 自然対数の導関数

定理 2.1 (自然対数の導関数).log⁡\logは(0,∞)(0,\infty)のすべての点で微分可能であり、すべての正の数xxについて

(log⁡x)′=1x(\log x)' = \frac{1}{x}

が成り立つ。

証明.exp⁡e\exp_eを、実数ttにete^{t}を対応させる関数とします。eeは11でない正の数ですから(§B3.7 注意 2.4)、§B3.5 定理 1.1を底eeに適用するとexp⁡e:R→(0,∞)\exp_e:\mathbb{R}\to(0,\infty)は全単射であり、その逆関数はlog⁡:(0,∞)→R\log:(0,\infty)\to\mathbb{R}です(§B3.9 定義 1.1)。exp⁡e\exp_eは狭義単調増加ですから、定理 1.2によりlog⁡\logは(0,∞)(0,\infty)で連続です。

正の数aaを取ります。h≠0h\ne0がa+h>0a+h>0を満たすとき、§B3.5 定理 2.1により

log⁡(a+h)−log⁡ah=1hlog⁡a+ha=1hlog⁡(1+ha)\frac{\log(a+h)-\log a}{h} = \frac1h\log\frac{a+h}{a} = \frac1h\log\left(1+\frac ha\right)

です。ここでu=log⁡(1+ha)u = \log\left(1+\dfrac ha\right)と置きます。§B3.9 定理 1.3によりeu=1+hae^{u} = 1+\dfrac haですからh=a(eu−1)h = a\left(e^{u}-1\right)であり、

log⁡(a+h)−log⁡ah=ua(eu−1)=1a⋅ueu−1\frac{\log(a+h)-\log a}{h} = \frac{u}{a\left(e^{u}-1\right)} = \frac1a\cdot\frac{u}{e^{u}-1}

と書き直すことができます。h≠0h\ne0のとき1+ha≠11+\dfrac ha \ne 1であり、log⁡\logは単射ですからu≠0u\ne0です。したがってこの変形で00による割り算は起こりません。

hhを00に近づけると1+ha1+\dfrac haは11に近づき、log⁡\logが11で連続であることとlog⁡1=0\log 1 = 0(§B3.9 例 1.4)からuuは00に近づきます。eeの定め方(§B3.7 定義 2.3)により

lim⁡u→0eu−1u=1\lim_{u\to0}\frac{e^{u}-1}{u} = 1

ですから、その逆数は11に近づきます。よって

(log⁡a)′=lim⁡h→0log⁡(a+h)−log⁡ah=1a⋅1=1a(\log a)' = \lim_{h\to0}\frac{\log(a+h)-\log a}{h} = \frac1a\cdot 1 = \frac1a

です。aaは任意の正の数ですから、結論を得ます。▨

注意 2.2 (逆関数の微分法と一致すること).定理 2.1が得られたので、定理 1.1をf=exp⁡ef=\exp_e、g=log⁡g=\log、b=xb=xとして適用することができる。a=log⁡xa=\log xと置くとea=xe^{a}=xであり、§B3.8 定理 1.1によりf′(a)=ea=xf'(a)=e^{a}=xですから、同じ値1x\dfrac1xが得られる。本記事は、逆関数の微分法を導関数を求める道具としてではなく、得られた結果を確かめる形で用いる。

正の数の範囲ではxxが大きいほど1x\dfrac1xは小さくなるので、y=log⁡xy=\log xのグラフの接線の傾きは、xxが大きいほど小さくなります。傾きは正の数xxについてつねに正であり、この符号は§B3.5 定理 3.1が述べた狭義単調増加と一致します。

例 2.3 (y=log⁡xy=\log xの接線). 点(1,0)(1,0)におけるy=log⁡xy=\log xの接線を求める。§B3.9 例 1.4によりlog⁡1=0\log 1 = 0なので、点(1,0)(1,0)はこの曲線の上にある。定理 2.1により接線の傾きは11=1\dfrac11 = 1であるから、接線の方程式はy=0+1⋅(x−1)y = 0 + 1\cdot(x-1)、すなわちy=x−1y=x-1である。

「指数関数の微分」の§B3.8 例 1.5は、点(0,1)(0,1)におけるy=exy=e^{x}の接線がy=x+1y=x+1であることを求めていた。点(1,0)(1,0)と点(0,1)(0,1)は直線y=xy=xについて対称であり、二つの接線y=x−1y=x-1とy=x+1y=x+1も直線y=xy=xについて対称である。これは、y=log⁡xy=\log xのグラフがy=exy=e^{x}のグラフを直線y=xy=xについて対称に移したものであること(「対数関数」)と対応している。

点(e,1)(e,1)における接線も求める。log⁡e=1\log e = 1であり、傾きは1e\dfrac1eであるから、接線の方程式はy=1+1e(x−e)y = 1 + \dfrac1e(x-e)、すなわちy=xey=\dfrac{x}{e}である。この接線は原点を通る。

例 2.4 (対数を含む式の微分).

(log⁡(2x+1))′=22x+1,(xlog⁡x)′=log⁡x+1,(log⁡xx)′=1−log⁡xx2\bigl(\log(2x+1)\bigr)' = \frac{2}{2x+1}, \qquad \bigl(x\log x\bigr)' = \log x + 1, \qquad \left(\frac{\log x}{x}\right)' = \frac{1-\log x}{x^{2}}

である。ここで一つ目はx>−12x>-\dfrac12、二つ目と三つ目はx>0x>0で考える。

一つ目は§B2.10 定理 4.1による。内側の関数をg(x)=2x+1g(x)=2x+1、外側の関数をf(u)=log⁡uf(u)=\log uとすると、x>−12x>-\dfrac12のときg(x)>0g(x)>0であり、定理 2.1によりf′(u)=1uf'(u)=\dfrac1uであるから、f′(g(x))g′(x)=12x+1⋅2f'(g(x))g'(x) = \dfrac{1}{2x+1}\cdot2を得る。

二つ目は§B2.10 定理 2.1により1⋅log⁡x+x⋅1x=log⁡x+11\cdot\log x + x\cdot\dfrac1x = \log x + 1である。三つ目は§B2.10 定理 3.1により1x⋅x−log⁡x⋅1x2=1−log⁡xx2\dfrac{\frac1x\cdot x - \log x\cdot1}{x^{2}} = \dfrac{1-\log x}{x^{2}}である。

3 指数関数と対数関数の基本極限

定理 2.1をx=1x=1で読むと、対数関数の差の商についての極限が得られます。この極限と、eeを定めた極限(§B3.7 定義 2.3)とを並べて書きます。

公式 3.1 (指数関数と対数関数の基本極限).

lim⁡x→0log⁡(1+x)x=1,lim⁡x→0ex−1x=1\lim_{x\to0}\frac{\log(1+x)}{x} = 1, \qquad \lim_{x\to0}\frac{e^{x}-1}{x} = 1

が成り立つ。ここでlog⁡(1+x)x\dfrac{\log(1+x)}{x}は、x>−1x>-1かつx≠0x\ne0の範囲で定義される。

証明. はじめの等式を示します。log⁡1=0\log 1 = 0ですから、x>−1x>-1かつx≠0x\ne0のとき

log⁡(1+x)x=log⁡(1+x)−log⁡1x\frac{\log(1+x)}{x} = \frac{\log(1+x)-\log 1}{x}

です。右辺は、関数log⁡\logの点11における差の商です。定理 2.1によりlog⁡\logは点11で微分可能で、その微分係数は11=1\dfrac11=1ですから、xxを00に近づけたときの右辺の極限は11です。

二つ目の等式は、§B3.7 定義 2.3がeeを定めた等式そのものです。▨

4 底がeeでない場合

§B3.8 公式 2.2は、a>0a>0に対してec=ae^{c}=aを満たすただ一つの実数ccを取り、(ax)′=c ax\left(a^{x}\right)' = c\,a^{x}と述べていました。「指数関数の微分」の段階では自然対数の記号をまだ定めていなかったので、このccをccのまま書いていました。いまlog⁡\logが定まっているので、ccが何であるかを確かめます。

公式 4.1 (一般の底の指数関数の導関数).a>0a>0とする。§B3.8 定理 2.1が定める実数cc、すなわちec=ae^{c}=aを満たすただ一つの実数ccは、aaの自然対数log⁡a\log aに等しい。したがって、すべての実数xxについて

(ax)′=axlog⁡a\left(a^{x}\right)' = a^{x}\log a

が成り立つ。

証明.eeは11でない正の数ですから、§B3.5 定義 1.2を底eeに適用すると、正の数aaと実数ccについて、log⁡ea=c\log_{e}a = cであることとec=ae^{c}=aであることは同値です。§B3.9 定義 1.1によりlog⁡ea=log⁡a\log_{e}a = \log aですから、ec=ae^{c}=aを満たすただ一つの実数ccはlog⁡a\log aです。これを§B3.8 公式 2.2へ代入すると、(ax)′=axlog⁡a\left(a^{x}\right)' = a^{x}\log aを得ます。▨

例 4.2 (底がeeでない指数関数の場合).a>0a>0とする。hhを00に近づけたときのah−1h\dfrac{a^{h}-1}{h}の極限はlog⁡a\log aである。

a=1a=1のときは、どのhhについても1h−1h=0\dfrac{1^{h}-1}{h}=0であり、log⁡1=0\log 1 = 0であるから、主張が成り立つ。

a≠1a\ne1とする。§B3.9 定理 1.3によりa=elog⁡aa = e^{\log a}であり、§B3.3 定理 6.1の 4 によりah=ehlog⁡aa^{h} = e^{h\log a}である。a≠1a\ne1と§B3.5 定理 3.1によりlog⁡a≠0\log a\ne0であるから、h≠0h\ne0のとき

ah−1h=ehlog⁡a−1hlog⁡a⋅log⁡a\frac{a^{h}-1}{h} = \frac{e^{h\log a}-1}{h\log a}\cdot\log a

と書くことができる。t=hlog⁡at=h\log aと置くと、hhを00に近づけたときttは00でない値をとって00に近づく。公式 3.1の二つ目の等式によりet−1t\dfrac{e^{t}-1}{t}は11に近づくので、右辺はlog⁡a\log aに近づく。ここでは、変数を取り替えて極限を計算する手続きを認めて用いた。この手続きをε\varepsilon-δ\delta論法として精密に述べることは「ε-論法と基礎解析」が扱う。

この極限は、§B3.7 定理 1.1のL(a)L(a)にほかならない。同じ定理により(ax)′=L(a) ax\left(a^{x}\right)' = L(a)\,a^{x}であるから、いま求めたL(a)=log⁡aL(a)=\log aは公式 4.1と一致する。

底がeeでない対数の導関数は、§B3.9 公式 2.1によって自然対数へ直してから求めます。

公式 4.3 (一般の底の対数関数の導関数).a>0a>0、a≠1a\ne1とする。すべての正の数xxについて

(log⁡ax)′=1xlog⁡a\left(\log_{a}x\right)' = \frac{1}{x\log a}

が成り立つ。

証明.§B3.9 公式 2.1により、すべての正の数xxについてlog⁡ax=log⁡xlog⁡a\log_{a}x = \dfrac{\log x}{\log a}です。a≠1a\ne1と§B3.5 定理 3.1によりlog⁡a≠0\log a\ne0ですから、1log⁡a\dfrac{1}{\log a}はxxによらない定数です。したがって、定理 2.1により

(log⁡ax)′=1log⁡a⋅(log⁡x)′=1log⁡a⋅1x=1xlog⁡a\left(\log_{a}x\right)' = \frac{1}{\log a}\cdot(\log x)' = \frac{1}{\log a}\cdot\frac1x = \frac{1}{x\log a}

です。▨

例 4.4 (底が1010と22の場合).公式 4.3により、正の数xxについて

(log⁡10x)′=1xlog⁡10,(log⁡2x)′=1xlog⁡2\left(\log_{10}x\right)' = \frac{1}{x\log 10}, \qquad \left(\log_{2}x\right)' = \frac{1}{x\log 2}

である。§B3.9 例 1.4によりlog⁡1=0\log 1 = 0であり、§B3.5 定理 3.1によりlog⁡1<log⁡2<log⁡10\log 1<\log 2<\log 10であるから0<log⁡2<log⁡100<\log 2<\log 10である。したがって、同じ正の数xxにおける接線の傾きは、底が22のときのほうが底が1010のときより大きい。

a=ea=eと置くとlog⁡e=1\log e = 1であるから、公式 4.3は(log⁡x)′=1x(\log x)'=\dfrac1xとなり、定理 2.1に一致する。

5 対数微分法

積、商、累乗が入り混じった式の対数は、§B3.5 定理 2.1により、各因数の対数の和、差、定数倍に等しくなります。指数に変数が現れる式についても、§B3.5 定理 2.1の 3 により、その指数が対数の係数になります。そこで、対数をとってから微分し、最後にもとの関数を掛けます。この手順を対数微分法といいます。

公式 5.1 (対数微分法).IIを開区間とする。

  1. ggをIIで微分可能な関数とし、IIの上でf(x)=eg(x)f(x)=e^{g(x)}と定める。このときffはIIで微分可能であり、IIのすべての点xxについてf(x)>0f(x)>0、log⁡f(x)=g(x)\log f(x) = g(x)、および f′(x)=f(x) g′(x)f'(x) = f(x)\,g'(x) が成り立つ。
  2. ffをIIで微分可能な関数とし、IIのすべての点xxについてf(x)>0f(x)>0であるとする。このときxxにlog⁡f(x)\log f(x)を対応させる関数はIIで微分可能であり (log⁡f(x))′=f′(x)f(x)\bigl(\log f(x)\bigr)' = \frac{f'(x)}{f(x)} が成り立つ。

証明. 1 を示します。§B3.8 定理 1.1により、実数uuにeue^{u}を対応させる関数は実数全体で微分可能であり、その導関数はeue^{u}です。§B2.10 定理 4.1を、内側の関数gg、外側の関数u↦euu\mapsto e^{u}に適用すると、ffはIIで微分可能でf′(x)=eg(x)g′(x)=f(x)g′(x)f'(x) = e^{g(x)}g'(x) = f(x)g'(x)です。§B3.3 定理 6.1の 1 によりf(x)=eg(x)>0f(x)=e^{g(x)}>0であり、§B3.9 定理 1.3によりlog⁡f(x)=log⁡(eg(x))=g(x)\log f(x) = \log\left(e^{g(x)}\right) = g(x)です。

2 を示します。仮定により、IIのすべての点xxについてf(x)f(x)は(0,∞)(0,\infty)に属します。定理 2.1により、log⁡\logは(0,∞)(0,\infty)で微分可能で導関数は1u\dfrac1uです。§B2.10 定理 4.1を、内側の関数ff、外側の関数log⁡\logに適用すると(log⁡f(x))′=1f(x)⋅f′(x)\bigl(\log f(x)\bigr)' = \dfrac{1}{f(x)}\cdot f'(x)です。▨

微分する関数がすでに微分可能であることが分かっている場合は、2 を用いてy′y\dfrac{y'}{y}を求め、y′=y⋅y′yy'=y\cdot\dfrac{y'}{y}として導関数を得ます。指数に変数が現れる式のように、微分可能であること自体がまだ分かっていない場合は、その式をeg(x)e^{g(x)}の形に書き直して 1 を用います。

例 5.2 (積、商、累乗が入り混じった式).x>−1x>-1の範囲で

y=(x+1)2x+2(x+3)3y = \frac{(x+1)^{2}\sqrt{x+2}}{(x+3)^{3}}

の導関数を求める。x>−1x>-1のときx+1>0x+1>0、x+2>0x+2>0、x+3>0x+3>0であるからy>0y>0である。また、x+2=(x+2)1/2\sqrt{x+2}=(x+2)^{1/2}は§B3.1 定理 5.2と§B2.10 定理 4.1によりx>−2x>-2で微分可能であるから、yyは§B2.10 定理 2.1と§B2.10 定理 3.1によりx>−1x>-1で微分可能である。

§B3.5 定理 2.1を底eeに適用し、x+2=(x+2)1/2\sqrt{x+2}=(x+2)^{1/2}であることを用いると

log⁡y=2log⁡(x+1)+12log⁡(x+2)−3log⁡(x+3)\log y = 2\log(x+1) + \frac12\log(x+2) - 3\log(x+3)

である。両辺をxxで微分する。左辺は公式 5.1の 2 によりy′y\dfrac{y'}{y}であり、右辺の各項は§B2.10 定理 4.1と定理 2.1によって計算すると

y′y=2x+1+12(x+2)−3x+3\frac{y'}{y} = \frac{2}{x+1} + \frac{1}{2(x+2)} - \frac{3}{x+3}

である。したがって

y′=(x+1)2x+2(x+3)3(2x+1+12(x+2)−3x+3)y' = \frac{(x+1)^{2}\sqrt{x+2}}{(x+3)^{3}} \left(\frac{2}{x+1} + \frac{1}{2(x+2)} - \frac{3}{x+3}\right)

である。x=0x=0で値を確かめる。y=1⋅227y=\dfrac{1\cdot\sqrt2}{27}であり、括弧の中は2+14−1=542+\dfrac14-1=\dfrac54であるからy′=52108=0.06547…y'=\dfrac{5\sqrt2}{108}=0.06547\dotsである。もとの式に数値を入れるとx=0x=0ではy=0.05237…y=0.05237\dots、x=0.1x=0.1ではy=0.05885…y=0.05885\dotsであり、二つの差を0.10.1で割ると0.0648…0.0648\dotsである。いま求めた導関数の値に近い。

例 5.3 (指数に変数が現れる式).x>0x>0の範囲でy=xxy=x^{x}の導関数を求める。§B3.9 定理 1.3によりx=elog⁡xx = e^{\log x}であるから、§B3.3 定理 6.1の 4 により

xx=(elog⁡x)x=exlog⁡xx^{x} = \left(e^{\log x}\right)^{x} = e^{x\log x}

である。例 2.4のとおりg(x)=xlog⁡xg(x)=x\log xはx>0x>0で微分可能でg′(x)=log⁡x+1g'(x) = \log x + 1であるから、公式 5.1の 1 によりyyはx>0x>0で微分可能であり

y′=xx(log⁡x+1)y' = x^{x}\left(\log x + 1\right)

である。

値を確かめる。x=1x=1ではlog⁡1=0\log 1 = 0であるからy′=1⋅(0+1)=1y'=1\cdot(0+1)=1である。x=1ex=\dfrac1eではlog⁡x=−1\log x = -1であるからy′=0y'=0である。§B3.5 定理 3.1により、0<x<1e0<x<\dfrac1eではlog⁡x+1<0\log x+1<0、x>1ex>\dfrac1eではlog⁡x+1>0\log x+1>0であり、§B3.3 定理 6.1の 1 によりxx>0x^{x}>0であるから、導関数の符号はx=1ex=\dfrac1eで負から正へ変わる。したがってyyはこの点で極小値をとる。

例 5.4 (指数が実数である累乗の導関数).α\alphaを実数とする。x>0x>0の範囲でy=xαy=x^{\alpha}の導関数を求める。前の例と同じくx=elog⁡xx = e^{\log x}と§B3.3 定理 6.1の 4 によりxα=eαlog⁡xx^{\alpha} = e^{\alpha\log x}である。g(x)=αlog⁡xg(x)=\alpha\log xはx>0x>0で微分可能でg′(x)=αxg'(x)=\dfrac{\alpha}{x}であるから、公式 5.1の 1 により

(xα)′=xα⋅αx=α xα−1\left(x^{\alpha}\right)' = x^{\alpha}\cdot\frac{\alpha}{x} = \alpha\,x^{\alpha-1}

である。最後の等号は§B3.3 定理 6.1の 2 による。

「有理数乗」の§B3.1 定理 5.2は、この式を指数が有理数である場合について示していた。指数が無理数である場合も同じ式になることが、いま分かった。たとえば(x2)′=2 x2−1\left(x^{\sqrt2}\right)' = \sqrt2\,x^{\sqrt2-1}である。

注意 5.5 (対数をとる前に確かめること). 対数微分法は、log⁡y\log yを作るところから始まる。したがって、用いる区間のすべての点でy>0y>0であることを先に確かめる。

例 5.2の式を例に取る。x+2\sqrt{x+2}が実数の範囲で定まるのはx≥−2x\ge-2のときであり、分母が00にならないのはx≠−3x\ne-3のときであるから、この式が値をもつのはx≥−2x\ge-2の範囲である。この範囲でy=0y=0となるのはx=−2x=-2とx=−1x=-1の二つの点であり、その二つの点ではlog⁡y\log yを作ることができない。残る−2<x<−1-2<x<-1の範囲ではy>0y>0なので、同じ手順で導関数を求めることができる。例 5.2がx>−1x>-1の範囲を扱ったのは、y>0y>0が成り立つ区間の一方を取ったためである。

真数に負の数を許したlog⁡∣x∣\log|x|の導関数は、本記事では扱わない。

前提記事