§E8.9原始元定理

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有限拡大L/KL/Kを一つの元でL=K(α)L=K(\alpha)と表すことができれば、中間体の情報をα\alphaの最小多項式の因子へ移すことができる。しかし、有限拡大が常に単拡大であるわけではない。単拡大であることを判定する条件は、中間体が有限個しかないことである。

本記事では、この判定を任意の有限代数拡大について証明する。続いて、有限次分離拡大では判定条件が常に満たされることを、代数閉包への基底変換によって証明する。有限基礎体の場合に直接単拡大を与える「有限体の位数と乗法群」の系も、この結論と整合する。

1 単拡大と中間体の個数

無限体の場合に用いる線形空間の事実を先に証明する。

補題 1.1.KKを無限体とし、VVを非零有限次元KK-線形空間とする。有限個の真の線形部分空間W1,…,Wr⊊VW_1,\ldots,W_r\subsetneq Vに対して

V≠W1∪⋯∪WrV\ne W_1\cup\cdots\cup W_r

である。

証明. 各iiについて、WiW_iを含む余次元一の部分空間を取り、その核がこの部分空間になる非零線形汎関数ℓi:V→K\ell_i:V\to Kを選ぶ。基底を固定してV≅KnV\cong K^nと同一視すると、積

P(v)=∏i=1rℓi(v)P(v)=\prod_{i=1}^{r}\ell_i(v)

は零でない多項式である。無限体上の零でない多変数多項式はKnK^nのすべての点では消えない。この事実は、変数の個数について帰納し、最後の変数に関する一変数多項式が有限個の根しかもたないことから従う。したがってP(v)≠0P(v)\ne0となるv∈Vv\in Vが存在する。このvvはどのker⁡ℓi\ker\ell_iにも属さないため、どのWiW_iにも属さない。▨

定理 1.2.L/KL/Kを有限代数拡大とする。次の条件は同値である。

  1. あるα∈L\alpha\in Lが存在してL=K(α)L=K(\alpha)となる。
  2. K⊆M⊆LK\subseteq M\subseteq Lを満たす中間体MMは有限個しかない。

証明. まずL=K(α)L=K(\alpha)と仮定する。中間体MMに対し、α\alphaのMM上のモニック最小多項式をmα,M∈M[x]⊆L[x]m_{\alpha,M}\in M[x]\subseteq L[x]とする。この多項式はmα,Km_{\alpha,K}をL[x]L[x]で割り切る。

M0M_0をmα,Mm_{\alpha,M}のすべての係数によってKK上生成される部分体とする。M0⊆MM_0\subseteq Mであり、mα,M∈M0[x]m_{\alpha,M}\in M_0[x]なので

[L:M0]=[M0(α):M0]≤deg⁡mα,M=[L:M].[L:M_0]=[M_0(\alpha):M_0]\le\deg m_{\alpha,M}=[L:M].

一方、塔の公式§E8.1 定理 2.1により

[L:M0]=[L:M][M:M0][L:M_0]=[L:M][M:M_0]

である。したがって[M:M0]=1[M:M_0]=1、すなわちM=M0M=M_0である。ゆえにMMはmα,Mm_{\alpha,M}の係数から回収され、写像M↦mα,MM\mapsto m_{\alpha,M}は単射である。mα,Km_{\alpha,K}がL[x]L[x]でもつモニック因子は有限個なので、中間体も有限個である。

逆に中間体全体が有限個であると仮定する。L=KL=KならL=K(0)L=K(0)であるから、以下ではL≠KL\ne Kとする。LL自身を除く真の中間体をM1,…,MrM_1,\ldots,M_rとする。KKはその一つなのでr≥1r\ge1である。KKが有限体なら、L/KL/Kは有限拡大であるから§E8.7 系 2.3によりL=K(θ)L=K(\theta)となるθ∈L\theta\in Lが存在する。

KKが無限体であるとする。L=K(α)L=K(\alpha)となるα\alphaが存在しないと仮定すると、各α∈L\alpha\in Lに対してK(α)K(\alpha)はLLの真の中間体であり、したがっていずれかのMiM_iに等しい。各α\alphaはK(α)K(\alpha)に属するから

L=M1∪⋯∪MrL=M_1\cup\cdots\cup M_r

となる。各MiM_iはLLの真のKK-線形部分空間であるが、無限体上の有限次元線形空間は有限個の真の線形部分空間の和集合にはならない。補題 1.1に反するため、L=K(α)L=K(\alpha)となるα\alphaが存在する。▨

2 有限次分離拡大の中間体

有限次分離拡大の中間体は、代数閉包へ基底変換すると座標の等しい成分をまとめる分割として記録される。この記録が有限通りであることを示す。

定理 2.1.L/KL/Kを有限次分離拡大とする。このとき、K⊆M⊆LK\subseteq M\subseteq Lを満たす中間体MMは有限個しかない。

証明.n=[L:K]n=[L:K]とし、KKの代数閉包Ω\Omegaを一つ固定する。§E8.8 定理 3.3の証明で構成したΩ\Omega-代数同型

ΦL:L⊗KΩ→ ∼ Ωn,a⊗c⟼(cσ(a))σ∈Hom⁡K(L,Ω)\Phi_L:L\otimes_K\Omega\xrightarrow{\ \sim\ }\Omega^n, \qquad a\otimes c\longmapsto\bigl(c\sigma(a)\bigr)_{\sigma\in\operatorname{Hom}_K(L,\Omega)}

を用いる。ここで、分離性によりKK-埋め込みの個数はnnである。

まず、Ωn\Omega^nの単位的Ω\Omega-部分代数は座標集合{1,…,n}\{1,\ldots,n\}の分割と一対一に対応することを示す。単位的Ω\Omega-部分代数A⊆ΩnA\subseteq\Omega^nに対し、

i∼Aj⟺ai=aj がすべての a=(a1,…,an)∈A について成り立つi\sim_A j\quad\Longleftrightarrow\quad a_i=a_j\ \text{がすべての}\ a=(a_1,\ldots,a_n)\in A\ \text{について成り立つ}

と定める。この同値関係の同値類ごとに座標が等しい元全体の代数をBAB_Aと書くと、定義からA⊆BAA\subseteq B_Aである。

CCを一つの同値類とし、i∈Ci\in Cを取る。各j∉Cj\notin Cについてi̸∼Aji\not\sim_A jであるから、a(j)∈Aa^{(j)}\in Aでai(j)≠aj(j)a^{(j)}_i\ne a^{(j)}_jを満たすものがある。

pj=a(j)−aj(j)1ai(j)−aj(j)∈Ap_j=\frac{a^{(j)}-a^{(j)}_j1}{a^{(j)}_i-a^{(j)}_j}\in A

とおく。pjp_jの第ii座標は11、第jj座標は00である。さらにk∈Ck\in Cなら、AAのすべての元の第kk座標と第ii座標は等しいので、pjp_jの第kk座標も11である。したがって

eC=∏j∉Cpj∈Ae_C=\prod_{j\notin C}p_j\in A

は、CC上で11、その補集合上で00となる座標指示関数である。各同値類CCの指示関数eCe_CがAAに属するから、これらのΩ\Omega-線形結合であるBAB_Aのすべての元がAAに属する。よってA=BAA=B_Aである。逆に、任意の座標分割の各部分上で定数となる元全体は単位的Ω\Omega-部分代数であり、その上の関係∼A\sim_Aは元の分割を回復する。したがって、座標分割と単位的Ω\Omega-部分代数の対応は一対一である。

中間体MMを一つ取る。M/KM/Kは有限次元である。MMのKK-基底m1,…,mdm_1,\ldots,m_dをLLのKK-基底m1,…,md,ℓ1,…,ℓsm_1,\ldots,m_d,\ell_1,\ldots,\ell_sへ延長する。このときm1⊗1,…,md⊗1m_1\otimes1,\ldots,m_d\otimes1はM⊗KΩM\otimes_K\OmegaのΩ\Omega-基底であり、その像はL⊗KΩL\otimes_K\Omegaの基底の一部である。したがって自然な写像

M⊗KΩ⟶L⊗KΩM\otimes_K\Omega\longrightarrow L\otimes_K\Omega

は単射である。その像をΦL\Phi_Lで送ったものをAMA_Mと書けば、AMA_MはΩn\Omega^nの単位的Ω\Omega-部分代数である。

この部分代数からMMを回復することもできる。実際、上で選んだLLの基底に関して

M={x∈L∣x⊗1 が M⊗KΩ の像に属する}M=\{x\in L\mid x\otimes1\ \text{が}\ M\otimes_K\Omega\ \text{の像に属する}\}

である。右辺の包含M⊆⋯M\subseteq\cdotsは明らかである。逆にx∈Lx\in Lを上の基底で表すと、x⊗1x\otimes1がm1⊗1,…,md⊗1m_1\otimes1,\ldots,m_d\otimes1のΩ\Omega-線形結合に属するためには、ℓ1⊗1,…,ℓs⊗1\ell_1\otimes1,\ldots,\ell_s\otimes1の係数がすべてΩ\Omegaで零でなければならない。これらの係数はKKの元であり、K→ΩK\to\Omegaは単射であるから、それぞれKKでも零である。したがってx∈Mx\in Mである。

したがってAM=ANA_M=A_Nなら、ΦL\Phi_Lの単射性と上の復元式からM=NM=Nである。中間体から得られるAMA_Mは{1,…,n}\{1,\ldots,n\}の座標分割と一対一に対応し、この集合の分割は有限個しかない。よって中間体も有限個しかない。▨

3 有限次分離拡大の原始元

定理 3.1 (原始元定理).L/KL/Kが有限次分離拡大なら、あるγ∈L\gamma\in Lが存在して

L=K(γ)L=K(\gamma)

となる。このようなγ\gammaをL/KL/Kの原始元という。

証明.KKが有限体である場合、§E8.7 系 2.3により、あるγ∈L\gamma\in Lが存在してL=K(γ)L=K(\gamma)となる。KKが無限体である場合、定理 2.1により中間体は有限個しかない。次に定理 1.2を適用すると、あるγ∈L\gamma\in Lが存在してL=K(γ)L=K(\gamma)となる。▨

例 3.2 (Q(2,3)\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt3)の原始元).γ=2+3\gamma=\sqrt2+\sqrt3とおく。(3−2)γ=1(\sqrt3-\sqrt2)\gamma=1なので

2=12(γ−1γ),3=12(γ+1γ)\sqrt2=\frac12\left(\gamma-\frac1\gamma\right), \qquad \sqrt3=\frac12\left(\gamma+\frac1\gamma\right)

である。したがってQ(2,3)=Q(γ)\mathbb Q(\sqrt2,\sqrt3)=\mathbb Q(\gamma)となる。この例では、原始元定理の証明で除外する有限個の条件を調べず、直接の計算によって原始元を一つ与えている。

4 超越的な単拡大との相違

有限代数拡大という仮定を外すと、単拡大であっても中間体は有限個とは限らない。

例 4.1 (単純超越拡大の無限個の中間体).ttをKK上超越的とする。各n≥2n\ge2について

K⊊K(tn)⊊K(t)K\subsetneq K(t^n)\subsetneq K(t)

である。実際、u=tnu=t^nとおく。関係tn=ut^n=uにより、K(u)[t]K(u)[t]はK(u)K(u)上1,t,…,tn−11,t,\ldots,t^{n-1}で生成される。この環は体K(t)K(t)の部分環なので整域であり、K(u)K(u)上有限次元の整域は体である。実際、非零元による乗法は有限次元線形空間の単射線形写像なので全射であり、その非零元は逆元をもつ。したがってK(u)[t]=K(t)K(u)[t]=K(t)である。

1,t,…,tn−11,t,\ldots,t^{n-1}がK(u)K(u)上一次従属であると仮定する。係数の分母を払うと、すべてが零ではないh0,…,hn−1∈K[u]h_0,\ldots,h_{n-1}\in K[u]によって

∑r=0n−1hr(u)tr=0\sum_{r=0}^{n-1}h_r(u)t^r=0

とできる。hr(u)=∑jarjujh_r(u)=\sum_j a_{rj}u^jと書きu=tnu=t^nを代入すると、左辺は∑r,jarjtnj+r\sum_{r,j}a_{rj}t^{nj+r}となる。指数nj+rnj+rのnnを法とする剩余はrrなので、異なる組(r,j)(r,j)から得られる指数は異なる。ttはKK上超越的なのですべてのarja_{rj}が零となり、仮定に反する。ゆえに1,t,…,tn−11,t,\ldots,t^{n-1}はK(t)K(t)のK(tn)K(t^n)-基底であり、

[K(t):K(tn)]=n[K(t):K(t^n)]=n

である。またtnt^nはKK上超越的である。したがって上記の二つの包含は真である。次数が異なるため、K(tn)K(t^n)はnnごとに相異なる。ゆえに単純超越拡大K(t)/KK(t)/Kは無限個の中間体をもつ。

5 演習

問題 5.1.

  1. L=K(α)L=K(\alpha)の中間体MMがmα,Mm_{\alpha,M}の係数から回収されることを、次数の二つの評価を明記して証明せよ。
  2. A⊆ΩnA\subseteq\Omega^nを単位的Ω\Omega-部分代数とする。本文の同値関係∼A\sim_Aの各同値類の指示関数がAAに属することを証明し、AAを対応する座標分割から回復せよ。
  3. K⊆M⊆LK\subseteq M\subseteq LでL/KL/Kが有限次分離拡大であるとする。MMの基底をLLの基底へ延長し、M⊗KΩ→L⊗KΩM\otimes_K\Omega\to L\otimes_K\Omegaが単射であることと、その像からMMを回復する式を証明せよ。
  4. K(t2)K(t^2)、K(t3)K(t^3)およびK(t6)K(t^6)の包含関係を求め、それぞれの有限拡大次数を計算せよ。

6 扱った範囲と次の記事

本記事では、有限代数拡大が単拡大であることを中間体の有限性によって特徴づけ、有限次分離拡大の中間体が有限個であることを代数閉包への基底変換から証明した。この二つの結果から、有限次分離拡大が原始元をもつことを導いた。次の記事では、原始元の最小多項式の根と自己同型を用いて、有限 Galois 拡大を複数の同値な条件で特徴づける。

参考文献

  1. David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004.
  2. Serge Lang, Algebra, revised 3 ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 2002.

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