1 原始n乗根
正の整数nに対し、1のn乗根は
ζnk=cosn2πk+isinn2πk(k=0,1,…,n−1)
のn個です。n≥3のとき、これらは複素数平面の単位円を等分し、正n角形の頂点になります。
定義 1.1 (原始n乗根). 1のn乗根zに対し、zm=1となる最小の正の整数mがnであるとき、zを 原始n乗根 (primitive nth root of unity) という。
k=0,1,…,n−1に対して、ζnkが原始n乗根であることとgcd(k,n)=1であることは同値である。
証明.z=ζnkとし、正の整数mをとる。zm=1であることは
nkm∈Z,すなわちn∣kmであることと同値である。g=gcd(k,n)、k=gk′、n=gn′と書くとgcd(k′,n′)=1であるから、n∣kmであることはn′∣mであることと同値である。したがって、zm=1となる最小の正の整数は
n′=gcd(k,n)nである。この最小の整数がnに等しいこととgcd(k,n)=1であることは同値である。▨
定義 1.2 (円分多項式). 正の整数nに対し、原始n乗根すべてを一度ずつ用いて
Φn(x)=z は原始 n 乗根∏(x−z)と定め、Φn(x)を第n円分多項式 (cyclotomic polynomial) という。
1≤k≤nのうちgcd(k,n)=1となる整数の個数をφ(n)と書く。原始n乗根の個数はφ(n)であるから、Φn(x)は次数φ(n)のモニック多項式である。
2 円分因子分解と整数係数
定理 2.1. すべての正の整数nに対して
xn−1=d∣n∏Φd(x)が成り立つ。また、すべてのnに対してΦn(x)の係数は整数である。
証明.xn−1の根zを一つとり、zm=1となる最小の正の整数をdとする。zn=1であるから、nをdで割ってn=qd+r、0≤r<dと書くと、
1=zn=(zd)qzr=zrとなる。dの最小性からr=0であり、d∣nである。さらに、zは原始d乗根である。
反対に、d∣nであるとき、原始d乗根zはzn=(zd)n/d=1を満たす。したがって、xn−1の各根は、その根が初めて1へ戻る指数dによって、d∣nを満たす原始d乗根の組へ重複なく分類される。xn−1は相異なるn個の根をもち、両辺はこれらの根から作るモニックな一次式の積であるから、
xn−1=d∣n∏Φd(x)を得る。
nに関する帰納法でΦn(x)の係数が整数であることを示す。n=1ではΦ1(x)=x−1である。n>1とし、すべての正の整数d<nについてΦd(x)の係数が整数であると仮定する。nの真の約数はnより小さいので、
Fn(x)=d∣nd<n∏Φd(x)は整数係数のモニック多項式である。
xn−1をモニックなFn(x)で筆算すると、整数係数の多項式Q(x),R(x)が存在して
xn−1=Fn(x)Q(x)+R(x),degR<degFnとなる。一方、すでに示した因数分解により、複素数係数の多項式として
xn−1=Fn(x)Φn(x)である。多項式の商と余りは一意であるから、R(x)=0かつQ(x)=Φn(x)となる。Q(x)は整数係数なので、Φn(x)も整数係数である。帰納法により、すべての正の整数nについて結論を得る。▨
3 n=1から12までの計算
例 3.1. 因数分解の式から
Φn(x)=d∣nd<n∏Φd(x)xn−1として順に計算すると、次の表を得る。
| n |
Φn(x) |
n |
Φn(x) |
| 1 |
x−1 |
7 |
x6+x5+x4+x3+x2+x+1 |
| 2 |
x+1 |
8 |
x4+1 |
| 3 |
x2+x+1 |
9 |
x6+x3+1 |
| 4 |
x2+1 |
10 |
x4−x3+x2−x+1 |
| 5 |
x4+x3+x2+x+1 |
11 |
x10+x9+x8+x7+x6+x5+x4+x3+x2+x+1 |
| 6 |
x2−x+1 |
12 |
x4−x2+1 |
例えばn=12の真の約数は1,2,3,4,6であるから、
Φ12(x)=Φ1(x)Φ2(x)Φ3(x)Φ4(x)Φ6(x)x12−1=x4−x2+1となる。
4 正17角形との関係
例 4.1 (1の17乗根). 1の17乗根は単位円を17等分するので、正17角形の頂点になる。17は素数であるから、1以外の1の17乗根はすべて原始17乗根であり、
Φ17(x)=x−1x17−1=x16+x15+⋯+x+1は1以外の16頂点に対応する。
本記事の内容は現行の高等学校の学習指導要領には含まれず、本単元の修了条件にも含めません。ガウスは、正17角形が定規とコンパスで作図可能であることを示しました。degΦ17=16=24は二次拡大を重ねる構造と整合しますが、この等式だけでは作図可能性の証明にはなりません。円分多項式の既約性、体の拡大次数、作図可能性の判定は、後続の「環・体・ガロア理論」で扱います。