§A5.18パップスの六角形定理

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パップスの六角形定理とは、相異なる二直線の上に三点ずつを取り、二直線を交互に行き来して六角形を作ると、向かい合う辺の交点となる三点がつねに一直線上に並ぶ、という定理です。

パップスの六角形定理の主張には、長さも角も現れません。現れるのは、点が直線上にあることと、二直線が交わることだけです。証明で用いる道具も二つに限られます。一つは、一点からの射影が同一直線上の四点の複比を変えないこと(§A5.14 定理 2)であり、もう一つは、三角形の三辺上の三点が一直線上に並ぶ条件を比の積として述べたメネラウスの定理(§A5.9 定理 6.2)とその逆(§A5.9 定理 6.3)です。比はすべて有向線分比(§A5.9 定義 2.1)で扱い、内分と外分を一つの式でまとめます。

定理 1 (パップスの六角形定理(主定理)). 相異なる二直線ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2をとり、ℓ1\ell_1上に相異なる三点A1,A2,A3\mathrm{A}_1,\mathrm{A}_2,\mathrm{A}_3を、ℓ2\ell_2上に相異なる三点B1,B2,B3\mathrm{B}_1,\mathrm{B}_2,\mathrm{B}_3をとる。ℓ1\ell_1とℓ2\ell_2が交わる場合には、この六点はいずれもその交点と異なるものとする。

六角形A1B2A3B1A2B3\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2\mathrm{A}_3\mathrm{B}_1\mathrm{A}_2\mathrm{B}_3について、向かい合う辺の三つの組

(A1B2, B1A2),(B2A3, A2B3),(A3B1, B3A1)(\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2,\ \mathrm{B}_1\mathrm{A}_2),\qquad (\mathrm{B}_2\mathrm{A}_3,\ \mathrm{A}_2\mathrm{B}_3),\qquad (\mathrm{A}_3\mathrm{B}_1,\ \mathrm{B}_3\mathrm{A}_1)

が、それぞれ点X3\mathrm{X}_3,X1\mathrm{X}_1,X2\mathrm{X}_2で交わるとする。このときX1,X2,X3\mathrm{X}_1,\mathrm{X}_2,\mathrm{X}_3は一直線上にある。

下の図は、この配置を一つ描いたものです。B3\mathrm{B}_3をℓ2\ell_2に沿って動かすことができます。

図で確かめることができるのは、有限個の位置について結論が成り立つことだけです。図を動かして三点が並んで見えることは、すべての配置について三点が並ぶことの証明ではありません。本記事は、すべての配置について三点が一直線上に並ぶことを、以下で証明します。

1 六角形の辺と、一つおきの三直線

証明では、六角形の辺を一つおきに取った二つの三つ組を繰り返し使います。そこで、辺に番号を付けておきます。

定義 1.1 (六角形の辺と、一つおきの三直線).定理 1の六角形A1B2A3B1A2B3\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2\mathrm{A}_3\mathrm{B}_1\mathrm{A}_2\mathrm{B}_3の六本の辺を含む直線を、頂点の順にs1,…,s6s_1,\dots,s_6と書く。すなわち

s1=A1B2,s2=B2A3,s3=A3B1,s4=B1A2,s5=A2B3,s6=B3A1\begin{aligned} s_1&=\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2, & s_2&=\mathrm{B}_2\mathrm{A}_3, & s_3&=\mathrm{A}_3\mathrm{B}_1,\\ s_4&=\mathrm{B}_1\mathrm{A}_2, & s_5&=\mathrm{A}_2\mathrm{B}_3, & s_6&=\mathrm{B}_3\mathrm{A}_1 \end{aligned}

とする。{s1,s3,s5}\{s_1,s_3,s_5\}を奇数側の三直線、{s2,s4,s6}\{s_2,s_4,s_6\}を偶数側の三直線という。

向かい合う辺の組は、番号が33だけ離れた二本です。三つの交点は

X3=s1∩s4,X1=s2∩s5,X2=s3∩s6\mathrm{X}_3=s_1\cap s_4,\qquad \mathrm{X}_1=s_2\cap s_5,\qquad \mathrm{X}_2=s_3\cap s_6

であり、どれも奇数側の一本と偶数側の一本との交点です。

この配置は、次の二つの置き換えについて形を変えません。第一に、Ai\mathrm{A}_iとBi\mathrm{B}_iをすべてのiiについて入れ替える置き換えは、s1,s3,s5s_1,s_3,s_5をそれぞれs4,s6,s2s_4,s_6,s_2へ移すので、奇数側と偶数側を入れ替えます。この置き換えは、X1,X2,X3\mathrm{X}_1,\mathrm{X}_2,\mathrm{X}_3のそれぞれを自分自身へ移します。第二に、添字を1→2→3→11\to2\to3\to1と巡回させる置き換えは、s1→s5→s3→s1s_1\to s_5\to s_3\to s_1とs2→s6→s4→s2s_2\to s_6\to s_4\to s_2、およびX3→X1→X2→X3\mathrm{X}_3\to\mathrm{X}_1\to\mathrm{X}_2\to\mathrm{X}_3という対応を与えます。以下では、この二つの置き換えを使って場合の数を減らします。

注意 1.2 (六点を交点から離しておく理由).ℓ1\ell_1とℓ2\ell_2が点O\mathrm{O}で交わる場合に、六点がO\mathrm{O}と異なることを仮定するのは、辺を定める直線が壊れないようにするためです。仮にA1=O\mathrm{A}_1=\mathrm{O}とすると、A1\mathrm{A}_1はℓ2\ell_2上にもあるので、s1=A1B2s_1=\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2はℓ2\ell_2そのものになり、X3=s1∩s4\mathrm{X}_3=s_1\cap s_4はB1\mathrm{B}_1に一致します。六点がO\mathrm{O}と異なるという仮定からは、次の事実が従います。相異なる添字について、Ai\mathrm{A}_iが直線AjBk\mathrm{A}_j\mathrm{B}_k上にあることはなく、Bi\mathrm{B}_iが直線AkBj\mathrm{A}_k\mathrm{B}_j上にあることもありません。実際、i≠ji\ne jでAi\mathrm{A}_iが直線AjBk\mathrm{A}_j\mathrm{B}_k上にあるとすると、この直線はℓ1\ell_1上の相異なる二点を含むのでℓ1\ell_1に一致し、Bk\mathrm{B}_kがℓ1\ell_1上に来てBk=O\mathrm{B}_k=\mathrm{O}となります。この事実は、以下の証明で繰り返し用います。

2 証明の方針

出発点。X1,X2,X3\mathrm{X}_1,\mathrm{X}_2,\mathrm{X}_3は、それぞれs5s_5,s3s_3,s1s_1上にあります。奇数側の三直線s1,s3,s5s_1,s_3,s_5が三角形の三辺をなすならば、三つの交点はその三角形の三辺上に一点ずつ乗ることになるので、共線の判定にメネラウスの定理の逆(§A5.9 定理 6.3)を用いることができます。示すべきことは、三つの有向線分比の積が−1-1になることです。

中間目標。この三角形に対して、偶数側の三直線s2,s4,s6s_2,s_4,s_6と、もとの二直線ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2の、合わせて五本を横切る直線と見なし、メネラウスの定理(§A5.9 定理 6.2)を五回用います。偶数側の三本から得た三つの等式の積を、ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2から得た二つの等式の積で割ると、Ai\mathrm{A}_iとBj\mathrm{B}_jに関する六つの比がすべて約分で消え、X1,X2,X3\mathrm{X}_1,\mathrm{X}_2,\mathrm{X}_3に関する三つの比の積だけが残ります。

片づけておく二つのこと。この筋を通すには、二つの障害を先に取り除く必要があります。

第一に、向かい合う辺が平行になると交点が有限の位置になく、三角形の頂点も無限に遠ざかることがあります。この定理の主張は入射関係だけで書かれているので、射影変換で配置を移してから証明し、逆変換で戻すことができます(§A5.17 定理 6.1)。そこで、必要な点がすべて有限点になる配置へ移します。

第二に、奇数側の三直線が三角形をなさず、一点で交わることがあります。この配置は、射影変換で移しても解消しません。そこで、奇数側と偶数側が同時に一点で交わることはない、という定理を先に証明します。この証明で、一点からの射影が複比を保つことを用います。

3 配置を有限な位置へ移す

パップスの六角形定理の主張は、「指定した三点が同一の直線上にある」という入射関係だけで書かれています。射影変換は入射関係と複比を保ち、逆変換も同じものを保つので、射影変換で移した先で主張を証明すれば、もとの配置での主張が得られます(§A5.17 定理 6.1)。長さや角による結論であれば、この運び方をすることはできません。

必要なのは、配置に現れる有限個の点を、すべて無限遠点でない位置へ移すことです。

定理 3.1 (配置を有限な位置へ移すことができる). 射影平面上に有限個の点が与えられているとする。このとき、その有限個の点をすべて有限点へ移す射影変換が存在する。

証明. 与えられた点のうち、無限遠点であるものは有限個です。無限遠点は平面の一つの方向に対応するので(§A5.17 定義 1)、対応する方向も有限個です。原点のまわりの回転は可逆な行列で表されるので射影変換であり(§A5.17 定理 5.5)、あらかじめ適当な回転を行うことによって、これらの方向のどれもxx軸の方向と一致しないようにすることができます。

次に、§A5.17 定理 5.7で用いた行列

Ms=(1000100s1)(s≠0)M_s=\begin{pmatrix}1&0&0\\0&1&0\\0&s&1\end{pmatrix}\qquad(s\ne0)

が定める射影変換TMsT_{M_s}をとります。MsM_sは[X:Y:Z][X:Y:Z]を[X:Y:sY+Z][X:Y:sY+Z]へ移します。したがって無限遠点[X:Y:0][X:Y:0]は、Y≠0Y\ne0であれば[X:Y:sY][X:Y:sY]という有限点へ移ります。回転によってxx軸の方向を避けてあるので、与えられた無限遠点はすべてY≠0Y\ne0を満たします。また、有限点[x:y:1][x:y:1]の像は[x:y:sy+1][x:y:sy+1]であり、sy+1≠0sy+1\ne0であるかぎり有限点のままです。与えられた有限点は有限個なので、ssの絶対値を十分小さくとれば、そのすべてについてsy+1≠0sy+1\ne0が成り立ちます。このssに対するTMsT_{M_s}と、先の回転との合成が、求める射影変換です。▨

注意 3.2 (この主張について本記事が与えていないこと).定理 3.1の証明は、同次座標と3次の行列による射影変換の構成に依存しています。本記事は、この主張について、合同・相似・円の性質だけを根拠とする証明を与えていません。一方、以下で述べる定理 4.2と定理 1の証明の本体は、一点からの射影とメネラウスの定理だけを用い、座標を用いていません。

4 奇数側と偶数側が同時に一点で交わることはない

一点からの射影は、同一直線上の四点の複比を変えません(§A5.14 定理 2)。三本の直線が一点で交わるという条件は、この不変性を通して、二直線上の六点の位置についての等式に書き換えられます。

定理 4.1 (奇数側の三直線が一点で交わるときの複比の等式).定理 1の仮定のもとで、ℓ1\ell_1とℓ2\ell_2は点O\mathrm{O}で交わるとする。奇数側の三直線s1,s3,s5s_1,s_3,s_5が一点T\mathrm{T}で交わるならば

(A1,A2;A3,O)=(B2,B3;B1,O)(\mathrm{A}_1,\mathrm{A}_2;\mathrm{A}_3,\mathrm{O}) =(\mathrm{B}_2,\mathrm{B}_3;\mathrm{B}_1,\mathrm{O})

が成り立つ。

証明. はじめに、T\mathrm{T}がℓ1\ell_1上にもℓ2\ell_2上にもないことを示します。T\mathrm{T}がℓ1\ell_1上にあるとします。T\mathrm{T}はs1=A1B2s_1=\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2上にあり、s1s_1はℓ1\ell_1と一致しません(一致すればB2\mathrm{B}_2がℓ1\ell_1上に来てB2=O\mathrm{B}_2=\mathrm{O}となります)。相異なる二直線の共有点は一つなのでT=A1\mathrm{T}=\mathrm{A}_1です。ところがT\mathrm{T}はs5=A2B3s_5=\mathrm{A}_2\mathrm{B}_3上にもあるので、A1\mathrm{A}_1がs5s_5上に来て、注意 1.2の事実に反します。T\mathrm{T}がℓ2\ell_2上にあるとした場合も、s1s_1がℓ2\ell_2と一致しないことからT=B2\mathrm{T}=\mathrm{B}_2となり、B2\mathrm{B}_2がs5s_5上に来て同じ事実に反します。

そこで、T\mathrm{T}を中心としてℓ1\ell_1上の点をℓ2\ell_2へ射影します。T\mathrm{T}はℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2のどちらの上にもないので、この射影はℓ1\ell_1上の各点に対して定まります。T\mathrm{T}はs1s_1上にあるので直線TA1\mathrm{TA}_1はs1s_1に一致し、s1s_1とℓ2\ell_2の共有点はB2\mathrm{B}_2です。したがってA1\mathrm{A}_1の像はB2\mathrm{B}_2です。同じ理由で、s5s_5からA2\mathrm{A}_2の像はB3\mathrm{B}_3となり、s3s_3からA3\mathrm{A}_3の像はB1\mathrm{B}_1となります。またO\mathrm{O}はℓ1\ell_1とℓ2\ell_2の共有点なので、O\mathrm{O}の像はO\mathrm{O}です。

一点からの射影は複比を変えないので(§A5.14 定理 2)、四点A1,A2,A3,O\mathrm{A}_1,\mathrm{A}_2,\mathrm{A}_3,\mathrm{O}とその像B2,B3,B1,O\mathrm{B}_2,\mathrm{B}_3,\mathrm{B}_1,\mathrm{O}について、等式が成り立ちます。▨

この等式を、O\mathrm{O}から測った有向線分の逆数で書き直すと、扱いやすい形になります。

定理 4.2 (奇数側と偶数側の少なくとも一方は三角形をなす).定理 1の仮定のもとで、ℓ1\ell_1とℓ2\ell_2は点O\mathrm{O}で交わり、奇数側の三直線のどの二本も平行でなく、偶数側の三直線のどの二本も平行でないとする。このとき、奇数側の三直線s1,s3,s5s_1,s_3,s_5と偶数側の三直線s2,s4,s6s_2,s_4,s_6のうち、少なくとも一方は三角形の三辺をなす。

証明. 三本の直線のどの二本も平行でないとき、そのうちの二本は一点で交わります。三本が三角形をなさないのは、残りの一本がその交点を通る場合、すなわち三本が一点で交わる場合に限ります。そこで、奇数側も偶数側も一点で交わると仮定して、矛盾を導きます。

ℓ1\ell_1に、O\mathrm{O}を原点とする座標を一つ入れ、αi=OAi‾\alpha_i=\overline{\mathrm{OA}_i}とおきます。同様にℓ2\ell_2についてβj=OBj‾\beta_j=\overline{\mathrm{OB}_j}とおきます。六点はO\mathrm{O}と異なるので、αi\alpha_iとβj\beta_jはいずれも00ではありません。また、A1,A2,A3\mathrm{A}_1,\mathrm{A}_2,\mathrm{A}_3が相異なるのでα1,α2,α3\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3は相異なり、β1,β2,β3\beta_1,\beta_2,\beta_3も相異なります。

複比の座標表示(§A5.14 定義 1)により、O\mathrm{O}の座標が00であることを使うと

(A1,A2;A3,O)=(α3−α1)(0−α2)(α3−α2)(0−α1)=(α3−α1)α2(α3−α2)α1(\mathrm{A}_1,\mathrm{A}_2;\mathrm{A}_3,\mathrm{O}) =\frac{(\alpha_3-\alpha_1)(0-\alpha_2)}{(\alpha_3-\alpha_2)(0-\alpha_1)} =\frac{(\alpha_3-\alpha_1)\alpha_2}{(\alpha_3-\alpha_2)\alpha_1}

です。ここでui=1/αiu_i=1/\alpha_i、vj=1/βjv_j=1/\beta_jとおきます。α3−α1=α1α3(u1−u3)\alpha_3-\alpha_1=\alpha_1\alpha_3(u_1-u_3)およびα3−α2=α2α3(u2−u3)\alpha_3-\alpha_2=\alpha_2\alpha_3(u_2-u_3)を代入すると、α1,α2,α3\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3が約分されて

(A1,A2;A3,O)=u1−u3u2−u3,(B2,B3;B1,O)=v2−v1v3−v1(\mathrm{A}_1,\mathrm{A}_2;\mathrm{A}_3,\mathrm{O})=\frac{u_1-u_3}{u_2-u_3}, \qquad (\mathrm{B}_2,\mathrm{B}_3;\mathrm{B}_1,\mathrm{O})=\frac{v_2-v_1}{v_3-v_1}

を得ます。後者についても、β1−β2=β1β2(v2−v1)\beta_1-\beta_2=\beta_1\beta_2(v_2-v_1)とβ1−β3=β1β3(v3−v1)\beta_1-\beta_3=\beta_1\beta_3(v_3-v_1)を用いて、同じ計算を行います。

奇数側が一点で交わるので、定理 4.1より

u1−u3u2−u3=v2−v1v3−v1(1)\frac{u_1-u_3}{u_2-u_3}=\frac{v_2-v_1}{v_3-v_1} \tag{1}

が成り立ちます。Ai\mathrm{A}_iとBi\mathrm{B}_iを入れ替える置き換えは、奇数側の三直線と偶数側の三直線を入れ替え、O\mathrm{O}をO\mathrm{O}へ移し、uiu_iとviv_iを入れ替えます。偶数側も一点で交わるので、同じ定理をこの置き換えの後の配置へ適用して

v1−v3v2−v3=u2−u1u3−u1(2)\frac{v_1-v_3}{v_2-v_3}=\frac{u_2-u_1}{u_3-u_1} \tag{2}

を得ます。

ここで

P=u2−u1,Q=u3−u2,R=u1−u3,p=v2−v1,q=v3−v2,r=v1−v3P=u_2-u_1,\quad Q=u_3-u_2,\quad R=u_1-u_3,\qquad p=v_2-v_1,\quad q=v_3-v_2,\quad r=v_1-v_3

とおきます。α1,α2,α3\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3は相異なる00でない数なのでu1,u2,u3u_1,u_2,u_3は相異なり、同じ理由でv1,v2,v3v_1,v_2,v_3も相異なります。したがって、この六つの値はいずれも00ではありません。また、定義から

P+Q+R=0,p+q+r=0P+Q+R=0,\qquad p+q+r=0

が成り立ちます。式(1)(1)はR/(−Q)=p/(−r)R/(-Q)=p/(-r)すなわちRr=QpRr=Qpと書き直され、式(2)(2)はr/(−q)=P/(−R)r/(-q)=P/(-R)すなわちRr=PqRr=Pqと書き直されます。したがって

Qp=Pq=RrQp=Pq=Rr

です。この共通の値をkkとおくと、Q≠0Q\ne0かつp≠0p\ne0なのでk≠0k\ne0です。よってp=k/Qp=k/Q、q=k/Pq=k/P、r=k/Rr=k/Rと書くことができ、p+q+r=0p+q+r=0から

k(1P+1Q+1R)=0k\left(\frac1P+\frac1Q+\frac1R\right)=0

が従います。k≠0k\ne0なので両辺をkkで割り、さらにPQR≠0PQR\ne0を掛けて

PQ+QR+RP=0PQ+QR+RP=0

を得ます。一方P+Q+R=0P+Q+R=0なので

0=(P+Q+R)2=P2+Q2+R2+2(PQ+QR+RP)=P2+Q2+R20=(P+Q+R)^2=P^2+Q^2+R^2+2(PQ+QR+RP)=P^2+Q^2+R^2

となります。実数の平方の和が00になるのは、三つの実数がすべて00である場合に限るのでP=Q=R=0P=Q=R=0となりますが、これはP≠0P\ne0に反します。したがって、奇数側と偶数側が同時に一点で交わることはありません。▨

5 メネラウスの定理を五回用いる

準備が済んだので、主定理を証明します。

証明 (パップスの六角形定理の証明). 第1段(有限な配置へ移す)。主張は入射関係だけで書かれているので、射影変換で移した配置で結論を示せば、逆変換によってもとの配置の結論が得られます(§A5.17 定理 6.1)。そこで定理 3.1を、次の有限個の点へ適用します。六点A1,A2,A3,B1,B2,B3\mathrm{A}_1,\mathrm{A}_2,\mathrm{A}_3,\mathrm{B}_1,\mathrm{B}_2,\mathrm{B}_3、ℓ1\ell_1とℓ2\ell_2の共有点、三つの交点X1,X2,X3\mathrm{X}_1,\mathrm{X}_2,\mathrm{X}_3、および一つおきの三直線どうしの六つの交点s1∩s3s_1\cap s_3,s3∩s5s_3\cap s_5,s5∩s1s_5\cap s_1,s2∩s4s_2\cap s_4,s4∩s6s_4\cap s_6,s6∩s2s_6\cap s_2です。以後、これらがすべて有限点である配置を扱います。とくにℓ1\ell_1とℓ2\ell_2は有限な点O\mathrm{O}で交わり、奇数側の三直線のどの二本も平行でなく、偶数側についても同じです。

第2段(三角形を選ぶ)。定理 4.2により、奇数側と偶数側の少なくとも一方は三角形の三辺をなします。Ai\mathrm{A}_iとBi\mathrm{B}_iを入れ替える置き換えは、奇数側と偶数側を入れ替え、X1,X2,X3\mathrm{X}_1,\mathrm{X}_2,\mathrm{X}_3をそれぞれ自分自身へ移し、定理の仮定も保ちます。したがって、必要ならこの置き換えを行うことによって、奇数側の三直線s1,s3,s5s_1,s_3,s_5が三角形をなすとしてよいことになります。この三角形の頂点を

U=s1∩s5,V=s5∩s3,W=s3∩s1\mathrm{U}=s_1\cap s_5,\qquad \mathrm{V}=s_5\cap s_3,\qquad \mathrm{W}=s_3\cap s_1

とします。各辺を含む直線は、辺VW\mathrm{VW}がs3s_3、辺WU\mathrm{WU}がs1s_1、辺UV\mathrm{UV}がs5s_5です。

第3段(各辺上の三点が頂点と異なること)。辺WU\mathrm{WU}を含むs1s_1の上には、A1\mathrm{A}_1,B2\mathrm{B}_2,X3\mathrm{X}_3の三点があります。この三点がU\mathrm{U}ともW\mathrm{W}とも異なることを確かめます。U\mathrm{U}はs5=A2B3s_5=\mathrm{A}_2\mathrm{B}_3上にあるので、U=A1\mathrm{U}=\mathrm{A}_1またはU=B2\mathrm{U}=\mathrm{B}_2とするとA1\mathrm{A}_1またはB2\mathrm{B}_2がs5s_5上に来て、注意 1.2の事実に反します。W\mathrm{W}はs3=A3B1s_3=\mathrm{A}_3\mathrm{B}_1上にあるので、同じ議論がW\mathrm{W}についても通ります。次にX3\mathrm{X}_3を見ます。X3\mathrm{X}_3はs4=B1A2s_4=\mathrm{B}_1\mathrm{A}_2上にあります。s4s_4とs5s_5はどちらもA2\mathrm{A}_2を通り、一致しません。仮に一致すればB1\mathrm{B}_1がs5=A2B3s_5=\mathrm{A}_2\mathrm{B}_3上に来て、注意 1.2の事実に反するからです。相異なる二直線の共有点は一つなので、X3=U\mathrm{X}_3=\mathrm{U}とするとU=A2\mathrm{U}=\mathrm{A}_2となり、A2\mathrm{A}_2がs1=A1B2s_1=\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2上に来て同じ事実に反します。同様に、s4s_4とs3s_3はどちらもB1\mathrm{B}_1を通り、一致すればA2\mathrm{A}_2がs3=A3B1s_3=\mathrm{A}_3\mathrm{B}_1上に来るので、一致しません。したがってX3=W\mathrm{X}_3=\mathrm{W}とするとW=B1\mathrm{W}=\mathrm{B}_1となり、B1\mathrm{B}_1がs1s_1上に来て同じ事実に反します。添字を1→2→3→11\to2\to3\to1と巡回させる置き換えは、s1→s5→s3→s1s_1\to s_5\to s_3\to s_1、U→V→W→U\mathrm{U}\to\mathrm{V}\to\mathrm{W}\to\mathrm{U}、X3→X1→X2→X3\mathrm{X}_3\to\mathrm{X}_1\to\mathrm{X}_2\to\mathrm{X}_3という対応で配置全体を保つので、残りの二辺についても同じ議論が通ります。

第4段(メネラウスの定理を五回用いる)。三角形△UVW\triangle\mathrm{UVW}に対して、§A5.9 定理 6.2を五本の直線について用います。ここで比の順序は、辺VW\mathrm{VW}、WU\mathrm{WU}、UV\mathrm{UV}の順にそろえます。

偶数側の三直線は、三角形△UVW\triangle\mathrm{UVW}の各辺を含む直線と、次のように交わります。s6=B3A1s_6=\mathrm{B}_3\mathrm{A}_1は、s3s_3とX2\mathrm{X}_2で、s1s_1とA1\mathrm{A}_1で、s5s_5とB3\mathrm{B}_3で交わります。s4=B1A2s_4=\mathrm{B}_1\mathrm{A}_2は、s3s_3とB1\mathrm{B}_1で、s1s_1とX3\mathrm{X}_3で、s5s_5とA2\mathrm{A}_2で交わります。s2=B2A3s_2=\mathrm{B}_2\mathrm{A}_3は、s3s_3とA3\mathrm{A}_3で、s1s_1とB2\mathrm{B}_2で、s5s_5とX1\mathrm{X}_1で交わります。したがって

VX2‾X2W‾WA1‾A1U‾UB3‾B3V‾=−1,VB1‾B1W‾WX3‾X3U‾UA2‾A2V‾=−1,VA3‾A3W‾WB2‾B2U‾UX1‾X1V‾=−1\begin{aligned} \frac{\overline{\mathrm{VX}_2}}{\overline{\mathrm{X}_2\mathrm{W}}} \frac{\overline{\mathrm{WA}_1}}{\overline{\mathrm{A}_1\mathrm{U}}} \frac{\overline{\mathrm{UB}_3}}{\overline{\mathrm{B}_3\mathrm{V}}}&=-1,\\ \frac{\overline{\mathrm{VB}_1}}{\overline{\mathrm{B}_1\mathrm{W}}} \frac{\overline{\mathrm{WX}_3}}{\overline{\mathrm{X}_3\mathrm{U}}} \frac{\overline{\mathrm{UA}_2}}{\overline{\mathrm{A}_2\mathrm{V}}}&=-1,\\ \frac{\overline{\mathrm{VA}_3}}{\overline{\mathrm{A}_3\mathrm{W}}} \frac{\overline{\mathrm{WB}_2}}{\overline{\mathrm{B}_2\mathrm{U}}} \frac{\overline{\mathrm{UX}_1}}{\overline{\mathrm{X}_1\mathrm{V}}}&=-1 \end{aligned}

が成り立ちます。もとの二直線については、ℓ1\ell_1がs3,s1,s5s_3,s_1,s_5とそれぞれA3,A1,A2\mathrm{A}_3,\mathrm{A}_1,\mathrm{A}_2で交わり、ℓ2\ell_2がs3,s1,s5s_3,s_1,s_5とそれぞれB1,B2,B3\mathrm{B}_1,\mathrm{B}_2,\mathrm{B}_3で交わるので

VA3‾A3W‾WA1‾A1U‾UA2‾A2V‾=−1,VB1‾B1W‾WB2‾B2U‾UB3‾B3V‾=−1\frac{\overline{\mathrm{VA}_3}}{\overline{\mathrm{A}_3\mathrm{W}}} \frac{\overline{\mathrm{WA}_1}}{\overline{\mathrm{A}_1\mathrm{U}}} \frac{\overline{\mathrm{UA}_2}}{\overline{\mathrm{A}_2\mathrm{V}}}=-1, \qquad \frac{\overline{\mathrm{VB}_1}}{\overline{\mathrm{B}_1\mathrm{W}}} \frac{\overline{\mathrm{WB}_2}}{\overline{\mathrm{B}_2\mathrm{U}}} \frac{\overline{\mathrm{UB}_3}}{\overline{\mathrm{B}_3\mathrm{V}}}=-1

が成り立ちます。

第5段(約分と結論)。はじめの三つの等式の辺々を掛けると左辺の積は(−1)3=−1(-1)^3=-1になり、あとの二つの等式の辺々を掛けると左辺の積は(−1)2=1(-1)^2=1になります。前者を後者で割ります。A1,A2,A3,B1,B2,B3\mathrm{A}_1,\mathrm{A}_2,\mathrm{A}_3,\mathrm{B}_1,\mathrm{B}_2,\mathrm{B}_3を含む六つの比は、分子側にも分母側にもちょうど一度ずつ現れるので、すべて約分で消えます。残るのは

VX2‾X2W‾WX3‾X3U‾UX1‾X1V‾=−11=−1\frac{\overline{\mathrm{VX}_2}}{\overline{\mathrm{X}_2\mathrm{W}}} \frac{\overline{\mathrm{WX}_3}}{\overline{\mathrm{X}_3\mathrm{U}}} \frac{\overline{\mathrm{UX}_1}}{\overline{\mathrm{X}_1\mathrm{V}}} =\frac{-1}{1}=-1

です。X2\mathrm{X}_2はVW\mathrm{VW}上、X3\mathrm{X}_3はWU\mathrm{WU}上、X1\mathrm{X}_1はUV\mathrm{UV}上にあり、いずれも頂点と異なるので、§A5.9 定理 6.3によりX1,X2,X3\mathrm{X}_1,\mathrm{X}_2,\mathrm{X}_3は一直線上にあります。第1段の射影変換の逆変換で戻せば、もとの配置でも三点は一直線上にあります。▨

6 平行な組がある場合

主定理は、向かい合う辺の三つの組がそれぞれ交わることを仮定しています。この仮定を外すと、平行な組が現れます。無限遠点を導入すると、この場合も同じ主張に含めることができます。

定理 6.1 (平行な組を含む形).定理 1の六点をとる。向かい合う辺の組が平行である場合には、その組の交点を、その方向の無限遠点(§A5.17 定義 1)と定める。このとき、三つの交点X1,X2,X3\mathrm{X}_1,\mathrm{X}_2,\mathrm{X}_3は、射影平面の一本の直線上にある。

証明.定理 1の証明の第1段では、三つの交点を含む有限個の点を、定理 3.1によってすべて有限点へ移しました。この段は、三つの交点がもとの配置で無限遠点であっても、そのまま通ります。第2段以降は、移した先の有限な配置だけを扱うので、変更は要りません。したがって移した先で三点は一直線上にあり、逆変換で戻すと、もとの配置でも三点は射影平面の一本の直線上にあります。▨

平行な組が二つあると、三つ目の組も平行になります。

定理 6.2 (二組が平行ならば残りの組も平行).定理 1の六点について、A1B2\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2とB1A2\mathrm{B}_1\mathrm{A}_2が平行で、かつB2A3\mathrm{B}_2\mathrm{A}_3とA2B3\mathrm{A}_2\mathrm{B}_3が平行であるとする。このときA3B1\mathrm{A}_3\mathrm{B}_1とB3A1\mathrm{B}_3\mathrm{A}_1も平行である。

証明. 仮定により、X3\mathrm{X}_3はs1s_1の方向の無限遠点であり、X1\mathrm{X}_1はs2s_2の方向の無限遠点です。この二点は相異なります。実際、s1=A1B2s_1=\mathrm{A}_1\mathrm{B}_2とs2=B2A3s_2=\mathrm{B}_2\mathrm{A}_3はB2\mathrm{B}_2を共有するので、方向が一致すれば二直線は一致し、A1\mathrm{A}_1がs2s_2上に来て注意 1.2の事実に反します。

X3\mathrm{X}_3とX1\mathrm{X}_1は相異なる無限遠点なので、この二点を通る射影直線は無限遠直線ただ一本です(§A5.17 定理 1.1)。定理 6.1によりX2\mathrm{X}_2もこの直線上にあるので、X2\mathrm{X}_2は無限遠点です。すなわちs3s_3とs6s_6は交点をもたず、平行です。▨

7 具体的な配置で確かめる

三つの交点を実際に求めてみます。

例 7.1 (六点を座標で与えて三つの交点を求める).ℓ1\ell_1をxx軸、ℓ2\ell_2をyy軸とし、六点を

A1(−6,0),A2(2,0),A3(3,0),B1(0,1),B2(0,3),B3(0,4)\mathrm{A}_1(-6,0),\quad \mathrm{A}_2(2,0),\quad \mathrm{A}_3(3,0),\qquad \mathrm{B}_1(0,1),\quad \mathrm{B}_2(0,3),\quad \mathrm{B}_3(0,4)

とします。二直線の交点は原点であり、六点はいずれも原点と異なります。六本の辺を含む直線の方程式は

s1: −x+2y=6,s2: x+y=3,s3: x+3y=3,s4: x+2y=2,s5: 2x+y=4,s6: −2x+3y=12\begin{aligned} s_1&:\ -x+2y=6, & s_2&:\ x+y=3, & s_3&:\ x+3y=3,\\ s_4&:\ x+2y=2, & s_5&:\ 2x+y=4, & s_6&:\ -2x+3y=12 \end{aligned}

です。向かい合う辺の交点を求めると

X3=s1∩s4=(−2,2),X1=s2∩s5=(1,2),X2=s3∩s6=(−3,2)\mathrm{X}_3=s_1\cap s_4=(-2,2),\qquad \mathrm{X}_1=s_2\cap s_5=(1,2),\qquad \mathrm{X}_2=s_3\cap s_6=(-3,2)

となり、三点はいずれも直線y=2y=2の上にあります。

この例は、一つの配置について主定理の結論が成り立つことを確かめたものです。一つの配置で確かめても、すべての配置についての証明にはなりません。すべての配置についての証明は、前節までのメネラウスの定理による議論が与えています。

8 円に内接する六角形の場合

パップスの六角形定理は、六点が二本の直線の上にある場合の定理です。六点が一つの円周上にある場合にも、向かい合う辺の交点となる三点が一直線上に並びます。この主張をパスカルの定理といいます。

注意 8.1 (円が絡む場合を本記事が扱わない理由). 本記事の証明は、直線上の点を別の直線上へ写す、一点からの射影だけを用いています。円周上の点からの射影を同じように扱うには、弧と角を結び付ける三角比が必要になります。三角比を主な根拠とする証明は、本記事の主証明の方法には含まれません。円錐曲線に内接する六角形についてのパスカルの定理と、その双対にあたるブリアンションの定理は、幾何の定理ギャラリーで扱います。

参考文献

  1. H. S. M. Coxeter, Projective Geometry, 2nd ed., Springer, New York, 1987.

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