§E8.26正多角形の作図

最終更新

n≥3n\ge3とし、複素平面の単位円上に

ζn=e2πi/n\zeta_n=e^{2\pi i/n}

を取る。正nn角形の頂点を一つずつ個別に求める問題は、原始nn乗根を一つ作図する問題と同値である。

命題 1. 正nn角形を定規とコンパスで作図することができることと、ζn\zeta_nが作図可能数であることは同値である。

証明.ζn\zeta_nが作図可能なら、作図可能数体の閉性§E8.25 補題 1.1により1,ζn,ζn2,…,ζnn−11,\zeta_n,\zeta_n^2,\ldots,\zeta_n^{n-1}をすべて作図することができる。これらを順に結べば正nn角形を得る。

逆に正nn角形が作図可能なら、その中心を原点に移し、一つの頂点を11に合わせる相似変換も定規とコンパスで実行することができる。隣接する頂点の一方はζn\zeta_nまたはζn−1\zeta_n^{-1}である。複素共役は実軸に関する鏡映で作図することができるため、ζn\zeta_nを作図することができる。▨

1 円分体から二次拡大の塔を得る

補題 1.1. 位数2m2^mの有限群GGには、部分群の列

G=H0▹H1▹⋯▹Hm={1}G=H_0\triangleright H_1\triangleright\cdots\triangleright H_m=\{1\}

であって、すべてのjjについて[Hj:Hj+1]=2[H_j:H_{j+1}]=2となるものが存在する。ここでHj+1H_{j+1}はHjH_jの正規部分群である。

証明.mmに関する帰納法を用いる。m=0m=0では自明である。m>0m>0とする。有限22群の中心に関する定理を類等式から導く。GGを共役によって自身へ作用させる。中心の元の軌道は一点であり、中心に属さないx∈Gx\in Gの軌道の大きさは

[G:CG(x)][G:C_G(x)]

である。CG(x)C_G(x)はGGの真の部分群なので、この指数は22の正の冪であり、偶数である。共役類を中心の一点軌道とそれ以外の軌道に分けると

∣G∣=∣Z(G)∣+∑j[G:CG(xj)]|G|=|Z(G)|+\sum_j[G:C_G(x_j)]

となる。左辺と総和の各項が偶数なので、∣Z(G)∣|Z(G)|も偶数である。したがってZ(G)Z(G)は非自明である。

1≠z∈Z(G)1\ne z\in Z(G)を取る。Lagrange の定理によりzzの位数は22の正の冪2r2^rである。z2r−1z^{2^{r-1}}は位数22の中心元であるため、この元が生成する部分群をNNとするとN⊴GN\trianglelefteq Gかつ∣N∣=2|N|=2である。

G/NG/Nは位数2m−12^{m-1}の群なので、帰納法の仮定による指数22の列をもつ。その列を商写像によってGGへ引き戻すと、GGからNNまでの各段が指数22の正規包含である列を得る。最後にN▹{1}N\triangleright\{1\}を加えれば求める列になる。▨

補題 1.2.qqを素数、e≥1e\ge1とする。このとき

φ(qe)=qe−1(q−1)\varphi(q^e)=q^{e-1}(q-1)

である。また、正整数m,nm,nが互いに素なら

φ(mn)=φ(m)φ(n)\varphi(mn)=\varphi(m)\varphi(n)

である。

証明.qeq^eを法とするqeq^e個の剰余類のうち、単元でない類はqqで割り切れる類に限る。そのような類は

0,q,2q,…,(qe−1−1)q0,q,2q,\ldots,(q^{e-1}-1)q

のqe−1q^{e-1}個である。したがって

φ(qe)=qe−qe−1=qe−1(q−1)\varphi(q^e)=q^e-q^{e-1}=q^{e-1}(q-1)

となる。

次に(m,n)=1(m,n)=1とする。剰余類の写像

Ψ:Z/mnZ⟶Z/mZ×Z/nZ,[x]mn⟼([x]m,[x]n)\Psi:\mathbb Z/mn\mathbb Z\longrightarrow \mathbb Z/m\mathbb Z\times\mathbb Z/n\mathbb Z, \qquad [x]_{mn}\longmapsto([x]_m,[x]_n)

を考える。Ψ([x]mn)=Ψ([y]mn)\Psi([x]_{mn})=\Psi([y]_{mn})ならmmとnnはともにx−yx-yを割る。互いに素であることからmnmnがx−yx-yを割るため、Ψ\Psiは単射である。Bézout の等式rm+sn=1rm+sn=1を満たす整数r,sr,sを取る。任意の剰余類の組([a]m,[b]n)([a]_m,[b]_n)に対して

x=brm+asnx=brm+asn

とおけばx≡a(modm)x\equiv a\pmod mかつx≡b(modn)x\equiv b\pmod nなので、Ψ\Psiは全射でもある。

[x]mn[x]_{mn}が単元であることは(x,mn)=1(x,mn)=1と同値であり、これは(x,m)=1(x,m)=1かつ(x,n)=1(x,n)=1と同値である。したがってΨ\Psiは単元群の間の全単射も与える。両辺の単元の個数を数えるとφ(mn)=φ(m)φ(n)\varphi(mn)=\varphi(m)\varphi(n)を得る。▨

証明の出発点は、正nn角形の作図可能性を原始nn乗根ζn\zeta_nの作図可能性へ移すことである。中間目標は、円分体の次数φ(n)\varphi(n)が22の冪であることと、円分体が二次拡大の塔をもつことを同値にすることである。本質的な一手は、有限22群の指数22の列を Galois 対応で体の塔へ移し、最後に Euler 関数の局所公式からnnの素因数を分類することである。

定理 1.3 (Gauss–Wantzel の定理).n≥3n\ge3とする。次の三条件は同値である。

  1. 正nn角形を定規とコンパスで作図することができる。
  2. φ(n)\varphi(n)は22の冪である。
  3. ある整数a≥0a\ge0と相異なる Fermat 素数p1,…,prp_1,\ldots,p_rが存在して n=2ap1⋯prn=2^a p_1\cdots p_r と書ける。ここで Fermat 素数とは22s+12^{2^s}+1の形をもつ素数である。

証明.(1)⇔\Leftrightarrow(2)を示す。正nn角形が作図可能なら、命題 1によりζn\zeta_nは作図可能である。§E8.20 定理 2.4は

[Q(ζn):Q]=φ(n)[\mathbb Q(\zeta_n):\mathbb Q]=\varphi(n)

を与えるため、作図可能数の次数に対する必要条件§E8.25 系 2.2によりφ(n)\varphi(n)は22の冪である。

逆にφ(n)=2m\varphi(n)=2^mとする。§E8.20 定理 2.4によりL=Q(ζn)L=\mathbb Q(\zeta_n)はQ\mathbb Q上の有限 Galois 拡大であり、

G=Gal⁡(L/Q)≅(Z/nZ)×,∣G∣=2mG=\operatorname{Gal}(L/\mathbb Q)\cong(\mathbb Z/n\mathbb Z)^\times, \qquad |G|=2^m

である。補題 1.1の列を取り、Ej=LHjE_j=L^{H_j}とおく。Galois の基本定理§E8.10 定理 4.1によって

Q=E0⊂E1⊂⋯⊂Em=L,[Ej+1:Ej]=[Hj:Hj+1]=2\mathbb Q=E_0\subset E_1\subset\cdots\subset E_m=L, \qquad [E_{j+1}:E_j]=[H_j:H_{j+1}]=2

となる。したがって§E8.25 定理 2.1によりζn\zeta_nは作図可能であり、命題 1により正nn角形を作図することができる。

(2)⇔\Leftrightarrow(3)を示す。nnの素因数分解を

n=2a∏j=1rqjejn=2^a\prod_{j=1}^r q_j^{e_j}

と書く。ただしqjq_jは相異なる奇素数である。補題 1.2を互いに素な素数冪へ反復して適用すると

φ(n)=φ(2a)∏j=1rqjej−1(qj−1)(1)\varphi(n)=\varphi(2^a)\prod_{j=1}^r q_j^{e_j-1}(q_j-1) \tag{1}

を得る。ここでa=0a=0ならφ(2a)=φ(1)=1\varphi(2^a)=\varphi(1)=1とする。φ(n)\varphi(n)が22の冪なら、奇数qjej−1q_j^{e_j-1}は11でなければならないためej=1e_j=1である。またqj−1q_j-1は式 (1) の約数なので、これも22の冪である。

qj=1+2bq_j=1+2^bと書く。bbが22の冪でないならb=2scb=2^s cと書ける奇数c>1c>1が存在する。このとき

qj=(22s)c+1q_j=(2^{2^s})^c+1

は、ccが奇数であるため22s+12^{2^s}+1で割り切れ、素数であることに反する。ゆえにb=2sb=2^sであり、qj=22s+1q_j=2^{2^s}+1は Fermat 素数である。これで(3)が従う。

逆に(3)を仮定する。各pj=22sj+1p_j=2^{2^{s_j}}+1は一度だけ現れるため

φ(pj)=pj−1=22sj\varphi(p_j)=p_j-1=2^{2^{s_j}}

である。またφ(2a)\varphi(2^a)も22の冪である。式 (1) によりφ(n)\varphi(n)は22の冪となる。▨

証明の十分性では、円分体の次数が22の冪であることを確認するだけではなく、Galois 群の部分群列を Galois 対応によって二次拡大の塔へ移した。この塔が、平方根を反復する作図の存在を保証する。

例 1.4 (正 17 角形と不可能な例).17=222+117=2^{2^2}+1は Fermat 素数であり、φ(17)=16\varphi(17)=16なので正1717角形を作図することができる。15=3⋅515=3\cdot5は相異なる Fermat 素数の積なので、正1515角形も作図することができる。一方、φ(7)=6\varphi(7)=6かつφ(9)=6\varphi(9)=6であるため、正77角形と正99角形は作図することができない。

2 演習

問題 2.1 (Gauss–Wantzel の定理の確認).

  1. 正nn角形の頂点を一つ作図したとき、その複素共役も作図することができる理由を説明せよ。
  2. 位数88の群から補題 1.1の列を構成し、対応する体の塔の各次数を求めよ。
  3. n=51n=51とn=85n=85について Gauss–Wantzel の条件を判定せよ。
  4. 1+2b1+2^bが素数ならbbは22の冪であるという証明で、xc+1x^c+1の因数分解を明示せよ。

3 扱った範囲と次の記事

本記事では、正nn角形の作図可能性を円分体の Galois 群と Euler 関数によって判定し、作図可能なnnを22の冪と相異なる Fermat 素数の積として分類した。次の記事では、平方根に限らず一般の根基を添加する体の塔を扱い、多項式が根基によって可解であるための Galois 群の条件を証明する。

参考文献

  1. Lawrence C. Washington, Introduction to Cyclotomic Fields, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 83, Springer, New York, 1997.
  2. Ian Stewart, Galois Theory, 5th ed., CRC Press, 2022.

前提記事