§E8.22Artin–Schreier–Witt 理論

最終更新

標数ppではx↦xp−xx\mapsto x^p-xの核がFp\mathbb F_pであり、この写像から次数ppの巡回拡大を構成することができる。次数pmp^mへ拡張するには、mm個の成分を単に独立な加法群として並べるのではなく、pp典型 Witt ベクトルの加法を用いる必要がある。Witt 加法により、定数部分の核は(Z/pZ)m(\mathbb Z/p\mathbb Z)^mではなく巡回群Z/pmZ\mathbb Z/p^m\mathbb Zになる。

§E8.12 定理 3.2では、標数ppの体の完全性を Frobeniusx↦xpx\mapsto x^pの全射性で特徴づけた。本記事では Frobenius 自体の全射性を仮定せず、分離的な写像F−1F-1を用いて任意の標数ppの体を扱う。

本記事では一つの Witt 類が分類する対象を標識付き巡回拡大として記述する。一般の有限アーベルpp-拡大には複数の指標が必要であり、Witt 類の有限部分群と完全対によって分類する。

1 有限長 Witt ベクトル

素数pp、整数m≥1m\ge1および不定元X0,…,Xm−1X_0,\ldots,X_{m-1}に対して、pp典型 ghost 多項式を

wj(X0,…,Xj)=X0pj+pX1pj−1+⋯+pjXj(0≤j<m)(1)w_j(X_0,\ldots,X_j) =X_0^{p^j}+pX_1^{p^{j-1}}+\cdots+p^jX_j \qquad(0\le j<m) \tag{1}

と定める。

補題 1.1.m≥1m\ge1とする。各0≤j<m0\le j<mに対して、整数係数多項式

Sj,Pj∈Z[X0,…,Xj,Y0,…,Yj]S_j,P_j\in \mathbb Z[X_0,\ldots,X_j,Y_0,\ldots,Y_j]

が一意に存在し、S=(S0,…,Sm−1)S=(S_0,\ldots,S_{m-1})とP=(P0,…,Pm−1)P=(P_0,\ldots,P_{m-1})は

wj(S)=wj(X)+wj(Y),wj(P)=wj(X)wj(Y)(2)w_j(S)=w_j(X)+w_j(Y), \qquad w_j(P)=w_j(X)w_j(Y) \tag{2}

を満たす。加法逆元を与える整数係数多項式も一意に存在する。これらの多項式は任意の可換環への代入と可換し、集合RmR^mに関手的な可換環構造を定める。

証明. 最初に、帰納構成で現れる商が整数係数になることを証明する。不定元をすべてpp乗する多項式環の自己準同型をϕ\phiと書く。任意の整数係数多項式HHについて

ϕ(H)≡Hp(modp)(3)\phi(H)\equiv H^p\pmod p \tag{3}

である。また、A≡B(modps)A\equiv B\pmod {p^s}、s≥1s\ge1ならば、二項展開からAp≡Bp(modps+1)A^p\equiv B^p\pmod {p^{s+1}}となる。式 (3) にこの事実を繰り返し適用すると

ϕ(H)pr≡Hpr+1(modpr+1)(r≥0)(4)\phi(H)^{p^r}\equiv H^{p^{r+1}}\pmod {p^{r+1}} \qquad(r\ge0) \tag{4}

を得る。

整数係数多項式の列q0,…,qm−1q_0,\ldots,q_{m-1}が

qj≡ϕ(qj−1)(modpj)(1≤j<m)(5)q_j\equiv\phi(q_{j-1})\pmod {p^j} \qquad(1\le j<m) \tag{5}

を満たすと仮定する。wj(U)=qjw_j(U)=q_jとなる多項式UjU_jをjjについて構成する。U0=q0U_0=q_0とし、U0,…,Uj−1U_0,\ldots,U_{j-1}が構成済みならば

pjUj=qj−∑i=0j−1piUipj−i(6)p^jU_j=q_j-\sum_{i=0}^{j-1}p^iU_i^{p^{j-i}} \tag{6}

と置く。帰納法の仮定をwj−1(U)=qj−1w_{j-1}(U)=q_{j-1}に代入してϕ\phiを作用させると

ϕ(qj−1)=∑i=0j−1piϕ(Ui)pj−1−i\phi(q_{j-1})= \sum_{i=0}^{j-1}p^i\phi(U_i)^{p^{j-1-i}}

である。式 (4) により、右辺の第ii項とpiUipj−ip^iU_i^{p^{j-i}}との差はpjp^jで割り切れる。式 (5) も用いると、式 (6) の右辺全体はpjp^jで割り切れる。したがってUjU_jは整数係数多項式である。式 (6) はUjU_jを一意に定める。

加法ではqj=wj(X)+wj(Y)q_j=w_j(X)+w_j(Y)、乗法ではqj=wj(X)wj(Y)q_j=w_j(X)w_j(Y)とする。恒等式

wj(X)=ϕ(wj−1(X))+pjXjw_j(X)=\phi(w_{j-1}(X))+p^jX_j

を加法の場合に適用すると、qj−ϕ(qj−1)=pj(Xj+Yj)q_j-\phi(q_{j-1})=p^j(X_j+Y_j)となる。乗法の場合には

qj−ϕ(qj−1)=pj(Xjϕ(wj−1(Y))+Yjϕ(wj−1(X)))+p2jXjYjq_j-\phi(q_{j-1}) =p^j\bigl(X_j\phi(w_{j-1}(Y))+Y_j\phi(w_{j-1}(X))\bigr)+p^{2j}X_jY_j

となる。したがって、どちらの列も式 (5) を満たすため、前者からSjS_j、後者からPjP_jを得る。qj=−wj(X)q_j=-w_j(X)とすれば、同じ構成が加法逆元の多項式を与える。

最後に環公理を確認する。整数係数多項式環のように、ppの冪による乗法が単射である環では、ghost 写像は単射である。実際、二つの Witt ベクトルの第00成分から順に比較すると、第jj段ではpjp^jと第jj成分の差との積が零になるため、第jj成分も等しい。ghost 成分上では式 (2) により通常の可換環の演算を行っているので、加法と乗法の結合則・交換則、分配則、零元、単位元および加法逆元の各恒等式は、不定元を係数にもつ整数係数多項式環上で ghost 写像の単射性から従う。これらは整数係数多項式の恒等式であるため、任意の可換環RRへ代入しても成り立つ。多項式の代入は環準同型と可換するので、構成はRRについて関手的である。▨

定義 1.2.m≥1m\ge1とする。可換環RRに対して、集合RmR^mに補題 1.1の普遍多項式で定まる環構造を入れたものを、長さmmのpp典型 Witt ベクトル環 (p-typical Witt vector ring of length m)Wm(R)W_m(R)という。

元を(x0,…,xm−1)(x_0,\ldots,x_{m-1})と書くが、その加法と減法は Witt 多項式で定まる演算であり、一般には成分ごとの加法と減法ではない。RRの標数がppのとき、座標 Frobenius (coordinatewise Frobenius) を

F:Wm(R)⟶Wm(R),(x0,…,xm−1)⟼(x0p,…,xm−1p)F:W_m(R)\longrightarrow W_m(R), \qquad (x_0,\ldots,x_{m-1})\longmapsto(x_0^p,\ldots,x_{m-1}^p)

と書く。

例 1.3 (長さ二の加法は成分加法ではない).m=2m=2では

(x0,x1)+W(y0,y1)=(x0+y0,x1+y1−∑i=1p−11p(pi)x0iy0p−i).(7)(x_0,x_1)+_W(y_0,y_1) =\left(x_0+y_0, x_1+y_1-\sum_{i=1}^{p-1}\frac1p\binom pi x_0^iy_0^{p-i}\right). \tag{7}

係数1p(pi)\frac1p\binom piは整数である。例えば標数22では

(x0,x1)+W(y0,y1)=(x0+y0,x1+y1+x0y0).(x_0,x_1)+_W(y_0,y_1)=(x_0+y_0,x_1+y_1+x_0y_0).

したがってW2(R)W_2(R)の加法をR2R^2の成分加法に置き換えると、後で現れる巡回群Z/p2Z\mathbb Z/p^2\mathbb Zを失ってしまう。

補題 1.4.m≥1m\ge1とし、RRを標数ppの可換環とする。座標 FrobeniusFFはWm(R)W_m(R)の環準同型である。また、

V:Wm(R)⟶Wm(R),(x0,…,xm−1)⟼(0,x0,…,xm−2)V:W_m(R)\longrightarrow W_m(R), \qquad(x_0,\ldots,x_{m-1})\longmapsto(0,x_0,\ldots,x_{m-2})

は加法群準同型である。m=1m=1ではV=0V=0と解釈する。任意のx∈Wm(R)x\in W_m(R)に対して

p⋅x=V(F(x))(8)p\cdot x=V(F(x)) \tag{8}

が成り立つ。m>1m>1のとき、切断写像

tr⁡:Wm(R)⟶Wm−1(R),(x0,…,xm−1)⟼(x0,…,xm−2)\operatorname{tr}:W_m(R)\longrightarrow W_{m-1}(R), \qquad(x_0,\ldots,x_{m-1})\longmapsto(x_0,\ldots,x_{m-2})

は環準同型であり、加法群の完全列

0⟶R→a↦(0,…,0,a)Wm(R)→tr⁡Wm−1(R)⟶0(9)0\longrightarrow R\xrightarrow{a\mapsto(0,\ldots,0,a)}W_m(R) \xrightarrow{\operatorname{tr}}W_{m-1}(R)\longrightarrow0 \tag{9}

を与える。特に

pj⋅1=Vj(1)=(0,…,0⏟j 個,1,0,…,0)(0≤j<m),p^j\cdot1=V^j(1)=(\underbrace{0,\ldots,0}_{j\text{ 個}},1,0,\ldots,0) \quad(0\le j<m),

pm⋅1=0p^m\cdot1=0、pm−1⋅1≠0p^{m-1}\cdot1\ne0であり、加法群の自然な同型

Z/pmZ→ ∼ Wm(Fp),k‾⟼k⋅1(10)\mathbb Z/p^m\mathbb Z\xrightarrow{\ \sim\ }W_m(\mathbb F_p), \qquad \overline{k}\longmapsto k\cdot1 \tag{10}

がある。

証明.補題 1.1の演算は整数係数多項式で定まる。標数ppでは多項式の値のpp乗が各入力をpp乗して得る値に等しいため、座標 Frobenius は加法と乗法を保つ。

任意の Witt ベクトルxxに対して

w0(Vx)=0,wj(Vx)=p wj−1(x)(j≥1)w_0(Vx)=0, \qquad w_j(Vx)=p\,w_{j-1}(x)\quad(j\ge1)

である。普遍多項式環上でV(x+Wy)V(x+_Wy)とVx+WVyVx+_WVyの ghost 成分を比較すると一致する。この環はpp-torsion-free で ghost 写像が単射なので両者は等しい。この多項式恒等式をRRへ代入すると、VVが加法を保つことが分かる。切断が環準同型であることは、第jjWitt 演算が第jj以下の成分だけで定まることから従う。切断は集合として全射であり、その核は(0,…,0,a)(0,\ldots,0,a)という元全体である。最後の成分への包含はVm−1V^{m-1}なので加法を保ち、式 (9) は完全である。

式 (8) を証明する。整数係数多項式環上の普遍 Witt ベクトルをXXとし、p⋅Xp\cdot Xの第ii成分をMi(X)M_i(X)、(0,X0p,…,Xm−2p)(0,X_0^p,\ldots,X_{m-2}^p)の第ii成分をTi(X)T_i(X)と書く。ghost 成分について

w0(M)−w0(T)=pX0,w_0(M)-w_0(T)=pX_0,

またj≥1j\ge1では

wj(M)−wj(T)=p(wj(X)−ϕ(wj−1(X)))=pj+1Xjw_j(M)-w_j(T) =p\bigl(w_j(X)-\phi(w_{j-1}(X))\bigr)=p^{j+1}X_j

である。Mi≡Ti(modp)M_i\equiv T_i\pmod pをiiについて帰納する。i=0i=0は明らかである。i<ji<jについて合同を仮定すると、補題 1.1の証明で用いた式 (4) と同じ二項展開により

pi(Mipj−i−Tipj−i)p^i\bigl(M_i^{p^{j-i}}-T_i^{p^{j-i}}\bigr)

はpj+1p^{j+1}で割り切れる。第jjghost 成分の差から下位成分の差を引くとpj(Mj−Tj)p^j(M_j-T_j)がpj+1p^{j+1}で割り切れるため、Mj≡Tj(modp)M_j\equiv T_j\pmod pである。したがって標数ppのRRへ代入するとp⋅x=V(F(x))p\cdot x=V(F(x))を得る。

F(Vj(1))=Vj(1)F(V^j(1))=V^j(1)なので、式 (8) を繰り返すとpj⋅1=Vj(1)p^j\cdot1=V^j(1)となる。Vm(1)=0V^m(1)=0である一方、Vm−1(1)=(0,…,0,1)≠0V^{m-1}(1)=(0,\ldots,0,1)\ne0なので、11の加法位数はpmp^mである。集合Wm(Fp)=FpmW_m(\mathbb F_p)=\mathbb F_p^mの位数もpmp^mであるから、式 (10) の準同型は全単射である。▨

2 Artin–Schreier–Witt 完全列

Witt 加法に関する差を

℘m=F−1:Wm(R)⟶Wm(R)\wp_m=F-1:W_m(R)\longrightarrow W_m(R)

と書く。記号F−1F-1は Witt 加法における差であり、各成分を独立にxip−xix_i^p-x_iへ写すという意味ではない。

補題 2.1.m≥1m\ge1とする。各0≤j<m0\le j<mに対して、jj未満の成分だけを変数とする多項式

Qj∈Fp[X0,…,Xj−1]Q_j\in\mathbb F_p[X_0,\ldots,X_{j-1}]

が存在し、標数ppの任意の可換環RRとx∈Wm(R)x\in W_m(R)について

℘m(x)j=xjp−xj+Qj(x0,…,xj−1)(11)\wp_m(x)_j=x_j^p-x_j+Q_j(x_0,\ldots,x_{j-1}) \tag{11}

となる。ここでQ0=0Q_0=0とする。この表示は環準同型R→R′R\to R'と可換し、RRに作用する自己同型とも可換する。

証明. 式 (6) の再帰式を加法に適用すると、新しい変数Xj,YjX_j,Y_jは第jj段の右辺にpj(Xj+Yj)p^j(X_j+Y_j)としてだけ現れる。したがって加法多項式は

Sj(X,Y)=Xj+Yj+Rj(X0,…,Xj−1,Y0,…,Yj−1)S_j(X,Y)=X_j+Y_j+R_j(X_0,\ldots,X_{j-1},Y_0,\ldots,Y_{j-1})

という形である。同様に、Sj(X,N(X))=0S_j(X,N(X))=0を第jj成分について解くと、加法逆元多項式は

Nj(X)=−Xj+Tj(X0,…,Xj−1)N_j(X)=-X_j+T_j(X_0,\ldots,X_{j-1})

という形になる。Witt 加法における差F(x)+WN(x)F(x)+_WN(x)の第jj成分へ座標 Frobenius を代入すると、xjx_jを含む項はxjp−xjx_j^p-x_jだけであり、残りは第jj未満の成分だけからなる。係数を標数ppへ還元して式 (11) のQjQ_jを得る。普遍多項式への代入で構成したため、関手性と自己同型との可換性も従う。▨

定理 2.2 (Artin–Schreier–Witt 完全列).m≥1m\ge1とする。KKを標数p>0p>0の体とし、KsK_sを分離閉包とする。自然な同一視

Wm(Fp)≅Z/pmZW_m(\mathbb F_p)\cong\mathbb Z/p^m\mathbb Z

のもとで、離散GKG_K-加群の列

0⟶Z/pmZ⟶Wm(Ks)→℘m=F−1Wm(Ks)⟶0(12)0\longrightarrow\mathbb Z/p^m\mathbb Z \longrightarrow W_m(K_s) \xrightarrow{\wp_m=F-1}W_m(K_s) \longrightarrow0 \tag{12}

は完全である。左端のGKG_K-作用は自明である。

証明.F(x)=xF(x)=xであることは、各成分についてxip=xix_i^p=x_iであることと同値なので、ker⁡℘m=Wm(Fp)\ker\wp_m=W_m(\mathbb F_p)である。補題 1.4の式 (10) により、この核はZ/pmZ\mathbb Z/p^m\mathbb Zと同型である。各成分がFp\mathbb F_pに属するので、GKG_Kはこの核を固定する。

全射性を示す。補題 2.1により、℘m(x)=a\wp_m(x)=aという方程式の第jj成分は

xjp−xj=cj(13)x_j^p-x_j=c_j \tag{13}

という形になり、cjc_jはa0,…,aja_0,\ldots,a_jと既に選んだx0,…,xj−1x_0,\ldots,x_{j-1}だけで決まる。x0x_0から順に式 (13) を解く。多項式Tp−T−cjT^p-T-c_jの微分は−1-1なので分離的であり、分離閉体KsK_sに根をもつ。したがってすべての成分を順に選ぶことができ、℘m\wp_mは全射である。

補題 1.4によりFFと恒等写像は加法群準同型なので、℘m\wp_mも加法群準同型である。Witt 演算と式 (11) は整数係数またはFp\mathbb F_p係数の普遍多項式で定まるため、GKG_Kの成分ごとの作用と可換する。よって式 (12) は離散GKG_K-加群の完全列である。▨

命題 2.3.m≥1m\ge1とする。GKG_KはWm(Ks)W_m(K_s)の各成分へ作用し、係数群には Witt 加法を用いる。このとき、任意の連続一次コサイクル

z:GK⟶Wm(Ks),zστ=zσ+Wσ(zτ)z:G_K\longrightarrow W_m(K_s), \qquad z_{\sigma\tau}=z_\sigma+_W \sigma(z_\tau)

に対して、あるx∈Wm(Ks)x\in W_m(K_s)が存在して

zσ=σ(x)−Wx(σ∈GK)z_\sigma=\sigma(x)-_W x \qquad(\sigma\in G_K)

となる。すなわち、すべてのWm(Ks)W_m(K_s)値一次コサイクルは、基点変更から生じるコサイクルと同値である。

証明.mmについて帰納する。m=1m=1ではW1(Ks)=KsW_1(K_s)=K_sの加法群なので、加法版 Hilbert の定理 90§E8.18 定理 4.2により主張が成り立つ。

m>1m>1とする。切断写像と最後の成分への包含は、離散GKG_K-加群の短完全列

0⟶Ks→a↦(0,…,0,a)Wm(Ks)→tr⁡Wm−1(Ks)⟶0(14)0\longrightarrow K_s \xrightarrow{a\mapsto(0,\ldots,0,a)}W_m(K_s) \xrightarrow{\operatorname{tr}}W_{m-1}(K_s)\longrightarrow0 \tag{14}

を与える。tr⁡∘z\operatorname{tr}\circ zはWm−1(Ks)W_{m-1}(K_s)値一次コサイクルなので、帰納法の仮定によりあるxˉ∈Wm−1(Ks)\bar x\in W_{m-1}(K_s)が存在して

tr⁡(zσ)=σ(xˉ)−Wxˉ\operatorname{tr}(z_\sigma)=\sigma(\bar x)-_W \bar x

となる。xˉ\bar xの持上げx∈Wm(Ks)x\in W_m(K_s)を一つ選び、

zσ′=zσ−W(σ(x)−Wx)z'_\sigma=z_\sigma-_W \bigl(\sigma(x)-_W x\bigr)

とおく。z′z'も一次コサイクルであり、tr⁡(zσ′)=0\operatorname{tr}(z'_\sigma)=0である。式 (14) の完全性により、一意なcσ∈Ksc_\sigma\in K_sが存在して

zσ′=(0,…,0,cσ)z'_\sigma=(0,\ldots,0,c_\sigma)

となる。最後の成分への包含はGKG_K-同変な単射加法準同型なので、z′z'のコサイクル条件からcστ=cσ+σ(cτ)c_{\sigma\tau}=c_\sigma+\sigma(c_\tau)が従う。加法版 Hilbert の定理 90 により、あるd∈Ksd\in K_sが存在してcσ=σ(d)−dc_\sigma=\sigma(d)-dとなる。y=x+W(0,…,0,d)y=x+_W(0,\ldots,0,d)とおけばzσ=σ(y)−Wyz_\sigma=\sigma(y)-_W yである。▨

定理 2.4.m≥1m\ge1とし、KKを標数p>0p>0の体とする。自然な群同型

Am(K):=Wm(K)/℘mWm(K)→ ∼ Hom⁡cont(GK,Z/pmZ)(15)A_m(K):=W_m(K)/\wp_mW_m(K) \xrightarrow{\ \sim\ } \operatorname{Hom}_{\mathrm{cont}}(G_K,\mathbb Z/p^m\mathbb Z) \tag{15}

がある。右辺の連続準同型は、自明なGKG_K-作用をもつZ/pmZ\mathbb Z/p^m\mathbb Zに値を取る連続一次コサイクルにほかならない。この係数では基点変更から生じるコサイクルが零なので、基点変更による同値関係はコサイクルを新たに同一視しない。

a∈Wm(K)a\in W_m(K)に対して℘m(x)=a\wp_m(x)=aとなるx∈Wm(Ks)x\in W_m(K_s)を選ぶと、対応する指標は

χa(σ)=σ(x)−Wx∈Wm(Fp)≅Z/pmZ(16)\chi_a(\sigma)=\sigma(x)-_W x\in W_m(\mathbb F_p) \cong\mathbb Z/p^m\mathbb Z \tag{16}

である。

証明.℘m(x)=a∈Wm(K)\wp_m(x)=a\in W_m(K)とする。℘m\wp_mはGKG_Kの作用と可換するので

℘m(σ(x)−Wx)=σ(a)−Wa=0.\wp_m\bigl(\sigma(x)-_W x\bigr)=\sigma(a)-_W a=0.

定理 2.2により式 (16) の値はWm(Fp)≅Z/pmZW_m(\mathbb F_p)\cong\mathbb Z/p^m\mathbb Zに属する。この定数部分へのGKG_Kの作用は自明であり、

χa(στ)=στ(x)−Wx=(σ(x)−Wx)+Wσ(τ(x)−Wx)=χa(σ)+χa(τ)\chi_a(\sigma\tau) =\sigma\tau(x)-_W x =\bigl(\sigma(x)-_W x\bigr)+_W \sigma\bigl(\tau(x)-_W x\bigr) =\chi_a(\sigma)+\chi_a(\tau)

なので、χa\chi_aは連続準同型である。

解をx+Wcx+_W c、c∈Wm(Fp)c\in W_m(\mathbb F_p)へ替えてもccはGKG_Kに固定されるため、χa\chi_aは変わらない。a+W℘m(b)a+_W \wp_m(b)、b∈Wm(K)b\in W_m(K)という同じ類の代表元へ替えた場合には解をx+Wbx+_W bと選ぶことができ、やはり指標は変わらない。Witt 加法に関する和を取れば指標も和になるので、式 (15) の群準同型が定まる。

この準同型の核を調べる。χa=0\chi_a=0ならxxはGKG_Kに固定されるためx∈Wm(K)x\in W_m(K)であり、a=℘m(x)a=\wp_m(x)である。したがって[a]=0[a]=0となり、式 (15) は単射である。

全射性を示す。連続準同型χ:GK→Z/pmZ≅Wm(Fp)\chi:G_K\to\mathbb Z/p^m\mathbb Z\cong W_m(\mathbb F_p)をWm(Ks)W_m(K_s)値一次コサイクルとみなす。命題 2.3により、あるx∈Wm(Ks)x\in W_m(K_s)が存在してχ(σ)=σ(x)−Wx\chi(\sigma)=\sigma(x)-_W xとなる。℘m(χ(σ))=0\wp_m(\chi(\sigma))=0であり、℘m\wp_mはGKG_K-同変なので、

σ(℘m(x))−W℘m(x)=0.\sigma(\wp_m(x))-_W \wp_m(x)=0.

ゆえにa=℘m(x)a=\wp_m(x)はWm(K)W_m(K)に属し、χ=χa\chi=\chi_aである。したがって式 (15) は全射である。▨

3 一つの類と標識付き巡回拡大

定理 3.1.m≥1m\ge1とする。[a]∈Am(K)[a]\in A_m(K)の加法位数をprp^rとする。ただし0≤r≤m0\le r\le mである。対応する指標をχa:GK→Z/pmZ\chi_a:G_K\to\mathbb Z/p^m\mathbb Zとし、La=Ksker⁡χaL_a=K_s^{\ker\chi_a}とおく。このとき

[La:K]=pr,Gal⁡(La/K)→ ∼ im⁡χa≤Z/pmZ[L_a:K]=p^r, \qquad \operatorname{Gal}(L_a/K)\xrightarrow{\ \sim\ } \operatorname{im}\chi_a\le\mathbb Z/p^m\mathbb Z

である。℘m(x)=a\wp_m(x)=aとなる一つの解x=(x0,…,xm−1)x=(x_0,\ldots,x_{m-1})を選べば

La=K(x0,…,xm−1).L_a=K(x_0,\ldots,x_{m-1}).

したがって一つの Witt 類が分類するものは、表示された同型を標識として備えた次数prp^rの巡回拡大である。

証明. 式 (15) は群同型なので、[a][a]の位数は指標χa\chi_aの位数に等しい。準同型からなる群における一つの指標の位数は、その像の位数に等しいため#im⁡χa=pr\#\operatorname{im}\chi_a=p^rである。Galois 対応によりLa/KL_a/Kはこの像と同型な Galois 群をもつ巡回拡大であり、次数はprp^rである。

式 (16) から、σ\sigmaが Witt ベクトルxxの全成分を固定することとχa(σ)=0\chi_a(\sigma)=0は同値である。したがってK(x0,…,xm−1)K(x_0,\ldots,x_{m-1})の固定部分群はker⁡χa\ker\chi_aであり、その固定体はLaL_aである。▨

標識を忘れた巡回拡大は一つの類そのものではない。

命題 3.2.m≥1m\ge1とする。[a],[b]∈Am(K)[a],[b]\in A_m(K)が同じ正の位数prp^rをもつとする。標識を忘れた拡大LaL_aとLbL_bがKsK_s内で等しいことと、ある単元u∈(Z/pmZ)×u\in(\mathbb Z/p^m\mathbb Z)^\timesが存在して

[b]=u[a][b]=u[a]

となることは同値である。

証明.[b]=u[a][b]=u[a]ならχb=uχa\chi_b=u\chi_aであり、uuは単元なので二つの指標の核は等しい。したがって固定体も等しい。

逆に固定体が等しければker⁡χa=ker⁡χb\ker\chi_a=\ker\chi_bである。二つの指標は同じ巡回商群Gal⁡(La/K)\operatorname{Gal}(L_a/K)から位数prp^rの部分群への同型を定めるので、その差はZ/prZ\mathbb Z/p^r\mathbb Zの自己同型、すなわちある単元による乗法である。この単元をZ/pmZ\mathbb Z/p^m\mathbb Zの単元へ持ち上げるとχb=uχa\chi_b=u\chi_aとなり、式 (15) から[b]=u[a][b]=u[a]を得る。▨

例 3.3 (長さ一の Artin–Schreier 拡大).K=Fp(t)K=\mathbb F_p(t)、m=1m=1とする。W1(K)=KW_1(K)=Kで℘1(x)=xp−x\wp_1(x)=x^p-xである。ttは℘1(K)\wp_1(K)に属さない。実際、無限素点の付値をv∞(t)=−1v_\infty(t)=-1と正規化すると、v∞(b)<0v_\infty(b)<0の場合は

v∞(bp−b)=p v∞(b)v_\infty(b^p-b)=p\,v_\infty(b)

がppの倍数になり、v∞(b)≥0v_\infty(b)\ge0の場合はv∞(bp−b)≥0v_\infty(b^p-b)\ge0である。いずれもv∞(t)=−1v_\infty(t)=-1と一致しない。

したがって[t]∈K/℘1(K)[t]\in K/\wp_1(K)は非零で、その位数はppである。方程式xp−x=tx^p-x=tの一つの根をα\alphaとすると、K(α)/KK(\alpha)/Kは次数ppの巡回 Galois 拡大であり、c∈Fpc\in\mathbb F_pは自己同型α↦α+c\alpha\mapsto\alpha+cを標識する。

4 有限部分群と一般の有限アーベル p-拡大

補題 4.1.m≥1m\ge1とし、AAを指数がpmp^mを割る有限アーベル群とする。このとき

∣Hom⁡(A,Z/pmZ)∣=∣A∣|\operatorname{Hom}(A,\mathbb Z/p^m\mathbb Z)|=|A|

である。また、任意のa∈A∖{0}a\in A\setminus\{0\}に対して、ψ(a)≠0\psi(a)\ne0を満たすψ∈Hom⁡(A,Z/pmZ)\psi\in\operatorname{Hom}(A,\mathbb Z/p^m\mathbb Z)が存在する。

証明. 有限アーベル群の基本定理§E7.18 定理 6.3により、整数1≤ei≤m1\le e_i\le mを用いて

A≅Cpe1×⋯×CperA\cong C_{p^{e_1}}\times\cdots\times C_{p^{e_r}}

と書くことができる。巡回群CpeiC_{p^{e_i}}からZ/pmZ\mathbb Z/p^m\mathbb Zへの準同型は、生成元の像によって一意に定まる。その像として選ぶことができる元はpeip^{e_i}倍すると零になる元、すなわち部分群

pm−eiZ/pmZp^{m-e_i}\mathbb Z/p^m\mathbb Z

の元である。この部分群はpeip^{e_i}個の元をもつため

∣Hom⁡(Cpei,Z/pmZ)∣=pei|\operatorname{Hom}(C_{p^{e_i}},\mathbb Z/p^m\mathbb Z)|=p^{e_i}

となる。直積の各成分へ制限すると

Hom⁡(A,Z/pmZ)≅∏i=1rHom⁡(Cpei,Z/pmZ)\operatorname{Hom}(A,\mathbb Z/p^m\mathbb Z) \cong\prod_{i=1}^r \operatorname{Hom}(C_{p^{e_i}},\mathbb Z/p^m\mathbb Z)

であるから、位数を比較して最初の主張を得る。

a≠0a\ne0とし、表示した直積分解における第ii成分をkkと書いたとき、k≢0(modpei)k\not\equiv0\pmod {p^{e_i}}となる添字iiを選ぶ。第ii巡回因子の生成元をpm−eip^{m-e_i}へ写し、他の因子を零へ写す準同型をψ\psiとする。このとき

ψ(a)=kpm−ei≢0(modpm)\psi(a)=k p^{m-e_i}\not\equiv0\pmod {p^m}

であるから、指標は非零元aaを分離する。▨

定義 4.2.m≥1m\ge1とし、B≤Am(K)B\le A_m(K)を有限部分群とする。各[a]∈B[a]\in Bに対応する指標をχa\chi_aとし、

NB=⋂[a]∈Bker⁡χa,LB=KsNBN_B=\bigcap_{[a]\in B}\ker\chi_a, \qquad L_B=K_s^{N_B}

とおく。Artin–Schreier–Witt 対 (Artin-Schreier-Witt pairing) を

[ , ]B:Gal⁡(LB/K)×B⟶Z/pmZ,[σ,[a]]B=χa(σ)(17)[\ ,\ ]_B:\operatorname{Gal}(L_B/K)\times B \longrightarrow\mathbb Z/p^m\mathbb Z, \qquad [\sigma,[a]]_B=\chi_a(\sigma) \tag{17}

で定める。

定理 4.3.m≥1m\ge1とする。式 (17) は両側で非退化な完全双線形対である。LB/KL_B/Kは指数がpmp^mを割る有限アーベル Galois 拡大であり、

Gal⁡(LB/K)≅Hom⁡(B,Z/pmZ),[LB:K]=∣B∣.(18)\operatorname{Gal}(L_B/K)\cong \operatorname{Hom}(B,\mathbb Z/p^m\mathbb Z), \qquad [L_B:K]=|B|. \tag{18}

証明.BBは有限個の連続指標からなるためNBN_Bは開正規部分群であり、LB/KL_B/Kは有限 Galois 拡大である。商群GK/NBG_K/N_Bは有限個のZ/pmZ\mathbb Z/p^m\mathbb Zの直積へ埋め込まれるので、アーベル群で指数がpmp^mを割る。

式 (17) は双線形である。左側でBBのすべての元と零に対をなす元はNBN_Bに由来するため、Gal⁡(LB/K)\operatorname{Gal}(L_B/K)では恒等元である。右側で Galois 群のすべての元と零に対をなす[a][a]は、GKG_K上で零指標を定めるため、式 (15) により零類である。したがって対は両側で非退化である。

BBとGal⁡(LB/K)\operatorname{Gal}(L_B/K)は指数がpmp^mを割る有限アーベル群である。補題 4.1により、この係数群への双対は元の群と同じ位数をもつ。両側の非退化性から得られる二つの単射の位数を比較すると、両方が同型になり、式 (18) を得る。▨

定理 4.4.m≥1m\ge1とする。対応B↦LBB\mapsto L_Bは、Am(K)A_m(K)の有限部分群BBと、KsK_s内の指数がpmp^mを割る有限アーベル Galois 拡大L/KL/Kとの間の全単射である。逆対応は

L⟼BL={[a]∈Am(K)∣χa が Gal⁡(L/K) を経由する}L\longmapsto B_L=\{[a]\in A_m(K)\mid \chi_a\text{ が }\operatorname{Gal}(L/K)\text{ を経由する}\}

である。すなわち、Gal⁡(L/K)\operatorname{Gal}(L/K)の指標を商写像GK→Gal⁡(L/K)G_K\to\operatorname{Gal}(L/K)に沿って膨張し、式 (15) の逆写像でAm(K)A_m(K)の元に戻す。

証明.定理 4.3によりBBはHom⁡(Gal⁡(LB/K),Z/pmZ)\operatorname{Hom}(\operatorname{Gal}(L_B/K),\mathbb Z/p^m\mathbb Z)全体へ写るのでBLB=BB_{L_B}=Bである。

逆にL/KL/Kを指定された型の拡大とする。補題 4.1により有限アーベル群の指標は各非自明な元を分離するため、BLB_Lに属する全指標の核の共通部分はGK→Gal⁡(L/K)G_K\to\operatorname{Gal}(L/K)の核に等しい。したがってその固定体はLLであり、LBL=LL_{B_L}=Lとなる。二つの対応は互いに逆である。▨

任意の有限アーベルpp-群は、あるmmについて指数がpmp^mを割る。したがってmmを動かせば、前定理はすべての有限アーベルpp-拡大を尽くす。この分類では、一般の有限アーベルpp-拡大を一つの Witt 類で表していない。一つの類の像は巡回群に限られ、複数の巡回因子をもつ拡大を回収するには有限部分群BB全体と完全な対 (17) が必要である。

5 演習

問題 5.1 (Artin–Schreier–Witt 理論の確認).

  1. 式 (7) をp=2p=2で計算し、Witt 加法が成分加法と異なる項を特定せよ。
  2. 定理 2.2の全射性の証明で、各段階の方程式が分離的である理由を説明せよ。
  3. 長さに関する短完全列 (14) を用いて、W2(Ks)W_2(K_s)値一次コサイクルが基点変更から生じることを、加法版 Hilbert の定理 90 から直接導け。
  4. 位数prp^rの一つの Witt 類が次数prp^rの標識付き巡回拡大を定めることと、標識を忘れた拡大が単元軌道に対応することを区別して説明せよ。
  5. B≅Z/p2Z×Z/pZB\cong\mathbb Z/p^2\mathbb Z\times\mathbb Z/p\mathbb Zの場合に、完全な対 (17) から[LB:K]=p3[L_B:K]=p^3を導け。一つの Witt 類だけではこの Galois 群を得られない理由も述べよ。

6 扱った範囲と次の記事

本記事では、Witt 加法を成分加法と区別して Artin–Schreier–Witt 完全列を構成し、連続巡回指標をWm(K)/(F−1)Wm(K)W_m(K)/(F-1)W_m(K)と直接対応させた。一つの類は標識付き巡回拡大を定め、標識を忘れた拡大は単元軌道に対応する。一般の有限アーベルpp-拡大は、Witt 類の有限部分群と完全な Artin–Schreier–Witt 対によって分類される。

参考文献

  1. Jean-Pierre Serre, Local Fields, Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1979.
  2. Jean-Pierre Serre, Galois Cohomology, Springer, Berlin, 1997.
  3. Michel Raynaud, Revêtements de la droite affine en caractéristique p > 0 et conjecture d'Abhyankar, Inventiones mathematicae 116 (1994), no. 1, 425–462.

前提記事