§B2.10積・商・合成関数の微分

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「多項式の微分と接線・増減・極値」では、導関数を平均変化率の極限として定義し、多項式の導関数を求めました。多項式は和と定数倍だけで作られているので、項ごとに計算すれば導関数を求めることができました。本記事は、二つの関数を積、商、合成という三つの作り方で組み合わせたとき、部分の導関数から全体の導関数を求める規則を導きます。そのうえで、これらの規則を用いてxxの整数乗の導関数を求め、最後にこれらを組み合わせた式を微分します。有理数乗の定義と導関数は「有理数乗」が扱います。三角関数の導関数は「三角関数の微分 I」と「三角関数の微分 II」が、指数関数と対数関数の導関数と対数微分法は「指数関数と対数関数」が扱います。

本記事では、関数ffが点xxで微分可能であるとは、極限

f′(x)=lim⁡h→0f(x+h)−f(x)hf'(x) = \lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}

が存在することをいい、この値をffのxxにおける微分係数といいます。極限の和・積・商についての性質と、内側の関数が近づく先で外側の関数が連続である場合に合成した式の極限を計算してよいことは、認めて用います。これらの証明は「ε-論法と基礎解析」が与えます。

1 微分可能な関数は連続である

積と商の微分法の証明では、差の商を変形したあとにf(x+h)f(x+h)やg(x+h)g(x+h)の極限を取ります。そこで先に、微分可能であれば値の極限がもとの値に一致することを確かめます。

定理 1.1 (微分可能な関数は連続である). 関数ffが点xxで微分可能ならば

lim⁡h→0f(x+h)=f(x)\lim_{h \to 0} f(x+h) = f(x)

が成り立つ。

証明.h≠0h \ne 0のとき

f(x+h)−f(x)=f(x+h)−f(x)h⋅hf(x+h) - f(x) = \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\cdot h

と書くことができます。h→0h \to 0のとき、右辺の第一の因子は微分係数f′(x)f'(x)に近づき、第二の因子は00に近づくので、積はf′(x)⋅0=0f'(x)\cdot 0 = 0に近づきます。よってlim⁡h→0f(x+h)=f(x)\lim_{h\to0}f(x+h) = f(x)です。▨

2 積の微分法

定理 2.1 (積の微分法). 関数ffとggがともに点xxで微分可能であるとする。このとき積fgfgもxxで微分可能であり

(fg)′(x)=f′(x) g(x)+f(x) g′(x)(fg)'(x) = f'(x)\,g(x) + f(x)\,g'(x)

が成り立つ。

証明.h≠0h \ne 0のとき、分子にf(x)g(x+h)f(x)g(x+h)を足して引くと

f(x+h)g(x+h)−f(x)g(x)h=f(x+h)−f(x)h⋅g(x+h)+f(x)⋅g(x+h)−g(x)h\frac{f(x+h)g(x+h) - f(x)g(x)}{h} = \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\cdot g(x+h) + f(x)\cdot\frac{g(x+h)-g(x)}{h}

となります。h→0h \to 0のとき、第一項の差の商はf′(x)f'(x)に近づき、ggはxxで微分可能であるから定理 1.1によりg(x+h)g(x+h)はg(x)g(x)に近づきます。第二項の差の商はg′(x)g'(x)に近づきます。よって右辺はf′(x)g(x)+f(x)g′(x)f'(x)g(x) + f(x)g'(x)に近づき、左辺の極限が存在してこの値に等しくなります。▨

積の微分法が与えるのは、二つの関数それぞれの導関数を掛けたものではありません。導関数はf′(x)g(x)f'(x)g(x)とf(x)g′(x)f(x)g'(x)という二つの項の和です。

3 商の微分法

商f/gf/gは、分母ggの値が00になる点では定義されません。そこで、xxの近くで分母が00にならないことを仮定します。

定理 3.1 (商の微分法). 関数ffとggがともに点xxで微分可能であるとし、さらにxxを含むある開区間のすべての点でggの値が00でないとする。このとき商fg\dfrac{f}{g}はxxで微分可能であり

(fg)′(x)=f′(x) g(x)−f(x) g′(x)g(x)2\left(\frac{f}{g}\right)'(x) = \frac{f'(x)\,g(x) - f(x)\,g'(x)}{g(x)^2}

が成り立つ。

証明. 仮定により、∣h∣|h|が十分小さい00でないhhについてg(x+h)≠0g(x+h) \ne 0であり、差の商を作ることができます。分子を通分すると

1h(f(x+h)g(x+h)−f(x)g(x))=1g(x+h)g(x)⋅f(x+h)g(x)−f(x)g(x+h)h\frac{1}{h}\left(\frac{f(x+h)}{g(x+h)} - \frac{f(x)}{g(x)}\right) = \frac{1}{g(x+h)g(x)}\cdot\frac{f(x+h)g(x) - f(x)g(x+h)}{h}

です。右辺の第二の因子の分子にf(x)g(x)f(x)g(x)を足して引くと

f(x+h)g(x)−f(x)g(x+h)h=f(x+h)−f(x)h⋅g(x)−f(x)⋅g(x+h)−g(x)h\frac{f(x+h)g(x) - f(x)g(x+h)}{h} = \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\cdot g(x) - f(x)\cdot\frac{g(x+h)-g(x)}{h}

となり、h→0h \to 0のときf′(x)g(x)−f(x)g′(x)f'(x)g(x) - f(x)g'(x)に近づきます。また定理 1.1によりg(x+h)g(x+h)はg(x)g(x)に近づき、g(x)≠0g(x) \ne 0であるから、第一の因子は1g(x)2\dfrac{1}{g(x)^2}に近づきます。よって左辺の極限が存在してf′(x)g(x)−f(x)g′(x)g(x)2\dfrac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{g(x)^2}に等しくなります。▨

注意 3.2 (分母についての仮定).定理 3.1は、g(x)≠0g(x) \ne 0ではなく、xxを含むある開区間でggの値が00にならないことを仮定している。差の商を作るためにg(x+h)≠0g(x+h) \ne 0が要るからである。実際には、ggはxxで微分可能であれば定理 1.1によりxxで連続なので、g(x)≠0g(x) \ne 0でありさえすればこの仮定は自動的に満たされる。連続な関数が00でない値をとる点の近くで00にならないことは、本記事では認めて用い、その証明は「ε-論法と基礎解析」が与える。

分子を定数関数11とすると、逆数の導関数についての次の式を得ます。

公式 3.3 (逆数の導関数). 関数ggが点xxで微分可能で、xxを含むある開区間のすべての点でggの値が00でないとする。このとき

(1g)′(x)=−g′(x)g(x)2\left(\frac{1}{g}\right)'(x) = -\frac{g'(x)}{g(x)^2}

が成り立つ。

証明.定理 3.1でffを定数関数11とします。定数関数の導関数は00であるから、分子は0⋅g(x)−1⋅g′(x)=−g′(x)0\cdot g(x) - 1\cdot g'(x) = -g'(x)となります。▨

4 合成関数の微分法

合成関数f∘gf \circ gが定まるのは、ggの定義域に属し、かつggの値がffの定義域に入る入力の全体でした。次の定理は、その範囲に含まれる開区間の上で述べます。

定理 4.1 (合成関数の微分法).II、JJを開区間とし、ggをIIで定義された関数、ffをJJで定義された関数とする。IIのすべての点xxについてg(x)∈Jg(x) \in Jであるとする。点x0∈Ix_0 \in Iについて、ggがx0x_0で微分可能であり、ffがg(x0)g(x_0)で微分可能であるならば、合成関数f∘gf \circ gはx0x_0で微分可能であり

(f∘g)′(x0)=f′(g(x0)) g′(x0)(f \circ g)'(x_0) = f'\bigl(g(x_0)\bigr)\,g'(x_0)

が成り立つ。すなわち、合成関数の導関数は、外側の関数の導関数に内側の関数の値を代入したものへ、内側の関数の導関数を掛けたものである。

証明.b=g(x0)b = g(x_0)と置きます。JJの各点ttに対して

φ(t)={f(t)−f(b)t−b(t≠b)f′(b)(t=b)\varphi(t) = \begin{cases} \dfrac{f(t)-f(b)}{t-b} & (t \ne b) \\[6pt] f'(b) & (t = b) \end{cases}

と定めます。ffはbbで微分可能であるからlim⁡t→bφ(t)=f′(b)=φ(b)\lim_{t \to b}\varphi(t) = f'(b) = \varphi(b)であり、φ\varphiはbbで連続です。また、JJのすべての点ttについて

f(t)−f(b)=φ(t) (t−b)f(t) - f(b) = \varphi(t)\,(t-b)

が成り立ちます。t≠bt \ne bのときはφ\varphiの定め方から、t=bt = bのときは両辺が00であることから従います。

h≠0h \ne 0かつx0+h∈Ix_0 + h \in Iとし、この等式にt=g(x0+h)∈Jt = g(x_0+h) \in Jを代入して両辺をhhで割ると

f(g(x0+h))−f(g(x0))h=φ(g(x0+h))⋅g(x0+h)−g(x0)h\frac{f\bigl(g(x_0+h)\bigr) - f\bigl(g(x_0)\bigr)}{h} = \varphi\bigl(g(x_0+h)\bigr)\cdot\frac{g(x_0+h)-g(x_0)}{h}

となります。ggはx0x_0で微分可能であるから定理 1.1により、h→0h \to 0のときg(x0+h)g(x_0+h)はbbに近づきます。φ\varphiはbbで連続であるから、φ(g(x0+h))\varphi\bigl(g(x_0+h)\bigr)はφ(b)=f′(b)\varphi(b) = f'(b)に近づきます。また第二の因子はg′(x0)g'(x_0)に近づきます。よって左辺の極限が存在してf′(b) g′(x0)f'(b)\,g'(x_0)に等しくなります。▨

注意 4.2 (差の商を直接割ることができない理由).定理 4.1の証明では、補助の関数φ\varphiを経由した。差の商を

f(g(x0+h))−f(g(x0))g(x0+h)−g(x0)⋅g(x0+h)−g(x0)h\frac{f\bigl(g(x_0+h)\bigr)-f\bigl(g(x_0)\bigr)}{g(x_0+h)-g(x_0)}\cdot\frac{g(x_0+h)-g(x_0)}{h}

と分けることはできない。h≠0h \ne 0であってもg(x0+h)=g(x0)g(x_0+h) = g(x_0)となることがあり、そのとき第一の分数は分母が00になるからである。定数関数ggはその例である。φ\varphiはt=bt = bでも値をもつように定めてあるので、g(x0+h)=g(x0)g(x_0+h) = g(x_0)となる場合を別に扱う必要がない。

注意 4.3 (記号dydx\dfrac{dy}{dx}による書き方).u=g(x)u = g(x)、y=f(u)y = f(u)と置くと、定理 4.1は

dydx=dydu⋅dudx\frac{dy}{dx} = \frac{dy}{du}\cdot\frac{du}{dx}

と書くことができる。ここでdydu\dfrac{dy}{du}は、yyをuuの関数とみたときの導関数にu=g(x)u = g(x)を代入したものである。この記号で計算したときは、最後にuuにg(x)g(x)を代入して、答えをxxの式に直す。

5 xxの累乗の導関数

はじめに、指数が整数の場合を扱います。指数が正の整数の場合は積の微分法から、負の整数の場合は逆数の導関数から導きます。

定理 5.1 (整数乗の導関数).nnを11以上の整数とすると、すべての実数xxについて

(xn)′=n x n−1(x^{n})' = n\,x^{\,n-1}

が成り立つ。nnを−1-1以下の整数とすると、00でないすべての実数xxについて同じ式が成り立つ。ここでx0x^{0}は、すべての実数xxについて11と読む。

証明. はじめにn≥1n \ge 1の場合を、nnについての数学的帰納法で示します。n=1n = 1のとき、h≠0h \ne 0に対する差の商は(x+h)−xh=1\dfrac{(x+h)-x}{h} = 1であるから(x)′=1=1⋅x0(x)' = 1 = 1\cdot x^{0}です。

11以上の整数nnについて(xn)′=nx n−1(x^{n})' = n x^{\,n-1}がすべての実数xxで成り立つと仮定します。x n+1=x⋅xnx^{\,n+1} = x\cdot x^{n}であるから、定理 2.1により

(x n+1)′=1⋅xn+x⋅nx n−1=xn+nxn=(n+1)xn(x^{\,n+1})' = 1\cdot x^{n} + x\cdot n x^{\,n-1} = x^{n} + n x^{n} = (n+1)x^{n}

です。ここでn−1≥0n - 1 \ge 0であるから、x⋅nx n−1=nxnx\cdot n x^{\,n-1} = n x^{n}はすべての実数xxで成り立ちます。数学的帰納法により、11以上のすべての整数nnについて結論が成り立ちます。

次にn≤−1n \le -1の場合を示します。m=−nm = -nと置くとmmは11以上の整数であり、x≠0x \ne 0のときxn=1xmx^{n} = \dfrac{1}{x^{m}}です。x≠0x \ne 0のときは、xxを含み00を含まない開区間をとることができ、その上でxmx^{m}は00になりません。したがって公式 3.3と、いま示した正の整数の場合により

(xn)′=−mx m−1(xm)2=−m x m−1−2m=−m x −m−1=n x n−1(x^{n})' = -\frac{m x^{\,m-1}}{\left(x^{m}\right)^{2}} = -m\,x^{\,m-1-2m} = -m\,x^{\,-m-1} = n\,x^{\,n-1}

です。▨

6 組み合わせた式を微分する

例 6.1 (積・商・合成の規則を組み合わせる). 次の二つの関数の導関数を求める。

(1)(1)y=(3x2+1)4y = (3x^{2}+1)^{4}とする。外側をt4t^{4}、内側を3x2+13x^{2}+1とみると、定理 4.1と定理 5.1により

y′=4(3x2+1)3⋅6x=24x(3x2+1)3y' = 4(3x^{2}+1)^{3}\cdot 6x = 24x(3x^{2}+1)^{3}

である。すべての実数xxで成り立つ。

(2)(2)y=2x+1x2+1y = \dfrac{2x+1}{x^{2}+1}とする。すべての実数xxについてx2+1≥1>0x^{2}+1 \ge 1 > 0であるから、定理 3.1を用いることができて

y′=2(x2+1)−(2x+1)⋅2x(x2+1)2=−2x2−2x+2(x2+1)2y' = \frac{2(x^{2}+1) - (2x+1)\cdot 2x}{(x^{2}+1)^{2}} = \frac{-2x^{2}-2x+2}{(x^{2}+1)^{2}}

である。

注意 6.2 (答えの確かめ方).例 6.1の(1)(1)は、先に式を展開してから項ごとに微分しても同じ導関数が得られます。二通りの計算結果が一致するかどうかで確かめることができます。また、(2)(2)の分子はxxの2次式であり、分母は4次式であるから、導関数の分母の次数が分子の次数より高いことも確かめの手がかりになる。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の関数を微分せよ。

解法の型(fg)′=f′g+fg′(fg)\prime=f\prime g+fg\prime

  1. 例題 1

    f(x)=x3(−x+1)f(x) = x^{3}(-x+1)
  2. 例題 2

    f(x)=x4(−4x+2)f(x) = x^{4}(-4x+2)
  3. 例題 3

    f(x)=x2(−3x+5)f(x) = x^{2}(-3x+5)
  4. 例題 4

    f(x)=x2(−2x+5)f(x) = x^{2}(-2x+5)

解法の型(fg)′=f′g−fg′g2\left(\dfrac{f}{g}\right)\prime=\dfrac{f\prime g-fg\prime}{g^2}

  1. 例題 1

    f(x)=−x−2x−2f(x) = \dfrac{-x-2}{x-2}
  2. 例題 2

    f(x)=2xx−1f(x) = \dfrac{2x}{x-1}
  3. 例題 3

    f(x)=−x−3x−2f(x) = \dfrac{-x-3}{x-2}
  4. 例題 4

    f(x)=−x−22x−1f(x) = \dfrac{-x-2}{2x-1}

解法の型外側を微分 × 中身の微分(連鎖律)

  1. 例題 1

    f(x)=(3x−3)5f(x) = (3x-3)^{5}
  2. 例題 2

    f(x)=(2x+2)6f(x) = (2x+2)^{6}
  3. 例題 3

    f(x)=(−2x+4)3f(x) = (-2x+4)^{3}
  4. 例題 4

    f(x)=(2x−3)6f(x) = (2x-3)^{6}

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の関数を微分せよ。

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