§E8.18Galois 1-cocycle と Hilbert の定理 90

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体KKの分離閉包をKsK_sとし、§E8.14 定義 1.1で定義した絶対 Galois 群をGK=Gal⁡(Ks/K)G_K=\operatorname{Gal}(K_s/K)と書く。GKG_Kは Krull 位相をもつ副有限群である。

体上で方程式の解や主等質空間の基点を選ぶと、Galois 群による移動量が生じる。基点を替えると移動量も変わるが、その変化には一定の形がある。本記事では、移動量を連続一次コサイクルとして定式化し、基点変更で移り合うコサイクルを同一視する。不変元の持上げ、主等質空間および Hilbert の定理 90 を、この同値関係の具体的な計算として扱う。

加法記法を基本とし、乗法群についてだけ乗法記法を併記する。係数群には常に離散位相を入れる。

1 連続一次コサイクルと基点変更

定義 1.1. 離散GKG_K-加群 (discreteGKG_K-module) とは、離散位相をもつアーベル群MMと、連続な作用GK×M→MG_K\times M\to Mの組である。

定義 1.2.MMを離散GKG_K-加群とする。連続写像z:GK→Mz:G_K\to Mが

zστ=zσ+σzτ(σ,τ∈GK)(1)z_{\sigma\tau}=z_\sigma+\sigma z_\tau \qquad(\sigma,\tau\in G_K) \tag{1}

を満たすとき、zzを連続一次コサイクル (continuous 1-cocycle) という。

m∈Mm\in Mから定まるコサイクル

(δm)σ=σm−m(2)(\delta m)_\sigma=\sigma m-m \tag{2}

を一次余境界 (1-coboundary) という。実際、(δm)στ=σ(τm−m)+(σm−m)(\delta m)_{\sigma\tau}=\sigma(\tau m-m)+(\sigma m-m)なので、式 (2) は式 (1) を満たす。二つの連続一次コサイクルz,z′z,z'について、あるm∈Mm\in Mが存在して

zσ′=zσ+σm−m(σ∈GK)(3)z'_\sigma=z_\sigma+\sigma m-m \qquad(\sigma\in G_K) \tag{3}

となるとき、zzとz′z'は基点変更によって同値 (equivalent under a change of basepoint) であるという。零コサイクルと同値なコサイクルを自明 (trivial) という。式 (3) でm=0m=0、−m-mおよび二つの基点変更量の和を順に用いると、反射律、対称律および推移律が従う。

乗法記法の離散GKG_K-加群では、式 (1) と式 (3) をそれぞれ

zστ=zσ σ(zτ),zσ′=zσ σ(m)mz_{\sigma\tau}=z_\sigma\,\sigma(z_\tau), \qquad z'_\sigma=z_\sigma\,\frac{\sigma(m)}{m}

と読む。この場合、zzが自明であることは、あるmmに対してzσ=σ(m)m−1z_\sigma=\sigma(m)m^{-1}となることと同値である。

式 (1) へ単位元を代入するとz1=0z_1=0を得る。また、0=z1=zσ+σzσ−10=z_1=z_\sigma+\sigma z_{\sigma^{-1}}からzσ−1=−σ−1zσz_{\sigma^{-1}}=-\sigma^{-1}z_\sigmaを得る。乗法記法では、それぞれz1=1z_1=1とzσ−1=σ−1(zσ−1)z_{\sigma^{-1}}=\sigma^{-1}(z_\sigma^{-1})となる。

例 1.3 (自明作用の場合).GKG_KがMMへ自明に作用するなら、連続一次コサイクルは連続準同型GK→MG_K\to Mにほかならない。式 (2) は常に零なので、基点変更による同値関係は等号になる。とくに有限定数加群Z/nZ\mathbb Z/n\mathbb Zへの連続一次コサイクルは、GKG_Kの有限巡回商を記録する。

2 不変元の持上げ障害

短完全列の右端にある不変元を中央の加群へ持ち上げ、その持上げが Galois 作用で動く量を測る。別の持上げを選んだときの変化が式 (3) になること、および移動量を消す基点変更が不変な持上げを与えることが証明の要点である。

定理 2.1. 離散GKG_K-加群の短完全列

0⟶A→iB→πC⟶0(4)0\longrightarrow A\xrightarrow{i}B\xrightarrow{\pi}C\longrightarrow0 \tag{4}

と、GKG_Kによって不変な元c∈Cc\in Cを取る。ccの持上げb∈Bb\in Bを一つ選ぶと、

i(zσ)=σb−b(σ∈GK)(5)i(z_\sigma)=\sigma b-b \qquad(\sigma\in G_K) \tag{5}

によって連続一次コサイクルz:GK→Az:G_K\to Aが定まる。

式 (5) から得るコサイクルの基点変更による同値類は、持上げbbの選択に依存しない。この同値類が自明であることと、ccがGKG_Kによって不変な持上げをBBにもつことは同値である。

証明.ccの不変性から

π(σb−b)=σc−c=0\pi(\sigma b-b)=\sigma c-c=0

である。式 (4) の完全性によりσb−b\sigma b-bはi(A)i(A)に属し、iiの単射性により式 (5) はzσ∈Az_\sigma\in Aを一意に定める。さらに

i(zστ)=στb−b=σ(τb−b)+(σb−b)=i(σzτ+zσ)i(z_{\sigma\tau})=\sigma\tau b-b =\sigma(\tau b-b)+(\sigma b-b) =i(\sigma z_\tau+z_\sigma)

であるから、zzは式 (1) を満たす。写像σ↦σb−b\sigma\mapsto\sigma b-bは連続であり、離散部分加群i(A)i(A)とAAはiiによって同相なので、zzも連続である。

別の持上げはb+i(a)b+i(a)と一意に書ける。この持上げから得るコサイクルをz′z'とすると

i(zσ′−zσ)=σi(a)−i(a)=i(σa−a)i(z'_\sigma-z_\sigma) =\sigma i(a)-i(a) =i(\sigma a-a)

なので、zσ′=zσ+σa−az'_\sigma=z_\sigma+\sigma a-aである。したがって同値類は持上げの選択に依存しない。

ccが不変な持上げb0b_0をもつなら、b0b_0から得るコサイクルは零であり、どの持上げから得るコサイクルも自明である。逆に、式 (5) のzzが自明なら、あるa∈Aa\in Aに対してzσ=σa−az_\sigma=\sigma a-aとなる。すると

σ(b−i(a))−(b−i(a))=i(zσ)−i(σa−a)=0\sigma(b-i(a))-(b-i(a)) =i(z_\sigma)-i(\sigma a-a)=0

であり、b−i(a)b-i(a)はccの不変な持上げである。▨

3 主等質空間とコサイクル

定義 3.1.MMを離散GKG_K-加群とする。MM-主等質空間 (MM-torsor) とは、次の条件を満たす非空離散集合XXである。

  1. MMはXXへ自由かつ推移的に作用する。
  2. GKG_KはXXへ連続に作用する。
  3. σ(x+m)=σx+σm\sigma(x+m)=\sigma x+\sigma mがすべてのσ∈GK\sigma\in G_K、x∈Xx\in X、m∈Mm\in Mについて成り立つ。

二つの MM-主等質空間の同型 (isomorphism ofMM-torsors) は、MMの作用とGKG_Kの作用の双方と可換な全単射とする。

主等質空間からコサイクルを作るには基点を一つ選び、その Galois 移動量を読む。逆向きには、コサイクルを平行移動の補正項として使ってMM上の Galois 作用を捻る。

定理 3.2.MMを離散GKG_K-加群とする。連続一次コサイクルGK→MG_K\to Mの基点変更による同値類と、MM-主等質空間の同型類との間に全単射がある。自明な同値類は、GKG_K-不変点をもつ主等質空間に対応する。

証明.XXをMM-主等質空間とし、x0∈Xx_0\in Xを選ぶ。各σ∈GK\sigma\in G_Kに対して一意なzσ∈Mz_\sigma\in Mが存在して

σx0=x0+zσ(6)\sigma x_0=x_0+z_\sigma \tag{6}

となる。作用の両立性から

x0+zστ=στx0=σ(x0+zτ)=x0+zσ+σzτx_0+z_{\sigma\tau}=\sigma\tau x_0 =\sigma(x_0+z_\tau)=x_0+z_\sigma+\sigma z_\tau

であり、zzは一次コサイクルである。GKG_KのXXへの作用は連続で、XXとMMは離散的なので、式 (6) からzzの連続性も従う。基点をx0+mx_0+mへ替えると

σ(x0+m)=(x0+m)+(zσ+σm−m)\sigma(x_0+m)=(x_0+m)+(z_\sigma+\sigma m-m)

となるため、コサイクルは式 (3) のとおり変わる。主等質空間の同型は基点の移動量を保つので、XXはコサイクルの同値類を定める。

逆に連続一次コサイクルzzに対し、集合としてXz=MX_z=Mとおき、MMは平行移動で作用するとする。GKG_Kの作用を

σ∗x=zσ+σx(7)\sigma*x=z_\sigma+\sigma x \tag{7}

で定める。式 (1) は(στ)∗x=σ∗(τ∗x)(\sigma\tau)*x=\sigma*(\tau*x)を与え、z1=0z_1=0は1∗x=x1*x=xを与える。式 (7) は連続であり、平行移動との両立条件も満たすので、XzX_zはMM-主等質空間である。

zσ′=zσ+σm−mz'_\sigma=z_\sigma+\sigma m-mなら、平行移動x↦x−mx\mapsto x-mはXz→Xz′X_z\to X_{z'}の同型である。二つの構成が互いに逆であることは、XzX_zの基点を00に取ると確認することができる。最後に、zσ=σm−mz_\sigma=\sigma m-mと書けることは、式 (6) の点x0−mx_0-mがGKG_Kに固定されることと同値である。▨

アフィン主等質空間を有限 Galois 拡大からKK上へ戻すため、半線形降下を準備する。証明の核は、相異なる体準同型の線形独立性と、その独立性から得る Galois 平均の分解である。

補題 3.3 (Artin の独立性).LLを体とし、σ1,…,σr:L→Ω\sigma_1,\ldots,\sigma_r:L\to\Omegaを相異なる体準同型とする。このときσ1,…,σr\sigma_1,\ldots,\sigma_rはΩ\Omega上一次独立である。すなわち、

∑j=1rcjσj(x)=0(x∈L)\sum_{j=1}^r c_j\sigma_j(x)=0 \qquad(x\in L)

がc1,…,cr∈Ωc_1,\ldots,c_r\in\Omegaについて成り立つなら、すべてのcjc_jは零である。

証明. 非自明な線形関係があると仮定し、項数が最小の関係を取る。最小性により各係数は非零である。一つの係数で関係全体を割り、c1=1c_1=1としてよい。項数が11ならx=1x=1を代入して直ちに矛盾するので、項数は少なくとも22である。σ1≠σr\sigma_1\ne\sigma_rなので、σ1(y)≠σr(y)\sigma_1(y)\ne\sigma_r(y)となるy∈Ly\in Lが存在する。任意のx∈Lx\in Lに対し、yxyxへ適用した関係からσr(y)\sigma_r(y)倍したxxへの関係を引くと

∑j=1r−1cj(σj(y)−σr(y))σj(x)=0\sum_{j=1}^{r-1}c_j\bigl(\sigma_j(y)-\sigma_r(y)\bigr)\sigma_j(x)=0

を得る。j=1j=1の係数は非零なので、項数がより少ない非自明な関係が得られ、最小性に反する。▨

補題 3.4.L/KL/Kを有限 Galois 拡大、G=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)とする。VVをLL-ベクトル空間とし、GGが

σ(λv)=σ(λ)σ(v)(λ∈L, v∈V)(8)\sigma(\lambda v)=\sigma(\lambda)\sigma(v) \qquad(\lambda\in L,\ v\in V) \tag{8}

を満たすようにVVへ作用するとする。このとき標準写像

L⊗KVG⟶V,λ⊗v⟼λv(9)L\otimes_K V^G\longrightarrow V, \qquad \lambda\otimes v\longmapsto\lambda v \tag{9}

は同型である。

とくに、BBが半線形なGGの環自己同型作用をもつLL-代数なら、C=BGC=B^GはKK-代数であり、L⊗KC→BL\otimes_KC\to BはLL-代数同型である。二つのこのようなLL-代数の間のGG-同変な準同型は、不変部分の間のKK-代数準同型を基底変換したものとして一意に定まる。

証明.d=[L:K]d=[L:K]とし、KK-基底e1,…,ede_1,\ldots,e_dを取る。LL-線形写像

q:L⊗KL⟶∏σ∈GL,q(a⊗b)σ=aσ(b)q:L\otimes_KL\longrightarrow\prod_{\sigma\in G}L, \qquad q(a\otimes b)_\sigma=a\sigma(b)

の行列は(σ(ej))σ,j(\sigma(e_j))_{\sigma,j}である。補題 3.3により、この行列の行は一次独立である。両辺のLL-次元はddなので、qqは同型である。したがって、ある有限個のci,di∈Lc_i,d_i\in Lが存在して

∑iciσ(di)={1,σ=1,0,σ≠1(10)\sum_i c_i\sigma(d_i)= \begin{cases} 1,&\sigma=1,\\ 0,&\sigma\ne1 \end{cases} \tag{10}

を満たす。

v∈Vv\in Vに対してwi=∑σ∈Gσ(div)w_i=\sum_{\sigma\in G}\sigma(d_iv)と置く。添字の置換によりwi∈VGw_i\in V^Gであり、式 (10) から

∑iciwi=∑σ∈G(∑iciσ(di))σ(v)=v\sum_i c_iw_i =\sum_{\sigma\in G}\left(\sum_i c_i\sigma(d_i)\right)\sigma(v)=v

となる。よって式 (9) は全射である。式 (9) の核の元を∑j=1raj⊗vj\sum_{j=1}^r a_j\otimes v_jとし、a1,…,ara_1,\ldots,a_rがKK上一次独立であるように表示する。像が零なら、各σ∈G\sigma\in Gを施して∑jσ(aj)vj=0\sum_j\sigma(a_j)v_j=0を得る。aja_jをKK-基底へ延長し、その基底に対して上と同じ議論を適用すると、埋め込みの値を並べた行列の対応する列は一次独立である。したがって、すべてのvjv_jは零であり、式 (9) は単射でもある。

V=BV=Bのとき、式 (9) は積と単位元を保つので代数同型である。GG-同変な準同型は不変部分を不変部分へ写し、式 (9) を用いて基底変換すると元の準同型に戻る。逆に不変部分上の準同型の基底変換はGG-同変であるため、最後の一意性も従う。▨

有限 Galois 拡大上で基点を選ぶとコサイクルが得られる。逆向きには、コサイクルを使って群作用を捻り、座標環へ補題 3.4を適用する。

命題 3.5.A\mathcal AをGa\mathbb G_a、Gm\mathbb G_m、char⁡K∤n\operatorname{char}K\nmid nのときのμn\mu_n、有限定数可換群、または標数ppにおける有限長 Witt ベクトル加法群WmW_mのいずれかとする。

GK→A(Ks)G_K\to\mathcal A(K_s)という連続一次コサイクルの基点変更による同値類と、有限 Galois 拡大上で自明になるアフィンA\mathcal A-主等質空間のKK-同型類との間に全単射がある。ここで、アフィンKK-スキームXXがA\mathcal A-主等質空間であるとは、A\mathcal Aの作用をもち、写像

A×KX⟶X×KX,(a,x)⟼(a+x,x)\mathcal A\times_KX\longrightarrow X\times_KX, \qquad(a,x)\longmapsto(a+x,x)

が同型であることをいう。

証明. 五種類の群法を加法記法で統一して書く。アフィンA\mathcal A-主等質空間XXが有限 Galois 拡大L/KL/K上で自明であるとする。自明化のもとで単位元に対応する点x∈X(L)x\in X(L)を選び、G=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)と置く。主等質作用の自由性と推移性により、各σ∈G\sigma\in Gに対して

σx=x+zσ(11)\sigma x=x+z_\sigma \tag{11}

となるzσ∈A(L)z_\sigma\in\mathcal A(L)が一意に存在する。στx\sigma\tau xを二通りに計算するとzστ=zσ+σzτz_{\sigma\tau}=z_\sigma+\sigma z_\tauを得る。有限群上の写像なので連続であり、GK→GG_K\to Gと合成すると連続一次コサイクルになる。基点をx+ax+aへ変更するとzσz_\sigmaはzσ+σa−az_\sigma+\sigma a-aへ変わる。

逆に、連続一次コサイクルz:GK→A(Ks)z:G_K\to\mathcal A(K_s)を取る。GKG_Kのコンパクト性と係数の離散性によりz(GK)z(G_K)は有限である。z(GK)⊂A(L0)z(G_K)\subset\mathcal A(L_0)となる有限 Galois 拡大L0/KL_0/Kを取る。z1=0z_1=0と連続性により、zzが零になる単位元の開近傍に含まれる開部分群HHが存在する。HHの正規核とGal⁡(Ks/L0)\operatorname{Gal}(K_s/L_0)の共通部分に含まれる開正規部分群NNを取る。NNはzzの各値を固定し、zn=0z_n=0がn∈Nn\in Nについて成り立つ。コサイクル条件から

zσn=zσ=znσz_{\sigma n}=z_\sigma=z_{n\sigma}

なので、L=KsNL=K_s^Nと置けば、zzはG=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)上のA(L)\mathcal A(L)値コサイクルを定める。

AL\mathcal A_Lの点に

tσ(y)=zσ+σ(y)(12)t_\sigma(y)=z_\sigma+\sigma(y) \tag{12}

と作用させる。式 (1) はtσtτ=tστt_\sigma t_\tau=t_{\sigma\tau}を与える。したがってB=Γ(AL,OAL)B=\Gamma(\mathcal A_L,\mathcal O_{\mathcal A_L})には

(σ⋅f)(y)=σ(f(tσ−1(y)))(\sigma\cdot f)(y)=\sigma\left(f\left(t_{\sigma^{-1}}(y)\right)\right)

で定まる半線形なGGの環自己同型作用が入る。実際、σ⋅(λf)=σ(λ)(σ⋅f)\sigma\cdot(\lambda f)=\sigma(\lambda)(\sigma\cdot f)であり、tτ−1tσ−1=t(στ)−1t_{\tau^{-1}}t_{\sigma^{-1}}=t_{(\sigma\tau)^{-1}}からσ⋅(τ⋅f)=(στ)⋅f\sigma\cdot(\tau\cdot f)=(\sigma\tau)\cdot fが従う。C=BGC=B^G、Y=Spec⁡CY=\operatorname{Spec}Cと置くと、補題 3.4により

YL≅AL(13)Y_L\cong\mathcal A_L \tag{13}

である。

AL\mathcal A_Lには通常の半線形作用を入れ、式 (13) の右辺には式 (12) の作用を入れる。写像

AL×LYL⟶YL,(a,y)⟼a+y\mathcal A_L\times_LY_L\longrightarrow Y_L, \qquad(a,y)\longmapsto a+y

と、主等質性を表す同型

AL×LYL⟶YL×LYL,(a,y)⟼(a+y,y)(14)\mathcal A_L\times_LY_L\longrightarrow Y_L\times_LY_L, \qquad(a,y)\longmapsto(a+y,y) \tag{14}

はGG-同変である。式 (14) の逆写像もGG-同変である。半線形降下の準同型に関する一意性を各座標環へ適用すると、作用写像と式 (14) はKK上へ降下する。よってYYはアフィンA\mathcal A-主等質空間であり、式 (13) によりLL上で自明になる。

同値類からの構成が well-defined であることを確認する。zσ′=zσ+σa−az'_\sigma=z_\sigma+\sigma a-aとし、必要なら有限 Galois 拡大L/KL/Kを拡大してa∈A(L)a\in\mathcal A(L)と、z,z′z,z'の双方がG=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)を通じて因子化することを満たすようにする。二つの捻った作用をtz,tz′t^z,t^{z'}と書くと、平行移動Ta(y)=y−aT_a(y)=y-aは

Ta(tσz(y))=zσ+σy−a=zσ′+σ(y−a)=tσz′(Ta(y))T_a\bigl(t^z_\sigma(y)\bigr)=z_\sigma+\sigma y-a =z'_\sigma+\sigma(y-a)=t^{z'}_\sigma\bigl(T_a(y)\bigr)

を満たし、AL\mathcal A_Lの平行移動作用とも可換する。したがってTaT_aは二つの降下データの間のGG-同変なAL\mathcal A_L-主等質空間同型であり、半線形降下の一意性によりA\mathcal A-主等質空間のKK-同型Yz≅Yz′Y_z\cong Y_{z'}へ降下する。逆に、アフィン主等質空間のKK-同型へ基点を移せば式 (11) のコサイクルは変わらず、基点を別に選んだ差だけが式 (3) の変更を与える。

降下した主等質空間からコサイクルを作ると、式 (13) の単位元を基点としてもとのzzを回復する。逆にXXから式 (11) のコサイクルを作って降下すると、XLX_Lのもとの半線形作用を回復し、半線形降下の一意性により降下先はXXと同型である。有限 Galois 拡大の選択を変えた場合は、二つの拡大の合成体上で降下データが一致する。したがって二つの構成は選択に依存せず、互いに逆な全単射を与える。▨

4 Hilbert の定理 90

絶対 Galois 群上の連続コサイクルは有限個の値しか取らない。単位元の近傍で自明になることと、値を固定する開正規部分群を同時に選ぶと、有限 Galois 群上のコサイクルへ降ろすことができる。

補題 4.1.M=KsM=K_sを加法群として、またはM=Ks×M=K_s^\timesを乗法群として考える。任意の連続一次コサイクルz:GK→Mz:G_K\to Mは、ある有限 Galois 拡大L/KL/Kに対するコサイクル

Gal⁡(L/K)⟶LまたはGal⁡(L/K)⟶L×\operatorname{Gal}(L/K)\longrightarrow L \quad\text{または}\quad \operatorname{Gal}(L/K)\longrightarrow L^\times

から膨張して得られる。

証明.GKG_KはコンパクトでMMは離散なので、z(GK)z(G_K)は有限集合である。その全要素を含む有限 Galois 拡大をL0/KL_0/Kとする。連続性とz1=0z_1=0またはz1=1z_1=1により、zzが零または一になる単位元の開近傍に含まれる開部分群HHが存在する。HHの正規核とGal⁡(Ks/L0)\operatorname{Gal}(K_s/L_0)の共通部分に含まれる開正規部分群NNを取る。

L=KsNL=K_s^NとするとL/KL/Kは有限 Galois であり、zzの値はLLに属する。n∈Nn\in Nについてzn=0z_n=0またはzn=1z_n=1であり、NNはzzの各値を固定する。コサイクル条件からzσn=zσ=znσz_{\sigma n}=z_\sigma=z_{n\sigma}なので、zzはGK/N=Gal⁡(L/K)G_K/N=\operatorname{Gal}(L/K)を通じて因子化する。▨

加法版では、Galois 群の元をすべて足すトレースから係数11の平均を作る。その平均でコサイクル値を重み付きに足すと、各移動量を一つの元の Galois 差として回収することができる。

定理 4.2 (加法版 Hilbert の定理 90).L/KL/Kを有限 Galois 拡大、G=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)とする。加法群LLに値をもつ任意の一次コサイクルz:G→Lz:G\to Lに対して、あるb∈Lb\in Lが存在して

zσ=σb−b(σ∈G)(15)z_\sigma=\sigma b-b \qquad(\sigma\in G) \tag{15}

となる。

さらに、加法群KsK_sに値をもつ任意の連続一次コサイクルz:GK→Ksz:G_K\to K_sに対しても、あるb∈Ksb\in K_sが存在して式 (15) がすべてのσ∈GK\sigma\in G_Kについて成り立つ。したがって、加法群に値をもつ各コサイクルは基点変更から生じる。

証明. まず有限 Galois 拡大L/KL/Kを考える。写像

Tr⁡L/K:L⟶K,u⟼∑τ∈Gτ(u)\operatorname{Tr}_{L/K}:L\longrightarrow K, \qquad u\longmapsto\sum_{\tau\in G}\tau(u)

はKK-線形であり、補題 3.3により零写像ではない。値がGGによって不変なので像はKKに含まれ、非零なKK-線形写像L→KL\to Kは全射である。したがってTr⁡L/K(u)=1\operatorname{Tr}_{L/K}(u)=1となるu∈Lu\in Lが存在する。

b=−∑τ∈Gzτ τ(u)b=-\sum_{\tau\in G}z_\tau\,\tau(u)

とおく。コサイクル条件zστ=zσ+σzτz_{\sigma\tau}=z_\sigma+\sigma z_\tauを用いると

σb=−∑τ∈G(zστ−zσ) στ(u)=b+zσ∑ρ∈Gρ(u)=b+zσ.\begin{aligned} \sigma b &=-\sum_{\tau\in G}(z_{\sigma\tau}-z_\sigma)\,\sigma\tau(u)\\ &=b+z_\sigma\sum_{\rho\in G}\rho(u) =b+z_\sigma. \end{aligned}

よって式 (15) が成り立つ。

GKG_K上の連続コサイクルには補題 4.1を適用する。得られた有限 Galois 拡大上で上の構成を行うとb∈Ksb\in K_sが得られる。▨

乗法版では通常の和を使うと係数が逆向きに動く。コサイクル値の逆数を係数とする非零な半線形和を作り、非零な値bbに対する比σ(b)/b\sigma(b)/bを計算する。

定理 4.3 (乗法版 Hilbert の定理 90).L/KL/Kを有限 Galois 拡大、G=Gal⁡(L/K)G=\operatorname{Gal}(L/K)とする。乗法群L×L^\timesに値をもつ任意の一次コサイクルz:G→L×z:G\to L^\timesに対して、あるb∈L×b\in L^\timesが存在して

zσ=σ(b)b(σ∈G)(16)z_\sigma=\frac{\sigma(b)}{b} \qquad(\sigma\in G) \tag{16}

となる。

さらに、乗法群Ks×K_s^\timesに値をもつ任意の連続一次コサイクルz:GK→Ks×z:G_K\to K_s^\timesに対しても、あるb∈Ks×b\in K_s^\timesが存在して式 (16) がすべてのσ∈GK\sigma\in G_Kについて成り立つ。したがって、乗法群に値をもつ各コサイクルは基点変更から生じる。

証明. まず有限 Galois 拡大L/KL/Kを考える。補題 3.3により、KK-線形写像

T:L⟶L,T(x)=∑τ∈Gzτ−1τ(x)T:L\longrightarrow L, \qquad T(x)=\sum_{\tau\in G}z_\tau^{-1}\tau(x)

は零写像ではない。したがってb=T(x)≠0b=T(x)\ne0となるx∈Lx\in Lを取ることができる。

コサイクル条件からσ(zτ)=zσ−1zστ\sigma(z_\tau)=z_\sigma^{-1}z_{\sigma\tau}なので

σb=∑τ∈Gσ(zτ−1) στ(x)=zσ∑τ∈Gzστ−1 στ(x)=zσb.\begin{aligned} \sigma b &=\sum_{\tau\in G}\sigma(z_\tau^{-1})\,\sigma\tau(x)\\ &=z_\sigma\sum_{\tau\in G}z_{\sigma\tau}^{-1}\,\sigma\tau(x) =z_\sigma b. \end{aligned}

よって式 (16) が成り立つ。

GKG_K上の連続コサイクルには補題 4.1を適用する。得られた有限 Galois 拡大上で上の構成を行うとb∈Ks×b\in K_s^\timesが得られる。▨

例 4.4 (二次拡大の乗法コサイクル).L/KL/Kを二次 Galois 拡大とし、非自明な自己同型をσ\sigmaとする。a∈L×a\in L^\timesがaσ(a)=1a\sigma(a)=1を満たすと、z1=1z_1=1、zσ=az_\sigma=aは乗法一次コサイクルである。定理 4.3により、あるb∈L×b\in L^\timesが存在して

a=σ(b)ba=\frac{\sigma(b)}{b}

となる。例えばL=CL=\mathbb C、K=RK=\mathbb R、a=e2iθa=e^{2i\theta}なら、b=e−iθb=e^{-i\theta}と取るとb‾/b=e2iθ=a\overline b/b=e^{2i\theta}=aとなる。

5 演習

問題 5.1.

  1. 加法記法の一次コサイクルzzについて、z1=0z_1=0とzσ−1=−σ−1zσz_{\sigma^{-1}}=-\sigma^{-1}z_\sigmaを式 (1) から導け。
  2. 定理 2.1で持上げをb+i(a)b+i(a)へ替えたとき、式 (5) のコサイクルがzσ+σa−az_\sigma+\sigma a-aへ変わることを証明せよ。
  3. MM-主等質空間がGKG_K-不変点を一つもつなら、その点を基点とする同型X≅MX\cong MがGKG_K-同変であることを証明せよ。
  4. 加法版 Hilbert の定理 90 の証明でTr⁡L/K(u)=1\operatorname{Tr}_{L/K}(u)=1が使われる箇所を計算し、bbの符号を確認せよ。
  5. 乗法版 Hilbert の定理 90 の証明でzτz_\tauではなくzτ−1z_\tau^{-1}を係数に用いる理由を、σb\sigma bの計算から説明せよ。

6 扱った範囲と次の記事

本記事では、連続一次コサイクルと基点変更による同値を定義し、不変元の持上げ障害、主等質空間との対応、有限 Galois 降下ならびに加法版・乗法版の Hilbert の定理 90 を具体式で証明した。後続では、円分拡大と円分指標を構成した後、nn乗根の選択から生じるコサイクル同値類へ乗法版 Hilbert の定理 90 を適用する。

参考文献

  1. Jean-Pierre Serre, Galois Cohomology, Springer, Berlin, 1997.
  2. Jürgen Neukirch, Alexander Schmidt, and Kay Wingberg, Cohomology of Number Fields, 2nd ed., Grundlehren der mathematischen Wissenschaften 323, Springer, Berlin, 2008.

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