§A1.2絶対値と根号の計算

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絶対値を数直線上の距離として捉えると、符号による場合分けと∣x−a∣|x-a|の意味が明確になります。平方根とnn乗根については、非負または正の根の一意性を根拠に計算法則を証明し、根号の中の数の範囲を確かめながら簡約と有理化を行います。

1 絶対値

定義 1.1 (絶対値). 実数aaに対して

∣a∣={a(a≥0),−a(a<0)|a|=\begin{cases} a&(a\ge0),\\ -a&(a<0) \end{cases}

と定め、∣a∣|a|をaaの絶対値という。すべての実数aaについて∣a∣≥0|a|\ge0であり、∣a∣|a|は数直線上でaaを表す点と原点との距離に等しい。たとえば

∣−3∣=∣3∣=3|-3|=|3|=3

である。

公式 1.2 (数直線上の二点の距離). 実数x,ax,aに対して、数直線上でxxを表す点とaaを表す点との距離は∣x−a∣|x-a|に等しい。

証明.x≥ax\ge aとする。二点の距離はx−ax-aであり、x−a≥0x-a\ge0であるから定義 1.1により∣x−a∣=x−a|x-a|=x-aとなる。

x<ax<aとする。二点の距離はa−xa-xであり、x−a<0x-a<0であるから

∣x−a∣=−(x−a)=a−x|x-a|=-(x-a)=a-x

となる。どちらの場合も二点の距離は∣x−a∣|x-a|に等しい。▨

r>0r>0のとき、不等式∣x−a∣<r|x-a|<rは、xxを表す点がaaを表す点から距離rr未満にあることを表します。次の図では、aaを動かすとグラフとxx軸の共有点がaaへ移り、各xxにおける高さがxxとaaの距離に一致します。

2 平方根

定理 2.1.nnを正の整数とする。

  1. 0≤x<y0\le x<yならばxn<ynx^n<y^nである。したがって、非負実数x,yx,yがxn=ynx^n=y^nを満たすならばx=yx=yである。
  2. 正の実数aaに対して、bn=ab^n=aを満たす正の実数bbがただ一つ存在する。

証明.0≤x<y0\le x<yとする。n=1n=1ならばyn−xn=y−x>0y^n-x^n=y-x>0である。n≥2n\ge2とすると、因数分解

yn−xn=(y−x)(yn−1+yn−2x+⋯+yxn−2+xn−1)y^n-x^n=(y-x)(y^{n-1}+y^{n-2}x+\cdots+yx^{n-2}+x^{n-1})

において、第一の因数は正である。第二の因数の各項は非負であり、y>0y>0であるからyn−1>0y^{n-1}>0である。したがって第二の因数も正であり、yn−xn>0y^n-x^n>0となる。

非負実数x,yx,yがxn=ynx^n=y^nを満たすとする。x<yx<yまたはy<xy<xならば、上の結果によりxn≠ynx^n\ne y^nとなるので、x=yx=yである。

正の実数aaに対してbn=ab^n=aを満たす正の実数bbが存在することは§B3.1 定理 2.1により従う。そのような正の実数が二つあれば、項1の一意性により両者は等しい。したがって項2の存在と一意性が成り立つ。▨

定義 2.2 (平方根).a≥0a\ge0とする。二乗するとaaになる実数をaaの平方根という。a>0a>0のとき、定理 2.1の2によって定まる、二乗するとaaになるただ一つの正の実数をa\sqrt aと書く。また0=0\sqrt0=0と定める。

a>0a>0の平方根はa\sqrt aと−a-\sqrt aの二つです。実数xxがx2=ax^2=aを満たすならば、∣x∣2=a|x|^2=aであり、定理 2.1の1から∣x∣=a|x|=\sqrt aとなります。記号 \sqrt{\ }は二つの平方根のうち非負のものだけを表すので、9=3\sqrt9=3であり、−3-3ではありません。

公式 2.3. すべての実数aaについて

a2=∣a∣\sqrt{a^2}=|a|

が成り立つ。

証明.∣a∣|a|は非負であり、定義 1.1から∣a∣2=a2|a|^2=a^2である。二乗するとa2a^2になる非負実数は定理 2.1の1によりただ一つである。a2\sqrt{a^2}もその非負実数であるから、a2=∣a∣\sqrt{a^2}=|a|となる。▨

a<0a<0の場合、a2\sqrt{a^2}はaaではなく−a-aです。たとえば(−3)2=9=3=∣−3∣\sqrt{(-3)^2}=\sqrt9=3=|-3|となります。

公式 2.4 (平方根の積と商).a,ba,bを非負実数、mmを正の整数とする。

  1. ab=ab\sqrt a\sqrt b=\sqrt{ab}。
  2. b>0b>0ならばab=ab\dfrac{\sqrt a}{\sqrt b}=\sqrt{\dfrac ab}。
  3. (a)m=am(\sqrt a)^m=\sqrt{a^m}。

証明.ab\sqrt a\sqrt bは非負であり

(ab)2=ab(\sqrt a\sqrt b)^2=ab

を満たす。二乗するとababになる非負実数の一意性から、項1を得る。

b>0b>0とする。a/b\sqrt a/\sqrt bは非負であり

(ab)2=ab\left(\frac{\sqrt a}{\sqrt b}\right)^2=\frac ab

を満たす。a/b≥0a/b\ge0であるから、同じ一意性により項2を得る。

(a)m(\sqrt a)^mは非負であり

((a)m)2=am((\sqrt a)^m)^2=a^m

を満たす。am≥0a^m\ge0であるから、同じ一意性により項3を得る。▨

例 2.5 (平方根の簡約).12=22⋅312=2^2\cdot3であるから

12=223=23\sqrt{12}=\sqrt{2^2}\sqrt3=2\sqrt3

となる。また

502=502=25=5,(3)4=34=81=9\frac{\sqrt{50}}{\sqrt2}=\sqrt{\frac{50}{2}}=\sqrt{25}=5, \qquad (\sqrt3)^4=\sqrt{3^4}=\sqrt{81}=9

となる。各変形では根号の中が非負であり、商の分母2\sqrt2は正である。

3 根号の中に置く数の範囲

注意 3.1. 実数の範囲では、 \sqrt{\ }の中に置く数は非負でなければならない。実数の二乗は非負であるから、二乗すると−2-2になる実数は存在せず、−2\sqrt{-2}は実数として定まらない。

式にx−1\sqrt{x-1}が現れる場合、実数の範囲で扱うことができるのはx−1≥0x-1\ge0、すなわちx≥1x\ge1の場合に限られます。この条件を確かめずに変形すると、元の式が定まらない値が答えの候補へ混じります。

4 分母の有理化

分母と分子へ同じ非零の式を掛け、分母から根号を除く変形を有理化といいます。

例 4.1 (分母の有理化).2>0\sqrt2>0であるから

12=1⋅22⋅2=22\frac1{\sqrt2} =\frac{1\cdot\sqrt2}{\sqrt2\cdot\sqrt2} =\frac{\sqrt2}{2}

となる。

また3−1≠0\sqrt3-1\ne0であり、(p−q)(p+q)=p2−q2(p-q)(p+q)=p^2-q^2であるから

13−1=3+1(3−1)(3+1)=3+13−1=3+12\frac1{\sqrt3-1} =\frac{\sqrt3+1}{(\sqrt3-1)(\sqrt3+1)} =\frac{\sqrt3+1}{3-1} =\frac{\sqrt3+1}{2}

となる。

5 nn乗根

定義 5.1 (nn乗根).a>0a>0とし、nnを正の整数とする。定理 2.1の2によって定まる、nn乗するとaaになるただ一つの正の実数をaaのnn乗根といい、an\sqrt[n]{a}と書く。n=2n=2の場合にはa2\sqrt[2]{a}をa\sqrt aと書く。

注意 5.2.nnを正の整数とする。

  1. nnが偶数であるとき、任意の実数のnn乗は非負である。a<0a<0に対してnn乗するとaaになる実数は存在しない。a>0a>0に対してnn乗するとaaになる実数はan\sqrt[n]{a}と−an-\sqrt[n]{a}の二つだけである。
  2. nnが奇数であるとき、a<0a<0に対してnn乗するとaaになる実数が存在する。
  3. 記号an\sqrt[n]{a}は、本記事ではa>0a>0の場合にだけ用いる。nnが奇数であっても、a<0a<0に対してこの記号を用いない。

nnが偶数ならば、実数xxに対して

xn=(xn/2)2≥0x^n=(x^{n/2})^2\ge0

である。さらにxn=a>0x^n=a>0ならば∣x∣n=a|x|^n=aであるから、定理 2.1の1により∣x∣=an|x|=\sqrt[n]{a}となり、x=±anx=\pm\sqrt[n]{a}である。

nnが奇数でa<0a<0ならば−a>0-a>0であり

(−−an)n=−(−an)n=a(-\sqrt[n]{-a})^n=-(\sqrt[n]{-a})^n=a

となるので、項2の実数が存在する。項3は、偶奇によって根号記号の定義域を変えないための規約である。

公式 5.3 (nn乗根の計算法則).a,ba,bを正の実数、m,nm,nを正の整数とする。

  1. anbn=abn\sqrt[n]{a}\sqrt[n]{b}=\sqrt[n]{ab}。
  2. anbn=abn\dfrac{\sqrt[n]{a}}{\sqrt[n]{b}}=\sqrt[n]{\dfrac ab}。
  3. (an)m=amn(\sqrt[n]{a})^m=\sqrt[n]{a^m}。
  4. anm=amn\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}}=\sqrt[mn]{a}。

証明.anbn\sqrt[n]{a}\sqrt[n]{b}は正であり

(anbn)n=ab(\sqrt[n]{a}\sqrt[n]{b})^n=ab

を満たす。定理 2.1の1による一意性から項1を得る。

an/bn\sqrt[n]{a}/\sqrt[n]{b}は正であり

(anbn)n=ab\left(\frac{\sqrt[n]{a}}{\sqrt[n]{b}}\right)^n=\frac ab

を満たす。同じ一意性から項2を得る。

(an)m(\sqrt[n]{a})^mは正であり

((an)m)n=am((\sqrt[n]{a})^m)^n=a^m

を満たす。同じ一意性から項3を得る。

anm\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}}は正であり

(anm)mn=((anm)m)n=(an)n=a(\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}})^{mn} =((\sqrt[m]{\sqrt[n]{a}})^m)^n =(\sqrt[n]{a})^n=a

を満たす。mnmn乗の正の根の一意性から項4を得る。▨

例 5.4 (nn乗根の計算).23=82^3=8であるから83=2\sqrt[3]{8}=2である。公式 5.3を用いると

2343=83=2,54323=273=3\sqrt[3]{2}\sqrt[3]{4}=\sqrt[3]{8}=2, \qquad \frac{\sqrt[3]{54}}{\sqrt[3]{2}}=\sqrt[3]{27}=3

となる。また

(34)2=94=3,643=646=2(\sqrt[4]{3})^2=\sqrt[4]{9}=\sqrt3, \qquad \sqrt{\sqrt[3]{64}}=\sqrt[6]{64}=2

となる。94=3\sqrt[4]{9}=\sqrt3は、両辺が正で、四乗するとともに99になることからも確かめることができる。

公式 5.3はa>0a>0とb>0b>0を仮定しています。たとえばx−23\sqrt[3]{x-2}を本記事の記号で扱うことができるのはx>2x>2の場合に限られます。また

x−23x+23=x2−43\sqrt[3]{x-2}\sqrt[3]{x+2}=\sqrt[3]{x^2-4}

と変形する場合にも、x−2>0x-2>0とx+2>0x+2>0、すなわちx>2x>2を先に確かめます。

閑話休題:角が1つ、から、角だらけの怪物へy=∣x∣y=|x|のグラフは原点で折れ曲がり、左側の傾きが−1-1、右側の傾きが11であるため、原点では微分することができない。一方、原点以外では直線である。

ワイエルシュトラスは1872年に、∑ancos⁡(bnπx)\sum a^n\cos(b^n\pi x)という形の級数について0<a<10<a<1とbbに適切な条件を課し、連続であるが至る所で微分することができない関数を与えた。この例は、連続なグラフが多くの点で滑らかであるとは限らないことを示している。

細部を拡大しても複雑な形が現れるという性質は、フラクタルを考える入口になる。ブラウン運動の数学的モデルの経路も、確率1で連続であるが至る所で微分することができない。∣x∣|x|の一つの角は、連続性と微分可能性を区別する最初の例である。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

実数範囲で、次の値を簡単にせよ。

解法の型平方因数をくくり出す。a2=∣a∣\sqrt{a^2}=|a|

  1. (1)(−3)2\sqrt{(-3)^{2}}
  2. (2)20\sqrt{20}
  3. (3)(−5)2\sqrt{(-5)^{2}}
  4. (4)80\sqrt{80}
  5. (5)(−6)2\sqrt{(-6)^{2}}

実数範囲で、次の式の分母を有理化せよ。

解法の型分母・分子に共役な式を掛けて分母を有理数にする

  1. (1)13−1\dfrac{1}{\sqrt{3} - 1}
  2. (2)12−1\dfrac{1}{\sqrt{2} - 1}
  3. (3)15−1\dfrac{1}{\sqrt{5} - 1}
  4. (4)15−2\dfrac{1}{\sqrt{5} - 2}
  5. (5)15\dfrac{1}{\sqrt{5}}

演習

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