§E19.16面積の第一変分と極小曲面

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「測地線・測地曲率・エネルギーの第一変分」は、曲線を動かしたときの長さとエネルギーの一階の変化を計算し、その臨界点が測地線であることを示した。本記事は同じ手順を一次元上げ、曲面を法方向へ動かしたときの面積の一階の変化を計算する。得られる公式の被積分関数には平均曲率が現れるので、面積の臨界点は平均曲率が恒等的に零である曲面として特徴づけられる。この特徴づけが極小曲面の定義の根拠である。

本記事が実際に示すのは次の五つである。第一に、法方向の変分に対して第一基本形式の成分が平均曲率を係数として一次の項を持ち、面積要素が1−2tφH1-2t\varphi Hという因子で変化することである。第二に、面積の第一変分が−∫2Hφ dA-\int2H\varphi\,dAに等しいことである。第三に、この量がすべての変分について消えることと平均曲率が恒等的に零であることが同値であることである。第四に、関数のグラフに対する極小曲面方程式である。第五に、同じ二つの円を境界とする懸垂面が二つ存在する範囲で、首の細いほうが面積の最小値を与えないことである。

極小曲面という名前から面積の最小性を結論してはならない。本記事が示すのは臨界点であることだけであり、最小性は第二変分と安定性の問題である。第五の結果は、臨界点であって最小点でない具体例を与える。

以下、U⊆R2U\subseteq\mathbb{R}^2は開集合、x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3は正則曲面MMの正則パラメータ表示(§E19.3 定義 1.3)とし、単位法線は表示が定める

N=xu×xv∥xu×xv∥N=\frac{\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v}{\lVert\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v\rVert}

に取る。第一基本形式の成分をE,F,GE,F,G(§E19.4 定義 1.3)、第二基本形式の成分をe,f,ge,f,g(§E19.5 命題 3.2)、Weingarten 写像をSS(§E19.5 定義 1.4)、Gauss 曲率と平均曲率をKK、HH(§E19.6 定義 2.1)と書く。「滑らか」はC∞C^\inftyを意味する。

1 法方向の変分

定義 1.1.φ ⁣:U→R\varphi\colon U\to\mathbb{R}を滑らかな関数とし、その台

K={q∈U:φ(q)≠0}‾\mathcal{K}=\overline{\{q\in U:\varphi(q)\ne0\}}

がコンパクトであってUUに含まれるとする。t∈Rt\in\mathbb{R}に対して

xt(u,v)=x(u,v)+t φ(u,v) N(u,v)((u,v)∈U)\boldsymbol{x}_t(u,v)=\boldsymbol{x}(u,v)+t\,\varphi(u,v)\,N(u,v)\qquad\bigl((u,v)\in U\bigr)

と定め、この族をx\boldsymbol{x}の法方向の変分 (normal variation)、φ\varphiをその変分関数 (variation function) という。x0=x\boldsymbol{x}_0=\boldsymbol{x}であり、U∖KU\setminus\mathcal{K}の上ではφ\varphiが開集合の上で恒等的に零であるからφ=φu=φv=0\varphi=\varphi_u=\varphi_v=0であり、したがってxt=x\boldsymbol{x}_t=\boldsymbol{x}である。

補題 1.2.定義 1.1の記号のもとで、xt\boldsymbol{x}_tの第一基本形式の成分をEt,Ft,GtE_t,F_t,G_tと書き、Wt=EtGt−Ft2W_t=E_tG_t-F_t^{2}と置く。

  1. EtE_t、FtF_t、GtG_tはttについて二次以下の多項式であり、その係数はUUの上の滑らかな関数である。一次の項は Et=E−2tφe+O(t2),Ft=F−2tφf+O(t2),Gt=G−2tφg+O(t2)E_t=E-2t\varphi e+O(t^2),\qquad F_t=F-2t\varphi f+O(t^2),\qquad G_t=G-2t\varphi g+O(t^2) で与えられる。ここでO(t2)O(t^2)はt2t^2を因数に持つ項を表す。
  2. WtW_tはttについて四次以下の多項式であり、W0=EG−F2>0W_0=EG-F^2>0、 ∂Wt∂t∣t=0=−4φH (EG−F2)\left.\frac{\partial W_t}{\partial t}\right|_{t=0}=-4\varphi H\,(EG-F^2) が成り立つ。
  3. ε>0\varepsilon>0が存在して、∣t∣<ε\lvert t\rvert<\varepsilonのときUUの全体でWt>0W_t>0である。とくにxt\boldsymbol{x}_tははめ込みであり、Wt\sqrt{W_t}はU×(−ε,ε)U\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上で滑らかである。

証明.(1)を示す。定義 1.1の式をuuで偏微分すると

(xt)u=xu+tφuN+tφNu(\boldsymbol{x}_t)_u=\boldsymbol{x}_u+t\varphi_uN+t\varphi N_u

である。§E19.5 命題 1.5によりNu=−S(xu)N_u=-S(\boldsymbol{x}_u)であるから

(xt)u=(xu−tφS(xu))+tφuN(\boldsymbol{x}_t)_u=\bigl(\boldsymbol{x}_u-t\varphi S(\boldsymbol{x}_u)\bigr)+t\varphi_uN

である。同様に(xt)v=(xv−tφS(xv))+tφvN(\boldsymbol{x}_t)_v=\bigl(\boldsymbol{x}_v-t\varphi S(\boldsymbol{x}_v)\bigr)+t\varphi_vNである。SSの値は接平面に属し(§E19.5 定義 1.4)、NNは接平面に直交するから、内積を取ると

Et=∥xu−tφS(xu)∥2+t2φu 2,E_t=\bigl\lVert\boldsymbol{x}_u-t\varphi S(\boldsymbol{x}_u)\bigr\rVert^2+t^2\varphi_u^{\,2},Ft=⟨xu−tφS(xu), xv−tφS(xv)⟩+t2φuφv,F_t=\bigl\langle\boldsymbol{x}_u-t\varphi S(\boldsymbol{x}_u),\ \boldsymbol{x}_v-t\varphi S(\boldsymbol{x}_v)\bigr\rangle+t^2\varphi_u\varphi_v,Gt=∥xv−tφS(xv)∥2+t2φv 2G_t=\bigl\lVert\boldsymbol{x}_v-t\varphi S(\boldsymbol{x}_v)\bigr\rVert^2+t^2\varphi_v^{\,2}

である。§E19.5 命題 3.2により⟨S(xu),xu⟩=e\langle S(\boldsymbol{x}_u),\boldsymbol{x}_u\rangle=e、⟨S(xu),xv⟩=⟨xu,S(xv)⟩=f\langle S(\boldsymbol{x}_u),\boldsymbol{x}_v\rangle=\langle\boldsymbol{x}_u,S(\boldsymbol{x}_v)\rangle=f、⟨S(xv),xv⟩=g\langle S(\boldsymbol{x}_v),\boldsymbol{x}_v\rangle=gであるから、括弧を展開すると

Et=E−2tφe+t2(φ2∥S(xu)∥2+φu 2),E_t=E-2t\varphi e+t^2\bigl(\varphi^2\lVert S(\boldsymbol{x}_u)\rVert^2+\varphi_u^{\,2}\bigr),Ft=F−2tφf+t2(φ2⟨S(xu),S(xv)⟩+φuφv),F_t=F-2t\varphi f+t^2\bigl(\varphi^2\langle S(\boldsymbol{x}_u),S(\boldsymbol{x}_v)\rangle+\varphi_u\varphi_v\bigr),Gt=G−2tφg+t2(φ2∥S(xv)∥2+φv 2)G_t=G-2t\varphi g+t^2\bigl(\varphi^2\lVert S(\boldsymbol{x}_v)\rVert^2+\varphi_v^{\,2}\bigr)

である。FtF_tの一次の項で⟨S(xu),xv⟩\langle S(\boldsymbol{x}_u),\boldsymbol{x}_v\rangleと⟨xu,S(xv)⟩\langle\boldsymbol{x}_u,S(\boldsymbol{x}_v)\rangleの二つが現れ、両者が等しいことは§E19.5 定理 2.1による。係数はすべてUUの上の滑らかな関数である。

(2)を示す。Wt=EtGt−Ft2W_t=E_tG_t-F_t^2は二次以下の多項式の積と差であるから四次以下の多項式である。t=0t=0での値はEG−F2EG-F^2であり、第一基本形式が正定値であること(§E19.4 命題 1.2)から正である。積の微分により

∂Wt∂t∣t=0=(∂Et∂t∣0)G+E(∂Gt∂t∣0)−2F(∂Ft∂t∣0)=−2φ(eG+gE−2fF)\left.\frac{\partial W_t}{\partial t}\right|_{t=0} =\left(\left.\frac{\partial E_t}{\partial t}\right|_{0}\right)G+E\left(\left.\frac{\partial G_t}{\partial t}\right|_{0}\right)-2F\left(\left.\frac{\partial F_t}{\partial t}\right|_{0}\right) =-2\varphi\bigl(eG+gE-2fF\bigr)

である。§E19.6 公式 2.3によりeG−2fF+gE=2H(EG−F2)eG-2fF+gE=2H(EG-F^2)であるから

∂Wt∂t∣t=0=−4φH (EG−F2)\left.\frac{\partial W_t}{\partial t}\right|_{t=0}=-4\varphi H\,(EG-F^2)

である。

(3)を示す。U∖KU\setminus\mathcal{K}の上ではxt=x\boldsymbol{x}_t=\boldsymbol{x}であるからWt=W0>0W_t=W_0>0である。WWはU×RU\times\mathbb{R}の上の連続関数であり、K×{0}\mathcal{K}\times\{0\}の上で正である。K\mathcal{K}はコンパクトであるから、各q∈Kq\in\mathcal{K}に対してqqの近傍と00の近傍の直積でW>0W>0となるものを取り、有限個でK\mathcal{K}を覆うことにより、ε>0\varepsilon>0をK×(−ε,ε)\mathcal{K}\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上でWt>0W_t>0となるように取ることができる。以上により∣t∣<ε\lvert t\rvert<\varepsilonのときUUの全体でWt>0W_t>0である。§E19.4 補題 1.5によりWt=∥(xt)u×(xt)v∥2W_t=\lVert(\boldsymbol{x}_t)_u\times(\boldsymbol{x}_t)_v\rVert^2であるから、Wt>0W_t>0は(xt)u(\boldsymbol{x}_t)_uと(xt)v(\boldsymbol{x}_t)_vが一次独立であること、すなわちxt\boldsymbol{x}_tがはめ込みであることと同値である(§E19.3 補題 1.4)。WWは多項式係数の滑らかな関数であり正であるから、Wt\sqrt{W_t}は滑らかである。▨

2 面積の第一変分

定理 2.1 (面積の第一変分).定義 1.1の記号のもとで、ε>0\varepsilon>0を補題 1.2 (3)のように取る。D⊆UD\subseteq Uをコンパクトな Jordan 可測集合であってK\mathcal{K}を内部に含むものとし、

A(t)=∬DWt(u,v) du dv(∣t∣<ε)A(t)=\iint_D\sqrt{W_t(u,v)}\,du\,dv\qquad\bigl(\lvert t\rvert<\varepsilon\bigr)

と置く。被積分関数は連続でありDDはコンパクトかつ Jordan 可測であるから、「実解析 II」の§E4.11 系 3.5によりこの積分は定まる。このときAAは(−ε,ε)(-\varepsilon,\varepsilon)の上でC1C^1級であり

dAdt∣t=0=−∬U2HφEG−F2 du dv\left.\frac{dA}{dt}\right|_{t=0}=-\iint_U2H\varphi\sqrt{EG-F^2}\,du\,dv

が成り立つ。右辺の被積分関数の台はK\mathcal{K}に含まれるので、この積分は定まり、DDの取り方に依らない。§E19.4 定義 5.1の記法では

dAdt∣t=0=−∫2Hφ dA\left.\frac{dA}{dt}\right|_{t=0}=-\int2H\varphi\,dA

と書かれる。

証明の方針を述べる。出発点は補題 1.2であり、面積要素のttについての一階の変化率が−2φHEG−F2-2\varphi H\sqrt{EG-F^2}になることは、そこで計算した∂tWt\partial_tW_tを2W02\sqrt{W_0}で割れば得られる。残る仕事は、この微分を積分記号の下で行ってよいことを正当化することである。「測地線・測地曲率・エネルギーの第一変分」の§E19.8 補題 2.1は一つの変数についての積分に対する主張であるから、二重積分にそのままは適用することができない。そこで中間目標を二つ置く。第一に、被積分関数の差を、径数領域の外側で零になるようにR2\mathbb{R}^2全体へ延ばすことである。この延長によって、積分領域をK\mathcal{K}を含む一つの閉長方形に取り替えることができる。第二に、閉長方形の上の重積分を§E4.12 定理 1によって累次積分へ直し、内側の積分と外側の積分のそれぞれに§E19.8 補題 2.1を適用することである。外側へ適用するためには、内側の積分とそのttによる偏導関数が二変数の関数として連続であることを確かめる必要があり、それは被積分関数の一様連続性から従う。

証明. 被積分関数の差を延長する。∣t∣<ε\lvert t\rvert<\varepsilonに対して

ψ(u,v,t)=Wt(u,v)−W0(u,v)((u,v)∈U)\psi(u,v,t)=\sqrt{W_t(u,v)}-\sqrt{W_0(u,v)}\qquad\bigl((u,v)\in U\bigr)

と置く。補題 1.2 (3)によりψ\psiはU×(−ε,ε)U\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上で滑らかである。U∖KU\setminus\mathcal{K}の上ではWt=W0W_t=W_0であるからψ=0\psi=0である。そこでψ\psiを(R2∖K)×(−ε,ε)\bigl(\mathbb{R}^2\setminus\mathcal{K}\bigr)\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上では00と定めてR2×(−ε,ε)\mathbb{R}^2\times(-\varepsilon,\varepsilon)へ延ばす。K⊆U\mathcal{K}\subseteq UであるからUUとR2∖K\mathbb{R}^2\setminus\mathcal{K}はR2\mathbb{R}^2を覆う開集合であり、共通部分U∖KU\setminus\mathcal{K}の上で二つの定め方は一致するから、延長はR2×(−ε,ε)\mathbb{R}^2\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上で滑らかである。各ttについてψ(⋅,⋅,t)\psi(\cdot,\cdot,t)の台はK\mathcal{K}に含まれる。

積分領域を長方形へ取り替える。K\mathcal{K}は有界であるから、閉長方形R=[a,b]×[c,d]R=[a,b]\times[c,d]でK⊆R\mathcal{K}\subseteq Rとなるものが存在する。ψ(⋅,⋅,t)\psi(\cdot,\cdot,t)は連続で台がK\mathcal{K}に含まれるから、K\mathcal{K}を含むコンパクトな Jordan 可測集合の上の積分の値は、どれを取っても等しい。K⊆D\mathcal{K}\subseteq DかつK⊆R\mathcal{K}\subseteq Rであるから

A(t)−A(0)=∬Dψ(u,v,t) du dv=∬Rψ(u,v,t) du dv=:Φ(t)A(t)-A(0)=\iint_D\psi(u,v,t)\,du\,dv=\iint_R\psi(u,v,t)\,du\,dv=:\Phi(t)

である。AAの微分可能性と導関数を調べるにはΦ\Phiを調べれば足りる。

累次積分へ直す。各ttについてψ(⋅,⋅,t)\psi(\cdot,\cdot,t)はRRの上で連続であるから、「実解析 II」の§E4.12 定理 1により

Φ(t)=∫ab(∫cdψ(u,v,t) dv)du\Phi(t)=\int_a^b\left(\int_c^d\psi(u,v,t)\,dv\right)du

である。内側の積分を

η(u,t)=∫cdψ(u,v,t) dv\eta(u,t)=\int_c^d\psi(u,v,t)\,dv

と書く。

内側の積分へ補題を適用する。u∈[a,b]u\in[a,b]を固定する。ψ\psiと∂tψ\partial_t\psiは[c,d]×(−ε,ε)[c,d]\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上で連続であるから、§E19.8 補題 2.1によりt↦η(u,t)t\mapsto\eta(u,t)はC1C^1級であり

∂η∂t(u,t)=∫cd∂ψ∂t(u,v,t) dv\frac{\partial\eta}{\partial t}(u,t)=\int_c^d\frac{\partial\psi}{\partial t}(u,v,t)\,dv

である。

η\etaと∂tη\partial_t\etaが二変数の関数として連続であることを示す。0<ε′<ε0<\varepsilon'<\varepsilonを取ると、R×[−ε′,ε′]R\times[-\varepsilon',\varepsilon']はコンパクトであるから、ψ\psiと∂tψ\partial_t\psiはその上で一様連続である。(u,t)(u,t)と(u′,t′)(u',t')を[a,b]×[−ε′,ε′][a,b]\times[-\varepsilon',\varepsilon']の点とすると

∣η(u,t)−η(u′,t′)∣≤∫cd∣ψ(u,v,t)−ψ(u′,v,t′)∣ dv≤(d−c)sup⁡v∈[c,d]∣ψ(u,v,t)−ψ(u′,v,t′)∣\lvert\eta(u,t)-\eta(u',t')\rvert\le\int_c^d\bigl\lvert\psi(u,v,t)-\psi(u',v,t')\bigr\rvert\,dv \le(d-c)\sup_{v\in[c,d]}\bigl\lvert\psi(u,v,t)-\psi(u',v,t')\bigr\rvert

であり、右辺は一様連続性により(u′,t′)→(u,t)(u',t')\to(u,t)のとき00へ収束する。∂tη\partial_t\etaについても∂tψ\partial_t\psiに同じ評価を行えばよい。よってη\etaと∂tη\partial_t\etaは[a,b]×(−ε,ε)[a,b]\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上で連続である。

外側の積分へ補題を適用する。η\etaと∂tη\partial_t\etaが[a,b]×(−ε,ε)[a,b]\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上で連続であるから、再び§E19.8 補題 2.1によりΦ\Phiは(−ε,ε)(-\varepsilon,\varepsilon)の上でC1C^1級であり

Φ′(t)=∫ab∂η∂t(u,t) du=∫ab(∫cd∂ψ∂t(u,v,t) dv)du=∬R∂ψ∂t(u,v,t) du dv\Phi'(t)=\int_a^b\frac{\partial\eta}{\partial t}(u,t)\,du =\int_a^b\left(\int_c^d\frac{\partial\psi}{\partial t}(u,v,t)\,dv\right)du =\iint_R\frac{\partial\psi}{\partial t}(u,v,t)\,du\,dv

である。最後の等号は、∂tψ(⋅,⋅,t)\partial_t\psi(\cdot,\cdot,t)がRRの上で連続であることから§E4.12 定理 1による。

t=0t=0での値を計算する。W0>0W_0>0であるから

∂ψ∂t(u,v,0)=12W0∂Wt∂t∣t=0=−4φH(EG−F2)2EG−F2=−2HφEG−F2\frac{\partial\psi}{\partial t}(u,v,0)=\frac{1}{2\sqrt{W_0}}\left.\frac{\partial W_t}{\partial t}\right|_{t=0} =\frac{-4\varphi H(EG-F^2)}{2\sqrt{EG-F^2}} =-2H\varphi\sqrt{EG-F^2}

である。ここで補題 1.2 (2)を用いた。A′(0)=Φ′(0)A'(0)=\Phi'(0)であるから

dAdt∣t=0=∬R(−2HφEG−F2) du dv=−∬U2HφEG−F2 du dv\left.\frac{dA}{dt}\right|_{t=0}=\iint_R\bigl(-2H\varphi\sqrt{EG-F^2}\bigr)\,du\,dv =-\iint_U2H\varphi\sqrt{EG-F^2}\,du\,dv

である。最後の等号は、被積分関数の台がK⊆R∩U\mathcal{K}\subseteq R\cap Uに含まれることによる。▨

注意 2.2 (面積要素の一次近似).補題 1.2 (2)から

Wt=EG−F2 (1−2tφH)+O(t2)\sqrt{W_t}=\sqrt{EG-F^2}\,\bigl(1-2t\varphi H\bigr)+O(t^2)

が従う。実際、Wt=(EG−F2)(1−4tφH)+O(t2)W_t=(EG-F^2)\bigl(1-4t\varphi H\bigr)+O(t^2)であり、1−4tφH+O(t2)=1−2tφH+O(t2)\sqrt{1-4t\varphi H+O(t^2)}=1-2t\varphi H+O(t^2)である。係数22は、平均曲率が二つの主曲率の相加平均であること(§E19.6 定義 2.1)に由来する。tr⁡S=κ1+κ2=2H\operatorname{tr}S=\kappa_1+\kappa_2=2Hが現れる場所で、HHの定義に含まれる1/21/2が打ち消されずに残るためである。この係数を落とすと、次の例 2.3の検算が合わなくなる。

例 2.3 (球面による係数と符号の検算). 半径r>0r>0の球面M={p∈R3:∥p∥=r}M=\{p\in\mathbb{R}^3:\lVert p\rVert=r\}を取り、単位法線を外向きN(p)=p/rN(p)=p/rに取る。§E19.6 命題 4.3により、この向きに関してH≡−1/rH\equiv-1/rである。変分関数としてφ≡1\varphi\equiv1を取る。MMはコンパクトであるから、この関数の台はMM自身であり、コンパクトである。

左辺を計算する。法方向の変分は

xt(p)=p+t⋅1⋅pr=(1+tr)p\boldsymbol{x}_t(p)=p+t\cdot1\cdot\frac{p}{r}=\Bigl(1+\frac tr\Bigr)p

であり、∣t∣<r\lvert t\rvert<rのとき像は半径r+tr+tの球面である。§E19.15 例 5.2により半径ρ\rhoの球面の面積は4πρ24\pi\rho^2であるから

A(t)=4π(r+t)2,dAdt∣t=0=8πrA(t)=4\pi(r+t)^2,\qquad \left.\frac{dA}{dt}\right|_{t=0}=8\pi r

である。

右辺を計算する。§E19.15 定義 2.1により、球面全体にわたる積分は三角形分割による和として定まる。2Hφ2H\varphiは定数−2/r-2/rであるから

−∫M2Hφ dA=−(−2r)⋅4πr2=8πr-\int_M2H\varphi\,dA=-\Bigl(-\frac2r\Bigr)\cdot4\pi r^2=8\pi r

である。

二つは一致する。この検算は係数22と符号の両方を確かめている。仮に第一変分を−∫Hφ dA-\int H\varphi\,dAと書いていれば右辺は4πr4\pi rとなり、+∫2Hφ dA+\int2H\varphi\,dAと書いていれば右辺は−8πr-8\pi rとなり、いずれも左辺の8πr8\pi rと一致しない。単位法線を内向きN(p)=−p/rN(p)=-p/rに取ると、§E19.6 命題 4.3によりH≡1/rH\equiv1/rとなり、同時にxt\boldsymbol{x}_tが半径r−tr-tの球面を与えるので、両辺がともに符号を変えて等式は保たれる。

定理 2.1は一つのパラメータ表示の中で台がコンパクトな変分関数について証明したものであり、球面全体を一つのパラメータ表示で覆うことはできない。したがって上の計算は定理 2.1の適用ではなく、公式の係数と符号を独立に確かめる検算である。

3 極小曲面

補題 3.1 (二変数の変分法の基本補題).U⊆R2U\subseteq\mathbb{R}^2を開集合、w ⁣:U→Rw\colon U\to\mathbb{R}を連続関数とする。台がコンパクトでUUに含まれるすべての滑らかな関数φ ⁣:U→R\varphi\colon U\to\mathbb{R}について

∬Uwφ du dv=0\iint_Uw\varphi\,du\,dv=0

が成り立つならば、UUの全体でw≡0w\equiv0である。

証明.w(q0)≠0w(q_0)\ne0となるq0∈Uq_0\in Uが存在すると仮定して矛盾を導く。必要ならwwを−w-wに取り替えてw(q0)>0w(q_0)>0としてよい。wwは連続であるから、q0q_0の開近傍V⊆UV\subseteq UでVVの上でw>w(q0)/2w>w(q_0)/2となるものが存在する。

二次元のC∞C^\infty多様体R2\mathbb{R}^2に対して「多様体入門」の§E17.2 命題 1.5を適用し、χ ⁣:R2→[0,1]\chi\colon\mathbb{R}^2\to[0,1]を、χ(q0)=1\chi(q_0)=1であり台がコンパクトでVVに含まれるように取る。φ=χ∣U\varphi=\chi|_Uと置くと、φ\varphiは仮定の条件を満たす。したがって

0=∬Uwφ du dv=∬Vwχ du dv0=\iint_Uw\varphi\,du\,dv=\iint_V w\chi\,du\,dv

である。しかし被積分関数はVVの上で非負であり、q0q_0の近傍で正の値を取る連続関数であるから、積分は正である。これは矛盾である。▨

「測地線・測地曲率・エネルギーの第一変分」の§E19.8 補題 3.5は、曲線に沿うベクトル場についての同じ形の主張である。上の補題は、その二変数かつ実数値の場合にあたる。二つは設定が異なるので、一方から他方が直ちに従うわけではない。

定義 3.2. 正則曲面MMが極小曲面 (minimal surface) であるとは、MMの各点の近傍で単位法線を一つ選んだとき、MMのすべての点で平均曲率が零であること、すなわちH≡0H\equiv0が成り立つことをいう。

平均曲率そのものは単位法線の選び方に依存するので、上の定義が単位法線の選び方に依らないことを確かめる必要がある。次の命題がこれを述べる。したがって極小曲面の定義は、曲面が向きづけ可能であることを要求しない。

命題 3.3.MMを正則曲面、U⊆MU\subseteq Mを、単位法線ベクトル場NNを取ることのできる開集合とする。NNに関する平均曲率をHH、−N-Nに関する平均曲率をH~\tilde Hと書くと、UUの上でH≡0H\equiv0であることとH~≡0\tilde H\equiv0であることは同値である。

証明.§E19.6 命題 2.4により、UUの各点でH~=−H\tilde H=-Hが成り立つ。実数について−H(p)=0-H(p)=0とH(p)=0H(p)=0は同値であるから、二つの条件は同値である。▨

定理 3.4.x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3を正則パラメータ表示とする。次の二つは同値である。

  1. 台がコンパクトでUUに含まれるすべての滑らかな関数φ\varphiについて、定理 2.1のAAがdAdt∣t=0=0\left.\dfrac{dA}{dt}\right|_{t=0}=0を満たす。
  2. UUの全体でH≡0H\equiv0である。すなわちx(U)\boldsymbol{x}(U)は極小曲面である。

証明.(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。H≡0H\equiv0ならば定理 2.1の右辺の被積分関数が恒等的に零であるから、値は00である。

(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。w=2HEG−F2w=2H\sqrt{EG-F^2}と置く。HHは滑らかであり(§E19.6 公式 2.3の右辺が滑らかな関数の商であることによる)、EG−F2\sqrt{EG-F^2}も滑らかであるから、wwはUUの上で連続である。台がコンパクトでUUに含まれる滑らかな関数φ\varphiを一つ取り、その台を定義 1.1のとおりK\mathcal{K}と書く。定理 2.1が要求するDDは、次のようにして得られる。K\mathcal{K}はコンパクトであって開集合UUに含まれるから、K\mathcal{K}とR2∖U\mathbb{R}^2\setminus Uとの距離ρ\rho(U=R2U=\mathbb{R}^2のときは任意の正の数)は正であり、辺の長さがρ/2\rho/2より小さい正方格子の閉正方形のうちK\mathcal{K}と交わるものは有限個であって、その合併はコンパクトかつ Jordan 可測であり、K\mathcal{K}を内部に含みUUに含まれる。この合併をDDと取る。仮定と定理 2.1により

∬Uwφ du dv=0\iint_Uw\varphi\,du\,dv=0

である。φ\varphiは台がコンパクトでUUに含まれる滑らかな関数として任意であったから、補題 3.1によりw≡0w\equiv0である。EG−F2>0\sqrt{EG-F^2}>0であるからH≡0H\equiv0である。▨

命題 3.5.W⊆R2W\subseteq\mathbb{R}^2を開集合、h ⁣:W→Rh\colon W\to\mathbb{R}を滑らかな関数とし、M={(u,v,h(u,v)):(u,v)∈W}M=\{(u,v,h(u,v)):(u,v)\in W\}と置く。§E19.3 命題 2.1によりMMは正則曲面である。MMが極小曲面であることと、WWの全体で

(1+hv2)huu−2huhvhuv+(1+hu2)hvv=0(1+h_v^{2})h_{uu}-2h_uh_vh_{uv}+(1+h_u^{2})h_{vv}=0

が成り立つこととは同値である。

証明.§E19.5 例 5.4により、x(u,v)=(u,v,h(u,v))\boldsymbol{x}(u,v)=(u,v,h(u,v))について

E=1+hu2,F=huhv,G=1+hv2,EG−F2=1+hu2+hv2E=1+h_u^2,\qquad F=h_uh_v,\qquad G=1+h_v^2,\qquad EG-F^2=1+h_u^2+h_v^2

であり、Ω=1+hu2+hv2\Omega=\sqrt{1+h_u^2+h_v^2}と置くと

e=huuΩ,f=huvΩ,g=hvvΩe=\frac{h_{uu}}{\Omega},\qquad f=\frac{h_{uv}}{\Omega},\qquad g=\frac{h_{vv}}{\Omega}

である。§E19.6 公式 2.3により

H=eG−2fF+gE2(EG−F2)=(1+hv2)huu−2huhvhuv+(1+hu2)hvv2Ω3H=\frac{eG-2fF+gE}{2(EG-F^2)} =\frac{(1+h_v^2)h_{uu}-2h_uh_vh_{uv}+(1+h_u^2)h_{vv}}{2\Omega^{3}}

である。Ω>0\Omega>0であるから、H=0H=0と分子が00であることは同値である。▨

4 極小曲面の例

例 4.1 (平面・懸垂面・常螺旋面). 平面。p0∈R3p_0\in\mathbb{R}^3と正規直交なw1,w2∈R3w_1,w_2\in\mathbb{R}^3を取り、x(u,v)=p0+uw1+vw2\boldsymbol{x}(u,v)=p_0+uw_1+vw_2と置くと、その像はp0p_0を通りw1,w2w_1,w_2が張る平面である。xu=w1\boldsymbol{x}_u=w_1、xv=w2\boldsymbol{x}_v=w_2は定ベクトルであるから、二階偏導関数はすべて零である。§E19.5 命題 3.2によりe=f=g=0e=f=g=0であり、§E19.6 公式 2.3によりH=0H=0かつK=0K=0である。したがってすべての平面は極小曲面である。関数のグラフとして表される場合には、hhが一次関数であることと二階偏導関数がすべて零であることが同値であり、命題 3.5の左辺も恒等的に零になる。

懸垂面。c>0c>0とし

x(u,v)=(ccosh⁡uccos⁡v, ccosh⁡ucsin⁡v, u)\boldsymbol{x}(u,v)=\Bigl(c\cosh\frac uc\cos v,\ c\cosh\frac uc\sin v,\ u\Bigr)

と置く。§E19.6 命題 4.3はH=0H=0を与えるが、ここでは独立に計算する。

xu=(sinh⁡uccos⁡v, sinh⁡ucsin⁡v, 1),xv=(−ccosh⁡ucsin⁡v, ccosh⁡uccos⁡v, 0)\boldsymbol{x}_u=\Bigl(\sinh\frac uc\cos v,\ \sinh\frac uc\sin v,\ 1\Bigr),\qquad \boldsymbol{x}_v=\Bigl(-c\cosh\frac uc\sin v,\ c\cosh\frac uc\cos v,\ 0\Bigr)

であるから

E=sinh⁡2uc+1=cosh⁡2uc,F=0,G=c2cosh⁡2ucE=\sinh^2\frac uc+1=\cosh^2\frac uc,\qquad F=0,\qquad G=c^2\cosh^2\frac uc

である。ベクトル積は

xu×xv=ccosh⁡uc(−cos⁡v, −sin⁡v, sinh⁡uc)\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v=c\cosh\frac uc\Bigl(-\cos v,\ -\sin v,\ \sinh\frac uc\Bigr)

であり、そのノルムはccosh⁡2(u/c)c\cosh^2(u/c)であるから、この表示が定める単位法線は

N=1cosh⁡(u/c)(−cos⁡v, −sin⁡v, sinh⁡uc)N=\frac{1}{\cosh(u/c)}\Bigl(-\cos v,\ -\sin v,\ \sinh\frac uc\Bigr)

であり、水平成分が回転軸へ向かうので、回転軸へ向かう向きである。二階偏導関数は

xuu=(1ccosh⁡uccos⁡v, 1ccosh⁡ucsin⁡v, 0),xuv=(−sinh⁡ucsin⁡v, sinh⁡uccos⁡v, 0),\boldsymbol{x}_{uu}=\Bigl(\tfrac1c\cosh\tfrac uc\cos v,\ \tfrac1c\cosh\tfrac uc\sin v,\ 0\Bigr),\quad \boldsymbol{x}_{uv}=\Bigl(-\sinh\tfrac uc\sin v,\ \sinh\tfrac uc\cos v,\ 0\Bigr),xvv=(−ccosh⁡uccos⁡v, −ccosh⁡ucsin⁡v, 0)\boldsymbol{x}_{vv}=\Bigl(-c\cosh\tfrac uc\cos v,\ -c\cosh\tfrac uc\sin v,\ 0\Bigr)

であるから、§E19.5 命題 3.2により

e=−1c,f=0,g=ce=-\frac1c,\qquad f=0,\qquad g=c

である。よって§E19.6 公式 2.3により

H=eG+gE2EG=−1c⋅c2cosh⁡2uc+ccosh⁡2uc2cosh⁡2uc⋅c2cosh⁡2uc=0,K=egEG=−1c2cosh⁡4ucH=\frac{eG+gE}{2EG}=\frac{-\frac1c\cdot c^2\cosh^2\frac uc+c\cosh^2\frac uc}{2\cosh^2\frac uc\cdot c^2\cosh^2\frac uc}=0, \qquad K=\frac{eg}{EG}=\frac{-1}{c^2\cosh^4\frac uc}

である。この結果は§E19.6 命題 4.3の表と一致する。

常螺旋面。c>0c>0としx(u,v)=(ucos⁡v, usin⁡v, cv)\boldsymbol{x}(u,v)=(u\cos v,\ u\sin v,\ cv)と置く。§E19.6 命題 4.3の証明が

E=1,F=0,G=u2+c2,e=0,f=−cu2+c2,g=0E=1,\quad F=0,\quad G=u^2+c^2,\quad e=0,\quad f=\frac{-c}{\sqrt{u^2+c^2}},\quad g=0

を計算しており、§E19.6 公式 2.3によりH=(0−0+0)/(2(u2+c2))=0H=(0-0+0)/(2(u^2+c^2))=0である。F=0F=0かつe=g=0e=g=0であることから平均曲率が零になる。F≠0F\ne0の座標では、第二基本形式の対角成分が消えてもH=−fF/(EG−F2)H=-fF/(EG-F^2)は一般に零でない。

5 臨界点であることは面積の最小性を意味しない

極小曲面は面積汎関数の臨界点である。臨界点が最小点であるとは限らないことは、一変数の微分積分で見慣れた事実であり、面積汎関数でも同じである。ここでは、同じ境界を持つ二つの極小曲面であって面積が異なるものを具体的に構成する。

命題 5.1.r>0r>0、h>0h>0とし、τ=h/r\tau=h/rと置く。a>0a>0に対して

Ca={(x,y,z)∈R3: x2+y2=acosh⁡za, ∣z∣≤h}C_a=\Bigl\{(x,y,z)\in\mathbb{R}^3:\ \sqrt{x^2+y^2}=a\cosh\frac za,\ \lvert z\rvert\le h\Bigr\}

と定める。CaC_aの境界は、平面z=±hz=\pm hに含まれる半径acosh⁡(h/a)a\cosh(h/a)の二つの円である。ここでzz軸を回転軸とし、z=0z=0について対称なものだけを考えた。この限定は結論を弱めない。実際、x2+y2=acosh⁡((z−z0)/a)\sqrt{x^2+y^2}=a\cosh\bigl((z-z_0)/a\bigr)の∣z∣≤h\lvert z\rvert\le hの部分について、z=hz=hとz=−hz=-hにおける半径が等しいことはcosh⁡((h−z0)/a)=cosh⁡((h+z0)/a)\cosh\bigl((h-z_0)/a\bigr)=\cosh\bigl((h+z_0)/a\bigr)、すなわち∣h−z0∣=∣h+z0∣\lvert h-z_0\rvert=\lvert h+z_0\rvertと同値であり、h>0h>0であるからこれはz0=0z_0=0と同値だからである。

ψ(t)=tcosh⁡t,ρ(t)=t+sinh⁡tcosh⁡tcosh⁡2t(t>0)\psi(t)=\frac{t}{\cosh t},\qquad \rho(t)=\frac{t+\sinh t\cosh t}{\cosh^2t}\qquad(t>0)

と置く。

  1. ttanh⁡t=1t\tanh t=1はただ一つの正の解t∗t^{*}を持つ。ψ\psiは(0,t∗](0,t^{*}]で狭義単調増加、[t∗,∞)[t^{*},\infty)で狭義単調減少であり、ψ(0+)=0\psi(0^{+})=0、ψ(∞)=0\psi(\infty)=0である。τ∗=ψ(t∗)\tau^{*}=\psi(t^{*})と置く。
  2. CaC_aの境界の二円の半径がrrであることとψ(h/a)=τ\psi(h/a)=\tauであることは同値である。したがって、そのようなa>0a>0は、τ>τ∗\tau>\tau^{*}のとき存在せず、τ=τ∗\tau=\tau^{*}のときちょうど一つ存在し、0<τ<τ∗0<\tau<\tau^{*}のときちょうど二つ存在する。
  3. t=h/at=h/aと置くとCaC_aの面積は2πa2(t+sinh⁡tcosh⁡t)2\pi a^{2}\bigl(t+\sinh t\cosh t\bigr)である。とくにCaC_aの境界の二円の半径がrrであるとき、面積は2πr2ρ(t)2\pi r^{2}\rho(t)に等しい。
  4. 0<τ<τ∗0<\tau<\tau^{*}のとき、2 の二つの解をt1<t∗<t2t_1<t^{*}<t_2とするとρ(t2)>ρ(t1)\rho(t_2)>\rho(t_1)である。ai=h/tia_i=h/t_iと置くとa2<a1a_2<a_1であり、aaはCaC_aの最も細い部分(z=0z=0における半径)に等しい。すなわち首の細いほうが面積が大きい。

証明. まずCaC_aが正則曲面の一部であることと、その面積の表示を確かめる。φ(u)=acosh⁡(u/a)\varphi(u)=a\cosh(u/a)、Ψ(u)=u\Psi(u)=uと置くとφ>0\varphi>0、φ′2+Ψ′2=sinh⁡2(u/a)+1>0\varphi'^2+\Psi'^2=\sinh^2(u/a)+1>0である。母線u↦(acosh⁡(u/a), u)u\mapsto\bigl(a\cosh(u/a),\ u\bigr)は第二成分によってuuが定まるので像への同相写像である。したがって§E19.4 命題 6.1により

x(u,v)=(acosh⁡uacos⁡v, acosh⁡uasin⁡v, u)\boldsymbol{x}(u,v)=\Bigl(a\cosh\tfrac ua\cos v,\ a\cosh\tfrac ua\sin v,\ u\Bigr)

は正則パラメータ表示を与え、

E=cosh⁡2ua,F=0,G=a2cosh⁡2ua,EG−F2=acosh⁡2uaE=\cosh^2\frac ua,\qquad F=0,\qquad G=a^2\cosh^2\frac ua,\qquad \sqrt{EG-F^2}=a\cosh^2\frac ua

である。CaC_aの面積を、§E19.4 定義 5.1の値のvvについての極限として

A(Ca)=∫02π ⁣ ⁣∫−hhacosh⁡2ua du dvA(C_a)=\int_0^{2\pi}\!\!\int_{-h}^{h}a\cosh^2\frac ua\,du\,dv

で定める。境界の二円の半径がφ(±h)=acosh⁡(h/a)\varphi(\pm h)=a\cosh(h/a)であることは定義から直ちに従う。

(1)を示す。g(t)=cosh⁡t−tsinh⁡tg(t)=\cosh t-t\sinh tと置く。g(0)=1>0g(0)=1>0でありg′(t)=−tcosh⁡t<0g'(t)=-t\cosh t<0(t>0t>0)であるから、ggは(0,∞)(0,\infty)で狭義単調減少である。t→∞t\to\inftyのときg(t)→−∞g(t)\to-\inftyであるから、ggはただ一つの正の零点t∗t^{*}を持つ。g(t)=0g(t)=0はcosh⁡t=tsinh⁡t\cosh t=t\sinh t、すなわちttanh⁡t=1t\tanh t=1と同値である。

ψ′(t)=cosh⁡t−tsinh⁡tcosh⁡2t=g(t)cosh⁡2t\psi'(t)=\frac{\cosh t-t\sinh t}{\cosh^2t}=\frac{g(t)}{\cosh^2t}

であるから、ψ′\psi'の符号はggの符号に一致し、ψ\psiは(0,t∗](0,t^{*}]で狭義単調増加、[t∗,∞)[t^{*},\infty)で狭義単調減少である。ψ(t)→0\psi(t)\to0(t→0+t\to0^{+}およびt→∞t\to\infty)は明らかである。

(2)を示す。境界の半径がrrであることはacosh⁡(h/a)=ra\cosh(h/a)=rと同値である。t=h/at=h/aと置くとa=h/ta=h/tであり、この条件は

htcosh⁡t=r,すなわちtcosh⁡t=hr=τ\frac ht\cosh t=r,\qquad\text{すなわち}\qquad \frac{t}{\cosh t}=\frac hr=\tau

と同値である。a>0a>0とt>0t>0は一対一に対応するから、解の個数はψ(t)=τ\psi(t)=\tauの正の解の個数に等しい。(1)により、ψ\psiは(0,t∗](0,t^{*}]で00からτ∗\tau^{*}へ狭義単調増加し、[t∗,∞)[t^{*},\infty)でτ∗\tau^{*}から00へ狭義単調減少するから、τ>τ∗\tau>\tau^{*}のとき解は無く、τ=τ∗\tau=\tau^{*}のとき解はt∗t^{*}の一つ、0<τ<τ∗0<\tau<\tau^{*}のとき解はちょうど二つである。

(3)を示す。∫cosh⁡2ua du=a2(ua+sinh⁡uacosh⁡ua)\displaystyle\int\cosh^2\frac ua\,du=\frac a2\Bigl(\frac ua+\sinh\frac ua\cosh\frac ua\Bigr)であり、被積分関数は偶関数であるから

∫−hhacosh⁡2ua du=a⋅a(t+sinh⁡tcosh⁡t)=a2(t+sinh⁡tcosh⁡t)\int_{-h}^{h}a\cosh^2\frac ua\,du=a\cdot a\bigl(t+\sinh t\cosh t\bigr)=a^2\bigl(t+\sinh t\cosh t\bigr)

である。ここでt=h/at=h/aである。よってA(Ca)=2πa2(t+sinh⁡tcosh⁡t)A(C_a)=2\pi a^2(t+\sinh t\cosh t)である。境界の半径がrrであるときr=acosh⁡tr=a\cosh t、すなわちa=r/cosh⁡ta=r/\cosh tであるから

A(Ca)=2πr2⋅t+sinh⁡tcosh⁡tcosh⁡2t=2πr2ρ(t)A(C_a)=2\pi r^2\cdot\frac{t+\sinh t\cosh t}{\cosh^2t}=2\pi r^2\rho(t)

である。

(4)を示す。N(t)=t+sinh⁡tcosh⁡tN(t)=t+\sinh t\cosh t、D(t)=cosh⁡2tD(t)=\cosh^2tと置くとN′(t)=1+cosh⁡2t=2cosh⁡2tN'(t)=1+\cosh2t=2\cosh^2t、D′(t)=2cosh⁡tsinh⁡tD'(t)=2\cosh t\sinh tであるから

ρ′(t)=2cosh⁡4t−2cosh⁡tsinh⁡t (t+sinh⁡tcosh⁡t)cosh⁡4t=2(cosh⁡t(cosh⁡2t−sinh⁡2t)−tsinh⁡t)cosh⁡3t=2g(t)cosh⁡3t\rho'(t)=\frac{2\cosh^4t-2\cosh t\sinh t\,(t+\sinh t\cosh t)}{\cosh^4t} =\frac{2\bigl(\cosh t(\cosh^2t-\sinh^2t)-t\sinh t\bigr)}{\cosh^3t} =\frac{2g(t)}{\cosh^3t}

である。したがって

ρ′(t)=2cosh⁡t ψ′(t)\rho'(t)=\frac{2}{\cosh t}\,\psi'(t)

が(0,∞)(0,\infty)の全体で成り立つ。

ψ\psiの[t∗,∞)[t^{*},\infty)への制限は(0,τ∗](0,\tau^{*}]の上への狭義単調減少な全単射であり、(t∗,∞)(t^{*},\infty)ではψ′<0\psi'<0であるから、その逆写像μ ⁣:(0,τ∗)→(t∗,∞)\mu\colon(0,\tau^{*})\to(t^{*},\infty)はC∞C^{\infty}級であり、v→τ∗−v\to\tau^{*-}のときμ(v)→t∗\mu(v)\to t^{*}である。σ=μ∘ψ∣(0,t∗)\sigma=\mu\circ\psi|_{(0,t^{*})}と置くと、σ ⁣:(0,t∗)→(t∗,∞)\sigma\colon(0,t^{*})\to(t^{*},\infty)はC∞C^{\infty}級であり、ψ(σ(t))=ψ(t)\psi(\sigma(t))=\psi(t)を満たす。すなわちσ(t)\sigma(t)はttと同じτ\tauに対応するもう一つの解である。

Δ(t)=ρ(σ(t))−ρ(t)\Delta(t)=\rho(\sigma(t))-\rho(t)と置く。ψ(σ(t))=ψ(t)\psi(\sigma(t))=\psi(t)を微分するとψ′(σ(t))σ′(t)=ψ′(t)\psi'(\sigma(t))\sigma'(t)=\psi'(t)であるから

Δ′(t)=ρ′(σ(t))σ′(t)−ρ′(t)=2cosh⁡σ(t)ψ′(σ(t))σ′(t)−2cosh⁡tψ′(t)=ψ′(t)(2cosh⁡σ(t)−2cosh⁡t)\Delta'(t)=\rho'(\sigma(t))\sigma'(t)-\rho'(t) =\frac{2}{\cosh\sigma(t)}\psi'(\sigma(t))\sigma'(t)-\frac{2}{\cosh t}\psi'(t) =\psi'(t)\left(\frac{2}{\cosh\sigma(t)}-\frac{2}{\cosh t}\right)

である。t∈(0,t∗)t\in(0,t^{*})ではψ′(t)>0\psi'(t)>0であり、σ(t)>t∗>t\sigma(t)>t^{*}>tからcosh⁡σ(t)>cosh⁡t\cosh\sigma(t)>\cosh t、すなわち括弧の中は負である。よってΔ′<0\Delta'<0が(0,t∗)(0,t^{*})の全体で成り立つ。

t→t∗−t\to t^{*-}のときψ(t)→τ∗−\psi(t)\to\tau^{*-}であるからσ(t)→t∗\sigma(t)\to t^{*}であり、ρ\rhoの連続性によりΔ(t)→ρ(t∗)−ρ(t∗)=0\Delta(t)\to\rho(t^{*})-\rho(t^{*})=0である。Δ\Deltaは(0,t∗)(0,t^{*})で狭義単調減少であり、右端で00へ収束するから、(0,t∗)(0,t^{*})の全体でΔ>0\Delta>0である。t2=σ(t1)t_2=\sigma(t_1)であるからρ(t2)>ρ(t1)\rho(t_2)>\rho(t_1)である。

t1<t2t_1<t_2よりa1=h/t1>h/t2=a2a_1=h/t_1>h/t_2=a_2である。CaC_aのz=0z=0における半径はacosh⁡0=aa\cosh0=aであり、これは∣z∣≤h\lvert z\rvert\le hの範囲でacosh⁡(z/a)a\cosh(z/a)が取る最小値であるから、aaは最も細い部分の半径である。▨

定理 5.2.r>0r>0、h>0h>0とし0<h/r<τ∗0<h/r<\tau^{*}とする。平面z=±hz=\pm hに含まれる半径rrの二つの円を境界とし、zz軸を回転軸とする懸垂面CaC_a(命題 5.1)はちょうど二つ存在し、それらをCa1C_{a_1}(a1a_1が大きいほう、首が太い)とCa2C_{a_2}(a2a_2が小さいほう、首が細い)とする。このとき次が成り立つ。

  1. Ca1C_{a_1}とCa2C_{a_2}はともに滑らかな極小曲面である。すなわち定義 3.2の意味でH≡0H\equiv0を満たす。
  2. A(Ca2)>A(Ca1)A(C_{a_2})>A(C_{a_1})である。
  3. したがってCa2C_{a_2}は、与えた二つの円を境界とする曲面のうちで面積が最小であるものではない。Ca1C_{a_1}が、同じ境界を持ち面積が真に小さい曲面として実在するからである。

極小曲面であることから面積の最小性は従わない。

証明.(1)を示す。CaC_aは例 4.1の懸垂面の∣z∣≤h\lvert z\rvert\le hの部分であり、そこでH≡0H\equiv0が示されている。母数の対応は、例 4.1のccをaaと読み替えたものである。

(2)を示す。命題 5.1 (3)によりA(Cai)=2πr2ρ(ti)A(C_{a_i})=2\pi r^2\rho(t_i)であり、命題 5.1 (4)によりρ(t2)>ρ(t1)\rho(t_2)>\rho(t_1)である。

(3)を示す。Ca1C_{a_1}はCa2C_{a_2}と同じ二つの円を境界に持ち(命題 5.1 (2))、面積は真に小さい。したがってCa2C_{a_2}の面積は、この境界を持つ曲面の面積の下限ではない。▨

注意 5.3 (反例の取り方を誤らないこと). 「境界の二円が十分に離れた懸垂面」を反例に用いることはできない。命題 5.1 (2)のとおり、h/r>τ∗h/r>\tau^{*}のときは、その二つの円を境界とする懸垂面がそもそも存在しない。存在しない曲面について面積の最小性を論じることはできない。正しい反例は、懸垂面が二つ存在する範囲、すなわち0<h/r<τ∗0<h/r<\tau^{*}において、首の細いほうを取ることである。要点は、二つの懸垂面が同じ境界を持ち、どちらも滑らかな極小曲面でありながら、面積が異なることである。

数値を示す。ttanh⁡t=1t\tanh t=1を Newton 法で解くとt∗=1.19967864…t^{*}=1.19967864\ldotsであり、τ∗=t∗/cosh⁡t∗=0.66274341…\tau^{*}=t^{*}/\cosh t^{*}=0.66274341\ldotsである。いずれも小数第8位まで示した。さらに、ρ(t)=1\rho(t)=1すなわちt+sinh⁡tcosh⁡t=cosh⁡2tt+\sinh t\cosh t=\cosh^2tの(0,t∗)(0,t^{*})における唯一の解はt0=0.63923227…t_0=0.63923227\ldotsであり、τ0=ψ(t0)=0.52769739…\tau_0=\psi(t_0)=0.52769739\ldotsである。命題 5.1 (4)の証明で示したρ′=(2/cosh⁡t)ψ′\rho'=(2/\cosh t)\psi'により、ψ\psiとρ\rhoはともに(0,t∗)(0,t^{*})で狭義単調増加である。したがってτ0<h/r<τ∗\tau_0<h/r<\tau^{*}のときはt1>t0t_1>t_0であり、ρ(t1)>ρ(t0)=1\rho(t_1)>\rho(t_0)=1、すなわち

A(Ca1)>2πr2A(C_{a_1})>2\pi r^2

である。右辺は半径rrの円板二枚の面積である。したがってこの範囲では、首の太いほうの懸垂面でさえ、二枚の円板より面積が大きい。ただし二枚の円板を貼り合わせた対象は滑らかな曲面ではないので、それ自体は定義 3.2の意味の極小曲面の反例にならない。定理 5.2が反例として用いるのは、あくまで二つの懸垂面の比較である。

与えた境界に対して面積を最小にする曲面が存在するかどうか、および存在するときにそれが滑らかであるかどうかは、本記事の範囲外である。これらは「Riemann 幾何 II」が扱う Plateau 問題に属する。

6 演習

問題 6.1.

  1. 補題 1.2 (1)の計算を再現する。(xt)u(\boldsymbol{x}_t)_uの三つの項のうち、EtE_tの一次の項に寄与するのがどれかを特定し、tφuNt\varphi_uNが一次の項に寄与しない理由を述べる。
  2. 補題 1.2 (2)で§E19.5 定理 2.1を用いた箇所を特定する。自己共役性が成り立たない場合にFtF_tの一次の項がどのような式になるかを書き下し、そこから∂tWt∣t=0\partial_tW_t|_{t=0}を平均曲率で書き表すことができなくなる理由を述べる。
  3. 定理 2.1の証明のうち、被積分関数の差ψ\psiをR2\mathbb{R}^2全体へ延ばした部分を再現する。この延長を行わずに、UUに含まれる閉長方形の上で議論しようとすると何が失敗するかを、UUが円環である場合を例に述べる。
  4. 定理 2.1の証明で§E19.8 補題 2.1を二度適用した。二度目の適用のためにη\etaと∂tη\partial_t\etaの連続性を確かめる段を省くと、どの仮定が満たされないかを述べる。
  5. 例 2.3の検算を、単位法線を内向きに取った場合について書き直す。HH、xt\boldsymbol{x}_tの像の半径、および両辺の符号がどのように変わるかを追い、等式が保たれることを確かめる。
  6. 定理 3.4 (1)⇒\Rightarrow(2)を導く部分を再現する。補題 3.1を適用するために確かめたwwの連続性が、どの主張から得られたかを述べる。
  7. 命題 3.5を用いて、h(u,v)=log⁡(cos⁡v/cos⁡u)h(u,v)=\log\bigl(\cos v/\cos u\bigr)が定義される領域で極小曲面方程式を満たすことを確かめる。次に、この関数のグラフが例 4.1の三つの例のいずれとも一致しないことを述べる。
  8. 命題 5.1 (4)の証明を再現する。Δ\Deltaが(0,t∗)(0,t^{*})で狭義単調減少であることと、右端での極限が00であることの二つから結論を出す手順を、どちらか一方だけでは足りないことに注意して説明する。
  9. 定理 5.2の主張を、「極小曲面は面積を最小にする」という誤った命題の反例として述べ直す。反例としてh/r>τ∗h/r>\tau^{*}の場合を持ち出すことができない理由を、注意 5.3に即して述べる。

7 境界と次

法方向の変分だけを扱ったこと。定義 1.1は変分をx+tφN\boldsymbol{x}+t\varphi Nの形に限った。一般の変分は接方向の成分を含むが、接方向の変分は像を変えずに径数だけを動かす部分を含むので、面積の一階の変化には寄与しない項を持つ。本記事はその分解を扱わない。

面積の最小性を主張しないこと。定理 3.4が示したのは、極小曲面が面積汎関数の臨界点であることだけである。定理 5.2は、臨界点が最小点でない具体例を与えている。臨界点が極小であるかどうかは第二変分によって判定され、安定性の概念がそこから定まる。第二変分、安定性、極小曲面の存在、正則性、Weierstrass 表現および Plateau 問題は「Riemann 幾何 II」が扱う。汎関数の下限が達成されることを示す直接法、下半連続性および弱コンパクト性は「変分法」が扱う。

存在を扱わないこと。本記事は、与えられた曲面が極小であるかどうかを判定する道具と、極小曲面の具体例を与えた。与えた境界に対して極小曲面が存在するかどうかは別の問題であり、命題 5.1 (2)は、回転面という限られた族の中でさえ存在が条件つきであることを示している。

次の記事へ渡すもの。定理 2.1と定義 3.2は、「Dirichlet エネルギーと調和写像」が用いる。そこでは、等温座標が与えられているという仮定のもとで、共形なはめ込みが調和であることと平均曲率が零であることが同値であることが示される。命題 3.5は「極小曲面と調和性の計算実験」が数値的に残差を評価する対象である。§E19.6 定義 3.3の漸近方向を用いた別の話題、すなわち Gauss 曲率が負の定数である曲面は「負曲率曲面と sine–Gordon 方程式」が扱う。

参考文献

  1. Manfredo P. do Carmo, Differential Geometry of Curves and Surfaces, revised and updated second ed., Dover Publications, Mineola, N.Y., 2016.面積の第一変分による極小曲面の特徴づけ、極小曲面方程式、および懸垂面と常螺旋面の扱いを参考にした。
  2. Tobias H. Colding and William P., II Minicozzi, A Course in Minimal Surfaces, Graduate Studies in Mathematics 121, American Mathematical Society, Providence, 2011.法方向の変分に対する面積の第一変分の係数と符号の規約を参考にした。
  3. I. M. Gelfand and S. V. Fomin, Calculus of Variations, translated by Richard A. Silverman, Dover Publications, 2000, originally published 1963.回転面の中で面積を最小にする問題と、境界の二円が離れているときに滑らかな解が存在しなくなる現象を参考にした。

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