§A5.9チェバの定理・メネラウスの定理とその逆

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チェバの定理とメネラウスの定理は、三角形に現れる共点条件と共線条件を、辺を分ける有向線分比の積によって判定します。本記事では、チェバの定理では積が11、メネラウスの定理では積が−1-1となることと、それぞれの逆を扱います。

1 この記事で証明すること

この記事では、有向線分比を導入したうえで、次を証明します。

  • チェバの定理:3頂点と対辺上の点を結ぶ3本のセバ線が1点で交わるとき、3つの有向線分比の積が+1+1になる定理(定理 5.2)とその逆(定理 5.3)を扱います。
  • メネラウスの定理:3辺上の3点が一直線上に並ぶとき、3つの有向線分比の積が−1-1になる定理(定理 6.2)とその逆(定理 6.3)を扱います。

2 有向線分比

定義 2.1 (有向線分と有向線分比). 直線llに一方の向きを定め、その向きに増加する座標xxをとる。直線上の2点X,Y\mathrm{X},\mathrm{Y}に対して、有向線分を

XY‾=x(Y)−x(X)\overline{\mathrm{XY}}=x(\mathrm{Y})-x(\mathrm{X})

と定める。また、同一直線上の点X,Y,T\mathrm{X},\mathrm{Y},\mathrm{T}について分母が00でないとき、XT‾/TY‾\overline{\mathrm{XT}}/\overline{\mathrm{TY}}を有向線分比という。

直線の向きを逆にすると分子と分母がともに−1-1倍されるので、有向線分比の値は変わりません。T\mathrm{T}が線分XY\mathrm{XY}の内部にあれば比は正、外部にあれば負です。

定理 2.2 (有向比が定める点).X≠Y\mathrm{X}\ne\mathrm{Y}とする。直線XY\mathrm{XY}上の有限な点T≠X,Y\mathrm{T}\ne\mathrm{X},\mathrm{Y}に対し

q=XT‾TY‾q=\frac{\overline{\mathrm{XT}}}{\overline{\mathrm{TY}}}

とおくと、q≠0,−1q\ne 0,-1である。逆にq≠0,−1q\ne 0,-1を満たす実数qqごとに、この式を満たす点T\mathrm{T}はただ1つ存在する。

証明.x(X)=0x(\mathrm{X})=0,x(Y)=1x(\mathrm{Y})=1となる座標をとり、x(T)=tx(\mathrm{T})=tとする。このとき

q=t1−t,t=q1+q.q=\frac{t}{1-t},\qquad t=\frac{q}{1+q}.

T≠X,Y\mathrm{T}\ne\mathrm{X},\mathrm{Y}だからq≠0q\ne0であり、有限な実数ttからはq=−1q=-1は生じない。逆にq≠0,−1q\ne0,-1なら第2式がただ1つの有限なt≠0,1t\ne0,1を与える。▨

この記事では、△ABC\triangle\mathrm{ABC}は3頂点が相異なる非退化三角形とします。また

  • D\mathrm{D}は直線BC\mathrm{BC}上でB,C\mathrm{B},\mathrm{C}と異なる点、
  • E\mathrm{E}は直線CA\mathrm{CA}上でC,A\mathrm{C},\mathrm{A}と異なる点、
  • F\mathrm{F}は直線AB\mathrm{AB}上でA,B\mathrm{A},\mathrm{B}と異なる点

とします。したがって、以下の3つの比はすべて有限で0,−10,-1ではありません。

BD‾DC‾,CE‾EA‾,AF‾FB‾.\frac{\overline{\mathrm{BD}}}{\overline{\mathrm{DC}}},\qquad \frac{\overline{\mathrm{CE}}}{\overline{\mathrm{EA}}},\qquad \frac{\overline{\mathrm{AF}}}{\overline{\mathrm{FB}}}.

内分配置の主証明では面積だけを使います。外分を含む後半の別証明では、点を位置ベクトルのアフィン係数で表し、横切る直線をアフィン関数の零点集合として表します。非退化三角形ならアフィン係数が一意に定まることも本文で証明するため、式だけを暗記する必要はありません。ベクトルの一次結合と一次独立にまだ慣れていない場合は、まず面積による主証明を読んでください。「式と計算」の対応項目は、後半の別証明を一般の線形代数の言葉で読み直すための発展です。

頂点を分点として許すと分子または分母が00になり、横切る直線が頂点を通ると2つの分点がその頂点で一致します。このような配置は、ここで述べる定理の適用外です。

定理 2.3 (内分点のチェバの定理(主定理)). 非退化三角形△ABC\triangle\mathrm{ABC}の各辺の内部点D∈BC,E∈CA,F∈AB\mathrm{D}\in\mathrm{BC},\mathrm{E}\in\mathrm{CA},\mathrm{F}\in\mathrm{AB}について、 3本の直線AD,BE,CF\mathrm{AD},\mathrm{BE},\mathrm{CF}が共点であることと、次の比の積が11であることは同値である。

BDDCCEEAAFFB=1.\frac{\mathrm{BD}}{\mathrm{DC}}\frac{\mathrm{CE}}{\mathrm{EA}}\frac{\mathrm{AF}}{\mathrm{FB}}=1.

証明.AD,BE,CF\mathrm{AD},\mathrm{BE},\mathrm{CF}の共通点をP\mathrm{P}とする。内分点へ向かう3本の線分の共通点なので、P\mathrm{P}は三角形の内部にある。三角形XYZXYZの面積を[XYZ][XYZ]と書く。D\mathrm{D}はBC\mathrm{BC}上にあるから、△ABD\triangle\mathrm{ABD}と△ACD\triangle\mathrm{ACD}のA\mathrm{A}からBC\mathrm{BC}への高さは等しく、

BDDC=[ABD][ACD]\frac{\mathrm{BD}}{\mathrm{DC}}=\frac{[ABD]}{[ACD]}

を得る。またA,P,D\mathrm{A},\mathrm{P},\mathrm{D}は一直線上にある。底辺をそれぞれAB\mathrm{AB}とAC\mathrm{AC}に固定すると、P\mathrm{P}とD\mathrm{D}から各底辺への高さの比はどちらもAP/AD\mathrm{AP}/\mathrm{AD}である。したがって

[PAB][PCA]=[DAB][DCA]=BDDC.\frac{[PAB]}{[PCA]}=\frac{[DAB]}{[DCA]}=\frac{\mathrm{BD}}{\mathrm{DC}}.

同じ議論を頂点の文字を巡回させて用いると

CEEA=[PBC][PAB],AFFB=[PCA][PBC]\frac{\mathrm{CE}}{\mathrm{EA}}=\frac{[PBC]}{[PAB]},\qquad \frac{\mathrm{AF}}{\mathrm{FB}}=\frac{[PCA]}{[PBC]}

となる。3式を掛けると面積がすべて約分され、積は11となる。

逆に積が11であるとする。線分AD\mathrm{AD}とBE\mathrm{BE}は三角形の内部の点P\mathrm{P}で交わる。直線CP\mathrm{CP}と辺AB\mathrm{AB}の交点をF′\mathrm{F}'とおくと、順方向から

BDDCCEEAAF′F′B=1\frac{\mathrm{BD}}{\mathrm{DC}}\frac{\mathrm{CE}}{\mathrm{EA}} \frac{\mathrm{AF}'}{\mathrm{F'B}}=1

を得る。仮定と比較すればAF′/F′B=AF/FB\mathrm{AF}'/\mathrm{F'B}=\mathrm{AF}/\mathrm{FB}である。線分AB\mathrm{AB}の内部でこの比をもつ点は一意だからF′=F\mathrm{F}'=\mathrm{F}であり、3本は共点である。▨

3 動かして積を見る

下の図では、横切る直線llの位置を動かせます。D,E\mathrm{D},\mathrm{E}は辺の内部、F\mathrm{F}は辺AB\mathrm{AB}の延長上にあり、前2つの比は正、最後の比は負です。

図はメネラウスの外分を含む一例であり、主定理の内分配置を直接表示するものではありません。図を動かして積が一定に見えることは予想であって、上の面積による証明の代わりにはなりません。

図を作るための座標で計算すると、3つの比は順に

−k+0.4k+3.6,k+3.63−k,3−kk+0.4-\frac{k+0.4}{k+3.6},\qquad \frac{k+3.6}{3-k},\qquad \frac{3-k}{k+0.4}

となり、個々の値は動いても積は−1-1です。ただし、図を動かした観察や有限個の数値検算は定理の証明ではありません。 ここからは、外分を含むどの非退化な配置でも成り立つことを示します。

4 有向比への拡張

頂点と対辺上の点を結ぶ直線をセバ線といいます。ここからは外分を含む配置を扱います。内分配置の面積証明とは分け、点を3頂点の係数で表すアフィン法を別証明として用います。

5 別証明:アフィン係数による有向比

定理 5.1 (アフィン係数と辺上の比).△ABC\triangle\mathrm{ABC}の平面上の任意の有限な点P\mathrm{P}は、ただ1通りに

p=αa+βb+γc,α+β+γ=1\boldsymbol{p}=\alpha\boldsymbol{a}+\beta\boldsymbol{b}+\gamma\boldsymbol{c}, \qquad \alpha+\beta+\gamma=1

と表される。P\mathrm{P}が3辺の直線上になく、AP,BP,CP\mathrm{AP},\mathrm{BP},\mathrm{CP}が対辺の直線と有限な点D,E,F\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}で交わるなら

BD‾DC‾=γβ,CE‾EA‾=αγ,AF‾FB‾=βα.\frac{\overline{\mathrm{BD}}}{\overline{\mathrm{DC}}}=\frac{\gamma}{\beta},\qquad \frac{\overline{\mathrm{CE}}}{\overline{\mathrm{EA}}}=\frac{\alpha}{\gamma},\qquad \frac{\overline{\mathrm{AF}}}{\overline{\mathrm{FB}}}=\frac{\beta}{\alpha}.

証明.p−a\boldsymbol{p}-\boldsymbol{a}は、一次独立なb−a\boldsymbol{b}-\boldsymbol{a}とc−a\boldsymbol{c}-\boldsymbol{a}の一次結合としてただ1通りに表される。係数をβ,γ\beta,\gammaとし、α=1−β−γ\alpha=1-\beta-\gammaとおけば、最初の表示の存在と一意性が従う。さらに、α=0\alpha=0であることとP\mathrm{P}が直線BC\mathrm{BC}上にあることは同値であり、他の2辺についても同様である。したがって仮定のもとでαβγ≠0\alpha\beta\gamma\ne0である。

D=AP∩BC\mathrm{D}=\mathrm{AP}\cap\mathrm{BC}を考える。もしβ+γ=0\beta+\gamma=0なら

p−a=β(b−c)\boldsymbol{p}-\boldsymbol{a} =\beta(\boldsymbol{b}-\boldsymbol{c})

となり、AP∥BC\mathrm{AP}\parallel\mathrm{BC}で有限な交点D\mathrm{D}をもたない。よってβ+γ≠0\beta+\gamma\ne0であり、

d=βb+γcβ+γ\boldsymbol{d}=\frac{\beta\boldsymbol{b}+\gamma\boldsymbol{c}}{\beta+\gamma}

と書ける。直線BC\mathrm{BC}上でB\mathrm{B}を座標00、C\mathrm{C}を座標11とすれば、D\mathrm{D}の座標はγ/(β+γ)\gamma/(\beta+\gamma)である。したがって

BD‾DC‾=γ/(β+γ)β/(β+γ)=γβ.\frac{\overline{\mathrm{BD}}}{\overline{\mathrm{DC}}} =\frac{\gamma/(\beta+\gamma)}{\beta/(\beta+\gamma)} =\frac{\gamma}{\beta}.

残り2式も文字を巡回させた同じ計算で得られる。▨

定理 5.2 (チェバの定理(有向線分比)).△ABC\triangle\mathrm{ABC}と、その3辺の直線上の有限な非頂点D,E,F\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}を上の約束どおりにとる。3本のセバ線AD,BE,CF\mathrm{AD},\mathrm{BE},\mathrm{CF}が有限な1点で交わるなら

BD‾DC‾CE‾EA‾AF‾FB‾=1.\frac{\overline{\mathrm{BD}}}{\overline{\mathrm{DC}}} \frac{\overline{\mathrm{CE}}}{\overline{\mathrm{EA}}} \frac{\overline{\mathrm{AF}}}{\overline{\mathrm{FB}}}=1.

証明. 共通の交点をP\mathrm{P}とする。非頂点という仮定からP\mathrm{P}はどの辺の直線上にもなく、各セバ線は対辺と有限な点で交わる。定理 5.1を適用すると

BD‾DC‾CE‾EA‾AF‾FB‾=γβαγβα=1.\frac{\overline{\mathrm{BD}}}{\overline{\mathrm{DC}}} \frac{\overline{\mathrm{CE}}}{\overline{\mathrm{EA}}} \frac{\overline{\mathrm{AF}}}{\overline{\mathrm{FB}}} =\frac{\gamma}{\beta}\frac{\alpha}{\gamma}\frac{\beta}{\alpha}=1.

外分点があっても、符号はこの式にすでに含まれている。▨

逆では、外分を許すと「3本が平行」という場合が現れます。これは積の条件だけでは有限な共点と区別できないため、結論に明記します。

定理 5.3 (チェバの定理の逆(外分を含む完全形)).△ABC\triangle\mathrm{ABC}とD,E,F\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}を上の約束どおりにとり、

BD‾DC‾CE‾EA‾AF‾FB‾=1\frac{\overline{\mathrm{BD}}}{\overline{\mathrm{DC}}} \frac{\overline{\mathrm{CE}}}{\overline{\mathrm{EA}}} \frac{\overline{\mathrm{AF}}}{\overline{\mathrm{FB}}}=1

とする。このとき、AD,BE,CF\mathrm{AD},\mathrm{BE},\mathrm{CF}は有限な1点で交わるか、3本が互いに平行である。とくに、3本のうち2本が平行でなければ、3本は有限な1点で交わる。

証明. 3つの比を順にr,s,tr,s,tとする。rst=1rst=1だから

α=rs,β=1,γ=r\alpha=rs,\qquad \beta=1,\qquad \gamma=r

とおけば

r=γβ,s=αγ,t=βαr=\frac{\gamma}{\beta},\qquad s=\frac{\alpha}{\gamma},\qquad t=\frac{\beta}{\alpha}

が成り立つ。3つの比は00でないのでα,β,γ\alpha,\beta,\gammaもすべて00でない。また、たとえばβ+γ=0\beta+\gamma=0ならr=−1r=-1となって定理 2.2に反するため、β+γ\beta+\gamma,γ+α\gamma+\alpha,α+β\alpha+\betaはすべて00でない。

S=α+β+γS=\alpha+\beta+\gammaとおく。まずS≠0S\ne0の場合、点P\mathrm{P}を

p=αa+βb+γcS\boldsymbol{p}= \frac{\alpha\boldsymbol{a}+\beta\boldsymbol{b}+\gamma\boldsymbol{c}}{S}

で定める。一方、有向比と定理 2.2の一意性から

d=βb+γcβ+γ\boldsymbol{d}=\frac{\beta\boldsymbol{b}+\gamma\boldsymbol{c}}{\beta+\gamma}

である。したがって

p=αa+(β+γ)dS\boldsymbol{p}= \frac{\alpha\boldsymbol{a}+(\beta+\gamma)\boldsymbol{d}}{S}

となり、A,D,P\mathrm{A},\mathrm{D},\mathrm{P}は一直線上にある。文字を巡回させればP\mathrm{P}はBE\mathrm{BE}とCF\mathrm{CF}上にもあるため、3本はP\mathrm{P}で交わる。

次にS=0S=0の場合、

v=αa+βb+γc\boldsymbol{v}=\alpha\boldsymbol{a}+\beta\boldsymbol{b}+\gamma\boldsymbol{c}

とおく。係数の和が00なのでv\boldsymbol{v}は原点の選び方によらない。また非退化三角形のアフィン係数の一意性によりv≠0\boldsymbol{v}\ne\boldsymbol{0}である。α=−(β+γ)\alpha=-(\beta+\gamma)とd\boldsymbol{d}の式から

d−a=vβ+γ\boldsymbol{d}-\boldsymbol{a} =\frac{\boldsymbol{v}}{\beta+\gamma}

を得るのでAD∥v\mathrm{AD}\parallel\boldsymbol{v}である。同様にBE∥v\mathrm{BE}\parallel\boldsymbol{v}、CF∥v\mathrm{CF}\parallel\boldsymbol{v}であり、3本は互いに平行である。以上で2つの場合を尽くした。▨

定理 5.4 (内分点だけのチェバの定理とその逆).D,E,F\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}がそれぞれ辺BC,CA,AB\mathrm{BC},\mathrm{CA},\mathrm{AB}の内部にあるとき、AD,BE,CF\mathrm{AD},\mathrm{BE},\mathrm{CF}が1点で交わることと、3有向比の積が11であることは同値である。この場合、有向比はすべて通常の長さの比に等しい。

証明. 共点なら定理 5.2により積は11である。逆に積が11なら定理 5.3が適用できる。3点が内分点ならr,s,t>0r,s,t>0なので、逆の証明で作ったα=rs\alpha=rs,β=1\beta=1,γ=r\gamma=rはすべて正であり、S>0S>0である。したがって平行の場合は起こらず、 3本は有限な1点で交わる。▨

外分を含む共点配置では、外分点の個数は偶数です。実際、各比は内分なら正、外分なら負であり、積が+1+1なら負の因子は偶数個でなければなりません。

6 別証明:アフィン関数によるメネラウスの定理

今度は3点が1本の直線上に並ぶ条件です。ここでも初等的な内分配置の主証明とは経路を分け、直線を「ある一次式の値が00になる点の集合」として表す別証明を用います。有向比は端点での値の比に変わります。

定理 6.1 (直線との交点が作る有向比). 直線llをφ(X)=0\varphi(\mathrm{X})=0と表す。ただしφ\varphiは定数でないアフィン関数、すなわち直線上で

φ((1−u)X+uY)=(1−u)φ(X)+uφ(Y)\varphi((1-u)\mathrm{X}+u\mathrm{Y}) =(1-u)\varphi(\mathrm{X})+u\varphi(\mathrm{Y})

を満たす関数とする。X,Y\mathrm{X},\mathrm{Y}はll上になく、直線XY\mathrm{XY}がllと有限な点T\mathrm{T}で交わるとき

XT‾TY‾=−φ(X)φ(Y).\frac{\overline{\mathrm{XT}}}{\overline{\mathrm{TY}}} =-\frac{\varphi(\mathrm{X})}{\varphi(\mathrm{Y})}.

証明.T=(1−u)X+uY\mathrm{T}=(1-u)\mathrm{X}+u\mathrm{Y}と書くと、有向比はu/(1−u)u/(1-u)である。一方、φ(T)=0\varphi(\mathrm{T})=0だから

(1−u)φ(X)+uφ(Y)=0.(1-u)\varphi(\mathrm{X})+u\varphi(\mathrm{Y})=0.

X,Y\mathrm{X},\mathrm{Y}はll上にないので両辺を割ることができ、u/(1−u)=−φ(X)/φ(Y)u/(1-u)=-\varphi(\mathrm{X})/\varphi(\mathrm{Y})を得る。なお、任意の直線は、その直線に垂直な非零ベクトルn\boldsymbol{n}と直線上の点X0\mathrm{X}_0を用いてφ(X)=n⋅(x−x0)\varphi(\mathrm{X})=\boldsymbol{n}\mathbin{\boldsymbol{\cdot}} (\boldsymbol{x}-\boldsymbol{x}_0)と表せる。したがってこの表示はすべての直線に使える。▨

定理 6.2 (メネラウスの定理(有向線分比)).△ABC\triangle\mathrm{ABC}とD,E,F\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}を上の約束どおりにとる。D,E,F\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}が一直線上にあるなら

BD‾DC‾CE‾EA‾AF‾FB‾=−1.\frac{\overline{\mathrm{BD}}}{\overline{\mathrm{DC}}} \frac{\overline{\mathrm{CE}}}{\overline{\mathrm{EA}}} \frac{\overline{\mathrm{AF}}}{\overline{\mathrm{FB}}}=-1.

証明. 3点D,E,F\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}を通る直線をllとし、llを零点集合にもつ定数でないアフィン関数をφ\varphiとする。もしA\mathrm{A}がll上なら、A\mathrm{A}とE\mathrm{E}を通るllは直線AC\mathrm{AC}と一致し、D=C\mathrm{D}=\mathrm{C}となって非頂点の仮定に反する。したがってA\mathrm{A}はll上になく、B,C\mathrm{B},\mathrm{C}についても同様である。定理 6.1を3辺へ巡回的に適用すると

BD‾DC‾=−φ(B)φ(C),CE‾EA‾=−φ(C)φ(A),AF‾FB‾=−φ(A)φ(B).\frac{\overline{\mathrm{BD}}}{\overline{\mathrm{DC}}} =-\frac{\varphi(\mathrm{B})}{\varphi(\mathrm{C})},\qquad \frac{\overline{\mathrm{CE}}}{\overline{\mathrm{EA}}} =-\frac{\varphi(\mathrm{C})}{\varphi(\mathrm{A})},\qquad \frac{\overline{\mathrm{AF}}}{\overline{\mathrm{FB}}} =-\frac{\varphi(\mathrm{A})}{\varphi(\mathrm{B})}.

φ(A)φ(B)φ(C)≠0\varphi(\mathrm{A})\varphi(\mathrm{B})\varphi(\mathrm{C})\ne0だから3式を掛けることができ、値はすべて約分されて3つの負号だけが残る。したがって積は−1-1である。▨

定理 6.3 (メネラウスの定理の逆).△ABC\triangle\mathrm{ABC}とD,E,F\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}を上の約束どおりにとり、

BD‾DC‾CE‾EA‾AF‾FB‾=−1\frac{\overline{\mathrm{BD}}}{\overline{\mathrm{DC}}} \frac{\overline{\mathrm{CE}}}{\overline{\mathrm{EA}}} \frac{\overline{\mathrm{AF}}}{\overline{\mathrm{FB}}}=-1

とする。このときD,E,F\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}は一直線上にある。

証明.l=DEl=\mathrm{DE}とする。D=E\mathrm{D}=\mathrm{E}なら、直線BC\mathrm{BC}と直線CA\mathrm{CA}の交点C\mathrm{C}に両方が一致するしかないが、D,E≠C\mathrm{D},\mathrm{E}\ne\mathrm{C}なので、D≠E\mathrm{D}\ne\mathrm{E}である。よってllはただ1本に定まる。直接定理の証明と同じ理由でA,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}はll上にない。

llをφ=0\varphi=0と表し、最初の2つの交点に定理 6.1を適用する。3つの比をr,s,tr,s,tと書けば

r=−φ(B)φ(C),s=−φ(C)φ(A).r=-\frac{\varphi(\mathrm{B})}{\varphi(\mathrm{C})},\qquad s=-\frac{\varphi(\mathrm{C})}{\varphi(\mathrm{A})}.

rst=−1rst=-1だから

t=−1rs=−φ(A)φ(B).t=-\frac{1}{rs}=-\frac{\varphi(\mathrm{A})}{\varphi(\mathrm{B})}.

もしl∥ABl\parallel\mathrm{AB}ならφ(A)=φ(B)\varphi(\mathrm{A})=\varphi(\mathrm{B})となりt=−1t=-1だが、これは有限なF\mathrm{F}について定理 2.2に反する。したがってllはAB\mathrm{AB}と有限な点G\mathrm{G}で交わる。定理 6.1により

AG‾GB‾=−φ(A)φ(B)=t=AF‾FB‾.\frac{\overline{\mathrm{AG}}}{\overline{\mathrm{GB}}} =-\frac{\varphi(\mathrm{A})}{\varphi(\mathrm{B})}=t =\frac{\overline{\mathrm{AF}}}{\overline{\mathrm{FB}}}.

定理 2.2により、その比をもつ直線AB\mathrm{AB}上の点はただ1つなのでG=F\mathrm{G}=\mathrm{F}である。ゆえにF\mathrm{F}はl=DEl=\mathrm{DE}上にあり、3点は一直線上にある。▨

メネラウスの配置では、外分点の個数は奇数です。積が−1-1なので負の因子が奇数個になるからです。図のような「内分2つ・外分1つ」だけでなく、3点すべてが外分点になる配置も同じ式で扱えます。

7 縮退と平行をどう扱うか

  • 三角形の退化:A,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}が一直線上にある場合、3辺の直線を区別できず、アフィン係数も一意でないため、両定理とも適用しません。
  • 分点が頂点に来る場合:比の分子が00または分母が00になります。横切る直線が頂点を通って 2分点が一致する場合もここに含まれ、適用外です。非頂点という仮定のもとではD,E,F\mathrm{D},\mathrm{E},\mathrm{F}が互いに一致することはありません。
  • チェバ型の平行:外分を許すと、積が+1+1でも3本のセバ線が互いに平行な場合があります。定理 5.3はこの場合を含む完全形です。有限な共点だけを結論したいなら、「2本が平行でない」を加えます。内分点だけなら平行の場合は起こりません。
  • メネラウス型の平行:横切る直線が三角形の1辺と平行なら、その辺との有限な交点がないため、この記事の有限点版は適用しません。射影平面で無限遠点を加えると、定理 2.2で除いた比−1-1が無限遠点に対応し、平行の場合も統一できます。

9 複比・調和点列への接続

同一直線上の4点A,B,X,Y\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{X},\mathrm{Y}に対する複比は、ひとつの規約として

(A,B;X,Y)=AX‾/XB‾AY‾/YB‾(\mathrm{A},\mathrm{B};\mathrm{X},\mathrm{Y}) =\frac{\overline{\mathrm{AX}}/\overline{\mathrm{XB}}} {\overline{\mathrm{AY}}/\overline{\mathrm{YB}}}

と定められます。つまり複比は、この記事で使った有向線分比をさらに割った量です。複比が−1-1の 4点を調和点列といい、内分点と外分点の符号が本質になります。絶対値だけの比に戻すと、どちらの側に点があるかという情報が失われ、調和性を1本の式で表せません。

チェバとメネラウスで身につけた「向きをそろえ、符号込みの比を掛ける」操作は、そのまま複比の計算へ進みます。さらに射影平面では無限遠点を加えることで、ここで別扱いした共点と平行を同じ言葉で扱えるようになります。

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