§E19.1正則曲線と弧長

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曲線を微分幾何の対象として扱うには、まず「曲線」という語が何を指すのかを決めなければならない。図形としての像を対象にすると、像だけからは微分することができない。写像そのものを対象にすると、同じ図形を描く写像が無数にあり、どの量が図形の性質でどの量が写像の選び方の性質なのかが分からなくなる。本記事は、写像を対象に取り、そのうえでパラメータの取り替えに対して変わらない量を分離する。

本記事で実際に示すのは次の四つである。第一に、正則なパラメータ変換に対して長さが変わらないことを示す。第二に、速さの積分として定めた弧長関数がC∞C^\infty微分同相であり、それによる再パラメータ化が単位速度になることを示す。第三に、単位速度の表示がパラメータの平行移動と向きの反転を除いて一意であることを示す。第四に、内接する折れ線の長さの上限として定めた長さが、速さの積分に一致することを示す。最後に円と常螺旋の弧長を計算する。

曲率と捩率、および Frenet 標構は本記事では定義しない。次の記事「Frenet–Serret の公式と曲線論の基本定理」が、本記事の単位速度の表示を出発点として構成する。

R3\mathbb{R}^3の標準内積を⟨ , ⟩\langle\ ,\ \rangleと書き、それが定めるノルムを∥v∥=⟨v,v⟩\lVert v\rVert=\sqrt{\langle v,v\rangle}と書く。断りのない「滑らか」はC∞C^\inftyを指す。

1 正則曲線とパラメータの取り替え

定義 1.1.I⊆RI\subseteq\mathbb{R}を開区間とする。C∞C^\infty写像γ ⁣:I→R3\gamma\colon I\to\mathbb{R}^3をパラメータ曲線 (parametrized curve) という。γ′(t)\gamma'(t)を速度ベクトル (velocity vector)、∥γ′(t)∥\lVert\gamma'(t)\rVertを速さ (speed) という。

すべてのt∈It\in Iに対してγ′(t)≠0\gamma'(t)\ne\boldsymbol{0}が成り立つとき、γ\gammaを正則曲線 (regular curve) という。

正則曲線は写像であって、像γ(I)⊆R3\gamma(I)\subseteq\mathbb{R}^3ではない。単射性は仮定しないので、像が自分自身と交わることも、同じ点を何度も通ることも許す。本記事の主張はすべて写像についての主張である。

定義 1.2.IIとJJを開区間とする。全単射h ⁣:J→Ih\colon J\to IがC∞C^\inftyであり、すべてのu∈Ju\in Jに対してh′(u)≠0h'(u)\ne0が成り立つとき、hhを正則なパラメータ変換 (regular change of parameter) という。γ ⁣:I→R3\gamma\colon I\to\mathbb{R}^3をパラメータ曲線とするとき、γ∘h ⁣:J→R3\gamma\circ h\colon J\to\mathbb{R}^3をγ\gammaの再パラメータ化 (reparametrization) という。

命題 1.3.h ⁣:J→Ih\colon J\to Iを正則なパラメータ変換とする。このときh′h'はJJの上で符号が一定であり、逆写像h−1 ⁣:I→Jh^{-1}\colon I\to JはC∞C^\inftyである。さらにγ\gammaが正則曲線ならばγ∘h\gamma\circ hも正則曲線である。

証明.h′h'は連続でありJJの上で零にならない。JJは区間であるから、h′h'が正の値と負の値の両方を取ると中間値の定理により零になる点が存在して矛盾する。よってh′>0h'>0がJJ全体で成り立つか、h′<0h'<0がJJ全体で成り立つかのいずれかである。

u∈Ju\in Jを取るとh′(u)≠0h'(u)\ne0であるから、§E4.7 定理 2.1と、それをC∞C^\inftyへ持ち上げた「多様体入門」の§E17.5 補題 1.1により、hhはuuのある開近傍からh(u)h(u)の開近傍へのC∞C^\infty微分同相を与える。hhは全単射であるから、この局所的な逆写像はh−1h^{-1}のh(u)h(u)の近傍への制限に一致する。uuは任意であったからh−1h^{-1}はIIの各点の近傍でC∞C^\inftyであり、したがってC∞C^\inftyである。

最後に(γ∘h)′(u)=h′(u) γ′(h(u))(\gamma\circ h)'(u)=h'(u)\,\gamma'(h(u))である。h′(u)≠0h'(u)\ne0かつγ′(h(u))≠0\gamma'(h(u))\ne\boldsymbol{0}であるから(γ∘h)′(u)≠0(\gamma\circ h)'(u)\ne\boldsymbol{0}である。▨

h′>0h'>0のときhhは向きを保つといい、h′<0h'<0のとき向きを反転するという。

定義 1.4.γ ⁣:I→R3\gamma\colon I\to\mathbb{R}^3をパラメータ曲線とし、[a,b]⊆I[a,b]\subseteq Iを有界閉区間とする。

L(γ;[a,b])=∫ab∥γ′(t)∥ dtL(\gamma;[a,b])=\int_a^b\lVert\gamma'(t)\rVert\,dt

を、区間[a,b][a,b]に対応するγ\gammaの長さ (length) という。∥γ′∥\lVert\gamma'\rVertは連続であるから、この積分は Riemann 積分として定まる。

命題 1.5.γ ⁣:I→R3\gamma\colon I\to\mathbb{R}^3をパラメータ曲線、h ⁣:J→Ih\colon J\to Iを正則なパラメータ変換とし、[c,d]⊆J[c,d]\subseteq Jを有界閉区間とする。h([c,d])=[a,b]h([c,d])=[a,b]と置くと

L(γ∘h;[c,d])=L(γ;[a,b])L(\gamma\circ h;[c,d])=L(\gamma;[a,b])

が成り立つ。ここでhhが向きを保つならばa=h(c)a=h(c)、b=h(d)b=h(d)であり、hhが向きを反転するならばa=h(d)a=h(d)、b=h(c)b=h(c)である。

証明.f=∥γ′∥f=\lVert\gamma'\rVertと置く。ffはIIの上で連続である。F(x)=∫axf(τ) dτF(x)=\int_a^xf(\tau)\,d\tauと置くと、「ε-論法と基礎解析」の§D1.19 定理 1.1によりFFは微分可能でF′=fF'=fである。連鎖律により(F∘h)′(u)=f(h(u)) h′(u)(F\circ h)'(u)=f(h(u))\,h'(u)であり、右辺は連続である。よって§D1.19 定理 2.1をF∘hF\circ hに適用して

∫cdf(h(u)) h′(u) du=F(h(d))−F(h(c))\int_c^d f\bigl(h(u)\bigr)\,h'(u)\,du=F\bigl(h(d)\bigr)-F\bigl(h(c)\bigr)

が成り立つ。

一方(γ∘h)′(u)=h′(u) γ′(h(u))(\gamma\circ h)'(u)=h'(u)\,\gamma'(h(u))であるから

∥(γ∘h)′(u)∥=∣h′(u)∣ f(h(u))\bigl\lVert(\gamma\circ h)'(u)\bigr\rVert=\lvert h'(u)\rvert\,f\bigl(h(u)\bigr)

である。

hhが向きを保つ場合、∣h′∣=h′\lvert h'\rvert=h'、h(c)=ah(c)=a、h(d)=bh(d)=bであるから

L(γ∘h;[c,d])=∫cdf(h(u))h′(u) du=F(b)−F(a)=∫abf(t) dtL(\gamma\circ h;[c,d])=\int_c^d f\bigl(h(u)\bigr)h'(u)\,du=F(b)-F(a)=\int_a^b f(t)\,dt

となる。hhが向きを反転する場合、∣h′∣=−h′\lvert h'\rvert=-h'、h(c)=bh(c)=b、h(d)=ah(d)=aであるから

L(γ∘h;[c,d])=−∫cdf(h(u))h′(u) du=−(F(a)−F(b))=∫abf(t) dtL(\gamma\circ h;[c,d])=-\int_c^d f\bigl(h(u)\bigr)h'(u)\,du=-\bigl(F(a)-F(b)\bigr)=\int_a^b f(t)\,dt

となる。いずれの場合もL(γ∘h;[c,d])=L(γ;[a,b])L(\gamma\circ h;[c,d])=L(\gamma;[a,b])である。▨

2 弧長と単位速度の表示

長さがパラメータの取り替えで変わらないのであれば、長さそのものをパラメータに採ることができる。これが弧長である。

定義 2.1.γ ⁣:I→R3\gamma\colon I\to\mathbb{R}^3を正則曲線とし、t0∈It_0\in Iを固定する。

s(t)=∫t0t∥γ′(τ)∥ dτ(t∈I)s(t)=\int_{t_0}^{t}\lVert\gamma'(\tau)\rVert\,d\tau\qquad(t\in I)

で定まる関数s ⁣:I→Rs\colon I\to\mathbb{R}を、t0t_0を基点とするγ\gammaの弧長関数 (arc-length function) という。

正則曲線β ⁣:J→R3\beta\colon J\to\mathbb{R}^3がすべてのu∈Ju\in Jで∥β′(u)∥=1\lVert\beta'(u)\rVert=1を満たすとき、β\betaを単位速度曲線 (unit-speed curve) という。単位速度曲線を与える再パラメータ化を、γ\gammaの単位速度の表示 (unit-speed parametrization) という。

定理 2.2.γ ⁣:I→R3\gamma\colon I\to\mathbb{R}^3を正則曲線、ssをt0∈It_0\in Iを基点とする弧長関数とする。このとき次が成り立つ。

  1. ssはC∞C^\inftyであり、s′(t)=∥γ′(t)∥>0s'(t)=\lVert\gamma'(t)\rVert>0である。とくにssは狭義単調増加である。
  2. J=s(I)J=s(I)は開区間であり、s ⁣:I→Js\colon I\to JはC∞C^\infty微分同相である。
  3. β=γ∘s−1 ⁣:J→R3\beta=\gamma\circ s^{-1}\colon J\to\mathbb{R}^3は単位速度曲線であり、γ=β∘s\gamma=\beta\circ sが成り立つ。

証明.(1)を示す。g(t)=⟨γ′(t),γ′(t)⟩g(t)=\langle\gamma'(t),\gamma'(t)\rangleと置く。γ′\gamma'の各成分はC∞C^\inftyであり、ggはその成分の多項式であるからC∞C^\inftyである。γ\gammaは正則であるからg(t)>0g(t)>0がすべてのt∈It\in Iで成り立つ。平方根は(0,∞)(0,\infty)の上でC∞C^\inftyであるから、∥γ′∥=g\lVert\gamma'\rVert=\sqrt{g}はIIの上でC∞C^\inftyである。とくに∥γ′∥\lVert\gamma'\rVertは連続であるから、§D1.19 定理 1.1によりssは微分可能でs′=∥γ′∥s'=\lVert\gamma'\rVertである。s′s'がC∞C^\inftyであることからssはC∞C^\inftyである。s′>0s'>0であるからssは狭義単調増加である。

(2)を示す。ssは連続かつ狭義単調増加であるから単射であり、中間値の定理により像J=s(I)J=s(I)は区間である。s′(t)≠0s'(t)\ne0であるから、命題 1.3の証明と同じく§E4.7 定理 2.1と§E17.5 補題 1.1により、ssは各点の近傍から像の開近傍へのC∞C^\infty微分同相を与える。したがってJJは開集合であり、JJは開区間である。s ⁣:I→Js\colon I\to Jは全単射であり、局所的な逆写像はs−1s^{-1}の制限に一致するから、s−1s^{-1}はC∞C^\inftyである。

(3)を示す。s−1 ⁣:J→Is^{-1}\colon J\to IはC∞C^\inftyの全単射であり、(s−1)′(w)=1/s′(s−1(w))≠0(s^{-1})'(w)=1/s'(s^{-1}(w))\ne0であるから、s−1s^{-1}は正則なパラメータ変換である。β=γ∘s−1\beta=\gamma\circ s^{-1}に対して連鎖律を用いると

β′(w)=(s−1)′(w) γ′(s−1(w))=γ′(s−1(w))∥γ′(s−1(w))∥\beta'(w)=(s^{-1})'(w)\,\gamma'\bigl(s^{-1}(w)\bigr) =\frac{\gamma'\bigl(s^{-1}(w)\bigr)}{\bigl\lVert\gamma'\bigl(s^{-1}(w)\bigr)\bigr\rVert}

であり、∥β′(w)∥=1\lVert\beta'(w)\rVert=1である。γ=β∘s\gamma=\beta\circ sはβ\betaの定義から従う。▨

定理 2.3.J1J_1とJ2J_2を開区間、β1 ⁣:J1→R3\beta_1\colon J_1\to\mathbb{R}^3とβ2 ⁣:J2→R3\beta_2\colon J_2\to\mathbb{R}^3を単位速度曲線とし、正則なパラメータ変換h ⁣:J2→J1h\colon J_2\to J_1によってβ2=β1∘h\beta_2=\beta_1\circ hが成り立つとする。このとき定数c∈Rc\in\mathbb{R}が存在して、すべてのu∈J2u\in J_2に対して

h(u)=u+cまたはh(u)=−u+ch(u)=u+c\qquad\text{または}\qquad h(u)=-u+c

が成り立つ。すなわち、二つの単位速度の表示はパラメータの平行移動と向きの反転を除いて一致する。

証明. 連鎖律によりβ2′(u)=h′(u) β1′(h(u))\beta_2'(u)=h'(u)\,\beta_1'(h(u))である。両辺のノルムを取ると、∥β2′(u)∥=1\lVert\beta_2'(u)\rVert=1と∥β1′(h(u))∥=1\lVert\beta_1'(h(u))\rVert=1から∣h′(u)∣=1\lvert h'(u)\rvert=1がすべてのu∈J2u\in J_2で成り立つ。

命題 1.3によりh′h'の符号はJ2J_2の上で一定である。よってh′≡1h'\equiv1であるかh′≡−1h'\equiv-1であるかのいずれかである。その値をε∈{1,−1}\varepsilon\in\{1,-1\}と書き、k(u)=h(u)−εuk(u)=h(u)-\varepsilon uと置く。k′≡0k'\equiv0であり、開区間J2J_2は凸な開集合であるから、「実解析 II」の§E4.3 系 2.3によりkkは定数である。その値をccと書けばh(u)=εu+ch(u)=\varepsilon u+cである。▨

注意 2.4 (「向きを保つ取り替えを除いて」と書かない).定理 2.3の結論を「向きを保つパラメータの取り替えを除いて一意である」と述べてはならない。二つの表示が正則なパラメータ変換で移り合うことは、それらが同じ曲線の表示であるという仮定そのものであり、向きを保つものに限っても新しい情報を運ばない。この定理の内容は、その取り替えが一次関数u↦±u+cu\mapsto\pm u+cに限られるという点にある。取り替えの自由度は、実数一つ分の平行移動と、向きの反転という二値の選択だけである。

3 内接する折れ線による長さ

長さを速さの積分で定めたことには、選択の余地がある。長さは、曲線に内接する折れ線の長さの上限としても定めることができ、こちらは微分可能性を仮定せずに意味を持つ。二つの定め方が一致することを示す。

本節では、有界閉区間[a,b][a,b]の上の連続写像γ ⁣:[a,b]→R3\gamma\colon[a,b]\to\mathbb{R}^3であって、§E4.18 定義 1.1の意味で区分的にC1C^1であるものを扱う。すなわち、分割a=c0<c1<⋯<cm=ba=c_0<c_1<\cdots<c_m=bが存在して、各制限γ∣[cj−1,cj]\gamma|_{[c_{j-1},c_j]}が端点で片側微分を持つC1C^1級写像であるとする。c1,…,cm−1c_1,\dots,c_{m-1}を区分点と呼ぶ。区分点は有限個であるから、積分∫ab∥γ′∥ dt\int_a^b\lVert\gamma'\rVert\,dtを各小区間の上の積分の和として定めることができる。

補題 3.1.f ⁣:[a,b]→R3f\colon[a,b]\to\mathbb{R}^3を連続写像とする。積分を成分ごとに定めるとき

∥∫abf(t) dt∥≤∫ab∥f(t)∥ dt\left\lVert\int_a^bf(t)\,dt\right\rVert\le\int_a^b\lVert f(t)\rVert\,dt

が成り立つ。

証明.v=∫abf(t) dt∈R3v=\int_a^bf(t)\,dt\in\mathbb{R}^3と置く。v=0v=\boldsymbol{0}ならば左辺は00であり、右辺は非負であるから不等式は成り立つ。以下v≠0v\ne\boldsymbol{0}とする。

内積は各成分についての線形結合であるから、積分の線形性により

∥v∥2=⟨v,v⟩=⟨v,∫abf(t) dt⟩=∫ab⟨v,f(t)⟩ dt\lVert v\rVert^2=\langle v,v\rangle=\left\langle v,\int_a^bf(t)\,dt\right\rangle=\int_a^b\langle v,f(t)\rangle\,dt

が成り立つ。§E3.32 定理 1.3により、各ttで⟨v,f(t)⟩≤∥v∥ ∥f(t)∥\langle v,f(t)\rangle\le\lVert v\rVert\,\lVert f(t)\rVertである。積分の単調性により

∥v∥2≤∫ab∥v∥ ∥f(t)∥ dt=∥v∥∫ab∥f(t)∥ dt\lVert v\rVert^2\le\int_a^b\lVert v\rVert\,\lVert f(t)\rVert\,dt=\lVert v\rVert\int_a^b\lVert f(t)\rVert\,dt

となる。∥v∥>0\lVert v\rVert>0で両辺を割ると主張を得る。▨

定義 3.2.γ ⁣:[a,b]→R3\gamma\colon[a,b]\to\mathbb{R}^3を連続写像とする。[a,b][a,b]の分割P ⁣:a=t0<t1<⋯<tn=bP\colon a=t_0<t_1<\cdots<t_n=bに対して

ℓ(γ,P)=∑i=1n∥γ(ti)−γ(ti−1)∥\ell(\gamma,P)=\sum_{i=1}^{n}\bigl\lVert\gamma(t_i)-\gamma(t_{i-1})\bigr\rVert

を、PPが定める内接する折れ線の長さ (inscribed polygonal length) という。[a,b][a,b]のすべての分割にわたる上限

Λ(γ)=sup⁡P ℓ(γ,P)∈[0,∞]\Lambda(\gamma)=\sup_{P}\ \ell(\gamma,P)\in[0,\infty]

をγ\gammaの折れ線による長さ (polygonal length) という。

補題 3.3.γ ⁣:[a,b]→R3\gamma\colon[a,b]\to\mathbb{R}^3を連続写像とし、PPとP′P'を[a,b][a,b]の分割であってP⊆P′P\subseteq P'(P′P'がPPの細分)であるものとする。このときℓ(γ,P)≤ℓ(γ,P′)\ell(\gamma,P)\le\ell(\gamma,P')が成り立つ。

証明.P′P'がPPに一点σ\sigmaを加えたものである場合を示せば、点の個数についての繰り返しによって一般の場合が従う。σ∈(ti−1,ti)\sigma\in(t_{i-1},t_i)とすると、ノルムの三角不等式により

∥γ(ti)−γ(ti−1)∥≤∥γ(ti)−γ(σ)∥+∥γ(σ)−γ(ti−1)∥\bigl\lVert\gamma(t_i)-\gamma(t_{i-1})\bigr\rVert \le\bigl\lVert\gamma(t_i)-\gamma(\sigma)\bigr\rVert+\bigl\lVert\gamma(\sigma)-\gamma(t_{i-1})\bigr\rVert

が成り立つ。他の項はPPとP′P'で共通であるからℓ(γ,P)≤ℓ(γ,P′)\ell(\gamma,P)\le\ell(\gamma,P')である。▨

証明の方針は次のとおりである。上からの評価は、各小区間でγ(ti)−γ(ti−1)\gamma(t_i)-\gamma(t_{i-1})をγ′\gamma'の積分に書き直し、補題 3.1を適用して得る。下からの評価では、小区間の上でγ′\gamma'をその右端の値γ′(ti)\gamma'(t_i)で置き換える。置き換えの誤差はγ′\gamma'の一様連続性で押さえる。同じ置き換えを積分∫∥γ′∥\int\lVert\gamma'\rVertの側にも施すと、二つの量の差が分割の幅に比例する量で押さえられる。区分点をまたぐ小区間があるとγ′\gamma'が定義されないので、分割はつねに区分点を含むものへ細分してから評価する。

定理 3.4.γ ⁣:[a,b]→R3\gamma\colon[a,b]\to\mathbb{R}^3を連続かつ区分的にC1C^1な写像とする。このときΛ(γ)\Lambda(\gamma)は有限であり

Λ(γ)=∫ab∥γ′(t)∥ dt\Lambda(\gamma)=\int_a^b\lVert\gamma'(t)\rVert\,dt

が成り立つ。とくにγ\gammaが有界閉区間[a,b][a,b]の上のC1C^1級写像であれば、折れ線による長さは定義 1.4の長さに一致する。

証明. 区分点の全体をC={c0,c1,…,cm}C=\{c_0,c_1,\dots,c_m\}と書き、I=∫ab∥γ′(t)∥ dt\mathcal{I}=\int_a^b\lVert\gamma'(t)\rVert\,dtと置く。

Λ(γ)≤I\Lambda(\gamma)\le\mathcal{I}を示す。まずPPがCCを含む分割である場合を扱う。このとき各小区間[ti−1,ti][t_{i-1},t_i]はある[cj−1,cj][c_{j-1},c_j]に含まれ、その上でγ\gammaはC1C^1である。成分ごとに§D1.19 定理 2.1を適用すると

γ(ti)−γ(ti−1)=∫ti−1tiγ′(τ) dτ\gamma(t_i)-\gamma(t_{i-1})=\int_{t_{i-1}}^{t_i}\gamma'(\tau)\,d\tau

が成り立つ。補題 3.1により

∥γ(ti)−γ(ti−1)∥≤∫ti−1ti∥γ′(τ)∥ dτ\bigl\lVert\gamma(t_i)-\gamma(t_{i-1})\bigr\rVert\le\int_{t_{i-1}}^{t_i}\lVert\gamma'(\tau)\rVert\,d\tau

であり、iiについて加えるとℓ(γ,P)≤I\ell(\gamma,P)\le\mathcal{I}を得る。一般の分割PPに対してはP∪CP\cup CがPPの細分であるから、補題 3.3によりℓ(γ,P)≤ℓ(γ,P∪C)≤I\ell(\gamma,P)\le\ell(\gamma,P\cup C)\le\mathcal{I}である。したがってΛ(γ)≤I<∞\Lambda(\gamma)\le\mathcal{I}<\inftyである。

Λ(γ)≥I\Lambda(\gamma)\ge\mathcal{I}を示す。ε>0\varepsilon>0を任意に取る。各jjについてγ′\gamma'は有界閉区間[cj−1,cj][c_{j-1},c_j]の上で連続であるから、成分ごとに§D1.15 定理 3.1を適用して一様連続である。三つの成分に対するδ\deltaの最小値を取り、さらにjjについて最小値を取ると、次を満たすδ>0\delta>0が存在する。同じjjに対してs,t∈[cj−1,cj]s,t\in[c_{j-1},c_j]かつ∣s−t∣<δ\lvert s-t\rvert<\deltaならば∥γ′(s)−γ′(t)∥<ε\lVert\gamma'(s)-\gamma'(t)\rVert<\varepsilonである。

CCを含み、幅がδ\deltaより小さい分割P ⁣:a=t0<⋯<tn=bP\colon a=t_0<\cdots<t_n=bを取る。各小区間[ti−1,ti][t_{i-1},t_i]は一つの[cj−1,cj][c_{j-1},c_j]に含まれる。Δi=ti−ti−1\Delta_i=t_i-t_{i-1}と書く。

γ(ti)−γ(ti−1)=Δi γ′(ti)+∫ti−1ti(γ′(τ)−γ′(ti)) dτ\gamma(t_i)-\gamma(t_{i-1})=\Delta_i\,\gamma'(t_i)+\int_{t_{i-1}}^{t_i}\bigl(\gamma'(\tau)-\gamma'(t_i)\bigr)\,d\tau

であり、右辺の第二項は補題 3.1によりノルムがεΔi\varepsilon\Delta_i以下である。三角不等式により

∥γ(ti)−γ(ti−1)∥≥Δi∥γ′(ti)∥−εΔi\bigl\lVert\gamma(t_i)-\gamma(t_{i-1})\bigr\rVert\ge\Delta_i\lVert\gamma'(t_i)\rVert-\varepsilon\Delta_i

が成り立つ。

一方、ノルムの三角不等式から∣∥γ′(τ)∥−∥γ′(ti)∥∣≤∥γ′(τ)−γ′(ti)∥<ε\bigl\lvert\lVert\gamma'(\tau)\rVert-\lVert\gamma'(t_i)\rVert\bigr\rvert\le\lVert\gamma'(\tau)-\gamma'(t_i)\rVert<\varepsilonであるから

∫ti−1ti∥γ′(τ)∥ dτ≤Δi∥γ′(ti)∥+εΔi\int_{t_{i-1}}^{t_i}\lVert\gamma'(\tau)\rVert\,d\tau\le\Delta_i\lVert\gamma'(t_i)\rVert+\varepsilon\Delta_i

が成り立つ。二つを合わせると

∥γ(ti)−γ(ti−1)∥≥∫ti−1ti∥γ′(τ)∥ dτ−2εΔi\bigl\lVert\gamma(t_i)-\gamma(t_{i-1})\bigr\rVert\ge\int_{t_{i-1}}^{t_i}\lVert\gamma'(\tau)\rVert\,d\tau-2\varepsilon\Delta_i

となる。i=1,…,ni=1,\dots,nについて加えると

ℓ(γ,P)≥I−2ε(b−a)\ell(\gamma,P)\ge\mathcal{I}-2\varepsilon(b-a)

を得る。よってΛ(γ)≥I−2ε(b−a)\Lambda(\gamma)\ge\mathcal{I}-2\varepsilon(b-a)である。ε>0\varepsilon>0は任意であったからΛ(γ)≥I\Lambda(\gamma)\ge\mathcal{I}である。

二つの不等式からΛ(γ)=I\Lambda(\gamma)=\mathcal{I}である。▨

注意 3.5 (この定理が仮定していないもの).定理 3.4はγ′(t)≠0\gamma'(t)\ne\boldsymbol{0}を仮定していない。速度ベクトルが零になる点があっても、折れ線による長さと速さの積分は一致する。正則性が効くのは弧長による再パラメータ化のほうであり、定理 2.2と定理 2.3はいずれも正則性を落とすと成り立たない(例 4.3)。

またΛ(γ)\Lambda(\gamma)はγ\gammaの像ではなく写像γ\gammaに対して定まる量である。同じ像を二度なぞる写像のΛ\Lambdaは、一度なぞる写像のΛ\Lambdaの二倍になる。

4 例

例 4.1 (円の弧長).r>0r>0とし、γ ⁣:R→R3\gamma\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}^3を

γ(t)=(rcos⁡t, rsin⁡t, 0)\gamma(t)=(r\cos t,\ r\sin t,\ 0)

で定める。γ′(t)=(−rsin⁡t, rcos⁡t, 0)\gamma'(t)=(-r\sin t,\ r\cos t,\ 0)であるから

∥γ′(t)∥2=r2sin⁡2t+r2cos⁡2t=r2\lVert\gamma'(t)\rVert^2=r^2\sin^2t+r^2\cos^2t=r^2

であり、∥γ′(t)∥=r>0\lVert\gamma'(t)\rVert=r>0である。よってγ\gammaは正則曲線である。

t0=0t_0=0を基点とする弧長関数はs(t)=∫0tr dτ=rts(t)=\int_0^tr\,d\tau=rtであり、s−1(w)=w/rs^{-1}(w)=w/rである。単位速度の表示は

β(w)=γ(s−1(w))=(rcos⁡wr, rsin⁡wr, 0)\beta(w)=\gamma\bigl(s^{-1}(w)\bigr)=\Bigl(r\cos\frac{w}{r},\ r\sin\frac{w}{r},\ 0\Bigr)

であり、実際にβ′(w)=(−sin⁡(w/r), cos⁡(w/r), 0)\beta'(w)=\bigl(-\sin(w/r),\ \cos(w/r),\ 0\bigr)のノルムは11である。[0,2π][0,2\pi]に対応する長さはL(γ;[0,2π])=∫02πr dt=2πrL(\gamma;[0,2\pi])=\int_0^{2\pi}r\,dt=2\pi rである。

定理 2.3のとおり、単位速度の表示は他にもある。たとえばβ~(w)=β(−w+w0)\tilde\beta(w)=\beta(-w+w_0)はどのw0w_0についても単位速度であり、β\betaとβ~\tilde\betaはw↦−w+w0w\mapsto-w+w_0で移り合う。これ以外の取り替えは存在しない。

例 4.2 (常螺旋の弧長).a>0a>0、b∈Rb\in\mathbb{R}とし、γ ⁣:R→R3\gamma\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}^3を

γ(t)=(acos⁡t, asin⁡t, bt)\gamma(t)=(a\cos t,\ a\sin t,\ bt)

で定める。これを常螺旋という。γ′(t)=(−asin⁡t, acos⁡t, b)\gamma'(t)=(-a\sin t,\ a\cos t,\ b)であるから

∥γ′(t)∥2=a2sin⁡2t+a2cos⁡2t+b2=a2+b2\lVert\gamma'(t)\rVert^2=a^2\sin^2t+a^2\cos^2t+b^2=a^2+b^2

であり、c=a2+b2>0c=\sqrt{a^2+b^2}>0と置くと∥γ′(t)∥=c\lVert\gamma'(t)\rVert=cである。よってγ\gammaは正則曲線であり、速さは一定である。

t0=0t_0=0を基点とする弧長関数はs(t)=cts(t)=ctであり、s−1(w)=w/cs^{-1}(w)=w/cである。単位速度の表示は

β(w)=(acos⁡wc, asin⁡wc, bwc)\beta(w)=\Bigl(a\cos\frac{w}{c},\ a\sin\frac{w}{c},\ \frac{bw}{c}\Bigr)

である。検算すると

β′(w)=(−acsin⁡wc, accos⁡wc, bc),∥β′(w)∥2=a2c2+b2c2=1\beta'(w)=\Bigl(-\frac{a}{c}\sin\frac{w}{c},\ \frac{a}{c}\cos\frac{w}{c},\ \frac{b}{c}\Bigr), \qquad \lVert\beta'(w)\rVert^2=\frac{a^2}{c^2}+\frac{b^2}{c^2}=1

である。一巻き分、すなわちttが00から2π2\piまで動く部分の長さは2πa2+b22\pi\sqrt{a^2+b^2}である。b=0b=0とすると半径aaの円の一周の長さ2πa2\pi aに一致する。

例 4.3 (速度ベクトルが零になる点があると単位速度の表示を取ることができない).γ ⁣:R→R3\gamma\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}^3をγ(t)=(t3, t2, 0)\gamma(t)=(t^3,\ t^2,\ 0)で定める。γ\gammaはC∞C^\inftyであるがγ′(t)=(3t2, 2t, 0)\gamma'(t)=(3t^2,\ 2t,\ 0)でありγ′(0)=0\gamma'(0)=\boldsymbol{0}である。よってγ\gammaは正則曲線ではない。

t≠0t\ne0に対して∥γ′(t)∥=∣t∣9t2+4\lVert\gamma'(t)\rVert=\lvert t\rvert\sqrt{9t^2+4}である。基点をt0=0t_0=0とする弧長関数ssは、s′(t)=∣t∣9t2+4s'(t)=\lvert t\rvert\sqrt{9t^2+4}がt≠0t\ne0で正であることから狭義単調増加であり、単射である。しかしs′(0)=0s'(0)=0であるから、ssはt=0t=0の近傍でC∞C^\infty微分同相にならない。実際、t≠0t\ne0に対して

γ′(t)∥γ′(t)∥=(3t2, 2t, 0)∣t∣9t2+4=(3t2/∣t∣, 2t/∣t∣, 0)9t2+4\frac{\gamma'(t)}{\lVert\gamma'(t)\rVert}=\frac{(3t^2,\ 2t,\ 0)}{\lvert t\rvert\sqrt{9t^2+4}} =\frac{\bigl(3t^2/\lvert t\rvert,\ 2t/\lvert t\rvert,\ 0\bigr)}{\sqrt{9t^2+4}}

であり、t→0+t\to0^{+}のとき(0, 1, 0)(0,\ 1,\ 0)へ、t→0−t\to0^{-}のとき(0, −1, 0)(0,\ -1,\ 0)へ収束する。w≠0w\ne0に対してβ=γ∘s−1\beta=\gamma\circ s^{-1}の導関数はこの単位ベクトルに等しいから、β′\beta'はw=0w=0で連続な延長を持たない。したがってγ\gammaはt=0t=0を含むどの開区間の上でも単位速度のC1C^1表示を持たない。

これは、定理 2.2の仮定である正則性が結論を変える条件であることを示している。一方で定理 3.4はこのγ\gammaに対しても成り立ち、[−1,1][-1,1]に対応する折れ線による長さは∫−11∣t∣9t2+4 dt\int_{-1}^{1}\lvert t\rvert\sqrt{9t^2+4}\,dtに等しい。この積分はu=9t2+4u=9t^2+4と置いて

2∫01t9t2+4 dt=19∫413u du=227(133/2−8)2\int_0^1t\sqrt{9t^2+4}\,dt=\frac{1}{9}\int_4^{13}\sqrt{u}\,du=\frac{2}{27}\bigl(13^{3/2}-8\bigr)

と計算することができる。

5 演習

問題 5.1 (正則曲線と弧長の確認). 次の各問に答えよ。

  1. 命題 1.3の証明で、h′h'の符号が一定であることを導いた論法を再現せよ。JJが区間でなく、二つの互いに交わらない開区間の合併であるとすると、この論法のどこが成り立たなくなるかを述べよ。
  2. 命題 1.5の証明を、向きを反転する場合について再現せよ。積分の上端と下端が入れ替わる箇所と、∣h′∣=−h′\lvert h'\rvert=-h'を用いる箇所を明示せよ。
  3. 定理 2.2 (1)で、∥γ′∥\lVert\gamma'\rVertがC∞C^\inftyであることを示すために正則性をどこで用いたかを述べよ。正則性がないと平方根の合成についての議論のどこが壊れるかを説明せよ。
  4. 定理 2.3の証明を再現せよ。そのうえで、この定理の結論を「向きを保つパラメータの取り替えを除いて一意である」と述べたとすると、どの情報が失われるかを注意 2.4に即して説明せよ。
  5. 補題 3.1の証明でv=0v=\boldsymbol{0}の場合を分けた理由を述べよ。分けずに議論を進めるとどこで破綻するかを示せ。
  6. 定理 3.4の下からの評価において、分割を区分点を含むものへ細分する操作を省くと、どの等式を用いることができなくなるかを述べよ。
  7. γ(t)=(t, cosh⁡t, 0)\gamma(t)=(t,\ \cosh t,\ 0)(t∈Rt\in\mathbb{R})が正則曲線であることを確かめ、[0,1][0,1]に対応する長さを求めよ。
  8. 常螺旋例 4.2について、ttが00から2π2\piまで動く部分に内接する折れ線であって、頂点をt=2πk/nt=2\pi k/n(k=0,1,…,nk=0,1,\dots,n)に取ったものの長さをnnの式で書け。n→∞n\to\inftyの極限が2πa2+b22\pi\sqrt{a^2+b^2}になることを確かめよ。
解答 (演習の解答).

(1)h′h'は連続で零にならない。h′(u1)>0h'(u_1)>0かつh′(u2)<0h'(u_2)<0となるu1,u2∈Ju_1,u_2\in Jがあると、JJが区間であることからu1u_1とu2u_2を結ぶ閉区間がJJに含まれ、中間値の定理によりh′h'が零になる点が存在して矛盾する。JJが二つの互いに交わらない開区間の合併であれば、u1u_1とu2u_2を結ぶ閉区間がJJに含まれるとはかぎらず、中間値の定理を適用することができない。実際、二つの成分で符号の異なる導関数を持つ写像が存在する。(2)h′<0h'<0のときhhは狭義単調減少であるからh(c)=bh(c)=b、h(d)=ah(d)=aである。∥(γ∘h)′(u)∥=∣h′(u)∣f(h(u))=−h′(u)f(h(u))\lVert(\gamma\circ h)'(u)\rVert=\lvert h'(u)\rvert f(h(u))=-h'(u)f(h(u))であるから

L(γ∘h;[c,d])=−∫cdf(h(u))h′(u) du=−(F(h(d))−F(h(c)))=−(F(a)−F(b))L(\gamma\circ h;[c,d])=-\int_c^df\bigl(h(u)\bigr)h'(u)\,du=-\bigl(F(h(d))-F(h(c))\bigr)=-\bigl(F(a)-F(b)\bigr)

である。F(a)=0F(a)=0であるから、これはF(b)=∫abfF(b)=\int_a^bfに等しい。(3)正則性はg(t)=⟨γ′(t),γ′(t)⟩>0g(t)=\langle\gamma'(t),\gamma'(t)\rangle>0を保証するために用いた。平方根 \sqrt{\ }は00で微分可能でないので、ggが00を取るとg\sqrt{g}のC∞C^\infty性を合成によって結論することができない。実際例 4.3では∥γ′(t)∥=∣t∣9t2+4\lVert\gamma'(t)\rVert=\lvert t\rvert\sqrt{9t^2+4}がt=0t=0で微分可能でない。(4)証明は本文のとおりである。∣h′∣=1\lvert h'\rvert=1と符号の一定性からh′≡εh'\equiv\varepsilon(ε=±1\varepsilon=\pm1)が従い、k(u)=h(u)−εuk(u)=h(u)-\varepsilon uの導関数が恒等的に零であることから§E4.3 系 2.3によりkkが定数となり、h(u)=εu+ch(u)=\varepsilon u+cである。「向きを保つ取り替えを除いて」という述べ方は、hhがC∞C^\infty微分同相であること以上を主張しない。hhが一次関数に限られること、すなわち取り替えの自由度が平行移動の一次元と向きの反転の二値に尽きることが失われる。(5)証明の最後で∥v∥>0\lVert v\rVert>0によって両辺を割っている。v=0v=\boldsymbol{0}のときはこの除算ができない。もっとも、そのときは左辺が00であり右辺が非負であるから不等式は自明に成り立つ。(6)区分点をまたぐ小区間の上ではγ\gammaがC1C^1であるとはかぎらず、その小区間で

γ(ti)−γ(ti−1)=∫ti−1tiγ′(τ) dτ\gamma(t_i)-\gamma(t_{i-1})=\int_{t_{i-1}}^{t_i}\gamma'(\tau)\,d\tau

を主張することができない。§D1.19 定理 2.1は区間全体での微分可能性を仮定するからである。細分によって各小区間を一つのC1C^1の断片の中へ収めることで、この等式を用いることができる。(7)γ′(t)=(1, sinh⁡t, 0)\gamma'(t)=(1,\ \sinh t,\ 0)であるから∥γ′(t)∥=1+sinh⁡2t=cosh⁡t>0\lVert\gamma'(t)\rVert=\sqrt{1+\sinh^2t}=\cosh t>0である。よって正則曲線である。長さは

∫01cosh⁡t dt=sinh⁡1=e−e−12\int_0^1\cosh t\,dt=\sinh 1=\frac{e-e^{-1}}{2}

である。(8)tk=2πk/nt_k=2\pi k/nと置くと

γ(tk)−γ(tk−1)=(a(cos⁡tk−cos⁡tk−1), a(sin⁡tk−sin⁡tk−1), 2πbn)\gamma(t_k)-\gamma(t_{k-1})=\Bigl(a(\cos t_k-\cos t_{k-1}),\ a(\sin t_k-\sin t_{k-1}),\ \frac{2\pi b}{n}\Bigr)

である。(cos⁡α−cos⁡β)2+(sin⁡α−sin⁡β)2=2−2cos⁡(α−β)=4sin⁡2α−β2(\cos\alpha-\cos\beta)^2+(\sin\alpha-\sin\beta)^2=2-2\cos(\alpha-\beta)=4\sin^2\frac{\alpha-\beta}{2}であるから

∥γ(tk)−γ(tk−1)∥=4a2sin⁡2πn+4π2b2n2\bigl\lVert\gamma(t_k)-\gamma(t_{k-1})\bigr\rVert=\sqrt{4a^2\sin^2\frac{\pi}{n}+\frac{4\pi^2b^2}{n^2}}

であり、折れ線の長さは

ℓn=2na2sin⁡2πn+π2b2n2=2πa2(sin⁡(π/n)π/n)2+b2\ell_n=2n\sqrt{a^2\sin^2\frac{\pi}{n}+\frac{\pi^2b^2}{n^2}} =2\pi\sqrt{a^2\left(\frac{\sin(\pi/n)}{\pi/n}\right)^2+b^2}

である。n→∞n\to\inftyのときsin⁡(π/n)/(π/n)→1\sin(\pi/n)/(\pi/n)\to1であるからℓn→2πa2+b2\ell_n\to2\pi\sqrt{a^2+b^2}である。▨

6 仮定と後続記事の境界

正則性は結論を変える仮定である。定理 2.2、定理 2.3はいずれもγ′(t)≠0\gamma'(t)\ne\boldsymbol{0}を全点で仮定する。一点でもこれを外すと、例 4.3のとおり単位速度のC1C^1表示が存在しなくなる。一方定理 3.4は正則性を仮定せず、区分的にC1C^1であることだけを仮定する。

弧長関数の基点は結論を変えない。基点t0t_0を取り替えると弧長関数は定数だけずれる。したがって単位速度の表示も定数の平行移動だけずれ、定理 2.3の自由度の中に収まる。

曲線の大域的な性質は本単元では扱わない。全曲率に関する定理と四頂点定理は、本単元の守備範囲の外にある。本単元が曲線について扱うのは局所的な曲率と捩率、および曲線論の基本定理までである。

次の記事「Frenet–Serret の公式と曲線論の基本定理」は、本記事の定義 2.1と定理 2.2によって曲線を単位速度で表したうえで、γ′′\gamma''の大きさとして曲率を定義する。単位速度でない曲線に対して曲率を直接定義しないのは、γ′′\gamma''が速さの取り方に依存して変わるからである。定理 2.3は、そこで定義する曲率と捩率がパラメータの選び方に依らないこと、およびそれらが向きの反転に対してどう振る舞うかを保証する土台になる。

平面曲線の回転指数を扱う記事「平面曲線の回転指数と回転定理」も本記事を前提にする。そこでは区分的に滑らかな閉曲線を扱うので、定義 2.1の弧長は各滑らかな弧の上で用いる。

参考文献

  1. Manfredo P. do Carmo, Differential Geometry of Curves and Surfaces, revised and updated second ed., Dover Publications, Mineola, N.Y., 2016.正則なパラメータ曲線の定義、弧長による再パラメータ化、および内接する折れ線による長さの扱いを参考にした。
  2. Barrett O'Neill, Elementary Differential Geometry, 2 (revised) ed., Academic Press, 2006.速度ベクトル、速さ、および単位速度の再パラメータ化の組み立て方を参考にした。
  3. Sebastián Montiel and Antonio Ros, Curves and Surfaces, 2nd ed., Graduate Studies in Mathematics 69, American Mathematical Society, Providence, 2009.曲線の長さを内接する折れ線の長さの上限として定める流儀と、積分による長さとの一致を参考にした。

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