§E19.14局所 Gauss–Bonnet とホロノミー

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曲面の各点で定まる Gauss 曲率を領域の上で積分すると、領域の境界の形だけで決まる量が現れる。この現象を最も基本的な形で述べるのが局所 Gauss–Bonnet の定理である。定理は、Gauss 曲率の面積分と、境界に沿う測地曲率の線積分と、境界の角における外角の総和との和が、つねに一周分の角度2π2\piに等しいと述べる。右辺が領域にも曲面にも依存しないことが、この定理を大域的な結論へ運ぶ力の源である。

証明の骨格は二つの等式からなる。第一は、単位接ベクトルが標構となす角の微分と測地曲率を結ぶ等式κg=φ′+ω12(T)\kappa_g=\varphi'+\omega_{12}(T)である。第二は、接続形式の外微分が Gauss 曲率と面積要素で書けるという等式dω12=−K dAd\omega_{12}=-K\,dAである。前者を境界に沿って積分し、後者に平面の Green の定理を適用して、両者を突き合わせると定理が得られる。右辺の2π2\piは、前者の積分に現れる角の総増分であり、その値を与えるのが前の記事の回転定理である。

本記事が実際に示すのは次の五つである。第一に、一つのチャートに含まれる領域の上の積分の定義である。第二に、回転角と測地曲率を結ぶ等式である。第三に、接続形式の境界積分が Gauss 曲率の面積分の符号を変えたものに等しいことである。第四に、局所 Gauss–Bonnet の定理である。第五に、その系としての、閉曲線に沿う平行移動の回転角と、測地三角形の内角の和である。

以下、(M,I)(M,\mathrm{I})を抽象曲面(§E19.7 定義 5.1)とし、∇\nablaを§E19.7 定理 5.3の接続、D/dtD/dtを§E19.7 命題 6.2の曲線に沿う共変微分、KKを§E19.11 定理 2.1の Gauss 曲率とする。M⊆R3M\subseteq\mathbb{R}^3が向きづけられた正則曲面(§E19.3 定義 1.1、§E19.3 定義 4.2)である場合も含む。MMは向きづけられているとする。すなわち、各接空間TpMT_pMの基底のうち正であるものが指定され、その指定が§E19.8 定義 5.1の単位法ベクトルnnと測地曲率を定めているとする。M⊆R3M\subseteq\mathbb{R}^3のときは単位法線ベクトル場NNがこの指定を与え、n=N×Tn=N\times Tである。MMのチャート(U,ϕ)(U,\phi)が正の向きを持つとは、各点で座標基底(∂1,∂2)(\partial_1,\partial_2)が正の基底であることをいう。「滑らか」はC∞C^\inftyを意味する。

1 領域と、その上の積分

まず、定理の主張に現れる領域を定める。仮定は三つあり、そのいずれも結論を変える。

定義 1.1.MMを向きづけられた曲面とする。MMの部分集合RRが単純な座標領域 (simple coordinate region) であるとは、正の向きを持つチャート(U,ϕ)(U,\phi)と、Q=ϕ(R)⊆ϕ(U)Q=\phi(R)\subseteq\phi(U)について次の三つが成り立つことをいう。

  1. RRはコンパクトでありR⊆UR\subseteq Uである。
  2. QQは「実解析 II」の§E4.22 定義 1.2の意味の区分的に一階連続微分可能な正則領域である。とくにQQの境界は局所的な片側性を持つ。
  3. QQは穴を持たない。すなわち∂Q\partial Qは一つの区分的に一階連続微分可能な正則単純閉曲線Γ0\Gamma_0からなり、R2∖Q\mathbb{R}^2\setminus Qは一つの非有界連結成分だけを持つ。

さらに、Γ0\Gamma_0を与える径数づけの各滑らかな弧がC∞C^\inftyかつ正則であり、分割点において§E19.13 定義 3.1の意味で尖点を持たないと仮定する。∂R=ϕ−1(Γ0)\partial R=\phi^{-1}(\Gamma_0)をRRの境界 (boundary) という。

条件 (c)が単連結性の役割を果たす。平面の領域が単連結であれば穴を持たないから、単連結性を仮定した場合はこの条件が従う。この条件を外すと注意 8.5のとおり結論の右辺が2π2\piにならない。条件 (b)は Green の定理を適用するために要る。条件 (a)は、領域が一つの座標近傍に収まることを述べており、§E19.10 命題 1.3によりUUの上に正規直交接標構が取れることを保証する。

チャートに正の向きを要求したことは、実質的な制限ではない。RRを含む連結なチャートの定義域を取ると、座標基底が正の基底であるかどうかは点について連続に決まり、値が二つしかないので定義域全体で一定である。負であれば二つの座標を入れ替えればよい。したがって、RRが一つのチャートの定義域に含まれるならば、正の向きを持つチャートを取り直すことができる。

定義 1.2.RRを定義 1.1の単純な座標領域、(U,ϕ)(U,\phi)をその定義に現れるチャート、x=ϕ−1\boldsymbol{x}=\phi^{-1}とする。x\boldsymbol{x}の座標を(u,v)(u,v)と書き、第一基本形式の成分をE,F,GE,F,Gと書く。MMが正則曲面であるときは§E19.4 定義 1.3のE=⟨xu,xu⟩E=\langle\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_u\rangle、F=⟨xu,xv⟩F=\langle\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_v\rangle、G=⟨xv,xv⟩G=\langle\boldsymbol{x}_v,\boldsymbol{x}_v\rangleを指す。MMが抽象曲面であるときは、§E19.7 定義 5.1 条件 (b)がチャート(U,(u1,u2))=(U,(u,v))(U,(u^1,u^2))=(U,(u,v))に対して定める成分gij=I(∂i,∂j)g_{ij}=\mathrm{I}(\partial_i,\partial_j)を用いてE=g11E=g_{11}、F=g12F=g_{12}、G=g22G=g_{22}と読み替える。以下、E,F,GE,F,Gをこの意味で用いる。I\mathrm{I}が正定値であるから、いずれの場合もE>0E>0かつEG−F2>0EG-F^2>0であり、EG−F2\sqrt{EG-F^2}はϕ(U)\phi(U)の上の正のC∞C^\infty関数である。f ⁣:R→Rf\colon R\to\mathbb{R}を連続関数とし

∫Rf dA=∬Q(f∘x)EG−F2 du dv\int_Rf\,dA=\iint_{Q}\bigl(f\circ\boldsymbol{x}\bigr)\sqrt{EG-F^2}\ du\,dv

と定める。QQはコンパクトかつ Jordan 可測であり(§E4.11 補題 1.4、「実解析 II」の§E4.11 定義 2.1)、被積分関数は連続であるから、§E4.11 系 3.5によりこの積分は定まる。f≡1f\equiv1のとき、この値は§E19.4 定義 5.1の面積A(R)A(R)に一致する。値がチャートの取り方に依らないことは、§E19.4 命題 5.2の証明と同じ変数変換(§E4.14 定理 2.1)による。

2 回転角と測地曲率

次の等式が、本記事の証明の要である。左辺は曲線の内在的な量であり、右辺は標構に対する相対的な角の変化と、標構そのものの回り方とに分かれる。

補題 2.1.MMを向きづけられた曲面、U⊆MU\subseteq Mを開集合、(e1,e2)(e_1,e_2)をUU上の正規直交接標構(§E19.10 定義 1.2)であって各点で正の基底であるものとし、ω12\omega_{12}をその接続形式(§E19.10 定義 2.1)とする。γ ⁣:[a,b]→U\gamma\colon[a,b]\to Uを単位速度の滑らかな曲線、T=γ′T=\gamma'とする。

  1. 連続関数φ ⁣:[a,b]→R\varphi\colon[a,b]\to\mathbb{R}であって T(s)=cos⁡φ(s) e1(γ(s))+sin⁡φ(s) e2(γ(s))T(s)=\cos\varphi(s)\,e_1(\gamma(s))+\sin\varphi(s)\,e_2(\gamma(s)) を満たすものが存在する。φ\varphiはC∞C^\inftyであり、φ(a)\varphi(a)を指定すれば一意である。
  2. §E19.8 定義 5.1の単位法ベクトルはn=−sin⁡φ e1+cos⁡φ e2n=-\sin\varphi\,e_1+\cos\varphi\,e_2である。
  3. [a,b][a,b]の上で κg=φ′+ω12(T)\kappa_g=\varphi'+\omega_{12}(T) が成り立つ。

証明.(1)を示す。TTは単位ベクトルであり(e1,e2)(e_1,e_2)は各点で正規直交基底であるから

w(s)=(I(T(s),e1(γ(s))), I(T(s),e2(γ(s))))w(s)=\bigl(\mathrm{I}(T(s),e_1(\gamma(s))),\ \mathrm{I}(T(s),e_2(\gamma(s)))\bigr)

はS1S^1に値を取る。TT、ei∘γe_i\circ\gammaおよびI\mathrm{I}は滑らかであるからwwはC∞C^\inftyである。§E19.13 補題 2.1によりwwの偏角の連続な選択φ\varphiが存在し、φ(a)\varphi(a)を指定すれば一意である。T=I(T,e1)e1+I(T,e2)e2T=\mathrm{I}(T,e_1)e_1+\mathrm{I}(T,e_2)e_2であるから、主張の等式が成り立つ。φ\varphiがC∞C^\inftyであることは、§E19.13 補題 2.2の証明の前半と同じ議論による。すなわち、wwの成分のうち零でない方に応じて逆三角関数を局所的に合成する。

(2)を示す。m=−sin⁡φ e1+cos⁡φ e2m=-\sin\varphi\,e_1+\cos\varphi\,e_2と置く。(e1,e2)(e_1,e_2)が正規直交であるから∥m∥=1\lVert m\rVert=1かつI(T,m)=0\mathrm{I}(T,m)=0である。また(T,m)(T,m)から(e1,e2)(e_1,e_2)への基底変換行列は角φ\varphiの回転行列であり、行列式が11であるから、(T,m)(T,m)は正の基底である。§E19.8 定義 5.1の三条件を満たすベクトルは一意であるからn=mn=mである。

(3)を示す。§E19.7 命題 6.2 (1)の積の規則と(2)により

DTds=φ′(−sin⁡φ e1+cos⁡φ e2)+cos⁡φ ∇Te1+sin⁡φ ∇Te2\frac{DT}{ds} =\varphi'\bigl(-\sin\varphi\,e_1+\cos\varphi\,e_2\bigr) +\cos\varphi\,\nabla_Te_1+\sin\varphi\,\nabla_Te_2

である。§E19.10 命題 2.2 (1)により∇Te1=ω12(T)e2\nabla_Te_1=\omega_{12}(T)e_2、∇Te2=−ω12(T)e1\nabla_Te_2=-\omega_{12}(T)e_1であるから、右辺の後半は

cos⁡φ ω12(T)e2−sin⁡φ ω12(T)e1=ω12(T) n\cos\varphi\,\omega_{12}(T)e_2-\sin\varphi\,\omega_{12}(T)e_1=\omega_{12}(T)\,n

である。(2)により前半はφ′ n\varphi'\,nであるから

DTds=(φ′+ω12(T)) n\frac{DT}{ds}=\bigl(\varphi'+\omega_{12}(T)\bigr)\,n

であり、I(n,n)=1\mathrm{I}(n,n)=1を用いてκg=I(DT/ds,n)=φ′+ω12(T)\kappa_g=\mathrm{I}(DT/ds,n)=\varphi'+\omega_{12}(T)を得る。▨

3 接続形式の境界積分

定義 3.1.RRを定義 1.1の単純な座標領域、α\alphaをUU上の一次微分形式とする。∂R\partial Rを弧長で径数づけた単位速度の区分的に滑らかな閉曲線をγ ⁣:[0,L]→U\gamma\colon[0,L]\to U、分割を0=s0<s1<⋯<sN=L0=s_0<s_1<\cdots<s_N=Lとし、T=γ′T=\gamma'と置く。

∫∂Rα=∑j=1N∫sj−1sjα(T(s)) ds\int_{\partial R}\alpha=\sum_{j=1}^{N}\int_{s_{j-1}}^{s_j}\alpha\bigl(T(s)\bigr)\,ds

と定める。α\alphaは連続であり各弧の上でTTは連続であるから、各項は定まる。同様に、連続関数hhに対して∫∂Rh ds=∑j∫sj−1sjh(γ(s)) ds\int_{\partial R}h\,ds=\sum_j\int_{s_{j-1}}^{s_j}h(\gamma(s))\,dsと定める。

補題 3.2.RRを定義 1.1の単純な座標領域、(U,ϕ)(U,\phi)をその定義に現れる正の向きを持つチャート、(e1,e2)(e_1,e_2)をUU上の正規直交接標構であって各点で正の基底であるもの、ω12\omega_{12}をその接続形式とする。境界∂R\partial RをRRを左に見る向き、すなわち§E19.8 定義 5.1の単位法ベクトルnnがRRの内側を向く向きに取る。このとき

∫∂Rω12=−∫RK dA\int_{\partial R}\omega_{12}=-\int_RK\,dA

が成り立つ。

証明.x=ϕ−1\boldsymbol{x}=\phi^{-1}と置き、座標を(u,v)(u,v)と書く。x∗ω12\boldsymbol{x}^{\ast}\omega_{12}はϕ(U)\phi(U)上のC∞C^\infty一次微分形式であるから

x∗ω12=P du+Q1 dv,P,Q1∈C∞(ϕ(U))\boldsymbol{x}^{\ast}\omega_{12}=P\,du+Q_1\,dv,\qquad P,Q_1\in C^\infty(\phi(U))

と書くことができる。

線積分の書き換え。c=ϕ∘γc=\phi\circ\gammaと置く。ϕ\phiはチャートであるから、ccはγ\gammaの座標表示であり、各弧の上でC∞C^\inftyである(MMが正則曲面である場合は§E19.4 補題 2.1による)。γ′≠0\gamma'\ne0とdxd\boldsymbol{x}が同型であることからc′≠0c'\ne0である。連鎖律によりT=dx(c′)T=d\boldsymbol{x}(c')であるから

ω12(T(s))=(x∗ω12)(c′(s))=P(c(s)) u˙(s)+Q1(c(s)) v˙(s)\omega_{12}(T(s))=\bigl(\boldsymbol{x}^{\ast}\omega_{12}\bigr)\bigl(c'(s)\bigr)=P(c(s))\,\dot u(s)+Q_1(c(s))\,\dot v(s)

である。よって定義 3.1の和は、平面の線積分

∫∂Rω12=∮∂QP du+Q1 dv\int_{\partial R}\omega_{12}=\oint_{\partial Q}P\,du+Q_1\,dv

に等しい。ここで∂Q\partial Qにはccが与える向きを取る。

向きの一致。ccが§E4.22 定義 1.2 条件 (d)の正の向き、すなわちQQを左に見る向きを与えることを示す。ssを境界の滑らかな弧の内部の点とし、p=γ(s)p=\gamma(s)、q=c(s)q=c(s)と置く。dxq ⁣:R2→TpMd\boldsymbol{x}_q\colon\mathbb{R}^2\to T_pMは線形同型であり、チャートが正の向きを持つので、R2\mathbb{R}^2の標準的な正の基底をTpMT_pMの正の基底へ写す。nnを§E19.8 定義 5.1の単位法ベクトルとし、ν=(dxq)−1(n)\nu=(d\boldsymbol{x}_q)^{-1}(n)と置くと、(c′(s),ν)(c'(s),\nu)はR2\mathbb{R}^2の正の基底であるからdet⁡(c′(s),ν)>0\det(c'(s),\nu)>0である。一方、R2\mathbb{R}^2の正の向きの直角回転をJJと書くとdet⁡(c′(s),Jc′(s))=∥c′(s)∥2>0\det(c'(s),Jc'(s))=\lVert c'(s)\rVert^2>0である。ν\nuとJc′(s)Jc'(s)はいずれもc′(s)c'(s)に平行でなく、det⁡(c′(s),⋅)\det(c'(s),\cdot)の符号が等しいから、直線Rc′(s)\mathbb{R}c'(s)の同じ側にある。

§E4.22 定義 1.2 条件 (c)により、qqの十分小さい球B(q,r)B(q,r)についてB(q,r)∖∂QB(q,r)\setminus\partial Qはちょうど二つの連結成分を持ち、一方がQQの内部、他方がQQの外部に含まれる。rrを十分小さく取ると、∂Q\partial QはB(q,r)B(q,r)の中でC1C^1の正則な弧であり、二つの成分は直線q+Rc′(s)q+\mathbb{R}c'(s)の両側に対応する。したがって、qqから出る短い線分の終点がQQの内部にあるかどうかは、方向ベクトルwwについてdet⁡(c′(s),w)\det(c'(s),w)の符号だけで決まる。RRを左に見る向きに取ったことによりnnはRRの内側を向くから、ν\nuの側がQQの内部であり、したがってJc′(s)Jc'(s)の側もQQの内部である。すなわちQQは進行方向の左側にある。

Green の定理。QQは§E4.22 定義 1.2の正則領域であり穴を持たないから、「実解析 II」の§E4.22 定理 4.1をD=QD=Q、PP、Q1Q_1に適用して

∮∂QP du+Q1 dv=∬Q(∂Q1∂u−∂P∂v)du dv\oint_{\partial Q}P\,du+Q_1\,dv=\iint_{Q}\left(\frac{\partial Q_1}{\partial u}-\frac{\partial P}{\partial v}\right)du\,dv

を得る。P,Q1P,Q_1はQQを含む開集合ϕ(U)\phi(U)の上でC∞C^\inftyであるから、定理の仮定は満たされる。

被積分関数の同定。(M,I)(M,\mathrm{I})は抽象曲面であるから、dω12=−K ω1∧ω2d\omega_{12}=-K\,\omega_1\wedge\omega_2は§E19.11 定理 2.1 (1)が Gauss 曲率KKを定めるために用いる等式そのものである。MMが正則曲面であるときは、§E19.11 定理 2.1 (3)により、このKKは§E19.6 定義 2.1の Gauss 曲率に一致し、上の等式は§E19.11 定理 1.2に一致する。外微分と引き戻しが可換であること(「多様体入門」の§E17.11 命題 3.1)により

(∂Q1∂u−∂P∂v)du∧dv=d(x∗ω12)=x∗(dω12)=x∗(−K ω1∧ω2)\left(\frac{\partial Q_1}{\partial u}-\frac{\partial P}{\partial v}\right)du\wedge dv =d\bigl(\boldsymbol{x}^{\ast}\omega_{12}\bigr)=\boldsymbol{x}^{\ast}\bigl(d\omega_{12}\bigr) =\boldsymbol{x}^{\ast}\bigl(-K\,\omega_1\wedge\omega_2\bigr)

である。

面積要素との突き合わせ。§E19.10 命題 1.4は、§E19.10 命題 1.3が座標基底の Gram–Schmidt 直交化として作る標構についての主張である。本補題の(e1,e2)(e_1,e_2)はUU上の任意の正の正規直交接標構であるから、二つの標構でω1∧ω2\omega_1\wedge\omega_2が一致することを確かめる。

§E19.10 命題 1.3の標構を(eˉ1,eˉ2)(\bar e_1,\bar e_2)、その余標構を(ωˉ1,ωˉ2)(\bar\omega_1,\bar\omega_2)と書く。座標基底(∂1,∂2)(\partial_1,\partial_2)から(eˉ1,eˉ2)(\bar e_1,\bar e_2)への基底変換の行列式は

1E⋅EEEG−F2=1EG−F2>0\frac{1}{\sqrt E}\cdot\frac{E}{\sqrt E\sqrt{EG-F^2}}=\frac{1}{\sqrt{EG-F^2}}>0

であり、チャートが正の向きを持つから、(eˉ1,eˉ2)(\bar e_1,\bar e_2)は各点で正の基底である。§E19.10 定理 4.1 (3)により、各点の連結な開近傍の上で(e1,e2)(e_1,e_2)は(eˉ1,eˉ2)(\bar e_1,\bar e_2)から§E19.10 定理 4.1 (1)の回転によって得られるか、または§E19.10 定理 4.1 (1)と§E19.10 定理 4.1 (2)の合成によって得られる。§E19.10 定理 4.1 (2)の取り替え(eˉ1,eˉ2)↦(eˉ1,−eˉ2)(\bar e_1,\bar e_2)\mapsto(\bar e_1,-\bar e_2)は基底変換の行列式を−1-1倍するので、正の基底を負の基底へ移す。(e1,e2)(e_1,e_2)と(eˉ1,eˉ2)(\bar e_1,\bar e_2)はともに各点で正の基底であるから、§E19.10 定理 4.1 (2)を含む場合は起こらない。よって近傍ごとに§E19.10 定理 4.1 (1)の形であり、§E19.10 定理 4.1 (1)によりω1∧ω2=ωˉ1∧ωˉ2\omega_1\wedge\omega_2=\bar\omega_1\wedge\bar\omega_2である。この等式は各点で成り立つからUUの全体で成り立つ。

§E19.10 命題 1.3が与える余標構の式に§E19.10 命題 1.4の計算を適用すると、ωˉ1∧ωˉ2\bar\omega_1\wedge\bar\omega_2の引き戻しはEG−F2 du∧dv\sqrt{EG-F^2}\,du\wedge dvである。この計算は余標構の成分の外積だけを用いるので、抽象曲面に対してもそのまま通る。したがって

∂Q1∂u−∂P∂v=−(K∘x)EG−F2\frac{\partial Q_1}{\partial u}-\frac{\partial P}{\partial v}=-\bigl(K\circ\boldsymbol{x}\bigr)\sqrt{EG-F^2}

である。定義 1.2により

∬Q(∂Q1∂u−∂P∂v)du dv=−∫RK dA\iint_{Q}\left(\frac{\partial Q_1}{\partial u}-\frac{\partial P}{\partial v}\right)du\,dv=-\int_RK\,dA

であり、主張が従う。▨

4 回転定理を曲面へ移す

補題 2.1のφ\varphiは、第一基本形式で測った角である。前の記事の回転定理は、平面の Euclid 内積で測った偏角についての主張であった。二つを結ぶのが次の補題であり、鍵は、§E19.10 命題 1.3が与える標構が、座標平面の上で第一基本形式を引き戻した二次形式に関する Gram–Schmidt 標構の押し出しに一致することである。

補題 4.1.RRを定義 1.1の単純な座標領域、(U,ϕ)(U,\phi)をその定義に現れる正の向きを持つチャート、x=ϕ−1\boldsymbol{x}=\phi^{-1}とする。§E19.10 命題 1.3が与える正規直交接標構を(e1,e2)(e_1,e_2)とする。∂R\partial RをRRを左に見る向きに弧長で径数づけたγ ⁣:[0,L]→U\gamma\colon[0,L]\to U、分割を0=s0<⋯<sN=L0=s_0<\cdots<s_N=L、各弧の上での補題 2.1の角をφj\varphi_j、分割点における外角をθj∈(−π,π)\theta_j\in(-\pi,\pi)とする。このとき

∑j=1N(φj(sj)−φj(sj−1))+∑j=1Nθj=2π\sum_{j=1}^{N}\bigl(\varphi_j(s_j)-\varphi_j(s_{j-1})\bigr)+\sum_{j=1}^{N}\theta_j=2\pi

が成り立つ。ここで外角は、入る側の単位接ベクトルから出る側の単位接ベクトルへの、第一基本形式で測った符号つきの角である。

証明.W=ϕ(U)W=\phi(U)と置き、WWの上の二次形式の族ggを

gq(a,b)=Ix(q)(dxq(a), dxq(b))(a,b∈R2)g_q(a,b)=\mathrm{I}_{\boldsymbol{x}(q)}\bigl(d\boldsymbol{x}_q(a),\ d\boldsymbol{x}_q(b)\bigr)\qquad(a,b\in\mathbb{R}^2)

で定める。dxqd\boldsymbol{x}_qは単射でありI\mathrm{I}は正定値であるからgqg_qは正定値対称双線形形式であり、その成分行列は(EFFG)\begin{pmatrix}E&F\\F&G\end{pmatrix}であるからqqについてC∞C^\inftyである。定義によりdxq ⁣:(R2,gq)→(TpM,Ip)d\boldsymbol{x}_q\colon(\mathbb{R}^2,g_q)\to(T_pM,\mathrm{I}_p)は線形等長同型である。

標構の対応。§E19.13 定義 9.1の Gram–Schmidt 標構(f1,f2)(f_1,f_2)をggについて作る。標準基底を(ε1,ε2)(\varepsilon_1,\varepsilon_2)と書くとg(ε1,ε1)=Eg(\varepsilon_1,\varepsilon_1)=E、g(ε1,ε2)=Fg(\varepsilon_1,\varepsilon_2)=F、g(ε2,ε2)=Gg(\varepsilon_2,\varepsilon_2)=Gであるから

f1=ε1E,ε2−g(ε2,f1)f1=ε2−FEε1,∥ε2−FEε1∥g=G−F2E=EG−F2Ef_1=\frac{\varepsilon_1}{\sqrt E},\qquad \varepsilon_2-g(\varepsilon_2,f_1)f_1=\varepsilon_2-\frac{F}{E}\varepsilon_1,\qquad \Bigl\lVert\varepsilon_2-\frac{F}{E}\varepsilon_1\Bigr\rVert_g=\sqrt{G-\frac{F^2}{E}}=\frac{\sqrt{EG-F^2}}{\sqrt E}

であり

f2=Eε2−Fε1EEG−F2f_2=\frac{E\varepsilon_2-F\varepsilon_1}{\sqrt E\sqrt{EG-F^2}}

である。dx(ε1)=xud\boldsymbol{x}(\varepsilon_1)=\boldsymbol{x}_u、dx(ε2)=xvd\boldsymbol{x}(\varepsilon_2)=\boldsymbol{x}_vであるから

dx(f1)=xuE,dx(f2)=Exv−FxuEEG−F2d\boldsymbol{x}(f_1)=\frac{\boldsymbol{x}_u}{\sqrt E},\qquad d\boldsymbol{x}(f_2)=\frac{E\boldsymbol{x}_v-F\boldsymbol{x}_u}{\sqrt E\sqrt{EG-F^2}}

となり、右辺は§E19.10 命題 1.3のe1e_1、e2e_2そのものである。すなわちdx(fi)=eid\boldsymbol{x}(f_i)=e_iである。

角の対応。c=ϕ∘γc=\phi\circ\gammaと置く。補題 3.2の証明で見たとおり、ccはQQを左に見る向きの区分的に滑らかな正則単純閉曲線である。単純性はγ\gammaの単純性とϕ\phiの単射性から従う。ccの単位接ベクトル(ggに関して正規化したもの)をT^\hat Tと書くと、dxd\boldsymbol{x}が等長であることからdx(T^)=Td\boldsymbol{x}(\hat T)=Tである。したがって

T^=cos⁡φj f1+sin⁡φj f2  ⟺  T=cos⁡φj e1+sin⁡φj e2\hat T=\cos\varphi_j\,f_1+\sin\varphi_j\,f_2 \iff T=\cos\varphi_j\,e_1+\sin\varphi_j\,e_2

であり、§E19.13 定義 9.1の意味でggに関するccの偏角は、補題 2.1のφj\varphi_jと一致する。外角についても、dxd\boldsymbol{x}が第一基本形式とggを対応させfif_iをeie_iへ写すことから、ccのggに関する外角はθj\theta_jに等しい。とくにccはggに関して尖点を持たない。

回転定理の適用。以上により、§E19.13 定義 9.1の記号で

2π ιg(c)=∑j=1N(φj(sj)−φj(sj−1))+∑j=1Nθj2\pi\,\iota_g(c)=\sum_{j=1}^{N}\bigl(\varphi_j(s_j)-\varphi_j(s_{j-1})\bigr)+\sum_{j=1}^{N}\theta_j

である。γ\gammaが尖点を持たないことと§E19.13 注意 9.3により、ccは Euclid 内積に関しても尖点を持たない。§E19.13 命題 9.2によりιg(c)=ι(c)\iota_g(c)=\iota(c)であり、ccがQQを左に見る向きの区分的に滑らかな正則単純閉曲線であってQQが§E4.22 定義 1.2の正則領域であるから、§E19.13 定理 7.1によりι(c)=1\iota(c)=1である。▨

5 証明方針

主定理の証明は次の三段からなる。

第一段は、境界を弧長で径数づけ、§E19.10 命題 1.3の標構に対する角φ\varphiを各弧の上で取ることである。ここで標構を任意に取らず§E19.10 命題 1.3のものに固定するのは、補題 4.1が、その標構が座標平面の Gram–Schmidt 標構の押し出しであることを使うからである。結論に現れる三つの量はいずれも標構に依存しないので、この固定は一般性を失わない。

第二段は、補題 2.1の等式κg=φ′+ω12(T)\kappa_g=\varphi'+\omega_{12}(T)を各弧の上で積分することである。左辺の総和は測地曲率の線積分であり、右辺の第一項の総和は角の総増分、第二項の総和は接続形式の境界積分である。

第三段は、二つの評価を代入することである。角の総増分は補題 4.1により2π2\piから外角の総和を引いたものであり、接続形式の境界積分は補題 3.2により Gauss 曲率の面積分の符号を変えたものである。両者を代入して整理すると主張の等式が得られる。

平面の Green の定理を使う箇所は第三段の後者だけである。多様体上の Stokes の定理を用いない理由は、その定理が角を持つ領域を扱わないからである。曲面上の古典的 Stokes の定理を用いない理由は、それがベクトル場の回転についての形であり、接続形式という一次微分形式に適用することができないからである。

6 局所 Gauss–Bonnet の定理

定理 6.1 (局所 Gauss–Bonnet の定理).MMを向きづけられた曲面(§E19.7 定義 5.1の抽象曲面でよい)、R⊆MR\subseteq Mを定義 1.1の単純な座標領域とする。境界∂R\partial RをRRを左に見る向き、すなわち§E19.8 定義 5.1の単位法ベクトルnnがRRの内側を向く向きに弧長で径数づけ、その分割点における外角をθ1,…,θN∈(−π,π)\theta_1,\ldots,\theta_N\in(-\pi,\pi)とする。このとき

∫RK dA+∫∂Rκg ds+∑j=1Nθj=2π\int_RK\,dA+\int_{\partial R}\kappa_g\,ds+\sum_{j=1}^{N}\theta_j=2\pi

が成り立つ。ここでKKは Gauss 曲率(§E19.11 定理 2.1)、κg\kappa_gは境界の測地曲率(§E19.8 定義 5.1)である。

証明.(U,ϕ)(U,\phi)を定義 1.1のチャート、(e1,e2)(e_1,e_2)を§E19.10 命題 1.3が与えるUU上の正規直交接標構とする。この標構は各点で正の基底である。実際、補題 4.1の証明で示したとおりei=dx(fi)e_i=d\boldsymbol{x}(f_i)であり、(f1,f2)(f_1,f_2)は

det⁡(f1,f2)=det⁡(ε1E, Eε2−Fε1EEG−F2)=EE⋅EEG−F2=1EG−F2>0\det(f_1,f_2)=\det\left(\frac{\varepsilon_1}{\sqrt E},\ \frac{E\varepsilon_2-F\varepsilon_1}{\sqrt E\sqrt{EG-F^2}}\right)=\frac{E}{\sqrt E\cdot\sqrt E\sqrt{EG-F^2}}=\frac{1}{\sqrt{EG-F^2}}>0

によりR2\mathbb{R}^2の正の基底であり、チャートが正の向きを持つのでdxd\boldsymbol{x}は正の基底を正の基底へ写す。ω12\omega_{12}をこの標構の接続形式とする。

境界をγ ⁣:[0,L]→U\gamma\colon[0,L]\to Uと径数づけ、分割を0=s0<s1<⋯<sN=L0=s_0<s_1<\cdots<s_N=Lとする。各弧[sj−1,sj][s_{j-1},s_j]の上で補題 2.1を適用し、角φj\varphi_jを取る。補題 2.1 (3)により、各弧の上で

κg(s)=φj′(s)+ω12(T(s))\kappa_g(s)=\varphi_j'(s)+\omega_{12}\bigl(T(s)\bigr)

である。[sj−1,sj][s_{j-1},s_j]の上で積分すると、微積分学の基本定理(§D1.19 定理 2.1)により

∫sj−1sjκg ds=(φj(sj)−φj(sj−1))+∫sj−1sjω12(T(s)) ds\int_{s_{j-1}}^{s_j}\kappa_g\,ds=\bigl(\varphi_j(s_j)-\varphi_j(s_{j-1})\bigr)+\int_{s_{j-1}}^{s_j}\omega_{12}\bigl(T(s)\bigr)\,ds

である。j=1,…,Nj=1,\ldots,Nについて加えると、定義 3.1の定義により

∫∂Rκg ds=∑j=1N(φj(sj)−φj(sj−1))+∫∂Rω12\int_{\partial R}\kappa_g\,ds=\sum_{j=1}^{N}\bigl(\varphi_j(s_j)-\varphi_j(s_{j-1})\bigr)+\int_{\partial R}\omega_{12}

である。

第一項に補題 4.1を適用すると

∑j=1N(φj(sj)−φj(sj−1))=2π−∑j=1Nθj\sum_{j=1}^{N}\bigl(\varphi_j(s_j)-\varphi_j(s_{j-1})\bigr)=2\pi-\sum_{j=1}^{N}\theta_j

であり、第二項に補題 3.2を適用すると

∫∂Rω12=−∫RK dA\int_{\partial R}\omega_{12}=-\int_RK\,dA

である。二つを代入すると

∫∂Rκg ds=2π−∑j=1Nθj−∫RK dA\int_{\partial R}\kappa_g\,ds=2\pi-\sum_{j=1}^{N}\theta_j-\int_RK\,dA

であり、移項して主張の等式を得る。▨

注意 6.2 (三つの仮定がいずれも結論を変えること).定義 1.1の三つの条件は、いずれも省くことができない。定義 1.1 条件 (a)を外して領域が一つのチャートに収まらない場合、標構(e1,e2)(e_1,e_2)が領域全体の上に存在するとはかぎらず、補題 3.2の議論が立たない。定義 1.1 条件 (b)の局所的な片側性を外すと、§E4.22 定理 4.1の仮定が満たされず、境界の向きの規約そのものが定まらない。定義 1.1 条件 (c)を外すと、§E19.13 定理 7.1を適用することができず、実際に注意 8.5のとおり右辺が変わる。

また、外角を(−π,π)(-\pi,\pi)に取ることも仮定の一部である。境界に尖点があると外角が±π\pm\piのいずれとも定まらず、左辺の第三項が意味を持たない。

7 系

系 7.1.MMを向きづけられた曲面、R⊆MR\subseteq Mを定義 1.1の単純な座標領域、p∈∂Rp\in\partial Rとする。∂R\partial RをRRを左に見る向きにppから出発して一周する区分的に滑らかな閉曲線として径数づけ、それに沿う平行移動(§E19.7 定理 6.5)をP∂R ⁣:TpM→TpMP_{\partial R}\colon T_pM\to T_pMと書く。このときP∂RP_{\partial R}は、TpMT_pMの正の向きに角

∫RK dA\int_RK\,dA

だけ回す回転である。すなわち、TpMT_pMの正の向きの正規直交基底を一つ取り、その基底に関する角β\betaの回転をRβ\mathcal{R}_\betaと書くと、β0=∫RK dA\beta_0=\int_RK\,dAとしてP∂R=Rβ0P_{\partial R}=\mathcal{R}_{\beta_0}である。この表示は基底の取り方に依らない。

証明.(U,ϕ)(U,\phi)を定義 1.1のチャート、(e1,e2)(e_1,e_2)を定理 6.1の証明で用いたUU上の正の正規直交接標構、ω12\omega_{12}をその接続形式とする。γ ⁣:[0,L]→U\gamma\colon[0,L]\to Uを境界の弧長による径数づけとし、γ(0)=γ(L)=p\gamma(0)=\gamma(L)=pとする。

V0∈TpMV_0\in T_pMを取り、VVをγ\gammaに沿って平行でV(0)=V0V(0)=V_0を満たすベクトル場とする(§E19.7 定理 6.5。区分的に滑らかな曲線に対しては、各弧に順に適用して繋げる。VVは[0,L][0,L]の上で連続である)。P∂RP_{\partial R}は線形写像であり、V0=0V_0=0のときはP∂RV0=0P_{\partial R}V_0=0が任意の回転の像と一致するから、V0≠0V_0\ne0の場合を示せば足りる。§E19.7 定理 6.5 (2)により∥V∥\lVert V\rVertは定数であるから、VVをV/∥V0∥V/\lVert V_0\rVertに置き換えて∥V∥≡1\lVert V\rVert\equiv1としてよい。

補題 2.1 (1)と同じ議論により、連続関数ψ ⁣:[0,L]→R\psi\colon[0,L]\to\mathbb{R}であって

V(s)=cos⁡ψ(s) e1+sin⁡ψ(s) e2V(s)=\cos\psi(s)\,e_1+\sin\psi(s)\,e_2

を満たすものが存在する。VVは各弧の上で滑らかであるからψ\psiも各弧の上で滑らかである。各弧の上で§E19.7 命題 6.2の積の規則と§E19.10 命題 2.2 (1)により

0=DVds=(ψ′+ω12(T))(−sin⁡ψ e1+cos⁡ψ e2)0=\frac{DV}{ds}=\bigl(\psi'+\omega_{12}(T)\bigr)\bigl(-\sin\psi\,e_1+\cos\psi\,e_2\bigr)

である。括弧の中のベクトルは単位ベクトルであるからψ′=−ω12(T)\psi'=-\omega_{12}(T)である。各弧の上で積分し、ψ\psiが[0,L][0,L]の上で連続であることを用いて加えると

ψ(L)−ψ(0)=−∫∂Rω12=∫RK dA\psi(L)-\psi(0)=-\int_{\partial R}\omega_{12}=\int_RK\,dA

である。最後の等号は補題 3.2による。

γ(L)=γ(0)=p\gamma(L)=\gamma(0)=pであるからei(γ(L))=ei(γ(0))e_i(\gamma(L))=e_i(\gamma(0))であり、

P∂RV0=V(L)=cos⁡ψ(L) e1+sin⁡ψ(L) e2P_{\partial R}V_0=V(L)=\cos\psi(L)\,e_1+\sin\psi(L)\,e_2

は、V0=cos⁡ψ(0)e1+sin⁡ψ(0)e2V_0=\cos\psi(0)e_1+\sin\psi(0)e_2を(e1,e2)(e_1,e_2)の正の向きに角ψ(L)−ψ(0)\psi(L)-\psi(0)だけ回したものである。この角はV0V_0に依らないから、P∂RP_{\partial R}は角∫RK dA\int_RK\,dAの回転である。(e1,e2)(e_1,e_2)は正の基底であるから、この回転の向きはTpMT_pMの正の向きである。▨

注意 7.2 (回転角が実数として定まるためには標構が領域全体で必要であること).系 7.1の証明は、標構(e1,e2)(e_1,e_2)がRRの全体を含む開集合の上に存在することを使う。回転そのものは2π2\piの整数倍を除いてしか角を定めないが、系 7.1は実数∫RK dA\int_RK\,dAを指定している。この指定が意味を持つのは、RRの上で定義された標構に対してψ\psiを連続に選んだ場合である。

RRの上では定義されず境界の近傍でだけ定義された標構を使うと、値は2π2\piの整数倍だけずれる。ずれの向きは次のとおりである。二つの標構(e1,e2)(e_1,e_2)と(e~1,e~2)(\tilde e_1,\tilde e_2)が§E19.10 定理 4.1 (1)のθ\thetaによってe~1=cos⁡θ e1+sin⁡θ e2\tilde e_1=\cos\theta\,e_1+\sin\theta\,e_2と移り合うとき、平行なベクトル場VVの二つの標構に関する角をψ\psiとψ~\tilde\psiと書くとψ~=ψ−θ\tilde\psi=\psi-\thetaであるから、境界に沿う総増分について

Δψ~=Δψ−Δθ\Delta\tilde\psi=\Delta\psi-\Delta\theta

が成り立つ。θ\thetaは境界に沿って一周すると同じ標構へ戻るのでΔθ\Delta\thetaは2π2\piの整数倍である。例 8.4はこのずれが実際に起こる場合である。

系 7.3.MMを向きづけられた曲面、T⊆MT\subseteq Mを定義 1.1の単純な座標領域であって、境界が三つの滑らかな弧と三つの分割点からなり、三つの弧がいずれも測地線(§E19.8 定義 1.1)の一部であるものとする。このようなTTを測地三角形という。三つの分割点における内角をα1,α2,α3\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3、すなわち外角θj\theta_jに対してαj=π−θj\alpha_j=\pi-\theta_jとする。このとき

α1+α2+α3−π=∫TK dA\alpha_1+\alpha_2+\alpha_3-\pi=\int_TK\,dA

が成り立つ。

証明. 三つの弧は測地線の一部であるから、§E19.8 命題 5.2 (1)により、その上でκg≡0\kappa_g\equiv0である。よって∫∂Tκg ds=0\int_{\partial T}\kappa_g\,ds=0である。定理 6.1により

∫TK dA+0+∑j=13θj=2π\int_TK\,dA+0+\sum_{j=1}^{3}\theta_j=2\pi

である。θj=π−αj\theta_j=\pi-\alpha_jを代入すると

∫TK dA+3π−(α1+α2+α3)=2π\int_TK\,dA+3\pi-\bigl(\alpha_1+\alpha_2+\alpha_3\bigr)=2\pi

であり、整理して主張を得る。▨

8 例

例 8.1 (平面の領域).MMを平面{(x,y,0):x,y∈R}\{(x,y,0):x,y\in\mathbb{R}\}とし、向きをN=(0,0,1)N=(0,0,1)で与える。恒等写像をチャートに取ると、第一基本形式の成分はE=G=1E=G=1、F=0F=0であり、§E19.6 命題 4.3によりK≡0K\equiv0である。定理 6.1は

∫∂Rκg ds+∑jθj=2π\int_{\partial R}\kappa_g\,ds+\sum_{j}\theta_j=2\pi

を与える。平面の単位速度曲線については、§E19.8 定義 5.1のnnが§E19.13 定義 1.1のn=JTn=JTに一致するからκg=κs\kappa_g=\kappa_sであり、§E19.13 補題 2.2により∫弧κs ds\int_{\text{弧}}\kappa_s\,dsは偏角の増分に等しい。したがってこの等式は§E19.13 定理 7.1そのものである。曲率が零である場合に主定理が回転定理へ戻ることが確かめられる。

具体例として、§E19.13 例 8.1の三角形A=(0,0)A=(0,0)、B=(1,0)B=(1,0)、C=(0,1)C=(0,1)を取る。三辺は線分であるからκs≡0\kappa_s\equiv0であり、外角の総和はπ/2+3π/4+3π/4=2π\pi/2+3\pi/4+3\pi/4=2\piである。左辺は0+0+2π=2π0+0+2\pi=2\piである。

例 8.2 (球冠). 半径r>0r>0の球面M={p∈R3:∥p∥=r}M=\{p\in\mathbb{R}^3:\lVert p\rVert=r\}を取り、向きを、本単元が閉曲面に固定した向き、すなわち囲む領域から見て内向きのN(p)=−p/rN(p)=-p/rに取る。0<u0<π0<u_0<\piを固定し、球冠

R={p∈M: p3≥rcos⁡u0}R=\{p\in M:\ p_3\ge r\cos u_0\}

を取る。ここでp3p_3は第三成分である。

仮定の確認。RRは南極(0,0,−r)(0,0,-r)を含まないから、その点を除いた球面の上のチャートで覆われる。南極からの立体射影に第二座標の符号の反転を合成した写像

Φ(p)=(r p1r+p3, −r p2r+p3)\Phi(p)=\Bigl(\frac{r\,p_1}{r+p_3},\ \frac{-r\,p_2}{r+p_3}\Bigr)

は、南極を除いた球面からR2\mathbb{R}^2への微分同相である。p=x(u,v)=r(sin⁡ucos⁡v,sin⁡usin⁡v,cos⁡u)p=\boldsymbol{x}(u,v)=r(\sin u\cos v,\sin u\sin v,\cos u)に対して

Φ(p)=rsin⁡u1+cos⁡u (cos⁡v, −sin⁡v)=rtan⁡u2 (cos⁡ζ, sin⁡ζ),ζ=−v\Phi(p)=\frac{r\sin u}{1+\cos u}\,(\cos v,\ -\sin v)=r\tan\frac{u}{2}\,(\cos\zeta,\ \sin\zeta),\qquad\zeta=-v

であり、ρ=rtan⁡(u/2)\rho=r\tan(u/2)はu∈(0,π)u\in(0,\pi)について狭義単調増加である。したがってRRの像は原点を中心とする閉円板

Φ(R)={(ξ,η): ξ2+η2≤r2tan⁡2u02},tan⁡2u02=1−cos⁡u01+cos⁡u0\Phi(R)=\Bigl\{(\xi,\eta):\ \xi^2+\eta^2\le r^2\tan^2\frac{u_0}{2}\Bigr\},\qquad \tan^2\frac{u_0}{2}=\frac{1-\cos u_0}{1+\cos u_0}

である。閉円板は§E4.22 定義 1.2の正則領域であり、穴を持たない。

このチャートが正の向きを持つことを確かめる。極座標(ρ,ζ)(\rho,\zeta)について、平面では(∂ρ,∂ζ)(\partial_\rho,\partial_\zeta)が正の基底である。曲面の上では∂ρ\partial_\rhoはxu\boldsymbol{x}_uの正の実数倍であり、ζ=−v\zeta=-vから∂ζ=−xv\partial_\zeta=-\boldsymbol{x}_vである。(xu,−xv)(\boldsymbol{x}_u,-\boldsymbol{x}_v)と(xv,xu)(\boldsymbol{x}_v,\boldsymbol{x}_u)は、いずれも(xu,xv)(\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_v)から向きを反転させた基底であるから同じ向きを与える。§E19.7 例 7.3のとおりe1×e2=Ne_1\times e_2=Nとなる標構はe1∝xve_1\propto\boldsymbol{x}_v、e2∝xue_2\propto\boldsymbol{x}_uであるから、(xv,xu)(\boldsymbol{x}_v,\boldsymbol{x}_u)は正の基底である。よってこのチャートは正の向きを持つ。以上によりRRは定義 1.1の単純な座標領域である。境界には角が無いので∑θj=0\sum\theta_j=0である。

左辺の計算。§E19.6 命題 4.3によりK≡1/r2K\equiv1/r^2であり、§E19.7 例 7.3の計算により

∫RK dA=1r2∫0u0 ⁣ ⁣∫02πr2sin⁡u dv du=2π(1−cos⁡u0)\int_RK\,dA=\frac{1}{r^2}\int_0^{u_0}\!\!\int_0^{2\pi}r^2\sin u\,dv\,du=2\pi(1-\cos u_0)

である。境界は緯線u=u0u=u_0であり、§E19.8 例 6.2により、vvの減る向き、すなわちRRを左に見る向きに取ると

κg=cos⁡u0rsin⁡u0\kappa_g=\frac{\cos u_0}{r\sin u_0}

である。境界の長さは2πrsin⁡u02\pi r\sin u_0であるから

∫∂Rκg ds=cos⁡u0rsin⁡u0⋅2πrsin⁡u0=2πcos⁡u0\int_{\partial R}\kappa_g\,ds=\frac{\cos u_0}{r\sin u_0}\cdot2\pi r\sin u_0=2\pi\cos u_0

である。したがって

∫RK dA+∫∂Rκg ds+∑jθj=2π(1−cos⁡u0)+2πcos⁡u0+0=2π\int_RK\,dA+\int_{\partial R}\kappa_g\,ds+\sum_j\theta_j=2\pi(1-\cos u_0)+2\pi\cos u_0+0=2\pi

であり、定理 6.1と一致する。u0→0u_0\to0では両項がそれぞれ00と2π2\piへ近づき、小さい円が平面の円のように振る舞う。u0=π/2u_0=\pi/2(半球)では2π+02\pi+0であり、赤道が測地線であること(§E19.8 例 6.1)と整合する。u0→πu_0\to\piでは第一項が4π4\piへ、第二項が−2π-2\piへ近づく。

測地曲率を補題 2.1から独立に求める。§E19.7 例 7.3の標構e1=xv/(rsin⁡u)e_1=\boldsymbol{x}_v/(r\sin u)、e2=xu/re_2=\boldsymbol{x}_u/rに対して、余標構はω1=rsin⁡u dv\omega_1=r\sin u\,dv、ω2=r du\omega_2=r\,duである。§E19.10 定理 3.1にω12=a du+b dv\omega_{12}=a\,du+b\,dvを代入すると

dω1=rcos⁡u du∧dv=ω12∧ω2=−br du∧dv,dω2=0=−ω12∧ω1=−arsin⁡u du∧dvd\omega_1=r\cos u\,du\wedge dv=\omega_{12}\wedge\omega_2=-br\,du\wedge dv,\qquad d\omega_2=0=-\omega_{12}\wedge\omega_1=-ar\sin u\,du\wedge dv

であるからa=0a=0、b=−cos⁡ub=-\cos u、すなわちω12=−cos⁡u dv\omega_{12}=-\cos u\,dvである。§E19.10 定理 3.2により、これが接続形式である。境界の単位接ベクトルTTはvvの減る向きであるからT=−e1T=-e_1であり、角はφ≡π\varphi\equiv\piで一定、φ′=0\varphi'=0である。座標成分はu˙=0\dot u=0、v˙=−1/(rsin⁡u0)\dot v=-1/(r\sin u_0)であるから

ω12(T)=−cos⁡u0⋅(−1rsin⁡u0)=cos⁡u0rsin⁡u0\omega_{12}(T)=-\cos u_0\cdot\left(-\frac{1}{r\sin u_0}\right)=\frac{\cos u_0}{r\sin u_0}

であり、補題 2.1 (3)によりκg=0+cos⁡u0/(rsin⁡u0)\kappa_g=0+\cos u_0/(r\sin u_0)となる。§E19.8 例 6.2が Christoffel 記号から直接に求めた値と一致する。またdω12=sin⁡u du∧dvd\omega_{12}=\sin u\,du\wedge dvであり、ω1∧ω2=−r2sin⁡u du∧dv\omega_1\wedge\omega_2=-r^2\sin u\,du\wedge dvであるからdω12=−1r2ω1∧ω2d\omega_{12}=-\frac{1}{r^2}\omega_1\wedge\omega_2となり、§E19.11 定理 1.2とK=1/r2K=1/r^2が整合する。

例 8.3 (球面の測地三角形). 半径rrの球面の第一八分儀

T={p∈M: p1≥0, p2≥0, p3≥0}T=\{p\in M:\ p_1\ge0,\ p_2\ge0,\ p_3\ge0\}

を取る。三辺はいずれも大円の弧であり、§E19.8 例 6.1により測地線である。三つの内角はいずれもπ/2\pi/2であるから、系 7.3は

π2+π2+π2−π=π2=∫TK dA\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2}-\pi=\frac{\pi}{2}=\int_TK\,dA

を主張する。直接に確かめる。TTの面積は球面の面積の八分の一であるから4πr2/8=πr2/24\pi r^2/8=\pi r^2/2であり、K≡1/r2K\equiv1/r^2であるから

∫TK dA=1r2⋅πr22=π2\int_TK\,dA=\frac{1}{r^2}\cdot\frac{\pi r^2}{2}=\frac{\pi}{2}

である。二つの値は一致する。

内角の和は3π/2>π3\pi/2>\piであり、球面の測地三角形の内角の和が二直角を超えることが、K>0K>0から従う。一般に、系 7.3は、K>0K>0の曲面では内角の和がπ\piを超え、K≡0K\equiv0の曲面ではπ\piに等しく、K<0K<0の曲面ではπ\piに満たないことを与える。

例 8.4 (球冠に沿うホロノミー).例 8.2の球冠R={u≤u0}R=\{u\le u_0\}を取る。系 7.1により、境界の緯線に沿う平行移動は接平面を正の向きに角

∫RK dA=2π(1−cos⁡u0)\int_RK\,dA=2\pi(1-\cos u_0)

だけ回す回転である。

§E19.7 例 7.3は、同じ平行移動を球面座標の標構

e1=xvrsin⁡u,e2=xure_1=\frac{\boldsymbol{x}_v}{r\sin u},\qquad e_2=\frac{\boldsymbol{x}_u}{r}

の中で計算し、回転角が−2πcos⁡u0-2\pi\cos u_0であると結論している。二つの値の差は

2π(1−cos⁡u0)−(−2πcos⁡u0)=2π2\pi(1-\cos u_0)-(-2\pi\cos u_0)=2\pi

である。回転として見れば両者は同じであるが、実数としての値が食い違う理由は注意 7.2のとおりである。球面座標の標構はu=0u=0、すなわち北極で定義されないので、RRの全体の上の標構ではない。以下、球面座標の標構を(e1A,e2A)(e^A_1,e^A_2)、§E19.10 命題 1.3が例 8.2のチャートの座標基底から作るRRの全体の上の標構を(e1B,e2B)(e^B_1,e^B_2)と書き、§E19.10 定理 4.1 (1)に従って

e1A=cos⁡θ e1B+sin⁡θ e2Be^A_1=\cos\theta\,e^B_1+\sin\theta\,e^B_2

を満たす角θ\thetaを、境界∂R\partial Rに沿って連続に選ぶ。すなわちθ\thetaは、円板の標構から球面座標の標構への角である。二つの標構はともに∂R\partial Rの近傍の上で定義されているから、補題 2.1 (1)と同じ議論によってこの選択は可能であり、各点の近傍で§E19.10 定理 4.1 (1)が成り立つことから、境界に沿ってω12A(T)=ω12B(T)+θ′\omega^A_{12}(T)=\omega^B_{12}(T)+\theta'が成り立つ。θ\thetaは一周すると2π2\piの整数倍だけずれることがある。以下、その総増分Δθ\Delta\thetaが+2π+2\piであることを二通りに確かめる。

偏角による確認。例 8.2のチャートΦ\Phiを用いると、RRの像は原点を中心とする円板であり、その極座標(ρ,ζ)(\rho,\zeta)はρ=rtan⁡(u/2)\rho=r\tan(u/2)、ζ=−v\zeta=-vを満たす。境界をRRを左に見る向きに一周することはζ\zetaが00から2π2\piまで増えることであり、これはvvが減る向きであって、§E19.7 例 7.3の径数づけと一致する。e1Ae^A_1はxv\boldsymbol{x}_vの向き、すなわち−∂ζ-\partial_\zetaの向きであるから、円板の座標平面の中で見たe1Ae^A_1の偏角はζ−π/2\zeta-\pi/2に等しく、一周のあいだに2π2\pi増える。一方e1Be^B_1の偏角は、円板の全体の上で定義された標構の偏角であるから、一周のあいだに変化しない。角を測る内積を第一基本形式から Euclid 内積へ取り替えても総増分が変わらないことは、§E19.13 命題 9.2の証明と同じ連続変形による。したがってΔθ=2π−0=+2π\Delta\theta=2\pi-0=+2\piである。

接続形式による確認。例 8.2で求めたとおり、標構(e1A,e2A)(e^A_1,e^A_2)の接続形式はω12A=−cos⁡u dv\omega^A_{12}=-\cos u\,dvである。ω12A\omega^A_{12}は∂R\partial Rの近傍の上の一次微分形式であり、境界は緯線u=u0u=u_0をvvの減る向きに一周する曲線であるから、定義 3.1と同じ形の線積分として

∫∂Rω12A=cos⁡u0rsin⁡u0⋅2πrsin⁡u0=2πcos⁡u0\int_{\partial R}\omega^A_{12}=\frac{\cos u_0}{r\sin u_0}\cdot2\pi r\sin u_0=2\pi\cos u_0

である。標構(e1B,e2B)(e^B_1,e^B_2)は補題 3.2の仮定を満たすから

∫∂Rω12B=−∫RK dA=−2π(1−cos⁡u0)\int_{\partial R}\omega^B_{12}=-\int_RK\,dA=-2\pi(1-\cos u_0)

である。境界に沿うω12A(T)=ω12B(T)+θ′\omega^A_{12}(T)=\omega^B_{12}(T)+\theta'を弧長で積分すると

Δθ=∫∂Rω12A−∫∂Rω12B=2πcos⁡u0+2π(1−cos⁡u0)=2π\Delta\theta=\int_{\partial R}\omega^A_{12}-\int_{\partial R}\omega^B_{12}=2\pi\cos u_0+2\pi(1-\cos u_0)=2\pi

であり、偏角による確認と一致する。

注意 7.2のΔψ~=Δψ−Δθ\Delta\tilde\psi=\Delta\psi-\Delta\thetaに代入すると、球面座標の標構に関する回転角は

2π(1−cos⁡u0)−2π=−2πcos⁡u02\pi(1-\cos u_0)-2\pi=-2\pi\cos u_0

であり、§E19.7 例 7.3の値に一致する。

まとめると、系 7.1の一般の主張と§E19.7 例 7.3の計算は、符号まで整合する。両者の2π2\piの差は、後者が北極で定義されない標構を用いていることから生じる。

注意 8.5 (単連結性を外すと右辺が変わること).定義 1.1 条件 (c)を外すと結論は成り立たない。平面{(x,y,0)}\{(x,y,0)\}の中の円環領域

R={(x,y,0): 1≤x2+y2≤4}R=\{(x,y,0):\ 1\le x^2+y^2\le4\}

を取る。K≡0K\equiv0であり、境界は二つの円からなる。外側の円(半径22)をRRを左に見る向き、すなわち反時計回りに取るとκg=1/2\kappa_g=1/2であり、長さは4π4\piであるから寄与は2π2\piである。内側の円(半径11)をRRを左に見る向き、すなわち時計回りに取ると、単位速度の径数づけγ(s)=(cos⁡s,−sin⁡s,0)\gamma(s)=(\cos s,-\sin s,0)に対してT=(−sin⁡s,−cos⁡s,0)T=(-\sin s,-\cos s,0)、n=N×T=(cos⁡s,−sin⁡s,0)=γ(s)n=N\times T=(\cos s,-\sin s,0)=\gamma(s)であり、nnは原点から外を向くのでRRの内側を向く。T′=−γ(s)=−nT'=-\gamma(s)=-nであるからκg=−1\kappa_g=-1であり、長さは2π2\piであるから寄与は−2π-2\piである。したがって

∫RK dA+∫∂Rκg ds+∑jθj=0+(2π−2π)+0=0\int_RK\,dA+\int_{\partial R}\kappa_g\,ds+\sum_j\theta_j=0+(2\pi-2\pi)+0=0

であり、2π2\piにはならない。一般に、境界がm+1m+1本の閉曲線からなる領域では右辺が2π(1−m)2\pi(1-m)になるが、本記事はその形を主張しない。

9 演習

問題 9.1.

  1. 補題 2.1 (3)の証明では、§E19.10 命題 2.2 (1)を用いて∇Te1\nabla_Te_1と∇Te2\nabla_Te_2を書き換えた。この書き換えを行わずにI(∇Te1,e1)\mathrm{I}(\nabla_Te_1,e_1)を残したままにすると、どの段階で式が閉じなくなるかを述べよ。またI(∇Te1,e1)=0\mathrm{I}(\nabla_Te_1,e_1)=0が成り立つ理由を、I(e1,e1)≡1\mathrm{I}(e_1,e_1)\equiv1から導け。
  2. 補題 3.2の証明で、境界の向きの規約が座標平面へ移ることを、det⁡(c′,ν)>0\det(c',\nu)>0とdet⁡(c′,Jc′)>0\det(c',Jc')>0の比較によって示した。チャートが正の向きを持たない場合に何が起こるかを述べ、その場合に主定理の等式がどのように変わるかを説明せよ。
  3. 補題 4.1の証明では、§E19.10 命題 1.3の標構が座標平面の Gram–Schmidt 標構の押し出しであることを用いた。この一致を使わず、UU上の任意の正規直交接標構に対して同じ主張を導こうとすると、どこで議論が止まるかを、§E19.10 定理 4.1のdθd\thetaに即して述べよ。
  4. 定理 6.1の証明を、境界が滑らかで角を持たない場合について書き下せ。そのとき補題 4.1がどのような形になるかを述べよ。
  5. 系 7.1の証明では、平行なベクトル場を単位ベクトル場に正規化した。この正規化が許される理由を、§E19.7 定理 6.5 (2)に即して述べよ。また、V0=0V_0=0の場合を除いた理由を述べよ。
  6. 例 8.2の計算をu0=π/2u_0=\pi/2の場合について実行し、半球について主定理の三項の値を求めよ。境界が測地線であることが、どの項に現れるかを述べよ。
  7. 系 7.3を、Gauss 曲率が定数K0K_0である曲面へ適用し、内角の和と面積の関係を書き下せ。K0<0K_0<0のとき面積に上限が生じることを、内角が正であることから導け。
  8. 注意 8.5の計算を、境界がm+1m+1本の閉曲線からなる一般の場合へ拡張する方針を述べよ。Green の定理が穴を持つ領域を扱うこと(§E4.22 定理 4.1)と、§E19.13 定理 7.1が単純閉曲線に限ることのどちらが障害になるかを特定せよ。

10 境界と次

Stokes の定理を用いないこと。補題 3.2は平面の Green の定理(§E4.22 定理 4.1)だけを用いる。「多様体入門」の Stokes の定理を用いない理由は、その定理が角を持つ領域を扱わないからである。「実解析 II」の曲面上の古典的 Stokes の定理を用いない理由は、それがベクトル場の回転についての形であり、接続形式という一次微分形式に適用することができないからである。本記事の証明は、領域をチャートの定義域へ引き戻し、平面の定理に帰着させる経路を取る。

測地極座標を用いないこと。局所 Gauss–Bonnet の定理には、測地極座標と Gauss の補題を用いる証明もある。本単元はその経路を取らない。理由は§E19.8 注意 1.3に述べたとおり、指数写像の滑らかさを本単元の上流から正当化することができないからである。測地極座標による証明は「Riemann 幾何 I」が扱う。

境界を持つ曲面と向きづけ可能でない曲面を扱わないこと。本記事のRRは、境界を持たない曲面の中の領域である。曲面そのものが境界を持つ場合と、向きづけ可能でない場合の Gauss–Bonnet の定理は「Riemann 幾何 I」が扱う。向きづけ可能でない曲面では§E19.8 定義 5.1のnnが大域的に定まらないので、測地曲率の符号そのものが定まらない。

穴を持つ領域を扱わないこと。注意 8.5のとおり、境界が二つ以上の閉曲線からなる領域では右辺が2π2\piにならない。正しい右辺は領域の Euler 標数で書かれるが、その形は、境界を持つ曲面に対する Gauss–Bonnet の定理の一部であり、本記事は主張しない。

次の記事へ渡すもの。定理 6.1は、三角形分割の各三角形へ適用され、辺に沿う測地曲率の寄与が相殺することによって大域 Gauss–Bonnet の定理を与える。そこで用いる境界の向きの規約は本記事のものと同じである。系 7.3は、定曲率の曲面において内角の和と面積を結ぶ関係を与え、「Riemann 幾何 I」が定曲率空間の比較に用いる。系 7.1は、平行移動の回転角を曲率の積分として測る手段を与え、数値計算による検証の対象になる。

参考文献

  1. Manfredo P. do Carmo, Differential Geometry of Curves and Surfaces, revised and updated second ed., Dover Publications, Mineola, N.Y., 2016.局所 Gauss–Bonnet の定理の主張の形、境界の向きと外角の規約、および回転定理を用いる箇所を参考にした。
  2. Barrett O'Neill, Elementary Differential Geometry, 2 (revised) ed., Academic Press, 2006.接続形式と測地曲率を結ぶ等式、および接続形式の積分としてのホロノミーの扱いを参考にした。
  3. Michael Spivak, A Comprehensive Introduction to Differential Geometry, 3rd ed., vol. 3, Publish or Perish, Inc., Houston, 1999.標構による局所 Gauss–Bonnet の定理の証明と、測地三角形への適用を参考にした。

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