1 絶対値
定義 1.1 (絶対値). 実数aに対して
∣a∣={a−a(a≥0),(a<0)と定め、∣a∣をaの絶対値という。すべての実数aについて∣a∣≥0であり、∣a∣は数直線上でaを表す点と原点との距離に等しい。たとえば
∣−3∣=∣3∣=3である。
証明.x≥aとする。二点の距離はx−aであり、x−a≥0であるから定義 1.1により∣x−a∣=x−aとなる。
x<aとする。二点の距離はa−xであり、x−a<0であるから
∣x−a∣=−(x−a)=a−xとなる。どちらの場合も二点の距離は∣x−a∣に等しい。▨
r>0のとき、不等式∣x−a∣<rは、xを表す点がaを表す点から距離r未満にあることを表します。次の図では、aを動かすとグラフとx軸の共有点がaへ移り、各xにおける高さがxとaの距離に一致します。
2 平方根
定理 2.1.nを正の整数とする。
- 0≤x<yならばxn<ynである。したがって、非負実数x,yがxn=ynを満たすならばx=yである。
- 正の実数aに対して、bn=aを満たす正の実数bがただ一つ存在する。
証明.0≤x<yとする。n=1ならばyn−xn=y−x>0である。n≥2とすると、因数分解
yn−xn=(y−x)(yn−1+yn−2x+⋯+yxn−2+xn−1)において、第一の因数は正である。第二の因数の各項は非負であり、y>0であるからyn−1>0である。したがって第二の因数も正であり、yn−xn>0となる。
非負実数x,yがxn=ynを満たすとする。x<yまたはy<xならば、上の結果によりxn=ynとなるので、x=yである。
正の実数aに対してbn=aを満たす正の実数bが存在することは§B3.1 定理 2.1により従う。そのような正の実数が二つあれば、項1の一意性により両者は等しい。したがって項2の存在と一意性が成り立つ。▨
定義 2.2 (平方根).a≥0とする。二乗するとaになる実数をaの平方根という。a>0のとき、定理 2.1の2によって定まる、二乗するとaになるただ一つの正の実数をaと書く。また0=0と定める。
a>0の平方根はaと−aの二つです。実数xがx2=aを満たすならば、∣x∣2=aであり、定理 2.1の1から∣x∣=aとなります。記号 は二つの平方根のうち非負のものだけを表すので、9=3であり、−3ではありません。
証明.∣a∣は非負であり、定義 1.1から∣a∣2=a2である。二乗するとa2になる非負実数は定理 2.1の1によりただ一つである。a2もその非負実数であるから、a2=∣a∣となる。▨
a<0の場合、a2はaではなく−aです。たとえば(−3)2=9=3=∣−3∣となります。
証明.abは非負であり
(ab)2=abを満たす。二乗するとabになる非負実数の一意性から、項1を得る。
b>0とする。a/bは非負であり
(ba)2=baを満たす。a/b≥0であるから、同じ一意性により項2を得る。
(a)mは非負であり
((a)m)2=amを満たす。am≥0であるから、同じ一意性により項3を得る。▨
例 2.5 (平方根の簡約).12=22⋅3であるから
12=223=23となる。また
250=250=25=5,(3)4=34=81=9となる。各変形では根号の中が非負であり、商の分母2は正である。
3 根号の中に置く数の範囲
注意 3.1. 実数の範囲では、 の中に置く数は非負でなければならない。実数の二乗は非負であるから、二乗すると−2になる実数は存在せず、−2は実数として定まらない。
式にx−1が現れる場合、実数の範囲で扱うことができるのはx−1≥0、すなわちx≥1の場合に限られます。この条件を確かめずに変形すると、元の式が定まらない値が答えの候補へ混じります。
4 分母の有理化
分母と分子へ同じ非零の式を掛け、分母から根号を除く変形を有理化といいます。
例 4.1 (分母の有理化).2>0であるから
21=2⋅21⋅2=22となる。
また3−1=0であり、(p−q)(p+q)=p2−q2であるから
3−11=(3−1)(3+1)3+1=3−13+1=23+1となる。
5 n乗根
定義 5.1 (n乗根).a>0とし、nを正の整数とする。定理 2.1の2によって定まる、n乗するとaになるただ一つの正の実数をaのn乗根といい、naと書く。n=2の場合には2aをaと書く。
証明.nanbは正であり
(nanb)n=abを満たす。定理 2.1の1による一意性から項1を得る。
na/nbは正であり
(nbna)n=baを満たす。同じ一意性から項2を得る。
(na)mは正であり
((na)m)n=amを満たす。同じ一意性から項3を得る。
mnaは正であり
(mna)mn=((mna)m)n=(na)n=aを満たす。mn乗の正の根の一意性から項4を得る。▨
例 5.4 (n乗根の計算).23=8であるから38=2である。公式 5.3を用いると
3234=38=2,32354=327=3となる。また
(43)2=49=3,364=664=2となる。49=3は、両辺が正で、四乗するとともに9になることからも確かめることができる。
公式 5.3はa>0とb>0を仮定しています。たとえば3x−2を本記事の記号で扱うことができるのはx>2の場合に限られます。また
3x−23x+2=3x2−4
と変形する場合にも、x−2>0とx+2>0、すなわちx>2を先に確かめます。
閑話休題:角が1つ、から、角だらけの怪物へy=∣x∣のグラフは原点で折れ曲がり、左側の傾きが−1、右側の傾きが1であるため、原点では微分することができない。一方、原点以外では直線である。
ワイエルシュトラスは1872年に、∑ancos(bnπx)という形の級数について0<a<1とbに適切な条件を課し、連続であるが至る所で微分することができない関数を与えた。この例は、連続なグラフが多くの点で滑らかであるとは限らないことを示している。
細部を拡大しても複雑な形が現れるという性質は、フラクタルを考える入口になる。ブラウン運動の数学的モデルの経路も、確率1で連続であるが至る所で微分することができない。∣x∣の一つの角は、連続性と微分可能性を区別する最初の例である。