§E1.21基数とアレフ

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「等濃度と可算性」では、二つの集合の大きさを、そのあいだの全単射および単射の存在によって比べた。この比べ方は集合の対どうしの関係を与えるだけであり、一つの集合に対してその大きさを表す対象を与えるものではない。一方「順序数」は、整列集合に対してその順序型という一つの順序数を与える。しかし順序型は整列順序の入れ方に依存し、同じ集合でも整列の仕方を変えれば別の順序数になる。そこで、整列順序を一つ入れた集合について、それと等濃な順序数のうち最小のものを取ると、整列の仕方によらない一つの順序数が定まる。この順序数を基数といい、無限の基数は順序数で添字づけられた列としてアレフ階層に並ぶ。本記事では、基数を定義し、選択公理のもとで各集合の濃度を基数として取り出し、アレフ階層と最小の非可算基数を構成する。

1 基数

定義 1.1. 順序数κ\kappaが、それより小さいどの順序数とも等濃でないとき、κ\kappaを基数 (cardinal) という。すなわち、α<κ\alpha<\kappaを満たすどの順序数α\alphaについても、α\alphaからκ\kappaへの全単射は存在しない。

基数は順序数であるから、§E1.16 命題 2.3 (3)により、それ未満の順序数全体からなる集合であり、κ={α∣α<κ}\kappa=\{\alpha\mid\alpha<\kappa\}が成り立つ。基数を添字集合として用いるときは、この集合を指す。

命題 1.2.κ\kappaとλ\lambdaを基数とし、CCを基数からなる集合とする。

  1. κ<λ\kappa<\lambda、κ=λ\kappa=\lambda、λ<κ\lambda<\kappaのうちちょうど一つが成り立つ。
  2. κ\kappaは、κ\kappaと等濃な順序数のうち最小のものである。逆に、順序数α\alphaがα\alphaと等濃な順序数のうち最小のものであるならば、α\alphaは基数である。
  3. 順序数α\alphaがα<κ\alpha<\kappaを満たすならば、κ\kappaからα\alphaへの単射は存在しない。
  4. 順序数としてκ≤λ\kappa\leq\lambdaであることと、κ\kappaからλ\lambdaへの単射が存在すること、すなわち§E1.18 定義 1.1の意味で∣κ∣≤∣λ∣\lvert\kappa\rvert\leq\lvert\lambda\rvertが成り立つことは同値である。順序数としてκ<λ\kappa<\lambdaであることと、§E1.18 定義 1.1の意味で∣κ∣<∣λ∣\lvert\kappa\rvert<\lvert\lambda\rvertが成り立つことも同値である。
  5. ⋃C\bigcup Cは基数であり、順序数の大小についてCCの最小上界である。CCが最大元μ0\mu_0をもつならば⋃C=μ0\bigcup C=\mu_0である。空でない有限個の基数からなる集合は最大元をもつから、そのようなCCについては⋃C\bigcup CはCCの最大元である。

証明.(1)κ\kappaとλ\lambdaは順序数であるから、§E1.16 命題 2.5 (2)を適用する。

(2)κ\kappaはκ\kappa自身と等濃であり、定義 1.1によりκ\kappa未満のどの順序数とも等濃でない。したがってκ\kappaと等濃な順序数のうち最小のものである。逆にα\alphaがα\alphaと等濃な順序数のうち最小のものであるとすると、β<α\beta<\alphaを満たす順序数β\betaはα\alphaと等濃でないから、α\alphaは基数である。

(3)α<κ\alpha<\kappaとし、単射v ⁣:κ→αv\colon\kappa\to\alphaが存在すると仮定する。§E1.16 命題 2.5 (1)によりα⊆κ\alpha\subseteq\kappaであるから、包含写像はα\alphaからκ\kappaへの単射である。§E1.11 定理 4.2によりα\alphaとκ\kappaは等濃であるが、α<κ\alpha<\kappaでありκ\kappaは基数であるから、これは定義 1.1に反する。

(4)κ≤λ\kappa\leq\lambdaとすると、§E1.16 命題 2.5 (1)によりκ⊆λ\kappa\subseteq\lambdaであり、包含写像がκ\kappaからλ\lambdaへの単射である。逆にκ\kappaからλ\lambdaへの単射が存在するとする。λ<κ\lambda<\kappaと仮定すると(3)に反するから、(1)によりκ≤λ\kappa\leq\lambdaである。

κ<λ\kappa<\lambdaとすると、いま示した同値により∣κ∣≤∣λ∣\lvert\kappa\rvert\leq\lvert\lambda\rvertであり、∣λ∣≤∣κ∣\lvert\lambda\rvert\leq\lvert\kappa\rvertであるとするとλ≤κ\lambda\leq\kappaとなって(1)に反するから、§E1.18 定義 1.1の意味で∣κ∣<∣λ∣\lvert\kappa\rvert<\lvert\lambda\rvertである。逆に∣κ∣<∣λ∣\lvert\kappa\rvert<\lvert\lambda\rvertとすると∣κ∣≤∣λ∣\lvert\kappa\rvert\leq\lvert\lambda\rvertからκ≤λ\kappa\leq\lambdaであり、κ=λ\kappa=\lambdaであるとすると恒等写像がλ\lambdaからκ\kappaへの単射を与えて∣λ∣≤∣κ∣\lvert\lambda\rvert\leq\lvert\kappa\rvertとなるから、κ<λ\kappa<\lambdaである。

(5)σ=⋃C\sigma=\bigcup Cとおく。CCは順序数からなる集合であるから、§E1.16 補題 4.4によりσ\sigmaは順序数であり、CCの最小上界である。

σ\sigmaが基数でないと仮定する。するとα<σ\alpha<\sigmaを満たす順序数α\alphaと全単射u ⁣:σ→αu\colon\sigma\to\alphaが存在する。σ\sigmaはCCの最小上界であるから、α\alphaはCCの上界ではなく、α<μ\alpha<\muを満たすμ∈C\mu\in Cが存在する。μ≤σ\mu\leq\sigmaであるから、§E1.16 命題 2.5 (1)によりμ⊆σ\mu\subseteq\sigmaであり、uuのμ\muへの制限はμ\muからα\alphaへの単射である。μ\muは基数でありα<μ\alpha<\muであるから、これは(3)に反する。したがってσ\sigmaは基数である。

CCが最大元μ0\mu_0をもつならば、μ0\mu_0はCCの最小上界であり、順序数の大小について最小上界は一意であるから⋃C=μ0\bigcup C=\mu_0である。最後に、基数κ1,…,κn\kappa_1,\dots,\kappa_n(n≥1n\geq1)を並べた集合が最大元をもつことは、nnについての帰納法による。n=1n=1のときはκ1\kappa_1が最大元である。{κ1,…,κn}\{\kappa_1,\dots,\kappa_n\}の最大元をμ\muとすると、(1)によりμ<κn+1\mu<\kappa_{n+1}かκn+1≤μ\kappa_{n+1}\leq\muのいずれかであり、前者ではκn+1\kappa_{n+1}が、後者ではμ\muが{κ1,…,κn+1}\{\kappa_1,\dots,\kappa_{n+1}\}の最大元である。▨

以後、ω\omega未満の順序数を自然数と同一視する(「順序数」§E1.16 命題 4.9)。この同一視のもとで、順序数の後続n+1n+1は§E1.18 定義 1.2のS(n)S(n)に等しい。

命題 1.3.n<ωn<\omegaを満たす順序数nnは基数である。またω\omegaは基数である。

証明.m<n<ωm<n<\omegaとする。mmからnnへの全単射ffが存在すると仮定すると、その逆写像はnnからmmへの単射であり、§E1.18 補題 2.1 (2)によりn≤mn\leq mとなってm<nm<nに反する。よってnnは基数である。

ω\omegaについて、n<ωn<\omegaを満たす順序数nnと全単射f ⁣:n→ωf\colon n\to\omegaが存在すると仮定する。ω\omegaは§E1.16 命題 4.8 (1)により極限順序数であるから、§E1.16 系 4.3によりn+1<ωn+1<\omegaである。n+1⊆ωn+1\subseteq\omegaであるから、ffの逆写像のn+1n+1への制限はn+1=S(n)n+1=S(n)からnnへの単射であり、§E1.18 補題 2.1 (1)に反する。よってω\omegaは基数である。▨

例 1.4 (基数でない無限順序数). 無限順序数がすべて基数であるわけではない。0<k<ω0<k<\omegaとし、ω+k\omega+kを考える。§E1.16 命題 2.3 (3)によりω+k\omega+kの元はω+i\omega+i(i<ki<k)とnn(n<ωn<\omega)である。写像h ⁣:ω+k→ωh\colon\omega+k\to\omegaを

h(ω+i)=i(i<k),h(n)=n+k(n<ω)h(\omega+i)=i\quad(i<k),\qquad h(n)=n+k\quad(n<\omega)

と定める。i<k≤n+ki<k\leq n+kであるから二つの場合の像は交わらず、それぞれの場合でhhは単射である。またω\omegaの元llに対して、l<kl<kならばh(ω+l)=lh(\omega+l)=lであり、k≤lk\leq lならば§E1.16 命題 4.2 (3)を繰り返し用いてl=n+kl=n+kを満たすn<ωn<\omegaを取るとh(n)=lh(n)=lである。よってhhは全単射である。

したがってω<ω+k\omega<\omega+kでありながらω+k\omega+kはω\omegaと等濃であり、k≥1k\geq1ならば定義 1.1によりω+k\omega+kは基数でない。この例は、順序数の大小と濃度の大小が一致しないことを示す。

2 選択公理のもとで濃度を基数として取り出す

命題 2.1.XXを集合とし、XX上の整列順序が存在するとする。このときXXと等濃な基数がただ一つ存在する。

証明.XX上の整列順序⪯\preceqを一つ取る。§E1.16 定理 3.1により、整列集合(X,⪯)(X,\preceq)と順序同型な順序数γ\gammaがただ一つ存在する。順序同型は全単射であるから、γ\gammaとXXは等濃である。

γ\gamma以下の順序数であってXXと等濃なもの全体をSSとおく。SSはγ+1\gamma+1の部分集合であるから、§E1.13 定義 2.1により集合であり、γ∈S\gamma\in Sであるから空でない。§E1.16 命題 2.5 (3)によりSSは最小元κ\kappaをもつ。

κ\kappaは基数である。実際、α<κ\alpha<\kappaを満たす順序数α\alphaがκ\kappaと等濃であるとすると、κ\kappaがXXと等濃であることとあわせてα\alphaはXXと等濃であり、α<κ≤γ\alpha<\kappa\leq\gammaであるからα∈S\alpha\in Sとなってκ\kappaの最小性に反する。

κ\kappaとλ\lambdaがともにXXと等濃な基数であるとする。全単射の合成によりκ\kappaとλ\lambdaは等濃である。命題 1.2 (1)によりκ<λ\kappa<\lambda、κ=λ\kappa=\lambda、λ<κ\lambda<\kappaのちょうど一つが成り立つ。κ<λ\kappa<\lambdaならばλ\lambdaがλ\lambda未満の順序数κ\kappaと等濃になり、λ\lambdaが基数であることに反する。λ<κ\lambda<\kappaの場合も同様である。よってκ=λ\kappa=\lambdaである。▨

定理 2.2. 選択公理を仮定する。XXを集合とすると、次が成り立つ。

  1. XXと等濃な基数がただ一つ存在する。この基数を∣X∣\lvert X\rvertと書き、XXの濃度という。
  2. 全単射q ⁣:∣X∣→Xq\colon\lvert X\rvert\to Xが存在する。∣X∣\lvert X\rvertは順序数であるから、このqqはξ<∣X∣\xi<\lvert X\rvertを添字とするXXの元の枚挙を与える。
  3. κ\kappaが基数ならば∣κ∣=κ\lvert\kappa\rvert=\kappaである。

証明.(1)選択公理を仮定するから、§E1.20 定理 2.1 (2)によりXX上の整列順序が存在する。よって命題 2.1により、XXと等濃な基数がただ一つ存在する。

(2)∣X∣\lvert X\rvertはXXと等濃であるから、定義により全単射q ⁣:∣X∣→Xq\colon\lvert X\rvert\to Xが存在する。

(3)κ\kappaはκ\kappa自身と等濃な基数であるから、(1)の一意性により∣κ∣=κ\lvert\kappa\rvert=\kappaである。▨

注意 2.3 (記法∣X∣\lvert X\rvertの読み替え). 「等濃度と可算性」の§E1.18 定義 1.1は、記号∣X∣\lvert X\rvertを集合どうしの濃度の比較のために導入した。定理 2.2 (1)により、選択公理のもとでは∣X∣\lvert X\rvertを一つの基数として読むことができる。

以後、選択公理を仮定する主張では、∣X∣\lvert X\rvertをこの基数として用いる。

命題 2.4. 選択公理を仮定する。XXとYYを集合とする。XXとYYが等濃であることと、基数として∣X∣=∣Y∣\lvert X\rvert=\lvert Y\rvertが成り立つことは同値である。

証明.XXとYYが等濃であるとする。XXと等濃な基数はYYとも等濃であるから、定理 2.2 (1)の一意性により∣X∣=∣Y∣\lvert X\rvert=\lvert Y\rvertである。逆に∣X∣=∣Y∣\lvert X\rvert=\lvert Y\rvertであるとすると、定理 2.2 (2)が与える全単射∣X∣→X\lvert X\rvert\to Xの逆写像と全単射∣Y∣→Y\lvert Y\rvert\to Yを合成して、XXからYYへの全単射を得る。▨

命題 2.5. 選択公理を仮定する。XXとYYを集合とし、κ=∣X∣\kappa=\lvert X\rvert、λ=∣Y∣\lambda=\lvert Y\rvertとおく。

  1. 単射X→YX\to Yが存在することと、順序数としてκ≤λ\kappa\leq\lambdaが成り立つことは同値である。
  2. 順序数としてκ<λ\kappa<\lambdaが成り立つことと、§E1.18 定義 1.1の意味で∣X∣<∣Y∣\lvert X\rvert<\lvert Y\rvertが成り立つことは同値である。
  3. 単射X→YX\to Yと単射Y→XY\to Xがともに存在するならばκ=λ\kappa=\lambdaであり、XXとYYは等濃である。

証明.(1)定理 2.2 (2)により、全単射q ⁣:κ→Xq\colon\kappa\to Xとr ⁣:λ→Yr\colon\lambda\to Yを取る。

κ≤λ\kappa\leq\lambdaとする。命題 1.2 (4)により単射v ⁣:κ→λv\colon\kappa\to\lambdaが存在するから、r∘v∘q−1r\circ v\circ q^{-1}はXXからYYへの単射である。

逆に単射u ⁣:X→Yu\colon X\to Yが存在するとする。r−1∘u∘qr^{-1}\circ u\circ qはκ\kappaからλ\lambdaへの単射であるから、命題 1.2 (4)によりκ≤λ\kappa\leq\lambdaである。

(2)§E1.18 定義 1.1により、∣X∣<∣Y∣\lvert X\rvert<\lvert Y\rvertとは、単射X→YX\to Yが存在し、かつ単射Y→XY\to Xが存在しないことである。

κ<λ\kappa<\lambdaとする。(1)により単射X→YX\to Yが存在する。単射Y→XY\to Xも存在するとすると、(1)によりλ≤κ\lambda\leq\kappaとなり、§E1.16 命題 2.5 (2)に反する。

逆に単射X→YX\to Yが存在し、単射Y→XY\to Xが存在しないとする。(1)によりκ≤λ\kappa\leq\lambdaである。κ=λ\kappa=\lambdaとすると、(1)をYYとXXに適用して単射Y→XY\to Xを得るので、仮定に反する。よってκ<λ\kappa<\lambdaである。

(3)(1)を両向きに適用するとκ≤λ\kappa\leq\lambdaかつλ≤κ\lambda\leq\kappaを得る。順序数の大小は§E1.16 命題 2.5 (2)により反対称的であるからκ=λ\kappa=\lambdaである。命題 2.4によりXXとYYは等濃である。▨

3 Hartogs の定理

前節の定理 2.2は選択公理に依っている。選択公理を仮定しない体系では、整列順序をもたない集合が存在する可能性があり、そのような集合には等濃な基数が無い。それでも、どの集合に対しても「その集合への単射をもたない順序数」を作ることができる。

定理 3.1 (Hartogs の定理).XXを集合とする。XXへの単射をもつ順序数の全体は集合をなす。またXXへの単射をもたない順序数が存在し、そのうち最小のものが定まる。この最小の順序数をℏ(X)\hbar(X)と書くと、次が成り立つ。

  1. 順序数α\alphaからXXへの単射が存在するならば、α<ℏ(X)\alpha<\hbar(X)である。
  2. ℏ(X)\hbar(X)は基数である。
  3. ℏ(X)\hbar(X)からXXへの単射は存在しない。

証明.WWを、A⊆XA\subseteq XとAA上の整列順序R⊆A×AR\subseteq A\times Aの組(A,R)(A,R)の全体とする。WWはP(X)×P(X×X)\mathcal P(X)\times\mathcal P(X\times X)の部分集合であるから、§E1.13 定義 3.1 (3)と§E1.13 定義 2.1により集合である。

§E1.16 定理 3.1により、各(A,R)∈W(A,R)\in Wに対して整列集合(A,R)(A,R)と順序同型な順序数がただ一つ定まる。これをot⁡(A,R)\operatorname{ot}(A,R)と書く。§E1.13 定義 5.1により、像

H={ot⁡(A,R)∣(A,R)∈W}H=\{\operatorname{ot}(A,R)\mid (A,R)\in W\}

は集合である。

順序数α\alphaについて、α\alphaからXXへの単射が存在することとα∈H\alpha\in Hであることは同値である。実際、単射g ⁣:α→Xg\colon\alpha\to Xが存在するならば、A=g(α)A=g(\alpha)とおき、AA上の関係RRを、β<δ<α\beta<\delta<\alphaであるときにかぎりg(β)Rg(δ)g(\beta)\mathrel{R}g(\delta)が成り立つものとして定める。ggはα\alphaからAAへの全単射であるから、RRはAA上の整列順序であってggは順序同型α→A\alpha\to Aを与える。したがって(A,R)∈W(A,R)\in Wかつot⁡(A,R)=α\operatorname{ot}(A,R)=\alphaである。逆にα=ot⁡(A,R)\alpha=\operatorname{ot}(A,R)ならば、順序同型α→A\alpha\to Aと包含写像A⊆XA\subseteq Xの合成が単射α→X\alpha\to Xである。したがってHHはXXへの単射をもつ順序数の全体であり、これは集合である。

HHは推移的である。β<α∈H\beta<\alpha\in Hとすると、単射α→X\alpha\to Xのβ\betaへの制限は単射β→X\beta\to Xであるからβ∈H\beta\in Hである。HHは順序数からなる集合であるから§E1.16 命題 2.5 (3)により属する関係によって整列され、推移的であるから§E1.16 定義 2.1により順序数である。

H∉HH\notin Hである。§E1.16 命題 2.3 (2)により順序数は自分自身に属さないからである。したがってHHはXXへの単射をもたない順序数であり、α<H\alpha<Hすなわちα∈H\alpha\in Hを満たす順序数はすべてXXへの単射をもつ。よってHHはXXへの単射をもたない最小の順序数であり、ℏ(X)=H\hbar(X)=Hである。

(1)α\alphaからXXへの単射が存在するならばα∈H=ℏ(X)\alpha\in H=\hbar(X)であり、§E1.16 命題 2.3 (3)によりα<ℏ(X)\alpha<\hbar(X)である。

(2)α<ℏ(X)\alpha<\hbar(X)を満たす順序数α\alphaがℏ(X)\hbar(X)と等濃であると仮定する。α∈H\alpha\in Hであるから単射g ⁣:α→Xg\colon\alpha\to Xが存在し、全単射ℏ(X)→α\hbar(X)\to\alphaとggの合成は単射ℏ(X)→X\hbar(X)\to Xである。これはℏ(X)∉H\hbar(X)\notin Hに反する。よって定義 1.1によりℏ(X)\hbar(X)は基数である。

(3)ℏ(X)=H\hbar(X)=HかつH∉HH\notin Hであるから、ℏ(X)\hbar(X)からXXへの単射は存在しない。▨

定義 3.2.XXを集合とする。定理 3.1が与える順序数ℏ(X)\hbar(X)を、XXのHartogs 数 (Hartogs number) という。

系 3.3.κ\kappaを基数とする。κ<μ\kappa<\muを満たす基数μ\muのうち最小のものが存在し、それはℏ(κ)\hbar(\kappa)に等しい。

証明. 恒等写像κ→κ\kappa\to\kappaは単射であるから、定理 3.1 (1)によりκ<ℏ(κ)\kappa<\hbar(\kappa)である。定理 3.1 (2)によりℏ(κ)\hbar(\kappa)は基数である。

μ\muをκ<μ\kappa<\muを満たす基数とする。命題 1.2 (3)によりμ\muからκ\kappaへの単射は存在しない。ℏ(κ)\hbar(\kappa)はκ\kappaへの単射をもたない順序数のうち最小のものであるから、ℏ(κ)≤μ\hbar(\kappa)\leq\muである。

したがってℏ(κ)\hbar(\kappa)はκ\kappaより大きい基数であって、κ\kappaより大きいどの基数以下でもある。▨

定義 3.4.κ\kappaを基数とする。系 3.3が与える最小の基数ℏ(κ)\hbar(\kappa)をκ+\kappa^{+}と書き、κ\kappaの後続基数 (successor cardinal) という。

注意 3.5 (選択公理を用いない範囲).定理 3.1の証明は、§E1.13 定義 3.1 (3)、§E1.13 定義 2.1、§E1.13 定義 5.1および§E1.16 定理 3.1だけを用い、選択公理を用いていない。XXが整列可能であることも仮定していない。したがって系 3.3も選択公理を用いない。

4 アレフ階層

定義 4.1.§E1.17 系 2.4を、a=ωa=\omega、H(β,u)=ℏ(u)H(\beta,u)=\hbar(u)、および極限順序数λ\lambdaと定義域λ\lambdaをもつ関数uuに対するL(λ,u)=⋃{u(γ)∣γ<λ}L(\lambda,u)=\bigcup\{u(\gamma)\mid\gamma<\lambda\}に対して用いる。順序数θ\thetaの各々に対して、定義域がθ\thetaであって下の三つの規則を満たす関数fθf_\thetaがただ一つ定まる。§E1.17 系 2.6 (1)によりθ≤θ′\theta\leq\theta'のときfθ′∣θ=fθf_{\theta'}|\theta=f_\thetaであり、§E1.17 系 2.6 (2)により、値fθ(α)f_\theta(\alpha)はα<θ\alpha<\thetaを満たすθ\thetaの取り方によらない。この値をℵα\aleph_\alphaと書く。すなわち、すべての順序数α\alphaに対して値ℵα\aleph_\alphaが定まり、次の三つが成り立つ。

ℵ0=ω,ℵα+1=ℏ(ℵα),ℵλ=⋃α<λℵα(λ は極限順序数)\aleph_0=\omega,\qquad \aleph_{\alpha+1}=\hbar(\aleph_\alpha),\qquad \aleph_\lambda=\bigcup_{\alpha<\lambda}\aleph_\alpha\quad(\lambda\text{ は極限順序数})

こうして定まる順序数の族(ℵα)(\aleph_\alpha)をアレフ階層 (aleph hierarchy) という。

ℵ0=ω\aleph_0=\omegaの等号は、順序数として、すなわち集合としての等号である。記号ℵ0\aleph_0はω\omegaそのものを指す。

命題 4.2.α\alphaとβ\betaを順序数とする。

  1. ℵα\aleph_\alphaは無限基数であり、ℵα+1=(ℵα)+\aleph_{\alpha+1}=(\aleph_\alpha)^{+}である。
  2. α<β\alpha<\betaならばℵα<ℵβ\aleph_\alpha<\aleph_\betaである。とくにα≤ℵα\alpha\leq\aleph_\alphaである。
  3. 任意の無限基数κ\kappaに対して、κ=ℵα\kappa=\aleph_\alphaを満たす順序数α\alphaがただ一つ存在する。
  4. ℵ0\aleph_0は最小の無限基数である。すなわち、κ\kappaが無限基数ならばℵ0≤κ\aleph_0\leq\kappaである。

証明.(1)順序数γ\gammaがω≤γ\omega\leq\gammaを満たすならばγ\gammaは無限である。実際、§E1.16 命題 2.5 (1)によりω⊆γ\omega\subseteq\gammaであり、γ\gammaが有限であるとすると§E1.18 補題 2.4によりω\omegaも有限になる。しかし命題 1.3によりω\omegaは基数であるから、定義 1.1によりω\omegaはどのn<ωn<\omegaとも等濃でなく、§E1.18 定義 1.2 (1)の意味でω\omegaは無限である。

§E1.17 定理 1.1により、ℵα\aleph_\alphaが無限基数であることをα\alphaについて示す。α=0\alpha=0のとき、命題 1.3によりℵ0=ω\aleph_0=\omegaは基数であり、いま述べたことから無限である。ℵα\aleph_\alphaが無限基数であるとすると、定理 3.1 (2)によりℵα+1=ℏ(ℵα)\aleph_{\alpha+1}=\hbar(\aleph_\alpha)は基数であり、系 3.3によりℵα<ℵα+1\aleph_\alpha<\aleph_{\alpha+1}であるからω≤ℵα<ℵα+1\omega\leq\aleph_\alpha<\aleph_{\alpha+1}であってℵα+1\aleph_{\alpha+1}は無限である。また系 3.3はℏ(ℵα)\hbar(\aleph_\alpha)がℵα\aleph_\alphaより大きい最小の基数であることを与えるから、ℵα+1=(ℵα)+\aleph_{\alpha+1}=(\aleph_\alpha)^{+}である。λ\lambdaが極限順序数であり、α<λ\alpha<\lambdaを満たすすべてのα\alphaについてℵα\aleph_\alphaが無限基数であるとすると、C={ℵα∣α<λ}C=\{\aleph_\alpha\mid\alpha<\lambda\}は§E1.13 定義 5.1により基数からなる集合であり、命題 1.2 (5)によりℵλ=⋃C\aleph_\lambda=\bigcup Cは基数である。λ≠0\lambda\neq0であるからℵ0∈C\aleph_0\in Cであり、ω=ℵ0≤ℵλ\omega=\aleph_0\leq\aleph_\lambdaであるからℵλ\aleph_\lambdaは無限である。

(2)β\betaを固定し、α<β\alpha<\betaについてℵα<ℵβ\aleph_\alpha<\aleph_\betaを§E1.17 定理 1.1により示す。β=0\beta=0のときα<0\alpha<0を満たすα\alphaは無い。β=δ+1\beta=\delta+1のとき、α<β\alpha<\betaならば§E1.16 命題 4.2 (3)によりα≤δ\alpha\leq\deltaであり、帰納法の仮定と系 3.3のℵδ<ℵδ+1\aleph_\delta<\aleph_{\delta+1}からℵα≤ℵδ<ℵβ\aleph_\alpha\leq\aleph_\delta<\aleph_\betaである。β\betaが極限順序数のとき、α<β\alpha<\betaならば§E1.16 系 4.3によりα+1<β\alpha+1<\betaであり、系 3.3によりℵα<ℵα+1\aleph_\alpha<\aleph_{\alpha+1}である。§E1.16 補題 4.4によりℵβ=⋃δ<βℵδ\aleph_\beta=\bigcup_{\delta<\beta}\aleph_\deltaは{ℵδ∣δ<β}\{\aleph_\delta\mid\delta<\beta\}の上界であるからℵα+1≤ℵβ\aleph_{\alpha+1}\leq\aleph_\betaであり、あわせてℵα<ℵβ\aleph_\alpha<\aleph_\betaである。

α≤ℵα\alpha\leq\aleph_\alphaも§E1.17 定理 1.1による。0≤ℵ00\leq\aleph_0である。α≤ℵα\alpha\leq\aleph_\alphaならばα<ℵα+1\alpha<\aleph_{\alpha+1}であるから§E1.16 命題 4.2 (3)によりα+1≤ℵα+1\alpha+1\leq\aleph_{\alpha+1}である。λ\lambdaが極限順序数でありα≤ℵα\alpha\leq\aleph_\alphaがα<λ\alpha<\lambdaで成り立つならば、各α<λ\alpha<\lambdaについてα≤ℵα≤ℵλ\alpha\leq\aleph_\alpha\leq\aleph_\lambdaであるから、ℵλ\aleph_\lambdaはλ\lambdaの上界であり、§E1.16 命題 4.5 (2)によりλ≤ℵλ\lambda\leq\aleph_\lambdaである。

(3)一意性は(2)から従う。κ\kappaを無限基数とする。α≤ℵα\alpha\leq\aleph_\alphaであるから、ℵα≤κ\aleph_\alpha\leq\kappaを満たす順序数α\alphaはκ\kappa以下であり、

D={α∣α≤κ, ℵα≤κ}D=\{\alpha\mid\alpha\leq\kappa,\ \aleph_\alpha\leq\kappa\}

は§E1.13 定義 2.1によりκ+1\kappa+1の部分集合として集合である。κ<ω\kappa<\omegaとすると、恒等写像が全単射κ→κ\kappa\to\kappaを与えるから§E1.18 定義 1.2 (1)によりκ\kappaは有限であり、κ\kappaが無限であることに反する。よって§E1.16 命題 2.5 (2)によりω≤κ\omega\leq\kappaである。ℵ0=ω≤κ\aleph_0=\omega\leq\kappaであるから0∈D0\in Dであり、DDは空でない。(2)によりDDは下に閉じている。η=⋃D\eta=\bigcup Dとおくと、§E1.16 補題 4.4によりη\etaはDDの最小上界である。D⊆κ+1D\subseteq\kappa+1であるからκ\kappaはDDの上界であり、η≤κ\eta\leq\kappaである。

η∈D\eta\in Dである。η=0\eta=0ならば0∈D0\in Dである。η=δ+1\eta=\delta+1ならば、δ<η\delta<\etaであってη\etaは最小上界であるからδ\deltaはDDの上界でなく、δ<α\delta<\alphaを満たすα∈D\alpha\in Dが存在する。α≤η=δ+1\alpha\leq\eta=\delta+1とδ<α\delta<\alphaから§E1.16 命題 4.2 (3)によりα=η\alpha=\etaであり、η∈D\eta\in Dである。η\etaが極限順序数ならば、定義 4.1によりℵη=⋃α<ηℵα\aleph_\eta=\bigcup_{\alpha<\eta}\aleph_\alphaであり、各α<η\alpha<\etaはDDが下に閉じていることからDDに属してℵα≤κ\aleph_\alpha\leq\kappaを満たすから、κ\kappaは{ℵα∣α<η}\{\aleph_\alpha\mid\alpha<\eta\}の上界であって§E1.16 補題 4.4によりℵη≤κ\aleph_\eta\leq\kappaである。η≤κ\eta\leq\kappaとあわせてη∈D\eta\in Dである。

ℵη<κ\aleph_\eta<\kappaと仮定する。ℵη\aleph_\etaとκ\kappaはともに基数であるから、系 3.3によりℵη+1=(ℵη)+≤κ\aleph_{\eta+1}=(\aleph_\eta)^{+}\leq\kappaである。(2)によりη+1≤ℵη+1≤κ\eta+1\leq\aleph_{\eta+1}\leq\kappaであるからη+1∈D\eta+1\in Dとなり、η\etaがDDの上界であることに反する。よって命題 1.2 (1)によりκ=ℵη\kappa=\aleph_\etaである。

(4)κ\kappaを無限基数とする。(3)によりκ=ℵη\kappa=\aleph_\etaを満たす順序数η\etaが存在し、(2)によりℵ0≤ℵη=κ\aleph_0\leq\aleph_\eta=\kappaである。(1)によりℵ0\aleph_0自身が無限基数であるから、ℵ0\aleph_0は最小の無限基数である。▨

例 4.3 (アレフ階層の最初の段).系 3.3により、ℵ1=ℏ(ω)\aleph_1=\hbar(\omega)はω\omegaより大きい最小の基数である。ℵ2=ℏ(ℵ1)\aleph_2=\hbar(\aleph_1)も同様に定まる。

最初の極限段はλ=ω\lambda=\omegaの段であり、

ℵω=⋃n<ωℵn\aleph_\omega=\bigcup_{n<\omega}\aleph_n

である。命題 4.2 (2)によりℵn<ℵω\aleph_n<\aleph_\omegaがすべてのn<ωn<\omegaについて成り立つから、ℵω\aleph_\omegaはどのℵn\aleph_nとも異なる。

5 最小の非可算基数

定理 5.1.ω\omegaへの単射をもつ順序数の全体は集合として集まる。その和集合をω1\omega_1と書くと、次が成り立つ。

  1. ω1\omega_1は順序数であり、ω1\omega_1の元はちょうどω1\omega_1未満の順序数全体である。すなわちω1={α∣α<ω1}\omega_1=\{\alpha\mid\alpha<\omega_1\}である。
  2. 順序数α\alphaがα<ω1\alpha<\omega_1を満たすならば、α\alphaは高々可算な集合である。
  3. 逆に、順序数β\betaが高々可算な集合であるならばβ<ω1\beta<\omega_1である。
  4. ω1\omega_1からω\omegaへの単射は存在しない。とくにω1\omega_1は非可算である。
  5. ω1\omega_1は極限順序数である。
  6. ω1\omega_1は基数であり、ω1=ℵ1\omega_1=\aleph_1である。
  7. ω1\omega_1は非可算な順序数のうち最小のものであり、非可算な基数のうちも最小のものである。すなわち、任意の非可算基数κ\kappaに対してω1≤κ\omega_1\leq\kappaが成り立つ。

証明.定理 3.1をX=ωX=\omegaに適用する。同定理により、ω\omegaへの単射をもつ順序数の全体HHは集合であり、ℏ(ω)\hbar(\omega)はω\omegaへの単射をもたない最小の順序数である。ℏ(ω)\hbar(\omega)の最小性により、順序数α\alphaについてα<ℏ(ω)\alpha<\hbar(\omega)であることとα\alphaからω\omegaへの単射が存在することは同値である。§E1.16 命題 2.3 (3)によりℏ(ω)={α∣α<ℏ(ω)}\hbar(\omega)=\{\alpha\mid\alpha<\hbar(\omega)\}であるからH=ℏ(ω)H=\hbar(\omega)である。

HHは極限順序数である。00からω\omegaへの単射は空写像であるから0∈H0\in Hであり、H≠0H\neq0である。H=δ+1H=\delta+1と仮定するとδ∈H\delta\in Hであるから単射g ⁣:δ→ωg\colon\delta\to\omegaが存在し、g′(δ)=0g'(\delta)=0およびg′(β)=g(β)+1g'(\beta)=g(\beta)+1(β<δ\beta<\delta)と定めるとg′g'はδ+1\delta+1からω\omegaへの単射である。よってδ+1∈H=δ+1\delta+1\in H=\delta+1となり、§E1.16 命題 2.3 (2)に反する。HHは00でも後続順序数でもないから、§E1.16 定義 4.1により極限順序数である。

したがって§E1.16 命題 4.5 (2)により⋃H=H\bigcup H=Hである。すなわちω\omegaへの単射をもつ順序数の全体の和集合はHH自身であり、ω1=H=ℏ(ω)\omega_1=H=\hbar(\omega)である。

(1)ω1=ℏ(ω)\omega_1=\hbar(\omega)は順序数であるから、§E1.16 命題 2.3 (3)によりω1={α∣α<ω1}\omega_1=\{\alpha\mid\alpha<\omega_1\}である。

(2)α<ω1\alpha<\omega_1ならばα∈H\alpha\in Hであるから、α\alphaからω\omegaへの単射が存在する。ω\omegaをN≥0\mathbb N_{\geq0}と同一視すると(「順序数」§E1.16 命題 4.9)、§E1.18 定義 1.2によりα\alphaは高々可算な集合である。

(3)β\betaを高々可算な順序数とすると、§E1.18 定理 3.3によりβ\betaからN≥0\mathbb N_{\geq0}への単射が存在する。よってβ∈H=ω1\beta\in H=\omega_1であり、(1)によりβ<ω1\beta<\omega_1である。

(4)定理 3.1 (3)により、ω1=ℏ(ω)\omega_1=\hbar(\omega)からω\omegaへの単射は存在しない。§E1.18 定理 3.3により、高々可算な集合はN≥0\mathbb N_{\geq0}への単射をもつから、ω1\omega_1は高々可算でなく、§E1.18 定義 1.2の意味で非可算である。

(5)上で示した。

(6)定理 3.1 (2)によりω1=ℏ(ω)\omega_1=\hbar(\omega)は基数である。定義 4.1によりℵ1=ℏ(ℵ0)=ℏ(ω)\aleph_1=\hbar(\aleph_0)=\hbar(\omega)であるからω1=ℵ1\omega_1=\aleph_1である。

(7)γ\gammaを非可算な順序数とする。γ<ω1\gamma<\omega_1と仮定すると(2)によりγ\gammaは高々可算であり、仮定に反する。よって§E1.16 命題 2.5 (2)によりω1≤γ\omega_1\leq\gammaである。(4)によりω1\omega_1自身が非可算であるから、ω1\omega_1は非可算な順序数のうち最小のものであり、(6)により基数でもあるから、非可算な基数のうちも最小のものである。▨

注意 5.2 (置換公理スキーマへの依存).定理 5.1のうち、ω\omegaへの単射をもつ順序数の全体が集合であるという部分は、定理 3.1の証明を通じて§E1.13 定義 5.1に依っている。P(ω×ω)\mathcal P(\omega\times\omega)から整列順序の全体を切り出すところまでは§E1.13 定義 2.1で足りるが、そこから順序型の全体へ移る段が置換の適用である。「順序数」§E1.16 注意 3.4が、順序型の存在そのものについて同じことを述べている。

可算順序数を一つずつ作ることと、それらの全体を一つの集合として集めることは、別の仕事である。「順序数」§E1.16 注意 6.2は、この隔たりをω+ω\omega+\omegaについて、置換公理スキーマを欠く体系には内部に各ω+n\omega+nが存在してもω+ω\omega+\omegaを順序数としてもたないモデルがあるという形で述べている。これは体系についての主張ではなくモデルについての相対化した主張である。

注意 5.3 (本記事における選択公理の使用箇所). 本記事の主張のうち選択公理を用いるのは、定理 2.2と、それに依拠する命題 2.4および命題 2.5だけである。命題 1.2、命題 2.1、定理 3.1、系 3.3、定義 4.1、命題 4.2および定理 5.1は選択公理を用いない。

したがって、選択公理を仮定しない体系でもアレフ階層とω1\omega_1は定まる。定まらないのは「任意の集合の濃度」のほうである。整列可能でない集合には等濃な基数が無く、その集合の大きさをアレフ階層の中に位置づけることができない。

注意 5.4 (後続の記事との接続). 「基数算術」は、本記事の基数の上に和、積および冪を定義し、無限基数κ,λ\kappa,\lambdaについてκ+λ\kappa+\lambdaとκλ\kappa\lambdaがともに大きいほうに一致することを証明する。定理 2.2が与える濃度の表示と命題 2.5が与える順序の一致が、その議論の前提である。

「共終数と König の定理」は、アレフ階層の各段を共終数によって正則と特異に分け、ω1\omega_1が正則であることを証明する。本記事はω1\omega_1の正則性を扱わない。可算個の可算順序数の上限が可算であることも、その記事が可算選択公理のもとで扱う。

6 演習

問題 6.1 (無限基数に11を加えたもの).κ\kappaを無限基数とする。κ+1\kappa+1が基数でないことを示せ。

解答.

命題 4.2 (4)によりℵ0=ω≤κ\aleph_0=\omega\leq\kappaであり、§E1.16 命題 2.5 (1)によりω⊆κ\omega\subseteq\kappaである。

§E1.16 命題 2.3 (3)によりκ+1=κ∪{κ}\kappa+1=\kappa\cup\{\kappa\}の元はκ\kappa自身とβ<κ\beta<\kappaである。写像h ⁣:κ+1→κh\colon\kappa+1\to\kappaを

h(κ)=0,h(n)=n+1(n<ω),h(β)=β(ω≤β<κ)h(\kappa)=0,\qquad h(n)=n+1\quad(n<\omega),\qquad h(\beta)=\beta\quad(\omega\leq\beta<\kappa)

と定める。三つの場合の像はそれぞれ{0}\{0\}、{n+1∣n<ω}\{n+1\mid n<\omega\}、{β∣ω≤β<κ}\{\beta\mid\omega\leq\beta<\kappa\}であり、互いに交わらず、それぞれの場合でhhは単射であるから、hhは単射である。またκ\kappaの元ξ\xiについて、ξ=0\xi=0ならばh(κ)=ξh(\kappa)=\xiであり、0<ξ<ω0<\xi<\omegaならば§E1.16 命題 4.8 (2)と§E1.16 定義 4.1によりξ=n+1\xi=n+1を満たすn<ωn<\omegaが存在してh(n)=ξh(n)=\xiであり、ω≤ξ<κ\omega\leq\xi<\kappaならばh(ξ)=ξh(\xi)=\xiである。よってhhは全単射である。

したがってκ<κ+1\kappa<\kappa+1でありながらκ+1\kappa+1はκ\kappaと等濃であるから、定義 1.1によりκ+1\kappa+1は基数でない。▨

問題 6.2 (整列可能な集合の Hartogs 数).XXを整列可能な集合、すなわちXX上の整列順序が存在する集合とし、命題 2.1が与えるXXと等濃な基数をκ\kappaとする。選択公理を仮定せずにℏ(X)=κ+\hbar(X)=\kappa^{+}が成り立つことを示せ。

解答.

順序数α\alphaについて、α\alphaからXXへの単射が存在することと、α\alphaからκ\kappaへの単射が存在することは同値である。XXとκ\kappaのあいだの全単射を合成すればよい。したがってXXへの単射をもつ順序数の全体とκ\kappaへの単射をもつ順序数の全体は一致し、ℏ(X)=ℏ(κ)\hbar(X)=\hbar(\kappa)である。系 3.3と定義 3.4によりℏ(κ)=κ+\hbar(\kappa)=\kappa^{+}であるから、ℏ(X)=κ+\hbar(X)=\kappa^{+}である。▨

問題 6.3 (極限段のアレフ).λ\lambdaを極限順序数とする。ℵλ\aleph_\lambdaが後続基数でないこと、すなわちℵλ=μ+\aleph_\lambda=\mu^{+}を満たす基数μ\muが存在しないことを示せ。

解答.

ℵλ=μ+\aleph_\lambda=\mu^{+}を満たす基数μ\muが存在すると仮定する。系 3.3によりμ<μ+=ℵλ\mu<\mu^{+}=\aleph_\lambdaである。

定義 4.1によりℵλ=⋃α<λℵα\aleph_\lambda=\bigcup_{\alpha<\lambda}\aleph_\alphaであり、§E1.16 補題 4.4によりℵλ\aleph_\lambdaは{ℵα∣α<λ}\{\aleph_\alpha\mid\alpha<\lambda\}の最小上界である。μ<ℵλ\mu<\aleph_\lambdaであるからμ\muはこの集合の上界ではなく、μ<ℵα\mu<\aleph_\alphaを満たすα<λ\alpha<\lambdaが存在する。

ℵα\aleph_\alphaは命題 4.2 (1)により基数であるから、μ+\mu^{+}がμ\muより大きい最小の基数であることによりμ+≤ℵα\mu^{+}\leq\aleph_\alphaである。λ\lambdaは極限順序数であるから§E1.16 系 4.3によりα+1<λ\alpha+1<\lambdaであり、命題 4.2 (2)によりℵα<ℵα+1≤ℵλ\aleph_\alpha<\aleph_{\alpha+1}\leq\aleph_\lambdaである。あわせてℵλ=μ+≤ℵα<ℵλ\aleph_\lambda=\mu^{+}\leq\aleph_\alpha<\aleph_\lambdaとなり、§E1.16 命題 2.5 (2)に反する。▨

参考文献

  1. Karel Hrbacek and Thomas Jech, Introduction to Set Theory, 3rd ed., Marcel Dekker, New York, 1999.選択公理を用いる箇所と用いない箇所を分けた、アレフ階層と Hartogs の定理を参考にした。
  2. Thomas Jech, Set Theory, 3rd millennium ed., Springer Monographs in Mathematics, Springer, Berlin, 2003.基数を順序数として定義する流儀、アレフ階層および基数の順序を参考にした。
  3. Herbert B. Enderton, Elements of Set Theory, Academic Press, 1977.順序型とアレフ、および選択公理を用いない Hartogs の定理を参考にした。

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