§A1.1数の体系と数直線

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数の体系とは、数を「どこまで使えるか」で段階的に広げていく入れ子の構造のことです。 それぞれの段階には名前があります。

  • 自然数1,2,3,…1, 2, 3, \dots(ものを数える数)
  • 整数…,−2,−1,0,1,2,…\dots, -2, -1, 0, 1, 2, \dots(自然数に00と負の数を足したもの)
  • 有理数 分数pq\dfrac{p}{q}(p,qp, qは整数、q≠0q \ne 0)で表せる数
  • 実数 数直線上のすべての点に対応する数

本記事ではN={1,2,3,… }\mathbb N=\{1,2,3,\dots\}、Z\mathbb Zを整数全体、Q={p/q∣p,q∈Z,q≠0}\mathbb Q=\{p/q\mid p,q\in\mathbb Z, q\ne0\}、R\mathbb Rを実数全体とします。日本の高校の教科書は自然数に00を含めない流儀を採っており、本記事はそれに合わせています。自然数に00を含める流儀もあり、どちらを採るかは分野によって異なります。このサイトでも、離散数学とアルゴリズム、集合論入門、計算理論、公理的集合論の各単元はN={0,1,2,… }\mathbb N=\{0,1,2,\dots\}という流儀を採ります。どちらの流儀であるかによって「すべての自然数nnについて」という形の主張の真偽が変わるので、読者は、読んでいる記事が00を含めているかどうかを確かめる必要があります。問題文で指定があればそちらを優先します。

後の段階ほど広く、前の段階を丸ごと含みます。自然数は整数の一部、整数は有理数の一部、というように。

1 数直線:数を一列に並べる

数直線とは、直線上に基準点00と単位の長さを決め、すべての実数を点として並べたものです。 右へ行くほど大きく、左へ行くほど小さい。数の大小を「位置」に翻訳する道具です。下の図で、有理数も無理数も同じ一本の直線上に並ぶことを見てください。

2 有理数と無理数の見分け方

有理数は小数で書くと、有限小数か循環小数になるという特徴があります(14=0.25\frac{1}{4} = 0.25、13=0.333⋯\frac{1}{3} = 0.333\cdots)。逆に、循環しない無限小数は分数で表せません。これを無理数と呼びます。2\sqrt{2}やπ\piが代表例です。

有理数と無理数を合わせて実数になります。「有理数だけではすきまが残る」という見方は直観であり、実数の完備性を厳密に構成する議論はここでは扱いません。

閑話休題:数はどこまで広げられるか 自然数から実数へ——この「数を広げる旅」は、実は人類が何千年もかけて歩んだ苦難の道でした。負の数は「借金」や「損失」としてなら受け入れられても、長らく「ありえない数(偽の数)」と呼ばれ、ヨーロッパでは中世を過ぎても敬遠されました。ゼロを数として扱う発想はインドで生まれ、無理数の発見はピタゴラス学派に衝撃を与えます。数の体系は、天から与えられたものではなく、人が必要に迫られて発明してきた道具なのです。

そして旅は実数で終わりません。22乗して−1-1になる数iiを足せば複素数(発展)、さらにその先には四元数があります。1843年、ハミルトンは散歩の途中でi2=j2=k2=ijk=−1i^2 = j^2 = k^2 = ijk = -1という関係をひらめき、興奮のあまり近くの橋にその式をナイフで刻んだと言われます。四元数では掛け算の順序を変えると答えが変わる(ij=kij = kだがji=−kji = -k、非可換)——その代わり、3次元の回転をきれいに表せるので、今日の3DCG・ゲームエンジン・宇宙機の姿勢制御は四元数で回転を計算しています。さらに広げた八元数では結合法則さえ崩れます。面白いのは、数を広げるたびに何かを失うこと——複素数では大小の順序を、四元数では掛け算の可換性を、八元数では結合性を手放します。「もっと広い数はないのか」という問いと「広げると何を諦めるのか」という問いは、今も数学の深いテーマであり続けています。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

ℕ ⊂\subsetZ\mathbb{Z}⊂\subsetQ\mathbb{Q}⊂\subsetR\mathbb{R}⊂\subsetC\mathbb{C} という数の体系の包含関係をふまえて、次の問いに答えよ(この教材では自然数は 1 から数える)。

解法の型有理数 ⇔\Leftrightarrow 有限小数または循環小数。循環節の長さが k なら 10^k 倍して引くと循環が消える。体系を広げる動機は「閉じていない演算を閉じさせること」(ℕ は引き算、Z\mathbb{Z} は割り算、Q\mathbb{Q} は平方根、R\mathbb{R} は x² == −1 で閉じない)

  1. 循環小数 0.090909…(09 が循環) を既約分数で表せ。

    0.09‾0.\overline{09}
  2. 次の主張の真偽を判定し、偽ならば反例を1つ挙げよ。主張: 無理数と無理数の積は必ず無理数である

    無理数と無理数の積は必ず無理数である\text{無理数と無理数の積は必ず無理数である}
  3. √13 が無理数であることを背理法で示す。√13 == a/b(a, b は互いに素な自然数)と仮定すると 13b² == a² が得られる。ここから矛盾を導け。

    13=ab(a,b は互いに素な自然数)⟹13b2=a2\sqrt{13} = \dfrac{a}{b} \quad (a, b \ \text{は互いに素な自然数}) \quad \Longrightarrow \quad 13 b^{2} = a^{2}
  4. √7 が無理数であることを背理法で示す。√7 == a/b(a, b は互いに素な自然数)と仮定すると 7b² == a² が得られる。ここから矛盾を導け。

    7=ab(a,b は互いに素な自然数)⟹7b2=a2\sqrt{7} = \dfrac{a}{b} \quad (a, b \ \text{は互いに素な自然数}) \quad \Longrightarrow \quad 7 b^{2} = a^{2}
  5. 循環小数 0.2333…(3 が循環) を既約分数で表せ。

    0.23‾0.2\overline{3}
  6. √2 + (1 − √2) は自然数 ℕ・整数 Z\mathbb{Z}・有理数 Q\mathbb{Q}・実数 R\mathbb{R}・複素数 C\mathbb{C} のうちどの体系に属するか。まず値を簡単にしてから答えよ。

    2+(1−2)\sqrt{2} + (1 - \sqrt{2})
  7. 次の主張の真偽を判定し、偽ならば反例を1つ挙げよ。主張: Q\mathbb{Q} は「正の数の平方根をとる」操作について閉じている

    Q は「正の数の平方根をとる」操作について閉じている\mathbb{Q} \ \text{は「正の数の平方根をとる」操作について閉じている}
  8. 次の主張の真偽を判定し、偽ならば反例を1つ挙げよ。主張: 0 でない有理数と無理数の積は必ず無理数である

    0 でない有理数と無理数の積は必ず無理数である0 \ \text{でない有理数と無理数の積は必ず無理数である}
  9. 次の主張の真偽を判定し、偽ならば反例を1つ挙げよ。主張: √2 + √3 は有理数である

    2+3 は有理数である\sqrt{2} + \sqrt{3} \ \text{は有理数である}
  10. π\pi − π\pi は自然数 ℕ・整数 Z\mathbb{Z}・有理数 Q\mathbb{Q}・実数 R\mathbb{R}・複素数 C\mathbb{C} のうちどの体系に属するか。まず値を簡単にしてから答えよ。

    π−π\pi - \pi

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

ℕ ⊂\subsetZ\mathbb{Z}⊂\subsetQ\mathbb{Q}⊂\subsetR\mathbb{R}⊂\subsetC\mathbb{C} という数の体系の包含関係をふまえて、次の問いに答えよ(この教材では自然数は 1 から数える)。

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