複素数とは、乗するとになる数(虚数単位、)を導入し、実数を用いての形で表される数のことです。を実部、を虚部と呼びます。これにより、実数の範囲では解けなかった方程式(など)が解けるようになります。
1 四則計算:だけが新ルール
複素数の計算は、を文字のように扱って展開し、最後にをに置き換えるだけです。新しく覚える規則はの1つだけ。
割り算は、分母の共役複素数(に対する)を分母・分子に掛けて、分母を実数にします(有理化と同じ発想)。
が実数になるのが鍵です。
2 解と係数の関係
係数、の2次方程式の2解をとすると、重解を重複度込みで数えて
が成り立ちます。を展開して係数比較すれば出ます。これを使うと、解を実際に求めずに「2解の和・積・平方和」などが計算できます。
実数係数の方程式では、非実数解は共役の組で現れます(が解ならも同じ重複度で解)。ただし実数解は共役と同じ自分自身です。
閑話休題:「想像上の数」が現実を動かすは英語で imaginary number(想像上の数)と呼ばれます。この名は蔑称でした——16世紀、3次方程式の解の公式を研究する中で、途中式にどうしても「負の数の平方根」が現れてしまい、数学者たちは「ありえないが、計算の途中で仮に使う数」として嫌々ながら導入したのです。デカルトが皮肉を込めて「想像上の」と名付け、その名が定着しました。
ところが、この“想像上の数”は現実世界の骨格そのものでした。オイラーはを発見し、とおくと——という数学で最も重要な5つの定数が1本の式に収まる、「人類が発見したもっとも美しい式」が生まれます。複素数の掛け算は幾何的には「回転」を意味し(を掛けると回る)、この性質のおかげで複素数は波や振動を扱う理論の共通言語になりました。交流電気の回路計算(インピーダンス)、量子力学の波動関数(実部だけでは物理を記述できず、複素数が本質的)、音楽や画像を圧縮するフーリエ変換・ FFT、フラクタルのマンデルブロ集合、飛行機の翼まわりの流れの設計——複素数は現代の科学技術の多くのモデルで中心的な役割を果たします。「想像上」と侮られた数が、実は最も“現実的”な数だった、というのは数学史屈指の逆転劇です。